特許第6209649号(P6209649)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6209649-ゴム配合物用充填剤 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6209649
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】ゴム配合物用充填剤
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20170925BHJP
   C08K 3/30 20060101ALI20170925BHJP
   B09B 3/00 20060101ALI20170925BHJP
   C02F 11/06 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   C08L21/00ZAB
   C08K3/30
   B09B3/00 303C
   B09B3/00 303M
   B09B3/00 303Z
   C02F11/06 B
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-115876(P2016-115876)
(22)【出願日】2016年6月10日
【審査請求日】2016年9月23日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】598123312
【氏名又は名称】南国興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177220
【弁理士】
【氏名又は名称】小木 智彦
(72)【発明者】
【氏名】林田 貴寛
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−220518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 21/00
B09B 3/00
C02F 11/06
C08K 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物の焼成物及び、廃棄物の水和水除去物に含まれる、カルシウム硫酸塩を含むことを特徴とするゴム配合物用充填剤。
【請求項2】
前記カルシウム硫酸塩が、硫酸カルシウム無水物であることを特徴とする請求項に記載のゴム配合物用充填剤。
【請求項3】
前記廃棄物が、排水処理汚泥、製紙汚泥、ゴムくず、貝殻、卵殻、獣骨、魚骨、排煙脱硫石膏、廃石膏、都市ごみ、紙おむつ、木くず、竹くず、もみ殻、コーヒー粕、廃菌床、パーム殻、食品残澄、コーンコブ、およびそれらの脱水品または加水品から選択される1以上を含むことを特徴とする請求項1に記載のゴム配合物用充填剤。
【請求項4】
前記焼成物が、流動層炉、流動床炉、ストーカー炉、ガス化溶融炉、ロータリーキルン炉、及び、固定床炉から選択される焼却設備で得られた灰であることを特徴とする請求項1に記載のゴム配合物用充填剤。
【請求項5】
前記焼却設備で得られた灰が、流動層ボイラーばいじんであることを特徴とする請求項に記載のゴム配合物用充填剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来品(軽質炭酸カルシウム)と同等以上のゴムの補強性を持ち、かつ安価なゴム配合物用充填剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム配合物用充填剤として、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム等が使われているが、ゴムの性能を高めるだけでなく、よりコストを下げることのできる充填剤が求められている。
【0003】
特許文献1には、以下の工程から得られる造粒灰を用いた、ゴム配合物用充填剤が開示されている。
(1)汚泥、廃油、プラスチックくず、塗料かすを主成分とする産業廃棄物と石炭とを2:1の比率で混合焼成させて、バグフィルターで回収した焼成灰を得る。
(2)前記焼成灰を40μm以下に分級する。
(3)得られた分級灰を平均粒径500μmに造粒する。
【0004】
特許文献1に記載の技術において、燃焼灰の化合物形態は開示されていないが、主成分は珪素化合物とアルミニウム化合物であり、得られるゴム配合物用充填剤によるゴム配合物の補強効果はあまり得られなかった。
【0005】
また、特許文献2には、石炭灰から得られる分級灰(16μm)又は粉砕灰(2.4μm)を用いたゴム用充填剤が開示されている。
【0006】
特許文献2に記載の技術では、石炭灰のみを使用しており、分級石炭灰(平均粒径16μm)によるゴム配合物の補強効果はあまり得られなかった。石炭灰を平均粒径2.4μmに粉砕しても、軽質炭酸カルシウムと比べて6ポイントしか硬度が向上しなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−55444号公報
【特許文献2】特開昭59−189144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ゴム配合物用充填剤として広く使われている炭酸カルシウムと同等以上のゴムの補強性を持ち、かつ安価なゴム配合物用充填剤を提供することを目的とする。さらに本発明は、廃棄物またはその燃焼物をゴム配合物用充填剤の主成分とすることにより、天然資源使用量の削減、および、最終処分場の延命に貢献するゴム配合物用充填剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく、カルシウム酸化物およびカルシウム硫酸塩に、従来品(軽質炭酸カルシウム)と同等以上のゴムの補強性を見出した。さらに、カルシウム酸化物およびカルシウム硫酸塩を含む素材として、廃棄物およびその燃焼物を利用できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明のゴム配合物用充填剤は、廃棄物の焼成物及び、廃棄物の水和水除去物に含まれるカルシウム硫酸塩を含むことを特徴とする。
【0012】
前記カルシウム硫酸塩が、硫酸カルシウム無水物であることを特徴とする。
【0014】
前記廃棄物は、排水処理汚泥、製紙汚泥、ゴムくず、貝殻、卵殻、獣骨、魚骨、排煙脱硫石膏、廃石膏、都市ごみ、紙おむつ、木くず、竹くず、もみ殻、コーヒー粕、廃菌床、パーム殻、食品残渣、コーンコブ、およびそれらの脱水品または加水品から選択される1以上を含むことを特徴とする。
【0015】
前記焼成物は、流動層炉、流動床炉、ストーカー炉、ガス化溶融炉、ロータリーキルン炉、及び、固定床炉から選択される焼却設備で得られた灰であることが好ましく、流動層ボイラーばいじんが特に好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、従来品(軽質炭酸カルシウム)と同等以上のゴムの補強性を持つゴム配合物用充填剤を提供することができる。また、本願ゴム配合物用充填剤に含まれるカルシウム酸化物およびカルシウム硫酸塩として、廃棄物又はその焼成物を利用するため、ゴム配合物用充填剤を安価で提供することができる。これにより、天然資源使用量の削減、および、最終処分場の延命に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】ボイラーばいじんAとボイラーばいじんBのXRDの結果を示した図
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0018】
〔酸化カルシウム、硫酸カルシウム無水物および軽質炭酸カルシウムによるゴム補強性(硬度)への効果の比較〕
ゴム配合物の作成方法
表1に示す配合率を用いてロールで混練し、金型に入れて160℃で加硫し、ゴム配合物を作成した。
【0019】
(実施例1から4)
ゴム配合物の作成において、ゴム配合物用充填剤として、従来品の軽質炭酸カルシウムを用いたゴム配合物を比較例1とした。同様に、酸化カルシウム、硫酸カルシウム無水物および硫酸カルシウム水和物を用いたゴム配合物を実施例1から4とした。
【0020】
得られたゴム配合物の硬度を硬度計により測定し、その結果を表1に示した。
【0021】
【表1】
【0022】
表1に示す通り、酸化カルシウム及び硫酸カルシウムは、従来品(軽質炭酸カルシウム)に比べ、ゴムの補強効果が高かった(実施例1および2)。また、硫酸カルシウム0.5水和物の効果は、従来品と同程度であった(実施例3)。
【0023】
〔ボイラーばいじんの分析〕
タイヤ、製紙汚泥、バークを燃焼して得られた灰をサイクロンで分級した。得られた微粉を更に篩で分級し、74μmパス品(平均粒径19μm:SALD−2000J(島津製作所製)による分析)をボイラーばいじんAとした。
【0024】
木くずと石炭を燃焼して得られた灰をサイクロンで分級した。得られた微粉を更に篩で分級し、74μmパス品(平均粒径21μm:SALD−2000J(島津製作所製)による分析))をボイラーばいじんBとした。
【0025】
蛍光X線分析装置EDX−800HS(島津製作所製)を用いて、ボイラーばいじんA、およびボイラーばいじんBの成分分析を行った。
【0026】
ボイラーばいじんAおよびボイラーばいじんBのカルシウム含有率は、CaO換算値でそれぞれ46.0%および11.2%であった。
【0027】
高出力X線回析装置RINT−TTR(リガク製)による、ボイラーばいじんAとボイラーばいじんBのXRD分析結果を図1に示した。図1に示す通り、ボイラーばいじんAは、酸化カルシウムおよび硫酸カルシウム無水物を含んでいた。ボイラーばいじんBは、硫酸カルシウム無水物を含むものの、酸化カルシウムを含んでいなかった。
【0028】
〔ボイラーばいじんAおよびボイラーばいじんBによるゴム補強性(硬度)への効果の比較〕
ゴム配合物の作成方法
表2に示す配合率を用いてロールで混練し、金型に入れて160℃で加硫し、ゴム配合物を作成した。
【0029】
(実施例5と6)
ゴム配合物の作成において、ゴム配合物用充填剤として、従来品の軽質炭酸カルシウムを用いたゴム配合物を比較例1とした。同様に、ボイラーばいじんAおよびボイラーばいじんBを用いたゴム配合物を実施例5および6とした。
【0030】
得られたゴム配合物の硬度を硬度計により測定し、その結果を表2に示した。
【0031】
【表2】
【0032】
上記の結果から明らかなように、充填剤としてボイラーばいじんAを配合したゴム配合物は、従来品よりも硬度が高かった。また、ボイラーばいじんBを配合したゴム配合物の硬度は従来品と同程度であった。
このことは、ボイラーばいじんAに含まれるカルシウム酸化物の量が、ボイラーばいじんBに含まれるカルシウム酸化物の量よりも多いことによるものである。
【0033】
ここで、配合物用充填剤を下記のような目的及び方法で、表面改質する場合がある。これらの改質を行った場合であっても、上述のように充填剤の成分が同一であるならば、本発明の権利範囲に該当し得る。
【0034】
すなわち、表面改質の目的としては、二次凝集の防止、マトリックスとの濡れ性の向上、異種の機能性を付与すること、微量有害元素のマスキングを行う、低吸油量化、コンパウンドの機械的強度・耐水・耐油・対候性・耐薬品・表面光沢の向上、結晶粒子の成長抑制、pHの調整、金属粉末の酸化防止、流動性の改良、フィラー表面の保護が一例としてあげられる。
【0035】
また、表面改質の方法としては、脂肪酸、ワックス、非イオン系界面活性剤などを使用したコーティングによる改質、シラン系、チタネート系、リン酸系のカップリング剤などを使用したトポケミカルな改質、粉砕・摩砕による未反応表面の反応促進などのメカノケミカルな改質、メカノフュージョン法、高速気流中衝撃法などによるカプセル化による改質、コロナ放電、高周波放電、グロー放電によって得られるプラズマを使用した高エネルギーによる改質、水溶性のアルミニウム塩、ケイ酸塩、チタン塩等を添加して中和する沈殿反応による改質が一例としてあげられる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上記載したごとく、本発明によれば、カルシウム酸化物、カルシウム硫酸塩から選択される1以上を含むことを特徴とするゴム配合物用充填剤を利用することができる。また、本願ゴム配合物用充填剤として、廃棄物又は当該廃棄物の焼成物を利用することができる。これにより、ゴム配合物用充填剤を安価で提供することが可能になり、さらに、天然資源使用量の削減、および、最終処分場の延命に貢献することができる。
【符号の説明】
【0037】
a1およびa2 : 硫酸カルシウム無水物の主なピーク
b1 : CaOの主なピーク
【要約】
【課題】従来品(軽質炭酸カルシウム)と同等以上のゴムの補強性を持ち、安価なゴム配合物用充填剤を提供する。
【解決手段】本発明は、従来品と同等以上のゴム補強効果を有する、カルシウム酸化物、カルシウム硫酸塩から選択される1以上を含む新規のゴム配合物用充填剤に関する。
【選択図】なし
図1