特許第6209621号(P6209621)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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6209621配向された析出物を有する金属複合材料及びその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6209621
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】配向された析出物を有する金属複合材料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 9/06 20060101AFI20170925BHJP
   C22C 9/10 20060101ALI20170925BHJP
   C22F 1/08 20060101ALI20170925BHJP
   H01B 1/02 20060101ALI20170925BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20170925BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20170925BHJP
【FI】
   C22C9/06
   C22C9/10
   C22F1/08 B
   C22F1/08 Q
   H01B1/02 A
   H01B13/00 Z
   !C22F1/00 602
   !C22F1/00 606
   !C22F1/00 630A
   !C22F1/00 661A
   !C22F1/00 651Z
   !C22F1/00 682
   !C22F1/00 691B
   !C22F1/00 691C
   !C22F1/00 692A
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-555085(P2015-555085)
(86)(22)【出願日】2013年2月14日
(65)【公表番号】特表2016-509132(P2016-509132A)
(43)【公表日】2016年3月24日
(86)【国際出願番号】KR2013001163
(87)【国際公開番号】WO2014115920
(87)【国際公開日】20140731
【審査請求日】2015年10月2日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0006993
(32)【優先日】2013年1月22日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513302363
【氏名又は名称】韓国機械材料技術院
【氏名又は名称原語表記】KOREA INSTITUTE OF MACHINERY & MATERIALS
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ソンゾン
【審査官】 河野 一夫
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/125153(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/068134(WO,A1)
【文献】 特開2011−231393(JP,A)
【文献】 特開2006−169548(JP,A)
【文献】 特開平09−104935(JP,A)
【文献】 特開2000−096199(JP,A)
【文献】 特開2010−070856(JP,A)
【文献】 特開2008−056974(JP,A)
【文献】 特開2010−138488(JP,A)
【文献】 特開平11−264040(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 9/00 − 9/10
C22F 1/00 − 3/02
H01B 1/02
H01B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ni及びSiを(Ni+Si)が4.8〜7.5重量%となる組成で含み、残部は銅(Cu)及びその他不可避的不純物である鋳造された銅合金を単相領域で熱処理して固溶体を生成する固溶体生成ステップと、
固溶体が生成された銅合金を47X+260℃(XはNi+Siのwt%)以下の温度で時効処理して500μm×500μmの単位面積当たり40%以上のセル状析出物又はラメラ析出物を形成する析出物強制生成ステップと、
前記析出物を含む銅合金を塑性加工して析出物を配向する析出物配向ステップとからなり、
前記固溶体生成ステップ後前記析出物強制生成ステップ前に前記時効処理の温度よりも低い温度まで一度に冷却するステップをさらに含むことを特徴とする配向された析出物を有する金属複合材料の製造方法。
【請求項2】
Ni及びSiを(Ni+Si)が4.8〜7.5重量%となる組成で含み、残部は銅(Cu)及びその他不可避的不純物である鋳造された銅合金を単相領域で熱処理して固溶体を生成する固溶体生成ステップと、
固溶体が生成された銅合金を47X+260℃(XはNi+Siのwt%)以下の温度で時効処理して630μm×480μmの単位面積当たり40%以上のセル状析出物又はラメラ析出物を形成する析出物強制生成ステップと、
前記析出物を含む銅合金を塑性加工して析出物を配向する析出物配向ステップとからなり、
前記固溶体生成ステップ後前記析出物強制生成ステップ前に前記時効処理の温度よりも低い温度まで一度に冷却するステップをさらに含むことを特徴とする配向された析出物を有する金属複合材料の製造方法。
【請求項3】
Ni及びSiを(Ni+Si)が4.8〜7.5重量%となる組成で含み、残部は銅(Cu)及びその他不可避的不純物である鋳造された銅合金を単相領域で熱処理して固溶体を生成する固溶体生成ステップと、
固溶体が生成された銅合金を47X+260℃(XはNi+Siのwt%)以下の温度で時効処理してセル状析出物又はラメラ析出物を形成する析出物強制生成ステップと、
前記析出物を含む銅合金を塑性加工して銅基地中に3.5μm×1.5μmの単位面積当たり2.0μm以上の長さを有するように析出物を配向する析出物配向ステップとからなり、
前記固溶体生成ステップ後前記析出物強制生成ステップ前に前記時効処理の温度よりも低い温度まで一度に冷却するステップをさらに含むことを特徴とする配向された析出物を有する金属複合材料の製造方法。
【請求項4】
前記配向された析出物は、長さ/厚さが100以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の配向された析出物を有する金属複合材料の製造方法。
【請求項5】
前記固溶体が生成された銅合金は、水冷方式で急冷されるか、又は空冷されることを特徴とする請求項4に記載の配向された析出物を有する金属複合材料の製造方法。
【請求項6】
前記時効処理は3時間以上行われることを特徴とする請求項5に記載の配向された析出物を有する金属複合材料の製造方法。
【請求項7】
前記固溶体生成ステップの熱処理工程の前において、前記銅合金に0.025〜0.24重量%のチタン(Ti)、又は、0.028〜0.086重量%のバナジウム(V)析出促進金属として添加されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の配向された析出物を有する金属複合材料の製造方法。
【請求項8】
前記固溶体生成ステップは、
状態図において単相を維持する最低温度以上、
銅基地相の溶融温度−7.5×X(XはNi+Siのwt%)以下の温度範囲で2時間以上加熱する過程であることを特徴とする請求項7に記載の配向された析出物を有する金属複合材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配向された析出物を有する金属複合材料及びその製造方法に関し、特に合金に析出促進金属を選択的に添加して溶体化処理又は均質化処理を行うことにより固溶体を生成し、その後時効処理により析出物を強制的に生成し、強制的に生成した析出物に塑性加工を行って配向させることにより強度及び電気伝導度を向上させた、配向された析出物を有する金属複合材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銅は高い電気伝導度を有するので電気/電子回路に多く用いられているが、情報通信部品の高集積化及び軽量化により、電気/電子回路においては高い電流及び電圧にさらされている現状である。
【0003】
また、導電性素材として用いられる場合は過酷な環境にさらされることが多いので、高強度、高電気伝導度及び優れた熱的安定性が求められている。
【0004】
すなわち、銅合金は、より多くの電気装置が備えられる自動車において、コネクタ、蓄電池又は制御装置を各種電気部品、アクチュエータ、センサなどに接続するためのコネクタに多く用いられており、このようなコネクタの小型化が切実に求められている。
【0005】
特に、エンジンの近くに設置されたコネクタはエンジンの熱及び振動環境にさらされており、多量の電流がコネクタに送られると、コネクタは熱を発生して高温に上昇する。よって、このようなコネクタは、前述した環境下で高い信頼性を有することが求められている。
【0006】
よって、通常の自動車などに用いられる銅合金コネクタの材料として、Cu−Fe−P合金(特許文献1)又はCu−Mg−P合金(特許文献2)が公知である。前者の合金は、強度がFe及びPの同時添加を基本とするFe−P化合物の析出により改善された合金である。
【0007】
また、Znの追加添加により耐移動性が改善された合金(特許文献3)、Mgの添加により耐応力緩和特性が改善された合金(特許文献4)などが公知である。
【0008】
後者の合金は、Mg及びPの添加により強度及び熱クリープ(creeping)特性を改善して引張強度、電気伝導度及び耐応力緩和特性を改善した合金である。
【0009】
このように、銅合金は、様々な元素を添加することにより電気伝導度、熱的安定性、強度などを向上させることができる。
【0010】
しかし、銅合金に添加される様々な元素は、電気伝導度と強度が両立しない特性を有する。
【0011】
すなわち、強度を向上させると電気伝導度が低下し、電気伝導度を向上させると微細組織の変化により強度が低下するという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】韓国登録特許第10−0997560号公報
【特許文献2】韓国登録特許第10−0417756号公報
【特許文献3】特開平01−168830号公報
【特許文献4】特開平04−358033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、より詳細には、合金に析出促進金属を選択的に添加して溶体化処理又は均質化処理を行うことにより固溶体を生成し、その後時効処理により析出物を強制的に生成し、強制的に生成した析出物に塑性加工を行って配向させることにより強度を向上させた、配向された析出物を有する金属複合材料及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明は、合金に溶体化処理又は均質化処理を行うことにより固溶体を生成し、その後時効処理により500μm×500μmの単位面積当たり40%以上の不連続セル状析出物又はラメラ析出物を強制的に生成し、強制的に生成した析出物に塑性加工を行って配向させたことを特徴とする。
【0015】
本発明による配向された析出物を有する金属複合材料は、合金に溶体化処理又は均質化処理を行うことにより固溶体を生成し、その後時効処理により630μm×480μmの単位面積当たり40%以上の不連続セル状析出物又はラメラ析出物を強制的に生成し、強制的に生成した析出物に塑性加工を行って配向させたことを特徴とする。
【0016】
本発明による配向された析出物を有する金属複合材料は、合金に溶体化処理又は均質化処理を行うことにより固溶体を生成し、その後時効処理により不連続セル状析出物又はラメラ析出物を強制的に生成し、強制的に生成した析出物に塑性加工を行って銅基地中に3.5μm×1.5μmの単位面積当たり2.0μm以上の長さを有するように配向させたことを特徴とする。
【0017】
前記配向された析出物は、長さと直径の縦横比が100以上であることを特徴とする。
【0018】
前記固溶体が生成された合金は、水冷方式で急冷されるか、又は空冷されることを特徴とする。
【0019】
前記時効処理は3時間以上行われることを特徴とする。
【0020】
前記溶体化処理又は均質化処理時に析出促進金属が添加されることを特徴とする。
【0021】
前記析出促進金属は、チタン(Ti)、バナジウム(V)のいずれかを含むことを特徴とする。
【0022】
本発明による配向された析出物を有する金属複合材料の製造方法は、鋳造された合金を準備する材料準備ステップと、前記合金を単相領域で熱処理して固溶体を生成する固溶体生成ステップと、固溶体が生成された合金を時効処理して500μm×500μmの単位面積当たり40%以上のセル状析出物又はラメラ析出物を形成する析出物強制生成ステップと、前記析出物を含む合金を塑性加工して析出物を配向する析出物配向ステップとからなることを特徴とする。
【0023】
本発明による配向された析出物を有する金属複合材料の製造方法は、鋳造された合金を準備する材料準備ステップと、前記合金を単相領域で熱処理して固溶体を生成する固溶体生成ステップと、固溶体が生成された合金を時効処理して630μm×480μmの単位面積当たり40%以上のセル状析出物又はラメラ析出物を形成する析出物強制生成ステップと、前記析出物を含む合金を塑性加工して析出物を配向する析出物配向ステップとからなることを特徴とする。
【0024】
本発明による配向された析出物を有する金属複合材料の製造方法は、鋳造された合金を準備する材料準備ステップと、前記合金を単相領域で熱処理して固溶体を生成する固溶体生成ステップと、固溶体が生成された合金を時効処理してセル状析出物又はラメラ析出物を形成する析出物強制生成ステップと、前記析出物を含む合金を塑性加工して銅基地中に3.5μm×1.5μmの単位面積当たり2.0μm以上の長さを有するように析出物を配向する析出物配向ステップとからなることを特徴とする。
【0025】
前記材料準備ステップにおいて、チタン(Ti)、バナジウム(V)のいずれかを含む析出促進金属が添加されることを特徴とする。
【0026】
前記固溶体生成ステップは、状態図において単相を維持する最低温度以上、銅基地相の溶融温度−7.5×X(Xは銅基地以外に添加された組成のwt%)以下の温度範囲で2時間以上加熱する過程であることを特徴とする。
【0027】
前記析出物強制生成ステップは、47×X(Xは銅基地以外に添加された組成のwt%)+銅基地相の溶融温度×0.4(K,絶対温度)以下の温度で行われることを特徴とする。
【0028】
前記合金は、銅合金であり、Xである(Ni+Si)は4.8〜7.5重量%含まれることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明は、人為的に生成された析出物に塑性加工を行って人為的に配向することにより複合材料の強化材の役割を果たすようにした、配向された析出物を有する金属複合材料に関する。
【0030】
よって、強度が向上するという利点がある。
【0031】
また、本発明においては、析出促進金属を選択的に添加することにより析出物の生成量を調整できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明による配向された析出物を有する金属複合材料における塑性加工前の連続析出物と不連続析出物の光学顕微鏡微細組織写真である。
図2図1のA部を拡大した透過型電子顕微鏡微細組織写真である。
図3】本発明による配向された析出物を有する金属複合材料の透過型電子顕微鏡微細組織写真である。
図4】本発明による配向された析出物を有する金属複合材料における時効処理前/後の硬度及び電気伝導度の変化を比較した図である。
図5】本発明による配向された析出物を有する金属複合材料の製造方法を示す工程フローチャートである。
図6】本発明による配向された析出物を有する金属複合材料の製造方法を示す概要図である。
図7】本発明による配向された析出物を有する金属複合材料の製造方法の固溶体生成ステップと析出物強制生成ステップの適用温度を検証するためのCu−NiSi二元相ダイアグラムである。
図8】本発明による配向された析出物を有する金属複合材料の製造方法の固溶体生成ステップを行わずに時効処理した比較例の微細組織写真である。
図9】本発明による配向された析出物を有する金属複合材料の製造方法の固溶体生成ステップ及び析出物強制生成ステップを行った後の微細組織写真である。
図10】本発明による配向された析出物を有する金属複合材料の製造方法の固溶体生成ステップで徐冷を行った比較例における塑性加工時の微細組織写真である。
図11】本発明による配向された析出物を有する金属複合材料の製造方法の固溶体生成ステップで急冷を行った実施例における塑性加工時の微細組織写真である。
図12】本発明による配向された析出物を有する金属複合材料の製造方法の固溶体生成ステップを行わない比較例の微細組織写真である。
図13】本発明による配向された析出物を有する金属複合材料の製造方法の固溶体生成ステップを行った実施例の微細組織写真である。
図14】本発明による配向された析出物を有する金属複合材料の製造方法の固溶体生成ステップで徐冷を行って析出促進金属を添加しない比較例の微細組織写真である。
図15】本発明による配向された析出物を有する金属複合材料の製造方法の固溶体生成ステップで急冷を行って析出促進金属を添加した実施例の微細組織写真である。
図16図14の比較例における熱間圧延後の500℃の熱処理時の微細組織写真である。
図17図15の実施例における熱処理温度及び実施時間の変化による微細組織の変化を示す写真である。
図18】本発明による配向された析出物を有する金属複合材料の製造方法の析出物強制生成ステップ後の不連続析出の面積比の変化を示すグラフである。
図19】本発明による配向された析出物を有する金属複合材料の製造方法の析出物強制生成ステップ後の不連続析出の面積比の変化を示すグラフである。
図20】本発明による配向された析出物を有する金属複合材料の製造方法の析出物強制生成ステップが完了した好ましい実施例の電子顕微鏡微細組織写真である。
図21】固溶体生成ステップを行わない比較例において析出物強制生成ステップ(上)と析出物配向ステップ(下)を行った場合の微細組織写真である。
図22】本発明による配向された析出物を有する金属複合材料の製造方法の析出物配向ステップ前/後の微細組織を比較した写真である。
図23】比較例と好ましい実施例において引抜工程が採用された析出物配向ステップ前/後の機械的特性を比較したグラフである。
図24】比較例と好ましい実施例において圧延工程が採用された析出物配向ステップ前/後の機械的特性を比較したグラフである。
図25図23の実験結果をステップ毎に比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図1図3を参照して、本発明による不連続セル状析出物又はラメラ析出物を有する金属複合材料20について説明する。
【0034】
これに先立ち、本発明及び請求の範囲に用いられる用語や単語は通常の辞書的な意味で解釈されてはならず、発明者は自らの発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義できるという原則に基づき、本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈すべきである。
【0035】
よって、本明細書に記載する実施例や図面に示す構成は本発明の好ましい一実施例にすぎず、本発明の技術的思想の全てを代弁するものではないので、本出願時点においてこれらを代替できる様々な均等物や変形例があり得ることを理解すべきである。
【0036】
図1及び図2は本発明による配向された析出物を有する金属複合材料における塑性加工前の連続析出物と不連続析出物の光学顕微鏡微細組織写真及び図1のA部拡大写真であり、図3は本発明による配向された析出物を有する金属複合材料20の透過型電子顕微鏡微細組織写真である。
【0037】
本発明は、金属内部で機械的強度を減少させるセル状又はラメラ構造の析出物を生成し、その後人為的に配向して複合材料型強化効果をもたらすことにより強度及び電気伝導度を向上させた金属複合材料20である。
【0038】
すなわち、図1及び図2に示すように、合金10の内部に析出物を人為的に生成した後、図3に示すように、析出物を人為的に配向して本発明の金属複合材料20を完成した。
【0039】
前記析出物には不連続セル状析出物や連続ラメラ析出物などが含まれ、塑性加工には引抜、圧延、押出などの様々な工程が選択される。
【0040】
図4は本発明による配向された析出物を有する金属複合材料20における時効処理前/後の強度及び電気伝導度の変化を比較した図である。
【0041】
同図に示すように、金属複合材料20を製造する過程中に析出物の量を増加させるための析出促進金属を合金10に含めてもよい。
【0042】
析出促進金属にはチタン(Ti)又はバナジウム(V)が用いられ、本発明の好ましい実施例においては銅合金が採用された。
【0043】
前記析出促進金属を選択的に添加することにより、電気伝導度や強度を人為的に調整できることは言うまでもない。
【0044】
前述したように、塑性加工前に3時間以上の時効処理により人為的に生成された析出物は、長さと直径の縦横比が100以上であり、合金10の全面積の40%以上の面積に不連続析出物領域が形成されるようにすることにより、強度及び電気伝導度を向上させることができる。
【0045】
また、本発明は、合金10に溶体化処理又は均質化処理を行うことにより固溶体を生成し、その後時効処理により500μm×500μmの単位面積当たり40%以上の不連続セル状析出物又はラメラ析出物を強制的に生成することができ、630μm×480μmの単位面積当たり40%以上の不連続セル状析出物又は連続ラメラ析出物を生成することができる。
【0046】
また、強制的に生成した析出物に塑性加工を行って銅基地中に3.5μm×1.5μmの単位面積当たり2.0μm以上の長さを有するように配向することができる。
【0047】
以下、図5を参照して、金属複合材料20の製造方法について説明する。
【0048】
図5は本発明による配向された析出物を有する金属複合材料20の製造方法を示す工程フローチャートである。
【0049】
同図に示すように、本発明による金属複合材料20を製造する方法は、鋳造された合金10を準備する材料準備ステップS100と、合金10を単相領域で熱処理して固溶体を生成する固溶体生成ステップS200と、固溶体が生成された合金10を時効処理してセル状析出物又はラメラ析出物を形成する析出物強制生成ステップS300と、前記析出物を含む合金10を塑性加工して析出物を配向する析出物配向ステップS400とからなる。
【0050】
材料準備ステップS100は、合金(図5及び図6参照)を準備する過程であり、前述した析出促進金属が選択的に準備される。
【0051】
より具体的に説明すると、合金10は、本発明の実施例において、ニッケル(Ni)−シリコン(Si)を含む銅合金であり、圧延、引抜、押出のいずれかで成形された鋳造品が採用され、残留析出物が存在する。
【0052】
前記析出促進金属は、チタン(Ti)、バナジウム(V)のいずれかを含む。
【0053】
また、ニッケル(Ni)とシリコン(Si)の重量を合わせた(Ni+Si)重量%は合金10の全重量に対して最大固溶度の81%以上、すなわち4.8〜7.5重量%含まれるように制限し、残部は銅(Cu)及びその他不可避的不純物である。
【0054】
さらに、前記析出促進金属は、選択的に含まれるものであり、0.025〜0.24重量%のチタン(Ti)が含まれるか、0.028〜0.086重量%のバナジウム(V)が含まれる。
【0055】
材料準備ステップS100に続いて固溶体生成ステップS200が行われる。固溶体生成ステップS200は、残留析出物を除去するための過程であり、材料準備ステップS100で析出促進金属が含まれると固溶度を低くすることができる。
【0056】
固溶体生成ステップS200は、合金10及び析出促進金属を所定温度以上の温度に加熱する過程であり、固溶体生成ステップS200の温度は、銅基地合金10においては950℃以上、1084(純銅の融点)−7.5×X以下の温度が好ましい。
【0057】
また、前記Xには前述した(Ni+Si)の重量%値が適用され、本発明の実施例のCu−Ni−Si、Cu−Ni−Si−Ti又はCu−Ni−Si−V合金10においては、液相が生じない1084−7.5×Xと、固溶体を形成する最大固溶限界温度である950℃以上が好ましい。
【0058】
すなわち、図7に示すように、実施例のCu−Ni−Si、Cu−Ni−Si−Ti又はCu−Ni−Si−V合金10においては、950℃以下では単相を形成せずに多相を形成するので、不連続析出物が生成されない。
【0059】
固溶体生成ステップS200に続いて不連続析出物強制生成ステップS300が行われる。
【0060】
析出物強制生成ステップS300は合金10の内部に不連続セル状析出物や不連続ラメラ析出物を生成させる過程であり、本発明の実施例においては、固溶体生成ステップS200に続いて水冷又は空冷を行い、析出促進金属を添加した場合は2時間以上時効し、析出促進金属を添加しない場合は5時間以上時効することにより、不連続析出物を強制生成させた。
【0061】
すなわち、図8及び図9に示すように、これらは固溶体生成ステップS200で異なる冷却方式を採用した比較例と実施例における微細組織写真であり、比較例では加熱炉内部で徐々に冷却したのに対して、実施例では急冷した。
【0062】
よって、比較例では一般的な形状の析出物が生成されたが、実施例では不連続的な析出物が生成されたことが確認された。
【0063】
図10は本発明による配向された析出物を有する金属複合材料20の製造方法の固溶体生成ステップS200で徐冷を行った比較例における塑性加工時の微細組織写真であり、図11は本発明による配向された析出物を有する金属複合材料20の製造方法の固溶体生成ステップS200で急冷を行った実施例における塑性加工時の微細組織写真である。
【0064】
同図に示すように、加熱炉内部で徐々に冷却した比較例では析出物が配向されなかったが、固溶体生成ステップS200で急冷した実施例では、析出物配向ステップS400を行ったときに析出物が加工方向に沿って配向されたことが確認された。
【0065】
よって、固溶体生成ステップS200においては水冷又は空冷方式を用いて急冷することが好ましい。
【0066】
固溶体生成ステップS200に続いて析出物強制生成ステップS300が行われる。析出物強制生成ステップS300は固溶体生成ステップS200で合金10の内部に形成された析出物の量を増加させるためのステップであり、本発明の実施例においては時効(aging)処理を適用した。
【0067】
以下、図12図19を参照して、析出物強制生成ステップS300前/後の微細組織を比較して説明する。
【0068】
まず、図12及び図13に示すように、固溶体生成ステップS200において熱処理炉内部で徐冷した比較例においては、不連続析出物領域が少量しか生成されなかったが、固溶体生成ステップS200が好ましく行われた実施例においては、比較例と同じ時間の析出物強制生成ステップS300を行っても不連続析出物領域が大きく拡張されたことが確認された。
【0069】
比較例と実施例における各成分の含有量は下記表1の通りである。
【0070】
【表1】
【0071】
図14及び図15に示すように、析出促進金属が含まれない場合に比べて、析出促進金属が含まれる場合は、同じ時間の析出物強制生成ステップS300を行っても不連続析出物領域が広いことが確認された。
【0072】
図14は本発明による配向された析出物を有する金属複合材料20の製造方法の固溶体生成ステップS200で徐冷を行って析出促進金属を添加しない比較例の微細組織写真であり、図15は本発明による配向された析出物を有する金属複合材料20の製造方法の固溶体生成ステップS200で急冷を行って析出促進金属を添加した実施例の微細組織写真であり、材料準備ステップS100でバナジウム(V)を添加した場合の固溶体生成ステップS200と析出物強制生成ステップS300の完了後の微細組織写真を示したものであり、チタン(Ti)と同様に不連続析出物の形成が促進されたことが確認された。
【0073】
図16図14の比較例における熱間圧延後の500℃の熱処理時の微細組織写真であり、図17図15の実施例における熱処理時温度及び実施時間の変化による微細組織の変化を示す写真である。
【0074】
図17に示すように、析出物強制生成ステップS300で400℃に加熱した場合は6時間経過しても不連続析出物が生成されなかったが、450℃と500℃に加熱した場合は1時間経過時点から析出物が増加した。
【0075】
それに対して、比較例においては、図16に示すように、500℃で7時間加熱しても析出物は生じなかった。
【0076】
図14及び図16に示すように、析出物強制生成ステップS300を行う前の比較例においては微細組織に大きな変化がなかったが、実施例においては、図15及び図17に示すように、時間の増加に伴って不連続析出物が増加することが確認された。
【0077】
比較例においては、バナジウム(V)又はチタン(Ti)が添加されない場合に析出物強制生成ステップS300を行って長時間持続しても不連続析出物が少量しか形成されず、好ましい実施例とは相反する結果を示した。
【0078】
図18及び図19は本発明による配向された析出物を有する金属複合材料20の製造方法の析出物強制生成ステップS300後の不連続析出物の面積比の変化を示すグラフである。
【0079】
すなわち、(Ni+Si)の重量%Xを変化させた場合の析出物の発生量を分析したグラフであり、合金10の全重量に対して(Ni+Si)の重量%Xが4.81重量%以上含まれる場合は、不連続析出物又はラメラ析出物の面積が40%以上を占めることが確認された。
【0080】
ただし、(Ni+Si)の重量%Xが4.81重量%未満しか含まれない場合は、40%以上の不連続析出物面積を形成することができなかった。
【0081】
よって、図7に示す状態図において、(Ni+Si)の重量%Xは4.8〜7.5重量%の範囲内であることが好ましい。また、状態図においてはあらゆる析出型合金で同じ現象が起こるので、最大固溶度の81%を添加した合金で同じ現象が起こるものと予測することができる。
【0082】
上記実施例に基づいて、500℃で析出物強制生成ステップS300を行った結果、図20に示すように、不連続セル状析出物が形成され、ラメラ析出物は長さと直径の縦横比が100以上であった。
【0083】
上記実験結果に基づいて、不連続析出物強制生成ステップS300の実施温度(℃)は、47×X+260℃(533K)以下の温度が採用され、上記関係式で表される。
【0084】
また、固溶体生成ステップS200の実施温度(℃)は、1084−7.5×Xと、固溶体を形成する最大固溶限界である950℃以上の温度が採用され、上記関係式で表される。
【0085】
さらに、前記不連続析出物は、拡散が開始する0.4×銅基地金属の融点(K,絶対温度)以上で生成されるので、本発明で開示する基地金属以外の添加組成との関係から、図7の状態図に示す領域で不連続析出物が強制形成される。
【0086】
不連続析出物強制生成ステップS300に続いて析出物配向ステップS400が行われる。析出物配向ステップS400は、上記実施例により内部に形成された不連続析出物又は不連続ラメラ析出物を人為的に配向させるための過程である。
【0087】
すなわち、本発明の実施例における析出物配向ステップS400には圧延、引抜又は押出が採用され、図11は圧延(上)と引抜(下)を採用して製造した金属複合材料20の微細組織写真であり、本発明の好ましい実施例により製造された金属複合材料20は不連続析出物が平行に配列されていることが確認された。
【0088】
以下、図21及び図22を参照して、比較例と実施例の微細組織を比較して説明する。
【0089】
図21は固溶体生成ステップS200を行わない比較例において析出物配向ステップを行った場合の微細組織写真であり、図22は本発明による配向された析出物を有する金属複合材料20の製造方法の析出物配向ステップS400前/後の微細組織を比較した写真である。
【0090】
図21に示すように、比較例は固溶体生成ステップS200を行わないので析出物強制生成ステップS300で析出物が生成されない合金に析出物配向ステップS400を行ったものであり、固溶体を生成させて(図22の上の写真)析出物配向ステップS400を行った実施例(図22の下の写真)と対比すると、微細組織の整列方向が著しく異なることが確認された。
【0091】
このような微細組織の配向の有無の差異は、図23及び図24に示すように、機械的特性に大きな差異をもたらす。
【0092】
図23は比較例と好ましい実施例において引抜工程が採用された析出物配向ステップS400前/後の機械的特性を比較したグラフであり、図24は比較例と好ましい実施例において圧延工程が採用された析出物配向ステップS400前/後の機械的特性を比較したグラフである。
【0093】
まず、図23に示すように、時効処理まで完了した実施例においては500MPa以下の強度を示し、比較例の強度である600MPaより低い数値であった。
【0094】
しかし、析出物配向ステップS400で引抜工程を行った比較例と実施例を比較すると、強度の増加分に著しい差が生じることが分かる。
【0095】
すなわち、比較例においては、引抜工程前に600MPaの強度を示し、引抜工程後に800MPaに若干上昇したが、実施例においては、引抜工程前に約500MPaの強度を示し、引抜工程後に1100MPa程度の強度を示し、むしろ析出物配向ステップS400後は比較例よりも実施例の合金10のほうが強度に優れることが分かる。
【0096】
よって、本願発明の析出物強制生成ステップS300を行って析出物を強制的に生成し、その析出物を強制的に配向すると析出物が強化材の役割を果たすことが証明された。
【0097】
図24は析出物強制生成ステップS400で圧延工程を採用して行ったものであり、比較例では圧延工程を行う前は600MPaを示し、実施例の強度である550MPaより高い強度を示したが、析出物強制生成ステップS400を行った後は、比較例では800MPa未満の強度を示すのに対して、本願発明の好ましい実施例では900MPaの強度を示し、析出物の配向による強度相乗効果が確認された。
【0098】
図25図23の実験結果をステップ毎に比較したグラフであり、各工程の強度増加効果を下から上へ順次積層して表したものである。
【0099】
同図に示すように、合金10の状態で比較例と実施例は同じ200MPaの強度を示し、固溶体生成ステップS200と析出物強制生成ステップS300の後は、むしろ比較例の強度が430MPa増加して実施例の強度より高かった。
【0100】
しかし、析出物配向ステップS400後は、比較例は190MPa上昇したのに対して、実施例は480MPa上昇し、比較例より290MPaの強度向上効果が確認された。
【0101】
すなわち、本発明の好ましい実施例により製造された金属複合材料20は、不連続析出物が平行に配列されるので、一般の製造方法で製造された金属複合材料20に比べて、機械的特性が著しく向上したことが確認された。
【0102】
以上のような本発明の範囲は上記実施例に限定されるものではなく、上記技術範囲における当業界の通常の技術者であれば、本発明に基づく他の様々な変形が可能である。
【0103】
例えば、本発明の実施例においては析出促進金属としてチタンを採用したが、バナジウムを採用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、人為的に生成された析出物に塑性加工を行って人為的に配向することにより複合材料の強化材の役割を果たすようにした、配向された析出物を有する金属複合材料及びその製造方法に関し、電気伝導度及び強度が向上し、必要に応じて析出促進金属を選択的に添加することにより析出物の生成量を人為的に調節できるので、電気的及び機械的特性を調節することにより様々な分野に適用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
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図20
図21
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図25