(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
遷移金属複合酸化物粒子X 100質量部に対する炭素材料の添加量が、炭素原子換算量で0.5〜15質量部である請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用負極活物質の製造方法。
【背景技術】
【0002】
従来より、リチウムイオン電池の負極としてグラファイトの使用が普及している。かかるグラファイトは、リチウム基準で0.1〜0.3V近傍に作動電位を有しており、リチウムイオン電池の高電圧化及び高エネルギー密度化を実現する上で大きな役割を果たしている。
【0003】
一方、かかるグラファイトの作動電位は金属リチウムの析出電位近傍でもあるために、電池が過充電状態となると、グラファイト表面の不動状皮膜から漏出した金属リチウムが対極に向かって結晶化してデンドライトが生成されてしまう。また、放電過程では、デンドライトの根元部が溶出して先端部がグラファイト表面から離脱し、電池の中に残留してしまう。こうした電解液中に残留して浮遊する金属リチウムは、デッドリチウムとも称され、非常に活性の高い微小金属リチウムとなって、充放電効率を低下させるだけでなく、電池内での内部短絡や発熱等を引き起こすおそれもある。
【0004】
デンドライトの生成やデッドリチウムの発生を回避するには、負極の作動電位がリチウム基準で1V以上となる材料が求められ、例えば、チタンニオブ酸化物(TiNb
2O
7、Ti
2Nb
10O
29)であれば、リチウム基準で1V以上の電位範囲において、250〜280mAh/gの高容量を示すことが報告されている。
【0005】
ところで、非水電解質二次電池の製造において、チタンニオブ酸化物やチタン酸リチウム(Li
4Ti
5O
12)のような遷移金属複合酸化物は、負極材料として用いる場合、表面に導電性炭素などの導電性物質を担持した負極用活物質を形成した後、活物質および導電助剤を混合した電池電極用合材スラリーとして集電体に塗布し、その後、溶媒や分散媒が除去されて活物質同士が結着することによって負極を形成する。
【0006】
こうした非水電解質二次電池の電池性能は、電極活物質の特性に大きく依存する。電極材料に導電性炭素を担持する製造方法として、例えば、特許文献1には、有機物を電極材料と混合して炭化させることにより、電極材料を導電性炭素で被覆する製造方法が開示されており、また特許文献2には、電極材料と導電性炭素を湿式ボールミルにより混合した後、機械的エネルギーにより電極材料と導電性炭素を複合化する製造方法が開示されている。さらに、特許文献3には、化学蒸着法により、負極材料に導電性炭素を被覆する製造方法が開示されている。
【0007】
また、これらの文献に記載の製造方法により得られる、電極材料粒子(一次粒子)の造粒体である二次粒子の表面や内部には、いずれも導電性炭素が充填されていない気孔(造粒体内に残存する一次粒子間空隙)が多々存在していることから、電池性能を充分に高め得る遷移金属複合酸化物負極活物質を得るには、かかる気孔を減少させることが望ましい。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の非水電解質二次電池用負極活物質の製造方法は、開気孔を有する遷移金属複合酸化物粒子X、炭素材料及び水を混合してスラリーAを得る工程(I)、
得られたスラリーAを減圧処理又は減圧処理後に加圧処理して、炭素材料を含む水が開気孔内に充填された遷移金属複合酸化物粒子複合体Yを得る工程(II)、並びに
得られた遷移金属複合酸化物粒子複合体Yを還元雰囲気又は不活性雰囲気下で焼成する工程(III)
を備える。
【0015】
工程(I)は、開気孔を有する遷移金属複合酸化物粒子X、炭素材料及び水を混合してスラリーAを得る工程である。
本発明で用いる遷移金属複合酸化物とは、二次電池の負極活物質として用いられる遷移金属複合酸化物であれば特に制限されないが、具体的には例えば、Li
4Ti
5O
12、TiNb
2O
7、及びTi
2Nb
10O
29等が挙げられる。
【0016】
Li
4Ti
5O
12は、例えばチタン化合物及びリチウム化合物を焼成することにより製造することができ、またチタン化合物及びリチウム化合物等の所定の原料化合物を用いて懸濁液を調製し、水熱反応により結晶を得た後、熱処理することによっても製造することができる。
原料化合物であるチタン化合物としては、酸化チタン、オルトチタン酸やメタチタン酸等の含水酸化チタンが挙げられ、これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、電池物性を高める観点から、アナターゼ型TiO
2が好ましい。原料化合物であるリチウム化合物としては、リチウム酸化物又はリチウム水酸化物が挙げられ、具体的には、炭酸リチウム、水酸化リチウム、硝酸リチウム等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、電池物性を高める観点から、炭酸リチウムが好ましい。
【0017】
より具体的には、固相法による製造方法を用いる場合、上記チタン化合物及びリチウム化合物の所定量を混合・粉砕した後、温度700〜900℃で8〜24時間焼成し、次いで得られた焼成物を粉砕することにより、Li
4Ti
5O
12を得ることができる。
また、水熱法による製造方法を用いる場合、原料化合物として上記チタン化合物及びリチウム化合物を混合してスラリーを得た後、反応温度180〜220℃、圧力0.5〜1.0MPaで、10〜20時間が水熱反応させ、反応後のスラリーを乾燥することにより、Li
4Ti
5O
12を得ることができる。
【0018】
TiNb
2O
7は、例えばニオブ化合物及びチタン化合物等の所定の材料を用いて懸濁液を調製し、水熱反応により結晶を得た後、熱処理することによって結晶度の高いものを製造することができる。また、所定の材料をボールミル等により混合・粉砕した後、焼成することによっても製造することができる。
原料化合物であるニオブ化合物としては、水酸化ニオブ等を用いることができ、原料化合物であるチタン化合物としては、硫酸チタニルや硫酸チタン等の硫酸塩、硝酸塩、塩化物、又は有機酸等を用いることができる。かかるチタン化合物には、不可避的に混入する場合も含め、その一部にチタン及びニオブ以外の異種金属M(MはSn、Zr、Fe、Bi、Cr、Mo、Na、Mg、Al及びSiからなる群より選ばれる少なくとも一種を示す。)を含んでいてもよく、異種金属(M)の含有量は、より良好な電池物性を確保する観点から、チタン化合物中に、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下である。
【0019】
より具体的な製造方法としては、ニオブ化合物として水酸化ニオブ、チタン源としてアナターゼ型TiO
2を用い、過酸化水素及び水とともに懸濁液を調製し、水熱反応を介して得られた固形分を固液分離し、焼成する方法が好ましい。なお、上記懸濁液中におけるニオブとチタンのモル比(Nb/Ti)は、好ましくは1.6〜2.4であり、より好ましくは1.8〜2.2である。
【0020】
Ti
2Nb
10O
29は、例えばチタン化合物及びニオブ化合物を混合・粉砕した後、焼成することにより製造することができる。また、ニオブ化合物及びチタン化合物等の所定の材料を用いて懸濁液を調製し、水熱反応により結晶を得た後、熱処理することによっても製造することができる。
原料化合物であるニオブ化合物としては、ニオブ酸化物又はニオブ水酸化物が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、電池物性を高める観点から、五酸化ニオブ(Nb
2O
5)が好ましい。原料化合物であるチタン化合物としては、酸化チタン、オルトチタン酸やメタチタン酸等の含水酸化チタンが挙げられ、これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、電池物性を高める観点から、アナターゼ型TiO
2が好ましい。かかるチタン化合物には、不可避的に混入する場合も含め、その一部にチタン及びニオブ以外の異種金属M(MはSn、Zr、Fe、Bi、Cr、Mo、Na、Mg、Al及びSiからなる群より選ばれる少なくとも一種を示す。)を含んでいてもよく、異種金属(M)の含有量は、より良好な電池物性を確保する観点から、チタン化合物中に、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下である。
【0021】
より具体的には、固相法による製造方法を用いる場合、上記ニオブ化合物及びチタン化合物の所定量を混合・粉砕した後、温度1200〜1400℃で4〜24時間焼成し、次いで得られた焼成物を粉砕することにより、Ti
2Nb
10O
29を得ることができる。
【0022】
工程(I)で用いる開気孔を有する遷移金属複合酸化物粒子X(二次粒子)は、かかる遷移金属複合酸化物(一次粒子)が凝集することにより形成される。具体的には、得られた遷移金属複合酸化物(一次粒子)と水を混合してスラリーaを得た後、得られたスラリーaを乾燥して造粒物bとし、得られた造粒物bを酸素雰囲気下で焼成して、開気孔を有する遷移金属複合酸化物粒子X(二次粒子)を得る。
【0023】
スラリーa中における遷移金属複合酸化物(一次粒子)の含有量は、スラリーa中の水100質量部に対し、好ましくは20〜80質量部であり、より好ましくは40〜60質量部である。この際、かかる遷移金属複合酸化物(一次粒子)の粒径は、良好な電池性能を発現する観点から、好ましくは20〜900nmであり、より好ましくは20〜600nmである。なお、遷移金属複合酸化物(一次粒子)の粒径とは、SEM観察における、かかる粒子の差し渡し長さの最大値を意味し、その平均粒径とは、任意に抽出した粒子20個分での平均値を意味する。
【0024】
遷移金属複合酸化物粒子X(二次粒子)を得るためのスラリーaの乾燥方法としては、恒温乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥、真空乾燥等の、通常の乾燥方法のいずれをも使用することができるが、遷移金属複合酸化物粒子X(二次粒子)の大きさを有効に制御する観点から、噴霧乾燥がより好ましい。
噴霧乾燥により得られる、遷移金属複合酸化物からなる造粒体aの粒径は、レーザー回折・散乱法に基づく粒度分布におけるD
50値で、好ましくは1〜20μmであり、より好ましくは2〜15μmである。ここで、粒度分布測定におけるD
50値とは、レーザー回折・散乱法に基づく体積基準の粒度分布により得られる値であり、D
50値は累積50%での粒径(メジアン径)を意味する。したがって、適宜噴霧乾燥装置の運転条件を最適化することにより、かかる造粒体aの粒径を調整すればよい。
【0025】
次いで、得られた造粒体aを酸素雰囲気下で焼成する。焼成温度は、遷移金属複合酸化物(一次粒子)の結晶性を高めつつ、かつ過度の焼結によって遷移金属複合酸化物粒子(二次粒子)の気孔が小径化するのを有効に抑制する観点から、好ましくは600〜1200℃であり、より好ましくは600〜1100℃であり、さらに好ましくは700〜1000℃である。また焼成時間は、遷移金属複合酸化物(一次粒子)の結晶性を高めつつ、かつ過度の焼結によって遷移金属複合酸化物粒子(二次粒子)の気孔が小径化するのを有効に抑制する観点から、好ましくは0.3〜7時間であり、より好ましくは0.5〜6時間である。
なお、焼成する際の雰囲気は、遷移金属複合酸化物中のチタンの価数を+4価とするため、酸素雰囲気下とする必要があり、簡便性及び経済性の観点から大気雰囲気とするのが最も好ましい。焼成に用いる装置としては、焼成雰囲気及び温度の調整が可能な装置であれば特に限定されず、バッチ式、連続式、加熱方式(間接又は直接)のいずれの方式の装置も使用することができる。
【0026】
工程(I)において、上記遷移金属複合酸化物粒子Xとともに用いる炭素材料は、水溶性炭素材料であってもよく、水不溶性炭素材料であってもよい。
かかる水溶性炭素材料とは、25℃の水100gに、水溶性炭素材料の炭素原子換算量で0.4g以上、好ましくは1.0g以上溶解する炭素材料を意味し、遷移金属複合酸化物粒子の気孔を充填する炭素源として機能する。かかる水溶性炭素材料としては、例えば、糖類、ポリオール、ポリエーテル、及び有機酸から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。より具体的には、例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース等の単糖類;マルトース、スクロース、セロビオース等の二糖類;デンプン、デキストリン等の多糖類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ブタンジオール、プロパンジオール、ポリビニルアルコール、グリセリン等のポリオールやポリエーテル;クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸等の有機酸が挙げられる。なかでも、溶媒への溶解性及び分散性を高めて、効果的に導電性を有する炭素源としての機能を発揮させる観点から、グルコース、フルクトース、スクロース、及びデキストリンから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、グルコースがより好ましい。
【0027】
水不溶性炭素材料とは、水不溶性の炭素粉末であって、焼成等せずともそのもの自体が導電性を有する炭素源である。かかる水不溶性炭素材料としては、グラファイト、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ及び繊維状炭素等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、高ストラクチャ構造を有する観点から、アセチレンブラック又はケッチェンブラックが好ましい。用い得る水不溶性炭素材料の平均粒径は、遷移金属複合酸化物粒子の気孔を効果的に充填する観点から、好ましくは1〜30nmであり、より好ましくは1〜15nmである
かかる水不溶性炭素材料は、遷移金属複合酸化物粒子の気孔内に効果的に充填させる観点から、予め水に分散させて用いることが好ましい。
【0028】
開気孔を有する遷移金属複合酸化物粒子X、炭素材料及び水を混合してスラリーAを得るにあたり、かかる炭素材料を遷移金属複合酸化物粒子Xの開気孔を介して気孔内に有効に充填させる観点から、遷移金属複合酸化物粒子Xと水からなる懸濁液に炭素材料を添加して、スラリーAを得るのが好ましい。かかる炭素材料を添加する前の懸濁液における遷移金属複合酸化物粒子Xの含有量は、水100質量部に対し、好ましくは30〜100質量部であり、より好ましくは50〜100質量部である。また、懸濁液への炭素材料の添加量は、炭素材料に由来する炭素が遷移金属複合酸化物粒子Xの開気孔を介して気孔内を充填し、さらに遷移金属複合酸化物粒子X表面をも被覆して導電性を高めるのに十分な量とする観点から、遷移金属複合酸化物粒子X 100質量部に対し、炭素原子換算量で、好ましくは0.5〜15質量部であり、より好ましくは1〜10質量部である。
なお、得られたスラリーA中では、遷移金属複合酸化物粒子Xが浸漬された状態であり、本発明では、かかるスラリーAをこの状態のままで用い、次なる工程(II)に移行する。
【0029】
工程(II)は、工程(I)で得られたスラリーAを減圧処理又は減圧処理後に加圧処理して、炭素材料を含む水が開気孔内に充填された遷移金属複合酸化物粒子複合体Yを得る工程である。スラリーAを減圧処理又は減圧処理後に加圧処理することにより、遷移金属複合酸化物粒子Xの気孔内に炭素材料が良好かつ効率的に充填されてなる遷移金属複合酸化物粒子複合体Yを得ることができる。すなわち、減圧処理によって、遷移金属複合酸化物粒子Xの気孔内に存在する空気が、粒子Xの外部へ吸い出されてスラリーA中で発泡し、炭素材料が水とともに遷移金属複合酸化物粒子Xの気孔内へ効率的に侵入し、その充填率を高めることができる。
なお、スラリーAを減圧処理するのではなく、遷移金属複合酸化物粒子Xのみを減圧処理に付した後に、かかる遷移金属複合酸化物粒子Xを炭素材料を含む水に浸漬することによっても、同等の効果が得られる可能性があるものの、この際には、遷移金属複合酸化物粒子から飛散した微粉末が減圧ポンプに吸い込まれる等の設備トラブルが生じやすくなり、製造効率が低下してしまうおそれがあるため、本発明では、遷移金属複合酸化物粒子X、炭素材料及び水を含むスラリーAを減圧処理に付する。
【0030】
減圧処理の圧力は、0.005〜0.04MPaであることが好ましく、0.005〜0.03MPaであることがより好ましい。0.04MPaより高い圧力であると、減圧処理に要する時間が必要以上に長くなるおそれがあり、また0.005MPaよりも低い圧力であると、スラリーAの沸騰が生じやすくなり、遷移金属複合酸化物粒子Xの気孔内における空気の吸い出しや炭素材料の侵入が良好に進行しなくなるおそれがある。
減圧処理は、減圧処理で生じる遷移金属複合酸化物粒子Xの気孔内からの空気の吸い出しによって生じる発泡が収まるまで行えばよく、減圧処理の時間は、減圧処理開始時からこの発泡が停止した時点までの時間を意味する。かかる減圧処理によって、遷移金属複合酸化物粒子の気孔内は、炭素材料を含む水によって充填されるが、かかる充填をより確実にする観点から、減圧処理後に続いて加圧処理を行うのがより好ましい。
【0031】
必要に応じて、上記減圧処理後に行う加圧処理の圧力は、0.11〜0.5MPaであることが好ましく、0.2〜0.5MPaであることがより好ましいい。0.11MPaより低い圧力であると、既に炭素材料を含む水の一部が遷移金属複合酸化物粒子Xの気孔内の一部に充填されている状況下で、さらにかかる炭素材料を含む水を気孔内に押し込んでその充填率を高めるには圧力が不足する可能性があり、また0.5MPaよりも高い圧力であると、遷移金属複合酸化物粒子X(二次粒子)が破損してしまう可能性がある。
【0032】
上記減圧処理後に加圧処理する場合、これを複数回繰り返してもよい。減圧処理と加圧処理を繰り返すことにより、遷移金属複合酸化物粒子Xの気孔内へ炭素材料を含む水が浸入しやすくなり、気孔内における炭素材料を含む水の充填率をより一層高めることができる。かかる繰り返しの回数は、処理効率と得られる効果との兼ね合いから、2〜4回が好ましい。
【0033】
減圧処理や加圧処理には、市販の真空加圧含浸装置又は真空加圧注液含浸装置を用いればよく、或いは耐圧容器に減圧ポンプと加圧ポンプを組み合わせたものを用いることもできる。
【0034】
次に、スラリーAを減圧処理又は減圧処理後に加圧処理して得られるスラリーから、炭素材料を含む水が充填された遷移金属複合酸化物粒子複合体Yを得るには、固液分離すればよい。固液分離に用いる装置としては、例えば、減圧濾過機、フィルタープレス機、遠心濾過機等が挙げられる。なかでも、効率的に固形分を得る観点から、減圧濾過機を用いるのが好ましい。
【0035】
工程(III)は、工程(II)で得られた遷移金属複合酸化物粒子複合体Yを還元雰囲気又は不活性雰囲気下で焼成する工程である。これにより、遷移金属複合酸化物粒子の気孔内に炭素が有効に充填及び担持された非水電解質二次電池用負極活物質が得られ、電池性能に優れた非水電解質二次電池用負極活物質を実現することができる。かかる工程(III)の焼成条件は、還元雰囲気又は不活性雰囲気中であればよく、焼成温度は、好ましくは400℃以上、より好ましくは400〜800℃であり、焼成時間は、好ましくは10分〜3時間、より好ましくは0.5〜1.5時間とするのがよい。
【0036】
得られる非水電解質二次電池用負極活物質は、リチウムイオン電池やナトリウムイオン電池等の二次電池の負極として非常に優れた放電容量及びサイクル特定を発揮する点で有用である。かかる負極を適用できる二次電池としては、正極と負極と電解液とセパレータを必須構成とするものであれば特に限定されない。
【0037】
ここで、正極については、リチウムイオン又はナトリウムイオン等、所定の金属イオンを充電時には放出し、かつ放電時には吸蔵することができれば、その材料構成で特に限定されるものではなく、公知の材料構成のものを用いることができる。例えば、原料を水熱反応させることにより得られる各種オリビン型化合物を好適に用いることが好ましい。
【0038】
電解液は、有機溶媒に支持塩を溶解させたものである。有機溶媒は、通常リチウムイオン電池やナトリウムイオン電池等の二次電池の電解液に用いられる有機溶媒であれば特に限定されるものではなく、例えば、カーボネート類、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、ケトン類、ニトリル類、ラクトン類、オキソラン化合物等を用いることができる。
【0039】
支持塩は、その種類が特に限定されるものではないが、例えばリチウムイオン二次電池の場合、LiPF
6、LiBF
4、LiClO
4、LiAsF
6から選ばれる無機塩、該無機塩の誘導体、LiSO
3CF
3、LiC(SO
3CF
3)
2、LiN(SO
3CF
3)
2、LiN(SO
2C
2F
5)
2及びLiN(SO
2CF
3)(SO
2C
4F
9)から選ばれる有機塩、並びに該有機塩の誘導体の少なくとも1種であることが好ましい。また、例えばナトリウムイオン二次電池の場合、NaPF
6、NaBF
4、NaClO
4及びNaAsF
6から選ばれる無機塩、該無機塩の誘導体、NaSO
3CF
3、NaC(SO
3CF
3)
2及びNaN(SO
3CF
3)
2、NaN(SO
2C
2F
5)
2及びNaN(SO
2CF
3)(SO
2C
4F
9)から選ばれる有機塩、並びに該有機塩の誘導体の少なくとも1種であることが好ましい。
【0040】
セパレータは、正極及び負極を電気的に絶縁し、電解液を保持する役割を果たすものである。たとえば、多孔性合成樹脂膜、特にポリオレフィン系高分子(ポリエチレン、ポリプロピレン)の多孔膜を用いればよい。
【実施例】
【0041】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
以下の方法にしたがって各測定を行い、製造条件等も含め、得られた結果を表1に示す。
【0042】
《遷移金属複合酸化物からなる二次粒子のBET比表面積の測定》
測定装置((株)島津製作所製FlowSorbIII 2305)を用いて、実施例及び比較例で得られた遷移金属複合酸化物からなる二次粒子の窒素吸着法によるBET比表面積を測定した。
【0043】
《製造例1:TiNb
2O
7の製造》
5Lポリ容器に、アナターゼ型TiO
2(関東化学(株)製) 243.2g、Nb2O5(関東化学(株)製)797.4g、及び水1000mLと共に、φ1mmのジルコニアボール13kgを入れ、混合・粉砕処理を24時間行った。その後、湿式ふるいでジルコニアボールを洗浄、及び除去した後、フィルタープレスで固液分離した。
次いで、水1000mLに、固液分離により得られた脱水ケーキ固形分 538gを加え(スラリー濃度が35質量%に相当)、超音波攪拌機(IKA、T25)で10分間撹拌して全体が均一に呈色するスラリーを得た後、得られたスラリーを噴霧乾燥(スプレードライヤー;藤崎電機(株)製 MDL−050M)して、造粒体a1を得た。その後、かかる造粒体a1を大気雰囲気下1100℃で4時間焼成して、TiNb
2O
7のみからなる二次粒子X1を得た。二次粒子X1の窒素吸着法によるBET非表面積は、1.7m
2/gであった。また、かかる二次粒子X1の平均粒子径は10μmであった。
【0044】
[実施例1]
製造例1で得られた二次粒子X1を100g分取し、グルコース 6.2g(100質量部の二次粒子X1に対し、炭素原子換算量で5.3質量部に相当)とともに水200mLと混合し、超音波攪拌機(T25)を用いて大気圧下で10分間撹拌して、全体が均一に呈色するスラリーA1を得た。
得られたスラリーA1をガラス製耐圧容器内に入れ、かかるガラス製耐圧容器内の圧力を0.01MPaとして10分間減圧処理を行い、二次粒子X1からの細かな発泡が生じていないことを確認した後、ガラス製耐圧容器内の圧力を大気圧に解放した。
次いで、減圧処理後のスラリーA1を吸引ろ過して、気孔内にグルコース水溶液が充填された複合体Y1を得た。
【0045】
次いで、複合体Y1をアルゴン水素雰囲気下(水素濃度3%)、700℃で1時間焼成して、グルコース由来の炭素が担持された非水電解質二次電池用負極活物質(TiNb
2O
7/C、炭素量5.0質量%)を得た。
【0046】
[実施例2]
スラリーA1の減圧処理後、ガラス製耐圧容器内の圧力を0.3MPaとして10分間加圧処理を行った後、ガラス製耐圧容器内の圧力を大気圧に解放した以外、実施例1と同じにして、グルコース由来の炭素が担持された非水電解質二次電池用負極活物質(TiNb
2O
7/C、炭素量5.0質量%)を得た。
【0047】
[比較例1]
スラリーA1の減圧処理を行わなかった以外、実施例1と同様にして、グルコース由来の炭素が担持された非水電解質二次電池用負極活物質(TiNb
2O
7/C、炭素量5.0質量%)を得た。
【0048】
[比較例2]
スラリーA1の減圧処理を圧力0.05MPaで行った以外、実施例1と同様にして、グルコース由来の炭素が担持された非水電解質二次電池用負極活物質(TiNb
2O
7/C、炭素量5.0質量%)を得た。
【0049】
《製造例2:Li
4Ti
5O
12の製造》
5Lポリ容器に、アナターゼ型TiO
2(関東化学(株)製) 1768g、Li
2CO
3(関東化学(株)製) 654g、及び水1000mLと共に、φ1mmのジルコニアボール 13kgを入れ、混合・粉砕処理を24時間行った。その後、湿式ふるいでジルコニアボールを洗浄、及び除去した後、フィルタープレスで固液分離した。
次いで、水1000mLに、固液分離により得られた脱水ケーキ固形分 538g(スラリー濃度が35質量%に相当)を加えた後、超音波攪拌機(T25)で10分間撹拌して、全体が均一に呈色するスラリーを得た後、得られたスラリーを噴霧乾燥(MDL−050M)して、造粒体a2を得た。その後、かかる造粒体a2を、大気雰囲気下800℃で10時間焼成して、Li
4Ti
5O
12のみからなる二次粒子X2を得た。
得られた二次粒子X2のBET比表面積は3.4m
2/gであった。
【0050】
[実施例3]
得られた二次粒子X2を100g分取し、グルコース 6.2g(100質量部の二次粒子X2に対し、炭素原子換算量で5.3質量部に相当)とともに水200mLと混合し、超音波攪拌機(T25)を用いて大気圧下で10分間撹拌して、全体が均一に呈色するスラリーA2を得た。
得られたスラリーA2をガラス製耐圧容器内に入れ、かかるガラス製耐圧容器内の圧力を0.01MPaとして10分間減圧処理を行い、二次粒子X2からの細かな発泡が生じていないことを確認した後、ガラス製耐圧容器内の圧力を大気圧に解放した。
次いで、減圧処理後のスラリーA2を吸引ろ過して、気孔内にグルコース水溶液が充填された複合体Y2を得た。
【0051】
次いで、複合体Y2をアルゴン水素雰囲気下(水素濃度3%)、700℃で1時間焼成して、グルコース由来の炭素が担持された非水電解質二次電池用負極活物質(Li
4Ti
5O
12/C、炭素量5.0質量%)を得た。
【0052】
[実施例4]
スラリーA2の減圧処理後、ガラス製耐圧容器内の圧力を0.3MPaとして10分間加圧処理を行った後、ガラス製耐圧容器内の圧力を大気圧に解放した以外、実施例1と同じにして、グルコース由来の炭素が担持された非水電解質二次電池用負極活物質(Li
4Ti
5O
12/C、炭素量5.0質量%)を得た。
【0053】
[比較例3]
スラリーA2の減圧処理を行わなかった以外、実施例1と同様にして、グルコース由来の炭素が担持された非水電解質二次電池用負極活物質(Li
4Ti
5O
12/C、炭素量5.0質量%)を得た。
【0054】
[比較例4]
スラリーA2の減圧処理を圧力0.05MPaで行った以外、実施例1と同様にして、グルコース由来の炭素が担持された非水電解質二次電池用負極活物質(Li
4Ti
5O
12/C、炭素量5.0質量%)を得た。
【0055】
《充放電特性の評価》
実施例及び比較例で得られた非水電解質二次電池用負極活物質、ケッチェンブラック(導電剤)、ポリフッ化ビニリデン(粘結剤)を質量比90:3:7の配合割合で混合し、これにN−メチル−2−ピロリドンを加えて充分混練し、負極スラリーを調製した。
得られた負極スラリーを厚さ20μmの銅箔からなる集電体に塗工機を用いて塗布し、80 ℃で12時間の真空乾燥を行った。その後、φ14mmの円盤状に打ち抜いてハンドプレスを用いて16MPaで2分間プレスし、負極とした。
次いで、φ15mmに打ち抜いたLi箔を正極とし、電解液としてエチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネートを体積比1:1の割合で混合した混合溶媒にLiPF
6を1 mol/Lの濃度で溶解したものを用い、セパレータに高分子多孔フィルム(ポリプロピレン製)を用いて、露点が−50℃以下の雰囲気で常法により組み込み収容し、コイン型リチウム二次電池(CR−2032)を製造した。
作成したTiNb
2O
7からなる負極を有するリチウム二次電池について、気温30℃環境下、充電条件を電流1CA(387mA/g)、電圧3Vの定電流充電とし、放電条件を1CA(387mA/g)、終止電圧1Vの定電流定電圧放電として、1CAおよび20CAにおける放電容量を測定(測定装置:北斗電工(株)製 HJ−1001SD8)した。また、Li
4Ti
5O
12からなる負極を有するリチウム二次電池については、気温30℃環境下、充電条件を電流1CA(387mA/g)、電圧2.5Vの定電流充電とし、放電条件を1CA(387mA/g)、終止電圧1Vの定電流定電圧放電とした。
結果を表1に示す。
【0056】
【表1】