特許第6209703号(P6209703)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6209703-吸収性物品用材料の製造方法 図000013
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6209703
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】吸収性物品用材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/30 20060101AFI20170925BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20170925BHJP
   A61F 13/00 20060101ALI20170925BHJP
【FI】
   B01J20/30
   B01J20/26 D
   A61F13/00 301M
【請求項の数】9
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2017-112443(P2017-112443)
(22)【出願日】2017年6月7日
(62)【分割の表示】特願2016-7514(P2016-7514)の分割
【原出願日】2016年1月19日
【審査請求日】2017年6月8日
(31)【優先権主張番号】特願2015-8165(P2015-8165)
(32)【優先日】2015年1月19日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻 誠
(72)【発明者】
【氏名】糸井 隆
(72)【発明者】
【氏名】森 一郎
(72)【発明者】
【氏名】石岡 智
(72)【発明者】
【氏名】前田 勝司
【審査官】 河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−104119(JP,A)
【文献】 特開2005−198701(JP,A)
【文献】 特開2009−235199(JP,A)
【文献】 特開2006−191966(JP,A)
【文献】 特開2007−254348(JP,A)
【文献】 特表平11−501362(JP,A)
【文献】 特表2000−513408(JP,A)
【文献】 特表2010−540004(JP,A)
【文献】 特表2003−502353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00 − 20/34
A61F 13/15 − 13/84
A01N 1/00 − 65/48
A01P 1/00 − 23/00
A61L 9/00 − 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機疎水性抗菌剤を、25℃における蒸気圧が30Pa以下である親水性有機溶媒に溶解してなる抗菌剤溶液を、吸収性物品用材料に適用する工程を有する吸収性物品用材料の製造方法であって、
前記抗菌剤溶液と、吸水性樹脂とを混合する工程を有し、
前記抗菌剤溶液と前記吸水性樹脂とを混合する工程を行うのに先立ち、該吸水性樹脂の表面を架橋する表面架橋工程を行い、
前記抗菌剤溶液と前記吸水性樹脂とを混合した後、前記有機溶媒を残留させたままにしておく吸収性物品用材料の製造方法。
【請求項2】
前記抗菌剤溶液と前記吸水性樹脂とを混合する前に、又は該抗菌剤溶液と該吸水性樹脂とを混合した後に、該吸水性樹脂と無機微粒子とを混合する工程を更に含む請求項1に記載の吸収性物品用材料の製造方法。
【請求項3】
前記無機微粒子は、シリカ微粒子、酸化ジルコニア、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化亜鉛又は金から選ばれる1種又は2種以上の組み合わせからなる請求項2に記載の吸収性物品用材料の製造方法。
【請求項4】
前記無機微粒子の平均一次粒子径は、5nm以上500nm以下である請求項2又は3に記載の吸収性物品用材料の製造方法。
【請求項5】
前記有機疎水性抗菌剤が、以下の式(1)若しくは(2)で表される構造を有する有機化合物、又はトリクロサンである請求項1ないし4のいずれか1項に記載の吸収性物品用
材料の製造方法。
【化1】
【化2】
【請求項6】
前記有機疎水性抗菌剤が、セチルリン酸ベンザルコニウム又はピロクトンオラミンである請求項1ないし5のいずれか一項に記載の吸収性物品用材料の製造方法。
【請求項7】
前記有機溶媒が、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びブチレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種の親水性有機溶媒である請求項1ないし6のいずれか一項に記載の吸収性物品用材料の製造方法。
【請求項8】
前記有機溶媒が、多価アルコールである請求項1ないし7のいずれか一項に記載の吸収性物品用材料の製造方法。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか一項に記載の製造方法によって製造された吸収性物品用材料を、風送によって搬送する工程を含む吸収性物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性樹脂組成物及びその製造方法に関する。本発明の吸水性樹脂組成物は、例えば吸収性物品に好適に用いられる。
【背景技術】
【0002】
吸水性樹脂が尿や経血等の排泄物を吸収した状態において悪臭が発生することを防止するために、該吸水性樹脂に抗菌剤を付与する技術が知られている。例えば特許文献1及び2には、ヒドロゲル形成吸収ポリマー及び抗菌剤を含んでなり、該ヒドロゲル形成吸収ポリマーが該抗菌剤でコートされている抗菌性ヒドロゲル形成吸収ポリマーが記載されている。
【0003】
特許文献3には、(メタ)アクリル酸(塩)を主構成単位としてなる架橋重合体粒子、表面張力が40〜80ダイン/cmである表面改質剤及び体積平均粒子径が1〜500nmの水不溶性粒子からなる混合物を含んでなる吸収剤が記載されている。そして同文献には、この吸収剤に、塩化ベンザルコニウム塩及びグルコン酸クロルヘキシジンなどの抗菌剤を添加してもよいことが記載されている。特許文献4には、超吸収体と、抗菌剤及びポリオールを有する溶液とを、該超吸収体を表面架橋剤と接触させるのと同時に又は接触させた直後に、かつ表面架橋を完成させる硬化段階に先立って接触させる工程を有する、抗菌剤のコーティングを有する超吸収体の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平11−501362号公報
【特許文献2】特表2000−513408号公報
【特許文献3】特開2005−95759号公報
【特許文献4】特表2010−540004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2に記載の技術では、ヒドロゲル形成吸収ポリマーを抗菌剤でコートするのに先立ち、該抗菌剤を有機溶媒に溶解している。この有機溶媒の選定が適切でない場合には、有機溶媒に特有の悪臭が生じたり、人体に対する安全性に問題が起こったり、引火や爆発に対する安全性が懸念されたりする。特許文献3に記載の技術では、抗菌剤をどのような方法で添加するのかが明記されていない。添加の方法によっては、抗菌剤が不均一に架橋重合体粒子に付着してしまい、所望の効果が得られない可能性がある。特許文献4に記載の技術では、表面架橋剤を硬化させるときに加える熱に起因して、抗菌剤が変質してしまう可能性がある。また、ポリオールの種類によっては抗菌剤が溶解せず、そのことに起因して抗菌剤が超吸収体の表面に均一に付着しない可能性がある。
【0006】
したがって本発明の課題は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る吸水性樹脂組成物及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、有機疎水性抗菌剤と、親水性かつ不揮発性の有機溶媒と、吸水性樹脂とを有する吸水性樹脂組成物を提供するものである。
【0008】
また本発明は、有機疎水性抗菌剤を有機溶媒に溶解してなる抗菌剤溶液と、吸水性樹脂とを混合する工程を有する吸水性樹脂組成物の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、吸水性能が高く、悪臭を発せず、十分な抗菌効果が発現する吸水性樹脂組成物が提供される。
また本発明によれば、吸水性樹脂の吸水性能を損なうことなく、かつ、吸水性樹脂組成物自体が悪臭を発せず、十分な抗菌効果が発現する吸水性樹脂組成物を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の製造方法によって得られた吸水性樹脂組成物を風送によって搬送する状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明は、吸水性樹脂組成物及びその製造方法に係るものである。本発明の製造方法の対象物である吸水性樹脂組成物は、少なくとも吸水性樹脂及び抗菌剤を必須の構成成分とするものである。製造条件によっては、吸水性樹脂及び抗菌剤に加えて、有機溶媒も組成物の構成成分となることがある。更に、無機微粒子も組成物の構成成分となることがある。
【0012】
吸水性樹脂組成物において、抗菌剤は、吸水性樹脂の表面に付着した状態で存在することができる。同様に、有機溶媒や無機微粒子も吸水性樹脂の表面に付着した状態で存在することができる。
【0013】
吸水性樹脂としては、水を吸収して膨潤して、水を保持し得る高分子材料が用いられる。そのような高分子材料は当該技術分野において公知である。具体的には、以下のモノマーから選ばれる1種類以上を重合して得られる高分子材料が挙げられる。この高分子材料には、必要に応じて架橋処理を施してもよい。重合方法は、特に限定されるものではなく、逆相懸濁重合法や水溶液重合法などの一般的に知られた吸水性樹脂の種々の方法を採用することができる。その後、この重合体に対して必要に応じて粉砕、分級などの操作を行い、また、必要に応じて表面処理を行う。
【0014】
前記モノマーは、水溶性で、重合性の不飽和基を有するモノマーであることが好ましい。具体的には、オレフィン系不飽和カルボン酸又はその塩、オレフィン系不飽和カルボン酸エステル、オレフィン系不飽和スルホン酸又はその塩、オレフィン系不飽和リン酸又はその塩、オレフィン系不飽和リン酸エステル、オレフィン系不飽和アミン、オレフィン系不飽和アンモニウム塩、オレフィン系不飽和アミドなどの重合性不飽和基を有するビニルモノマーが例示される。
【0015】
オレフィン系不飽和カルボン酸又はその塩としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸などの不飽和カルボン酸、これらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0016】
オレフィン系不飽和カルボン酸エステルとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0017】
オレフィン系不飽和スルホン酸又はその塩としては、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸又はその塩等が挙げられる。
【0018】
オレフィン系不飽和リン酸又はその塩としては、(メタ)アクリロイル(ポリ)オキシエチレンリン酸エステル又はその塩等が挙げられる。
【0019】
オレフィン系不飽和アミンとしては、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0020】
オレフィン系不飽和アンモニウム塩としては、前記オレフィン系不飽和アミンの4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0021】
オレフィン系不飽和アミドとしては、(メタ)アクリルアミド、メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド誘導体やビニルメチルアセトアミド等が挙げられる。
【0022】
他のモノマーの具体例としては、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、N−アクリロイルピペリジン、N−アクリロイルピロリジン、N−ビニルアセトアミドなどのノニオン性の親水基含有不飽和モノマーなどが挙げられる。
【0023】
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味し、(メタ)アクリルアミドとは、アクリルアミド又はメタクリルアミドを意味し、(メタ)アクリロイルとはアクリロイル又はメタクリロイルを意味する。
【0024】
吸水性樹脂の具体例としては、デンプンや架橋カルボキシルメチル化セルロース、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の重合体又は共重合体等、ポリアクリル酸及びその塩並びにポリアクリル酸塩グラフト重合体を挙げることができる。ポリアクリル酸塩としては、ナトリウム塩を好ましく用いることができる。また、アクリル酸にマレイン酸、イタコン酸、アクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又はスチレンスルホン酸等のコモノマーを吸水性樹脂の性能を低下させない範囲で共重合させた共重合体も好ましく使用し得る。
【0025】
吸水性樹脂の形状は特に制限されず、例えば、球状、塊状、ブドウの房状、繊維状など、いずれの形状も用いることができる。吸水性樹脂の平均粒子径は、好ましくは10μm以上、更に好ましくは100μm以上、そして、好ましくは1000μm以下、更に好ましくは800μm以下であり、より具体的には、好ましくは10μm以上1000μm以下、更に好ましくは100μm以上800μm以下である。
【0026】
抗菌剤としては、有機化合物が用いられる。有機抗菌剤は、酸化亜鉛や銀含有抗菌剤等の無機抗菌剤に比べて抗菌効果が高いからである。また抗菌剤としては、疎水性のものが用いられる。疎水性抗菌剤は、親水性抗菌剤に比べて皮膚刺激性が低いからである。親水性抗菌剤は、親水性であるがゆえに皮膚に浸透しやすく、そのことに起因して皮膚に刺激を与えやすい。これとは対照的に、疎水性抗菌剤は、疎水性であるがゆえに皮膚に浸透しづらく、皮膚の表面にとどまりやすいので、皮膚に刺激を与えづらい。抗菌剤が疎水性であるとは、25℃の水に対する溶解度が好ましくは40g以下、更に好ましくは10g以下、一層好ましくは1g以下であることを言う。抗菌剤の溶解度は次の方法によって測定することができる。25℃の純水100gに対して、十分乾燥させた抗菌剤を投入し、スターラー又は振とう機で撹拌して溶解させ、1時間撹拌しても溶解できない直前の投入量を、当該抗菌剤の25℃の水に対する溶解度とする。
【0027】
以上のとおり、本発明では有機疎水性抗菌剤を用いる。有機疎水性抗菌剤としては、例えば以下の式(1)又は(2)で表される有機化合物を用いることが好ましい。これらの有機化合物は、抗菌効果が高く、かつ皮膚刺激性が低いからである。これらの有機化合物は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
【化1】
【0029】
式(1)で表される有機疎水性抗菌剤において、R及びRにおける炭素数は、メチル基、エチル基を除き、それぞれ独立に6以上であることが好ましく、8以上であることが更に好ましく、10以上であることが一層更に好ましく、また24以下であることが好ましく、22以下であることが更に好ましく、20以下であることが一層更に好ましい。具体的には、6以上24以下であることが好ましく、8以上22以下であることが更に好ましく、10以上20以下であることが一層更に好ましい。
【0030】
式(1)で表される有機疎水性抗菌剤において、R及びRにおける炭素数は、メチル基、エチル基を除き、それぞれ独立に6以上であることが好ましく、8以上であることが更に好ましく、10以上であることが一層更に好ましく、また30以下であることが好ましく、24以下であることが更に好ましいく、22以下であることが一層更に好ましい。具体的には、6以上30以下であることが好ましく、8以上24以下であることが更に好ましく、10以上22以下であることが一層更に好ましい。
【0031】
式(1)で表される有機疎水性抗菌剤において、R及び/又はRがアルキルアルキレンオキサイド基である場合、該基におけるアルキル基の炭素数は、6以上であることが好ましく、8以上であることが更に好ましく、また24以下であることが好ましく、22以下であることが更に好ましい。具体的には、6以上24以下であることが好ましく、8以上22以下であることが更に好ましい。アルキルアルキレンオキサイド基におけるアルキレン基の炭素数は、2以上であることが更に好ましく、また6以下であることが好ましく、4以下であることが更に好ましい。具体的には、2以上6以下であることが好ましく、2以上4以下であることが更に好ましい。
【0032】
【化2】
【0033】
式(2)で表される有機疎水性抗菌剤において、Rにおける炭素数は、1以上であることが好ましく、3以上であることが更に好ましく、6以上であることが一層更に好ましく、また30以下であることが好ましく、24以下であることが更に好ましく、22以下であることが一層更に好ましい。具体的には、1以上30以下であることが好ましく、3以上24以下であることが更に好ましく、6以上22以下であることが一層更に好ましい。
【0034】
式(2)で表される有機疎水性抗菌剤において、Rがシクロアルキル基である場合、該基における炭素数は、6以上であることが好ましく、7以上であることが更に好ましく、また30以下であることが好ましく、24以下であることが更に好ましい。具体的には、6以上30以下であることが好ましく、7以上24以下であることが更に好ましい。
【0035】
式(2)で表される有機疎水性抗菌剤において、Rがアリール基である場合、該基は、フェニル基、炭素数1〜18のアルキル基で置換されたフェニル基、ベンジル基、炭素数1以上18以下のアルキル基で置換されたベンジル基、炭素数7以上24以下のフェノキシアルキル基であることが好ましい。
【0036】
式(2)で表される有機疎水性抗菌剤において、Rがアルキルアルキレンオキサイド基である場合、該基におけるアルキル基の炭素数は、6以上であることが更に好ましく、また24以下であることが好ましく、22以下であることが更に好ましい。具体的には、6以上24以下であることが好ましく、6以上22以下であることが更に好ましい。アルキルアルキレンオキサイド基におけるアルキレン基の炭素数は、2以上であることが更に好ましく、また6以下であることが好ましく、4以下であることが更に好ましい。具体的には、2以上6以下であることが好ましく、2以上4以下であることが更に好ましい。
【0037】
式(2)で表される有機疎水性抗菌剤において、Rにおける炭素数は、1以上であることが好ましく、また6以下であることが好ましく、4以下であることが更に好ましい。具体的には、1以上6以下であることが好ましく、1以上4以下であることが更に好ましい。
【0038】
式(2)で表される有機疎水性抗菌剤において、Rがシクロアルキル基である場合、該基はシクロペンチル基、シクロヘキシル基であることが更に好ましい。
【0039】
式(2)で表される有機疎水性抗菌剤において、Xがアルカリ金属イオンである場合、その例としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン及びカリウムイオンが挙げられる。Xがアルカリ土類金属イオンである場合、その例としては、マグネシウムイオン、カルシウムイオン及びストロンチウムイオンが挙げられる。Xが2価以上4価以下のカチオンである場合、その例としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N置換エタノールアミン、N置換ジエタノールアミン、トリスヒドロキシアミノメタン、グアニジン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン等のアミンのプロトン塩(アミンにHが付加したもの)が挙げられる。
【0040】
式(1)で表される有機疎水性抗菌剤の具体例としては、セチルリン酸ベンザルコニウムが挙げられる。セチルリン酸ベンザルコニウムとしては、花王株式会社より商品名サニゾールPとして販売されている抗菌剤を用いることができる。一方、式(2)で表される有機疎水性抗菌剤の具体例としては、1−ヒドロキシ−4−メチル−6−(2,4,4−トリメチルペンチル)−2(1H)−ピリドン モノエタノールアミン塩〔1-Hydroxy-4-methyl-6-(2,4,4-trimethyl-pentyl)-2(1H)-pyridone; combination with 2-aminoethanol(1:1)〕(CAS登録番号68890−66−4、別名ピロクトンオラミン)が挙げられる。この抗菌剤は式(2A)で表され、クラリアント社により商品名オクトピロックスとして販売されている
【0041】
【化3】
【0042】
前記以外の有機疎水性抗菌剤としては、例えば5−クロロ−2−[2,4−ジクロロフェノキシ]フェノールが挙げられる。この化合物はトリクロサンとも呼ばれている。
【0043】
有機疎水性抗菌剤を吸水性樹脂に付着させることを目的として、本製造方法においては、有機疎水性抗菌剤を有機溶媒に溶解して抗菌剤溶液となし、この抗菌剤溶液と吸水性樹脂とを混合する工程を採用している。抗菌剤溶液と吸水性樹脂とを混合することで、該吸水性樹脂に均一に有機疎水性抗菌剤を付着させることができる。抗菌剤溶液は、有機疎水性抗菌剤を完全溶解している溶液であることが好ましい。未溶解の有機疎水性抗菌剤が抗菌剤溶液に存在している場合には、そのような抗菌剤溶液と吸水性樹脂とを混合すると、有機疎水性抗菌剤が不均一に付着してしまう可能性がある。
【0044】
本製造方法においては、抗菌剤溶液と吸水性樹脂とを混合する工程を行うのに先立ち、吸水性樹脂の表面を架橋する表面架橋工程を行ってもよい。表面架橋工程を行うことで、吸水性樹脂の吸水性能を所望のものとすることができる。
【0045】
前記の有機溶媒は25℃において液体のものであることが好ましい。有機溶媒としては、有機疎水性抗菌剤を溶解し得るものが用いられる。特に、有機疎水性抗菌剤の溶解度が好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、一層好ましくは15質量%以上である有機溶媒を用いることが有利である。ここで、溶解度がX質量%であるとは、100gの有機溶媒に対してXg以上の有機疎水性抗菌剤が溶解することをいう。有機疎水性抗菌剤の溶解度が温度に依存して変化する場合には、抗菌剤溶液を吸水性樹脂と混合するときの温度における溶解度が上述のとおりであることが好ましい。
【0046】
有機疎水性抗菌剤の溶解性を十分に確保する観点から、有機溶媒はその溶解度パラメータが12以上であることが好ましく、13以上であることが更に好ましく、13.5以上であることが一層好ましく、14以上であることが更に一層好ましい。また溶解度パラメータは28以下であることが好ましく、27以下であることが更に好ましく、26以下であることが一層好ましく、25以下であることが更に一層好ましい。具体的には、溶解度パラメータは12以上28以下であることが好ましく、13以上27以下であることが更に好ましく、13.5以上26以下であることが一層好ましく、14以上25以下であることが更に一層好まし。溶解度パラメータとは、Fedorsの方法[R.F.Fedors, Polym.Eng. Sci., 14, 147(1974)]により計算され、単位は(cal/cm31/2で表されるものである。溶解度パラメータは、有機疎水性抗菌剤と有機溶媒との親和性を表す指標の一つであり、この値が近いほど両者の相溶性が高いことを示す。
【0047】
有機溶媒の溶解度パラメータδは次式で求められる。
δ=(ΔE/V)1/2 (cal/cm31/2
式中、ΔEは蒸発エネルギーを表し、Vはモル体積を表す。
【0048】
2種類以上の有機溶媒を用いる場合には、以下に示す混合物の溶解度パラメータδmixが、上述の値以上であることが好ましい。
δmix=Σδiφi (cal/cm31/2
式中、δiは混合物を構成する各有機溶媒の溶解度パラメータを表し、φはその成分の体積分率を表す。
【0049】
有機溶媒は、揮発性が低いことが好ましい。揮発性の高い有機溶媒を用いると、吸水性樹脂組成物の製造過程において有機溶媒が揮発することがあるので、製造設備に排気装置を付設する必要が生じてしまう。これに対して揮発性の低い有機溶媒を用いれば、そのような装置の付設は不要である。また揮発性の高い有機溶媒は、引火や爆発のおそれがあることから、製造装置に防爆装置を付設する必要があるが、揮発性の低い有機溶媒を用いれば、そのような装置の付設も不要である。このように、揮発性の低い有機溶媒を用いることで、抗菌剤溶液と吸水性樹脂とを混合した後、有機溶媒を吸水性樹脂組成物中に残留させたままにしておくことができる。
【0050】
以上の観点から、有機溶媒は、25℃における蒸気圧が30Pa以下であることが好ましく、20Pa以下であることが更に好ましく、15Pa以下であることが一層好ましく、10Pa以下であることが更に一層好ましい。
【0051】
吸水性樹脂組成物の製造過程における安全性の確保の観点から、有機溶媒はその引火点が高いことが好ましい。引火点の高い有機溶媒を用いることで、簡易な設備で吸水性樹脂組成物を製造することができる。有機溶媒の引火点は、具体的には100℃以上であることが好ましく、105℃以上であることが更に好ましく、110℃以上であることが一層好ましく、115℃以上であることが更に一層好ましい。引火点とは、可燃性蒸気が爆発下限値の濃度に達する液温のことであり、JIS K2265 クリーブランド開放式引火点測定試験に準じて測定される。
【0052】
吸水性樹脂組成物の製造過程における有機溶媒のハンドリング性を良好なものとする観点から、該有機溶媒は、その分子量が低いことが好ましい。有機溶媒が高分子量になると、その粘度が上昇しハンドリング性が低下する傾向にある。有機溶媒の分子量は、具体的には200未満であることが好ましく、150未満であることが更に好ましく、100未満であることが一層好ましく、91未満であることが更に一層好ましい。
【0053】
分子量と同様の観点から、有機溶媒は適切な粘度を有しハンドリング性が良好であることが好ましい。有機溶媒が過度に高粘度であるとハンドリング性が低下する傾向にある。逆に過度に低粘度であると、有機溶媒が吸水性樹脂に定着しづらくなり、有機疎水性抗菌剤を吸水性樹脂に均一に付与しづらくなる。これらの観点から、有機溶媒は、25℃における粘度が、5mPa・s以上であることが好ましく、10mPa・s以上であることが更に好ましく、30mPa・s以上であることが一層好ましく、60mPa・s以上であることが更に一層好ましい。また有機溶媒は、25℃における粘度が、1500mPa・s以下であることが好ましく、500mPa・s以下であることが更に好ましく、300mPa・s以下であることが一層好ましく、90mPa・s以下であることが更に一層好ましい。具体的には、有機溶媒は、25℃における粘度が、5mPa・s以上1500mPa・s以下であることが好ましく、10mPa・s以上500mPa・s以下であることが更に好ましく、30mPa・s以上300mPa・s以下であることが一層好ましく、60mPa・s以上90mPa・s以下であることが更に一層好ましい。有機溶媒の粘度は、25℃において、東機産業株式会社製B形やTVB形粘度計によって測定することができる。
【0054】
有機溶媒として用いられる好ましい化合物としては、例えば二価アルコール(ジオール)、三価アルコール(トリオール)及び四価以上のアルコールなどの多価アルコールのような水溶性有機溶媒が挙げられる。これら多価アルコールにおけるアルキル基の炭素数は、2以上であることが好ましい。また、アルキル基の炭素数は、18以下であることが好ましく、10以下であることが更に好ましく、4以下であることが一層好ましい。具体的には、アルキル基の炭素数は、2以上18以下であることが好ましく、2以上10以下であることが更に好ましく、2以上4以下であることが一層好ましい。
【0055】
特に多価アルコールのうち、炭素数が2以上4以下である低級二価アルコールを用いることが好ましい。具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びブチレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種の親水性有機溶媒を用いることが好ましい。これらの親水性有機溶媒は、人体に対する安全性が高く、悪臭を生じることがなく、除去工程が不要であり、引火や爆発のおそれが低いからである。プロピレングリコールとしては、1,2−プロピレングリコール及び1,3−プロピレングリコールを用いることができる。ブチレングリコールとしては、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール及び2,3−ブチレングリコールを用いることができる。
【0056】
抗菌剤溶液における有機疎水性抗菌剤の濃度は、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることが更に好ましく、3質量%以上であることが一層好ましく、5質量%以上であることが更に一層好ましい。また、抗菌剤溶液における有機疎水性抗菌剤の濃度は、50質量%以下であることが好ましく、35質量%以下であることが更に好ましく、25質量%以下であることが一層好ましく、20質量%以下であることが更に一層好ましい。具体的には、抗菌剤溶液における有機疎水性抗菌剤の濃度は、0.5質量%以上50質量%以下であることが好ましく、1質量%以上35質量%以下であることが更に好ましく、3質量%以上25質量%以下であることが一層好ましく、5質量%以上20質量%以下であることが更に一層好ましい。この濃度範囲の抗菌剤溶液を用いることで、有機疎水性抗菌剤を吸水性樹脂に均一に付着させることができる。
【0057】
抗菌剤溶液と吸水性樹脂とを混合するときの両者の比率は、吸水性樹脂の質量を基準として、抗菌剤溶液中の有機疎水性抗菌剤の質量が0.001質量%以上となる比率であることが好ましく、0.005質量%以上となる比率であることが更に好ましく、0.01質量%以上となる比率であることが一層好ましく、0.05質量%以上となる比率であることが更に一層好ましい。また、吸水性樹脂の質量を基準として、抗菌剤溶液中の有機疎水性抗菌剤の質量が1質量%以下となる比率であることが好ましく、0.7質量%以下となる比率であることが更に好ましく、0.5質量%以下となる比率であることが一層好ましい。具体的には、吸水性樹脂の質量を基準として、抗菌剤溶液中の有機溶媒の質量が0.001質量%以上1質量%以下となる比率であることが好ましく、0.005質量%以上0.7質量%以下となる比率であることが更に好ましく、0.01質量%以上0.5質量%以下となる比率であることが一層好ましく、0.05質量%以上0.5質量%以下となる比率であることが更に一層好ましい。抗菌剤溶液と吸水性樹脂とをこの範囲の比率で混合することで、有機疎水性抗菌剤を吸水性樹脂に均一に付着させることができる。また、両者を混合した後に、有機溶媒を残留させたままにしても、吸水性樹脂組成物の取り扱い性、特に流動性を良好にすることができる。
【0058】
また、抗菌剤溶液と吸水性樹脂とを混合するときの両者の比率は、吸水性樹脂の質量を基準として、抗菌剤溶液中の有機溶媒の質量が0.01質量%以上となる比率であることが好ましく、0.02質量%以上となる比率であることが更に好ましく、0.03質量%以上となる比率であることが一層好ましく、0.05質量%以上となる比率であることが更に一層好ましい。また、吸水性樹脂の質量を基準として、抗菌剤溶液中の有機溶媒の質量が10質量%以下となる比率であることが好ましく、7質量%以下となる比率であることが更に好ましく、5質量%以下となる比率であることが一層好ましく、3質量%以下となる比率であることが更に一層好ましい。具体的には、吸水性樹脂の質量を基準として、抗菌剤溶液中の有機溶媒の質量が0.01質量%以上10質量%以下となる比率であることが好ましく、0.02質量%以上7質量%以下となる比率であることが更に好ましく、0.03質量%以上5質量%以下となる比率であることが一層好ましく、0.05質量%以上3質量%以下となる比率であることが更に一層好ましい。抗菌剤溶液と吸水性樹脂とをこの範囲の比率で混合することで、有機疎水性抗菌剤を吸水性樹脂に均一に付着させることができる。また、両者を混合した後に、有機溶媒を残留させたままにしても、吸水性樹脂組成物の取り扱い性、特に流動性を良好にすることができる。
【0059】
抗菌剤溶液と吸水性樹脂との混合に際しては、吸水性樹脂に抗菌剤溶液を添加してもよく、逆に抗菌剤溶液に吸水性樹脂を添加してもよい。あるいは、抗菌剤溶液と吸水性樹脂とを同時に添加してもよい。
【0060】
抗菌剤溶液と吸水性樹脂とを混合した後は、必要に応じ加熱や減圧等の手段によって有機溶媒を除去してもよい。もちろん有機溶媒を除去せずに残留させておいてもよい。いずれの場合であっても、後工程として、混合後の吸水性樹脂と無機微粒子とを混合する工程を更に行ってもよい。この工程を行うことで、吸水性樹脂に無機微粒子を付与することができる。無機微粒子の付与は、目的とする吸水性樹脂組成物の粉体特性、特に流動性を向上させる点から有利である。
【0061】
無機微粒子としては、例えばシリカ微粒子、酸化ジルコニア、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化亜鉛、金等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの無機微粒子の中でも特にシリカ微粒子を用いることが好ましい。
【0062】
シリカ微粒子としては、合成非晶質シリカが好ましい。合成非晶質シリカは、乾式法によって製造されるものと、湿式法によって製造されるものとに大別され、前者には乾式シリカがあり、後者には湿式シリカ、シリカゲル、コロイダルシリカがあるが、シリカを吸水性樹脂に均一に付着させる観点から、特に好ましいものは乾式シリカである。乾式シリカとしては、例えば、日本アエロジル株式会社より商品名アエロジルとして販売されているものが好ましく用いられる。
【0063】
無機微粒子の平均一次粒子径は、取り扱い性及び吸水性樹脂への付着性の観点から、好ましくは5nm以上、更に好ましくは10nm以上、そして、好ましくは500nm以下、更に好ましくは100nm以下、より具体的には、好ましくは5nm以上500nm以下、更に好ましくは10nm以上100nm以下である。無機微粒子の平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡による100個以上の粒子の観察によって測定されるFeret径の相加平均値である。
【0064】
無機微粒子と、抗菌剤溶液と混合後の吸水性樹脂とを混合するときの両者の比率は、仕込みの吸水性樹脂、すなわち抗菌剤溶液と混合される前の吸水性樹脂の質量を基準として、無機微粒子の質量が0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることが更に好ましく、0.1質量%以上であることが一層好ましく、0.2質量%以上であることが更に一層好ましい。また、仕込みの吸水性樹脂の質量を基準として、無機微粒子の質量が5質量%以下であることが好ましく、4質量%以下であることが更に好ましく、3質量%以下であることが一層好ましく、2質量%以下であることが更に一層好ましい。具体的には、仕込みの吸水性樹脂の質量を基準として、無機微粒子の質量が0.01質量%以上5質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上4質量%以下であることが更に好ましく、0.1質量%以上3質量%以下であることが一層好ましく、0.2質量%以上2質量%以下であることが更に一層好ましい。無機微粒子と吸水性樹脂とをこの範囲の比率で混合することで、無機微粒子を吸水性樹脂に均一に付着させることができ、目的とする吸水性樹脂組成物の粉体特性、特に流動性を向上させることができる。
【0065】
抗菌剤溶液と吸水性樹脂とを混合した後に、該吸水性樹脂と無機微粒子とを混合するに際しては、抗菌剤溶液と混合後の吸水性樹脂に無機微粒子を添加してもよく、逆に無機微粒子に、抗菌剤溶液と混合後の吸水性樹脂を添加してもよい。あるいは、無機微粒子と、抗菌剤溶液と混合後の吸水性樹脂とを同時に混合してもよい。
【0066】
また、有機溶媒に抗菌剤を溶かした溶液に、添加物を溶解・分散させてもよい。添加物は香料であることが好ましい。
【0067】
以上の説明は、抗菌剤溶液と吸水性樹脂とを混合した後に、該吸水性樹脂と無機微粒子とを混合する工程に関するものであったが、これに代えて、吸水性樹脂と無機微粒子とを混合して、該無機微粒子を該吸水性樹脂に付着させた後に、該無機微粒子が付着した該吸水性樹脂を、抗菌剤溶液と混合してもよい。
【0068】
以上の方法によれば、吸水性樹脂の表面に、少なくとも抗菌剤が付着した状態の吸水性樹脂組成物が得られ、場合によっては抗菌剤と有機溶媒とが付着した状態の吸水性樹脂組成物が得られる。この吸水性樹脂組成物においては、抗菌剤の疎水性に起因にして、少なくとも抗菌剤が、吸収性樹脂の表面に不連続に付着した状態となり、場合によっては抗菌剤と有機溶媒とが、吸収性樹脂の表面に不連続に付着した状態となる。換言すれば、吸水性樹脂の表面を海としたとき、少なくとも抗菌剤が、海の中に島状に点在した状態で存在しており、場合によっては抗菌剤と有機溶媒とが、海の中に島状に点在した状態で存在している。このような状態で少なくとも抗菌剤が吸水性樹脂の表面を被覆していることで、吸水性樹脂組成物はその流動性が一層向上する。この流動性の向上効果を一層顕著なものとする観点から、吸水性樹脂の表面を被覆する抗菌剤の被覆率は、5%以上であることが好ましく、7%以上であることが更に好ましく、15%以上であることが一層好ましい。また、抗菌剤の被覆率は、40%以下であることが好ましく、30%以下であることが更に好ましく、25%以下であることが一層好ましい。抗菌剤の被覆率は、5%以上40%以下であることが好ましく、7%以上30%以下であることが更に好ましく、15%以上25%以下であることが一層好ましい。
【0069】
吸水性樹脂の表面を被覆する抗菌剤の被覆率は、X線電子分光法(ESCA)によって測定することができる。具体的な測定方法は以下のとおりである。吸収性物品の構成部材を接合する接着剤の接着力をコールドスプレーによって弱め、丁寧に剥がすことによって吸収体を取り出す。目開き1mm〜5mmの篩を用い、吸収体から吸水性樹脂を大まかに取り出す。更に振動によってパルプと吸収性樹脂を分離し、吸収性樹脂のみを取り出す。サンプル台に両面接着カーボンテープで吸収性樹脂を均一に隙間なく固定する。このとき、吸収性樹脂の表面が平坦になるようにする。測定装置はPHI Quantera SXM(ULVAC―PHI Inc.)を用いる。測定条件は、X線源が単色化AlKα線 1486.6eV,25W,15kV、ビーム系については500μm×500μm、Pass energyは280.eV(survey) 112.eV(narrow)、Stepは1.00eV(survey) 0.20eV(narrow)、帯電補正はNewtralizerおよびAr照射、光電子取り出し角度は45degree、検出元素はC1s(15)、N1s(50)、1s(10)、Na1s(15)、Si2p(20)、結合エネルギー位置の補正は炭素のCHに由来するC1s284.8Vで行う。被覆率は、下記の式により計算する。
抗菌剤の被覆率=抗菌剤処理後の「Na」の表面元素濃度の減少量/未処理(母体吸収性樹脂)の「Na」の表面元素濃度。
【0070】
本発明の吸水性樹脂組成物においては、仕込みの有機疎水性抗菌剤の歩留まりが70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることが更に好ましく、90質量%以上であることが一層好ましく、95質量%以上であることが更に一層好ましい。これに関連して、本発明の吸水性樹脂組成物においては、吸水性樹脂組成物中での有機疎水性抗菌剤の割合が0.005質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることが更に好ましく、0.05質量%以上であることが一層好ましい。また、有機疎水性抗菌剤の割合が5.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以下であることが更に好ましく、0.5質量%以下であることが一層好ましい。吸水性樹脂組成物中での有機疎水性抗菌剤の割合は0.005質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上1.0質量%以下であることが更に好ましく、0.05質量%以上0.5質量%以下であることが一層好ましい。
【0071】
また、有機溶媒を除去させずに残留させて得られた吸水性樹脂組成物を得た場合には、該有機溶媒の歩留まりは、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることが更に好ましく、90質量%以上であることが一層好ましく、95質量%以上であることが更に一層好ましい。これに関連して、本発明の吸水性樹脂組成物においては、吸水性樹脂組成物中での有機溶媒の割合が0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることが更に好ましく、1.0質量%以上であることが一層好ましい。また、有機溶媒の割合が7.0質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以下であることが更に好ましく、3.5質量%以下であることが一層好ましい。吸水性樹脂組成物中での有機溶媒の割合は0.1質量%以上7.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上5.0質量%以下であることが更に好ましく、1.0質量%以上3.5質量%以下であることが一層好ましい。
【0072】
無機微粒子を吸水性樹脂に付着させた場合には、吸水性樹脂組成物中での無機微粒子の割合は0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることが更に好ましく、0.1質量%以上であることが一層好ましい。また、無機微粒子の割合は5.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以下であることが更に好ましく、1.0質量%以下であることが一層好ましい。吸水性樹脂組成物中での無機微粒子の割合は0.01質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上3.0質量%以下であることが更に好ましく、0.1質量%以上1.0質量%以下であることが一層好ましい。
【0073】
吸水性樹脂組成物に含まれる有機疎水性抗菌剤、有機溶媒及び無機微粒子の割合はそれぞれ以下の方法で測定される。すなわち、有機疎水性抗菌剤及び有機溶媒は、エタノールやメタノール等の溶媒で抽出して、液体クロマトグラフィー等をはじめとする、各剤の構造に応じて測定しやすい測定方法を用いて割合を測定する。無機微粒子の割合の測定は、吸水性樹脂のまま行い、エネルギー分散型X線分光法(EDX)又はX線電子分光法(ESCA)によって吸水性樹脂組成物の金属原子量を、定量分析することによって測定する。
【0074】
本製造方法によれば、粉体状の外観を呈する吸水性樹脂組成物を容易に製造できる。また、粉体流動性の良好な吸水性樹脂組成物を製造することができる。粉体流動性に関する物性値としては、安息角及びスパチュラ角が代表的なものとして挙げられる。本製造方法に従い得られた吸水性樹脂組成物は、その安息角が30度以上であることが好ましく、32度以上であることが更に好ましく、34度以上であることが一層好ましい。また安息角が45度以下であることが好ましく、43度以下であることが更に好ましく、41度以下であることが一層好ましく、39度以下であることが更に一層好ましい。具体的には、安息角が30度以上45度以下であることが好ましく、32度以上43度以下であることが更に好ましく、34度以上41度以下であることが一層好ましく、34度以上39度以下であることが更に一層好ましい。安息角は、ホソカワミクロン製のパウダーテスター PT−Rを用いて測定することができる。
【0075】
一方、スパチュラ角に関しては、40度以上であることが好ましく、41度以上であることが更に好ましく、42度以上であることが一層好ましく、43度以上であることが更に一層好ましい。またスパチュラ角は60度以下であることが好ましく、58度以下であることが更に好ましく、56度以下であることが一層好ましく、54度以下であることが更に一層好ましい。具体的には、安息角は40度以上60度以下であることが好ましく、41度以上58度以下であることが更に好ましく、42度以上56度以下であることが一層好ましく、43以上54度以下であることが更に一層好ましい。スパチュラ角は、ホソカワミクロン製のパウダーテスター PT−Rを用いて測定することができる。スパチュラ角は、衝撃前と衝撃1回後の平均値を採用する。
【0076】
本製造方法で得られた吸水性樹脂組成物の他の流動性に関する物性値として、崩潰角が挙げられる。吸水性樹脂組成物の崩潰角は、30度以上であることが好ましく、31度以上であることが更に好ましく、32度以上であることが一層好ましく、33度以上であることが更に一層好ましい。また崩潰角は42度以下であることが好ましく、41度以下であることが更に好ましく、40度以下であることが一層好ましく、39度以下であることが更に一層好ましい。具体的には、崩潰角は30度以上42度以下であることが好ましく、31度以上41度以下であることが更に好ましく、32度以上40度以下であることが一層好ましく、33度以上39度以下であることが更に一層好ましい。崩潰角は、ホソカワミクロン製のパウダーテスター PT−Rを用いて測定することができる。崩潰角は、衝撃3回後の値を採用する。
【0077】
本製造方法で得られた吸水性樹脂組成物の他の粉体物性として、ゆるみ見掛け比重及び圧縮度が上げられる。吸水性樹脂組成物のゆるみ見掛け比重は、0.55g/mL以上であることが好ましく、0.60g/mL以上であることが更に好ましく、0.62g/mL以上であることが一層好ましい。またゆるみ見掛け比重は0.80g/mL以下であることが好ましく、0.79g/mL以下であることが更に好ましく、0.78g/mL以下であることが一層好ましい。具体的には、ゆるみ見掛け比重は0.55g/mL以上0.80g/mL以下であることが好ましく、0.60g/mL以上0.79g/mL以下であることが更に好ましく、0.62g/mL以上0.78g/mL以下であることが一層好ましい。
【0078】
一方、圧縮度は、〔(固め見掛け比重−ゆるみ見掛け比重)/固め見掛け比重〕×100で定義される値であり、吸水性樹脂組成物の圧縮度は、4%以上であることが好ましく、5%以上であることが更に好ましく、6%以上であることが一層好ましい。また圧縮度は15%以下であることが好ましく、14%以下であることが更に好ましく、13%以下であることが一層好ましい。具体的には、圧縮度は4%以上15%以下であることが好ましく、5%以上14%以下であることが更に好ましく、6%以上13%以下であることが一層好ましい。
【0079】
ゆるみ見掛け比重及び固め見掛け比重は、粉体の圧縮度を求めるための粉体物性の測定値である。ゆるめ見掛け比重は、粉体を自然落下させることで、定められた容量のカップへ粉体を充填し、秤量することで導き出される測定値であって、粉体を自然落下させた状態の充填密度を示すものである。また、固め見掛け比重は、ゆるめ見掛け比重を測定した充填試料をタッピングすることで脱気し、最密充填された状態の見掛け比重である。これらの比重は、ASTMの規格に従って測定でき、測定装置としては粉体特性評値装置PT−R(ホソカワミクロン(株))等を用いることができる。
【0080】
上述のとおり、本製造方法によれば、粉体流動性が良好な吸水性樹脂組成物を得ることができるので、該吸水性樹脂組成物は、風送によって容易に搬送することができる。例えば図1に示すとおり、吸収性物品の吸収体を製造するための積繊機10において、貯蔵槽11に貯蔵されている吸水性樹脂組成物(図示せず)を、供給管12を介して積繊機10のフード13に風送によって搬送することができる。また、フード13内に供給された吸水性樹脂組成物(図示せず)を、該フード13内を流れる搬送気流に随伴させて、積繊ドラム14の周面に供給することができる。
【0081】
本製造方法で得られた吸水性樹脂組成物は、吸収性物品に好適に用いられる。吸収性物品は、身体から排出される液の吸収に好適に用いられる物品である。吸収性物品は、本発明の製造方法で得られた吸水性樹脂組成物を有することによって、高い抗菌性能を有し、不快な悪臭や皮膚の刺激症状等の排泄物に起因する不都合を起こし難いものとなり、かつ尿等の排泄物の吸収性能にも優れ、排泄物の漏れを起こし難いものとなる。
【0082】
吸収性物品における吸水性樹脂組成物の含有形態としては、例えば、(1)層状に配置されたパルプ、熱融着性繊維等の繊維状物の層の間に吸水性樹脂組成物粒子を散粒する形態、(2)パルプ、熱融着性繊維等の繊維状物と混合する形態、(3)2枚以上の吸水シートや不織布でサンドイッチ様に挟んだ形態等が挙げられる。吸収性物品中における吸水性樹脂組成物の含有量は、吸収性物品の種類やサイズ、目標とする吸収性能に応じて適宜決定することができる。
【0083】
本製造方法で得られた吸水性樹脂組成物を有する吸収性物品は、典型的には、着用時に着用者の肌と接触し得る液透過性の表面シートと、液不透過性ないし撥水性の裏面シートと、これら両シート間に介在配置された液保持性の吸収体とを具備している。表面シートとしては、各種の不織布又は多孔質の合成樹脂シート等を用いることができ、裏面シートとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等からなる合成樹脂フィルム、又は合成樹脂フィルムと不織布との複合材料等を用いることができる。吸収性物品は更に、該吸収性物品の具体的な用途に応じた各種部材を具備していてもよい。そのような部材は当業者に公知である。例えば吸収性物品を使い捨ておむつや生理用ナプキンに適用する場合には、表面シート上の左右両側部に一対又は二対以上の立体ガードを配置することができる。
【0084】
吸収性物品における吸収体としては、例えば、パルプ繊維等の繊維材料からなる繊維集合体に、本製造方法で得られた吸水性樹脂組成物を保持させた吸収性コアを用いることができる。吸収性コアは、ティッシュペーパーや不織布等の透水性の被覆シートで被覆されていてもよい。吸収体の別の例として、本製造方法で得られた吸水性樹脂組成物を含む吸収性シートを有するものが挙げられる。この場合の吸収体は、例えば、1枚の該吸収性シートの折り畳み構造、又は複数枚の該吸収性シートの積層構造を有している。この吸収性シートとしては、湿潤状態の吸水性樹脂組成物に生じる粘着力や別に添加した接着剤や接着性繊維等のバインダーを介して、構成繊維間や構成繊維と吸水性樹脂組成物との間を結合させてシート状としたもの等を用いることができる。吸収性シートとして好適なものとしては、パルプ繊維の集合体に吸水性樹脂組成物を固定させたもの、エアレイド法で製造された乾式パルプシート、2枚の不織布間に粒子状の吸水性樹脂組成物を散布したものが挙げられる。
【0085】
本発明の吸収性物品は、人体から排出される体液、例えば尿、経血、軟便、汗等の吸収に用いられる物品を広く包含し、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、生理用ショーツ等が包含される。
【0086】
上述した実施形態に関し、本発明は更に以下の吸水性樹脂組成物の製造方法を開示する。
<1>
有機疎水性抗菌剤を有機溶媒に溶解してなる抗菌剤溶液と、吸水性樹脂とを混合する工程を有する吸水性樹脂組成物の製造方法。
【0087】
<2>
前記抗菌剤溶液と前記吸水性樹脂とを混合する前に、又は該抗菌剤溶液と該吸水性樹脂とを混合した後に、該吸水性樹脂と無機微粒子とを混合する工程を更に含む前記<1>に記載の吸水性樹脂組成物の製造方法。
<3>
前記抗菌剤溶液と前記吸水性樹脂とを混合した後、前記溶媒を残留させたままにしておく前記<1>又は<2>に記載の吸水性樹脂組成物の製造方法。
<4>
前記有機溶媒が、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びブチレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種の親水性有機溶媒である前記<1>ないし<3>のいずれか1に記載の吸水性樹脂組成物の製造方法。
<5>
前記有機疎水性抗菌剤が、以下の(1)又は(2)で表される構造を有する前記<1>ないし<4>のいずれか1に記載の吸水性樹脂組成物の製造方法。
【化4】
【化5】
<6>
前記有機疎水性抗菌剤が、セチルリン酸ベンザルコニウム又はピロクトンオラミンである前記<1>ないし<5>のいずれか1に記載の吸水性樹脂組成物の製造方法。
【0088】
<7>
前記有機疎水性抗菌剤は、25℃の水に対する溶解度が好ましくは40g以下、更に好ましくは10g以下、一層好ましくは1g以下である前記<1>ないし<6>のいずれか1に記載の吸水性樹脂組成物の製造方法。
<8>
前記抗菌剤溶液と前記吸水性樹脂とを混合する工程を行うのに先立ち、該吸水性樹脂の表面を架橋する表面架橋工程を行う前記<1>ないし<7>のいずれか1に記載の吸水性樹脂組成物の製造方法。
<9>
前記有機疎水性抗菌剤の溶解度が好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、一層好ましくは15質量%以上である有機溶媒を用いる前記<1>ないし<8>のいずれか1に記載の吸水性樹脂組成物の製造方法。
<10>
前記有機溶媒はその溶解度パラメータが12以上であることが好ましく、13以上であることが更に好ましく、13.5以上であることが一層好ましく、14以上であることが更に一層好ましく、28以下であることが好ましく、27以下であることが更に好ましく、26以下であることが一層好ましく、25以下であることが更に一層好ましい前記<1>ないし<9>のいずれか1に記載の吸水性樹脂組成物の製造方法。
<11>
前記有機溶媒は、25℃における蒸気圧が30Pa以下であることが好ましく、20Pa以下であることが更に好ましく、15Pa以下であることが一層好ましく、10Pa以下であることが更に一層好ましい前記<1>ないし<10>のいずれか1に記載の吸水性樹脂組成物の製造方法。
【0089】
<12>
前記有機溶媒の引火点は、100℃以上であることが好ましく、105℃以上であることが更に好ましく、110℃以上であることが一層好ましく、115℃以上であることが更に一層好ましい前記<1>ないし<11>のいずれか1に記載の吸水性樹脂組成物の製造方法。
<13>
前記有機溶媒は、25℃における粘度が、5mPa・s以上であることが好ましく、10mPa・s以上であることが更に好ましく、30mPa・s以上であることが一層好ましく、60mPa・s以上であることが更に一層好ましく、1500mPa・s以下であることが好ましく、500mPa・s以下であることが更に好ましく、300mPa・s以下であることが一層好ましく、90mPa・s以下であることが更に一層好ましい前記<1>ないし<12>のいずれか1に記載の吸水性樹脂組成物の製造方法。
<14>
前記有機溶媒が、二価アルコール(ジオール)、三価アルコール(トリオール)及び四価以上のアルコールなどの多価アルコールのような水溶性有機溶媒である前記<1>ないし<13>のいずれか1に記載の吸水性樹脂組成物の製造方法。
<15>
前記多価アルコールにおけるアルキル基の炭素数は、2以上であることが好ましく、18以下であることが好ましく、10以下であることが更に好ましく、4以下であることが一層好ましい前記<14>に記載の吸水性樹脂組成物の製造方法。
<16>
前記多価アルコールは、炭素数が2以上4以下である低級二価アルコールであり、
前記低級二価アルコールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びブチレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種の親水性有機溶媒であり、
プロピレングリコールは、1,2−プロピレングリコール又は1,3−プロピレングリコールであり、
ブチレングリコールは、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール又は2,3−ブチレングリコールである前記<14>又は<15>に記載の吸水性樹脂組成物の製造方法。
【0090】
<17>
前記有機溶媒が、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びブチレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種の親水性有機溶媒である前記<1>ないし<16>のいずれか1に記載の吸水性樹脂組成物の製造方法。
<18>
プロピレングリコールは、1,2−プロピレングリコール又は1,3−プロピレングリコールであり、
ブチレングリコールは、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール又は2,3−ブチレングリコールである前記<17>に記載の吸水性樹脂組成物の製造方法。
<19>
前記抗菌剤溶液における前記有機疎水性抗菌剤の濃度は、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることが更に好ましく、3質量%以上であることが一層好ましく、5質量%以上であることが更に一層好ましく、50質量%以下であることが好ましく、35質量%以下であることが更に好ましく、25質量%以下であることが一層好ましく、20質量%以下であることが更に一層好ましい前記<1>ないし<18>のいずれか1に記載の吸水性樹脂組成物の製造方法。
<20>
前記抗菌剤溶液と前記吸水性樹脂とを混合するときの両者の比率は、該吸水性樹脂の質量を基準として、該抗菌剤溶液中の前記有機疎水性抗菌剤の質量が0.001質量%以上となる比率であることが好ましく、0.005質量%以上となる比率であることが更に好ましく、0.01質量%以上となる比率であることが一層好ましく、0.05質量%以上となる比率であることが更に一層好ましく、該抗菌剤溶液中の該有機疎水性抗菌剤の質量が1質量%以下となる比率であることが好ましく、0.7質量%以下となる比率であることが更に好ましく、0.5質量%以下となる比率であることが一層好ましい前記<1>ないし<19>のいずれか1に記載の吸水性樹脂組成物の製造方法。
<21>
前記抗菌剤溶液と前記吸水性樹脂とを混合するときの両者の比率は、該吸水性樹脂の質量を基準として、該抗菌剤溶液中の前記有機溶媒の質量が0.01質量%以上となる比率であることが好ましく、0.02質量%以上となる比率であることが更に好ましく、0.03質量%以上となる比率であることが一層好ましく、0.05質量%以上となる比率であることが更に一層好ましく、該吸水性樹脂の質量を基準として、該抗菌剤溶液中の該有機溶媒の質量が10質量%以下となる比率であることが好ましく、7質量%以下となる比率であることが更に好ましく、5質量%以下となる比率であることが一層好ましく、3質量%以下となる比率であることが更に一層好ましい前記<1>ないし<20>のいずれか1に記載の吸水性樹脂組成物の製造方法。
【0091】
<22>
前記抗菌剤溶液と前記吸水性樹脂との混合に際しては、該吸水性樹脂に該抗菌剤溶液を添加してもよく、逆に該抗菌剤溶液に該吸水性樹脂を添加してもよく、あるいは、該抗菌剤溶液と該吸水性樹脂とを同時に混合してもよい前記<1>ないし<21>のいずれか1に記載の吸水性樹脂組成物の製造方法。
<23>
前記抗菌剤溶液と前記吸水性樹脂とを混合した後の該吸水性樹脂と無機微粒子とを混合する工程を更に有する前記<1>ないし<22>のいずれか1に記載の吸水性樹脂組成物の製造方法。
<24>
前記無機微粒子は、シリカ微粒子、酸化ジルコニア、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化亜鉛又は金等を用い、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いる前記<23>に記載の吸水性樹脂組成物の製造方法。
<25>
前記無機微粒子の平均一次粒子径は、好ましくは5nm以上、更に好ましくは10nm以上であり、好ましくは500nm以下、更に好ましくは100nm以下である前記<23>又は<24>に記載の吸水性樹脂組成物の製造方法。
<26>
前記無機微粒子と、前記抗菌剤溶液と混合後の前記吸水性樹脂とを混合するときの両者の比率は、仕込みの該吸水性樹脂、すなわち該抗菌剤溶液と混合される前の該吸水性樹脂の質量を基準として、該無機微粒子の質量が0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることが更に好ましく、0.1質量%以上であることが一層好ましく、0.2質量%以上であることが更に一層好ましく、仕込みの該吸水性樹脂の質量を基準として、該無機微粒子の質量が5質量%以下であることが好ましく、4質量%以下であることが更に好ましく、3質量%以下であることが一層好ましく、2質量%以下であることが更に一層好ましい前記<23>ないし<25>のいずれか1に記載の吸水性樹脂組成物の製造方法。
【0092】
<27>
前記抗菌剤溶液と前記吸水性樹脂とを混合した後に、該吸水性樹脂と前記無機微粒子とを混合するに際しては、該抗菌剤溶液と混合後の該吸水性樹脂に該無機微粒子を添加してもよく、該無機微粒子に、該抗菌剤溶液と混合後の該吸水性樹脂を添加してもよい。あるいは、無機微粒子と、抗菌剤溶液と混合後の吸水性樹脂とを同時に混合してもよい前記<1>ないし<26>のいずれか1に記載の吸水性樹脂組成物の製造方法。
<28>
有機疎水性抗菌剤と、親水性かつ不揮発性の有機溶媒と、吸水性樹脂とを有する吸水性樹脂組成物。
<29>
前記有機疎水性抗菌剤と前記有機溶媒とが前記吸水性樹脂の表面に島状に付着している前記<28>に記載の吸水性樹脂組成物。
<30>
前記有機疎水性抗菌剤が前記吸水性樹脂の表面を被覆する被覆率が5%以上、好ましくは7%以上、更に好ましくは15%以上であり、40%以下、好ましくは30%以下、更に好ましくは25%以下である前記<29>に記載の吸水性樹脂組成物。
<31>
前記有機溶媒が、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びブチレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種の親水性有機溶媒である前記<28>ないし<30>のいずれか1に記載の吸水性樹脂組成物。
【0093】
<32>
前記有機疎水性抗菌剤が、以下の式(1)若しくは(2)で表される構造を有する有機化合物、又はトリクロサンである前記<28>ないし<31>のいずれか1に記載の吸水性樹脂組成物。
【化6】
【化7】
<33>
前記有機疎水性抗菌剤が、セチルリン酸ベンザルコニウム又はピロクトンオラミンである前記<28>ないし<32>のいずれか1に記載の吸水性樹脂組成物。
<34>
更に無機微粒子を有する前記<28>ないし<33>のいずれか1に記載の吸水性樹脂組成物。
<35>
前記無機微粒子は、シリカ微粒子、酸化ジルコニア、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化亜鉛又は金等を用い、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いる前記<34>に記載の吸水性樹脂組成物。
<36>
前記無機微粒子の平均一次粒子径は、好ましくは5nm以上、更に好ましくは10nm以上であり、好ましくは500nm以下、更に好ましくは100nm以下である前記<34>又は<35>に記載の吸水性樹脂組成物。
【0094】
<37>
前記有機疎水性抗菌剤は、25℃の水に対する溶解度が好ましくは40g以下、更に好ましくは10g以下、一層好ましくは1g以下である前記<28>ないし<36>のいずれか1に記載の吸水性樹脂組成物。
<38>
前記有機疎水性抗菌剤の溶解度が好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、一層好ましくは15質量%以上である有機溶媒を用いる前記<28>ないし<37>のいずれか1に記載の吸水性樹脂組成物。
<39>
前記有機溶媒はその溶解度パラメータが12以上であることが好ましく、13以上であることが更に好ましく、13.5以上であることが一層好ましく、14以上であることが更に一層好ましく、28以下であることが好ましく、27以下であることが更に好ましく、26以下であることが一層好ましく、25以下であることが更に一層好ましい前記<28>ないし<38>のいずれか1に記載の吸水性樹脂組成物。
<40>
前記有機溶媒は、25℃における蒸気圧が30Pa以下であることが好ましく、20Pa以下であることが更に好ましく、15Pa以下であることが一層好ましく、10Pa以下であることが更に一層好ましい前記<28>ないし<39>のいずれか1に記載の吸水性樹脂組成物。
<41>
前記有機溶媒の引火点は、100℃以上であることが好ましく、105℃以上であることが更に好ましく、110℃以上であることが一層好ましく、115℃以上であることが更に一層好ましい前記<28>ないし<40>のいずれか1に記載の吸水性樹脂組成物。
【0095】
<42>
前記有機溶媒は、25℃における粘度が、5mPa・s以上であることが好ましく、10mPa・s以上であることが更に好ましく、30mPa・s以上であることが一層好ましく、60mPa・s以上であることが更に一層好ましく、1500mPa・s以下であることが好ましく、500mPa・s以下であることが更に好ましく、300mPa・s以下であることが一層好ましく、90mPa・s以下であることが更に一層好ましい前記<28>ないし<41>のいずれか1に記載の吸水性樹脂組成物。
<43>
前記有機溶媒が、二価アルコール(ジオール)、三価アルコール(トリオール)及び四価以上のアルコールなどの多価アルコールのような水溶性有機溶媒である前記<28>ないし<42>のいずれか1に記載の吸水性樹脂組成物。
<44>
前記多価アルコールにおけるアルキル基の炭素数は、2以上であることが好ましく、18以下であることが好ましく、10以下であることが更に好ましく、4以下であることが一層好ましい前記<43>に記載の吸水性樹脂組成物。
<45>
前記多価アルコールは、炭素数が2以上4以下である低級二価アルコールであり、
前記低級二価アルコールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びブチレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種の親水性有機溶媒であり、
プロピレングリコールは、1,2−プロピレングリコール又は1,3−プロピレングリコールであり、
ブチレングリコールは、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール又は2,3−ブチレングリコールである前記<43>又は<44>に記載の吸水性樹脂組成物。
<46>
前記有機溶媒が、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びブチレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種の親水性有機溶媒である前記<28>ないし<45>のいずれか1に記載の吸水性樹脂組成物。
【0096】
<47>
プロピレングリコールは、1,2−プロピレングリコール又は1,3−プロピレングリコールであり、
ブチレングリコールは、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール又は2,3−ブチレングリコールである前記<46>に記載の吸水性樹脂組成物。
<48>
安息角が、30度以上であることが好ましく、32度以上であることが更に好ましく、34度以上であることが一層好ましく、45度以下であることが好ましく、43度以下であることが更に好ましく、41度以下であることが一層好ましく、39度以下であることが更に一層好ましい前記<28>ないし<47>のいずれか1に記載の吸水性樹脂組成物。
<49>
スパチュラ角が、40度以上であることが好ましく、41度以上であることが更に好ましく、42度以上であることが一層好ましく、43度以上であることが更に一層好ましく、60度以下であることが好ましく、58度以下であることが更に好ましく、56度以下であることが一層好ましく、54度以下であることが更に一層好ましい前記<28>ないし<48>のいずれか1に記載の吸水性樹脂組成物。
<50>
崩潰角が、30度以上であることが好ましく、31度以上であることが更に好ましく、32度以上であることが一層好ましく、33度以上であることが更に一層好ましく、42度以下であることが好ましく、41度以下であることが更に好ましく、40度以下であることが一層好ましく、39度以下であることが更に一層好ましい前記<28>ないし<49>のいずれか1に記載の吸水性樹脂組成物。
【0097】
<51>
ゆるみ見掛け比重が、0.55g/mL以上であることが好ましく、0.60g/mL以上であることが更に好ましく、0.62g/mL以上であることが一層好ましく、0.80g/mL以下であることが好ましく、0.79g/mL以下であることが更に好ましく、0.78g/mL以下であることが一層好ましい前記<28>ないし<50>のいずれか1に記載の吸水性樹脂組成物。
【0098】
<52>
前記<1>ないし<27>のいずれか1に記載の製造方法によって製造された吸水性樹脂組成物を、風送によって搬送する工程を含む吸収性物品の製造方法。
<53>
前記<28>ないし<51>のいずれか1に記載の吸水性樹脂組成物を有する吸収性物品。
【実施例】
【0099】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。
【0100】
〔実施例1〕
(1)抗菌剤溶液の調製
以下の表1に示す有機疎水性抗菌剤及び有機溶媒を用いて抗菌剤溶液を調製した。有機疎水性抗菌剤は、ピロクトンオラミンとしてクラリアント社 商品名「オクトピロックス」を、また、セチルリン酸ベンザルコニウムとして花王株式会社 商品名「サニゾールP」を使用した。有機溶媒は、以下のものを用いた。
エチレングリコール:ダウ・ケミカル日本株式会社製
プロピレングリコール:ダウ・ケミカル日本株式会社製
1,3−ブチレングリコール:株式会社ダイセル製
グリセリン:和光純薬工業株式会社製
エタノール:和光純薬工業株式会社製
ジメチルホルムアミド:和光純薬工業株式会社製
ジメチルスルホキシド:和光純薬工業株式会社製
ポリエチレングリコール:三洋化成工業株式会社製「PEG−20」
80℃以上で有機疎水性抗菌剤を有機溶媒に完全溶解した後、室温(25℃)まで放冷した。抗菌剤溶液における有機疎水性抗菌剤の濃度は同表に示すとおりであり、有機疎水性抗菌剤は有機溶媒に完全溶解していた。
(2)吸水性樹脂の準備
吸水性樹脂として、日本触媒株式会社製、商品名「アクアリックCA」を用いた。
(3)吸水性樹脂と抗菌剤溶液との混合
吸水性樹脂に抗菌剤溶液を添加し、両者を混合することで、吸水性樹脂組成物を得た。両者の混合比率は表1に示すとおりとした。混合後には、有機溶媒の除去操作は行わなかった。得られた吸水性樹脂組成物における有機疎水性抗菌剤及び有機溶媒の歩留まりは同表に示すとおりであった。
【0101】
〔実施例2ないし6〕
表1に示す条件を採用する以外は、実施例1と同様にして吸水性樹脂組成物を得た。
【0102】
〔実施例7ないし10〕
実施例2及び3において、(3)の工程の後に、非晶シリカ(日本アエロジル株式会社製、商品名「アエロジル200」、平均一次粒子径12nm、BET比表面積平均200m/g)を添加して更に混合することで、吸水性樹脂組成物を得た。非晶シリカの添加量は表1に示すとおりとした。
【0103】
〔実施例11及び12〕
有機疎水性抗菌剤として表2に示すものを用いた。また同表に示す条件を採用する以外は、実施例1と同様にして吸水性樹脂組成物を得た。
【0104】
〔実施例13及び14〕
有機疎水性抗菌剤として表2に示すものを用いた。また同表に示す条件を採用する以外は、実施例7と同様にして吸水性樹脂組成物を得た。
【0105】
〔比較例1〕
有機溶媒として表2に示すものを用いた。また同表に示す条件を採用する以外は、実施例1と同様にして吸水性樹脂組成物を得た。本比較例においては、吸水性樹脂組成物の調製の途中に、危険性とニオイ(アルコール臭)の観点から、有機溶媒として用いたエタノールがすべて揮発除去する工程を要した。
【0106】
〔比較例2〕
有機溶媒として表2に示すものを用いた。また有機疎水性抗菌剤として同表に示すものを用いた。更に、同表に示す条件を採用する以外は、実施例1と同様にして吸水性樹脂組成物を得た。本比較例においては、比較例1と同様に、吸水性樹脂組成物の調製の途中に、危険性とニオイ(アルコール臭)の観点から、有機溶媒として用いたエタノールがすべて揮発除去する工程を要した。
【0107】
〔比較例3及び4〕
有機溶媒としてポリエチレングリコールを用い、有機疎水性抗菌剤としてピロクトンオラミン(比較例3)、又はセチルリン酸ベンザルコニウム(比較例4)を用いた。更に、同表に示す条件を採用する以外は、実施例1と同様にして吸水性樹脂組成物を得た。本比較例においては、10%濃度の有機疎水性抗菌剤の溶液調製を試みたが、溶解させることができなかった。ここで、抗菌剤の濃度を10%未満とした場合、仮に抗菌剤が溶解したとしても有機溶媒が多くなり、吸水性樹脂組成物の流動性が悪くなり、容易に安定した吸収性能かつ抗菌性能を発現する吸収性物品を製造することが困難になる。
比較例3に関しては(1)黄変したこと、また、(2)吸水性樹脂と混合する際、有機疎水性抗菌剤がムラ付きする(抗菌性が安定して再現できない)ことから吸水性樹脂組成物の調製を断念した。比較例4に関しても、吸水性樹脂と混合する際、有機疎水性抗菌剤がムラ付きする(抗菌性が安定して再現できない)ことから吸水性樹脂組成物の調製を断念した。なお「ムラ付きする」とは、有機疎水性抗菌剤が不溶の液を吸水性樹脂に添加する際、スプレーの目詰まりが起こり均一に散布できない現象のことである。有機疎水性抗菌剤がムラ付きすると、抗菌剤の付着量が少ない吸水性樹脂組成物と付着量が設定通りの吸水性樹脂組成物が混在することになる。付着量が少ない吸水性樹脂組成物では所望の抗菌効果が得られないため、吸収性物品全体として実施例と同等の抗菌効果を得ることができなくなる。
【0108】
〔比較例5及び6〕
有機疎水性抗菌剤としてピロクトンオラミンを用い、有機溶媒としてジメチルホルムアミド(比較例5)、又はジメチルスルホキシド(比較例6)を用いた。濃度10%の有機疎水性抗菌剤の溶液調製を試みた結果、比較例5では、溶解させることができなかった。そのため、比較例5においても有機疎水性抗菌剤がムラ付きするため、実施例と同等の抗菌効果を得ることができない。また、溶媒由来のアミン臭が発生した。このことから吸水性樹脂組成物の調製を断念した。一方、比較例6では、有機疎水性抗菌剤を溶解させることはできたが、溶媒由来の硫黄臭が発生した。このことから吸水性樹脂組成物の調製を断念した。
【0109】
〔評価〕
実施例及び比較例(比較例3ないし6を除く)で得られた吸水性樹脂組成物の抗菌効果は、以下に述べるように抗菌性により測定及び評価した。また上述した方法により、ホソカワミクロン製のパウダーテスター PT−Rを用いて、安息角及びスパチュラ角、崩潰角、ゆるみ見掛け比重、圧縮度を測定した。また上述した方法により、抗菌剤が吸水性樹脂の表面を被覆する被覆率を測定した。更に以下に述べるように、吸水性樹脂の吸水性能は飽和吸収量により測定及び評価した。これらの結果を以下の表1及び表2に示す。なお、表2には参考例(抗菌剤を用いない例)も併せて記載されている。
【0110】
〔飽和吸収量の評価〕
ナイロン製の織布(メッシュ開き255)を幅10cm、長さ40cmの長方形に切断して長手方向中央で二つ折りにし、両端をヒートシールして幅10cm(内寸9cm)、長さ20cmのナイロン袋を作製した。測定試料である吸水性樹脂組成物0.50gを精秤し、作製したナイロン袋の底部に均一になるように入れた。試料の入ったナイロン袋を、25℃に調温した生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム水)に浸漬させた。浸漬開始から30分後にナイロン袋を生理食塩水から取り出し、1時間垂直状態に吊るして水切りした後、質量を測定し、次式に従って目的とする飽和吸収量を算出した。
飽和吸収量(g/g)=(a−b−c)/c
式中、aは水切り後の吸水性樹脂組成物及びナイロン袋の総質量(g)を表し、bはナイロン袋の吸水前(乾燥時)の質量(g)を表し、cは吸水性樹脂組成物の吸水前(0.50)の質量(g)を表す。測定は3回行い、平均値を測定値とした。なお、測定は23±2℃、湿度50±5%RHで行った。
【0111】
〔抗菌性の評価〕
(1)使用菌株及び人尿
抗菌性評価には使用済み(排尿のみ)の紙オムツから採取、分離した大腸菌(16S rDNA部分塩基配列解析により同定)を用いた。また、人尿は健常男性2名より採取したものを等量混合し、0.2μmフィルター(Thermo Fisher Scientific Inc. 商品名「Nalgene, 組織培養ユニット」)によりろ過除菌したものを用いた。なお、本菌株を人尿に接種し、培養したところ顕著な臭気の発生を認めた。
(2)抗菌性の評価
前記大腸菌株をSCD寒天平板培地にて一晩培養し、得られたコロニーを滅菌ループによって複数回かき取り、生理食塩水中に懸濁させ、CFU/mLで109オーダーとなるように菌液を調製した。得られた菌液を人尿に対して1v/v%添加し、菌添加尿とした。1.5mL形μテストチューブに各吸水性樹脂組成物(サンプル)若しくは未処理の吸水性樹脂(コントロール)30mgを入れ、続いて菌添加尿900μLを添加し、37℃恒温槽中に静置した。
24時間後、内容物をLP希釈液8.1mLで洗い出し、高速振とう機(EYELA,
CUTE MIXER cm−1000)を用いて1500rpmで15分間振とう抽出を行った。得られた抽出液をLP希釈液で適宜希釈し、SCDLP寒天平板培地上に塗沫した。これを37℃恒温槽中で一晩培養し、コロニー数をカウントした。これより、サンプル及びコントロールのCFUを算出し、次式により各サンプルの抗菌活性値を求めた。
抗菌活性値=Log10((コントロールのCFU)/(サンプルのCFU))
【0112】
【表1】
【0113】
【表2】
【0114】
表1及び表2に示す結果から明らかなとおり、実施例で得られた吸水性樹脂組成物は、有機溶媒を除去せずとも吸水性能が損なわれることなく、抗菌性が向上していることが判る。また、粉体流動特性が向上していることが判る。これに対して比較例1及び2の吸水性樹脂組成物は、有機溶媒の除去が必須であり、製造の煩雑さ及び安全性への配慮が必要であった。
なお表には示していないが、比較例3及び4では、有機疎水性抗菌剤が有機溶媒に溶解しなかったことに起因して、スプレーの目詰まりが起こり均一に散布できない恐れがあった。また、液が黄変すること、異臭を放つこと等の欠点があった。
【符号の説明】
【0115】
10 積繊機
11 貯蔵槽
12 供給管
13 フード
14 積繊ドラム
【要約】
【課題】吸水性能が高く、悪臭を発せず、十分な抗菌効果が発現する吸水性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】本発明の吸水性樹脂組成物は、有機疎水性抗菌剤と、親水性かつ不揮発性の有機溶媒と、吸水性樹脂とを有する。前記有機疎水性抗菌剤と前記有機溶媒とが前記吸水性樹脂の表面に島状に付着していることが好適である。前記有機溶媒が、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びブチレングリコールからなる群から選ばれる少なくとも1種の親水性有機溶媒であることも好適である。
【選択図】図1
図1