(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6209680
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】制御可能なダンパの作動機構
(51)【国際特許分類】
F16F 9/46 20060101AFI20170925BHJP
F16F 9/348 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
F16F9/46
F16F9/348
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-530199(P2016-530199)
(86)(22)【出願日】2014年10月28日
(65)【公表番号】特表2016-537574(P2016-537574A)
(43)【公表日】2016年12月1日
(86)【国際出願番号】CN2014089653
(87)【国際公開番号】WO2015078254
(87)【国際公開日】20150604
【審査請求日】2016年5月12日
(31)【優先権主張番号】61/908,817
(32)【優先日】2013年11月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510288840
【氏名又は名称】ベイジンウェスト・インダストリーズ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BEIJINGWEST INDUSTRIES CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100111187
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 秀忠
(74)【代理人】
【識別番号】100175617
【弁理士】
【氏名又は名称】三崎 正輝
(72)【発明者】
【氏名】ファージャウド,アリレザ
(72)【発明者】
【氏名】バータ,デーヴィッド ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ハート,マイケル ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】リン,マイケル エス.
(72)【発明者】
【氏名】シュランゲン,ティモシー マイケル
【審査官】
熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2013/0008750(US,A1)
【文献】
特開昭61−013041(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/00− 9/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両において用いられる流体ダンパアッセンブリであって、
中心軸回りにかつ中心軸に沿って環状に延び、作動油を収容する流体チャンバを形成する壁部を有するハウジングと、
前記中心軸から径方向に延びて、前記流体チャンバ内に配置され、上部面及び下部面を有する周面を形成し、前記周面は、前記上部面と前記下部面との間で軸方向に延び、反発ストロークと圧縮ストロークとの間で摺動可能であるピストンサブアッセンブリであって、前記ピストンサブアッセンブリは、前記反発ストロークの際に作動油が前記ピストンサブアッセンブリを通って流れることを可能とする複数の流入通路を有しているピストンサブアッセンブリと、
前記流入通路を通る作動油の流れを制限するために、前記ピストンサブアッセンブリの前記下部面に配置される反発円板を含む複数の円板と、
前記中心軸に沿ってかつ前記ピストンサブアッセンブリを通って端部へと延び、前記ピストンサブアッセンブリを前記反発ストロークと前記圧縮ストロークとの間で作動させるロッドと、
前記反発円板を前記ピストンサブアッセンブリの前記下部面と係合させるために前記反発円板に配置される保持器と、
前記ロッドの前記端部と作用するとともに前記ロッドの前記端部の周囲に環状に配置されて、前記保持器を前記反発円板に向かって付勢するバネと、
前記ロッドによってかつ前記ロッド内に支持されるとともに、前記保持器に接続され、前記保持器を軸方向に移動させて前記中心軸に沿って前記バネを圧縮して前記保持器を前記反発円板と非係合とし、前記反発ストロークからの作動油圧力に応じて前記反発円板が単独で曲がることを可能にして、前記ピストンサブアッセンブリの前記流入通路を開き、前記反発ストロークの際に減衰力を低減するアクチュエータと、
前記アクチュエータから前記保持器に運動を伝達するために前記保持器に接続されるシャフトと、
を備え、
前記ロッドの前記端部には、前記ロッドに沿って軸方向にかつ前記ロッドに対して垂直に貫通して延びる一ペアの溝が形成されている、
流体ダンパアッセンブリ。
【請求項2】
前記シャフトを貫通して延びて前記シャフトとともに軸方向移動し、前記ロッドにおける前記溝を通って前記保持器の両側の間を延びて固定され、前記保持器を軸方向に移動させるとともに前記中心軸に沿って前記バネを圧縮して前記保持器を前記反発円板から非係合とし、前記反発円板が前記ピストンサブアッセンブリの前記流入通路を開くことを可能にして、前記反発ストロークの際に減衰力を低減するピン、を備える、
請求項1に記載の流体ダンパアッセンブリ。
【請求項3】
中心軸回りにかつ中心軸に沿って環状に延び、作動油を収容する流体チャンバを形成する管状の壁部を有するハウジングと、
前記ハウジングの前記壁部に沿って摺動可能にかつ前記ハウジングの前記壁部と封止係合するよう配置されるピストンサブアッセンブリであって、前記中心軸から径方向に延びて、上部面と下部面とを有するともに前記上部面と前記下部面との間で軸方向に延び、反発ストロークと圧縮ストロークとの間で摺動するとともに前記ハウジングの前記壁部と封止係合する周面を形成するピストンサブアッセンブリと、
軸方向にかつ前記ピストンサブアッセンブリと同軸状に延びるとともに、前記ハウジングの前記壁部と前記ピストンサブアッセンブリの前記周面との間に配置されて、作動油が前記ハウジングの前記壁部と前記ピストンサブアッセンブリの前記周面との間を流れるのを防止する有機高分子材料のシールと、
を備える、車両において用いられる流体ダンパアッセンブリであって、
前記ピストンサブアッセンブリは、前記下部面から前記中心軸に対して離れていくとともに前記ピストンサブアッセンブリの前記上部面に向かって径方向外側へと延び、前記反発ストロークの際に作動油が前記ピストンサブアッセンブリを通って軸方向に流れることが可能である複数の流入通路を有しており、
前記ピストンサブアッセンブリは、前記ピストンサブアッセンブリの前記上部面と前記下部面との間で前記中心軸と平行に延び、前記圧縮ストロークの際に作動油が前記ピストンサブアッセンブリを通って軸方向に流れることが可能である複数の流出通路、をさらに有しており、
前記流入通路は、前記中心軸に向かって、前記流出通路に対して径方向内側を延びるとともに、前記流出通路から間隔を空けて配置されており、
流体ダンパアッセンブリは、
複数の圧縮円板と少なくとも一つの反発円板とを含む複数の円板であって、前記圧縮円板が前記ピストンサブアッセンブリの前記上部面と同軸状に配置されるとともに前記ピストンサブアッセンブリの前記上部面と当接して前記流出通路を通る作動油の流れを制限し、前記反発円板が前記ピストンサブアッセンブリの前記下部面と同軸状に配置されるとともに前記ピストンサブアッセンブリの前記下部面と当接して前記流入通路を通る作動油の流れを制限し、前記ピストンサブアッセンブリ及び前記円板が、前記ピストンサブアッセンブリの前記上部面と前記下部面との間を前記中心軸に沿って延びる円筒形状の円筒空間部を形成している複数の円板と、
前記ハウジング内に配置されるとともに、前記中心軸に沿ってかつ前記ハウジングから前記ハウジングを貫通して外側に延び、流体ダンパアッセンブリを車両に装着するための接続バー、を有するロッドであって、前記接続バーとネジ係合する円筒形状の大断面部分及び円筒形状の小断面部分をさらに有しており、前記大断面部分と前記小断面部分との間で径方向に延び、前記ピストンサブアッセンブリを前記反発ストロークと前記圧縮ストロークとの間で作動させる肩部を形成しているロッドと、
前記ロッドの前記肩部と前記圧縮円板との間に挟持されて前記ロッドの前記肩部と前記圧縮円板との間で作用する上部ワッシャであって、前記肩部と係合する平坦な上面と、前記圧縮円板との係合から離れるよう曲面状となっており前記圧縮円板が前記ピストンサブアッセンブリの前記上部面から離れるよう曲がることを可能にする下面と、を有している上部ワッシャと、
をさらに備えており、
前記ロッドの前記小断面部分は、前記中心軸に沿ってかつ前記ピストンサブアッセンブリにおける前記円筒空間部を通って端部へと延び、
前記ロッドの前記小断面部分は、前記小断面部分内においてかつ前記中心軸上に配置されるとともに、前記小断面部分の前記端部に向かって前記中心軸に沿って延びる円筒形状の中空部、を有しており、
前記ピストンサブアッセンブリは、前記中心軸と同軸状であり前記ピストンサブアッセンブリの前記下部面へと軸方向に延びる円筒形状の凹部、を有しており、
流体ダンパアッセンブリは、
前記ピストンサブアッセンブリの前記凹部内に配置されるとともに前記ロッドの前記小断面部分にネジ係合によって配置されており、前記中心軸に同軸状であるとともに、前記反発円板を前記ピストンサブアッセンブリの前記下部面に係合させている多角形形状のクランプナットと、
前記反発円板と前記クランプナットとの間に挟持されて前記反発円板を前記ピストンサブアッセンブリの前記下部面に軸方向に挟持して、前記反発円板が前記ピストンサブアッセンブリの前記下部面から次第に距離が増えるようすなわち前記ピストンサブアッセンブリの前記下部面から離れるよう曲面状となるよう曲がることを可能とする下部ワッシャと、
前記ピストンサブアッセンブリの前記凹部内に配置される保持器であって、軸方向にかつ前記クランプナットの周囲に同軸状に延びる円筒部と、前記クランプナット及び前記下部ワッシャの周囲で前記円筒部から径方向外側へ延びて、前記反発円板を前記ピストンサブアッセンブリの前記下部面と係合させるフランジと、を有する保持器と、
前記ロッドの前記小断面部分の前記端部と作用するとともに前記ロッドの前記小断面部分の前記端部の周囲に環状に配置されるバネであって、前記保持器の前記フランジと係合するアクティブ端部とリアクティブ端部との間で延び、前記保持器の前記フランジを前記反発円板に向かって付勢しているバネと、
前記小断面部分の前記端部とネジ係合するとともに前記バネの前記リアクティブ端部と当接する多角形形状の固定器であって、前記中心軸に同軸状であり、前記バネを前記保持器の前記フランジに対して調整可能に軸方向に予め荷重を作用させて、前記フランジを前記反発円板に付勢する固定器と、
前記ロッドによってかつ前記ロッド内に支持されるとともに、前記保持器に接続されるアクチュエータであって、制御器によって電気的に動作されるとともに前記ロッドの前記大断面部分に配置され、上端と下端との間で延び、軸方向力を前記保持器に作用させるピエゾ電気デバイスを有しているアクチュエータと、
前記ピエゾ電気デバイスの前記上端と前記ロッドの前記接続バーとの間に配置される上部圧縮リングと、前記ピエゾ電気デバイスの前記下端と当接して前記ピエゾ電気デバイスの軸方向移動を可能にしながら前記ピエゾ電気デバイスを中立位置へと付勢する下部圧縮リングと、
をさらに備えており、
前記アクチュエータは、前記ロッドの前記大断面部分に配置されるとともに前記下部圧縮リングと前記ロッドの前記肩部との間で前記中心軸に沿って軸方向に延び、前記保持器への前記ピエゾ電気デバイスの軸方向力を増大させる増幅器をさらに有しており、
前記アクチュエータは、前記増幅器と前記ロッドの前記小断面部分との間で前記中心軸に沿って切頭円錐状に内側に延びて作動油を収容するとともに前記増幅器の軸方向力を前記保持器へと伝達する隔室を有しており、
流体ダンパアッセンブリは、
前記小断面部分の前記中空部分内を、前記肩部に隣接している前記増幅器から前記小断面部分の前記端部に隣接しているジョイント端部へと延びて前記増幅器からの運動を前記保持器へと軸方向に伝達するシャフト、
をさらに備えており、
前記ロッドの前記小断面部分の前記端部には一ペアの溝が形成されており、それぞれの溝が、前記ロッドの前記小断面部分に沿って軸方向にかつ前記ロッドの前記小断面部分に対して垂直に貫通して延びる細長い矩形形状であり、
流体ダンパアッセンブリは、
前記シャフトを貫通して延びて前記シャフトとともに軸方向移動し、前記ロッドの前記小断面部分における前記溝を通って前記保持器の前記円筒部の両側の間を延びて固定され、前記保持器を軸方向に移動させるとともに前記中心軸に沿って前記バネを軸方向に圧縮して前記保持器の前記フランジを前記反発円板と非係合とし、前記反発円板が前記反発ストロークからの作動油圧力に応じて単独で曲がることを可能にして、前記ピストンサブアッセンブリの前記流入通路を開き、前記反発ストロークの際に減衰力を低減するピン、
をさらに備えている、流体ダンパアッセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、車両において用いられる流体ダンパアッセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
ダンパアッセンブリは、固体(ソリッド)要素を有する摩擦ダンパと、流体要素を有する油圧式ダンパとの二つのカテゴリーに分類することができる。油圧式ダンパは車両のサスペンションシステムにおいて用いられている。油圧式ダンパでは、ピストンサブアッセンブリは、反発ストロークとして流体チャンバ内を上方に移動にし、圧縮ストロークとして流体チャンバ内を下方に移動する。ピストンサブアッセンブリを通過可能な作動油の流速により、圧力低下及び減衰力が決まる。減衰力が高い場合はサスペンションが硬くなり、減衰力が低い場合はサスペンションが柔らかくなる。サスペンションが硬い場合は機敏な(active)性能特性となり、一方、サスペンションが柔らかい場合は快適な乗り心地を味わえる。
【0003】
従来のダンパアッセンブリの主な欠点は、硬いサスペンションと柔らかいサスペンションとの間での折り合い(compromise)である。硬いサスペンションでは、減衰が大きく機敏な性能が得られ、柔らかいサスペンションでは、減衰が小さく快適な乗り心地が得られる。硬いサスペンションでは、機敏な操作性(ハンドリング)となるが、ノイズや防振(isolation)には良くない影響を与える。柔らかいサスペンションでは、防振が改善されるが、機敏なハンドリングには悪影響を与える。
【0004】
従来の流体ダンパアッセンブリにおけるピストンサブアッセンブリは、複数の円板(disks)を有しており、円板を曲げることで複数の通路を開くのに必要な力によって、ピストンサブアッセンブリを通る流体の流れを制御する。円板及び通路は、硬いサスペンションと柔らかいサスペンションとの間での折り合い(compromise)を最適とするよう設計されて調整される。硬いサスペンション設定から柔らかいサスペンション設定へとダンパ調整を変えるには、流体ダンパアッセンブリの分解及び円板を曲げるのに必要な力(つまり円板の剛性)の変更が必要となる。
【0005】
分解することなく硬いサスペンションと柔らかいサスペンションとの間で素早く調整するために、作動油圧力に応じて円板が曲がって通路を開き、これによりサスペンションを調整し柔らかくすることができるよう、通路から円板への減衰力を調整するアクチュエータが組み込まれている。
【0006】
このような流体ダンパアッセンブリは、山岡らの米国特許第5,054,809号に開示されており、作動油を収容する流体チャンバを形成するよう中心軸回りにかつ中心軸に沿って環状に延びる壁部を有するハウジングを含む。ピストンサブアッセンブリは、上部面と下部面とを有し、上部面と下部面との間で軸方向に延びる周面を形成しており、反発ストロークと圧縮ストロークとの間でハウジングの壁部に沿って摺動可能である。複数の流入通路により、反発ストロークの際に作動油がピストンサブアッセンブリを通って流れることが可能になる。また、少なくとも一つの反発円板が、流入通路を通る作動油の流れを制限するために、ピストンサブアッセンブリの下部面に配置されている。反発円板は保持器(retainer)に配置される。そして、バネが保持器を反発円板に向かって付勢する。固定器がバネに当接し、保持器に対して軸方向にバネに調整可能に予め荷重を加えて、反発円板に対して保持器を付勢する。ロッドは、反発円板にバネの付勢力とは反対方向に軸方向力を直接作用させて硬いサスペンションと柔らかいサスペンションとの間で調整する圧電アクチュエータを有する。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、保持器に接続されるアクチュエータを有する、車両で用いられるそのような流体ダンパアッセンブリを提供する。アクチュエータは、前記保持器を軸方向に移動させて中心軸に沿ってバネを圧縮して保持器を反発円板から非係合とし、これにより、反発ストロークからの作動油圧力に応じて反発円板が単独で曲がることが可能とし、ピストンサブアッセンブリの流入通路を開き、反発ストロークの際に減衰力を低減することができる。
【0008】
本発明は、その最も広い面では、リアルタイムに流体ダンパアッセンブリを制御可能にし、乗り心地及びハンドリング性能を向上させるようにアクチュエータを用いる、流体ダンパアッセンブリを提供する。さらに、アクチュエータの変位能力により二つ以上のダンパを備える必要がないので、本発明のアクチュエータを使用することにより複雑化を回避でき、その結果、全体的なダンパサイズ及びコストを最小化することができる。また、本発明は、機敏な性能を提供する硬いサスペンションと、より快適な乗り心地を提供する柔らかいサスペンションと、の間で流体ダンパアッセンブリを素早く調整することが可能になり、ハンドリングと振動防止との間で妥協せずともよい。
【0009】
本発明の他の利点は、添付図面を考慮して以下の詳細な説明を参照してより理解され、明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】流体ダンパアッセンブリの実施可能な形態の部分斜視図である。
【
図2】
図1の線2−2に沿って得られる部分断面斜視図である。
【
図3】流体ダンパアッセンブリの鉛直部分断面図である。
【
図4A】
図3の4Aで表した囲い内の拡大部分断面図であり、中立動作の際の流体ダンパアッセンブリを示している。
【
図4B】
図4Aと同様な拡大部分断面図であるが、反発ストロークを示している。
【
図4C】
図4Aと同様な拡大部分断面図であるが、圧縮ストロークを示している。
【
図6】流出通路を示す、
図5の線6−6に沿って得られる断面斜視図である。
【
図7】流入通路を示す、
図5の線7−7に沿って得られる断面斜視図である。
【
図8】ピストンサブアッセンブリの上部面の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に基づいて構成される、車両で用いられる流体ダンパアッセンブリを
図1〜
図8に示す。
【0012】
図3に概略的に示す通り、中心軸A回りにかつ中心軸Aに沿って環状に延びる管状形状の壁部によって規定されるキャップ及び底部を有するハウジング20は、作動油を収容するために、壁部のキャップと底部との間を延びる流体チャンバを形成している。ハウジング20を車両の下側装着部に接続するための底部において、ハウジング20は閉じられている。
図2〜
図4Cに概略的に示す通り、流体ダンパアッセンブリは、ハウジング20の流体チャンバ内に配置され、流体ダンパアッセンブリを車両の上側装着部(例えば車両のサスペンション)に接続するよう、ハウジング20のキャップを通って延びる。
【0013】
ピストンサブアッセンブリ22,24,26は、ハウジング20の壁部に沿って摺動可能に、かつ、ハウジング20の壁部と封止係合するよう配置される。ピストンサブアッセンブリ22,24,26は、中心軸Aから径方向に延びて、上部面24及び下部面26を有するとともに上部面24と下部面26との間で軸方向に延び、
図4Bに示す反発ストロークと
図4Cに示す圧縮ストロークとの間でハウジング20の壁部と摺動するとともに、ハウジング20の壁部と封止係合する周面22を形成する。シール28が、軸方向にかつピストンサブアッセンブリ22,24,26と同軸状に延びるとともに、ハウジング20の壁部とピストンサブアッセンブリ22,24,26の周面22との間に配置されて、作動油がハウジング20の壁部とピストンサブアッセンブリ22,24,26の周面22との間に流れるのを防止している。シール28は、ピストンサブアッセンブリ22,24,26に係合固定されるよう、ピストンサブアッセンブリ22,24,26の環状溝の周囲に形成される。
図7からよく分かる通り、ピストンサブアッセンブリ22,24,26は、下部面26から中心軸Aに対して離れていくとともにピストンサブアッセンブリ22,24,26の上部面24に向かって径方向外側へと延びる複数の流入通路30を有する。流入通路30により、
図4Bに示す反発ストロークの際に、作動油がピストンサブアッセンブリ22,24,26を通って軸方向に流れることが可能である。
図6からよく分かる通り、ピストンサブアッセンブリ22,24,26はさらに、ピストンサブアッセンブリ22,24,26の上部面24と下部面26との間で中心軸Aと平行に延びる複数の流出通路32を有する。流出通路32により、
図4Cに示す圧縮ストロークの際に、作動油がピストンサブアッセンブリ22,24,26を通って軸方向に流れることが可能である。流入通路30は、中心軸Aに向かって、流出通路32に対して径方向内側を延びるとともに、流出通路32から間隔を空けて配置されている。
【0014】
複数の円板(disks)34,36は、複数の圧縮円板34と、少なくとも一つの反発円板36と、を含む。圧縮円板34は、ピストンサブアッセンブリ22,24,26の上部面24と同軸状に配置されるとともにピストンサブアッセンブリ22,24,26の上部面24に当接しており、流出通路32を通る作動油の流れを制限している。反発円板36は、ピストンサブアッセンブリ22,24,26の下部面26と同軸状に配置されるとともにピストンサブアッセンブリ22,24,26の下部面26に当接しており、流入通路30を通る作動油の流れを制限している。ピストンサブアッセンブリ22,24,26と円板34,36とは、ピストンサブアッセンブリ22,24,26の上部面24と下部面26との間で中心軸Aに沿って円板34,36を通って延びる円筒形状の円筒空間部を形成する。
【0015】
接続バー37を有するロッド37,38,40が、ハウジング20内に配置され、ハウジング20を通って中心軸Aに沿って延び、流体ダンパアッセンブリを車両の上側装着部に装着する。ロッド37,38,40はさらに、接続バー37とネジ係合する円筒形状の大断面部分38と、円筒形状の小断面部分40と、を有する。ロッド37,38,40の大断面部分38と小断面部分40とにより、大断面部分38と小断面部分40との間に径方向に延びる肩部42が形成される。上部ワッシャ44は、肩部42と圧縮円板34との間に挟持されて、肩部42と圧縮円板34との間で作用する。上部ワッシャ44は、肩部42と係合する平坦な上面と、圧縮円板34との係合から離れるよう曲面状となっている下面46と、を有する。
図4Cに示す通り、下面46は、圧縮円板34がピストンサブアッセンブリ22,24,26の上部面24から次第に距離が増えるようすなわちピストンサブアッセンブリ22,24,26の上部面24から離れるよう曲がることを可能にする。ロッド37,38,40の小断面部分40は、中心軸Aに沿ってピストンサブアッセンブリ22,24,26における円筒空間部を通って端部へと延び、ピストンサブアッセンブリ22,24,26を反発ストロークと圧縮ストロークとの間で作動させる。ロッド37,38,40の小断面部分40は、小断面部分40内において中心軸A上に配置されるとともに、固定器48をネジ係合によって支持する小断面部分40の端部に向かって中心軸Aに沿って延びる、円筒形状の中空部を有する。
【0016】
ピストンサブアッセンブリ22,24,26はさらに、中心軸Aと同軸状でありピストンサブアッセンブリ22,24,26の下部面26へと軸方向に延びる円筒形状の凹部50を有する。多角形形状のクランプナット52が、ピストンサブアッセンブリ22,24,26の凹部50内に配置され、中心軸Aと同軸状となるようロッド37,38,40の小断面部分40上にネジ係合によって配置されている。クランプナット52は、反発円板36をピストンサブアッセンブリ22,24,26の下部面26と係合させる。ピストンサブアッセンブリ22,24,26の下部面26は、流入通路30が終端する環状の空洞を有する。反発円板36はこの環状の空洞を覆っている。下部ワッシャ54は、反発円板36とクランプナット52との間に挟持され、ピストンサブアッセンブリ22,24,26の下部面26の周囲において、かつ、環状の空洞から径方向内側において、反発円板36をピストンサブアッセンブリ22,24,26の下部面26に軸方向に挟持して、反発円板36がピストンサブアッセンブリ22,24,26の下部面26から次第に距離が増えるようすなわちピストンサブアッセンブリ22,24,26の下部面26から離れるよう曲がることを可能にする。
【0017】
保持器56,58は、ピストンサブアッセンブリ22,24,26の凹部50に配置されており、そして円筒部(barrel)56及びフランジ58を有する。円筒部56は、軸方向に延びるとともに、クランプナット52の周囲で同軸状に配置される。フランジ58は、クランプナット52及び下部ワッシャ54の周囲で円筒部56から径方向外側へと延び、反発円板36をピストンサブアッセンブリ22,24,26の下部面26と係合させる。バネ60は、ロッド37,38,40の小断面部分40の端部の周囲に環状に配置されて、ロッド37,38,40の小断面部分40の端部に作用する。バネ60は、保持器56,58のフランジ58と係合するアクティブ端部とロッド37,38,40のリアクティブ端部における固定器48との間で延び、反発円板36に隣接する保持器56,58のフランジ58を反発円板36に向かって付勢する。固定器48は、バネ60に保持器56,58のフランジ58に対して調整可能に軸方向に予め荷重を作用させて、フランジ58を反発円板36に向かって付勢する。
【0018】
アクチュエータ62,64は、ロッド37,38,40によってロッド37,38,40内に支持される。アクチュエータ62,64は、保持器56,58に接続されて、保持器56,58を軸方向に移動させて、保持器56,58のフランジ58を反発円板36と非係合とし、反発ストロークからの作動油圧力に応じて反発円板36が曲がることを可能とする。アクチュエータ62,64は、制御器によって電気的に動作されるピエゾ電気デバイス62と、増幅器64と、を有する。ピエゾ電気デバイス62は、ロッド37,38,40の大断面部分38内に配置されるとともに、上端66と下端68との間で延び、軸方向力を保持器56,58に作用させる。上部圧縮リング70が、ピエゾ電気デバイス62の上端66とロッド37,38,40の接続バー37との間に配置される。下部圧縮リング72は、ピエゾ電気デバイス62の下端68と当接する。上部圧縮リング70及び下部圧縮リング72は、ピエゾ電気デバイス62の軸方向移動を可能にしながら中立位置(ニュートラル・ポジション)へとピエゾ電気デバイス62を付勢する。増幅器64は、ロッド37,38,40の大断面部分38内に配置され、下部圧縮リング72とロッド37,38,40の肩部42との間で中心軸Aに沿って軸方向に延びる。増幅器64は、保持器56,58へのピエゾ電気デバイス62の軸方向力を増大させる。アクチュエータ62,64は、増幅器64とロッド37,38,40の小断面部分40との間で中心軸Aに沿って切頭円錐状に内側に延び、作動油を収容するとともに増幅器64の軸方向力を保持器56,58へと伝達する隔室(コンパートメント)74を有する。実施可能な形態において、増幅器64は非圧縮性流体の態様である。ただ、限定するものではないが、増幅器64を、プランジャー又はあらゆる油圧ストローク増幅器などの他の態様とすることもできる。例えば、エラストマー材料のゴム円錐体を増幅器64として用いることができる。
【0019】
ピン80を受けるために内部に溝78を有する小断面部分40の中空部分内において、シャフト76がアクチュエータ62,64の増幅器64から延びる。シャフト76は、肩部42に隣接している増幅器64から、小断面部分40の端部に隣接しているジョイント端部へと延び、増幅器64から保持器56,58へと軸方向に運動を伝達する。ロッド37,38,40の小断面部分40の端部には一ペアの溝78が形成されている。それぞれの溝78は、中心軸Aに沿った細長い矩形形状である。一ペアの溝78は、ロッド37,38,40の小断面部分40に沿って軸方向にかつロッド37,38,40の小断面部分40に対して垂直に貫通して延びる。ピン80は、断面が長方形又は円形であり、シャフト76、ロッド37,38,40の溝78を通って、保持器56,58の円筒部56の両側の間を延びて固定され、保持器56,58を軸方向に移動させる。その結果、
図4Bに示す通り、ピン80は、バネ60を中心軸Aに沿って軸方向に圧縮し、保持器56,58を反発円板36から非係合とし、反発ストロークからの作動油圧力に応じて反発円板36が単独で曲がることを可能とし、ピストンサブアッセンブリ22,24,26の流入通路30を開いて、反発ストロークの際の減衰力を低減する。
【0020】
動作時には、アクチュエータ62,64は、アクチュエータ62,64に電圧を供給する制御器によって電気的に動作され、保持器56,58を下方へと押圧し、これにより、反発円板36に予め作用させられた予荷重を低減する。アクチュエータ62,64に供給された電圧に応じて、ピエゾ電気デバイス62は、拡張するとともに中心軸Aに沿って延び、保持器56,58を中心軸Aに沿って押圧する。したがって、
図4Bに示す通り、反発円板36は反発ストロークの際に小さい減衰力で曲げられることになり、その結果、快適な乗り心地のために振動を防止する柔らかいサスペンションを提供する。一方、アクチュエータ62,64がオフにされると、ロッド37,38,40は保持器56,58に力を作用させず、その結果、減衰力は利用可能な最大レベルとなり、反発ストロークの際に硬いサスペンションを提供する。
図4Aでは、アクチュエータ62,64がオフにされ、流体ダンパアッセンブリは中立動作状態にある。
図4Cでは、アクチュエータ62,64がオフで、作動油が流出通路32を軸方向に流れて圧縮円板34が流出通路32から離れるよう曲がっている圧縮ストロークにおいて、流体ダンパアッセンブリが動作している。
【0021】
もちろん、本発明に多くの変形及び変更を上記の教示に基づいて行うことができ、詳細な説明以外にも添付の特許請求の範囲内で実現できる。上記の記載が本発明の新規性が有用となるあらゆる組み合わせにわたることは理解されよう。装置の請求項における語「said」の使用は、それが前出されていて、その請求項又はその請求項が従属する請求項の範囲に含まれていることを意味する明確な引用である。「the」を使用する場合でも、その請求項又はその請求項が従属する請求項の範囲に含まれている場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】米国特許第5,054,809号