(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
園芸や農業の分野においては、水道等の給水設備から供給される水に、液肥、農薬その他の薬剤を希釈して散布することが行われてきた。
また、家庭で自家用車等の洗車をする際には、洗車用の洗剤を水に希釈して散水することが行われてきた。
このように広く液剤を水に希釈して散水するために、従来から液剤希釈装置が用いられている。
【0003】
特許文献1の液剤希釈装置は、内部に水道水を通過させる主流路を有し、この主流路の途中に内径を狭めたノズル部を設けている。このノズル部の下流に形成されたディフューザ部では、主流路の内径が再び大きくなるとともに、液剤の収容された液剤容器に連通する液剤流路が接続されている。ノズル部とディフューザ部とをあわせてエジェクターポンプ部という。
この液剤希釈装置では水道水がノズル部を通過する際に流速が増加し、ディフューザ部で負圧を発生させるため、液剤容器から液剤を吸引して水道水に希釈することができた。
【0004】
特許文献1の液剤希釈装置では、使用条件として0.2MPa以上の水圧の水道水を主流路に流す必要があるが、一般家庭の水道水圧は、地域によって0.05〜0.75MPaと幅がある。
このため、主流路の水圧の増減による希釈倍率のばらつきが大きく、特に主流路の水圧が低いときにはディフューザ部の負圧が不十分で液肥を吸い上げることができなかった。
また、適切な希釈倍率となるように水道水圧を大きくして液剤希釈装置を使用すると、吐水量も大きくなるため、液剤として液肥を用いた場合には液肥を与えすぎることになったり、花壇の土が流れてしまったり、草花が倒れてしまうことがあった。
【0005】
市販されている液肥原液は250倍以上に希釈して使用するものがほとんどであるため、上記のように従来の液剤希釈装置では低水圧で所望の希釈倍率に希釈して散布することが難しかった。
ディフューザ部を細くすれば低水圧で高希釈倍率を得ることができるが、吐水量が少なくなりすぎて散水には向かなくなっていた。
【0006】
また、特許文献1のように散水ノズルに液剤容器を固定して取り回す液剤希釈装置では、液剤容器によって散水ノズルが重くなるとともに草花の根元などの狭い箇所に散布するのに邪魔になっていた。
これを解決するために液剤容器およびエジェクターポンプ部と散水ノズルとの間にホースを介在させるものもあるが、ホースによって発生する溶媒の圧力損失や、ホースを揺らしたときに生じる圧力損失の変化によって希釈倍率のばらつきがさらに大きくなっていた。
【0007】
特許文献1の液剤希釈装置では、液剤の供給源からディフューザ部までの液剤流路の途中に、液剤の希釈倍率を調整するための液剤調整孔を形成した希釈ピース(流量制御部材)を配設していた。
希釈ピースの液剤調整孔には使用中にゴミや液剤が付着して目詰まりをすることがあるが、希釈ピースを洗浄または交換するためには、液剤容器を外し、液剤流路の一部を形成するチューブを取り外し、針やピンセットを用いて液剤流路に内嵌している希釈ピースを取り外す必要があり、手間がかかっていた。
また、希釈ピースは直径10mm以下の小さな部品であり、取り扱っている間に紛失するおそれがあった。
【0008】
また、特許文献1の液剤希釈装置で高希釈倍率を得るためには、希釈ピースの液剤調整孔の直径を微小にする必要があり、この液剤調整孔を精度よく形成するためにプレス加工やエッチング加工を採用していた。
プレス加工やエッチング加工で液剤調整孔の精度を向上させるには、希釈ピースの厚みを液剤調整孔の直径以下にすることが好ましかった。また、液剤調整孔の長さ、すなわち希釈ピースの厚みが小さいほうが洗浄をしやすかった。
しかし、液剤調整孔を小さくして高希釈倍率にし、希釈ピースの厚みを液剤調整孔の直径以下にすると、希釈ピースの強度が低下して破損しやすくなるとともに、分解、洗浄、組み立ての際に鋭利な周端部で怪我をするおそれがあった。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の第一実施形態に係る液剤希釈装置について説明する。
この液剤希釈装置1は、園芸、農業、洗車、清掃、その他の液剤を希釈して散布する様々な用途に用いることができる。
第一実施形態に係る液剤希釈装置1は、一例として液剤を250倍の希釈倍率で希釈するように構成されている。
【0019】
液剤としては、園芸用または農業用の液肥や殺虫剤、除草剤その他の農薬、洗車用または清掃用の洗剤、薬品、その他水以外の液体を使用することができる。さらに、これらの液体または固形薬を予め水で一定濃度まで希釈したものも含む。
液剤を希釈する溶媒としては、上水道等の給水設備から供給される水が代表的であるが、その他の溶媒を用いてもよい。この溶媒は、例えば、液剤希釈装置で希釈する液剤以外の物質を予め水に溶かした混合水でもよい。
給水設備は、上水道の蛇口からの給水のほか、井戸や貯水タンクからの給水等であってもよく、特に限定されない。
【0020】
図1に示すように、この液剤希釈装置1は、給水設備(図示せず)から導入した水に液剤を希釈する希釈装置本体2と、液剤を収容するとともに希釈装置本体2に着脱可能に取り付けられる液剤容器3と、ホース4を介して希釈装置本体1に接続され、液剤を希釈した水を散布する散水ノズル5とからなる。
【0021】
図2、
図3に示すように、希釈装置本体2には、水を導入する水入口6と、この水入口6から導入した水を導出する水出口7と、水入口6から水出口7まで水を通過させる主流路8とが形成されている。
主流路8は、希釈装置本体の内部で第一系統9と第二系統10とに分岐し、下流で再び合流する。第二系統10は、第一系統9の上に位置する。
【0022】
図1に示すように、散水ノズル5は、ホース4によって水出口7と接続される接続口11と、接続口11から流入した水を放出する散水口12と、接続口から散水口まで水を通過させるノズル流路(図示せず)と、ノズル流路内に配置されて散水口への通水および止水を切り替えるノズル止水弁13とを有している。
【0023】
<希釈装置本体>
以下では、希釈装置本体2について詳しく説明する。
図1、
図2に示すように、希釈装置本体2は、上部に水を通過させる主流路8を内蔵するとともに、下部に液剤容器3を収納することができる。
希釈装置本体2の一方の側面の上部には、ホース(図示せず)等を接続して上流の給水設備(図示せず)から水を導入する水入口6を形成したホースニップルが突設されている。希釈装置本体の反対側面の上部には、水を導出する水出口7を形成したホースコネクタが形成されている。
主流路8は、水入口6から水出口7までの間を接続するとともに、途中で下側の第一系統9と上側の第二系統10とに分岐し、下流で再び合流する。
【0024】
図3、
図4に示すように、第一系統9の途中には、負圧によって液剤容器3から液剤を吸引するエジェクターポンプ部が設けられている。エジェクターポンプ部は、ディフューザ部14とノズル部15とからなる。
ディフューザ部14の上流には流路が狭窄されたノズル部15が設けられ、水はノズル部15を通過する際に加速する。
ディフューザ部14はノズル部15よりも広く形成されているため、ノズル部15で加速した水が通過する際に負圧が発生する。この負圧によって、ディフューザ部14に合流する液剤流路16から液剤が吸い上げられ、水に混合される。
第二系統10は、液剤流路16とは直接連通しておらず、ディフューザ部14の下流で第一系統9と合流する。
【0025】
低水圧においても安定して液剤を吸引できるように、ノズル部15の直径は可能な限り小さく形成されている。ディフューザ部14に液剤を吸い込みすぎる場合には、ディフューザ部14の直径や、後述する液剤調整孔24の直径を調整して、液剤の希釈倍率を上げることができる。
図4に示すように、ノズル部15の直径aは、1.0〜3.5mmとするのが好ましい。
直径aを1.0mm未満にすると、液剤を吸引する量が小さくなりすぎ、水道水圧を低水圧にすると希釈倍率が安定せずに高くなりすぎてしまう。また、直径aが小さくなりすぎることによるゴミ詰まり等のおそれが高くなる。特に水圧に対する希釈倍率のばらつきを抑えるためには、直径aを1.5mm以上とするのがより好ましい。
直径aを3.5mmよりも大きくすると、液剤を吸引する量が大きくなりすぎ、水道水圧を低水圧にすると希釈倍率が安定せずに高くなりすぎてしまう。また、一定の水道水圧のときに散水量が多くなりすぎるため、草花を傷めたり倒したりするおそれがある。特に水圧に対する希釈倍率のばらつきを抑え、散水量を適切にするためには、直径aを2.5mm以下とするのがより好ましい。
第一実施形態では、ノズル部15の直径aを1.7mmとした。
【0026】
ディフューザ部14の直径bは、ノズル部15の直径aの1.5〜3倍とするのが好ましい。
ディフューザ部14の直径bを、ノズル部15の直径aの1.5倍未満または3倍よりも大きくすると、水道水圧を低水圧にしたときの希釈倍率が安定せずに高くなりすぎてしまう。特に水圧に対する希釈倍率のばらつきを抑えるためには、直径bをノズル部15の直径aの1.5〜2倍とするのがより好ましい。
第一実施形態では、ディフューザ部14の直径bをノズル部15の直径aの1.9倍となる3.2mmとした。
【0027】
図3、
図4に示すように、液剤流路16は、液剤容器3を取り付ける容器取付部17からディフューザ部14まで液剤が通過する流路として形成されている。
液剤流路16が第一系統9のディフューザ部14に合流する部分は直径が小さく、これを成形するための金型も細くなるが、
図4に示すようにこの部分を先細りのテーパ形状に形成することで、金型の強度が向上し引き抜きなどの際に壊れにくくなる。
【0028】
図1、
図3に示すように、容器取付部17の下端は筒状に垂下され、液剤容器3を下から挿し込み、土台26またはボトルホルダー37によって保持することができるようになっている。
容器取付部17の中心では液剤流路16が開口しており、ストロー管18を装着することで液剤容器3の内部から液剤を吸い出せるようになっている。ストロー管18の下端には、微細なゴミを除去するために金網からなるストレーナ19を取り付けている。
ストレーナ19には、笛のような構造を付加して、空気を吸い込んだときに振動して音を出す機能をもたせることもできる。これにより、液剤容器3の液剤が尽きたときにストレーナ19に空気が吸い込まれて音が鳴り、使用者に液剤の有無を知らせることができる。
【0029】
容器取付部17は、ネジ結合によって希釈装置本体2と着脱可能に取り付けられ、希釈装置本体2との間に液剤逆止弁およびプレート23を挟み込んでいる。
液剤流路16に配置される液剤逆止弁は、コイルスプリング20によって弁体21を上流(下方)の弁座22に付勢してなる。液剤が液剤流路16からディフューザ部14へ流れるときには弁体21が押されて液剤流路16が開放されるが、液剤が液剤容器3へ逆流しようとすると、液剤およびコイルスプリング20によって弁体21が弁座22に押し付けられ、液剤流路16が閉鎖される。
【0030】
図4、
図7に示すように、液剤の流量制御部材としてのプレート23は液剤流路16の途中に配置される薄板であって、液剤を通過させる微小な液剤調整孔24を有している。
液剤調整孔24の大きさを変えることによって、液剤の希釈倍率を調整することができる。液剤調整孔24を比較的大きく形成した場合には、流路抵抗が低下して液剤の流量が増加するため、希釈倍率が小さくなる。液剤調整孔24を比較的小さく形成した場合には、流路抵抗が上昇して液剤の流量が減少するため、希釈倍率が大きくなる。
なお、
図4、
図7に示すように、液剤逆止弁の弁体21が液剤流路16の中心位置で上下動しても液剤調整孔24が塞がれないように、液剤調整孔24はプレート23の中心からずらして形成されている。
【0031】
プレート23の材料には、プラスチック、金属を用いることができるが、微小な液剤調整孔24を精度よく形成するには金属が好ましく、液剤による錆や腐食が起こりにくいステンレスがより好ましい。
第一実施形態では、ステンレスによってプレート23を形成した。
【0032】
液剤調整孔24の直径は、0.1〜0.5mmとするのが好ましい。
直径を0.1mm未満にすると、加工が難しく製品精度が低下してしまう。
また、直径を0.5mmよりも大きくすると、液剤の供給量が大きくなりすぎて希釈水の濃度が濃くなり、実質的に液剤の希釈倍率を調整する機能を有しなくなってしまう。効果的に液剤の流量を調整して高希釈倍率にするためには、直径を0.3mm以下とするのがより好ましい。
第一実施形態では、250倍の希釈倍率を得るために液剤調整孔24の直径を0.2mmとした。
【0033】
プレート23の厚みは、0.05〜2mmとすることが好ましい。
厚みを0.05mm未満にすると、安価で実用に耐える標準材料がなく、材料コストが増加してしまう。
2mmよりも大きくすると、材料コストが増加するとともに、液剤調整孔24を形成する加工コストも増加してしまう。なお、材料コストおよび加工コストの増加を抑えるため、原則として厚みを液剤調整孔24の直径以下とすることが好ましく、液剤調整孔24の直径の好適範囲の最大値である0.5mm以下とするのがより好ましい。
第一実施形態では、プレート23の厚みを液剤調整孔24の直径と等しい0.2mmとした。
【0034】
プレート23の外周には、補強部材25が取り付けられている。補強部材25は、弾性材料を用いて成形され、プレート23の全周を覆うとともにプレート23本体から上下方向に突出している。
液剤を高希釈倍率で希釈するために液剤調整孔24を小さくするには、精度を向上させるためにプレート23を薄くする必要があるが、補強部材25がプレート23を保護することによって、落下や衝突によるプレート23の破損を防止することができる。
また、プレート23を薄くすると、周端部が鋭利になり、取扱い時に使用者が手を切る等の危険があるが、プレート23の外周を補強部材25で覆うことによって、怪我を防止することができる。
さらに、
図4に示すように、補強部材25は上下面にそれぞれ環状の溝を有し、容器取付部17、希釈装置本体2、および液剤逆止弁の間で水密に位置決めされ、液剤の漏れを防止するとともに、液剤調整孔24を正しい位置に配置する機能を有する。
【0035】
補強部材25は、プレート23の全周に設けてもよく、また、外周の一部に設けてもよい。
プレート23と補強部材25とは、接着剤等による接着、固着、溶着、装着などのあらゆる方法を用いることができるが、別々に成形した後に組み立てる場合にはスナップフィット等による装着が好ましい。また、先にプレート23を成形した後にインサート成形によって補強部材25を成形、固着してもよい。
【0036】
補強部材25に用いる弾性材料は、ゴム、エラストマー、軟質プラスチックを使用することができる。
第一実施形態では、補強部材25にエラストマーを用いて、インサート成形によってプレート23の周囲に成形した。
図7(b)に示すように、プレート23は、6つの充填孔23aが形成されるとともに、周端の一部が切り欠かれている。充填孔23aにはインサート成形の際に補強部材25の材料の一部が流し込まれて固まり、プレート23と補強部材25とが強固に固定される。なお、空洞25aは、補強部材25を成形する際にプレート23を位置決めする金型から出ているピンを抜いた跡に生じた穴である。
【0037】
図1、
図2に示すように、希釈装置本体2の下部は、内部に液剤容器3を収納する空間(液剤容器収納部)を形成し、この空間の正面部を液剤容器3の出し入れ用に切り欠いているとともに背面部の上半分にも開口を設けた筐体として形成されている。
液剤容器収納部の左右の側面部および背面部は、収納される液剤容器3を覆って衝撃等から保護する機能を有している。
また、液剤容器収納部の下には、液剤容器収納部よりも拡張された土台26が形成され、希釈装置本体の転倒を防止している。この土台26の中心部は、漏れ水や埃を排出できるように円形に切り欠かれている。
【0038】
図3から
図6に示すように、希釈装置本体2には、水が第一系統9と第二系統10との両方を通過して希釈水が吐出される希釈水吐出と、水が第二系統10のみを通過しそのまま吐出される原水吐出とを切り替える切替装置が設けられている。
切替装置は、第一系統9と第二系統10との分岐点に回転可能に配置された切替弁体27と、この切替弁体27に連結されるとともに一部が希釈装置本体2の外部に露出した操作部材33とからなる。
【0039】
切替弁体27は、弁体入口、第一弁孔28、第二弁孔29および第三弁孔30を有している。
弁体入口(図示せず)は、切替弁体27の右端(上流端)で主流路8に開口しているとともに、
図3から
図6に表れない流路によって、第一弁孔28、第二弁孔29および第三弁孔30の全てに連通している。
第一弁孔28および第二弁孔29は、希釈水吐出の姿勢のときに互いに上下に位置し、それぞれ第一系統9、第二系統10に連通する位置に開口している。
【0040】
第一弁孔28その他のノズル部15より上流の流路の直径は、ノズル部15よりも大きくなっており、ノズル部15の流れの妨げにならないようになっている。
第二弁孔29の直径cは、1.2〜2.6mmとするのが好ましい。直径cを1.2mm未満にすると、流路抵抗が大きくなりすぎて散水量が少なくなりすぎてしまう。直径cを2.6mmよりも大きくすると、水道水圧を低水圧にしたときに希釈倍率が安定せずに高くなりすぎてしまう。第一実施形態では、第二弁孔29の直径cを1.8mmとした。
第二弁孔29より下流の第二系統10の流路の直径は、流量や流速を制限しないように、第二弁孔29の直径よりも大きくし、後述する第三弁孔30の直径dよりも大きくした。
【0041】
図6に示すように、第三弁孔30は、切替弁体27を希釈水吐出から所定角度(たとえば70度)回転させた原水吐出の姿勢のときに上部に位置して第二系統10に連通する位置に開口している。
第三弁孔30の流路断面積が、第一弁孔28の流路断面積と第二弁孔29の流路断面積との合計に略等しくなるように、第三弁孔30の直径dは2.6mmに設定されている。これにより、原水吐出と希釈水吐出とを切り替えても、それに伴う流路抵抗の変化が小さくなり、所定の水道水圧における散水量を略一定に保つことができる。
【0042】
切替弁体27の下流(左方)には、第一弁孔28から第三弁孔30に相当する位置に開口を設けたシールパッキン31が取り付けられ、第一弁孔28から第三弁孔30のうち、第一系統9および第二系統10に合致しているもの以外からの水漏れが防止される。
シールパッキン31の開口は、相当する第一弁孔28から第三弁孔30よりも大きく形成されているため、開口のふちが水流によって捲れ、水流の妨げになったり、切替装置の破損の原因になるのを防止することができる。
水漏れ防止のために、切替弁体27およびシールパッキン31は、コイルスプリング32によって下流(左方)に付勢されている。
【0043】
操作部材33は、切替弁体27の右端に連結されるとともに一部が希釈装置本体2の外部に露出し、使用者が所定角度(第一実施形態では70度)の範囲内で回転操作することができるようになっている。切替弁体27は、操作部材33が回転するのにともなって回転する。
【0044】
図4に示すように、希釈水吐出時において、第二系統10の最も狭い箇所の流路断面積(第二弁孔29)は、第一系統9の最も狭い箇所(ノズル部15)の流路断面積よりも大きく設定され、第一系統9と第二系統10との合流部は、第二系統10の水が流入しやすく形成されている。
これにより、希釈水吐出時には、第二系統10の流量が第一系統9の流量よりも大きくなり、第一系統9と第二系統10との合流部では、第一系統9の希釈水を誘引する負圧を発生させるため、ディフューザ部14の負圧を補助して、低水圧の場合にも液剤を安定して吸い上げることができ、水道水圧の変化に対して希釈倍率を安定させることができる。
【0045】
主流路8の切替装置の上流には、水逆止弁が設けられている。
水逆止弁は、コイルスプリング34によって弁体35を上流(下方)の弁座36に付勢してなる。水が水入口6から水出口7へ流れるときには弁体35が押されて主流路8が開放されるが、第一系統9の希釈水や第二系統10の水が水入口6へ逆流しようとすると、水およびコイルスプリング34によって弁体35が弁座36に押し付けられ、主流路8が閉鎖される。
【0046】
図3、
図4に示すように、第一実施形態の液剤希釈装置1で切替装置を希釈水吐出の姿勢にすると、第一弁孔28が第一系統9に連通し、第二弁孔29が第二系統10に連通して、水が第一系統9および第二系統10を流れる。
第一系統9では、ディフューザ部14で負圧が発生し、液剤を吸引して希釈させる。
第二系統10では、第一系統9よりも多くの水が流れ、第一系統9との合流部で負圧を発生させ第一系統9の水を誘引するため、低水圧でも、第一系統9のディフューザ部14の負圧をより安定的に発生させることができる。
これにより、液剤を安定的に所望の希釈倍率(250倍)に希釈して散水することができる。
【0047】
図5、
図6に示すように、切替装置を希釈水吐出から70度回転させて原水吐出の姿勢にすると、第三弁孔30が第二系統10に連通し、切替装置のシールパッキン31によって第一系統9が閉鎖され、水が第二系統10のみを流れてそのまま散水される。
第三弁孔30の流路断面積が第一弁孔28の流路断面積と第二弁孔29の流路断面積との合計に略等しくなるように設定され、希釈水吐出時と原水吐出時との流路抵抗の変化を小さくしたため、所定の水道水圧における散水量を略一定に保つことができる。このため、切替装置の操作に伴い急に散水量が低下して不便になったり、急に散水量が増加して植物を傷めたり水跳ねを起こしたりすることがない。
【0048】
<試験>
本発明の第一実施形態に係る液剤希釈装置1の希釈吐出時(実施例)と、第二系統10を設けず、エジェクターポンプ部を有する第一系統9のみを設けた点で異なる従来例とにおいて、目標希釈倍率を250倍として、水圧の変化に対する希釈倍率のばらつきを測定した。
なお、
図8、
図9に示すように、実施例でも比較例でも、水圧0.10MPaのときの散水量は約4.0L/min、0.50MPaで8.0〜8.5L/minであり、液剤希釈装置1全体の流路抵抗は略等しくなるように調整している。
また、実施例と比較例とのそれぞれにおいて、希釈装置本体1の下流のホース4および散水ノズル5の取り回しによる圧力損失の影響を測定するために、散水ノズル5を高さ0mに構えて散水した場合と、散水ノズル5を高さ1.2mに構えて散水した場合とを測定した。
【0049】
図9に示すように、従来例では、高さ0mで測定した場合、水圧0.40MPaのときに約250倍となるが、水圧を低下させると希釈倍率が急激に上昇して0.10MPaで約525倍になってしまった。
また、高さ1.2mで測定した場合、水圧0.40MPaのときに約275倍となるが、水圧を低下させると希釈倍率が急激に上昇して0.20MPaで約500倍になり、0.10MPaでは1000倍以上になってしまった。
【0050】
図8に示すように、実施例では、高さ0mで測定した場合、水圧0.40MPaのときに約250倍となり、水圧を低下させると希釈倍率がわずかに低下するがほぼ変化せず、0.10MPaでも約240倍であった。
また、高さ1.2mで測定した場合、水圧0.40MPaのときに約250倍となり、水圧を低下させると0.30MPaでは約225倍となり、その後希釈倍率が徐々に上昇して0.10MPaで約275倍になった。
【0051】
このように、従来例に比べて実施例では、比較的高希釈倍率(250倍)を狙った場合において、水道水圧の変化に対して希釈倍率を安定させることができた。特に低水圧の場合には、従来例に比べて良好に希釈倍率を安定させることができた。
また、従来例に比べて実施例では、希釈装置本体の下流のホースおよび散水ノズルを取り回すことにより圧力損失が生じた場合にも、希釈倍率を安定させることができた。
【0052】
<別態様>
第一実施形態のように補強部材25を弾性材料で形成する代わりに、
図10に示すように補強部材25を弾性材料以外の材料で形成し、補強部材25と他の部品との間での液剤の漏れを防止するシール部材38を別体に設けてもよい。
この場合には、補強部材25は、プレート23を舌片25bの下に挟み込むことで、プレート23の周端部を覆って保護する役割のみを有する。
図10(b)(c)に示すように、シール部材38は、補強部材25と嵌合することによってプレート23に一体的に取り付けることができる。
シール部材38の材料には、ゴム、エラストマーを用いることができるが、補強部材と別体とする場合には汎用性の高い市販のOリングや他のゴム部材を用いることが好ましい。
図10(b)に示すように、シール部材38は上下面にそれぞれ環状の溝を有し、容器取付部17、希釈装置本体2、および液剤逆止弁の間で水密に位置決めされ、液剤の漏れを防止するとともに、液剤調整孔24を正しい位置に配置する機能を有する(
図4参照)。
【0053】
また、主流路8からの分岐が、第一系統9、第二系統10のほかに、さらに1つ以上の系統に分岐するようにしてもよい。3つ目以降の系統は、ノズル部15およびディフューザ部14を有する系統(希釈水系統)でも、これらを有しない系統(原水系統)でもよい。
この場合にも、第一系統9を含む希釈水系統の合計流量よりも、第二系統10を含む原水系統の合計流量のほうが多くなるようにし、合流部では希釈水系統の水を誘引するような負圧を発生させるようにする。
【0054】
また、希釈水系統の流量よりも原水系統の流量が大きくなるようにするために、第一実施形態のように希釈水系統の流路断面積よりも原水系統の流路断面積を大きくする代わりに、希釈水系統よりも原水系統の流路長が短くなるようにしたり、希釈水系統よりも原水系統の流路の起伏を小さくしたりしてもよい。