(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)環状骨格を有する光重合性単官能モノマーと、(B)25℃における粘度が100mPa・s以下の光重合性2官能モノマーと、(C)25℃における粘度が500mPa・s以下であり3官能以上の光重合性多官能モノマーと、(D)光重合開始剤と、
トリアジン環を有する化合物(前記(D)光重合開始剤としてのトリアジン環を有する化合物を除く)と、を含むことを特徴とするインクジェット用硬化性組成物。
前記(A)環状骨格を有する光重合性単官能モノマーとして、環状炭化水素骨格を有する単官能モノマーと、複素環骨格を有する単官能モノマーとを含む請求項1記載のインクジェット用硬化性組成物。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のインクジェット用硬化性組成物は、(A)環状骨格を有する光重合性単官能モノマーと、(B)25℃における粘度が100mPa・s以下の光重合性2官能モノマーと、(C)25℃における粘度が500mPa・s以下であり3官能以上の光重合性多官能モノマーと、(D)光重合開始剤とを含むことを特徴とするものである。
なお、本願明細書において、インクジェット用硬化性組成物とは、基材上に硬化性組成物を吐出させて文字やパターンを非接触で印刷する方法に用いるための組成物を意味し、例えば、ピエゾ方式、サーマル方式や静電方式等の印刷法だけでなく、ジェットディスペンサーによる印刷法などにより文字やパターンを基材上に印刷するための組成物も含まれる。
【0013】
[(A)環状骨格を有する光重合性単官能モノマー]
本発明のインクジェット用硬化性組成物は、環状骨格を有する光重合性単官能モノマーを含む。環状骨格を有する光重合性単官能モノマーは、希釈剤として本発明のインクジェット用硬化性組成物の粘度を低下させる。また、本発明のインクジェット用硬化性組成物の硬化物の密着性を維持しつつ塗膜硬度、特に鉛筆硬度が向上する。環状骨格を有する光重合性単官能モノマーは、環状骨格を有しない光重合性単官能モノマー、例えばブチルアクリレート等と比較して、密着性および表面硬化性を向上させることができる。したがって、環状骨格を有する光重合性単官能モノマーを含むことにより、従来よりも優れた密着性および表面硬化性が得られる。
【0014】
環状骨格を有する光重合性単官能モノマーとしては、イソボニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、γ−ブチロラクトン(メタ)アクリレート、γ−ブチロラクトン(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類や、アクリロイルモルホリン等の(メタ)アクリロイル類が挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタクリレートを総称する用語であり、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイルおよびメタクリロイルを総称する用語である。
【0015】
(A)環状骨格を有する光重合性単官能モノマーは、イソボニル(メタ)アクリレート等の環状炭化水素骨格を有する単官能モノマーと、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、γ−ブチロラクトン(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン等の複素環骨格を有する単官能モノマーとを併用することが好ましい。環状炭化水素骨格を有する単官能モノマーを含むことにより、優れた密着性が得られる。複素環骨格を有する単官能モノマーは、環状炭化水素骨格を有する単官能モノマーに比べて酸素阻害を受け難いので、当該複素環骨格を有する単官能モノマーを含むことにより優れた表面硬化性が得られる。したがって、環状炭化水素骨格を有する単官能モノマーと、複素環骨格を有する単官能モノマーとを併用することにより、優れた密着性と優れた表面硬化性とを、より高レベルで両立できる。
この場合において、複素環骨格を有する単官能モノマーは、二種以上を組み合わせて用いることが、各々の単官能モノマーの特性に応じて優れた密着性と、優れた表面硬化性とを、さらに高レベルで両立できるので好ましい。
【0016】
(A)環状骨格を有する光重合性単官能モノマーの配合量は、本発明の硬化型組成物100質量部中、10〜80質量部が好ましい。10質量部以上で含むことにより、密着性、表面硬化性が良好になる。また、80質量部以下で含むことにより、硬化物中の架橋密度の低下を防ぐことができ、塗膜特性が良好となる。
また、環状炭化水素骨格を有する単官能モノマーと、複素環骨格を有する単官能モノマーとを含む場合は、環状炭化水素骨格を有する単官能モノマー100質量部に対して複素環骨格を有する単官能モノマーの配合割合は、12.5〜600質量部であることが好ましい。
本発明の硬化性組成物は、インクジェット法に用いるので、十分に低粘度、例えば、50℃で50mPa・s以下であることが好ましい。なお、本願明細書において、粘度はJIS K2283に準拠して測定された値である。
【0017】
[(B)25℃における粘度が100mPa・s以下の光重合性2官能モノマー]
本発明のインクジェット用硬化性組成物は、25℃における粘度が100mPa・s以下の光重合性2官能モノマーを含む。光重合性2官能モノマーは、後述する3官能以上の多官能モノマーに比べて反応性が低いので、単官能モノマーと併用することにより3官能以上の多官能モノマーの希釈剤として本発明のインクジェット用硬化性組成物の粘度を低下させるとともに、単官能モノマーよりも反応性が高いので表面硬化性を向上させる。もっとも、光重合性2官能モノマーの粘度が高いと、インクジェット用硬化性組成物の粘度が高くなる。光重合性2官能モノマーの25℃における粘度を100mPa・s以下にすることにより、2官能(メタ)アクリレート化合物の希釈剤としての取り扱い性が良好となり、各成分を均一に混合することができる。その結果、塗膜の全面が基材に対して一様に密着することが期待できる。光重合性2官能モノマーの25℃における粘度は、1〜100mPa・sが好ましく、3〜30mPa・sであることが特に好ましい。
【0018】
25℃における粘度が100mPa・s以下の光重合性2官能モノマーとしては、例えば2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート)、2,メチル−1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、3,メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール#200ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール#400ジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール#400ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(#700)ジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール #200 ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール#400ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール#600ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール#1000ジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ポリプロピレングリコール#700ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール#400ジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの1種または2種以上を用いることができる。
(B)25℃における粘度が100mPa・s以下の光重合性2官能モノマーの配合量は、本発明の硬化型組成物100質量部中、10〜80質量部が好ましい。10質量部以上で含むことにより、硬化性組成物を十分に低粘度、例えば50℃で50mPa・s以下にすることができる。80質量部以下で含むことにより、密着性、表面硬化性が良好となる。
【0019】
[(C)25℃における粘度が500mPa・s以下であり3官能以上の光重合性多官能モノマー]
本発明のインクジェット用硬化性組成物は、25℃における粘度が500mPa・s以下であり3官能以上の光重合性多官能モノマーを含む。3官能以上の光重合性多官能モノマーは、反応性が高く、表面硬化性を向上させる。もっとも、3官能以上の光重合性多官能モノマーの粘度が高いと、インクジェット用硬化性組成物の粘度が高くなる。3官能以上の光重合性多官能モノマーの25℃における粘度を500mPa・s以下にすることにより、他成分の光重合性単官能モノマー、光重合性2官能モノマーと相俟って、インクジェットヘッドから容易に吐出させることができる。3官能以上の光重合性多官能モノマーの25℃における粘度は、例えば、10〜500mPa・sであり、30〜100mPa・sであることが好ましい。
【0020】
25℃における粘度が500mPa・s以下の3官能以上の光重合性多官能モノマーは、例えば、3官能光重合性多官能モノマーとして、
エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート(TMP3EOTA, TMP9EOTA)、
プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート(TMP3POTA)、
プロポキシ化グリセリルトリアクリレート(G3POTA, G3.5POTA)、等のトリメチロールプロパントリアクリレートおよびアルキレンオキサイド変性物;
エトキシ化トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMP3EOTMA, TMP9EOTMA)等のトリメチロールプロパントリメタクリレートおよびアルキレンオキサイド変性物;
ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート;
4官能光重合性多官能モノマーとして、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート(EO35mol)
等を挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
(C)25℃における粘度が500mPa・s以下であり3官能以上の光重合性多官能モノマーの配合量は、本発明の硬化型組成物100質量部中、20〜50質量部が好ましい。20質量部以上で含むことにより、硬化性組成物の表面硬化性が十分に高硬度になり、50質量部以下で含むことにより、粘度が良好となる。
【0021】
[(D)光重合開始剤]
本発明のインクジェット用硬化性組成物は、光重合開始剤を含む。
【0022】
光重合開始剤としては、具体的には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインとベンゾインアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、N,N−ジメチルアミノアセトフェノン等のアミノアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;リボフラビンテトラブチレート;2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール等のチオール化合物;2,4,6−トリス−s−トリアジン、2,2,2−トリブロモエタノール、トリブロモメチルフェニルスルホン等の有機ハロゲン化合物;ベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類またはキサントン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド類、が挙げられる。
光重合開始剤は、その一種を用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
(D)光重合開始剤の配合割合は、硬化性組成物100質量部中、1〜15質量部の範囲が好ましい。
【0023】
本発明のインクジェット用硬化性組成物は、トリアジン環を有する化合物を含むことができる。トリアジン環を有する化合物は公知慣用のもの、具体的には、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン等が挙げられる。トリアジン環を有する化合物は単独であるいは2種以上の混合物として使用できる。トリアジン環を有する化合物を配合することによって、硬化性組成物の塗膜に硬度が与えられ、鉛筆硬度が良好となり、且つ、密着性とのバランスが得られる。
その中でも鉛筆硬度向上という観点から、アミノ基および不飽和二重結合のいずれか一種以上を有するトリアジン環を有する化合物が好ましく、そのようなトリアジン環を有する化合物の具体例としては、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4−ジアミノ−6−ビニル−S−トリアジン(四国化成工業製VT)、2,4−ジアミノ−6−メタクリロイルオキシエチル−S−トリアジン(四国化成工業製MAVT)、2,4−ジアミノ−6−ビニル−S−トリアジンイソシアヌル酸付加物(四国化成工業製VT−OK)等が挙げられる。特に、メラミンを含むことにより、密着性が更に向上する。
トリアジン環を有する化合物の配合割合は、硬化性組成物100質量部中、1〜10質量部の範囲が好ましい。
【0024】
[着色剤]
本発明のインクジェット用硬化性組成物は、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラックなどの公知慣用の顔料や染料などの着色剤を含むことができる。
このような着色剤は、単独または2種類以上を混合して用いても良く、その配合量は、インクジェット用硬化性組成物の不揮発分100質量部に対して、0.1〜30重量部であり、好ましくは0.5〜2質量部である。着色材の配合量が0.1質量部以上であると視認性が向上し、30質量部以下であると、塗膜下部の光硬化性が向上する。
【0025】
着色剤として白色顔料を含む場合、酸化チタン,酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、シリカ、タルク、マイカ、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、中空樹脂粒子、硫化亜鉛など公知の白色顔料を用いることができる。中でも、高い着色性および反射率から酸化チタンが好ましい。これら白色顔料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。酸化チタンは、ルチル型酸化チタンでもアナターゼ型酸化チタンでもよいが、着色性、隠蔽性および安定性からルチル型チタンを用いることが好ましい。同じ酸化チタンであるアナターゼ型酸化チタンは、ルチル型酸化チタンと比較して白色度が高く、白色顔料としてよく使用されるが、アナターゼ型酸化チタンは、光触媒活性を有するために、特にLEDから照射される光により、絶縁性樹脂組成物中の樹脂の変色を引き起こすことがある。これに対し、ルチル型酸化チタンは、白色度はアナターゼ型と比較して若干劣るものの、光活性を殆ど有さないために、酸化チタンの光活性に起因する光による樹脂の劣化(黄変)が顕著に抑制され、また熱に対しても安定である。このため、LEDが実装されたプリント配線板の絶縁層において白色顔料として用いられた場合に、高反射率を長期にわたり維持することができる。
【0026】
ルチル型酸化チタンとしては、公知のものを使用することができる。ルチル型酸化チタンの製造法には、硫酸法と塩素法の2種類あり、本発明では、いずれの製造法により製造されたものも好適に使用することができる。ここで、硫酸法は、イルメナイト鉱石やチタンスラグを原料とし、これを濃硫酸に溶解して鉄分を硫酸鉄として分離し、溶液を加水分解することにより水酸化物の沈殿物を得、これを高温で焼成してルチル型酸化チタンを取り出す製法をいう。一方、塩素法は、合成ルチルや天然ルチルを原料とし、これを約1000℃の高温で塩素ガスとカーボンに反応させて四塩化チタンを合成し、これを酸化してルチル型酸化チタンを取り出す製法をいう。その中で、塩素法により製造されたルチル型酸化チタンは、特に熱による樹脂の劣化(黄変)の抑制効果が顕著であり、本発明においてより好適に用いられる。
【0027】
白色着色剤の配合量は、吸光度に対する影響が大きく、硬化性組成物100質量部中、5〜50質量部が好ましく、より好ましくは10〜30質量部、特に好ましくは20〜30質量部である。白色顔料が5質量部以上であれば、組成物の反射率が十分となる。50
質量部以下であれば、組成物の粘度が過剰な上昇および印刷性の低下を抑制できる。
【0028】
着色剤として黒色着色剤を含む場合、カーボン、アニリンブラック、酸化鉄等を用いることができる。黒色顔料の配合量は、吸光度に対する影響が大きく、硬化性組成物100質量部中、5〜50質量部が好ましく、より好ましくは10〜30質量部、特に好ましくは20〜30質量部である。
【0029】
本発明のインクジェット用硬化性組成物には、湿潤分散剤を含むことができる。湿潤分散剤としては、一般的に顔料の分散を補助する効果のあるものを用いる事が出来る。このような湿潤分散剤としては、カルボキシル基、水酸基、酸エステルなどの極性基を有する化合物や高分子化合物、例えばリン酸エステル類などの酸含有化合物や、酸基を含む共重合物、水酸基含有ポリカルボン酸エステル、ポリシロキサン、長鎖ポリアミノアマイドと酸エステルの塩などを用いることができる。
また、これらの湿潤分散剤の中でも酸価を有するものが、酸化チタンなどの無機顔料の分散により有効である為好ましい。
酸価を有する湿潤分散剤の具体例としては、Anti−Terra−U、Anti−Terra−U100、Anti−Terra−204、Anti−Terra−205、Disperbyk−101、Disperbyk−102、Disperbyk−106、Disperbyk−110、Disperbyk−111、Disperbyk−130、Disperbyk−140、Disperbyk−142、Disperbyk−145、Disperbyk−170、Disperbyk−171、Disperbyk−174、Disperbyk−180、Disperbyk−2001、Disperbyk−2025、Disperbyk−2070、Disperbyk−2096、BYK−P104、BYK−P104S、BYK−P105、BYK−9076、BYK−220S(何れもBYK Chemie社製)等が挙げられる。
これらの酸価を有する湿潤分散剤の酸価は10〜300mgKOH/gが好ましい。
上記湿潤分散剤の配合量は、着色剤100質量部に対して、好ましくは5〜75質量部である。
【0030】
本発明のインクジェット用硬化性組成物には、表面張力調整剤を含むことができる。表面張力調整剤の配合量は、組成物100質量部に対して、好ましくは0.01〜5質量部である。
【0031】
本発明のインクジェット用硬化性組成物には、上記成分の他、必要に応じて、界面活性剤、マット剤、膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤およびレベリング剤の少なくとも1種、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系、シランカップリング剤等の密着性付与剤のような公知慣用の添加剤類を配合することができる。
【0032】
上記各成分を有する硬化性組成物は、インクジェット法に適用することから、硬化性組成物の50℃における粘度が、5〜50mPa・sであることが好ましく、5〜20mPa・sであることがより好ましい。これにより、インクジェットプリンタに不要な負荷を与えることなく、円滑な印刷が可能となる。
【0033】
硬化性組成物の粘度は、JIS K2283に従って常温(25℃)または50℃で測定した粘度をいう。常温で150mPa・s以下、または50℃における粘度が5〜50mPa・sであれば、インクジェット印刷法での良好な印刷が可能である。
【0034】
また、硬化性組成物中に含まれる粒子の最大粒径が0.1〜5μm以下であることが好ましく、0.1〜1μmであることがより好ましい。最大粒径が0.1μm以上であれば、粒子の凝集力が高くなりすぎるということがなく、5μm以下であれば、インクジェット印刷時のノズル詰りなどの問題が発生する可能性が低くなる為好ましい。
組成物中に含まれる粒子の最大粒径は、粒度分布計により測定することができ、そのD100値を最大粒径とする。
【0035】
<硬化物>
本発明の硬化性組成物は、インクジェット方式により基材に塗布後、光照射用光源により光照射することにより硬化物を形成することが可能である。
【0036】
光照射は、紫外線または活性エネルギー線の照射により行われるが紫外線が好ましい。光照射の光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、LED(発光ダイオード)UVランプなどが適当である。光源の波長としては、365nm、385nm、395nm、405nmなどが挙げられるが、短波長の光源を使用することでより良い表面硬化性が期待できる。
その他、電子線、α線、β線、γ線、X線、中性子線なども利用可能である。
【0037】
更に必要に応じ、光照射後に加熱により硬化する。ここで、加熱温度は、例えば、80〜200℃である。かかる加熱温度範囲とすることにより、十分に硬化できる。加熱時間は、例えば、10〜100分である。
【0038】
<プリント配線板>
プリント配線板は、インクジェット用硬化性組成物の硬化物を有するものであり、具体的には、回路パターンを有する基材上に、硬化性組成物からなる硬化物を有するものである。プリント配線板は以下の方法により製造することができる。
【0039】
まず、硬化性組成物を、必要に応じて有機溶剤で塗布方法に適した粘度に調整し、回路形成した基材上に、インクジェット方式で塗布してパターンを有する硬化物を形成する。ここで、硬化性組成物が光塩基発生剤を含む場合、硬化のための光照射後に硬化物を加熱することが好ましい。加熱温度は、例えば、80〜200℃である。
【0040】
本発明の硬化性組成物は、上記の組成によりインクジェット方式用のインキとして適用された場合、フレキシブル配線板に対してロールトゥロール方式の印刷が可能である。また、本発明の硬化性組成物は、例えば、ポリイミド等を主成分とするプラスチック基材と、その上に設けられた導体回路とを含むプリント配線板に対し表面硬化性および密着性に優れ、かつ、はんだ耐熱性、耐薬品性、耐溶剤性、鉛筆硬度、無電解金めっき耐性等の諸特性に優れたパターン硬化塗膜を形成できる。
硬化性組成物は、プリント配線板の硬化物形成用材料として好適であるが、特にプリント配線板の永久被膜形成用材料として好適であり、中でもソルダーレジストやソルダーレジスト上に形成するシンボルマーキングなどの永久絶縁膜形成用材料として好適である。
【実施例】
【0041】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、以下において特に断りのない限り、「部」は質量部を意味するものとする。
【0042】
表1に示す単官能モノマー、二官能モノマー、3官能以上の多官能モノマー、光重合開始剤、および添加剤を用意した。
【0043】
【表1】
【0044】
表1中の各成分を適宜用いて攪拌機にて予備混合し、インクジェット用硬化性組成物を調製した。実施例1、参考例1〜7、比較例1〜6の各成分及び配合量を表2に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
表2に示した実施例1、参考例1〜7、比較例1〜6のインクジェット用硬化性組成物を用い、以下の条件で基材にインクジェットプリンタにより描画し、次いでUV硬化させて試験基材を作成した。なお、基材として、プリント配線板用銅張積層板(FR−4、150mm×95mm×1.6mm)を使用した。
【0047】
<インクジェットプリンタによる描画条件>
・膜厚:20μm
・装置:ピエゾ方式インクジェットプリンタ(富士フィルムグローバルグラフィックシステムズ製マテリアルプリンタDMP−2831を使用(ヘッド温度50℃))
<UV硬化条件>
・露光量:1000mJ/cm
2
・波長:385nm
【0048】
インクジェット印刷時のインクジェット射出性、および塗膜のUV硬化性、密着性、塗膜硬度、無電解Ni/Auめっき耐性を調べた。各評価基準は次のとおりである。
(1)インクジェット印刷性(射出性)
液滴をまっすぐ連続して安定的に射出可能:〇
液滴の安定した射出ができない:×
なお、射出が安定せず、塗布できなかった場合は、以降の評価を実施しなかった。
【0049】
(2)表面硬化性(UV硬化性)
硬化物の表面を指で触れて、タック(べたつき)を評価した。
タックなし:◎
タックあるが、転写せず:○
タックあるが、若干の転写が見られる:△
液状成分が残っている:×
【0050】
(3)密着性
硬化塗膜に対しJIS K 5400:1990に準拠したクロスカットテープピール試験を実施し、評価した。
剥離無し:〇
若干の剥離あり:△
剥離あり:×
【0051】
(4)鉛筆硬度(塗膜硬度)
JIS K 5400に準拠して測定した。
【0052】
(5)無電解Ni/Auめっき耐性
市販の無電解Ni/Auめっき浴を用いて、Ni:0.5μm、Au:0.3μmの条件で無電解ニッケル金めっきを行って、硬化塗膜の表面状態の観察を行い、白化を次の評価基準で判定した。
白化・膨れなし:〇
わずかな表面白化あり:△
表面白化および膨れあり:×
また、無電解Ni/Auめっき後の硬化塗膜の密着性をJIS K 5400:1990に準拠したクロスカットテープピールリング試験を実施し、密着性を次の基準で評価した。
剥離無し:〇
若干の剥離あり:△
剥離あり:×
【0053】
実施例1、参考例1〜7、比較例1〜6の評価結果を表2に併記する。
表2から分かるように、本発明の組成物を使用した実施例1、参考例1〜7は、インクジェット印刷性、表面硬化性、密着性、鉛筆硬度、無電解Ni/Auめっき耐性に優れていた。なかでも環状炭化水素骨格を有する単官能モノマーと、複素環骨格を有する単官能モノマーとを含み、当該複素環骨格を有する単官能モノマーを2種含有する参考例2および実施例1は、鉛筆硬度が高く、優れた表面硬化性が得られていた。特にメラミンを含む実施例1は鉛筆硬度がより高く、優れた表面硬化性が得られていた。
【0054】
これに対し、環状炭化水素骨格を有する単官能モノマーを含まず、アクリル酸ブチルを含む比較例1は、表面硬化性、めっき耐性等が劣っていた。
また、25℃における粘度が100mPa・s以下の光重合性2官能モノマーを含まない比較例2は、3官能モノマーの配合量が多く、インクジェット印刷が不可であった。
また、25℃における粘度が100mPa・s以下の光重合性2官能モノマーを含まない比較例3は、単官能モノマーの配合量が多く、表面硬化性、鉛筆硬度等が劣っていた。
また、25℃における粘度が100mPa・s以下の光重合性2官能モノマーを含まず、代わりに25℃における粘度が100mPa・sを超える光重合性2官能モノマーであるトリシクロデカンジメタノールジアクリレートを含む比較例4は、インクジェット印刷が不可であった。
また、25℃における粘度が500mPa・s以下の3官能以上の光重合性多官能モノマーを含まない比較例5は、単官能モノマーの配合量が多く、比較例3と比べても表面硬化性、めっき耐性が劣っていた。
また、25℃における粘度が500mPa・s以下の3官能以上の光重合性多官能官能モノマーを含まず、代わりに25℃における粘度が500mPa・sを超える3官能以上の光重合性多官能モノマーであるトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレートを含む比較例6は、インクジェット印刷が不可であった。
【0055】
(参考例8〜10)
参考例8〜10は、表3に示す通り、各組成物を異なる光源で硬化させて試験基材を作製した以外は、参考例7と同様のものである。
表3から分かるように、本発明の組成物を使用した参考例8〜10は、インクジェット印刷性、表面硬化性、密着性、鉛筆硬度、無電解Ni/Auめっき耐性に優れていた。特に、光源として、波長365nmの発光ダイオード(LED)を使用した参考例8では、表面硬化性が良好であった。
【表3】
【課題】インクジェット印刷法でソルダーレジストやシンボルマーキング用の塗膜を形成し、硬化させたときの表面硬化性が良好であると共に、密着性が良好なインクジェット用硬化性組成物を提供する。
【解決手段】本発明のインクジェット用硬化性組成物は、(A)環状骨格を有する光重合性単官能モノマーと、(B)25℃における粘度が100mPa・s以下の光重合性2官能モノマーと、(C)25℃における粘度が500mPa・s以下であり3官能以上の光重合性多官能モノマーと、(D)光重合開始剤と、を含む。