(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。以下でいう加熱用えび肉及びえび肉加熱体は、縦半身体一つからなるものであってもよく、複数の縦半身体の集合体であってもよい。
【0014】
本実施形態の加熱用えび肉10A、10B(以下まとめて「加熱用えび肉10」ともいう)は、非加熱状態である。また
図1に示すように本実施形態の加熱用えび肉10(10A、10B)は、外殻及び頭部が除去されたえび身であって、えび身の正中線に沿って切断されてなる縦半身体からなる。
図1には、加熱用えび肉10の前後方向(背側から腹側に至る方向及びその逆方向)を矢印Z、左右方向(幅方向)を矢印X、縦(頭部から尾部へ至る方向及びその逆方向)を矢印Yで示している。
【0015】
加熱用えび肉10は通常、外殻とともに肢部が除去されたものである。ここでいう肢部は、顎脚、歩脚、腹肢を含む。加熱用えび肉10は背ワタ及び/又は腹ワタが除去されていてもよく、除去されていなくてもよい。また通常加熱用えび肉10は、外殻とともに尻尾が除去されていることが好ましい。
【0016】
正中線とは、えび身の前面及び背面の幅方向Xの中央を頭側から尾側まで縦(方向Y)に通る直線をいう。正中線に沿ってえび身を切断することにより、えび身を、互いに左右略対称な左半身と右半身とに分断する正中面にて二分する。えび身を正中線で切断したときの切断線の例を
図15(a)に点線80にて示す。本実施形態の加熱用えび肉10は左半身体10Aと右半身体10B(本明細書中、まとめて単に「縦半身体」ともいう)のいずれからなるものであってもよい。なお、便宜上、本明細書中左半身体10A及び右半身体10Bとは、尾を下にしたえびを背側から見たときの左右の位置に基づいて呼ぶものとする。
【0017】
本実施形態の加熱用えび肉10は、それを構成する縦半身体が縦方向Y(頭部から尾部にわたる方向)において、前述した正中線に沿う切断箇所を除き、非切断状態で連続していることが、前述した効果に優れたえび肉加熱体を得る点で好ましい。同様の観点から、加熱用えび肉10は、それを構成する縦半身体の筋肉又は外皮において、正中線に沿う切断面12以外の切れ目を有していないことが好ましく、また外皮13についても除去(特に積極的な除去)がなされていないことが好ましい。加熱用えび肉10を、背面14側から見たときの外形の面積のうち、外皮13が例えば50%以上を被覆していることが好ましく、特に80%以上を被覆していることが好ましい。ここで、背面14側から見るとは、加熱用えび肉10を、左右方向Xにおける断面12と反対側(えびの外側方)から見ることをいう。
【0018】
しかしながら、見た目のボリューム感に優れるえび肉加熱体を得る効果を損なわない範囲において、加熱用えび肉10は、前述した、切断面12以外の切断箇所や、切れ目、外皮13の除去部分を有していてもよい。その場合の切れ目の方向としては、正中線と平行、直交、交差等のいずれであってもよい。例えば、尾部側又は頭側の端部において筋肉や外皮が取り扱い中に不可避的に千切れたり、切れ目が入ってしまう点などは当然に許容されるものである。切断や切れ目、外皮の除去を行っている加熱用えび肉10についても、これを加熱した時に、後述するように、らせん状に巻回した状態となれば本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。なお、本明細書中、外皮13とは、えびの殻ではなく、殻の下側に存在する薄皮状の部分をいう。
【0019】
本実施形態の加熱用えび肉10は、保水剤を含むことが、これを加熱した時にらせん形状の美しいえび肉加熱体10が得やすい点で好ましい。保水剤としては、リン酸塩、炭酸塩、クエン酸、クエン酸塩が挙げられる。これらを溶解させた水溶液にえび肉を接触させると、えび肉の筋肉の間に水溶液の水分が保持されやすい。リン酸塩としては、オルトリン酸塩、メタリン酸塩、ポリリン酸塩、ピロリン酸塩等が挙げられる。リン酸塩、炭酸塩、クエン酸塩としては、特にアルカリ金属塩が好ましい。オルトリン酸塩としては、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウムが挙げられ、メタリン酸塩としてはメタリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウムが挙げられ、ポリリン酸塩としてはポリリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウムが挙げられ、ピロリン酸塩としてはピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウムが挙げられる。また、炭酸塩としては、例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムが挙げられる。クエン酸塩としてはクエン酸一ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸一カリウム、クエン酸二カリウム、クエン酸三カリウムなどが挙げられる。保水剤は、これらの1種のみであってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0020】
加熱用えび肉10が保水剤を含むことは分析によって確認できる。例えば、加熱用えび肉10中の炭酸塩は、イオンクロマトグラム法を用いて分析できる。また、加熱用えび肉10中のリン酸塩はリンモリブデン酸アンモニウム法やICP発光分析法を用いて分析できる。また、加熱用えび肉10中のカリウム塩は、原子吸光光度法やICP発光分析法などにより分析できる。さらに、加熱用えび肉10中のクエン酸やその塩は高速液体クロマトグラフ法やキャピラリー電気泳動法を用いて分析できる。ここでいう分析とは例えばリン酸塩、カリウム塩、クエン酸塩として、リン酸、カリウム、クエン酸の含有を確認する場合も含む。
またリン酸塩、炭酸塩、クエン酸塩等の保水剤を含むことは加熱用えび肉10のpHを測定しても確認できる。これらの保水剤はアルカリ性であるため、これらの保水剤の処理によりpHは5〜20℃にて少なくとも7.3以上となる。ここでいう加熱用えび肉10のpHとは、加熱用えび肉10をペースト化して、このペーストに5〜10倍量の氷冷した蒸留水を加えて、ホモジナイズして得られた懸濁液のpHをガラス電極法により測定する。
【0021】
加熱用えび肉10はこれを保水剤を含む水分に接させることで、水で膨潤した状態とすることができる。このように保水剤を含む加熱用えび肉10は、水で膨潤した状態となることで、これを加熱した時にらせん形状の美しいえび肉加熱体10がより得やすいと本発明者は考えている。えび肉加熱体10を一見したときの膨潤状態は、湿潤状態であって乾燥による縮小が認められない状態であればよいが、加熱用えび肉10が保水剤を含むことにより水で膨潤した状態であることは、例えば、水と非接触の状態で放置したときの湿潤状態の持続性や、見た目、質感で当業者であれば十分に判別できる。加熱用えび肉10が保水剤を含み水で膨潤した状態にあることは、加熱用えび肉10を加熱した時の食感が柔らかくプリプリしていることからも確認できる。一方、保水剤により水で膨潤した状態にない加熱用えび肉10は、加熱した場合に固い食感を有することとなる。
【0022】
本実施形態の加熱用えび肉10は、上述したように非加熱状態にあり、生鮮状態にあっても、冷凍状態にあってもよい。
【0023】
本実施形態で用いるえびの種類は限定されず、クルマエビ属(Penaeus属)、ウチワエビ属 (Ibacus属)、ヨシエビ属(Metapenaeus属)、イセエビ属(Panulirus属)、ロブスター属(Homarus属)、ヒメクダヒゲ属(Pleoticus)、タラバエビ属(Pandalus)、ミノエビ属(Heterocarpus)、コウライエビ属(Penaeus)等が挙げられる。
クルマエビ属(Penaeus属)としては、バナメイ(Penaeus vannamei)、ブラックタイガー(Penaeus monodon)、クルマエビ(Penaeus japonicus)、タイショウエビ(Penaeus chinensis)が挙げられ、体色による分類としても、各種ピンク系、ブラウン系、ホワイト系の各種のものが挙げられる。
ウチワエビ属 (Ibacus属)としては、ウチワエビ(Ibacus ciliatus)が挙げられる。
ヨシエビ属(Metapenaeus属)としては、シバエビ(Metapenaeus joyneri)、プーバラン(Metapenaeus dobsoni)、エンデバーシュリンプ(Metapanaeus endeavouri)、バングラデシュブラウン(Metapenaeus Monoceros)が挙げられる。
イセエビ属(Panulirus属)としては、イセエビ(Panulirus japonicus)が挙げられる。
ロブスター属(Homarus属)としては、オマールエビや各種のヨーロピアンロブスター、アメリカンロブスターが挙げられる。
ヒメクダヒゲ属(Pleoticus)としては、アルゼンチンアカエビ(Pleoticus muelleri)が挙げられる。
タラバエビ属(Pandalus)としては、ボタンエビ(Pandalus nipponensis)、ホッコクアカエビ(Pandalus eous)が挙げられる。
ミノエビ属(Heterocarpus)としては、コスタリカミノエビ(Heterocarpus Affinis)が挙げられる。
コウライエビ属(Penaeus)としては、バナナエビ(Penaeus Merguiensis)が挙げられる。
中でも、クルマエビ属(Penaeus属)、ヒメクダヒゲ属(Pleoticus)から選ばれる少なくとも一の属に属するえびを用いることが、本発明を適用することによる経済的効果が高いことから好ましく、クルマエビ属(Penaeus属)のエビを用いることが最も好ましい。同様の観点から本実施形態で用いるえびのサイズは、1ポンド(453.6g)あたりに何尾のえびが入るかというえびのサイズの国際規格でいえば、16/20〜91/120サイズが好ましく、31/40〜71/90サイズが特に好ましい。ここでM及びNを整数とした場合、「M/Nサイズ」とは、1ポンド当たりM〜N尾であるサイズであることを表す。
【0024】
続いて、本実施形態のえび肉加熱体20A、20B(以下まとめて「えび肉加熱体20」ともいう)について説明する。
図2は、えび肉加熱体20の正面図であり、
図3〜
図14は、えび肉加熱体20A又はえび肉加熱体20Bの写真である。
本実施形態のえび肉加熱体20は、
図2〜
図14に示すように、外殻及び頭部が除去されたえび身が、正中線に沿って切断されてなる縦半身体からなり、外皮を内側にしてらせん状に巻回されている。本実施形態のえび肉加熱体20は、自然状態、例えば外力がかけられずに戴置された状態で巻回状態が維持されるものである。らせん状とは例えばえび肉加熱体20において、外皮13の背側端部13a又は腹側の縁部13bが描く曲線がらせん状であることを指すのであってもよいし、或いは、えび肉加熱体20それ自体を一つの曲線状の物体とみてそれがらせん状であることを指すのであってもよい。
【0025】
らせん状に巻回しているか否かは、いずれか一つの方向からみた状態であってもよいが必ずしもその必要はなく、全体でみてらせん状であればよく、また仮に一つの方向から見てらせん状である場合の当該方向に特定はなく、正面、背面、平面方向や斜め方向等各種方向が挙げられる。またらせん状とは、回転しながら回転面に垂直な一方向へ移動する曲線状であればよく、そのピッチが一定である必要はない。
【0026】
図2のえび肉加熱体20A及び
図3〜
図8のえび肉加熱体は尾側を下にして背側から見たときの左半身体からなり、時計回りに巻回されている。時計回りに巻回されていることは、いわゆるZ巻き或いは右巻きと呼ばれる場合もある。また
図2のえび肉加熱体20B及び
図9〜
図14のえび肉加熱体は、尾側を下にして背側から見たときの右半身体からなり且つ反時計回りに巻回されている。ここで、反時計回りの巻回は、いわゆるS巻き或いは左巻きと呼ばれる場合もある。
えび肉加熱体20は半身体が各体節に沿って折り曲げられていることによりこのように巻回されると考えられる。本実施形態のえび肉加熱体20は
図8及び
図14に示すように、尾側からみて、外皮13の背側の縁部13b側が外側、外皮13の腹側の縁部13a側が内側となるようならせん形状となる傾向にある。
【0027】
えび肉加熱体は加熱により着色した外皮と白い筋肉とが、白い筋肉を外面としてらせん状に巻回されており、その外観が見た目に新鮮である。また広く好まれているプリプリした食感の所以である白いエビの筋肉が前面に現れており、見た目の美味しさに優れている。更に、えび肉加熱体は、らせん状に巻回されていることにより、ボリューム感に優れており、またらせん状であることにより、ソースが絡みやすいものとなる。
以上の状態に巻回した状態のえび肉加熱体を得るには、後述する好適なえび肉加熱体の製造方法を採用すればよい。
【0028】
特に
図2並びに
図3〜
図8、
図9〜
図14の写真に示すように、えび肉加熱体は、少なくともらせんに沿う一部において、筋肉における幅方向Zの中央部23cがその背側端縁側23b及び/又は腹側端縁側23aに対して、らせんの外側に向けて突出するように湾曲した状態となっていることが好ましい。このような状態のえび肉加熱体を得るためには、後述する好適なえび肉加熱体の製造方法を採用すればよい。その場合、外皮における背側端縁側13b及び/又は腹側端縁側13aの少なくとも一部は、筋肉と結合した状態で湾曲していてもよく、或いは外皮の背側端縁側13b及び/又は腹側端縁側13aは筋肉から一部剥がれていてもよい。
【0029】
また
図7、
図8、
図13及び
図14の各側面図に示すように、らせん状に巻回したえび肉加熱体は、その側面から見た場合に、らせんの中央部において、巻回されたえび身に隙間が見られないことが好ましい。このような状態のえび肉加熱体を得るためには、後述する好適なえび肉加熱体の製造方法を採用すればよい。
【0030】
また、
図8及び
図14の左側面図に示すように、らせん状に巻回したえび肉加熱体を尾側からみると、体節間の隙間が半径状に観察されていてもよい。このような状態のえび肉加熱体を得るためには、後述する好適なえび肉加熱体の製造方法を採用すればよい。
【0031】
図2にしめすように、えび肉加熱体20はその製造しやすさの点から、ピッチL(
図2参照)と最大長さR(
図2参照)との比率L/Rが0.65以上0.95以下であることが好ましく、0.75以上0.90以下であることがより好ましい。ピッチLとは、外皮の背側の外縁13bのある点Aを基準とし、この外縁に沿って、らせんの中心軸に対して1周(360度巻回)した点Bと前記の点Aとの中心軸方向Wの長さをいう。ピッチLは、1つのエビについて異なる1〜2箇所のピッチを測定したときの平均値である。また最大長さRは
図2に示すようにえび肉加熱体20を中心軸方向Wから見たときの側面視形状を横断する線分のうち最大のものをいう。えび肉加熱体20が複数のエビ半身体のらせん体からなるとき、そのうち一つのエビが上記の比率L/Rを満たせばよい。このような比率L/Rを満たすえび肉加熱体を得るためには、後述する好適なえび肉加熱体の製造方法を採用すればよい。
【0032】
また、えび肉加熱体20の巻回は、その長手方向(らせんの中心軸方向W)からみたときに(長手方向に沿ってみたときに)、同方向における一方の端部から他方の端部にかけて、1回以上3回以下であることが好ましい。ここで1回とは360度の巻回をいう。えび肉加熱体20が複数のえび半身体のらせん体からなるとき、そのうち一つのエビが上記巻回回数を満たせばよい。このような巻回回数を満たすえび肉加熱体を得るためには、後述する好適なえび肉加熱体の製造方法を採用すればよい。
【0033】
更に、えび肉加熱体20中には保水剤又は保水剤に由来する成分が存在していることが好ましい。例えば、えび肉加熱体20中の炭酸塩は、イオンクロマトグラム法を用いて分析できる。また、えび肉加熱体20中のリン酸塩はリンモリブデン酸アンモニウム法やICP発光分析法を用いて分析できる。また、えび肉加熱体20中のカリウム塩は、原子吸光光度法やICP発光分析法などにより分析できる。さらに、えび肉加熱体20中のクエン酸やその塩は高速液体クロマトグラフ法やキャピラリー電気泳動法を用いて分析できる。ここでいう分析とは例えばリン酸塩、カリウム塩、クエン酸塩として、リン酸、カリウム、クエン酸の含有を確認する場合も含む。なお、保水剤に由来する成分としてはクエン酸を175℃程度にまで加熱した場合に生じ得るアコニット酸等が挙げられる。
またリン酸塩、炭酸塩、クエン酸塩等の保水剤を含むことはえび肉加熱体20のpHを測定しても確認できる。これらの保水剤はアルカリ性であるため、これらの保水剤の処理によりpHは5〜20℃にて少なくとも7.3以上となる。ここでいうえび肉加熱体20のpHとは、えび肉加熱体20をペースト化して、このペーストに5〜10倍量の氷冷した蒸留水を加えて、ホモジナイズして得られた懸濁液のpHをガラス電極法により測定する。
【0034】
また、えび肉加熱体20は、外殻及び頭部が除去されたえび身が、正中線に沿って切断されてなる縦半身体であり且つ保水剤を含む縦半身体の加熱物であることが好ましく、特に当該縦半身体であり膨潤した状態の縦半身体の加熱物であることが好ましい。これにより、えび肉加熱体20の食感がぷりっと柔らかいものとなるだけでなく、適度に水分を有するためにえびの巻きが適度なものとなり、らせん構造の形状が整ったものとなりやすい。しかしながらえびは天然物であることから、保水剤を含む縦半身体の加熱物のらせん形状等には個体差が存在し、保水剤を含む縦半身体の加熱物である場合に特徴的な形状や特性を特定することには膨大な手間がかかり、迅速を要する特許出願に際しては、このような特定は不可能である。このように保水剤を含む縦半身体の加熱物の形状や特性を特定することには出願時に不可能である事情が存在した。
【0035】
次いで、本実施形態の好適な加熱用えび肉の製造方法を
図15に基づき説明する。
図15に示すように、本製造方法は、えび5を正中線に沿って切断すると共に外殻及び頭部を除去した縦半身体10A、10Bを得る第1工程と、
第1工程で得られた縦半身体10A、10Bを加熱して、外皮13を内側にらせん状に巻回されたえび肉加熱体20A、20Bを得る第2工程と、を有する。
【0036】
第1工程において、えび5の外殻及び頭部の除去と、えび身の正中線80に沿う切断とはどちらが先であってもかまわない。しかしながら、
図15の(a)及び(b)に示すように、外殻及び頭部の除去を先に行った後に切断を行った方が、効率よく正中線に沿う切断が可能であるため好ましい。肢部及び尾部の除去を行う場合は、これらの除去もえび身5の切断とどちらを先に行ってもよいが、肢部及び尾部の除去を先に行うことが、効率よく切断することができ、好ましい。切断は非加熱状態のえびに対して行えばよく、通常は冷凍状態のえびに対して行ってもよく、生鮮状態のえびに対して行ってもよい。
正中線に沿う切断は、包丁やスライサー等の任意の切断機器により行うことができる。切断はえびの腹側からであってもよく背側からであってもよい。
【0037】
第2工程においては、第1工程で得られた縦半身体10A、10Bを加熱して、外皮13を内側にらせん状に巻回されたえび肉加熱体20A、20Bを得る。加熱方法は、
図15(d)に示す縦半身体10A、10Bを茹でる処理に限定される必要はなく、例えば、電子レンジでの加熱、調味料で煮こむ処理、オーブンやグリル等で焼く処理、油で揚げる処理、スチームで蒸す、ボイルする等のいずれであってもよい。また加熱温度や加熱条件は、通常のえび肉加熱体を得るための加熱の条件と同様とすることができる。
【0038】
図15(c)に示す通り、本実施形態のえび肉加熱体20A、20Bの製造方法は、第1工程後で且つ第2工程前に、保水剤を含有する水溶液を前記縦半身体10A、10Bに含ませる工程を更に有することが好ましい。これによりえび肉加熱体20A、20Bは水で膨潤する。この工程を有する場合、正中線に沿う切断を行う前のえび5に浸漬処理を施した場合や、浸漬処理を行わない場合に比べて、上述した柔らかくぷりぷりとした食感が得やすいほか、えび肉加熱体のらせん状に巻回した形状がより整い、見た目に美しいものとしやすい。保水剤としては、上述したものを挙げることができる。また水溶液中の保水剤の濃度としては、炭酸塩の場合は1質量%以上5質量%以下であることが好ましく、2質量%以上4質量%以下であることがより好ましい。またリン酸塩の場合は、1質量%以上5質量%以下であることが好ましい。クエン酸、クエン酸塩の場合は、1質量%以上5質量%以下であることが好ましい。浸漬時のえびの温度は1℃以上10℃以下であることが好ましく、5℃以上10℃以下であることがより好ましい。浸漬時間は、15分以上12時間以下が好ましく、15分以上6時間以下がより好ましい。
【0039】
浸漬後の加熱用えび肉10A、10Bの水分量は、浸漬前の105質量%以上125質量%以下であることが好ましい。105質量%以上であることで、保水の効果が十分に得られ、125質量%以下であることで、えび身の形状が維持しやすい。
【0040】
浸漬処理後のえびは、そのまま加熱工程に供してもよく、冷凍処理を施した後にそのまま、又は解凍してから加熱工程に供してもよい。
冷凍する場合には、浸漬状態のえびをそのまま冷凍してもよく、また水洗した後に冷凍してもよい。
【0041】
以上の工程により得られるえび肉加熱体20A、20Bはそのらせん状の巻回という見た目の新しさ、見た目のボリューム感、ソースの絡めやすさ等を併せ持ち、そのままでも食品とすることができるほか、冷凍食品、レンジ加熱用食品、ダイエット用食品、フライ商品、チルド食品等の各種加工食品の製造原料として用いることができる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0043】
〔実施例1〕
えび5としてバナメイを用い、頭部及び外殻、肢部、尻尾を除去し、包丁で正中線に沿って縦半身に切断した。得られた一対の縦半身体を保水剤水溶液(8℃)に3時間浸漬した後、ボイルにより2分間加熱処理を行い、らせん状に巻回されたえび肉加熱体20を得た。保水剤水溶液としては、炭酸水素ナトリウムの3質量%濃度の水溶液を用いた。
【0044】
〔実施例2〕
浸漬処理を行わず、切断後の縦半身体をそのまま加熱工程に供した以外は、実施例1と同様にした。
【0045】
〔比較例1〕
頭部及び外殻、肢部、尻尾を除去したが正中線に沿う切断を施さずに浸漬処理を行った以外は、実施例1と同様とした。
【0046】
〔評価〕
実施例1、実施例2及び比較例1で得られたえび肉加熱体を以下の評価基準により目視による評価に供した。
(形状評価基準)
4:えび肉加熱体が程よく巻かれており、らせん状の形状がよく整っている。
3:えび肉加熱体がらせん状の形状を有しているが、巻きが若干きつめ(又はゆるめ)であり、またやや形状がばらついている。
2:縦半身体が丸まっているものの、らせん状とまではいえない。
1:らせん状の形状を全く有していない。
【0047】
(ボリューム感評価基準)
A:切断を行わない通常のえび肉加熱体に比べて、ボリューム感に非常に優れている。
B:切断を行わない通常のえび肉加熱体に比べて、ボリューム感があると感じる。
C:切断を行わない通常のえび肉加熱体と同じである。
【0048】
【表1】
【0049】
〔実施例3〕
えびとしてブラックタイガーを用いた。それ以外は、実施例1と同様にして、えび肉加熱体を得た。
【0050】
〔実施例4〕
えびとしてアルゼンチンアカエビを用いた。それ以外は、実施例1と同様にして、えび肉加熱体を得た。
【0051】
〔実施例5〕
えびとしてコスタリカミノエビを用いた。それ以外は、実施例1と同様にして、えび肉加熱体を得た。
【0052】
〔実施例6〕
えびとしてバナナエビを用いた。それ以外は、実施例1と同様にして、えび肉加熱体を得た。
【0053】
〔実施例7〕
えびとしてバングラデシュブラウンを用いた。それ以外は、実施例1と同様にして、えび肉加熱体を得た。
【0054】
〔実施例8〕
えびとしてホッコクアカエビを用いた。それ以外は、実施例1と同様にして、えび肉加熱体を得た。
【0055】
実施例3〜8について、実施例1と同様の評価を行ったところ以下の評価結果を得た。
【表2】
【0056】
上記実施例及び比較例に示す通り、本発明のえび肉加熱体は、従来のえび肉加熱体に比して、見た目のボリューム感や見た目の新しさや美しさに優れたものである。
【課題】従来よりも見た目のボリューム感に優れ、また見た目の新しさを有するえび肉加熱体、並びに該えび肉加熱体が得られる加熱用えび肉及びえび肉加熱体の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のえび肉加熱体は、外殻及び頭部が除去されたえび身が、正中線に沿って切断されてなる縦半身体からなり、外皮を内側にしてらせん状に巻回されている。本発明の加熱用えび肉は外殻及び頭部が除去されたえび身が、正中線に沿って切断されてなる縦半身体からなる。本発明のえび肉加熱体の製造方法は、えびを正中線に沿って切断すると共に外殻及び頭部を除去した縦半身体を得る第1工程と、