特許第6209644号(P6209644)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6209644
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】半導体装置の冷却装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/473 20060101AFI20170925BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20170925BHJP
   H02M 1/00 20070101ALI20170925BHJP
   H02M 7/515 20070101ALI20170925BHJP
   B29C 45/40 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   H01L23/46 Z
   H05K7/20 P
   H05K7/20 E
   H02M1/00 R
   H02M7/515 Z
   B29C45/40
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-89231(P2016-89231)
(22)【出願日】2016年4月27日
【審査請求日】2017年3月16日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004765
【氏名又は名称】カルソニックカンセイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(74)【代理人】
【識別番号】100157473
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 啓
(72)【発明者】
【氏名】野村 祐一郎
(72)【発明者】
【氏名】奥塚 元
【審査官】 秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−166509(JP,A)
【文献】 特開2015−156800(JP,A)
【文献】 特開2014−096963(JP,A)
【文献】 特開2006−197781(JP,A)
【文献】 特開平05−292703(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/473
B29C 45/40
H02M 1/00
H02M 7/515
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子を有する半導体装置を冷却する半導体装置の冷却装置であって、
前記半導体素子が載置される放熱板と、
前記放熱板との間に冷却媒体流路を画成する樹脂製の冷却器と、を備え、
前記冷却器は、
前記冷却媒体流路を囲むように設けられ、前記放熱板に当接するシール面と、
前記冷却媒体流路の内外を連通させる連通路と、を有し、
前記シール面は、前記冷却器を射出成形する際のパーティングラインの一方側に位置し、
前記連通路の中心は、前記パーティングラインよりも前記シール面から離れるようにオフセットして設けられ
前記シール面は、射出成形の際の突き出しピンによる突き出し痕を避けた位置に設けられることを特徴とする半導体装置の冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置の冷却装置であって、
前記連通路は、前記冷却器の外と、前記シール面で区画された前記冷却媒体流路と、を連通させることを特徴とする半導体装置の冷却装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の半導体装置の冷却装置であって、
前記冷却器は、前記パーティングラインの他方側に支持部を更に有し、
前記支持部は、前記シール面から離れる方向に前記連通路よりも突出していることを特徴とする半導体装置の冷却装置。
【請求項4】
請求項3に記載の半導体装置の冷却装置であって、
前記支持部は、前記シール面と重ならない位置に形成されることを特徴とする半導体装置の冷却装置。
【請求項5】
請求項1からのいずれか一つに記載の半導体装置の冷却装置であって、
前記連通路は、前記冷却媒体流路の底面に接続されて前記冷却媒体流路に冷却媒体を供給する供給通路であり、
前記冷却器は、前記冷却媒体流路の前記底面に接続されて前記冷却媒体流路から冷却媒体を排出する排出通路を更に有することを特徴とする半導体装置の冷却装置。
【請求項6】
請求項に記載の半導体装置の冷却装置であって、
前記半導体装置は、回転電機に前記冷却器が臨むように配置されて前記回転電機の動作を制御するパワーモジュールであって、
前記排出通路から排出された冷却媒体は前記回転電機に導かれて前記回転電機を冷却することを特徴とする半導体装置の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電力変換装置が開示されている。この電力変換装置では、半導体モジュールが樹脂製の冷却ジャケットに取り付けられている。この電力変換装置では、冷却ジャケットの凹部と半導体モジュールの放熱面とによって冷却水の流路が画成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−197562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
樹脂製の冷却ジャケットを用いる場合には、半導体モジュールと当接するシール面の肉厚が不均一になると、シール面における強度を確保することが困難になるおそれがある。しかしながら、特許文献1では、シール面の肉厚について何ら検討されていない。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、シール面において一定の肉厚を確保し、シール面における強度を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によれば、半導体素子を有する半導体装置を冷却する半導体装置の冷却装置は、前記半導体素子が載置される放熱板と、前記放熱板との間に冷却媒体流路を画成する樹脂製の冷却器と、を備え、前記冷却器は、前記冷却媒体流路を囲むように設けられ、前記放熱板に当接するシール面と、前記冷却媒体流路の内外を連通させる連通路と、を有し、前記シール面は、前記冷却器を射出成形する際のパーティングラインの一方側に位置し、前記連通路の中心は、前記パーティングラインよりも前記シール面から離れるようにオフセットして設けられ、前記シール面は、射出成形の際の突き出しピンによる突き出し痕を避けた位置に設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上記態様では、樹脂製の冷却器において、連通路を形成することに伴って、シール面の肉厚が不均一になることを防止する。これにより、シール面において一定の肉厚を確保し、シール面における強度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施形態に係る冷却装置が適用されるインバータ装置が回転電機に取り付けられた状態を説明する図である。
図2図2は、インバータ装置のカバーを取り外した状態の斜視図である。
図3図3は、インバータ装置の分解斜視図であり、平滑コンデンサを省略して示した図である。
図4図4は、インバータ装置のケースの斜視図である。
図5図5は、インバータ装置のケースの平面図である。
図6図6は、図5におけるVI−VI線に沿った断面を示す図である。
図7図7は、図5におけるVII−VII線に沿った断面を示す図である。
図8図8は、図5における底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る冷却装置4が適用されるインバータ装置1について説明する。
【0010】
まず、図1を参照して、インバータ装置1が回転電機としてのモータジェネレータ2に取り付けられた状態について説明する。
【0011】
インバータ装置1は、電動自動車,ハイブリッド自動車,又はプラグインハイブリッド自動車(車両)に搭載される。インバータ装置1は、バッテリ(蓄電装置)3の直流電力をモータジェネレータ2の駆動に適した交流電力に変換する。インバータ装置1は、モータジェネレータ2からの回生電力をバッテリ3の充電に適した直流電力に変換する。
【0012】
バッテリ3は、例えばリチウムイオン二次電池で構成される。バッテリ3は、インバータ装置1に直流電力を供給し、インバータ装置1から供給される直流電力により充電される。バッテリ3の電圧は、例えば240V〜400Vの間で変動し、それよりも高い電圧が入力されることで充電される。
【0013】
モータジェネレータ2は、例えば永久磁石同期電動機で構成される。モータジェネレータ2は、インバータ装置1から供給される交流電力によって駆動される。モータジェネレータ2は、車両を走行させるときに車両の駆動輪(図示省略)を回転駆動する。モータジェネレータ2は、車両が減速するときには発電機として機能し、回生電力を発生する。
【0014】
次に、図2及び図3を参照して、インバータ装置1の全体構成について説明する。
【0015】
インバータ装置1は、ケース10と、半導体装置としてのパワーモジュール20と、放熱板22と、出力バスバーとしてのバスバーモジュール30と、平滑コンデンサとしてのコンデンサモジュール40と、ドライバ基板50と、インバータコントローラ60と、カバー70と、を備える。
【0016】
ケース10は、支持部19を介してモータジェネレータ2に直接取り付けられる。ケース10には、コンデンサモジュール40が載置され、ボルト締結によって固定される。ケース10には、パワーモジュール20とバスバーモジュール30とドライバ基板50とインバータコントローラ60とが、カバー70との間に収容される。ケース10の構成については、後で図4から図7を参照して詳細に説明する。
【0017】
パワーモジュール20は、モータジェネレータ2の動作を制御する。パワーモジュール20は、複数のスイッチング素子(半導体素子)としてのIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)21を有する。パワーモジュール20は、IGBT21のON/OFFをスイッチング制御することにより、バッテリ3の直流電力とモータジェネレータ2の交流電力とを相互に変換する。IGBT21は、パワーモジュール20の上面に積層されるドライバ基板50によってON/OFFが制御される。ドライバ基板50の上方には、ブラケット61を介してインバータコントローラ60が載置される。
【0018】
パワーモジュール20は、コンデンサモジュール40の接続バスバー41に接続される第1の端子23と、U相,V相,W相からなる3相のバスバーモジュール30が接続される第2の端子24と、を有する。第1の端子23は、U相,V相,W相に対応して、正側端子と負側端子とがそれぞれ3組設けられる。第2の端子24も同様に、U相,V相,W相に対応して、3つ設けられる。
【0019】
パワーモジュール20は、放熱板22を介してケース10の後述するシール面16に載置される。本実施形態では、パワーモジュール20と放熱板22とは別体であるが、放熱板22がパワーモジュール20と一体に設けられてパワーモジュール20の一部を構成するようにしてもよい。
【0020】
バスバーモジュール30は、パワーモジュール20に接続されるパワーモジュール端子31と、モータジェネレータ2に接続されるモータ端子(負荷端子)32と、バスバーモジュール30の電流を検出する電流センサ33と、を有する。バスバーモジュール30は、パワーモジュール20におけるコンデンサモジュール40の反対の側面に接続される。バスバーモジュール30は、パワーモジュール20におけるU相、V相、W相の第2の端子24にそれぞれ直接接続され、モータジェネレータ2に3相の交流電力を出力する。
【0021】
バスバーモジュール30において、パワーモジュール端子31とモータ端子32とは、互いに交差する方向に形成される。具体的には、モータ端子32は、バスバーモジュール30の下方に配設されるモータジェネレータ2に接続される。パワーモジュール端子31は、バスバーモジュール30の側方に配設されるパワーモジュール20に接続される。よって、モータ端子32は、パワーモジュール端子31に対して直角に交差するように形成される。
【0022】
バスバーモジュール30は、ケース10に収容される。モータ端子32の先端は、ケース10の底部11の貫通孔12を挿通して外部に露出する。これにより、モータ端子32がハーネス等(図示省略)を介してモータジェネレータ2に接続可能になる。
【0023】
コンデンサモジュール40は、複数のコンデンサ素子(図示省略)によって構成される。コンデンサモジュール40は、例えばバッテリ3から供給される直流電力の電圧やモータジェネレータ2からパワーモジュール20を介して回生される回生電力の電圧を平滑化する。コンデンサモジュール40は、電圧を平滑化することで、ノイズの除去や電圧変動の抑制を行う。コンデンサモジュール40は、側面から側方に突出する接続バスバー41を介してパワーモジュール20に接続される。接続バスバー41には、パワーモジュール20が直接螺合等によって接続される。
【0024】
コンデンサモジュール40には、バッテリ3に接続されるバッテリ端子42が設けられる。コンデンサモジュール40は、バッテリ端子42と接続バスバー41とを内部バスバー(図示省略)を介して接続する。内部バスバーには、コンデンサ素子が並列に接続される。
【0025】
インバータコントローラ60は、車両のコントローラ(図示省略)からコネクタ62を介して入力される指令信号及び電流センサ33からのU相,V相,W相の電流の検出結果に基づいて、パワーモジュール20を動作させる信号をドライバ基板50に出力する。ドライバ基板50は、インバータコントローラ60からの信号に基づいて、パワーモジュール20を制御する。
【0026】
カバー70は、ケース10の立設部14aにボルト締結によって取り付けられ、ケース10の開口部10aを閉塞する。これにより、ケース10とカバー70との間に、パワーモジュール20とバスバーモジュール30とドライバ基板50とインバータコントローラ60とが収容される。カバー70からは、インバータコントローラ60のコネクタ62が外部に露出する。
【0027】
次に、図4から図8を参照して、ケース10の構成について説明する。
【0028】
ケース10は、コンデンサモジュール40が載置されるコンデンサ載置部13と、冷却水(冷却媒体)が流通する冷却水流路(冷却媒体流路)15を放熱板22との間に画成してパワーモジュール20を冷却する冷却器14と、冷却器14の外周に立設してカバー70が取り付けられる立設部14aと、を有する。
【0029】
ケース10は、樹脂材料を用いた射出成形によって一体に形成される。図6及び図7に示すように、ケース10は、パーティングラインPLをコア型(可動型)とキャビティ型(固定型)との分割面として金型を用いて射出成形される。パーティングラインPLは、最も面積の大きな平面であるコンデンサ載置部13の上面と一致するように設定される。
【0030】
立設部14aは、平面視U字状に形成され、互いに対向するように一対設けられる。一対の立設部14aの間には、ケース10の開口部10aが形成される。立設部14aは、パワーモジュール20と放熱板22とバスバーモジュール30とドライバ基板50とインバータコントローラ60とを収容する側壁部の一部を構成する。立設部14aには、インバータコントローラ60を取り付けるためのブラケット61とカバー70とが、ボルト締結によって固定される。
【0031】
冷却器14は、冷却水流路15を囲むように設けられて放熱板22が当接するシール面16と、冷却水流路15の流路底面(底面)15aに接続されて冷却水流路15に冷却水を供給する連通路としての供給通路17と、冷却水流路15の流路底面15aに接続されて冷却水流路15から冷却水を排出する排出通路18と、流路底面15aから離れる方向に管部17aと比較して大きく突出する支持部19と、を有する。冷却器14は、放熱板22と共にパワーモジュール20の冷却装置4を構成する。
【0032】
シール面16は、冷却水流路15の周囲に環状に底部11から立設される。シール面16は、ケース10を射出成形する際のパーティングラインPLから所定高さH1[mm](図7参照)の位置にある。シール面16には、シール部材としてのOリング(図示省略)が収容される凹状のOリング溝16aが環状に形成される。シール面16には、Oリング溝16aにOリングが収容された状態で放熱板22を介してパワーモジュール20が取り付けられる。これにより、冷却水流路15が画成され、冷却水の流通によって放熱板22及びパワーモジュール20を直接的に冷却できるようになる。
【0033】
流路底面15aは、シール面16と平行に形成される。流路底面15aは、シール面16と比較して低い位置にオフセットして形成され、シール面16に取り付けられる放熱板22と対向して放熱板22との間に冷却水流路15を画成する。流路底面15aにおける冷却水の流れ方向の一方の端部には、供給通路17が貫通して形成される。流路底面15aにおける冷却水の流れ方向の他方の端部には、排出通路18が貫通して形成される。
【0034】
供給通路17は、冷却水流路15におけるパワーモジュール20の反対側から冷却水を供給するように形成される。排出通路18も同様に、冷却水流路15におけるパワーモジュール20の反対側から冷却水を排出するように形成される。
【0035】
このように、冷却水を供給する供給通路17と冷却水を排出する排出通路18とは、冷却水流路15の流路底面15aに接続される。そのため、供給通路17及び排出通路18がシール面16に干渉することはなく、シール面16の肉厚を均等にすることができる。よって、樹脂製の冷却器14において、管部17aを形成することに伴って、シール面16の肉厚が不均一になることが防止される。これにより、シール面16において一定の肉厚を確保し、シール面16における強度を確保することができる。
【0036】
また、シール面16の肉厚を均等にすることができるので、樹脂製の冷却器14にヒケ等の成形不良が発生することを抑制することができる。したがって、シール面16の平面度を維持できるので、冷却器14を樹脂で成形した場合にもシール性能を維持することができる。なお、シール面16の肉厚とは、図6及び図7における高さ方向(図6及び図7では上下方向)の厚さである。
【0037】
供給通路17は、冷却器14の側方に引き出される管部17aを有する。
【0038】
図7に示すように、管部17aは、シール面16よりも流路底面15aの近くで冷却水流路15に接続される。これにより、シール面16は、所定の肉厚に形成される。具体的には、シール面16は、パーティングラインPLから所定高さH1[mm]の位置にあり、管部17aの中心線Oからシール面16までの距離H2[mm]は、パーティングラインPLからシール面16までの所定高さH1[mm]と比較して大きい(H2>H1)。
【0039】
また、管部17aは、中心線Oが冷却水流路15の流路底面15aからH3[mm]だけ離れるようにオフセットして設けられる。管部17aが設けられる位置におけるシール面16の肉厚D[mm]は、管部17aがオフセットした分だけ大きく形成される。
【0040】
以上のように構成されることにより、管部17aが冷却器14の側方に引き出された場合にも、シール面16の肉厚を均等にすることができる。よって、樹脂製の冷却器14において、管部17aを形成することに伴って、シール面16の肉厚が不均一になることが防止される。これにより、シール面16において一定の肉厚を確保し、シール面16における強度を確保することができる。
【0041】
また、管部17aが冷却器14の側方に引き出された場合にも、樹脂製の冷却器14にヒケ等の成形不良が発生することを抑制することができる。したがって、シール面16の平面度を維持できるので、冷却器14を樹脂で成形した場合にもシール性能を維持することができる。
【0042】
管部17aは、望ましくは、シール面16に最も近い部分(図7では上端部分)がシール面16から所定の距離H4[mm]だけ離れて形成される。これにより、管部17a全体がシール面16から離間するので、シール面16の肉厚を更に均等にすることができる。ここで、所定の距離は、ヒケ等の成形不良が発生しない程度にシール面16の肉厚D[mm]を確保できる距離に設定される。
【0043】
なお、管部17aは、冷却器14の側方ではなく、冷却器14の下方に引き出されてもよい。この場合、管部17aとシール面16とは全く干渉しないので、シール面16の肉厚を均等にすることができる。また、供給通路17が管部17aを有する構成に代えて、排出通路18が側方に引き出される管部を有していてもよく、供給通路17と排出通路18とがともに側方に引き出される管部を有していてもよい。
【0044】
インバータ装置1は、上述したように、モータジェネレータ2に冷却器14が臨むように配置される。排出通路18から排出された冷却水は、モータジェネレータ2に導かれてモータジェネレータ2を冷却する。よって、単一の冷却水路によってパワーモジュール20とモータジェネレータ2との両方を冷却することができる。
【0045】
また、樹脂製のケース10を用いることで、例えばアルミニウム等の金属製のケースを用いた場合と比較して、モータジェネレータ2からインバータ装置1への熱伝達を抑制することができる。よって、モータジェネレータ2の発熱の影響を受けずに、インバータ装置1を充分に冷却することができる。
【0046】
支持部19は、シール面16と重ならない位置に形成される。即ち、シール面16と支持部19とがケース10の高さ方向(上下方向)に重なることはない。これにより、支持部19が形成された場合にも、シール面16の肉厚への影響はない。
【0047】
図8に示すように、冷却器14は、射出成形の際の突き出しピン(図示省略)による突き出し痕10bを有する。シール面16及びシール面16の裏側の面は、突き出し痕10bを避けた位置に設けられる。冷却器14は、射出成形時には、支持部19が形成される面から、突き出しピンによって突き出される。突き出しピンは、シール面16の裏側の面から外れた位置を突き出すように配置される。
【0048】
よって、冷却器14は、シール面16及びシール面16の裏側の面には突き出しピンによる突き出し痕10bを有さない。したがって、突き出しピンによって突き出されて平面度に影響を及ぼすことが防止されるので、冷却器14を樹脂で成形した場合にもシール面16の平面度を維持できる。
【0049】
なお、突き出しピンによる突き出し痕10bの位置は、図8に示す限りではなく、シール面16及びシール面16の裏側の面を除いた任意の位置に設定可能である。
【0050】
また、本実施形態においては、冷却器14の上面側(図5で見える面)をキャビティ型に、冷却器14の裏面をコア型で成形しているが、その逆でもよい。この場合においても、突き出しピンはシール面16を避けて突き出すように配置される。このように、射出成形時における突き出し位置は、冷却器の平面視において、シール面16からオフセットした位置とする。
【0051】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0052】
インバータ装置1では、シール面16は、パーティングラインPLから所定高さH1[mm]の位置にあり、管部17aの中心線Oからシール面16までの距離H2[mm]は、パーティングラインPLからシール面16までの所定の距離と比較して大きい。これにより、樹脂製の冷却器14において、管部17aを形成することに伴って、シール面16の肉厚が不均一になることが防止される。これにより、シール面16において一定の肉厚を確保し、シール面16における強度を確保することができる。
【0053】
また、冷却水を供給する供給通路17は、冷却水流路15の流路底面15aに接続される。そのため、供給通路17がシール面16に干渉することはなく、シール面16の肉厚が不均一になるのを抑制することができる。これにより、樹脂成形品において肉厚の不均一が原因で生じるヒケ等の不具合を抑制することができる。したがって、シール面16の平面度を維持できるので、冷却器14を樹脂で成形した場合にもシール性能を維持することができる。
【0054】
また、管部17aが冷却器14の側方に引き出された場合にも、シール面16の肉厚を均等化を図ることができるので、樹脂製の冷却器14にヒケ等の成形不良が発生することを抑制することができる。
【0055】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0056】
例えば、上記実施形態では、半導体装置がインバータ装置1のパワーモジュール20である場合について説明したが、これに限られず、半導体装置が冷却を要する他の電装部品であってもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 インバータ装置
2 モータジェネレータ(回転電機)
4 冷却装置
10 ケース
14 冷却器
15 冷却水流路(冷却媒体流路)
15a 流路底面
16 シール面
17 供給通路
17a 管部
18 排出通路
19 支持部
20 パワーモジュール(半導体装置)
21 IGBT(半導体素子)
22 放熱板
【要約】
【課題】シール面において一定の肉厚を確保し、シール面における強度を確保する。
【解決手段】インバータ装置1の冷却装置4は、IGBT21が載置される放熱板22と、放熱板22との間に冷却水流路15を画成する樹脂製の冷却器14と、を備え、冷却器14は、冷却水流路15を囲むように設けられ、放熱板22に当接するシール面16と、冷却水流路15の内外を連通させる供給通路17と、を有し、供給通路17は、シール面16よりも冷却水流路15の流路底面15aの近くで冷却水流路15に接続される。
【選択図】図7
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8