特許第6209679号(P6209679)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許62096792成分のコードが埋め込まれたベルト、およびパワートランスミッションベルトの形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6209679
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】2成分のコードが埋め込まれたベルト、およびパワートランスミッションベルトの形成方法
(51)【国際特許分類】
   F16G 1/08 20060101AFI20170925BHJP
   D07B 1/04 20060101ALI20170925BHJP
   D02G 3/04 20060101ALI20170925BHJP
   D02G 3/36 20060101ALI20170925BHJP
   B29D 29/00 20060101ALI20170925BHJP
   F16G 5/20 20060101ALN20170925BHJP
【FI】
   F16G1/08 A
   D07B1/04
   D02G3/04
   D02G3/36
   B29D29/00
   !F16G5/20 A
【請求項の数】26
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-528181(P2016-528181)
(86)(22)【出願日】2014年11月7日
(65)【公表番号】特表2016-539287(P2016-539287A)
(43)【公表日】2016年12月15日
(86)【国際出願番号】US2014064502
(87)【国際公開番号】WO2015069989
(87)【国際公開日】20150514
【審査請求日】2016年6月21日
(31)【優先権主張番号】14/075,111
(32)【優先日】2013年11月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504005091
【氏名又は名称】ゲイツ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ショウン クシャン
(72)【発明者】
【氏名】オチョア,チャーリー
(72)【発明者】
【氏名】ホール,ランス
(72)【発明者】
【氏名】チョン,タエ ヒー
【審査官】 塚原 一久
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−206029(JP,A)
【文献】 特開2003−240056(JP,A)
【文献】 実開昭63−160153(JP,U)
【文献】 特公昭46−033687(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16G 1/08、5/20
D02G 3/04、3/36
D07B 1/04
B29D 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に延び、かつ、引張成分と犠牲成分の二つの成分を有する、ベルトに埋め込まれた引張コードを備えるベルト。
【請求項2】
前記犠牲成分は、本質的にベルトの破断強度に有意な寄与を提供せず、また、前記引張成分は、ベルトの長手方向の引張補強のほとんどを提供する、請求項1に記載のベルト。
【請求項3】
前記犠牲成分は、不連続な複数のセグメントから構成される請求項2に記載のベルト。
【請求項4】
前記犠牲成分は、複数のセグメントに分割された、ヤーンまたはモノフィラメントから構成される、請求項3のベルト。
【請求項5】
前記引張コードは、コアとカバーを有する覆われたヤーンであって、前記コアとして前記犠牲成分を有し、前記カバーとして前記引張成分を有する、請求項4に記載のベルト。
【請求項6】
前記犠牲成分は、結果的に、弱体化した複数のセクションで引張コード全体に長手方向に分布する、降伏物質からなる請求項2のベルト。
【請求項7】
前記犠牲成分が溶融材料からなる請求項2のベルト。
【請求項8】
前記2つの成分がヤーンを備え、前記引張成分は高弾性率繊維の1以上の連続的なフィラメントヤーンを備え、前記犠牲成分は同様の長さの複数のセグメントに分割されて引張コード全体に縦方向に分布する、第2の糸を備える、請求項1のベルト。
【請求項9】
記引張成分の破断点伸長は、前記犠牲成分の少なくとも2倍である請求項1に記載のベルト。
【請求項10】
引張コード全体のボリュームに対して前記犠牲成分の体積が20%以下である請求項1に記載のベルト。
【請求項11】
前記ベルトの成形温度において、前記犠牲成分の破断点伸長は約5%以下である請求項1に記載のベルト。
【請求項12】
引張成分および犠牲成分の2つの成分を備え、前記犠牲成分は同様の長さの複数のセグメントに分割されて引張コード全体に長手方向に分布する引張コード。
【請求項13】
前記犠牲成分は、犠牲的な成分が前記犠牲的な成分の破断点伸長を超えた結果として生じ、また、前記引張成分の前駆体コードの伸長の結果である請求項12の引張コード。
【請求項14】
コアとカバーを備え、前記犠牲成分をコアとして、前記引張成分を前記カバーとして有する、被覆されたヤーンの構成を有する請求項13の引張コード。
【請求項15】
前記引張成分はポリエステルであり、前記犠牲成分はアラミドまたはガラスである、請求項12の前記引張コード。
【請求項16】
前記引張成分はアラミドであり、前記犠牲成分はアラミドまたはガラスであることを特徴とする請求項12に記載の引張コード。
【請求項17】
前記犠牲成分は不連続な複数のセグメントからなる請求項12の引張コード。
【請求項18】
拡張可能な円筒状の型上で、かつ剛性の円筒形シェル内において、ベルト材料を配置し、
半径方向外側に型を拡大し、そして前記剛性のシェルに接触させて前記材料を押圧し、
ベルトスリーブを成形するための温度において前記材料を硬化し、
前記型およびシェルからベルトスリーブを除去し、
前記ベルト材料は、2成分引張コードを備え、引張成分および犠牲成分を有し、かつ、前記拡張および硬化ステップのうち少なくとも一つのステップは、前記コードの前記犠牲成分を犠牲にすることを含む方法。
【請求項19】
前記配置、拡張、および硬化のステップの前に、前記犠牲成分を犠牲にすることなく、処理張力および処理温度下で二成分引張コードを処理することをさらに備える請求項18に記載の方法。
【請求項20】
犠牲成分は、前記処理張力および温度における約2%以下の伸長および前記処理張力よりも少なくとも10%大きい、前記処理温度における降伏強度および引張強度を有する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記配置は、犠牲成分を犠牲にすることのない巻き取り張力下で、2成分引張コードが前記型のまわりをらせん状に巻くことを含む請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記犠牲成分は、前記巻き取り張力における約2%以下の伸長および前記巻取張力よりも少なくとも10%大きい、降伏強度および引張強度を有する請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記拡張は、前記犠牲成分が破壊または降伏によって前記犠牲となる、前記引張コードを破断点伸長または降伏点よりも引張する請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記犠牲成分の伸縮性は、前記成形温度において約5%以下である請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記犠牲成分は、前記成形温度より低い、溶融により犠牲となる融点を有する請求項18に記載の方法。
【請求項26】
前記拡張は前記型を半径の約3%から10%までの範囲で拡張する請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にエンドレス・パワートランスミッション・ベルトの引張コード、より詳しくは、処理中にかなりの程度コード拡張を必要とするベルト成形プロセスにおける有用な2成分コードについて、また特に、ベルト成形時および結果として生じる「壊れる」犠牲的な成分を含む引張コードに関する。
【背景技術】
【0002】
エンドレス・パワートランスミッション・ベルトは従来良く知られている。一般的なベルトタイプのいくつかは、平ベルト、Vベルト、マルチリブドベルト、及び歯付きベルトが含まれる。例えば米国特許第3078206号明細書で開示されているようなエンドレスベルトは、多くの場合、円筒形のマンドレルに様々なエラストマ層、引張成分、および布層を適用することによって構築されており、半径方向内側の圧力下における熱をともなうシェル又はバッグでの硬化又は加硫を行う。構築プロセスは、直立および反転プロセスを含む。使用される方法に依存して、例えば、反転、切断、研削、およびプロファイリングのように様々な仕上げのステップが必要になることがある。ベルト・プロファイルは、成形後に切削加工又は研削加工、又は加硫の際に成形することによって形成することができる。他の構築プロセスは、シェルやバッグへ様々な層状材料を圧縮するために、拡張形成やマンドレルを使用する。すなわち、熱による半径方向外向きの圧力で硬化させる。このようなプロセスは、例えば米国特許出願公開第2010/0173740号明細書、米国特許第6609990号明細書、特開2004−174772号公報、特開2004−251402号公報で開示されている。成形されたベルトは異形マンドレルまたは異形シェルやバッグを利用することができる。米国特許第4184822号明細書は、ベルト本体に対して内向きと外向きの圧力の両方を適用することが開示されている。これらの手法はそれぞれ長所と短所がある。
【発明の概要】
【0003】
剛性、異形シェルに半径方向外側のベルト材料のスラブを押圧することによって形成された外形を有する成形ベルトの場合には、引張成分はスラブ材層と移動、拡張する必要があり、また、エラストマ層を通って移動することができる必要があり、それは引張成分下で拡張形成またはマンドレルに適用される。いくつかのケースでは、特に引張成分が伸張するために必要とされる場合、成形時の膨張量は、引張成分に有害であり得る。他のケースでは特に、引張成分が伸縮できない場合、拡張は、完成したベルトにおいて、拡大されたスラブ内の過剰な引張コードの動きや、貧弱なコードアライメントなどの問題につながる。
【0004】
改良された引張成分の構築と拡張形成やマンドレルにエンドレスベルトを成形するための手法が必要とされる。
【0005】
本発明は、改良された引張成分の構築および拡張形成における形成ベルトのための方法を提供するシステムおよび方法、および結果として得られるベルトに向けられている。
【0006】
本発明は、強化エンドレスベルト用の2成分引張コードに向けられている。前駆体コードは、ベルトの処理の間に犠牲となる犠牲成分および引張成分を含む。
【0007】
本発明はまた、このような2成分コード、すなわち引張成分および犠牲成分、を有するベルトに向けられている。コードの犠牲成分は、ベルト処理時の破壊の結果としての複数の不連続なセグメントであってもよい。犠牲成分は複数の位置において降伏してもよく、また複数の弱くなった部分を有してもよい。犠牲成分は、ベルトの処理時に溶融してもよい。
【0008】
本発明はまた、2成分コードが他のベルト材料に沿って拡張マンドレルに適用され、次に、円筒状のシェルの中に径方向外側に向けて拡張され、結果として、1成分が拡張時に完全性を失う方法に向けられている。完全性の喪失は、拡張のテンシル引張下の降伏または破壊、溶融、またはこれらの組み合わせによるものであってもよい。
【0009】
上記は、以下の本発明の詳細な説明がより良く理解されるために、むしろ広く本発明の特徴および技術的利点を概説した。本発明の特許請求の範囲の主題を形成する、本発明のさらなる特徴および利点は、以下に説明される。開示された概念および特定の実施例は、本発明の同じ目的を実行するための他の構造を修正または設計するための基礎として容易に利用することができることは、当業者によって理解されるべきである。また、同等な構成が添付の特許請求の範囲に記載されたような本発明の範囲から逸脱しないことは、当業者によって理解されるべきである。本発明の特徴であると考え得る新規な特徴は、その構成及び実施方法の両方について、さらなる目的および利点と共に、添付の図面と関連して考慮されるとき、以下の説明からより良く理解される。しかしながら、各図面は単に例示および説明の目的のために提供され、本発明の制限の定義として意図されていないことが、明確に理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
添付図面は、明細書に組み込まれて明細書の一部を形成し、明細書において数字等は部品等を指定して本発明の実施形態を説明し、また、記載とともに本発明の本質の説明を提供する。
【0011】
図1】本発明の実施形態によって構成されたマルチVベルトの一部の断面図である。
【0012】
図2】本発明の実施形態にかかる加工用の成形装置を示す図である。
【0013】
図3】本発明の実施形態にかかるマルチVベルトの作成のためのプロセスの一部の断面図である。
【0014】
図4図2のプロセスの他の部分を示す断面図である。
【0015】
図5】成形プロセスパラメータと成形ベルトパラメータとの典型的な関係を示すグラフである。
【0016】
図6】本発明の実施形態による、加工前の本発明の実施形態に係る引張コードの部分的な断片の側面図および断面図である。
【0017】
図7】本発明の実施形態による、加工後の図5の引張コードの部分的な断片の側面図である。
【0018】
図8】本発明の実施形態による、加工前の本発明の他の実施形態に係る引張コードの部分的な断片の側面図および断面図である。
【0019】
図9】本発明の実施形態による、加工後の図8の引張コードの部分的な断片の側面図である。
【0020】
図10】本発明の他の実施形態による、加工後の図8の引張コードの部分的な断片の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
ベルト強化のための改良された引張成分は2つの成分を含む。引張成分は好ましくは2つの材料成分を備える引張コードである。第1の構成要素は、完成したベルト製品において使用されるために、適切な強度、弾性率、および柔軟性とともに選択された引張コード材料および構成である。「コード」は、2又は2以上の糸(ヤーン)を一緒により合わせる製品、つまり層状の糸を意味する。「糸(ヤーン)」は、コード内の使用に適した形状の材料、ファイバー、またはフィラメントの連続的なより糸を意味する。「コード材料」は、天然、合成ポリマー、または無機化学物質を意味し、これらから引張コードのファイバー、フィラメントが構成される。コードまたはヤーンの「構成」は、プライング、配線(キャブリング)、より合わせ(ツイスティング)、ヤーンの大きさ等のような、コードのファイバーおよび材料の物理的な配置を意味する。第1の構成要素はまた、拡張形成における形成過程において使用されるために十分な伸縮性を有する。「伸縮性」は、コードへの永続的な損傷または欠陥を除いて起こり得る、コード、ヤーン、または材料の伸長量を意味する。したがって、伸縮性は物質的な可逆伸長を意味する。ここでの「伸長性」は、コードまたは他の材料によって起こる、つまり加工段階の間の伸長の程度を意味する。本文中において、コードまたはコード成分の「欠陥」はコード材料の破壊、たわみや曲がり(イールディング)、または完全性、強度、もしくは伸縮性の欠如をもたらす同様の影響の出現を意味する。破断点(ブレークポイント)は、「破断点伸長」(「Eb%」)によって定義され、また不可逆である。第2の構成要素は、ベルト形成工程の拡張および力に無傷で耐えることが出来ないように、第1の構成要素よりも高い弾性率であるが相対的に弱く、および/または低い伸縮性であり、つまり第2の構成要素は形成の間に「破壊(フェイル)」される。しかしながら、第2の構成要素は、例えばねじり、処理(トリート)、屈曲を含む形成過程前のすべてのコード加工段階に耐えるように十分に丈夫である。したがって、第2の構成要素は、形成工程の前のすべての加工段階の間、第1の構成要素の伸縮を最小限にするが、形成段階の間は犠牲になる。結果として生じるベルトは、支配的にまたは本質的に第1の構成要素だけの引張特性を有してもよい。したがって、「前駆体(プレカーサー)」の語は、ベルト形成工程の前、すなわち犠牲にされてきた第2の構成要素が犠牲になる前の引張コードを指す。「ベルトの引張コード」は、最終的、つまり犠牲成分が形成過程において犠牲にされた後のベルトを指す。「型(モールド)」および「型(マンドレル)」の語はしばしば交換自在に用いられるが、一実施形態において「拡張型(エクスパンダブル・モールド)」の語は、拡張自在なゴムパッドを上面に備える硬い「マンドレル(マンドレル)」を含む可能性がある、組み立てを指すために用いられる。しかしながら、通常本発明の実施に際して、いかなる種類の拡張型(エクスパンダブル・モールド)または型(マンドレル)が使用されてもよい。
【0022】
本発明の引張コードは、2又は2以上の異なるヤーンの種類を意味するコンビネーション・ヤーンまたは複合糸であってもよい。引張コードの2つの構成要素は同一の材料から形成されていてもよいが、要求される異なる特性をもたらすような、異なる構成を有する。前駆体コードは、犠牲成分をコアとし、また、引張成分をカバーとするとともに、コア挿入または被覆されたヤーンであってもよい。多くの他の実施形態が可能であり、また以下において検討されるであろう。前駆体コードは、周知の望ましい接着、処理、または処理過程を用いて、サイジング、接着、または上塗り等の処理がなされてもよい。「ツイスト・マルチプライヤ」または「TM」の語は、ヤーンまたはコードのねじりの度合いを表し、またこれは糸番手の平方根に対する1インチ毎の回転率(TPI)として定義される。糸番手は、9000メートルあたりのグラムにおける、エンド・デニールに対する5315の割合として定義される。したがって、以下の等式はツイスト・マルチプライヤを定義する。
【0023】
TM=TPI/√(5315/デニール)
【0024】
図1は、ベルトの長手方向に対して垂直な平面におけるVリブベルトの実施形態の断面図である。Vリブベルトの構造は図1を参照して説明されてもよい。Vリブベルト10は、マルチリブ構造として形成されるリブラバー層11、中に引張コード12が埋め込まれる接着ゴム層13、および接着ゴム層13の背面に対して接合される裏地14を含む。さらに、リブラバー層11の表面は、不織布、織物、または編地のような織物15に覆われてもよい。当然のことながら、本発明に係るVリブベルトは、要望どおりゴムもしくは織物の層をより少なくまたはより多く有してもよい。
【0025】
織物14および/または15は、十分な伸縮性を有する材料から選択されてもよい。さらに、材料は、リブおよび/または背面に要求される性能を考慮して、十分な耐久性を提供するように選択されてもよい(つまり、耐摩耗性、耐熱性、摩擦係数の安定性、防水性、およびスリップとノイズ特性)。これとともに、織物14および/または15は、性能を向上させるために、ゴム引き、または後処理されてもよく、また、後処理は温水もしくは化学物質での洗浄、熱処理、型打ち、接着処理、および積層を含む。接着処理に関しては、織物のゴム材料に対する接着性を向上させるため、またはアプリケーションによって要求される性能特性を得るために、アラビア・ゴム、RFLのような接着剤、ゴム、および/または樹脂(例えば、フェノールまたはフッソ樹脂)を用いる追加処理が、織物に適用されてもよい。しかしながら、このような追加処理が適用されない場合がある。
【0026】
形成処理の一実施形態が適用されている、Vリブベルト10の製造過程は、次に図2〜4を参照して説明されるだろう。図2は、本実施形態におけるVリブベルト10の形成のための、ゴムパッド22(内側の型)とシェル21(外側の型)とともにマンドレル20を概略的に示す斜視図である。
【0027】
図3および図4は、拡大された、マンドレル、ゴムパッド、およびシェルを径方向に沿った部分断面図であり、ベルト材料の配置に沿って、これらの配置を概略的に図示している。図3は、モールドの拡張前のシェルにおけるマンドレル上のベルト材料の配置を図示する。図4は、硫化および硬化の間の拡張後の配置を示す。
【0028】
円筒形状のマンドレル20の円周の外部のまわりにゴムパッド22が配置され、拡張型(エクスパンダブル・モールド)を形成し、またベルト材料スラブ23がゴムパッド22の外側の回りに配置される。「スラブ」の語は、硬化前の堆積されているすべてのベルト材料をいい、裏地14、接着ゴム層13を形成するための接着ゴム・マトリクス、無傷または前駆体引張コード12A、リブラバー層11を形成するためのリブラバー・マトリクス、および織物15を含んでもよい。前駆体コード12Aはマンドレル上でらせん状に屈曲してもよく、また、通常コードの強度よりも十分に小さい一定の屈曲張力においてなされるが、これはある程度の屈曲中のコードの延長(伸長)をもたらす。任意的な織物15は、管状であり、縫い目がないかまたは縫い目のある織物のいずれでもよい。しかしながら、管状でない織物もまた織物15の屈曲によって、マンドレル20の周囲に両端が重なるか、共に接合されるか、またはごく接近した状態で使用される可能性がある。マンドレル20は、その上にベルト材料スラブ23が設けられて、円筒状シェル21内に同軸的に取り付けられる。交互に、スラブ23は第1のマンドレル上に組み立てられることが可能であり、次に形成のために拡張型(エクスパンダブル・モールド)に移動される。交互に、スラブ23は第1のマンドレル上に組み立てられることが可能であり、そしてシェル21内に移動され、その後、形成のために拡張型が挿入されてもよい。このとき、図3に示されるように、クリアランスCはスラブ23とシェル21の内側の円周との間(すなわち、織物15とシェル21との間)に置かれる。
【0029】
シェル21はVリブベルトの形状の複数の溝21Aを内側の円周上に有しており、溝は円周方向において整列され、また、Vリブベルト10のマルチリブベルトの構造の形状に適応している。横断歯、らせん歯、ノッチ、または平坦またはざらつきのある表面のように、代わりに他の種類のベルト形状が使用されてもよい。硬化処理において、ゴムパッド22が径方向の外の方に拡張されるように、ゴムパッド22とマンドレル20との間で、空気、ニトロジェン、オイル、水、または蒸気のような、あらゆる適切な温度調整がされた液状流体に高圧がかけられてもよい。結果として、ベルト材料23は径方向外側に拡張され、また、これによってシェル21の内周に対して押圧される。この処理において、図4に示されるように、ベルト材料23のリブラバー層11とともに織物15は変形され、そして次に、シェル21の内周上に形成された溝21A内に押し込まれ、これによって、マルチリブ構造の形成が可能となる。さらに、織物15とリブラバー層11の表面とが合成されるように、織物15はリブラバー層11に対して、接触するように押圧されるかまたは接合される。さらに、この工程の間、引張層は径方向の外側に伸長され、したがって、コード12は長手方向に伸長される。初期の成形直径、すなわちマンドレルとゴムパッドの合計は、図3においてD0として示され、最終的な形成直径は図4においてDfとして示される。したがって、型(パッド)の径方向の拡張は、Δr=1/2(Df〜D0)として示される。
【0030】
したがって、ベルト形成プロセスは、次の工程において達成されてもよい。引張コードを含むマンドレルまわりのベルト材料を提供し、マンドレル(ベルト材料がこの上に取り付けられる)とともにシェルの内側に取り付けられて、シェルの内周に対してベルト材料を拡張し、適切な温度および/または圧力下で硬化処理が行われる間シェルの内側に対して材料を押し付ける。そして、硬化したベルトスラブは取り除かれて最適な幅の完成したベルトに切られてもよい。シェルはベルトの望ましい形状に適した内形を有してもよい。例えば、シェルは円周に複数のV溝を有してもよく、これによって、複数のVリブベルト10を生成することが出来る。
【0031】
このベルト製造工程の説明とともに、コード拡張に関連する問題がより詳細に説明される。上述の過程において、引張コード層は径方向外側に拡張され、これによりコード円筒状の型の周方向、すなわち、ベルトの長手方向に伸長することができる。伸長の量はまた、リブ構造に適合するためにスラブ−シェルのクリアランスCよりも大きくなければならない。クリアランスCは、ベルト材料および/またはマンドレルを材料のスラブとともにシェル内に挿入するために要求される。しかしながら、クリアランスCは型の大きさにかかわらず実質的に固定値であってもよく、また、形成の間の材料の伸長を最小限にするために、クリアランスCを実際と同じくらい小さくすることが望まれる。
【0032】
拡張型(またはゴムパッド)によって課される伸長レベルは、パッド周囲に対する拡張比率M%として定義され、また、M%=(Df−D0)/D0x100%=2Δr/D0x100%として算出される。コード抵抗は、接着ゴム層13および/または裏地14の下層の一部を圧縮、または引き込みもしくは貫通することによって引き起こされるので、コード12によって起こされる実際のコード伸長レベルはパッド伸長よりも少なくてもよい。
【0033】
超大型半径型を有する超長ベルトにとって、M%は破断点伸長であるコードのEb%よりも十分に少ない傾向にあるだろう。したがって、コードは大型の形成過程で存続する可能性がある。しかし、いくらかの、高い弾性率、低い伸長の引張コード用の、ベルト長BLよりも短いベルトを生成する特定の状況において重大な問題が生じる。短ベルト用には、十分に小さい形成直径D0であるが、クリアランスCは実質的に同一であり、かつ型の拡張Δrは同一に固定される。したがって、型の拡張割合M%および要求されるコード伸長は、形成の間コードに重大な損傷をもたらす程度、十分に大きい可能性があり、結果として、曲げ強度の耐用年数がより短くなり、ベルト引張強度の減少などが生じる。実際に、いくつかのベルトでは、M%は破断点伸長であるコードのE%に近いかまたは大きくさえなる可能性があり、結果としてコードまたは繊維の破損を生じる。さらに、形成の間の伸長の量はコード処理伸長T%およびコード屈曲伸長W%に加えられ、製造の間にコードに課される全体の伸長は大きくなる。本願発明は効率的にコード処理伸長T%および屈曲伸長W%を減少させ、そして、形成過程の実用的な範囲を、本発明なしで可能なベルトよりも小さなベルトに拡張する。
【0034】
いくつかの典型的な数値例は、問題のさらなる説明を提供し、また本願発明によって提供される解決策を説明する。図5を参照すると、グラフは(CおよびΔrが固定と仮定した)比率として形成拡張M%とベルト長BLとの典型的な関係を示す。基本的には、ベルト長が増加するにつれて、上述のような形成処理によって与えられる伸長率は減少する。したがって、M%はBLに応じ、また、ベルトの材料にかかわらず、2または3%から8または10%の範囲であってもよい。典型的な加工ポリエステルコードでは、約10%〜13%のE%である破断点伸長が存在する可能性があり、コードがE%の約半分または約5〜6%または好ましくはより少ない値、を超えて伸長するのを避けることが望ましい。図5を参照すると、このようなポリエステルコードに対して、この過程によって生成され得る実際のベルト長は、約1200ミリメートルかそれより長いことが見出される。一方、典型的な加工されたパラ・アラミドコードに対して、たったの約4%〜5%のE%である破断点伸長が存在する可能性があり、コードがE%の約半分または約2.5%またはより少ない値、を超えて伸長するのを避けることが望ましい。図5を参照すると、このようなアラミドコードに対して、この過程によって生成され得る実際のベルト長は2300ミリメートルまたはそれよりも長いものに厳しく限定されるであろう。
【0035】
上述の過程には第2の側面があり、結果として生じるベルトにおける第2の問題につながる。コードのE%に対して処理のM%が相対的に大きいほど、およびコード弾性率が大きいほど、拡張処理の間のコードの伸長耐性が高くなるであろう。コードの伸長耐性が大きいほど、コードがゴムを通して、また裏地に向かって、または裏地の中に引き戻すことにより、ベルトは悪いコードライン位置になる傾向がある。悪いコードライン位置は、例えばコードの疲労および/またはコードの下層材料の亀裂による、短いベルト寿命につながる。
【0036】
上記の問題に対する部分的な解決策は、コード構造および/または材料(複数可)の選択によって引張コード率(係数)を減少させおよび/またはコードのE%を増加させることを含んでもよい。これを達成するためのコード構造の使用選択の一例は、コードねじれレベルを増加させることである。これを達成するための使用材料の選択の一例は、コードを低弾性率糸またはエラストマ糸でねじることである。これらのアプローチは、多少コード抵抗を低減するのに役立ち、また、成形時のE%超過危険性を減らすことが可能である。しかし、実際には、コード処理及び屈曲ステップは定張力工程であり、これは、コード弾性率がねじれ又は材料の選択によって低減される時、コード処理または屈曲時におけるコードの伸張または伸縮の量が増加し続けることとなる。その結果、金型のその後の伸張に対し、これらの残留物が不十分な伸縮性を和らげる。
【0037】
したがって、上記問題のよりよい解決策は、コード処理または屈曲時におけるコードの伸縮性を維持する第2成分を引張コードに添加することにより、その後の成形工程の間にコードに低伸縮抵抗性をもたせることを含む。引張コードの第1成分、ゆえに主要引張コード材料は、完成したベルトのコードに必要なすべての機能特性を提供する。コードに添加された第2成分は前駆体コードの犠牲成分であり、完成したベルトにおいて(例えば破壊することによって)「犠牲」にされている。第2の成分は、以下の4つの物理的要件を満たしている必要がある。
【0038】
(1)ベルト形成工程前に第2成分の強度は前駆体コードに適用されるピーク張力よりも高くなければならない。すなわち、前駆体コードがベルトスラブを構築するための螺旋状マンドレルにらせん状にされた時、第2成分の引張または降伏力はコード処理ステップ(結合剤または接着剤などのアプリケーション)時、又は屈曲ステップ時の張力よりも大きくなければならない。好ましくは、第2成分の強度はコード処理および/または屈曲時の最も強い力よりも少なくとも10%高い。必要な成分の強さは維持されるか、または関連するプロセスの温度で測定されるべきである。例えば、コード処理は乾燥および/または最大180〜220℃での硬化を含む。好ましくは、第2成分もまた、極めて低い破断点伸長を有する。この要件の結果として、ベルト形成工程前にコード処理及び屈曲ステップ時に第2成分は第1成分の最大伸縮性を維持する。第2成分は処理/屈曲ステップ時に可能な限り多くの張力を持ち越す。
【0039】
(2)破断時の第2成分の強度と伸長は、形成温度を考慮し、成形工程の間に発生する力と拡張よりもはるかに小さくなければならない。この要件の結果として、成形膨張工程中に引張コードの第2成分は容易に壊れ、降伏し、または何らかの形で失われる。第2成分の強度が高すぎ、E%が低い場合(すなわち、それは非常に高い弾性率を有する)、金型の拡大が防止され、リブ形成は完全ではない可能性がある。また、上述したように、金型の伸張が防止されていない場合でも、伸張に高すぎる抵抗はコードライン位置の問題を引き起こすことがある。第2成分の強度と伸縮性の適切な選択により、成形伸張中に第2成分は失われ、すなわち犠牲になり、コードライン問題を防ぐための伸張に対するコード抵抗の十分な低減をもたらす。成形温度が要求(1)で述べたコード処理温度よりも高いとき、及び融点または軟化温度の間のとき、第2成分の欠陥は壊すことが好ましく、しかし、そのかわりに降伏を引き起こす又は成形温度で融解してもよい。前駆体コードの第2成分はゆえに犠牲成分であり、成形工程中にその強度または完全性を失い、したがって、最終的なベルトの特性に最小の寄与を有することができる。したがって、引張成分はベルトの伸張強度の大部分または全てを提供する。一実施形態において、第2成分のE%は、5%より小さく、2%から3%または1%から4%の範囲であってもよく、他の実施形態では、第1又は引張成分のE%は、第2または犠牲成分のそれよりも2倍またはそれよりも大きい。
【0040】
(3)上記要件(1)を満たしつつ、第2成分破壊強度はできるだけ低くあるべきである。これはコードライン位置に対し、第2成分の潜在的な影響を最小限に抑えることができる。(2)及び(3)の要求の結果、第2コード成分の最終的なベルト強度への寄与は最小又は全く無く、ベルト弾性率に小さな影響を与えるだけである。長手方向の補強、すなわち、ベルトの引張特性は、第1のコード成分によって支配される。
【0041】
(4)最終的なコード直径に非常に限定的な影響を持つように、第2成分は直径又は体積を小さくするべきである。このように、第2成分はコード曲げ疲労に悪影響を及ぼさないはずである。第2成分は、総コード容積の10〜20%以下、又は10%より小さく、または15%より小さく、または20%より小さい範囲であってもよい。約17%の体積分率以上で、第2成分は、コードの中央に存在する芯糸として、ねじって前駆体コードにすることが困難になる可能性があることが分かっている。
【0042】
図6および図7は、本発明の成形膨張処理前および後の引張コードの一実施形態をそれぞれ示す。前駆体コード12Aのコア挿入実施形態は、犠牲第2成分、すなわち芯糸32に巻きつき又は覆っている3つのねじれた層状の糸の束31である、第1成分すなわちカバーを含む。カバーパイル31は、ポリエステル、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ナイロン、ガラス、炭素、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ(p−フェニレン−2,6−ベンゾビスオキサゾール)(PBO)(パラ−アラミド、メタ−アラミド、またはアラミドのコポリマーを含む)アラミド等のような最終的なベルトの製品に適した任意の紐材であってもよい。芯糸32は、好ましくは、アラミド、ポリエステル、ガラス、炭素、PBOなどのような、高弾性率、低い伸長材料である。犠牲芯糸32は、破断伸長を最小限に抑えるために、ロー・ツイストまたはゼロ・ツイストが望ましく、上記強度要件とボリューム要件を満たすために適切な直径を選ぶことが好ましい。犠牲成分32はモノフィラメント、糸、リボン、チューブラーフィルムなどの形態であってもよい。各成分が上記要求を満たしている限り、各成分は必ずしもひとつの材料または繊維タイプから作られる必要はないことを認識すべきである。
【0043】
図7は形成拡張工程において、伸長後のベルトに現れる最終引張コード12を表している。犠牲芯糸32´は最終的に引張コードのあらゆる場所で長手方向に分布した多数の断片に分割される。これらの破片はやや均一の断片、又は大体均一又はやや長さにむらのある断片でもよい。不連続な断片は、依然として損傷を受けていない第1成分31の強度又は伸縮性に最小限の寄与を与える。
【0044】
図8は、成形拡張処理前の本発明の前駆体引張コードの他の実施形態を示している。前駆体コードの実施例82Aは第1実施形態(12A)におけるような3つのねじれた層状の糸の束31の第1成分を含む。しかし、犠牲第2成分32は、ねじれた層31に挿入されていないが、第1成分と一緒により合わせ及び/又は取り付けられている。層31と第2成分32の材料及び構成は第1実施形態の場合と同様に選択することができる。第2成分32は第1成分31に接着又は接着固定されてもよく、又は成分32は糸(スレッド)34でラップすることにより成分31に取り付けられもよく、またこの糸は例えば非常に小さな綿の糸であってもよい。第2成分は、モノフィラメント、糸、リボン、又は第1成分のツイストバンドルを取り囲むことができるチューブ状のフィルムの形態であってもよい。
【0045】
図9は成形拡張工程における前駆体コード82A伸長後のベルトに現れる、最終引張コード82を示している。犠牲第2成分糸32´´は最終的に大体均一又はやや長さにむらのある断片に分割されるが、依然として損傷を受けていない第1成分31の強度又は伸縮性に最小限の寄与を与える。
【0046】
図10は犠牲的損傷モードの他の種類はどのようなものかを示している。図10ではベルト内において最終的な引張コード84は成形拡張過程で82Aのように前駆体コードを伸長することにより、降伏していることが示されている。犠牲となった第2成分の糸32´´は、最終的に複数の場所にネックダウンしてしまうため、降伏した材料の大幅に弱体化したおおよそ均一又は長さがまちまちな断片の大部分の原因となるが、降伏前の損傷のない第1成分31の伸縮性、強度に対しわずかな影響しか与えない。溶融によって壊れた犠牲第2成分は同じような外形を有し、または溶融によってはるかに変形しているかもしれない。犠牲的溶融は第1成分の伸縮を解除し、成形プロセスの完了の後、溶融した第2の成分が再固化することができ、従って、溶融材料は、実際には、最終的なベルトの引張特性に大きく貢献している可能性がある。
【0047】
以下の実施例では、アプリケーション、ユーティリティおよび本発明の利点を示す。比較例は「比較例.」と略示される。
【0048】
シリーズ例A−ポリエステルコード
【0049】
例の第1のシリーズのためのベースコードは、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィラメントである。典型的に処理されたポリエステルコードは約10−13%の破断点伸びを有する。従って、使用されるプロセスは、コードの損傷を防止するために、約6%の伸長を超えるべきではない。図5は、1200ミリメートルよりも長いベルトが拡張マンドレルプロセスにおいて問題とならない可能性を示唆している。しかしながら、ベルト成形時の伸びは6から8パーセントに達することができるので、1000ミリメートルより小さいベルトはコード損傷の危険性が高い。マンドレル上のコードの処理及び屈曲を含むコードの処理は、伸縮性のいくつかを使用することでさらに成形時のコードの損傷の危険性を増加させる。コードの伸長はポリエステル糸を撚り合わせて増加させることができる。撚りレベルが高くなればなるほど、破断時の伸長性と伸縮率が高くなるが、弾性率は低くなる。コードの処理中に弾性率が低くなる程、より多くの伸縮性が失われた。このように、ねじれを増加させることは、究極的には不利益となる。従って、本発明の実施形態によれば、この例のシリーズにおいて、ガラス又はアラミドの犠牲糸は処理中に失われた伸長量を低減し、成形時にポリエステルの固有の伸縮性を解放するために、ポリエステルコードに追加される。コード内のねじれのレベルが高いほど、より多くの伸縮性が犠牲成分によって維持される。
【0050】
表1は、このシリーズAで試験されたコードの構造を示す。すべてのコードが3つの糸(2200−1/3デシテックス)からなる6600デシテックスのポリエステルコードに基づいており、撚り係数(TM)での各ねじれの方向は表に示され、そして3つの全ては同じTMで反対方向に撚り合わされている。これはバランスのとれた撚りを加えた層状のコード(プライド・コード)である。犠牲第2成分は、第2撚り工程中の3つの層に含まれる。第2成分は、コア挿入糸として巻き付けられた3本のポリエステル糸に含まれる。表に示すように、3つの犠牲構成材料が含まれる。表1の脚注に示すように、ケブラー49(K49)とガラス(G75)材料は、低いE%を有する。K49は、撚りおよび1インチ当たり0.7のわずかなねじれ(TPI)のG75を有していない。ポリビニルアルコール(PVA)は、中程度のE%を有する。コードは、加熱オーブン内で乾燥および硬化に続いて浸漬処理が行われた。典型的なコード処理の張力は、20−30N/end(4.5−6.7 lb.)、および一般的な処理温度は最大220℃、又は180℃〜220℃である。
【0051】
表1から、後続のベルト成形処理においてコードが6.3%伸長された場合、第2成分を有していない比較例1及び4はその極限伸長の半分又はそれ以上となり、潜在的な不可逆的な損傷をうける。例4がより多くのねじれを有し、したがって、比較例1より伸縮性を有していたとしても、モールド・ストレッチが損傷のないまま存続する可能性は小さい。
【0052】
PVAの例3と6は、矛盾した結果を与える。PVAの破断点伸長は、約7%である。したがって比較例3はそれほど利点がない。しかし、例6を見るとポリエステル成分の高いねじれは2つのコード成分間の大きな差別化になる。そのため、PVAはまさにいくつかの利点を提供する。しかし、これらの例は、ガラス、アラミドの低い伸縮がはるかに良い結果を与えることが明らかである。したがって、第2成分は、約6%より小さいかまたは2〜3%の、破断点または降伏点伸長を有することが好ましい。
【0053】
本明細書に記載のように、表1のコードは次に拡張形成処理において、マルチVリブドベルト(6PK1070)になった。典型的なコード屈曲張力は、表1の脚注に示す第2の構成要素の破断伸長強度T以下であり、室温で10−30N/end(2.2〜6.7 lb.)である。コード間隔は、典型的にはコードで覆われたベルト幅の割合に基づいており、典型的には60または70%から最大90または100%のコードパッキングである。これらのベルトは、約80%のコードパッキングを有していた。高いパッキングは、コードラインを介してゴムの流れを減少させるための改善をすることができる。スラブ内のベルト材料は、アンダーコードゴム、コード、接着ゴム、ゴム層で下塗りされた織物が含まれていた。必要に応じて、リブ表面カバーが含められてもよい。得られたベルトの厚さは4.4ミリメートルであり、ベルトの長さは1070ミリメートルであった。成形の間のスラブの伸長は6.3%と算出された。
【0054】
【表1】
【0055】
図1に示されるような背面とコードの中心線との距離である、最終ベルト(PDB)のコードラインの位置は、成形時にコード抵抗性の重要な尺度として使用された。ベルト周囲で等間隔で切断された4つの異なる断面において、各コードのコードライン位置が測定された。各コード変数から1つまたは2つのベルトがこの方法でサンプリングされた。これらPDBの測定値の平均値を表1に示す。例5〜7は、単一部材上のコードライン位置に大きな改善を示す。コード内の第2成分は、コード処理とコード屈曲時の第1成分の伸縮性を維持している。その後、第2成分は、伸長がコード処理及びコード屈曲過程で大いに使い切られる対照例に比べて、はるかに低い弾性率をもつ第1成分の成型過程において壊れる。したがって、例1〜4は貧弱なPdBを有している一方、例5〜7ではコードはゴムから遠くへ引き下ろされない。本発明のこの側面は、従来技術において非常に重要な改善を示す。また、一般的にコードライン測定の範囲(図示せず)、標準偏差または共分散で示されるコード位置のばらつきが大きくなるほど、コードのゴムの中への大きな引き下げが観察されたと指摘される。このように、本改善は少ないコードの引き下げが少ない位置の変動に関連することを含んでいる。
【0056】
ベルトの弾性率もまた測定され、結果を表1に示した。ベルトの弾性率は、コードが予想される弾性率レベルを与えるために十分に張力をかけた場合を示している。高い撚りコードは低い弾性率を有することが期待される。最良のPdB結果(TM6.0におけるK49およびG75)を有する、例5および7は予想されるベルトの弾性率を有する。第2成分がばらばらに壊れたとき、弾性率の大部分は第1成分に起因しているが、高弾性の第2成分はまだ、いくらかでも弾性率に寄与することができることを示し、ベルトに制御変数よりもやや高い弾性率を与えることに留意すべきである。
【0057】
ベルト引張強度も測定し結果を表1に示した。コードがベルト成形時の伸長によって損傷した場合のベルト引張強度の指標となる。コードあたりのベルト引張強度に対する処理後コードの強度の比によって損傷を示すことができる。高い撚りコードは下部ベルトの引張強度が、より少ない損傷を有することが期待される。ベルト引張強度に対する処理後コードの強度の比は、対照群と同様に0.85から0.90である。壊れた第2成分はベルトの引張強度に寄与しない。
【0058】
良いPdBの変数のうち、G75が予想より少し低い引張強度を有しているのに対し、K49は同じ引張強度を有し、予想されるベルトの弾性率を有する。ベルト強度は直接処理後コードの強度に関係するので、ベルトの引張強度の差は、ベルト成形に関連しない。このように、ベルトの張力に対し処理コードの比率は対照群と同様で0.85から0.90の範囲内の全てである。
【0059】
本発明は低いTMよりも高いTMでより有効とすることができるように、第1シリーズの結果は、コードの撚りレベルが、結果に影響を与えることを示している。したがって、K49およびG75の例(例5及び例7)は4.5の撚り係数で繰り返した。両方の変数のベルトの弾性率は2.5TM制御(比較例1)よりもわずかに高い約21kN/rib/strandであった。ベルト強度は2.5TM制御と同等であった。また、処理コードにおける強度ベルトコードの強度比は、表1のデータの範囲内の右側において、それぞれ、0.87及び0.89であった。両方の4.5TM変数において、コードライン位置は0.90ミリメートルであり、対照群より明確に改善した。
【0060】
なお、壊れた断片の長さ分布は、少なくとも第2成分とコードのねじれの材料の種類に依存することに留意する必要がある。壊れたコアは、例示用のベルトから削除された。K49およびG75のセグメントの長さは互いに同様に、また両方とも指定された撚りレベルでK5501のセグメントの長さよりもはるかに大きい。所与の材料については、TM2.5コードからのセグメント長は、TM6.0コードからのセグメント長よりもはるかに大きかった。
【0061】
シリーズ例B−アラミドコード
【0062】
例としてのこの第2シリーズのベースコードは、パラ−サブスティテューテド・アロマティック・ポリアミド・フィラメント(パラ−アラミド、または略してアラミド)である。典型的に処理されたアラミドコードは、約4〜5%の破断点伸長を有する。したがって、使用されたプロセスは、コードの損傷を防止するために約2〜3%の伸長を超えないようにした。図5は、2300ミリメートル以上のベルトが、拡張マンドレル処理で問題とならない可能性を示唆している。しかし、ベルト成形時の伸長は3%以上に達することがあるため、2000ミリメートルより短いベルトはコード損傷の危険性が高い。このシリーズの例では、ガラス又はアラミドの犠牲糸は、処理中に失われた伸縮量を低減し、巻線成形時アラミドの固有の伸縮性を解放するために、ねじられたアラミドコードに追加される。
【0063】
表2は、このシリーズBで試験されたコードの構造を示している。すべてのコードは4つの糸(1100−1/4デシテックス)から成る、4400デシテックスのアラミドコードに基づいており、表に示されている第1のTMで一つの方向に各々がねじられ、表に示されている第2のTMで4つの全ての糸が一緒に反対方向に撚り合わされている。これは層状のコード(プライド・コード)であるが、いくつかはアンバランスなひねりが加えられている。犠牲第2成分は、第2撚り工程中の4つの層に含まれている。第2成分は、ねじりまたはその周囲に巻き付けられた、4つのアラミド糸とともにコア挿入糸として含まれている。表に示されるように、3つの犠牲構成材料が検討された。Tbが他の2つのオプションよりも高いが、K49及びG75ガラスに加えて、大きなガラス繊維G37が含まれていた。表2の脚注に示されるように、すべてが低いE%を有する。コードは第1シリーズのように処理された。次に、長さ1543ミリメートル(6PK1543)のマルチVリブドベルトを第1のシリーズと同様に、80%のコードパッキングで成形した。ベルトの厚さは再び4.4ミリメートルであったが、成形時に計算されたスラブ伸長は2.6%であった。なお、制御コードは、この過程で成形する間に失われたことに留意すべきである。参考のために、ポリエステル制御ベルトは、約1.3ミリメートルの望ましいPdBとして参照された。
【0064】
表2を参照すると、(生機と処理後の両方が)高い撚りコードはTM4x4制御(比較例8)と比べてはるかに高いEb%を持っている。加えて、2コンポーネント変数のすべて(例9〜13)は、(0.5より十分に下、0.4またはそれ以下において)M%/Eb%の低い割合を有しており、1500ミリメートル程度の長さのベルトを作るために2.6%の伸長で拡張マンドレルを処理する必要があることを示している。この制御は、成形時の被害の大きなリスクを示す、0.54の比を有することに留意すべきである。実際には、制御コード(比較例8)は、成形時に失敗したため伸縮性がなく、この方法はベルトを作るために使用することがでなかった。
【0065】
例9〜13の全てのベルトは、PdBが1.0から1.3ミリメートルまでの範囲で、非常に良いコードライン位置を示した。これは処理できない制御変数に比べて明確かつ有意な改善を示している。実施例はまた、優れた弾性率および引張強度を示した。
【0066】
しかし、第2成分としてのG37は、その大きなサイズとコードの大きな体積分率のため、中央(すなわち、コア)に位置していなかった。本明細書に記載のように、Vf=17%は、2つの成分でコア挿入タイプのコード構造のボーダーラインであってもよい。シリーズAのPETコードのように、成形されたベルトでシリーズBのパラ−アラミドコードは、セグメントに分割されたコア第2の成分を有していた。例えば、TM4x8コード内のK49コア(例13)は、約6.4ミリメートルの平均的なセグメント長を有していた。
【0067】
【表2】
【0068】
第2シリーズの結果はまた、コードの撚りレベルが結果に影響を与えることを示し、本発明は低いTMよりも高いTMでより有効であることを示している。したがって、バランスのとれたねじれを含む追加のねじれレベルの数は、第2成分として、K49またはG75と同じベースのアラミドコードを利用して調査した。5.0および6.0のTMでバランスの取れたねじれを有するアラミドコードにおけるG75またはK49コア、およびTM4x7のアンバランスコードにおけるK49を用いて、非常に良好な結果が得られた。多くの場合、本発明のプロセス及びコードは、(非拡張の)剛性(プロファイル研削を受けた)マンドレル上に成形される同等のベルトよりも、良好なコードラインの位置を維持しつつ、より高い弾性率および強度を有するベルトをもたらしたことが観察された。したがって、本発明は、最適なベルトの弾性率と強度を維持しながら、伸縮性(及び可撓性)を増すことが知られているコードの撚りレベルを増加させることができる。これは、伸長成形プロセス中に犠牲にされた第2のコード成分を含むことによって達成される。これは、第1成分の伸縮性を維持し、最終的なベルトの第1成分の引張特性を最適化する。
【0069】
本発明及びその利点を詳細に説明したが、種々の変更、置換、および改変は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書中でなされ得ることが理解されるべきである。また、本発明の範囲は、プロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法、および本明細書に記載のステップの特定の実施形態に限定されるものではない。当業者であれば本発明の開示から容易に理解するように、プロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法、またはステップは、現在既存のまたは後に開発される、実質的に同じ機能を果たすか、本発明に従って利用することができるような本明細書に記載の対応する実施形態のように、実質的に同じ結果を達成する。したがって、添付の特許請求の範囲は、その範囲内にそのようなプロセス、機械、製造、物質の組成、手段、方法、またはステップを含むことを意図している。本明細書に開示された発明は、適宜、本明細書に具体的に開示されていない任意の要素の不存在下で実施することができる。
図1
図2
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図8
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図10