【実施例1】
【0012】
[防災ブロックマット]
<1>全体の構成(
図1)。
本発明の防災ブロックマットAは、フィルターシート2の一面に、同一向きに配列した複数の防災ブロック1を縦横に連続して付設してなる。
ここで「連続して」とは、隣接する防災ブロック1同士を密着させる場合の他、防災ブロック1間に僅かな隙間を有する場合も含む。
各防災ブロック1は底面がフィルターシート2の表面に一体に固定される。
本発明の防災ブロックマットAは、各防災ブロック1が、凹凸形状を呈するため、手指や足が掛けやすく、滑落者の法長方向への這い上がりを補助することができる。
【0013】
<2>防災ブロック(
図2)。
防災ブロック1は、フィルターシート2の表面を被覆する、コンクリートブロック体である。
防災ブロック1の形状は、平面視において矩形形状、正面視において上辺を短辺とする台形状、側面視において略凸字形状である。
本例では、滑落者の手指を掛けやすいサイズとして、平面視を一辺約200mmの正方形とするが、これに限られない。
防災ブロック1は、基部10、把持凸部20、把持凹部30、を備え、基部10の前後方向中央から上方に把持凸部20が突起し、基部10の前後に把持凹部が凹設される。
【0014】
<2.1>基部。
基部10は、前後面の2つの導入壁11と、左右面の2つの側壁13と、矩形の底面14と、導入壁11の上辺から相互に近接する方向に向かって延在する2つの肩面12と、を備える。導入壁11を肩面12側に僅かに傾斜させ、導入壁11と肩面12との間を緩やかなR形状とするのが望ましい。
導入壁11の幅方向中央には把持凹部30が形成され、把持凹部30の底部と底面14との間に、貫入層15が確保される。
肩面12の上辺は把持凸部20の下部に接続し、側壁13は把持凸部20の側面に及ぶ。
底面14の四隅は、従来技術のようにアンカーピン打設用のR加工を行わず、直角形状を呈する。
【0015】
<2.1.1>貫入層。
貫入層15は、防災ブロックマットA固定用のアンカーピンDを貫入するための薄層である。
貫入層15の厚さは、アンカーピンDの貫入が容易であって、かつ外部応力による破損に耐えうる程度の厚さとする。概ね1mm以上25mm以下とするのが望ましい。本例では、貫入層15の厚みが、開口側に向かって薄くなるテーパー形状を呈する。
従来技術は、ブロックがアンカーピン打設用の隙間を備えていた。このため、ブロックを連続して敷設しても、ブロック間の隙間から草が繁茂していた。
これに対し本願の防災ブロックマットAは、防災ブロック1が貫通式の貫入層15を備え、アンカーピンD打設用の隙間を有さない。このため、防災ブロック1がフィルターシート2の表面全体を被覆できるので、草の繁茂を防止することができる。
なお、隣接する防災ブロック1間に僅かな隙間がある場合も、隙間にはコンクリートのノロが付着して薄層を形成するため、密着させた場合と同等の防草効果を発揮できる。
【0016】
<2.2>把持凸部。
把持凸部20は、滑落者が把持するための突起部である。
把持凸部20は、前後面の2つの把持壁21と、頂面の上面22と、を備える。把持壁21と上面22との間は、緩やかなR形状とするのが望ましい。
把持凸部20の側面は側壁13と連続する。
把持壁21は、滑落者の手指がかかりやすいように20〜30mm程度の高さを確保するのが望ましい。
上面22は、滑落者の手のひらが密着するように平坦な形状とするのが望ましい。
【0017】
<2.3>把持凹部。
把持凹部30は、滑落者が把持するための凹部である。
把持凹部30は、基部10の前後両側において、導入壁11の幅方向中央部から肩面12にわたって形成する。
滑落者の手指がかかりやすいように、把持凹部30は、幅を50〜100mm、深さを10〜50mm程度とすることができる。
ただしこれに限られず、手指がかかる範囲であれば、例えば幅を最大190mm、深さを最大95mm程度まで広げてもよい。
【0018】
<3>フィルターシート。
フィルターシート2は、法面の吸出し防止機能を備えるシート材である。
本例では、ポリエステル製不織布のフィルターシートを採用する。但し、素材はこれに限られず、ポリエステルやポリエチレン等の化学繊維であってもよい。また、不織布でなく、織物や編物等であってもよい。
【0019】
<4>把持空間(
図3)。
前後方向に連続する2つの把持凹部30によって、防災ブロック1の間に滑落者が手指を掛けるための把持空間Bが形成される。
滑落者が防災ブロック1に掴まると、滑落者の手指が把持空間B内に入りこみ、把持凹部30の内壁に掛かる。
把持空間Bから滑り出た手指も、幅広な把持凸部20の把持壁21に掛かる。
同時に、手のひらが平坦な把持凸部20の上面22に密着し、滑落を防止する。
また、滑落者の靴先も把持空間B内や把持壁21に掛けることができる。
以上の各機能の組合せによって、滑落者の水上への這い上がりを補助し、水中に落下した人の生命が助かる可能性を高めることができる。
【0020】
<5>導入溝(
図4、5)。
前後方向に連続する2つの防災ブロック1の導入壁11の間に、断面V字形状の導入溝Cが形成される。
本発明の防災ブロックマットAは、コの字形状のアンカーピンDで、隣接する防災ブロック1の貫入層15とフィルターシート2を打ち抜いて地盤まで貫通させることで法面に固定する(
図4(a))。
アンカーピンDの打設の際、アンカーピンDの長手部が導入溝C内にガイドされるため、ピン先端部を所定の位置に位置決めすることができる。よって、固定作業の作業効率が良い(
図5)。
また、打設後のアンカーピンDが導入溝C内に収納され目立たないため、景観性に優れる(
図4(b))。