(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
当該検出デバイスは、デジタル−アナログ・コンバータ及び積分チャネルを更に有し、前記デジタル−アナログ・コンバータは、前記積分チャネルの出力部と前記第4の電流源の制御入力部との間に結合される、
請求項6に記載の検出デバイス。
前記補償ユニットは、ベースライン再生回路及び分極判定ユニットを有し、該分極判定ユニットは、前記ベースライン再生回路からのベースライン再生電流から前記センサ内の分極の程度を決定するよう構成される、
請求項1に記載の検出デバイス。
前記補償ユニットは、ベースライン再生回路及びリミッタ回路を有し、該リミッタ回路は、前記成形要素の出力部と前記ベースライン再生回路の入力部との間に結合される、
請求項1に記載の検出デバイス。
【背景技術】
【0002】
(カソード)接点を完全にはブロックしないCd[Zn]Teが単光子計数検出器に使用される場合に、光伝導利得は、特に、直流結合されたリードアウト回路にとって、主だった問題を引き起こす。すなわち、それは、光電流に加えて、ゆっくりと変化する電流であるから、それは、設定されたエネルギ閾値へ向かってアナログリードアウトチャネルの出力でのベースラインシフトを引き起こす。それにより、如何なる補正手段にもよらなければ、光子のエネルギは誤って記録される。持続性電流(persistent current)が非常にゆっくりと変化し、且つ、パイルアップが制限される場合に、従来のベースライン再生(BLR;BaseLine Restoration)のような既知のアプローチは適用され得る。成形器(SHA;SHAper)の出力でのベースライン(BL;BaseLine)を検知する従来のBLRアプローチは、SHAの出力でのパルスがしばしばパイルアップする場合に、有意に誤ったベースライン推定をもたらすことがよく知られている。この場合に、BLはもはや達せられないので、BLは誤って推定される。
【0003】
付加的作用は、両極性の波形を有する隣接ピクセルからの誘導パルスによって引き起こされ得る。実際のパルスの信号に対する誘導パルスの位相に応じて、誘導パルスは、SHA出力信号で見られるパイルアップを低減したり又はパイルアップに寄与したりし得る。
【0004】
更に、照射時間は長いがx線流束は低いときさえ、センサは分極状態にされる。これは、正しい閾ポジションが決定されるべき検出器のエネルギ較正の間に当てはまる。分極は較正をゆがめる。
【0005】
上記に加えて、ベースライン再生回路は、ベースラインを検知するピーク検出器と、低周波BLシフトの補償に制限するためのローパスフィルタ(例えば、積分器)と、入力ノード(又は実施に応じて成形器入力)で補償電流を注入又はシンクすることを担うトランスコンダクタ素子を使用することによって、通常は実施される。BLR回路内のピーク検出器は、しかしながら、期待されるバックグラウンド電流の逆方向における、特にBLを上回る(成形器出力信号がこのBLを下回るパルスである実施における。)成形器出力レベルの偏位に非常に敏感である。すなわち、BLレベルを上回る信号は、あたかもそれが新しいBLレベルであったかのようにピーク検出器によって検知されて、最悪の場合にはBLレベルを上回る完全な信号偏位に等しい補正を引き起こす。BLレベルを上回るそのような偏位は、2つの非理想的アーチファクト、すなわち、隣接ピクセルからの誘導パルス(BLレベルの周囲で両極性形状を有する。)及び成形器のオーバーシュート(BLレベルを上回る小さな半波)によって、主に引き起こされ得る。
【0006】
米国特許出願公開第2010/172467(A1)号明細書(特許文献1)は、イメージングデバイスにおける、特にコンピュータ断層撮影における衝突X線から計数可能なパルスを生成する装置に係る。装置は、衝突光子によって生成される電荷パルスを電気信号に変換するよう構成される前置増幅器要素と、フィードバックループを備え、電気信号を電気パルスに変換するよう構成される成形要素とを有する。フィードバックループには遅延回路が接続されており、それにより、フィードバックループが電気信号の電荷を収集する時間は、成形要素の出力部での電気パルスの振幅を改善するために延長される。
【0007】
米国特許出願公開第2004/027183(A1)号明細書(特許文献2)は、定比率弁別器(CFD;Constant Fraction Discriminator)アーミング及びタイミング回路における、内蔵式パルステール相殺を提供する連続時間ベースライン再生(BLR)回路、すなわち、BLRテール・キャンセル回路を開示する。BLRテール・キャンセル回路は、定比率タイミング形成フィルタ及びアーミング回路で適用されて、高い入力信号計数率で動作するCFD回路のモノリシック集積回路実装を可能にする。BLRテール・キャンセル回路は、同時のテール相殺とともに、DCオフセット及び計数率に依存したベースラインエラーの補正を提供する。電子デバイス不整合に起因したDCオフセット及び計数率に依存したベースラインエラーの補正は、入力信号からの正確な時間ピックオフのために必要とされる。パルス幅の低減、すなわち、パルステール相殺は、前の信号のテールに重ね合わされた新しい信号の発生(パルス・パイルアップとして知られる状態)によって引き起こされる深刻なひずみを防ぐよう、高い計数率の信号の存続期間を短縮するために必要とされる。パルステール相殺によらないと、パルス・パイルアップに起因して時間ピックオフにおいて相当なエラーが存在する。
【0008】
国際公開第2013/057645(A2)号パンフレット(特許文献3)は、イメージングシステムの検査領域をトラバースする放射線を検出し、該検出された放射線を示す信号を生成する直接変換検出器ピクセルを備えた検出器アレイと、検出器アレイによって生成された、検出された放射線を示す信号又は異なる既知のエネルギレベルに対応する異なる既知の高さを有するテストパルスの組を選択的に処理し、処理された検出された放射線又はテストパルスの組のエネルギを示す高さを有する出力パルスを生成するよう構成されるパルス成形器と、テストパルスの高さ及び所定の固定エネルギ閾の組に関してテストパルスの組に対応する出力パルスの高さを解析し、該解析の結果に基づきベースラインを示す閾調整信号を生成するよう構成される閾調整器とを有する。
【0009】
E. Kraft et al.,“Counting and Readout for Direct Conversion X-ray Imaging: Concept, Realization and First Prototype Measurements”,IEEE Transactions on Nuclear Science,volume 54,383〜390頁(2007年)(非特許文献1)には、直接変換型ピクセル化半導体センサによるX線イメージングのための信号処理概念が開示されている。当該アプローチは、全ての単一ピクセルにおいて電荷積分及び光子計数を組み合わせる。両方の信号処理チェーンの同時の動作は、個々のスキームの限界を超えてダイナミックレンジを広げ、平均光子エネルギの決定を可能にする。X線断層撮影のような医療用途は、改善されたコントラストによるこの付加的なスペクトル情報と、スキャンされる対象による減衰に起因した管スペクトルの硬化を決定する能力とから恩恵を受けることができる。0.35マイクロメートル・テクノロジにおける試作チップが成功裏に試験された。ピクセル・エレクトロニクスは、低振幅差動電流モードロジックを用いて設計される。重要な要素は、連続的なリセットや漏れ電流補償を提供し且つ積分器のために入力信号を複製する、電荷形増幅器のための構成可能なフィードバック回路である。当該非特許文献は、試作構造の測定結果を議論し、回路設計に関する詳細を与える。
【0010】
R. Steadman et al.,“ChromAIX: a high-rate energyresolving photon-counting ASIC for spectral computed tomography”,Proceedings of SPIE,762220〜762220−8頁(2010年)(非特許文献2)には、スペクトル型CTの実現可能性の検討が開示されている。エネルギ分解による光子計数のためのASIC(ChromAIX)は、エネルギ弁別を提供しながら高い計数率能力を提供するよう設計されている。ChromAIX ASICは、300マイクロメートルの等方性ピッチによる4×16個のピクセルの配置から成る。各ピクセルは、多数の独立したエネルギ弁別器を、連続リードアウト機能を備えたそれらの対応する12ビットカウンタとともに含む。10Mcpsを超える観測されたポアソン計数率(約27Mcps入射平均ポアソン率に対応する。)が、電気特性を通じて実験的に証明された。2.6mV
RMS(4keV FWHM)の測定ノイズは仕様に従う。ChromAIX ASICは、直接変換材CdZnTe及びCdTeをサポートするよう具体的に設計されている。
国際公開第2014/091278(A1)号パンフレット(特許文献4)には、検査領域をトラバースする放射線を検出し、それを示す電気信号を生成する直接変換検出器ピクセルを含むイメージングシステムにおいて、前記電気信号は、ピクセルの直接変換材によって生成されて当該信号のレベルをシフトする持続性電流を含むことが開示されている。持続性電流推定器は、持続性電流を推定し、該推定に基づき補償信号を生成する。前置増幅器は、電気信号及び補償信号を受信し、補償信号は持続性電流を実質的に相殺して、持続性電流を補償された信号を生成するとともに、補償された信号を増幅して、増幅された補償された信号を生成する。成形器は、増幅された補償された信号に基づき、直接変換材を照射する放射線のエネルギを示すパルスを生成する。
国際公開第2014/087264(A1)号パンフレット(特許文献5)には、X線画像情報の補正、例えば、X線検出器素子における持続性電流に関するX線画像情報の補正が開示されている。X線検出器は、オーミック接触を有する光伝導体として具現されてよく、夫々の光伝導体ピクセルにおいて衝突する光子の量及びエネルギに応じて光電流を出力する。そのような光伝導体は光伝導利得を示してよい。すなわち、X線放射によって照射される場合の測定電流は、電子−正孔対のみを生成する衝突光子により生じる電流よりも高い。光伝導利得を補償するよう、X線画像情報の画像補正のための方法であって、光電流を生成するX線放射に依存したX線検出器素子のリードアウト情報を受信し、補償情報を用いてリードアウト情報に光伝導利得を補償することを有する方法が提供される。
【0011】
スペクトル型コンピュータ断層撮影(CT)における直接変換検出器による固有誤差に起因したアーチファクトの低減が望ましい。
【発明の概要】
【0014】
本発明の目的は、スペクトル型コンピュータ断層撮影(CT)における直接変換検出器による固有誤差に起因したアーチファクトを低減する検出デバイス及び検出方法を提供することである。
【0015】
本発明の第1の態様において、放射線源によって発せられる光子を検出する検出デバイスが提供される。当該検出デバイスは、第1の期間の間に前記光子を検出するよう構成される。当該検出デバイスは、アノード、カソード、並びに、光子を電子及び正孔に変換する中間の直接変換材を有するセンサと、光子によって生成される電荷パルスを電気パルスに変換するよう構成される成形要素と、該成形要素の出力部と前記成形要素の入力部との間に結合される補償ユニットとを有する。前記補償ユニットは、光伝導利得供給ユニットを有する。該光伝導利得供給ユニットは、前記センサのために光伝導利得を供給するよう構成される。前記補償ユニットは、第2期間電流供給ユニットを更に有する。該第2期間電流供給ユニットは、少なくとも第2の期間の間に前記センサから電流を供給するよう構成される。前記第2の期間は、前記第1の期間よりも短い。前記補償ユニットは、補償信号を前記成形要素へ供給するよう構成される。前記補償信号は、前記センサからの電流と、前記センサのための光伝導利得とに基づく。
【0016】
本発明の重要な考えは、直接変換検出器による固有誤差(例えば、持続性電流又はオーバーシュート)に起因したアーチファクトを補償することである。アーチファクトは、例えば、測定された全ピクセル電流及び光伝導利得から補償電流を決定することによって、検出器のリードアウトごとにセンサ内の分極の程度を決定するようベースライン再生フィードバック信号を検出若しくはモニタリングすることによって、又はベースラインレベルを上回る如何なる信号も無視されることを確かにする回路をベースライン再生回路の入力部に含めることによって、低減される。これに関連して、語「上回る」は、制限ではなく、実施に依存する点に留意されたい。すなわち、本文脈における「上回る」は、期待される通常の成形器パルスと反対の極性を有する信号を意味する。望ましくは、ベースライン再生回路は、ベースラインを“上回る”信号を無視するか、あるいは、それのような信号に反応しない。それによって、ベースライン再生器に対する誘導パルスの影響は低減されるか、又は削除さえされる。
【0017】
当該検出デバイスは、望ましくは、光子計数検出デバイス(エネルギ弁別型光子計数検出デバイスとしても知られる。)、すなわち、検出された光子を1つ以上のエネルギインターバルにエネルギ弁別し、各エネルギインターバルについて、夫々のエネルギインターバルに入るエネルギを持つ検出された光子の数を表すカウントを提供する検出デバイスである。そのような検出デバイスは、例えば、医用コンピュータ断層撮影(CT)システム、医用ポジトロン放出断層撮影(PET)システム、又は医用単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)システムのような医用イメージングシステムにおいて、使用される。
【0018】
前記放射線源は、例えば、X線管若しくは同様のデバイス、ガンマ放射線源(例えば、ガンマ放射性核種)、又はポジトロン放射性核種であることができる。望ましくは、前記放射線源は、多エネルギ放射線源、すなわち、2つ以上のエネルギレベルで光子を放出する放射線源であることができる。
実施形態において、前記第2の期間は、前記第1の期間内にあり、前記第2期間電流供給ユニットは、前記第2の期間の間に前記センサからのピクセル電流を測定するよう構成され、前記第2期間電流供給ユニットによって供給される前記センサからの電流は、前記ピクセル電流に対応する。
【0019】
本発明の好適な実施形態において、前記補償ユニットは、第1、第2及び第3の電流源と、第1及び第2のトランジスタとを有する。前記第1のトランジスタのソース及び前記第2のトランジスタのソースは、前記第1の電流源へ結合される。
【0020】
前記第1、第2及び第3の電流源、並びに前記第1及び第2のトランジスタは、差動対を形成する。差動対の特性により、センサによって生成される如何なるDC電流も、差動対の右枝によってドレインされる。前記第1のトランジスタのドレイン電流は、前記第2のトランジスタのドレイン電流が前記センサからの当該DC電流に適応することを可能にするような値を呈する。前記センサが正DC電流を生成するとすれば、前記第2のトランジスタを流れる電流は低減される。これは、前記第1のトランジスタを流れるドレイン電流が増大するように前記第1のトランジスタのゲート電圧が変化する場合にのみ起こり得る。結果として、暗電流を完全に補償することが可能である。
【0021】
本発明の更なる好適な実施形態では、前記第1のトランジスタのドレインは、前記第2の電流源へ結合される。前記第2のトランジスタのドレインは、前記第3の電流源へ結合される。前記電気パルスは、前記第1のトランジスタのゲートへ供給される。基準電圧は、前記第2のトランジスタのゲートへ供給される。前記第2のトランジスタのドレインは、前記成形要素の入力部へ結合される。
【0022】
前記第2のトランジスタのドレインを前記成形要素の入力部へ結合することによって、前記センサによって生成される如何なるDC電流も、差動対の右枝によってドレインされる。この実施形態において、差動対の左右のチャネルの電流和、すなわち、暗電流しか存在しないかどうかが、測定される。暗電流は、暗電流が存在する状態で前記成形要素によって出力される電圧が、暗電流が存在しない状態で前記成形要素によって出力される電圧と等しい場合に、完全に補償される。
【0023】
本発明の更なる好適な実施形態では、前記補償ユニットは、ベースライン再生回路を更に有する。ベースライン再生回路を用いることによって、ベースラインシフトは緩和され得る。更に、ベースライン再生は、低周波擾乱(例えば、電力線ハム及び振動マイクロフォニックス)の悪影響を低減する。
【0024】
本発明の更なる好適な実施形態では、当該検出デバイスは、ベースライン再生回路と、第1、第2、第3及び第4のスイッチを有し、前記第1及び第2のスイッチの間に前記ベースライン再生回路が結合されるスイッチングネットワークと、電流ミラーとを更に有する。当該検出デバイスは、第1及び第2のモードにおいて動作する。前記第1のモードにおいて、前記第1及び第2のスイッチは、前記ベースライン再生回路が動作するように閉じられ、前記第3のスイッチは、前記第2のトランジスタのドレインを前記電流ミラーへ結合し、前記第4のスイッチは、前記第1のトランジスタのドレインを接地へ結合する。前記第2のモードにおいて、前記第1及び第2のスイッチは、前記ベースライン再生回路が切り離されるように開き、前記第3のスイッチは、前記第2のトランジスタのドレインを前記第1のトランジスタのドレインへ結合する。前記第1のモードにおいて、光伝導利得は、前記電流ミラーを介して補償電流を測定することによって測定される。前記第2のモードは通常モードに対応する。
【0025】
本発明の更なる好適な実施形態では、当該検出デバイスは、第4の電流源を更に有する。該第4の電流源は、前記第2のトランジスタのドレインと前記第1のトランジスタのドレインとの間に結合される。望ましくは、前記第4の電流源は、該第4の電流源が適正量の電流のみをドレインして、それにより、前記成形要素が光電流のみを測定し得るように、デジタル−アナログ・コンバータの出力によって制御される。
【0026】
本発明の更なる好適な実施形態では、当該検出デバイスは、デジタル−アナログ・コンバータ及び積分チャネルを更に有し、前記デジタル−アナログ・コンバータは、前記積分チャネルの出力部と前記第4の電流源の制御入力部との間に結合される。前記積分チャネルは、正確な補償電流を決定するために使用されてよい。前記積分チャネルの出力は、前記デジタル−アナログ・コンバータへ供給されてよく、該デジタル−アナログ・コンバータは、次いで、例えば、前記第4の電流源を制御する。
【0027】
本発明の更なる好適な実施形態では、前記補償ユニットは、ベースライン再生回路及び分極判定ユニットを有する。該分極判定ユニットは、前記ベースライン再生回路からのベースライン再生電流から前記センサ内の分極の程度を決定するよう構成される。このように、この好適な態様の考えは、BLRフィードバック信号を使用して検出器のリードアウト衝突光子ごとにセンサ内の分極の度合いを決定するために、BLRフィードバック信号を検出又はモニタリングすることである。
【0028】
本発明の更なる好適な実施形態では、前記分極判定ユニットは、積分器回路を更に有し、該積分器回路は、前記ベースライン再生回路からのベースライン再生電流を積分し、該ベースライン再生電流を前記成形要素の入力部へ供給するよう構成される。積分器を使用する1つの理由は、積分された信号がリードアウトの間のBLR信号の平均又は中央値であることである。例えば、リードアウト期間の間のBLR信号の平均は、モニタリングされる有効な値を表す。他の候補は、リードアウト期間の間のBLR信号のメジアンである。
【0029】
本発明の更なる好適な実施形態では、前記補償ユニットは、ベースライン再生回路及びリミッタ回路を有する。該リミッタ回路は、前記成形要素の出力部と前記ベースライン再生回路の入力部との間に結合される。前記リミッタ回路は、望ましくは、ベースラインシフト・アーチファクトのみを引き起こす不要な信号を取り除き、それとともに、如何なる不要な正振幅イベントも無視して、前記ベースライン再生回路におけるピーク検出器がベースラインレベルを誤って推定しないようにする。更なる好適な実施形態は、負の振幅を扱ってよい。故に、一般的に言えば、1つの考えは、センサ過渡応答を受けて(他のアーチファクトなしで)期待される成形器信号よりも正の極性を持った如何なる信号も無視することである。
【0030】
本発明の更なる好適な実施形態では、前記リミッタ回路は、前記電気パルスが所定の閾値を上回る場合に、前記ベースライン再生回路への前記電気パルスの供給を遮るよう構成される。この好適な態様に従って、前記リミッタ回路は、例えば、隣接ピクセルからの誘導パルスによって又は成形器のオーバーシュートによって引き起こされる、ベースラインを上回る前記成形要素の信号の如何なる偏位もクリッピングする。
【0031】
本発明の第2の態様において、第1の期間の間に検出デバイスによって、放射線源によって発せられた光子を検出する検出方法であって、アノード、カソード、並びに、光子を電子及び正孔に変換する中間の直接変換材を有するセンサを設けるステップと、前記センサのために光伝導利得を供給するステップと、光子によって生成される電荷パルスを電気パルスに変換するステップと、前記第1の期間よりも短い少なくとも第2の期間の間に前記センサから電流を供給するステップと、前記センサからの電流と、前記センサのための光伝導利得とに基づき、補償信号を供給するステップとを有する検出方法が提供される。記載される当該検出方法は、直接変換検出器による固有誤差に起因したアーチファクト(例えば、持続性電流又はオーバーシュート)を補償する。アーチファクトは、例えば、測定された全ピクセル電流及び光伝導利得から補償電流を決定することによって、検出器のリードアウトごとにセンサ内の分極の程度を決定するようベースライン再生フィードバック信号を検出若しくはモニタリングすることによって、又はベースラインレベルを上回る如何なる信号も無視されることを確かにする回路をベースライン再生回路の入力部に含めることによって、低減される。
【0032】
本発明の更なる好適な実施形態では、前記補償信号を供給するステップは、ベースライン再生電流から前記センサ内の分極の程度を決定することを含む。この好適な態様の考えは、BLRフィードバック信号を使用して検出器のリードアウト衝突光子ごとにセンサ内の分極の度合いを決定するために、BLRフィードバック信号を検出又はモニタリングすることである。
【0033】
本発明の更なる好適な実施形態では、前記補償信号を供給するステップは、前記電気パルスをリミッタ回路へ供給するステップと、前記電気パルスが所定の閾値を下回ると前記リミッタ回路が決定する場合に、前記電気パルスをベースライン再生回路へ供給するステップとを有する。前記リミッタ回路は、望ましくは、ベースラインシフト・アーチファクトのみを引き起こす不要な信号を取り除き、それとともに、如何なる不要な正振幅イベントも無視して、前記ベースライン再生回路におけるピーク検出器がベースラインレベルを誤って推定しないようにする。
【0034】
本発明の更なる態様において、放射線源によって発せられる光子を検出する検出デバイスが提供される。当該検出デバイスは、アノード、カソード、並びに、光子を電子及び正孔に変換する中間の直接変換材を有するセンサと、光子によって生成される電荷パルスを電気パルスに変換するよう構成される成形要素と、前記成形要素の出力部と前記成形要素の入力部との間に結合される補償ユニットとを有する。前記補償ユニットは、前記電気パルスに基づき補償信号を供給するよう構成される。前記補償ユニットは、ベースライン再生回路及び分極判定ユニットを有し、該分極判定ユニットは、前記ベースライン再生回路からのベースライン再生電流から、前記センサ内の分極の程度を決定するよう構成される。
【0035】
実施形態において、前記分極判定ユニットは、積分器回路を更に有し、該積分器回路は、前記ベースライン再生回路からのベースライン再生電流を積分し、該ベースライン再生電流を前記成形要素の入力部へ供給するよう構成される。
【0036】
本発明の更なる態様において、放射線源によって発せられる光子を検出する検出デバイスが提供される。当該検出デバイスは、アノード、カソード、並びに、光子を電子及び正孔に変換する中間の直接変換材を有するセンサと、光子によって生成される電荷パルスを電気パルスに変換するよう構成される成形要素と、前記成形要素の出力部と前記成形要素の入力部との間に結合される補償ユニットとを有する。前記補償ユニットは、前記電気パルスに基づき補償信号を供給するよう構成される。前記補償ユニットは、ベースライン再生回路及びリミッタ回路を有する。該リミッタ回路は、前記成形要素の出力部と前記ベースライン再生回路の入力部との間に結合される。
【0037】
実施形態において、前記リミッタ回路は、前記電気パルスが所定の閾値を上回る場合に、前記ベースライン再生回路への前記電気パルスの供給を遮るよう構成される。
【0038】
請求項1の検出デバイス及び請求項
12の検出方法は、従属請求項において定義される類似した及び/又は同じ好適な実施形態を有することが理解されるべきである。
【0039】
本発明の好適な実施形態は、従属請求項又は上記の実施形態と夫々の独立請求項との如何なる組み合わせであることもできる。
【0040】
本発明のそれら及び他の態様は、以降で記載される実施形態から明らかであり、それらを参照して説明されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1は、対象の投影データを生成する投影データ生成システム20の実施形態を概略的に例として示す。この実施形態において、投影データ生成システムはコンピュータ断層撮影システムである。コンピュータ断層撮影システム20は、ガントリ1、すなわち、ロータを有する。ガントリ1は、z方向に平行に延在する回転軸Rの周りをステータ(
図1に図示せず。)に対して回転可能である。この実施形態ではx線管である放射線源2は、ガントリ1に取り付けられている。放射線源2は、コリメータ3を設けられている。コリメータ3は、この実施形態において、放射線源2によって生成される放射線から円錐状の放射ビーム4を形成する。放射線は、検査区間5にある対象(図示せず。)、例えば患者をトラバースする。検査区間5おトラバースした後、放射ビーム4は、ガントリ1に取り付けられている検出器6に入射する。
【0043】
検出器6は、検出された放射線に応じて検出信号を生成し、該生成された検出信号に応じて投影データ、すなわち検出値を生成するよう構成される。放射線を検出している間、ガントリ1は、投影データが異なる取得方向において取得され得るように検査区間5の周りを回転する。
【0044】
図2は、放射線源2(例えば、
図1を参照して図示される。)によって放射された光子を検出する検出デバイス6の実施形態を概略的に例として示す。この実施形態では光子計数検出デバイスである検出デバイス6は、夫々が放射線感受性センサ14を有する複数のピクセルを有する。ピクセルの放射線感受性センサ14は、放射線源2によって発せられた光子を検出し、夫々の検出された光子について、電流又は電圧信号のような、対応する電気信号を生成する。適切なセンサタイプの例には、テルル化カドミウム亜鉛(CZT;Cadmium Zinc Telluride)に基づくセンサ、及びフォトセンサと光通信するシンチレータを有するシンチレータに基づくセンサのような、直接変換型センサが含まれる。放射線感受性センサ14によって生成された電気信号、この実施形態では、電流信号I
sensorは、ピクセルの前置増幅ユニットCSA(例えば、電荷形増幅器(charge-sensitive amplifier))を有する成形要素20へ送られる。前置増幅ユニットCSAは、光子によって生成される電荷パルスを電気信号に変換する。放射線感受性センサ14は、この実施形態では、等価ピクセルキャパシタンス15を有する。他の実施形態では、DCカップリングが使用されてよく、電流I
sensorのDC及びAC両部分が前置増幅ユニットCSAへ送られるようにする。前置増幅ユニットCSA(例えば、電荷形増幅器)は、この実施形態では、演算増幅器CSAとして実装される。この実施形態において、成形要素20は成形器SHAを更に有する。前記増幅ユニットCSAによって生成された電気信号は、成形器SHAへ送られる。成形器SHAは、電気信号を電気パルスに変換する。この実施形態において、成形器SHAは演算増幅器を有する。更なる好適な実施形態では、成形器SHAは、CR−RCフィルタネットワークを有する。
【0045】
成形要素20によって生成された電気パルスは、ピクセルのエネルギ決定ユニット30へ送られる。エネルギ決定ユニット30は、検出された光子のエネルギを決定する。この実施形態において、エネルギ決定ユニット30は、検出パルスの振幅を1つ以上のエネルギ閾値X
1,X
2,...,X
Nと比較することによって検出パルスをエネルギ弁別するエネルギ弁別器として実装される。このために、エネルギ決定ユニット30は、この実施形態では、1つ以上のコンパレータを有してよい。1つ以上のコンパレータの夫々は、成形要素20によって生成された電気パルスと夫々のエネルギ閾値X
1,X
2,...,X
Nとの比較を実行する。検出パルス信号が夫々のエネルギ閾値X
1,X
2,...,X
Nを超える場合に、対応するカウンタC
1,C
2,...,C
Nはインクリメントされ、フレーム期間の終わりに、夫々のエネルギインターバルに対応するカウントの数は、リードアウト線31を介してカウンタC
1,C
2,...,C
Nから読み出される。
【0046】
以下では、
・ 測定された全ピクセル電流及び光伝導利得から補償電流を決定すること;
・ 検出器のリードアウトごとにセンサ内の分極の度合いを決定するようベースライン再生フィードバック信号を検出又はモニタリングすること;及び/又は
・ ベースラインレベルを上回る如何なる信号も無視されることを確かにする回路をベースライン再生回路の入力部で含めること
によって、スペクトル型CTにおける直接変換検出器による固有誤差に起因したアーチファクトを低減する技術が提案される。
【0047】
本願において以下で記載される第1の実施形態に従って、測定された全ピクセル電流及び決定された光伝導利得(測定から知られる。)から、その場合に電流源によって供給される補償電流を導出することが提案される。
【0048】
接点を完全にブロックしない光伝導体は、光伝導利得PCG(PhotoConductive Gain)を示す。すなわち、照射を受ける場合の測定された電流は、衝突光子(光若しくはX線又は他のタイプ)によって生成される電子−正孔対のみが考えられる場合に生じる、光電流I
photoと呼ばれる電流よりもずっと高い。
【0049】
これは、人間のコンピュータ断層撮影(CT)イメージングのために個々のX線光子を数えるようX線検出器のための変換材として目下検討されているテルル化カドミウム(CdTe)及びテルル化カドミウム亜鉛(CZT)のような直接変換半導体にも当てはまる。正孔及び電子について異なった移動時間を持った如何なる直接変換材も、より長い移動時間を持った電荷が材料において蓄積されて分極を引き起こすにつれて、ある流束で極性を持たされる点に留意されたい。従って、本発明は、例えば、GaAsにも適用可能である。
【0050】
CdTe及びCZTにおける光伝導利得の理由は、主として、正孔トラップの存在と、正孔の移動度が電子の移動度よりも約10倍小さいという事実とに端を発する。なお、深いトラップは浅いトラップよりも重要である。Spieler著Semiconductor Detector Systemsを参照されたい。X線光子が材料と相互作用し、電子対の集団を生成する場合に、印加される外部電界は電子と正孔とを分離し、電子はアノードの方へ流され、一方、正孔はカソードの方へ流される。移動度の違いにより、電子は、ずっと早くアノードに達する。このことは、電子がアノードに達するときに、通常は、全ての正孔が依然としてカソードに向かって移動している。更に、正孔トラップにより、正孔はトラップされ、それらがカソードに達するには、正孔の移動度及び電界の強さによって与えられる時間よりもずっと長くかかる。結果として、電子がアノードに達したときに、バルクはもはや電気的に中性ではない。これは、非常に簡単なモデルにおいて(例えば、Sze,NG,Physics of Semiconductor Devices,Wiley 2007,section 13.2を参照。)、カソードが電子の注入を完全には遮断していない場合に、(電気的中性を強制するための)カソード側での電子の注入の理由と見なされる。トラップされている正孔又はカソードの方へ向かっている正孔が存在する限り、“対をなす”電子が既にアノードに達しているときに、電子はカソードから注入され、印加電界によって強制的にアノードの方へ動く。
【0051】
従って、光伝導利得PCGは、“再結合までの正孔の平均寿命”及び“カソードからアノードへの注入された電子の移動時間”の商におおよそ比例し、従って、それは、考えられている結晶の(又は結晶内の考えられているボリュームの)固有性である。正孔がトラップされている限り、電荷中立状態が乱されないならば、電子が注入される。このように、追加電流は、平均の正孔寿命に比例し、注入される電子の移動時間に反比例する(より長く正孔がトラップされ、電子の移動時間がより短いほど、ますます多くの電子が注入される。)。
【0052】
光電流I
photoに加えて観測される電流の部分は、持続性電流I
persistentと呼ばれる。それは、
PCG=1+(I
persistent/I
photo) (1)
である。この式において、PCG=1は、全く電荷注入がない場合を表し、すなわち、持続性電流I
persistentは消失する。
【0053】
この簡単なモデルにおいて、持続性電流は、X線流束及びその平均エネルギに比例すると考えられる。これは、光電流にも当てはまる。従って、この簡単なモデルにおいて、光伝導利得PCGは、X線流束及び平均エネルギに依存せず、単に、材料に関連した特性(例えば、深いトラップの数又は“再結合までの正孔の平均寿命”)と、“カソードからアノードへの注入された電子の移動時間”を決定づけるカソード電圧とに依存する。
【0054】
接点を完全にはブロックしないCd[Zn]Teが単光子計数検出器に使用される場合に、光伝導利得は、特に、直流結合されたリードアウト回路にとって、主だった問題を引き起こす。すなわち、持続性電流は、光伝導利得の結果として、光電流に加えて、ゆっくりと変化する電流であるから、それは、設定されたエネルギ閾値へ向かってアナログリードアウトチャネルの出力でのベースラインシフトを引き起こす。それにより、如何なる補正手段にもよらなければ、光子のエネルギは誤って記録される。“ゆっくり”とは、光子流束よりも低い周波数コンテンツのみを参照することが知られる。それはまた、上記の簡単なモデルから得られる。正孔の脱トラッピングは、トラップ内の滞在時間によって支配され、ある時定数を有して負の指数分布に従う。多くの正孔は、相当な大きさの追加電流を引き起こすためにトラップされるべきであり、時定数はトラップ間で異なり、通常は、正孔トラップは、比較的長い脱トッピング時間(すなわち。トラップにおける滞在時間)を有する。
【0055】
持続性電流がゆっくりと変化し、パイルアップが制限される場合に、従来のベースライン再生器(BLR)のような既知のアプローチは適用され得る。
【0056】
成形器(SHA)の出力部でベースライン(BL)を検出する従来のBLRアプローチは、SHAの出力部でのパルスがしばしばパイルアップする場合に、有意に誤ったベースライン推定をもたらすことがよく知られている。この場合に、ベースライン(BL)はもはや達せられないので、BLは誤って推定される。
【0057】
そのような効果は、いわゆる準遮断接点を備えたCZT材料により観測されている。“準遮断接点(semi-blocking contacts)”は、カソードからの電子の若干の注入を許す。“非遮断”接点では全くそうでない。低エネルギ光子が(例えば、3mm厚のCuフィルタによって)除去されない場合に、特に低エネルギの光子の高い割合は、ベースライン再生(BLR)回路がベースライン(BL)を再生することができないほどめったにベースライン(BL)を達せられなくする。付加的作用は、両極性の波形を有する隣接ピクセルからの誘導パルスによって引き起こされ得る。実際のパルスの信号に対する誘導パルスの位相に応じて、誘導パルスは、成形器(SHA)出力信号で見られるパイルアップを低減したり又はパイルアップに寄与したりし得る。
【0058】
光伝導利得は、直接変換材内の特定のボリュームの性質であるから、それは、CdTe又はCZTから成る直接変換X線センサにおける各ピクセルの特性である。第1の実施形態では、従って、
・ 前もってCd[Zn]Teピクセルセンサの各ピクセルの光伝導利得を決定すること,
・ 各測定期間(MP)における個別的な光子の数に加えて、しかし、サブMPインターバル(これは、X線信号の同時の計数及び積分を説明する、
図3でも表されている国際公開第2007/010448(A2)号パンフレットにおいて記載されているCIX概念によって論じられているように、アナログフロントエンドに適用可能である。)において、各ピクセルにおいて観測される電流も測定すること,及び
・ 測定された全ピクセル電流I
total及び(既知の)光伝導利得PCGから、その場合に電流源によって供給される、以下で記載される補償電流を導出すること
が提案される。補償は十分に高速であるべきであるから、サブMPインターバルはピクセル電流を測定するために使用される。結果として得られるフィードバックループのための時定数は、持続性電流I
persistentがゆっくりと変化すると考えられるので、従来のBLRによるのと同じレンジにある(msレンジ)。“ゆっくりと”とは、パルス列によって引き起こされる電流変動に対してゆっくりということ、例えば、1kHzを下回る周波数しか含まないことを意味する点に留意されたい。
【0059】
このアプローチはまた、記載されている簡単なモデルとは異なる材料挙動を扱うこと、すなわち、持続性電流は非線形に平均X線エネルギに依存し、一方、信号電流は平均X線エネルギに線形に依存することを可能にし得る。それに当てはまると分かる場合に、異なる平均エネルギ光電流条件下で入射X線流束の異なる平均エネルギE
meanについて光伝導利得を測定し、このようにして、PCGをE
meanの関数fとして記載するようルックアップテーブルPCG=f(E
mean)を構成することが可能である。平均エネルギE
meanは、計数及び積分チャネルにおける2つの測定から容易に入手可能である。これに関して、
図3において、上側は計数チャネルに対応し、一方、下側は積分チャネルに対応する点に留意されたい。このように、夫々のサブMPについて、平均エネルギE
meanは、次のサブMPのための光伝導利得PCGを決定するよう測定され得る。
【0060】
図3は、国際公開第2007/010448(A2)号パンフレットにおいて記載されているCIX概念によって論じられているアナログフロントエンドにおけるコンポーネントの回路アーキテクチャを示す。センサによって生成された電気信号は、入力前置増幅器Cfへ適用される。入力前置増幅器Cfは、センサ信号を別の信号(例えば、電圧信号)に変換する。それは電荷形増幅器(CSA)、すなわち、通常は、ブリーダ抵抗を含む集積回路であってよい。前置増幅器Cfの入力部での夫々の短い電荷パルスについて、指数関数的に低下する電圧が出力部で生成され、この指数曲線を下回る表面積はパルス内の電荷に比例する。
【0061】
多重閾値計数機能を有するために、複数の弁別器X
1乃至X
Nが前置増幅器Cfの出力部へ接続されている。弁別器の夫々は、信号成形増幅器及び調整可能な閾値を有するコンパレータから成ってよく、所定の電荷量よりも大きいセンサからの各電荷パルスについてデジタル出力信号(計数パルス)を生成する。
【0062】
最も低い閾値(弁別器X
1によって実施され得る。)は、最低限のエネルギを有する光子によって生成されたカウントを、ノイズ(例えば、電子ノイズ)によって生成されたカウントと区別する。最も高い閾値は、Kエッジ・イメージングのために使用され得る。例えば、2つの弁別器によれば、弁別器X
2は、使用されるコントラスト中間値のKエッジが見つけられるエネルギ(Kエッジ・エネルギ)を上回る光子によって生成されたセンサ信号に応答して前置増幅器Cfによって生成されるパルスサイズに対応する閾値に相当してよい。
【0063】
Kエッジ・エネルギを下回るエネルギを有する光子を決定するために、イベントカウンタC
2及びイベントカウンタC
1の値間の差が計算され、一方、Kエッジ・エネルギを上回るエネルギを有する光子は、イベントカウンタC
2の値によって与えられる。カウンタC
1乃至C
Nは、nビットの計数深さを有する電子式デジタルカウンタであってよい。線形帰還シフトレジスタが、空間を節約するために使用されてよい。
【0064】
積分チャネルI−CHは、前置増幅器CfのフィードバックループFBから信号を受信し、積分期間の間にセンサ信号によって示された電荷の総量を検出する“全信号取得回路”であってよい。この回路は、アナログ出力を有する積分器回路、及び電圧/周波数コンバータによって実現されてよく、あるいは、それは、何らかの他の方法において実現されてよい。
【0065】
多数の異なった計数チャネル(エネルギ分解パルスカウンタをもたらす。)だけでなく追加の積分チャネルI−CHを使用することは、評価が量子限界ではないように積分が全エネルギ範囲にわたって行われるという事実において見られ得る。一方、これは、特に、エネルギビンサイズが小さく、すなわち、例えば、ほんの数個の光子しか平均してエネルギビンごとに数えられない場合に、エネルギ分解パルスカウンタのビンの幾つかについてよく起こり得る。
【0066】
電荷パケットカウンタCPC及び時間カウンタTCは、時間ラッチTLによってマークを付される測定インターバルの間に生成される電荷の最適化された推定を決定する。電荷は、測定インターバルの間にX線によって生じたエネルギに比例する。カウンタC
1乃至C
Nのカウント及び積分チャネルI−CHにおける積分の結果は、データ処理ユニット(図示せず。)へ供給される。データ処理ユニットは、このようにして、計数チャネル及び積分チャネルの結果を評価することができる。この配置は、X線検出器の大きいダイナミックレンジを可能にする。これは、計数チャネルのより正確な結果は、小さい量子フローの場合に使用可能であり、一方で、大きい量子フローの場合には、大きいフローについてより正確である積分器チャネルが利用され得るからである。
【0067】
図4は、測定されたピクセル電流から補償電流を導出するための回路の略図、すなわち、既知の光伝導利得PCGに基づき全測定電流から推定される持続性電流を減じる回路の概略図を表す。この実施形態において、補償ユニット450は、電流源I
0、p−MOSFET M1,M2、及び電流源I
1,I
2、並びにそれらの相互接続によって形成された差動対を有する。
【0068】
電流源I=f(I
total,PCT,I
dark)は、既知の光伝導利得PCGを所与として、測定された全電流から持続性電流を求めるよう、正確な変換係数を導入する。式(1)に従って、I
total=I
photo+I
persistentとして、簡単な代数は:
I
persistent=I
total(1−(1/PCG)) (2)
を提供する。
【0069】
簡単のために、センサは如何なる暗電流も供給しないとする。すなわち、I
dark=0。しかし、いくらかの暗電流が常に存在する。暗電流の存在は付加的なノイズを引き起こす。これは補償され得ない。従って、暗電流の許容量は、光電流に対するこのノイズによって決定される。それはまた、持続性電流が常にノイズ成分を有することで、PCGが低いべきであるからである。CT用途に関して、数nA/mm
2が許容可能であるべきである。センサ10によってもたらされる如何なる他の電流もなければ、M1及びM2は同じドレイン電流I
0/2を有する。この電流は、2つの電流源I
1及びI
2によって実施される。この状況において、更にV
out=V
CountRef(C
Fは、Q
0=C
F(V
out−V
CountRef)の初期電荷を運ぶ。)であり、C
Fにかかる電圧はV
out−V
refに等しい。積分チャネル“I−チャネル”I−CHは、ゼロの平均電流を測定する。従って、デジタル−アナログ・コンバータDACは、電流源I=f(I
total,PCG,I
dark)が如何なる電流もドレインしないように、ゼロを出力する。すなわち、I
R=0(I
Rにおける“R”は、
図4の右枝における電流を参照する点に留意されたい。)。
【0070】
センサが電流(持続性電流と同時に起こる変換されたX線光子による光電流I
photoを表すパルス列)を生成すると、光電流は左枝電流I
Lにおいても流れ(I
Lにおける“L”は、
図4の左枝における電流を参照する点に留意されたい。)、I−チャネルI−CHによって測定される。(電荷C
FがV
outをV
outRefよりも小さくさせるあらゆる正電荷パルス。すなわち、M1のゲート電圧は平衡と比較して低下し、それによりM1のドレイン電流は増大してI
Lを増大させる。同時に、M2のドレイン電流は同じ量だけ低減し、それにより電流はノードBに流れ込むべきである。このプロセスは、C
Fが再び初期電荷Q
0に再充電される場合にのみ停止する。I
Lにおいて供給される電荷は、C
Fを初期電荷Q
0に再充電するのに必要とされる電荷とまさに一致する。)従って、DACは非ゼロ出力を生成し、これは、まさに持続性電流をドレインする電流源I=f(I
total,PCG,I
dark)を構成する(正確な光伝導利得PCGが知られているとする。)。それにより、差動増幅器の入力ノードのみが光電流I
photoを受ける。このために、I
dark=0の場合に、それは、式(2)に従って:
f(I
total,PCG,I
dark)=I
total(1−(1/PCG))
である。
【0071】
差動対の性質により、センサによって生成される如何なるDC電流も、差動対の右枝によってドレインされる点に留意されたい。すなわち、V
outは、M2のドレイン電流がセンサからのこのDC電流に適応することを可能にする値をM1のドレイン電流がとるような値に変化する。センサが、ノードBに流れ込む正DC電流I
sensor,aを生成するとすれば、M2を流れる電流はI
sensor,aだけ低減される。これは、M1を流れるドレイン電流がI
sensor,aだけ増大するようにM1のゲート電圧(従って、V
out)が変化する場合にのみ起こり得る。結果として、この余剰電流はノードAから出るべきである。すなわち、I
L=I
sensor,a。これは、電流源I
1が、差動対の左枝の下で電流I
0/2を実施するからである。このようにして、X線照射なしで、暗電流もI−チャネルの入力部で可視的である。従って、電流源I=f(I
total,PCG,I
dark)を使用することによって、暗電流を完全に補償することが可能である。I−チャネルI−CHは、電流和I
L+I
Rを、すなわち、暗電流しか存在しないかどうかを測定する。I−チャネルの出力は、暗電流を、その部分が差動対の左又は右のどちらの枝において可視的であろうと、正確に決定する。従って、暗電流は、暗電流が存在する状態でのV
outが、暗電流が存在しない状態でのV
outと等しい場合に、完全に補償される(いずれの場合にも、演算増幅器のオフセット又はトランジスタ不整合が存在しないならば、V
out=V
CountRefを意味する。)。
【0072】
I−チャネルは、正確な補償電流を決定するためにここで必要とされ、一方、I−チャネルの測定結果I
otherは、他の目的のために、例えば、国際公開第2007/010448(A2)号パンフレットのCIX概念を実施するために、使用され得る。このために、光電流は知られる必要がある。これも、PCGが知られている場合に、測定された全電流から決定され得る:
I
photo=I
total/PCG。
この式は、関係I
total=I
photo+I
persistentから、及び式(2)から、次のように導出されてよい:
【数1】
【0073】
以下で、光伝導利得(PCG)を測定するために従来のベースライン再生回路BLRを使用することが記載される。
【0074】
光伝導利得(PCG)は、夫々のピクセルについて個々に知られるべきである。従って、最良の選択肢は、ピクセルごとに光伝導利得PCGを測定することである。これは、従来のベースライン再生回路BLRを低束の下で(すなわち、このBLRは問題なく働く。)使用し、BLRが供給する補償電流I
compを測定することによって、行われ得る。この電流は持続性電流I
persistentに対応する。更に、光電流I
photoは、BLRがオンされている間に、測定されるべきである。測定されたI
comp及び測定されたI
photoから、PCGは、式(1)から計算され得る:
PCG=I
comp/I
photo+1
この式において、I
compは持続性電流に対応する。
【0075】
図5は、ベースライン再生回路BLRを有する回路の例を示し、この回路により光伝導利得PCGは通常動作の前に測定され得る。回路は、従来のBLR及びスモールスイッチングネットワークを加え、2つのモード(a)及び(b)のための回路を構成することを可能にする:
(a) 光伝導利得PCGの測定:スイッチS1L及びS1Rは閉じられ、それによりBLRが使用され得る。スイッチS2は、S3が左枝を接地GNDへ(ノードAの正確な電位を保つよう電圧源を介して)接続した状態で、(電流ミラーCMを介して)電流I
compを測定するよう位置S2cにあり、S3が左枝をI−チャネルI−CHへ接続するときに、I
photoを測定するよう位置S2bにある。
(b) 通常動作:スイッチS1L及びS1Rが開いている。すなわち、BLRは切り離されている。S2は位置S2aにある。S3は、差動対の左枝をI−チャネルへ接続する。このモードにおいてのみ、デジタル−アナログ・コンバータDACは動作し、電流源I=f(I
total,PCG,I
dark)を制御する。
【0076】
以下で、他のアプローチとの比較が与えられる。両極性の成形波形及び入力ノードのACカップリングを使用することによって、如何なるゆっくりと変化するバックグラウンド電流も、むしろ容易に補償され得る。しかし、欠点は、両極性波形のパルス存続期間が一般に単極性パルスのそれよりも長く、両極性パルスの重ね合わせがむしろ予測不可能な波形を生じることである。更に、ACカップリングキャパシタは、高周波信号成分の抑制を回避するために大きくなければならない。そのようなキャパシタは、CMOS ASICにおいて大きい面積を必要とし、ピクセルごとに必要とされる。
【0077】
以下本願で記載される第2の実施形態に従って、BLRフィードバック信号を検出又はモニタリングして、検出器のリードアウト衝突光子ごとにセンサ内の分極の程度を決定するのにこれを使用することが提案される。
【0078】
半導体x線センサ材料(例えば、CZT又はCdTe)における分極の効果は、ピクセル化されたカソードでの収集電荷が分極の量の増大に伴って減少するにつれて、検出器のスペクトル性能を劣化させる。Bale及びSzeles,Nature of polarization in wide-bandgap semiconductor detectors under high-flux irradiation: Application to semi-insulating Cd
1-xZn
xTe,Phys. Rev. B 77,035205(2008年)の
図4(b)には、4つの増大する流動速度(管電流)での測定されたスペクトルの結果として起こるシフトが示されている。管電流の関数としての検出されたパルス高さスペクトルのひずみが表されている。流束又は管電流の増大に伴って、スペクトルは小さくなる。
【0079】
従って、センサ材料内のx線事象の検出されたパルス高さは、分極の存在下で、それがない場合に見られるように、より小さい。Bale及びSzeles,Electron transport and charge induction in cadmium zinc telluride detectors with space charge build up under intense x-ray irradiation,J. Appl. Phys. 107,114512(2010年)の
図1には、流束の増大についての結果として起こる高次の成形された信号出力とともに、シミュレーションされた前置増幅された信号誘導が示されている。分極の量の増大に伴って、成形器の後のx線事象のパルス高さは低減する。パルス形状も変更される。
【0080】
分極は、印加される電界を弱めるセンサ内のトラップされた又は蓄積された電荷によって引き起こされ、電荷移動特性を劣化させる。加えて、接点をブロックすることが使用される場合でさえ、センサにおける付加的な電流の量に比例して、バイアス又は暗電流の増大が起こる。この動的電流は、いわゆるベースライン再生(BLR)回路(
図6を参照。)を使用することによって補償され得る。
【0081】
BLRフィードバック信号を検出又はモニタリングして、検出器のリードアウト(IP)ごとにセンサ内の分極の程度を決定するのにこれを使用することが提案される。
【0082】
この情報は、品質問題のために又は検出されたカウントの補正のために使用され得る。後者は、BLR出力信号に比例して閾値をシフトすることによって、測定後に又は測定中に実行され得る。
【0083】
実施に応じて、BLRは、高束条件でのパイルアップによっても影響を及ぼされ得る。このために、考えられているエレクトロニクスのためのパイルアップモデルは、BLR出力から積分される電流のどの程度が分極に対応し、どの程度が高パイルアップ条件によるシフトに対応するのかを区別するために使用され得る。パイルアップモデルを構築するために、同じ振幅A及び一定量のパイルアップ(流入流動速度)を有するパルスを含む信号が送り込まれる場合に、実装されるBLR回路がどのように反応するのか、より具体的に、出力電圧の値はどのように変化するのかを理解する必要がある。入力計数率(ICR)とパルス振幅(A)とに対するBLR出力電圧の依存性は、Spiceシミュレーションによって、あるいは、実験においては、BLRのための入力として任意の波形生成器によって生成される信号を用いて、導出され得る。実際の取得において、ビンにおける事象のカウント数は、ICRを推定するために使用され得る。振幅Aは、一次ビームにおける光子の平均エネルギによって推定され得る。
【0084】
照射時間は長いがx線流束は低いときさえ、センサは極性を持たされる。これは、正しい閾ポジションが決定されるべき検出器のエネルギ較正の間に当てはまる。分極は較正をゆがめる。夫々のピクセル及び積分期間(IP)についてのBLR信号が利用可能である場合に、較正のための適切な設定が見つけられ、較正の精度は評価され得る。エネルギ較正は、光子計数検出器の較正における重要なステップである。
【0085】
光子計数検出器の計数結果に対する分極の影響は、測定の間又はその後に、積分期間(IP)(又はリードアウト若しくはCTにおけるビュー)ごとにカウントを補正するために評価及び較正され得る。
【0086】
BLR出力信号は、IPごとに積分される必要がある。積分器(
図6を参照。)並びに信号の伝達及び記憶のための追加コンポーネントが加えられる必要がある。閾ポジションが分極の現在量に適応される場合に、適切な回路が実装される必要がある。積分器を使用する1つの理由は、積分された信号がリードアウトの間のBLR信号の平均又は中央値であることである。例えば、リードアウト期間の間のBLR信号の平均は、モニタリングされる有効な値を表す。他の候補は、リードアウト期間の間のBLR信号のメジアンである。
【0087】
以下本願で記載される第3の実施形態に従って、ベースラインレベルを上回る如何なる信号も無視されることを確かにする回路をベースライン再生回路の入力部で含めることが提案される。
【0088】
スペクトル型コンピュータ断層撮影(CT)用途でのテルル化カドミウム亜鉛(CZT)の使用は、動的バックグラウンド電流成分、すなわち、光伝導利得PCG>1によって引き起こされる持続性電流及び漏れ電流(すなわち、暗電流)を補償するためのメカニズムを必要とする。このために、直流結合されたリードアウト回路について、ベースライン再生回路(BLR)は、成形要素の出力でのベースライン(BL)レベルのシフトを検出し、該シフトを補正するために電流を注入する/引き込むよう、導入される。
【0089】
ベースライン再生回路は、ベースラインを検知するピーク検出器と、低周波BLシフトの補償に制限するためのローパスフィルタ(例えば、積分器)と、入力ノード(又は実施に応じて成形器入力)で補償電流を注入又はシンクすることを担うトランスコンダクタ素子を使用することによって、通常は実施される。BLR回路内のピーク検出器は、しかしながら、期待されるバックグラウンド電流の逆方向における、特にBLを上回る(成形器出力信号がこのBLを下回るパルスである実施における。)成形器出力レベルの偏位に非常に敏感である。すなわち、BLレベルを上回る信号は、あたかもそれが新しいBLレベルであったかのようにピーク検出器によって検知されて、最悪の場合にはBLレベルを上回る完全な信号偏位に等しい補正を引き起こす。BLレベルを上回るそのような偏位は、2つの非理想的アーチファクト、すなわち、隣接ピクセルからの誘導パルス(BLレベルの周囲で両極性形状を有する。)及び成形器のオーバーシュート(BLレベルを上回る小さな半波)によって、主に引き起こされ得る。
【0090】
如何なるそのような正振幅イベントも無視して、ピーク検出器がBLレベルを誤って推定しないようにする方法が提案される。
【0091】
回路素子は、ベースラインシフト・アーチファクトのみを引き起こす不要な信号を除去するよう、ベースライン再生回路の入力ノードで導入される。
【0092】
ベースライン再生器を有する一般的な光子計数チャネルが
図7に示されている。成形要素20の出力部が規則的な入来光子について負パルスを生成するとすれば、基準レベル(又はベースラインBL)を上回る成形器信号の如何なる偏位も、ベースライン再生回路BLRに成形要素20の出力をシフトさせ得る。よって、エネルギ決定ユニット30は、正確な光子エネルギを測定しない。
【0093】
図8は、好ましくないベースラインシフトを引き起こし得る状況を示す。考えられているピクセルセンサ素子810aに衝突するX線光子は、このピクセルに接続されている成形器の出力部で負パルスを生成する。なお、隣接するピクセル810bも、考えられているピクセル810aにおいて移動する電荷群からの誘導によって引き起こされる信号を検出してよい。誘導電荷は、隣接するピクセル810bに接続されている成形要素(図示せず。)に両極性信号(矢印815によって示される。)を生成させる。ベースライン再生回路BLR内のピーク検出器は、正ピークを検知し、ベースライン再生回路BLRに入力から電流を引き込ませて、成形要素20の出力にBLを下回らせる。このことは意図されない。BLレベルは、成形要素20の基準電圧によって定義される(演算増幅器が成形要素20において使用される場合に、更なるオフセットがもたらされる。)。結果として、実際のベースライン(BL)を下回る新たなベースライン(BL)が定義され、成形器出力パルスが固定閾値と比較される場合にエネルギ推定において誤差が生じる(この説明は、成形要素20が電荷形増幅器CSA及び成形器SHAを有すると仮定する点に留意されたい。上記の極性は回路トポロジに依存する。)。
【0094】
誘導パルスは、好ましくないベースラインシフトを引き起こし得る唯一のアーチファクトではない。成形要素20が適切に調整されない場合に、それはオーバーシュートを示し得る。オーバーシュートもベースライン再生回路BLRによって検知され、実際のベースラインBLを下回る成形器信号の好ましくないシフトを生じさせる。
【0095】
この実施形態において、ベースラインを上回る如何なる信号も無視されることを確かにする回路をベースライン再生回路の入力部で含めることが提案される。擾乱自体は成形器の出力で影響を受けないが、ベースライン再生回路BLRは単にそのような非理想性に反応しない。
【0096】
図9は、成形器信号の正偏位を無視するようベースライン再生回路BLRの入力部で電圧リミッタ950を加える実施形態のブロック図を示す。リミッタ950の目的は、ベースラインBLを上回る成形要素20の信号の如何なる偏位もクリッピングすることである。すなわち、ピーク検出器が検知することさえできる最大信号は、ベースラインBL自体である。様々な選択肢がリミッタ950を実装するために存在し、ユニティゲイン・バッファの出力段での強制クリッピング若しくは増幅器リミッタ段、又は正半波を抑制するベースライン及び成形器出力の差分信号のための整流器を含む。
【0097】
図9を参照して記載される実施形態は、本明細書を通じて記載されている極性に制限されず、他のフロントエンド・トポロジ(正孔収集、単段フロントエンド、等を含む。)に適応され得る。
【0098】
図10は、放射線源2によって発せられた光子を検出デバイス6によって検出するための検出方法1000の実施形態を概略的に例として示す。検出方法1000は、次のステップ1010、1020及び1030を有する:
・ アノードと、カソードと、光子を電子及び正孔に変換する中間にある直接変換材とを有するセンサ10を設けること(ステップ1010),
・ 光子によって生成される電荷パルスを電気パルスに変換すること(ステップ1020),並びに
・ 電気パルスに基づき補償信号を供給すること(ステップ1030)。
【0099】
図10から更に分かるように、補償信号を供給すること(1030)は、センサ10の総センサ電流を測定すること(ステップ1041)と、光伝導利得を測定すること(1042)と、測定された総センサ電流及び光伝導利得から補償電流を決定すること(ステップ1043)とを有してよい。
【0100】
図10から更に分かるように、補償信号を供給すること(1030)は、代替的に及び/又は追加的に、ベースライン再生電流I
BLRからセンサ10内の分極の程度を決定すること(ステップ1051)を有してよい。
【0101】
図10から更に分かるように、補償信号を供給すること(1030)は、代替的に及び/又は追加的に、電気パルスをリミッタ回路950へ供給すること(ステップ1061)と、電気パルスが所定の閾値を下回るか否かを評価すること(ステップ1062)と、電気パルスが所定の閾値を下回るとリミッタ回路950が決定する場合に、電気パルスをベースライン再生回路BLRへ供給すること(ステップ1063)とを有してよい。
【0102】
本発明の適用例は、スペクトル型コンピュータ断層撮影用途であるが、他の用途における同様の機能の回路に適用可能である。更なる適用例は、スペクトル型コンピュータ断層撮影及びスペクトル型マンモグラフィのための光子計数検出器である。更なる適用例は、例えば、医用イメージングシステム、科学的目的のための機器、又は本土防衛における、直接変換検出器に基づく全ての種類の光子計数放射検出器に関する。
【0103】
カソード接点はCZTについて関連するが、種々の直接変換材について、アノード接点が関連してよい。更に、正孔及び電子について異なった移動時間を持った如何なる直接変換材も、より長い移動時間を持った電荷が材料において蓄積されて分極を引き起こすにつれて、ある流束で極性を持たされる点に留意されたい。従って、本発明は、例えば、GaAsにも適用可能である。
【0104】
開示されている実施形態に対する他の変形例は、図面、本開示、及び添付の特許請求の範囲の検討から、請求されている発明を実施する際に当業者によって理解及び達成され得る。
【0105】
特許請求の範囲において、語「有する」は、他の要素又はステップを除外せず、単称形は、複数個を除外しない。
【0106】
単一のユニット又はデバイスは、特許請求の範囲において挙げられている幾つかの項目の機能を満たしてよい。ある手段が相互に異なる従属請求項において挙げられているという単なる事実は、それらの手段の組み合わせが有利に使用され得ないことを示すものではない。
【0107】
センサの総センサ電流を測定すること、光伝導利得を測定すること、測定された総センサ電流及び光伝導利得から補償電流を決定する、等のような、1つ又は複数のユニット又はデバイスによって実行される決定は、幾つのユニット又はデバイスによっても実行され得る。例えば、測定された総センサ電流及び光伝導利得からの補償電流の決定は、単一のユニットによって、あるいは、他のあらゆる個数の異なるユニットによって、実行され得る。上記の検出方法に従う決定及び/又は検出デバイスの制御は、コンピュータプログラムのプログラムコード手段として及び/又は専用のハードウェアとして実装され得る。
【0108】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアとともに又はその部分として供給される、光記憶媒体又はソリッドステート媒体のような適切な媒体において記憶/分配されてよいが、他の形態において、例えば、インターネット又は他の有線若しくは無線電気通信を介して分配されてもよい。
【0109】
特許請求の範囲における如何なる参照符号も、適用範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。
【0110】
本発明は、放射線源によって発せられた光子を検出する検出デバイスに関係がある。検出デバイスは、第1の期間の間に光子を検出するよう構成される。検出デバイスは、光子を電子及び正孔に変換する直接変換材を中間に有するセンサと、成形要素と、補償ユニットとを有する。補償ユニットは、電気パルスとセンサの光伝導利得とに基づき補償信号を供給するよう構成される。本発明の核は、補償電流を決定することによって、ベースライン再生フィードバック信号を検出若しくはモニタリングすることによって、又はベースラインを上回る信号を無視することによって、スペクトル型コンピュータ断層撮影における直接変換検出器による固有誤差に起因したアーチファクトを低減する回路を提供することである。