特許第6209704号(P6209704)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6209704
(24)【登録日】2017年9月15日
(45)【発行日】2017年10月4日
(54)【発明の名称】防災ブロックマット
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/14 20060101AFI20170925BHJP
【FI】
   E02B3/14 301
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-133547(P2017-133547)
(22)【出願日】2017年7月7日
【審査請求日】2017年7月10日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000201490
【氏名又は名称】前田工繊株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】南本 政司
(72)【発明者】
【氏名】土橋 和敬
(72)【発明者】
【氏名】井上 和徳
(72)【発明者】
【氏名】竹内 啓哉
【審査官】 西田 光宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開平8−81937(JP,A)
【文献】 特開2002−105928(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−0478156(KR,B1)
【文献】 特開2007−204918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/14
E02B 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルターシートの一面に同一向きに配列した複数の防災ブロックを縦横連続して付設してなる、防災ブロックマットであって、
前記防災ブロックは、
矩形の底面の前辺及び後辺から上方に立設する2つの導入壁と、矩形の底面の両側辺から上方に立設し、前記2つの導入壁の側辺を接続する2つの側壁と、前記2つの導入壁の上辺から相互に近接する方向に向かって延在する2つの肩面と、を有する基部と、
前記2つの肩面の上辺から上方に立設する2つの把持壁と、前記2つの把持壁の上辺を接続する上面と、を有する、手指で把持するための把持凸部と、
前記2つの導入壁の幅方向中央部から前記肩面にわたって凹設される把持凹部と、を備え、
前記基部の底面と前記把持凹部の間に貫入層を有し、
前後方向に連続する2つの防災ブロックの前記把持凹部によって、手指を掛けるための把持空間が形成されることを特徴とする、
防災ブロックマット。
【請求項2】
前記貫入層の厚さが、1mm以上25mm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の防災ブロックマット。
【請求項3】
前記導入壁は前記肩面側に傾斜し、前後方向に連続する2つの前記防災ブロックの前記導入壁の間に、導入溝が形成されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の防災ブロックマット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はブロックマットに関し、特に防災機能、防草機能、および景観性を兼ね備えた防災ブロックマットに関する。
【背景技術】
【0002】
ブロックマットは、樹脂製不織布シートの一面にコンクリートブロックを連続配置してなり、海岸、河川、ため池等の法面に敷設することで、護岸や法面の安定化を図ることができる。特許文献1及び2には、ブロックマットにかかる従来技術が開示されている。
近年、ため池周辺の都市化や混住化に伴い、ため池への落下による溺水事故の危険性が増加している。これを受けて、農林水産省では、ため池の安全対策として、人が誤って転落した場合に容易にはい上がれる護岸を求めている(非特許文献1)。
同様の事故は海岸や河川でも発生しており、滑落者が自力で這い上がることを補助する、防災機能を備えたブロックマットが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−265667号公報
【特許文献2】特開2011−26947号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「ため池の安全対策事例集(農林水産省農村振興局防災課:平成25年5月)」http://www.maff.go.jp/j/nousin/bousai/bousai_saigai/b_tameike/pdf/tameike_manual_2_part2_2.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術には、次のような課題がある。
<1>ブロックの形状が複雑であり、滑落者が安定して手指を掛ける部分がないため手指に力が入らず、水中から這い上がりにくい。
<2>連続するブロック間にアンカー打設用の隙間を有するため、シート材を超えて草が繁茂しやすい。このため、視界不足による転落の危険性があるとともに、草刈りなどの維持管理費用の負担が大きい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決する本発明の防災ブロックマットは、フィルターシートの一面に同一向きに配列した複数の防災ブロックを縦横連続して付設してなり、防災ブロックは、矩形の底面の前辺及び後辺から上方に立設する2つの導入壁と、矩形の底面の両側辺から上方に立設し、2つの導入壁の側辺を接続する2つの側壁と、2つの導入壁の上辺から相互に近接する方向に向かって延在する2つの肩面と、を有する基部と、2つの肩面の上辺から上方に立設する2つの把持壁と、2つの把持壁の上辺を接続する上面と、を有する、手指で把持するための把持凸部と、2つの導入壁の幅方向中央部から肩面にわたって凹設される把持凹部と、を備え、基部の底面と把持凹部の間に貫入層を有し、前後方向に連続する2つの防災ブロックの把持凹部によって、手指を掛けるための把持空間が形成されることを特徴とする。
各防災ブロックは、法長方向に這い上がれる形状を備える。
【0007】
本発明の防災ブロックマットは、貫入層の厚さが、1mm以上25mm以下であってもよい。
【0008】
本発明の防災ブロックマットは、導入壁が肩面側に傾斜し、前後方向に連続する2つの防災ブロックの導入壁の間に、導入溝が形成されてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の防災ブロックマットは、以上の構成より次の効果のうち少なくとも一つを備える。
<1>深い把持空間と幅広く平坦な壁面の組合せによって、滑落者が手指に力を入れ易い。このため、滑落者の這い上がりが容易であり、溺水事故を有効に防止できる。
<2>防災ブロックの底面が完全な矩形を呈し、隣接する防災ブロック間に隙間を作らないため、草の繁茂を防止することができる。このため、視界不足による転落を防止できる。また、維持管理負担も少ない。
<3>アンカーピンの打設が容易であり、打設後アンカーピンが導入溝内に隠れるため、景観性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る防災ブロックマットの説明図。
図2】防災ブロックの説明図。
図3】把持空間の説明図。
図4】導入溝の説明図。
図5】導入溝の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の防災ブロックマットについて詳細に説明する。なお、本明細書等において「前」「後」「左」「右」「上」「下」等の各方位は、供用時の傾斜方向を前後方向に配して、防災ブロックマットを平面状に付設した状態における各方位を表す。
【実施例1】
【0012】
[防災ブロックマット]
<1>全体の構成(図1)。
本発明の防災ブロックマットAは、フィルターシート2の一面に、同一向きに配列した複数の防災ブロック1を縦横に連続して付設してなる。
ここで「連続して」とは、隣接する防災ブロック1同士を密着させる場合の他、防災ブロック1間に僅かな隙間を有する場合も含む。
各防災ブロック1は底面がフィルターシート2の表面に一体に固定される。
本発明の防災ブロックマットAは、各防災ブロック1が、凹凸形状を呈するため、手指や足が掛けやすく、滑落者の法長方向への這い上がりを補助することができる。
【0013】
<2>防災ブロック(図2)。
防災ブロック1は、フィルターシート2の表面を被覆する、コンクリートブロック体である。
防災ブロック1の形状は、平面視において矩形形状、正面視において上辺を短辺とする台形状、側面視において略凸字形状である。
本例では、滑落者の手指を掛けやすいサイズとして、平面視を一辺約200mmの正方形とするが、これに限られない。
防災ブロック1は、基部10、把持凸部20、把持凹部30、を備え、基部10の前後方向中央から上方に把持凸部20が突起し、基部10の前後に把持凹部が凹設される。
【0014】
<2.1>基部。
基部10は、前後面の2つの導入壁11と、左右面の2つの側壁13と、矩形の底面14と、導入壁11の上辺から相互に近接する方向に向かって延在する2つの肩面12と、を備える。導入壁11を肩面12側に僅かに傾斜させ、導入壁11と肩面12との間を緩やかなR形状とするのが望ましい。
導入壁11の幅方向中央には把持凹部30が形成され、把持凹部30の底部と底面14との間に、貫入層15が確保される。
肩面12の上辺は把持凸部20の下部に接続し、側壁13は把持凸部20の側面に及ぶ。
底面14の四隅は、従来技術のようにアンカーピン打設用のR加工を行わず、直角形状を呈する。
【0015】
<2.1.1>貫入層。
貫入層15は、防災ブロックマットA固定用のアンカーピンDを貫入するための薄層である。
貫入層15の厚さは、アンカーピンDの貫入が容易であって、かつ外部応力による破損に耐えうる程度の厚さとする。概ね1mm以上25mm以下とするのが望ましい。本例では、貫入層15の厚みが、開口側に向かって薄くなるテーパー形状を呈する。
従来技術は、ブロックがアンカーピン打設用の隙間を備えていた。このため、ブロックを連続して敷設しても、ブロック間の隙間から草が繁茂していた。
これに対し本願の防災ブロックマットAは、防災ブロック1が貫通式の貫入層15を備え、アンカーピンD打設用の隙間を有さない。このため、防災ブロック1がフィルターシート2の表面全体を被覆できるので、草の繁茂を防止することができる。
なお、隣接する防災ブロック1間に僅かな隙間がある場合も、隙間にはコンクリートのノロが付着して薄層を形成するため、密着させた場合と同等の防草効果を発揮できる。
【0016】
<2.2>把持凸部。
把持凸部20は、滑落者が把持するための突起部である。
把持凸部20は、前後面の2つの把持壁21と、頂面の上面22と、を備える。把持壁21と上面22との間は、緩やかなR形状とするのが望ましい。
把持凸部20の側面は側壁13と連続する。
把持壁21は、滑落者の手指がかかりやすいように20〜30mm程度の高さを確保するのが望ましい。
上面22は、滑落者の手のひらが密着するように平坦な形状とするのが望ましい。
【0017】
<2.3>把持凹部。
把持凹部30は、滑落者が把持するための凹部である。
把持凹部30は、基部10の前後両側において、導入壁11の幅方向中央部から肩面12にわたって形成する。
滑落者の手指がかかりやすいように、把持凹部30は、幅を50〜100mm、深さを10〜50mm程度とすることができる。
ただしこれに限られず、手指がかかる範囲であれば、例えば幅を最大190mm、深さを最大95mm程度まで広げてもよい。
【0018】
<3>フィルターシート。
フィルターシート2は、法面の吸出し防止機能を備えるシート材である。
本例では、ポリエステル製不織布のフィルターシートを採用する。但し、素材はこれに限られず、ポリエステルやポリエチレン等の化学繊維であってもよい。また、不織布でなく、織物や編物等であってもよい。
【0019】
<4>把持空間(図3)。
前後方向に連続する2つの把持凹部30によって、防災ブロック1の間に滑落者が手指を掛けるための把持空間Bが形成される。
滑落者が防災ブロック1に掴まると、滑落者の手指が把持空間B内に入りこみ、把持凹部30の内壁に掛かる。
把持空間Bから滑り出た手指も、幅広な把持凸部20の把持壁21に掛かる。
同時に、手のひらが平坦な把持凸部20の上面22に密着し、滑落を防止する。
また、滑落者の靴先も把持空間B内や把持壁21に掛けることができる。
以上の各機能の組合せによって、滑落者の水上への這い上がりを補助し、水中に落下した人の生命が助かる可能性を高めることができる。
【0020】
<5>導入溝(図4、5)。
前後方向に連続する2つの防災ブロック1の導入壁11の間に、断面V字形状の導入溝Cが形成される。
本発明の防災ブロックマットAは、コの字形状のアンカーピンDで、隣接する防災ブロック1の貫入層15とフィルターシート2を打ち抜いて地盤まで貫通させることで法面に固定する(図4(a))。
アンカーピンDの打設の際、アンカーピンDの長手部が導入溝C内にガイドされるため、ピン先端部を所定の位置に位置決めすることができる。よって、固定作業の作業効率が良い(図5)。
また、打設後のアンカーピンDが導入溝C内に収納され目立たないため、景観性に優れる(図4(b))。
【符号の説明】
【0021】
A 防災ブロックマット
1 防災ブロック
10 基部
11 導入壁
12 肩面
13 側壁
14 底面
15 貫入層
20 把持凸部
21 把持壁
22 上面
30 把持凹部
2 フィルターシート
B 把持空間
C 導入溝
D アンカーピン
【要約】
【課題】防災機能、防草機能、および景観性を兼ね備えた、防災ブロックマットを提供すること。
【解決手段】本発明の防災ブロックマットは、フィルターシートの一面に同一向きに配列した複数の防災ブロックを縦横連続して付設してなり、防災ブロックは、矩形の底面の前辺及び後辺から上方に立設する2つの導入壁と、矩形の底面の両側辺から上方に立設し、2つの導入壁の側辺を接続する2つの側壁と、2つの導入壁の上辺から相互に近接する方向に向かって延在する2つの肩面と、を有する基部と、2つの肩面の上辺から上方に立設する2つの把持壁と、2つの把持壁の上辺を接続する上面と、を有する、手指で把持するための把持凸部と、2つの導入壁の幅方向中央部から肩面にわたって凹設される把持凹部と、を備え、基部の底面と把持凹部の間に貫入層を有し、前後方向に連続する2つの防災ブロックの把持凹部によって、手指を掛けるための把持空間が形成されることを特徴とする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5