【実施例】
【0145】
実施例第1部
化合物
化合物の合成
本発明の化合物の化学的合成のためのいくつかの方法を本明細書で説明する。本発明の範囲内の他の化合物の合成を容易にするために、これら及び/又は他の周知の方法を公知の方法で改変する及び/又は適合させることができる。
【0146】
アミドは、以下の一般的手法にしたがって調製することができる。
【0147】
方法A
15シリーズの化合物などのアルコキシ化された置換化合物の合成は二段階のプロトコルをもとにしており、ここで、ピペリジンを用いて、市販のフェニル酢酸誘導体に、DCCによる媒介アミドの生成を施す(スキーム1)。続いて得られた2−アリールアセトアミドをアルキル化し、次いで標準的条件下でのLDA及びブロモブタンによる処理へと進む。
【化9】
【0148】
同じ手法を、ジアルキルアミドにも採用した。したがって、非置換親化合物のメトキシ及びヒドロキシアリール同類物の合成は三段階又は四段階のプロトコルをもとにしており、ここで、最初に市販のフェニル酢酸誘導体を、対応する酸クロリド又はベンゾトリアゾリルエステルによりピペリジンか又はジメチルアミドに転換させる。スキーム1.1に示すように、続く、1−ブロモブタンか又は6−ブロモ−1−ヘキセンを用いたLDA促進アルキル化により、所望のメトキシアリール化合物を低収率から良好な収率の範囲で得る。
【化10】
【0149】
選択されたメトキシアリール目的物の脱メチル化を、スキーム1.2に概要を示したようにしてジクロロメタン中の三臭化ホウ素を用いて実施した。これらの条件下での15.1、15.2、15.3及び17.2の処理はすべて順調に進み、対応するヒドロキシアリール誘導体を良好な収率と高い純度で得た。
【化11】
【0150】
方法B
ヒドロキシメチル化化合物及びアセチル化類似物の合成を、標準的な保護及びアルキル化プロトコルにしたがって、容易に合成されるアミドからアクセスした(スキーム2)。p−誘導体のアセチル化によって化合物を良好な単離収率で得た。
【化12】
【0151】
より具体的には、12.1のヒドロキシメチル化同類物及びその酢酸誘導体へのアクセスを得るために、フェニル酢酸誘導体の市場での入手可能性をもとにした異なる合成経路を用いる必要があった。p−ヒドロキシメチルフェニル酢酸は市販されておりピペリジンとのカップリング反応に直接使用することができたが、対応するo−ヒドロキシメチルフェニル酢酸は市場で入手することができなかった。そこで、ピペリジンを用いた市販のイソクロマノンの求核的開環により中程度の単離収率で必要なアミドにアクセスした(以下のスキーム2.1)。手元にあるo−及びp−ヒドロキシメチルアミドを用いて、イミダゾールの存在下、tert−ブチルジメチルシリル(TBS)クロリドで処理して対応するTBSエーテルを中程度の収率で得た。これらにアルキル化を施して16.1及び16.2をその保護形態で得た。TBSエーテルをTHF中のTBAFで処理し、TBS保護基を取り外して16.1及び16.2をほぼ定量的な収率で得た。次いで、16.2をピリジン中の無水酢酸で処理して化合物16.3を単離した。これをスキーム2の修正版である以下のスキーム2.1に示す。
【化13】
【0152】
16.2を直接17.9に転換させる手順は二段階の工程であり、そこでは、オキソン(Oxone)(登録商標)で処理する前に対応するアルデヒドへのスワーン酸化を実施した。所望の酸を中程度の総合収率で得た(スキーム3)。
【化14】
【0153】
12.1の残りの目的とする同類物はすべて、適切な求電子試薬で処理することによって、16.5の改変によりアクセスすることができた。すべての場合、中程度の収率から高い収率で目的化合物を得た。これらの反応のまとめをスキーム4に示す。
【化15】
【0154】
上記手法を用いて、以下の構造にもとづく化合物を合成した。これらは好ましい実施形態(参考化合物は除く)である:
【化16】
【表1】
【0155】
さらに、以下の化合物を合成した。これらは好ましい実施形態である。
【表2】
【0156】
さらに、以下の構造の化合物を合成した。これらは好ましい実施形態である。
【化17】
【表3】
【0157】
さらに、以下の構造の化合物を合成した。これらは好ましい実施形態である。
【化18】
【表4】
【0158】
さらに、以下の構造の化合物を合成した。これらは好ましい実施形態である。
【化19】
【表5】
【0159】
これらの化合物を、フジツボに対する生物活性について試験した。
選択されたアミド誘導体のための合成方法及びデータ
【0160】
特性評価
プロトン(
1H)及び炭素(
13C)NMRスペクトルを、
1Hについて400MHzで、
13Cについて75.4MHzで稼働させてBruker NMR分光計で記録した。別段の表示のない限り、溶媒として重水素化クロロホルム(CDCl
3)を使用した。化学シフト(d)を、テトラメチルシラン(TMS、0.00ppm)からのパーツパーミリオン(ppm)でのシフトとして記録する。CDCl
3で記録したNMRスペクトルを、
1Hについて残留クロロホルム一重項(7.26ppm)、
13CについてCDCl
3三重項(77.00ppm)の中央ピークを基準とした。
1H NMR分光分析データを以下の通り報告する:化学シフト(δ)、多重度(s:一重項、d:二重項、t:三重項、q:四重項、qt:五重項、m:多重項、dd:二重項の二重項等、br:幅広)、結合定数(JHz)及び相対積分(プロトン数)。可能な場合、
13C分光分析データを化学シフト(δ)及び帰属として記録する。赤外スペクトルをBio−rad Excalibur Series TFS 3000MX FTIRで記録した。サンプルは、NaClプレート上の薄い液膜で実施した。IRスペクトルデータを以下の通り報告する:周波数(υ
max cm
−1)、強度(vs:非常に強い、s:強い、m:中程度、w:弱い)。高分解能電子衝撃(EI)質量スペクトルをThermo Finnigan MAT XP95質量分析計で記録した。分析用薄層クロマトグラフィー(tlc)を、シリカゲルF
254(Merck)をコーティングしたアルミニウム板で実施した。クロマトグラムを254nmの波長(適切な場合)で分析した、及び/又は水の中の過マンガン酸カリウムの酸性溶液(5%H
2SO
4)を用いて展開させ、次いで加熱した。使用した溶媒はすべてARグレードのものであり、適切な場合、文献の手順により精製した(Armarego、2003年)。
【0161】
一般的手順−DCC媒介アミド結合形成
DMF(1.2mL/mmol)中のフェニル酢酸誘導体(1当量)の冷却(0℃)撹拌溶液に、DCC(1.1当量)及びHOBt(1.1当量)を加えた。得られた混合物を1時間撹拌し、その時点で無色の重い沈殿物が現れた。ピペリジン(1.1当量)を反応混合物に加え、撹拌をさらに2時間続行し、次いで反応混合物をろ過した。母液をEtOAcに取り、飽和NaHCO
3及び水(×3、2.4mL/mmol)で順次洗浄した。有機層を脱水し(MgSO
4)、真空下で濃縮して粗製アミドを得た。これを、指定された溶媒系を用いてフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製した。
【0162】
一般的手順−酸クロリドによるアミド結合形成
DCM(0.4mL mmol
−1)中のメトキシフェニル酢酸の冷却(0℃)撹拌溶液に塩化チオニル(0.4mL mmol
−1)を加えた。得られた混合物を室温に加温し、50℃で2時間加熱し、次いで反応混合物を室温に冷却し、氷に注意深く注加した。有機層を脱水し(MgSO
4)、真空下で濃縮して所望の酸クロリドを得た。これをさらに精製することなく使用した。
【0163】
ピペリジンアミドについては、適切な量の酸クロリド(1mol当量)を等量の無水CH
2Cl
2に溶解し、CH
2Cl
2(1mL mmol
−1)中のピペリジン(2mol当量)の冷却(0℃)溶液に徐々に加えた。得られた混合物を室温に加温し、さらに2時間撹拌した。粗製反応混合物を水で洗浄し、有機層を脱水し(MgSO
4)、真空下で濃縮して所望のアミドを得た。さらなる精製は必要でなかった。
【0164】
ジメチルアミドについては、適切な量の酸クロリドを、水(10mol当量)の中のジメチルアミンの冷却(0℃)40%溶液に徐々に加え、2時間撹拌し、次いで室温に加温した。CH
2Cl
2を反応混合物に加え、有機層を水で洗浄し、脱水し(MgSO
4)、真空下で濃縮して所望のアミドを得た。
【0165】
一般的手順−αアルキル化
無水THF(2mL/mmol)中の新たに蒸留されたジイソプロピルアミド(1当量)の冷却(−78℃)撹拌溶液に、ヘキサン中のn−ブチルリチウム(1当量)を加えた。得られた反応混合物は淡黄色になり、これを−78℃で10〜15分間撹拌し、次いで所望のアミド(0.95当量)を注意深く加えた。得られた混合物を1時間撹拌し、その時点でブロモブタン(1当量)を加えた。得られた混合物を数時間(少なくとも3時間)かけて室温に加温し、撹拌をさらに13時間続行した(合計で16時間)。反応混合物に水を注意深く滴下して反応物をクエンチした。続いて、水を反応混合物に加え、水相を除去した。有機層を水で洗浄し、次いで塩水で洗浄し、脱水し(MgSO
4)、減圧下で濃縮した。精製を、指定された溶媒系を用いてフラッシュカラムクロマトグラフィーで実施した。
【0166】
化合物15.1
2−(4−メトキシ)フェニル−1−(ピペリジン−1−イル)エタノン
【化20】
表題化合物を、アミド結合形成のための一般的手順にしたがって4−メトキシフェニル酢酸(1.0g、6.1mmol)から調製した。生成物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(EtOAc、Rf=0.5)による精製によって無色油状物(1.0g、65%)として単離した。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ 1.35(m,2H);1.49(m,2H);1.57(m,2H);3.35(m,2H);3.55(m,2H);3.64(s,2H);3.77(s,3H);6.85(d,J=8.4Hz,2H);7.16(d,
2J=8.4Hz 2H)。
13C NMR(75MHz,CDCl
3)δ24.47、25.52、26.25、40.26、42.90。47.25、55.28、114.08、127.47、129.61、158.27、169.60。HRMS(ESI+1イオン)m/z:C
14H
20NO
2の計算値234.1489、実測値234.1496。
【0167】
2−(4−メトキシ)フェニル−(1−ピペリジン−1−イル)ヘキサノン
【化21】
表題化合物を、α−アルキル化のための一般的手順概要にしたがって2−(4−メトキシ)フェニル−1−(ピペリジン−1−イル)エタノン(740mg、3.41mmol)から調製した。表題化合物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン中に20%EtOAc、Rf=0.6)による精製によって淡黄色油状物(160mg、16%)として単離した。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ 0.83(t,J=7Hz,3H);1.03(m,1H);1.14(m,1H);1.2〜1.6(多重線シグナル、8H);1.68(m,1H);2.05(m,1H);3.31〜3.45(2×m,3H);3.64(m,2H);3.78(s,3H);6.83(d,J=8.9Hz,2H);7.18(d,J=8.9Hz 2H)。
13C NMR(75MHz,CDCl
3)δ 14.05、22.74、24.60、25.60、26.16、30.07、34.81、43.15、46.64、47.78、55.24、113.98、128.29、133.03、158.34、171.67。HRMS(ESI+1イオン)m/z:C
18H
29NO
2の計算値290.2115、実測値290.2130。
【0168】
化合物15.7
2−(2,4−ジメトキシ)フェニル−1−(ピペリジン−1−イル)エタノン
【化22】
表題化合物を、アミド結合形成のための一般的手順概要にしたがって2,4−ジメトキシフェニル酢酸(1.0g、4.7mmol)から調製した。生成物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(EtOAc、Rf=0.6)による精製によって黄色油状物(690mg、56%)として単離した。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ 1.38(m,2H);1.52(m,2H);1.58(m,2H);3.36(m,2H);3.56(m,2H);3.20(s,2H);3.29(s,3H);3.81(s,3H);6.45(m,3H);7.13(d,J=8.6Hz)。
13C NMR(75MHz,CDCl
3)δ 24.46、25.56、26.26、40.72、40.77、42.94、47.27、111.24、111.70、120.66、127.97、147.80、149.07、169.45。HRMS(ESI+1イオン)m/z:C
15H
22NO
3の計算値264.1594、実測値264.1605。
【0169】
2−ブチル−2−(2,4−ジメトキシ)フェニル−1−(ピペリジン−1−イル)ヘキサノン
表題化合物を、αアルキル化のための一般的手順概要にしたがって2−(2’,4’−ジメトキシ)フェニル−1−(ピペリジン−1−イル)エタノン(688mg、2.61mmol)から調製した。生成物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン中に50%EtOAc、Rf=0.7)による精製によって淡黄色油状物(380mg、45%)として単離した。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ 0.87(t,J=7Hz,3H);0.973(m,1H);1.13(m,1H),1.23〜1.65(多重線シグナル、9H);2.01(m,1H);3.33(m,3H);3.7(m,1H);3.79(s,3H);3.82(s,3H);4.12(t,J=7Hz,1H);6.42(m,3H);7.20(d,J=8Hz)。
13C NMR(75MHz,CDCl
3)δ 14.06、22.79、24.73、25.67、26.16、29.92、34.04、39.21、43.11、46.19、55.32、55.50、98.26、104.66、121.93、128.56、156.79、159.38、172.45。HRMS(ESI+1イオン)m/z:C
19H
30NO
3の計算値320.2220、実測値320.2229。
【0170】
化合物15.6
2−ブチル−2−(2,4−ジメトキシ)フェニル−1−(ピペリジン−1−イル)ヘキサノン
【化23】
表題化合物を、αアルキル化のための一般的手順概要にしたがって2−(2’,4’−ジメトキシ)フェニル−1−(ピペリジン−1−イル)エタノン(688mg、2.61mmol)から調製した。生成物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン中に50%EtOAc、Rf=0.7)による精製によって淡黄色油状物(380mg、45%)として単離した。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ 0.87(t,J=7Hz,3H);0.97(m,1H);1.13(m,1H),1.23〜1.65(多重線シグナル、9H);2.01(m,1H);3.33(m,3H);3.7(m,1H);3.79(s,3H);3.82(s,3H);4.12(t,J=7Hz,1H);6.42(m,3H);7.20(d,J=8Hz)。
13C NMR(75MHz,CDCl
3)δ 14.06、22.79、24.73、25.67、26.16、29.92、34.04、39.21、43.11、46.19、55.32、55.50、98.26、104.66、121.93、128.56、156.79、159.38、172.45。HRMS(ESI+1イオン)m/z:C
19H
30NO
3の計算値320.2220、実測値320.2229。
化合物16.2
【0171】
2−(4−ヒドロキシメチル)フェニル−1−(ピペリジン−1−イル)エタノン
表題化合物を、アミドカップリングのために概要を示した一般的手順にしたがって4−ヒドロキシメチルフェニル酢酸(1.0g、6.0mmol)から調製した。生成物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(EtOAc、Rf=0.5)による精製によって粘性の無色油状物(540mg、39%)として単離した。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ 1.37(m,2H);1.52(m,2H);1.58(m,2H);3.36(m,2H);3.56(m,2H);3.71(s,2H);4.66(s,2H);7.23(d,J=8Hz,2H);7.31(d,J=8Hz,2H)。
13C NMR(75MHz,CDCl
3)δ 24.39、25.44、25.47、26.21、34.91、40.77、42.92、47.25、55.77、64.92、127.33、128.76、134.65、139.48、169.30。HRMS(ESI+1イオン)m/z:C
14H
20NO
2の計算値234.1489、実測値234.1489。
【0172】
2−(4−tert−ブチルジメチルシリルオキシメチル)フェニル−1−(ピペリジン−1−イル)エタノン
無水DCM中の2−(4−ヒドロキシメチル)フェニル−1−(ピペリジン−1−イル)エタノン(540mg、2.32mmol)及びイミダゾール(97mg、1.4mmol)の冷却(0℃)溶液に、DCM(5mL)中のTBSCl(214mg、1.42mmol)の溶液を加えた。得られた反応混合物を2時間撹拌した。次いで、反応混合物を水(×2)及び塩水で順次洗浄し、有機層を脱水し(MgSO
4)、真空下で濃縮した。表題化合物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(20%EtOAc、Rf=0.6)による精製によって無色油状物(420mg、53%)として得た。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ 0.084(s,6H);0.929(s,9H);1.34(m,2H);1.52(m,2H);1.59(m,2H);3.43(m,2H);3.57(m,2H);3.71(s,2H);4.71(s,2H);7.20(d,J=8Hz,2H);7.25(d,J=8Hz,2H)。
13C NMR(75MHz,CDCl
3)δ −5.21、24.45、25.59、25.97、26.20、40.94、42.89、47.27、64.77、126.41、128.40、133.96、139.81、169.36。HRMS(ESI+1イオン)m/z:C
20H
34NO
2Siの計算値348.2353、実測値348.2354。
【0173】
2−(4−tert−ブチルジメチルシリルオキシメチル)フェニル−1−(ピペリジン−1−イル)ヘキサノン
表題化合物を、αアルキル化のために概要を示した一般的手順にしたがって2−(4−tert−ブチルジメチルシリルオキシメチル)フェニル−1−(ピペリジン−1−イル)エタノン(420mg、1.21mmol)から調製した。生成物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン中に20%EtOAc、Rf=0.6)による精製によって無色油状物(260mg、53%)として得た。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ 0.010(s,6H);0.087(t,J=7Hz,3H);0.94(s,9H);1.01(m,1H);1.14(m,1H);1.2〜1.6(多重線シグナル、8H);1.68(m,1H);2.10(m,1H);3.3〜3.5(m,3H);3.68(m,2H);4.72(s,2H);7.15(m,4H)。
13C NMR(75MHz,CDCl
3)δ −5.20、14.03、22.75、24.75、25.68、26.12、30.40、34.78、43.16、46.62、48.47、64.79、126.38、127.66、139.52、139.73、171.42。HRMS(ESI+1イオン)m/z:C
24H
42NO
2Siの計算値404.2979、実測値404.2983。
【0174】
2−(4−ヒドロキシメチル)フェニル−1−(ピペリジン−1−イル)ヘキサノン
無水THF(5mL)中の2−(4−tert−ブチルジメチルシリルオキシメチル)フェニル−1−(ピペリジン−1−イル)ヘキサノン(260mg、0.64mmol)の溶液を、THF(1.29mmol)中のTBAFの溶液を入れたフラスコに加えた。得られた反応混合物を1時間撹拌し、その時点でtlc分析により、出発原料が残っていないことが示された。反応混合物を水(×2)、次いで塩水で洗浄し、有機層を脱水し(MgSO
4)、真空下で濃縮して粗生成物を得た。表題化合物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン中に50%EtOAc、Rf=0.4)による精製によって無色油状物(142mg、76%)として単離した。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ 0.87(t,J=7Hz,3H);1.04(m,1H);1.14(m,1H);1.9〜1.7(m,8H);1.71(m,1H);1.91(m,1H);3.34(m,2H);3.47(m,1H);3.63(m,1H);3.69(t,J=7Hz,1H);4.66(s,2H);7.25(d,J=8Hz,2H);7.30(d,J=8Hz,2H)。
13C NMR(75MHz,CDCl
3)δ 14.02、22.72、24.56、25.57、26.12、30.07、34.76、43.19、46.64、48.41、65.07、127.06、127.99、139.28、140.32、171.32。HRMS(ESI+1イオン)m/z:C
18H
28NO
2の計算値290.2114、実測値289.2117。
化合物16.3
【0175】
2−(4−アセトキシメチル)フェニル−1−(ピペリジン−1−イル)ヘキサノン
DMAP(2mg)を入れた丸底フラスコに無水ジクロロメタン(2mL)中の2−(4−ヒドロキシメチル)フェニル−1−(ピペリジン−1−イル)ヘキサノン(30mg、0.10mmol)の溶液を加えた。得られた混合物に無水NEt
3(208μL、1.5mmol)を加え、次いで無水酢酸(100μL、1.0mmol)を加えた。得られた混合物を3時間撹拌した。続いて、反応混合物を飽和NaHCO
3、水で洗浄し、次いで塩水で洗浄し、有機相を脱水し(Na
2SO
4)、減圧下で濃縮した。表題化合物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン中に50%EtOAc、Rf=0.7)による精製によって無色油状物(20mg、60%)として得た。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ 0.86(t,J=7Hz,3H);1.0〜1.2(2×m,2H);1.2〜1.5(多重線シグナル、8H);1.68(m,1H);4.53(m+s,4H);3.33(m,1H),3.39(m,1H);3.49(m,1H);3.60(m,1H);3.70(t,J=7Hz,1H);5.07(s,2H);7.72(m,4H)。
13C NMR(75MHz,CDCl
3)δ 14.01、21.08、22.72、24.57、25.60、26.20、30.09、34.77、43.20、46.66、48.38、66.07、128.03、128.58、134.24、141.02、171.09、171.17。
注記:化合物は静置すると加水分解する。HRMSによれば遊離アルコールのそれと一致する。
【0176】
化合物17.1
2−(4−メトキシオキシフェニル)−1−(ピペリジン−1−イル)オクタ−7−エン−1−オン
【化24】
表題化合物を、アルキル化のための一般的手順にしたがって2−(4−ヒドロキシフェニル)−1−(ピペリジン−1−イル)エタノン(100mg、0.43mmol)及び6−ブロモ−1−ヘキセン(70μL、0.47mmol)から調製した。精製された化合物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン中に20%EtOAc、Rf=0.5)による精製によって淡黄色油状物(26mg、26%)として単離した。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ1.1〜1.5(多重線シグナル、10H);1.65(m,1H);2.01(m,3H);3.35,(m,3H);3.63(t,J=7Hz,1H);3.65(m,1H);3.78(s,3H);4.89(dm,J=10Hz,1H);4.95(dm,J=17Hz,1H);5.77(ddd,J=17,10,6.5Hz,1H);6.83(d,J=8.5Hz,2H);7.17(d,J=8.5Hz,2H)。
13C NMR(75MHz,CDCl
3)δ 24.69、25.70、26.25、27.46、29.07、33.79、35.02、43.27、46.75、47.88、55.35、114.13、114.34、278.08、128.89、133.05、139.19、158.38、171.69。HRMS(ESI+1イオン)m/z:C
20H
30NO
2の計算値316.2271、実測値316.2265。
【0177】
化合物17.2
2−(4−メトキシフェニル)−N,N−ジメチルヘキサンアミド
【化25】
表題化合物を、アルキル化のための一般的手順にしたがって2−(4−ヒドロキシフェニル)−N,N−ジメチルアセトアミド(100mg、0.52mmol)及び1−ブロモブタン(70μL、0.57mmol)から調製した。精製された化合物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(EtOAc、Rf=0.7)による精製によって淡黄色油状物(120mg、60%)として単離した。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ 0.85(t,J=7Hz,3H);1.14(m,1H);1.28(m,3H);1.68(m,1H);2.05(m,1H);2.93(s,3H);2.94(s,3H);3.63(t,J=7Hz,1H);3.78(s,3H);6.84(d,J=8.8Hz,2H);7.20(d,J=8.8Hz,2H)。
13C NMR(75MHz,CDCl
3)δ 14.16、22.84、35.03、36.02、37.30、48.09、55.37、114.14、129.04、132.64、158.50、173.75。HRMS(ESI+1イオン)m/z:C
16H
24NO
2の計算値262.1802、実測値262.1795。
【0178】
化合物17.3
2−(4−メトキシフェニル)−N,N−ジメチルオクタ−7−エンアミド
【化26】
表題化合物を、アルキル化のための一般的手順にしたがって2−(4−ヒドロキシフェニル)−N,N−ジメチルアセトアミド(100mg、0.52mmol)及び6−ブロモ−1−ヘキセン(84μL、0.57mmol)から調製した。精製された化合物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(EtOAc、Rf=0.6)による精製によって淡黄色油状物(120mg、60%)として単離した。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ1.1〜1.5(多重線シグナル、4H);1.66(m,1H);2.02(m,3H);2.93(2×s,6H);3.63(t,J=7Hz,1H);3.78(s,3H);4.90(dm,J=10Hz,1H);4.96(dm,J=17Hz,1H);5.77(ddd,J=17,10,6.5Hz,1H);6.85(d,J=8.8Hz,2H);7.19(d,J=8.8Hz,2H)。
13C NMR(75MHz,CDCl
3)δ 27.41、29.02、33.75、35.10、36.00、37.27、48.05、55.34、114.13、114.35、128.98、132.49、139.12、158.49、173.62。HRMS(ESI+1イオン)m/z:C
17H
26NO
2の計算値276.1958、実測値276.1958。
【0179】
化合物16.5
2−(4−ヒドロキシフェニル)−1−(ピペリジン−1−イル)ヘキサン−1−オン
【化27】
無水DCM中の15.1(1g、3.46mmol)の冷却(−78℃)溶液に、DCM(10mL、10mmol)中の三臭化ホウ素の溶液を加えた。得られた混合物を数時間(少なくとも3時間)かけて室温に加温し、撹拌をさらに14時間続行した(合計17時間)。水酸化アンモニウムを反応混合物に注意深く滴下して(注意:0℃で反応混合物に徐々に加える)、反応物をクエンチした。次いで水を反応混合物に加え、水相を除去した。有機層を脱水し(MgSO
4)、真空下で濃縮した。表題化合物を薄茶色固体(0.93g、97%)として得た。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ 0.85(t,3H);1.29(m,10H);1.70(m,2H);2.04(m,1H);3.39(m,2H);3.63(t,1H);3.67(m,1H);6.77(d,J=8.5Hz,2H);7.12(d,J=8.5Hz,2H)。
13C NMR(75MHz,CDCl
3)δ 13.99、22.67、24.51、25.55、26.11、29.98、34.59、43.32、46.75、47.73、115.63、128.83、132.28、154.95、172.09。HRMS(ESI+1イオン)m/z:C
17H
26NO
2の計算値276.1958、実測値276.1954。
【0180】
化合物17.7
2−(4−ヒドロキシフェニル)−N,N−ジメチルヘキサンアミド
【化28】
表題化合物を、17.2(12mg、0.048mmol)から、16.5について説明したのと同様の方法で淡黄色固体(6mg、53%)として得た。δ 0.85(t,J=7Hz,3H);1.1〜1.5(多重線シグナル、4H);1.65(m,1H);2.03(m,1H);2.94(s,3H);3.63(t,J=7Hz,1H);6.76(d,J=8.5Hz,2H);7.16(d,J=8.5Hz,2H)。
13C NMR(75MHz,CDCl
3)δ 14.15、22.82、30.14、31.10、34.96、48.05、115.61、129.22、132.53、154.65、173.87。HRMS(ESI+1イオン)m/z:C
14H
23NO
2の計算値236.1645、実測値236.1644。
【0181】
化合物17.8
2−(4−ヒドロキシフェニル)−N,N−ジメチルオクタ−7−エンアミド
【化29】
無水CH
2Cl
2(1mL)中の17.3(25mg、0.09mmol)の冷却(−78℃)溶液にBBr
3(CH
2Cl
2中の1M溶液、0.27mL、0.27mmol)を加えた。得られた混合物を室温に加温し、さらに30分間撹拌した。続いて、反応混合物を−78℃に冷却し、MeOH(2mL)を反応混合物に加えた。5分後、得られた混合物を水に注加し、さらに10mLのCH
2Cl
2を加えた。有機層を洗浄し脱水し、真空下で濃縮して粗生成物を淡黄色固体として得た。粗生成物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(50%EtOAc/ヘキサン、Rf=0.2)で精製して表題化合物を淡黄色油状物として得た。これは静置すると固化した(4mg、15%)。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ1.1〜1.5(多重線シグナル、4H);1.67(m,1H);1.98(m,3H);2.93(s,3H);2.94(s,3H);3.62(t,J=7Hz,1H);4,84(s,1H ArOH);4.90(dm,J=10Hz,1H);4.95(dm,J=17Hz,1H);5.77(ddd,J=17,10,6.5Hz,1H);6.76(d,J=8.8Hz,2H);7.14(d,J=8.8Hz,2H)。
13C NMR(75MHz,CDCl
3)27.29、28.90、33.64、34.97、35.94、37.19、47.92、114.26、115.51、129.10、132.48、139.01、173.55。HRMS(ESI+1イオン)m/z:C
16H
24NO
2の計算値262.1802、実測値262.1086。
【化30】
化合物17.6
2−(4−ヒドロキシフェニル)−1−(ピペリジン−1−イル)オクタ−7−エン−1−オン
【0182】
表題化合物を、17.8について説明したのと同様の方法で2−(4−メトキシオキシフェニル)−1−(ピペリジン−1−イル)オクタ−7−エン−1−オン(50mg、0.18mmol)から調製した。表題化合物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(50%EtOAc/ヘキサン、Rf=0.5)による精製によって無色の低融点固体(6mg、11%)として得た。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ 1.0〜1.5(多重線シグナル、10H);1.66(m,1H);2.02(m,3H);3.38,(m,3H);3.62(t,J=7Hz,1H);3.65(m,1H);4.88(dm,J=10Hz,1H);4.95(dm,J=17Hz,1H);5.76(ddd,J=17,10,6.5Hz,1H);6.76(d,J=8.5Hz,2H);7.11(d,J=8.5Hz,2H)。
13C NMR(75MHz,CDCl
3)δ 24.54、25.58、26.12、27.31、28.91、33.66、34.79、43.27、46.72、47.72、114.24、115.59、128.92、132.59、139.04、154.64、171.80。HRMS(ESI+1イオン)m/z:C
19H
28NO
2の計算値302.2115、実測値302.2120。
2−(4−ヒドロキシメチル)フェニル−1−(ピペリジン−1−イル)エタノン
【化31】
【0183】
表題化合物を、DCC媒介アミド形成のために概要を示した一般的手順にしたがって4−ヒドロキシメチルフェニル酢酸(1.0g、6.0mmol)から調製した。生成物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(EtOAc、Rf=0.5)による精製によって粘性の無色油状物(0.54g、39%)として単離した。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ 1.37(m,2H);1.52(m,2H);1.58(m,2H);3.36(m,2H);3.56(m,2H);3.71(s,2H);4.66(s,2H);7.23(d,J=8Hz,2H);7.31(d,J=8Hz,2H)。
13C NMR(75MHz,CDCl
3)δ24.39、25.44、25.47、26.21、34.91、40.77、42.92、47.25、55.77、64.92、127.33、128.76、134.65、139.48、169.30。HRMS(ESI+1イオン)m/z:C
14H
20NO
2の計算値234.1489、実測値234.1489。
【0184】
2−(4−tert−ブチルジメチルシリルオキシメチル)フェニル−1−(ピペリジン−1−イル)エタノン
【化32】
無水DCM中の2−(4−ヒドロキシメチル)フェニル−1−(ピペリジン−1−イル)エタノン(540mg、2.32mmol)及びイミダゾール(97mg、1.4mmol)の冷却(0℃)溶液に、DCM(5mL)中のTBSCl(214mg、1.42mmol)の溶液を加えた。得られた反応混合物を2時間撹拌した。続いて、反応混合物を、水(×2)及び塩水で順次洗浄し、有機層を脱水し(MgSO
4)、真空下で濃縮した。表題化合物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(20%EtOAc、Rf=0.6)による精製によって無色油状物(420mg、53%)として得た。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ 0.084(s,6H);0.929(s,9H);1.34(m,2H);1.52(m,2H);1.59(m,2H);3.43(m,2H);3.57(m,2H);3.71(s,2H);4.71(s,2H);7.20(d,J=8Hz,2H);7.25(d,J=8Hz,2H)。
13C NMR(75MHz,CDCl
3)δ −5.21、24.45、25.59、25.97、26.20、40.94、42.89、47.27、64.77、126.41、128.40、133.96、139.81、169.36。HRMS(ESI+1イオン)m/z:C
20H
34NO
2Siの計算値348.2353、実測値348.2354。
【0185】
2−(4−tert−ブチルジメチルシリルオキシメチル)フェニル−1−(ピペリジン−1−イル)ヘキサノン
【化33】
表題化合物を、αアルキル化のために概要を示した一般的手順にしたがって2−(4−tert−ブチルジメチルシリルオキシメチル)フェニル−1−(ピペリジン−1−イル)エタノン(420mg、1.21mmol)から調製した。生成物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン中に20%EtOAc、Rf=0.6)による精製によって無色油状物(260mg、53%)として得た。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ 0.010(s,6H);0.087(t,J=7Hz,3H);0.94(s,9H);1.01(m,1H);1.14(m,1H);1.2〜1.6(多重線シグナル、8H);1.68(m,1H);2.10(m,1H);3.3〜3.5(m,3H);3.68(m,2H);4.72(s,2H);7.15(m,4H)。
13C NMR(75MHz,CDCl
3)δ −5.20、14.03、22.75、24.75、25.68、26.12、30.40、34.78、43.16、46.62、48.47、64.79、126.38、127.66、139.52、139.73、171.42。HRMS(ESI+1イオン)m/z:C
24H
42NO
2Siの計算値404.2979、実測値404.2983。
【0186】
化合物16.1
2−(4−ヒドロキシメチル)フェニル−1−(ピペリジン−1−イル)ヘキサノン
【化34】
無水THF(5mL)中の2−(4−tert−ブチルジメチルシリルオキシメチル)フェニル−1−(ピペリジン−1−イル)ヘキサノン(260mg、0.64mmol)の溶液を、THF(1.29mmol)中のTBAFの溶液を入れたフラスコに加えた。得られた反応混合物を1時間撹拌し、その時点でtlc分析により、出発原料が残っていないことが示された。反応混合物を水(×2)、次いで塩水で洗浄し、有機層を脱水し(MgSO
4)、真空下で濃縮して粗生成物を得た。表題化合物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン中に50%EtOAc、Rf=0.4)による精製によって無色油状物(142mg、76%)として単離した。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ 0.87(t,J=7Hz,3H);1.04(m,1H);1.14(m,1H);1.9〜1.7(m,8H);1.71(m,1H);1.91(m,1H);3.34(m,2H);3.47(m,1H);3.63(m,1H);3.69(t,J=7Hz,1H);4.66(s,2H);7.25(d,J=8Hz,2H);7.30(d,J=8Hz,2H)。
13C NMR(75MHz,CDCl
3)δ 14.02、22.72、24.56、25.57、26.12、30.07、34.76、43.19、46.64、48.41、65.07、127.06、127.99、139.28、140.32、171.32。HRMS(ESI+1イオン)m/z:C
18H
28NO
2の計算値290.2114、実測値289.2117。
【0187】
化合物16.3
2−(4−アセトキシメチル)フェニル−1−(ピペリジン−1−イル)ヘキサノン
【化35】
DMAP(2mg)を入れた丸底フラスコに、無水CH
2Cl
2(2mL)中の2−(4−ヒドロキシメチル)フェニル−1−(ピペリジン−1−イル)ヘキサノン(30mg、0.10mmol)の溶液を加えた。得られた混合物に無水NEt
3(208μL、1.5mmol)を加え、次いで無水酢酸(100μL、1.0mmol)を加えた。得られた混合物を3時間撹拌した。続いて、反応混合物を飽和NaHCO
3、水で洗浄し、次いで塩水で洗浄し、有機相を脱水し(Na
2SO
4)、減圧下で濃縮した。表題化合物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン中に50%EtOAc、Rf=0.7)による精製によって無色油状物(20mg、60%)として得た。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ 0.86(t,J=7Hz,3H);1.0〜1.2(2×m,2H);1.2〜1.5(多重線シグナル、8H);1.68(m,1H);4.53(m+s,4H);3.33(m,1H),3.39(m,1H);3.49(m,1H);3.60(m,1H);3.70(t,J=7Hz,1H);5.07(s,2H);7.72(m,4H)。
13C NMR(75MHz,CDCl
3)δ 14.01、21.08、22.72、24.57、25.60、26.20、30.09、34.77、43.20、46.66、48.38、66.07、128.03、128.58、134.24、141.02、171.09、171.17。
注記:化合物は静置すると加水分解する。HRMSによれば遊離アルコールのそれと一致する。
【0188】
化合物16.11
4−(1−オキソ−1−(ピペリジン−1−イル)ヘキサン−2−イル)フェニルアクリレート
【化36】
無水CH
2Cl
2(10mL)中の16.5(100mg、0.36mmol)及びトリエチルアミン(56μL、0.40mmol)の冷却(0℃)撹拌溶液に、塩化アクリロイル(33μL、0.40mmol)を加えた。得られた混合物を室温に加温し、さらに1時間撹拌し、その時点でtlc分析(50%EtOAc/ヘキサン)により、出発原料が完全に消費されていることが示された。続いて、反応混合物を真空下で濃縮し、フラッシュカラムクロマトグラフィー(50%EtOAc/ヘキサン、Rf=0.5)で精製して表題化合物を無色油状物(120mg、>95%)として得た。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ 0.85(t,J=7Hz,3H);1.0〜1.6(多重線シグナル、10H);1.70(m,1H);2.05(m,1H);3.3〜3.5(2×m,3H);3.68(m,1H);3.70(t,J=7Hz,1H);5.99,(d,J=10Hz,1H);6.29(dd,J=17,10Hz,1H);6.57(d,J=17Hz,1H);7.06(d,J=8.4Hz,2H);7.28(d,J−8.4Hz,2H)。
13C NMR(75MHz,CDCl
3)δ 13.93、22.63、24.49、25.51、26.10、30.00、34.77、43.12、46.61、47.96、121.53、127.88、128.69、132.42、138.42、149.15、164.43、171.06。HRMS(ESI+1イオン)m/z:C
20H
28NO
3の計算値330.1989、実測値330.2056。
【0189】
化合物16.4
4−(1−オキソ−1−(ピペリジン−1−イル)ヘキサン−2−イル)フェニルアセテート
【化37】
無水酢酸(38μL、0.40mmol)を、無水CH
2Cl
2(20mL)中の16.5(100mg、0.36mmol)及びピリジン(32μL、0.40mmol)の冷却(0℃)撹拌溶液に加えた。反応物を室温に加温し、撹拌をさらに18時間続行した。その時点で、tlc分析(50%EtOAc/ヘキサン)により、出発原料の消費が示された。粗製反応混合物を希薄(0.1M)HClで洗浄し、次いで水で洗浄した。有機層を脱水し(MgSO
4)、真空下で濃縮し、得られた油性残留物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(50%EtOAc/ヘキサン、Rf=0.26)で精製して表題化合物を無色油状物(110mg、>95%)として得た。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ 0.86(t,J=7Hz,3H);1.0〜1.7(多重線シグナル、11H);2.1(m,1H);2.28(s,3H);3.37(m,2H);3.48(m,1H);3.59(m,1H);3.72(t,J=7Hz,1H);7.04(d,J=8.4Hz,2H);7.28(d,J=8.4Hz,2H)。
13C NMR(75MHz,CDCl
3)δ 13.96、21.14、22.67、24.53、25.55、26.15、30.04、34.80、43.15、46.64、47.97、121.59、128.72、138.38、149.29、169.39、171.11。HRMS(ESI+1イオン)m/z:C
19H
28NO
3の計算値318.2064、実測値318.2060。
【0190】
化合物16.6
2−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−1−(ピペリジン−1−イル)ヘキサン−1−オン
【化38】
無水DMF(10mL)中の16.5(0.50g、1.8mmol)、エチレンカーボネート(176mg、2.00mmol)及びテトラエチルアンモニウムブロミド(20mg、0.09mmol)の溶液を油浴中、180℃で16時間加熱した。次いで冷水(50mL)を加え、得られた混合物をEtOAc(3×20ml)で抽出した。一緒にした有機層を水で洗浄し、脱水し(MgSO
4)、真空下で濃縮した。粗生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(CH
2Cl
2中に10%MeOH、Rf=0.4)で精製して表題化合物を無色油状物(200mg、34%)として得た。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ 0.84(t,J=7Hz,3H);1.05(m,1H);1.17(m,1H);1.2〜1.6(多重線シグナル、8H);1.7(m,1H);2.08(m,1H);2.39(t,J=6Hz,1H(OH));3.35(m,3H);3.62(t,J=7Hz,1H);3.64(m,1H);3.92(m,2H);4.05(m,1H);6.83(d,J=8.4Hz,2H);7.16(d,J=8.4Hz,2H)。
13C NMR(75MHz,CDCl
3)δ 13.96、22.64、24.50、25.51、26.09、29.96、34.70、43.10、46.58、47.70、61.36、69.10、114.59、128.78、133.38、157.28、171.55。HRMS(ESI+1イオン)m/z:C
19H
30NO3の計算値320.2220、実測値320.2205。
【0191】
化合物16.8
2−(4−(1−オキソ−1−(ピペリジン−1−イル)ヘキサン−2−イル)フェノキシ)エチルアセテート
【化39】
無水CH
2Cl
2(20mL)中の16.6(100mg、0.31mmol)及びDMAP(85mg、0.34mmol)の冷却(0℃)撹拌溶液に、塩化アセチル(50μL、0.34mmol)を加えた。得られた反応混合物を還流下16時間撹拌し、この時点でtlc分析(50%EtOAc/ヘキサン)により、出発原料が完全に消費されていることが示された。反応混合物をHCl(0.1M)及び水で洗浄し、有機層を脱水し(MgSO
4)、真空下で濃縮した。表題化合物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(50%EtOAc/ヘキサン、Rf=0.4)による精製によって無色油状物(110mg、>95%収率)として得た。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ 0.85(t,J=7Hz,3H);1.05〜1.60(多重線シグナル、10H);1.7(m,1H);2.08(m,1H);2.10(s,3H);3.35〜3.45(m,3H);3.6〜3.7(m,2H);4.15(見かけt,J=5Hz,2H);4.40(見かけt,J=5Hz,2H);6.84(d,J=8.4Hz,2H);7.17(d,J=8.4Hz,2H)。
13C NMR(75MHz,CDCl
3)δ 13.99、20.89、22.69、24.55、25.56、26.15、30.11、34.77、43.11、46.61、47.74、62.86、65.88、114.68、128.85、133.61、157.13、171.00、171.55。HRMS(ESI+1イオン)m/z:C
21H
32NO
4の計算値362.2326、実測値362.2320。
【0192】
化合物16.7
メチル2−(4−(1−オキソ−1−(ピペリジン−1−イル)ヘキサン−2−イル)フェノキシ)アセテート
【化40】
無水アセトニトリル(20mL)中の16.5(300mg、1.15mmol)及びK
2CO
3(400mg、2.87mmol)の撹拌溶液にメチルブロモアセテート(0.18g、1.2mmol)を加えた。得られた混合物を16時間還流させ、その時点でtlc分析(CH
2Cl
2中に5%MeOH)により、出発原料が残っていないことが示された。アセトニトリルを真空下で除去し、残留物をEtOAcに取り、水で洗浄した。有機層を脱水し(MgSO
4)、真空下で濃縮し、表題化合物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(CH
2Cl
2中に5%MeOH、Rf=0.7)による精製によって無色油状物(300mg、72%)として得た。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ 0.86(t,J=7Hz,3H);1.05〜1.60(多重線シグナル、10H);1.7(m,1H);2.05(m,1H);3.38(m,2H);3.42(m,1H),3.6〜3.7(m,2H);3.80(s,3H);4.61(s,2H);6.83(d,J=8.4Hz,2H);7.19(d,J−8.4Hz,2H)。
13C NMR(75MHz,CDCl
3)δ 14.02、22.72、24.59、25.60、26.18、30.06、34.78、43.15、46.65、47.73、52.26、65.45、114.80、128.94、134.29、156.51、169.44、171.48。HRMS(ESI+1イオン)m/z:C
20H
30NO
4の計算値348.2169、実測値348.2157。
【0193】
化合物16.9
2−(4−(1−オキソ−1−(ピペリジン−1−イル)ヘキサン−2−イル)フェノキシ)酢酸
【化41】
粉末LiOH(72mg、3.0mmol)をTHF(10mL)中の16.7(100mg、0.30mmol)の溶液に加え、混合物を室温で16時間撹拌した。次いで反応混合物をHCl(0.1M)で酸性化し、EtOAc(3×20mL)で洗浄した。有機相を脱水し(MgSO
4)、真空下で濃縮した。表題化合物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(CH
2Cl
2中に10%MeOH、Rf=0.5)による精製によって無色油状物(59mg、60%)として得た。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ 0.84(t,J=7Hz,3H);1.05〜1.60(多重線シグナル、10H);1.68(m,1H);2.05(m,1H);3.37(m,2H);3.42(m,1H),3.66(m,2H);4.63(s,2H);6.85(d,J=8.4Hz,2H);7.18(d,J=8.4Hz,2H)。
13C NMR(75MHz,CDCl
3)δ 13.96、22.61、24.41、25.52、26.10、29.92、34.52、43.49、46.82、47.71、65.10、114.87、128.89、133.87、156.46、171.92、172.03。HRMS(ESI+1イオン)m/z:C
19H
28NO
4の計算値334.2013、実測値334.2001。
【0194】
化合物16.10
1−(ピペリジン−1−イル)−2−(4−(2−(トリメチルシリル)エトキシ)フェニル)ヘキサン−1−オン
【化42】
無水THF(10mL)中の16.5(100mg、0.36mmol)、トリフェニルホスフィン(140mg、0.54mmol)及びトリメチルシリルエタノール(80μL、0.54mmol)の冷却(0℃)溶液にDIAD(110μL)を10分間かけて加えた。得られた反応混合物を室温に加温し、さらに16時間撹拌した。続いて、溶媒を真空下で除去し、残留物をEtOAcに取り、水で洗浄した。有機層を脱水し(MgSO
4)、真空下で濃縮し、得られた残留物を、フラッシュカラムクロマトグラフィー(50%EtOAc/ヘキサン、Rf=0.7)で精製して表題化合物を淡黄色油状物(40mg、30%)として得た。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ 0.07(s,9H);0.84(t,J=7Hz,3H);1.05(m,1H);1.17(m,1H);1.2〜1.6(多重線シグナル、10H;見かけt,J=6Hz,2H);1.7(m,1H);2.05(m,1H);3.25〜3.35(m,3H);3.62(t,J=7Hz,1H);3.65(m,1H);4.03(見かけt,J=6Hz,2H);4.05(m,1H);6.80(d,J=8.4Hz,2H);7.15(d,J=8.4Hz,2H)。
13C NMR(75MHz,CDCl
3)δ −1.33、14.01、17.75、22.71、24.58、25.57、26.11、30.03、34.77、43.11、46.60、47.80、65.31、114.59、128.70、132.75、157.59、171.67。HRMS(ESI+1イオン)m/z:C
22H
38NO
2の計算値376.2672、実測値376.2666。
【0195】
4−(1−オキソ−1−(ピペリジン−1−イル)ヘキサン−2−イル)ベンズアルデヒド
【化43】
DMSO(0.20mL、2.8mmol)を、無水CH
2Cl
2(5mL)中の塩化オキサロイル(122μL、1.42mmol)の冷却(−78℃)撹拌溶液に加えた。5分後、16.2(300mg、1.29mmol)を加え、撹拌を15分間続行し、次いでトリエチルアミン(0.90mL、6.5mmol)を滴下した。さらに5分後、混合物を室温に加温した。反応混合物をHCl(0.1M)で洗浄し、有機層をさらに水で抽出し、脱水し(MgSO
4)、真空下で濃縮した。表題化合物を無色油状物(222mg、59%)として得た。精製は必要でなかった。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ 0.80(t,J=7Hz,3H);1.05(m,1H);1.15(m,1H);1.2〜1.6(多重線シグナル、8H);1.7(m,1H);2.05(m,1H);3.29(m,2H);3.36(m,1H),3.61(m,1H);3.71(t,J=7Hz,1H);7.39(d,J=8.4Hz,2H);7.76(d,J=8.4Hz,2H)。
13C NMR(75MHz,CDCl
3)δ 13.97、22.67、24.49、25.55、26.21、30.05、34.64、43.33、46.69、48.88、128.57、130.21、135.08、148.03、170.36、191.91。HRMS(ESI+1イオン)m/z:C
18H
26NO
2の計算値288.1958、実測値288.1963。
【0196】
化合物17.9
4−(1−オキソ−1−(ピペリジン−1−イル)ヘキサン−2−イル)安息香酸
【化44】
オキソン(257mg、0.42mmol)をDMF(5mL)中の4−(1−オキソ−1−(ピペリジン−1−イル)ヘキサン−2−イル)ベンズアルデヒド(100mg、0.35mmol)の撹拌溶液に加え、得られた混合物を室温で16時間撹拌した。DMFを真空下で除去し、得られた残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(50%EtOAc/ヘキサン、Rf=0.4)で精製して所望の化合物を淡黄色固体(68mg.64%)として得た。MP=142℃。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ 0.86(t,J=7Hz,3H);1.05(m,1H);1.15(m,1H);1.2〜1.6(多重線シグナル、8H);1.71(m,1H);2.10(m,1H);3.33〜3.43(m,3H);3.69(m,1H);3.77(t,J=7Hz,1H);7.38(d,J=8.4Hz,2H);8.02(d,J=8.4Hz,2H)。
13C NMR(75MHz,CDCl
3)δ 13.98、22.68、24.50、25.55、26.16、30.04、34.60、43.32、46.68、48.82、128.04、130.50、153.75、170.59。HRMS(ESI+1イオン)m/z:C
18H
26NO
3の計算値304.1907、実測値304.1917。
【0197】
残りの化合物を、出発原料を適切に変えて、上記した方法に対応する方法で作製した。
【0198】
実施例第2部
ポリマー系
防汚化合物16.5に相当するペンダント基を含むいくつかのポリマーを合成した。
【0199】
具体的には、モノマー16.11を用いて化合物16.5を、アクリレートをベースとしたポリマー中に組み込んだ。
【化45】
【0200】
ポリマーを、水性の環境において持続的な方法で(活性)化合物16.5を放出する能力に関して評価した。特に、ポリマー材料の防汚効力を、実験室及び現場でのアッセイで試験して防汚性能及び毒性を確認した。
ポリマーの合成
【0201】
海洋用コーティングにおける我々の発明の潜在的用途を例示するために、実施形態と同じポリマーを設計し合成した。しかし、これらの実施形態を限定的なものととるべきではない。
【0202】
放出可能な官能性単位として化合物16.5を含むポリマーを、適度な親水性を備え(水中での水和を確実にするために)、市販の海洋用塗料に適切な強度、溶解性及び相溶性を備えるように設計した。これらの要件を実現させるためには、ポリマーのTgを好ましくは室温より高くすべきであり、分子量は約10Kダルトンを目標とすべきである。
【0203】
そうしたポリマーを、フリーラジカル条件下で開始剤としてAIBN、ABCN又は過酸化ベンゾイルを用いてビニル含有化合物16.11を適切なビニルモノマーと重合させて合成した。
【0204】
ポリマーA
P(16.11−co−MMA−co−HEA)
化合物16.11とメチルメタクリレート(MMA)及びヒドロキシエチルアクリレート(HEA)のコポリマーを設計して官能性ポリマーを得た。そこで、16.11、メチルメタクリレート(MMA)及び(HEA)を混合し、標準的なフリーラジカル条件下で重合した。
【化46】
【0205】
質量比を、MMAがポリマーの主鎖の大部分を形成して機械的強度を付与しTgが確実に室温より高くなり、同時にHEAがポリマーの親水性を向上させ得る水素結合能力をもたらすように設計した。
【0206】
0.54gの官能性モノマー(16.11)(ヘビービスコースオイル(heavy viscose oil)様黄色液体)を、3mlのDMF中で2.0gのMMA、1.0gの2−ヒドロキシルエチルアクリレート(HEA)及び40mgのABCNと混合した。窒素を10minパージして混合物を脱ガスし、次いで70℃に温度設定した油浴中に16時間置いた。続いて、反応混合物を50mLのエーテルに注加した。沈殿物をろ取し、真空下、室温で乾燥して表題化合物を無色固体(2.5g、74%)として得た。
【0207】
IR分光法によるポリマー材料の分析によって、1621cm
−1で検出された主要吸収と一緒に、約1730cm
−1での予測されたエステルC=O伸縮吸収が明らかになった。そうした低周波C=O振動は第三アミドの特徴であり、したがってこのバンドは、重合した16.11のピペリジンアミド結合に割り当てられる。
【0208】
ポリマーB
P(16.11−co−MMA−co−VP)
ポリマーBをポリマーAと同様にして設計した。但し、ポリマーの親水性を増大させるためにHEAの代わりにビニルピロリジノン(VP)を使用した。ポリマーBを、ポリマーAで説明したのと同じモノマー比を用いてフリーラジカル条件下で合成した。ポリマーBの構造を以下に示す。
【化47】
【0209】
3mlのDMF中で0.5gの官能性モノマーを、2.0gのMMA、1.0gのビニルピロリドン(VP)及び40mgのABCNと混合し、窒素を10minパージして混合物を脱ガスした。次いで、混合物を70℃に温度設定した油浴中に16時間置いた。次いで生成物に5mlのDCMを加えると透明な溶液が生成した。溶液を、撹拌しながらヘキサンに注加した。精製された生成物を白色沈殿物として収集した。純粋な生成物を集め、空気中、室温で乾燥して表題化合物を無色固体(1.9g、54%)として得た。
【0210】
IR分光法によるポリマー材料の分析によって、先に割り当てた約1640cm
−1でのピペリジンアミドカルボニル振動と一緒に、約1724cm
−1での予測されたエステルカルボニル伸縮吸収が明らかになった。VPの組み込みは、IR分光法によりγ−ラクタムの存在と一致する約1660cm
−1に現れた明瞭な吸収から明らかである。
【0211】
GPCは5300ダルトンのMWを示した。最後に、ポリマーの可溶性の特徴により、
1H NMR分光法によるさらなる分析が可能となった。6.9〜7.2ppmでのシグナルを16.11単位のフェニル部分に割り当て、4.0ppm〜4.3ppmの幅広のピークをピロリジノン単位のN原子と隣接する環メチレンに割り当てた。3.5〜3.8ppmにおける大きな幅広シグナルをMMA単位のメチルエステルに割り当てた(Brar and Kumar、2002年)。0.9ppm〜2.5ppmのシグナルを、ポリマー主鎖のメチレン及びメチン基並びに16.11の側鎖のメチレン及びメチル基に帰属させる。
【0212】
ポリマーC
P(TBA−co−MMA−co−VP)
標準コポリマー(ポリマーC)も合成した。ここで、16.11をt−ブチルアクリレート(TBA)で置き換えた。そうしたポリマーを、コポリマー自体の機能として、何らかのバックグラウンド毒性又は沈降防止活性が存在するかどうかを確認するために合成した。
【化48】
【0213】
フリーラジカル重合を、ポリマーA及びBの場合と同じ質量比を用いて実施した。
【0214】
0.6gのtert−ブチルアクリレートを、3mlのDMF中で2.0gのMMA、1.0gのビニルピロリドン(VP)及び40mgのABCNと混合し、この混合物を、窒素を10minパージして混合物を脱ガスした。次いで混合物を、70℃に温度設定した油浴中に16時間置いた。次いでこの生成物に5mlのDCMを加えると透明な溶液が生成した。溶液を、撹拌しながらヘキサンに注加した。精製された生成物を白色沈殿物として収集した。純粋な生成物を集め、空気中、室温で乾燥して所望の化合物を無色固体(3.2g、89%)として得た。
【0215】
IR分光法によるポリマーの分析によって、1728cm
−1及び1664cm
−1での主要振動モードのエステル及びラクタムカルボニル基の存在が明らかになった。GPCにより、67000ダルトンの所望MWが達成されたことが示された。これは、ポリマーBで得られたMWよりずっと高いものであった。
【0216】
ポリマーの
1H NMR分析により、1.4ppmで現れる、ポリマー中でのt−ブチル部分の存在が確認された。
【0217】
実施例第3部
化合物の生物学的検査
手法
生物学的アッセイをフジツボ幼生で実施した。フジツボは、海洋汚損群落の支配的で頑強なメンバーであり、しばしば、耐性のより小さい生物のための基材として作用する。したがって、これらは歴史的に防汚研究のためのモデル生物として用いられてきた。幼生の試験化合物に対する生物学的応答を判定するために、2つのバイオアッセイ:沈降(沈降段階のキプリドを用いて)及び毒性(ノープリウス(nauplii)を用いて)アッセイを実施した。手順は、Rittschofら(1992年)によって最初に記載されたこの分野の標準的な方法にしたがった。
【0218】
バイオアッセイ用のストック溶液の調製
各化合物のストック溶液を50mg/mlで作製した。純粋化合物をDMSOに希釈し、超音波処理した。ストック溶液を、4mlの琥珀色のねじぶたバイアル中、−20℃で使用するときまで貯蔵した。バイオアッセイのため、少量のストック溶液を1μmのろ過した海水に希釈した(ガラス製シンチレーションバイアル中に)。次いで溶液を10分間超音波処理した。所望の濃度域を得るために、試験溶液の連続希釈液を作製した。対照として、同等量の海水中へのDMSOの連続希釈液を使用した。
【0219】
毒性アッセイ
毒性アッセイでは、フジツボアンフィバラヌスアンフィトライト(Amphibalanus amphitrite)(以前はバラヌスアンフィトライト(Balanus amphitrite):Pitombo、2004年)のII期のノープリウス幼生を用いた。アッセイ手順はRittschofら(1992年)の手順を修正したものである。成体A.アンフィトライト(A.amphitrite)をシンガポールのクランジ(Kranji)マングローブ付近の潮間帯地域から採取した。幼生培養はRittschofら(1984年)をもとにした。採取に続いて、容器の一方の側部に光ファイバー光源を置き、得られたノープリウスの密な集まり(dense cloud)からピペッティングすることによって、ノープリウスをバイオアッセイで使用するために濃縮した。
【0220】
各化合物についてのLD
50値を判定するために、化合物を0〜50μg/mlの濃度範囲にわたり試験した。各アッセイのため、各化合物を各濃度で、ノープリウスの単一バッチで3連で試験した。全部のアッセイを、異なるバッチのノープリウスを用いて2回実施した。各アッセイと一緒に2つの対照を実行した(3連で):ろ過海水だけ、及び1μg/mlのDMSO(試験化合物用の溶媒としてDMSOを使用したので、この濃度は、最も高い試験化合物濃度でのDMSOの濃度と同等である)。
【0221】
アッセイのため、約20のノープリウス(50μlろ過海水中に)を、2mlガラス製バイアル(ラファパック(La Pha Pack)(登録商標)PN11−14−0544)中の1mlの試験溶液又は対照に加えた。アッセイを25〜27℃で22〜24時間実行した。この後、Bogorovトレーを用いて生存ノープリウスと死滅ノープリウスの数を計数した。死にかけているノープリウスは死滅したものと勘定した。すべてのアッセイについてのデータを一緒にし、プロビット解析(Libermann、1983年)を用いてLD
50を計算した(可能な場合)。プロビット解析を用いてLD
50を計算できなかった場合、プロットしたデータをもとにして値を外挿した。
【0222】
沈降アッセイ
沈降アッセイ(フジツボキプリドを使用)はRittschofら(1992年)が記載している手法をもとにした。上記したようにしてノープリウスを培養し、次いで25℃で、テトラセルミススエシカ(Tetraselmis suecica)とカエトセロスムエレリ(Chaetoceros muelleri)の1:1v/vの藻類混合物(おおよそ5×10
5細胞/mlの密度)上で飼育した。これらの条件下で、ノープリウスは通常5日間でキプリドに変態する。キプリドを4℃で2日間エイジングした。エイジング後のろ過海水対照における沈降はおおよそ45〜70%である。
【0223】
沈降アッセイを、7ml中性ガラス製バイアル(サムコ(Samco)(登録商標)T103/V1;34×23mm径)中で実施した。アッセイのため、各溶液を所望最終濃度の2倍の濃度で作製した;0.5mlのこの溶液をバイアルに移した。各バイアルに、キプリドを、20〜40のエイジングしたキプリドを含む0.5mlろ過海水を移して加えた。毒性アッセイの場合のように:各化合物を各濃度で、単一バッチからのキプリドで3連で実行した;2つの対照(ろ過海水及びDMSO)を各アッセイと一緒に実行した;全部のアッセイを、2つの異なるバッチのキプリドを用いて2回実施した。
【0224】
アッセイを24時間実施し、次いで沈降したキプリドの数、自由に遊泳している(沈降していない)キプリドの数及び死滅したキプリドの数を、各バイアルについて計数した。変態した幼若フジツボと、沈降しているが(それ自体がバイアルに固着)変態はしていないキプリドの両方を「沈降している」と計数した。データを沈降率%で表した。すべてのアッセイについてのデータを一緒にし、ED
50(対照と比較して沈降の50%減少を引き起こす濃度)を、(可能な場合)プロビット解析(Libermann、1983年)を用いて計算した。プロビット解析を用いてED
50を計算できなかった場合、プロットしたデータをもとにして値を外挿した。
【0225】
結果
化合物についての生物学的活性を表1及び表2に示す。データは、幼生のバッチ(複数)を用い、バッチ当たり3連の各化合物を用いたアッセイによるものである。プロビット解析を用いてLD
50又はED
50を計算できなかった場合、値を、プロットしたデータから推定した。LD
50値が高く(低い毒性)、しかしED
50は低い(非常に高い効力)化合物は、防汚のために最も望ましいものである。試験したいくつかの化合物は、従来確認されている非官能化化合物(12.1及び12.2;PCT/SG2009/000175)以上の治療可能比を示す。
【0226】
【表6】
【0227】
【表7】
【0228】
したがって、生物学的スクリーニングは、官能化された分子が望ましい生物学的活性を保持するか又はそれを向上させる(フジツボキプリド沈降に対して効力は高いが毒性は低い)ことを示している。
【0229】
LD
50値が高く(低い毒性)、しかしED
50は低い(非常に高い効力)化合物は、防汚の目的に最も望ましいものである。すべての化合物が1より大きい治療可能比をもたらした。
【0230】
上記の結果は、これらの新規の有機小分子を環境に優しい防汚用添加剤として使用できることを実証している。これらの分子は、芳香環上の異なる置換基及び置換パターンにもかかわらず、効果的な沈降防止活性を保持している。実際、いくつかの化合物は、非置換親構造の生物活性に匹敵するか又はそれより良好な生物活性を示す。これらの新規な分子は、それらが防汚化合物を海洋用コーティング系につなぐ又はそれに固定するのに使用され得る官能基を支えることができるという点で親構造を改善する。
【0231】
これらの化合物は既存のアクリレート塗料中にブレンドすることができ、したがって、既存のコーティング選択肢に対する実行可能な代替案である。さらに、その単純な構造のため、これらの化合物は、海洋環境において細菌という手段によって分解される魅力的な候補品であり、蓄積する可能性は小さく、将来の健康上のリスクを引き起こすこともなさそうである。さらに、ジウロン(Diuron)(登録商標)やシーナイン(Sea−Nine)(登録商標)などの既存の有機殺生物剤は生物濃縮し、海洋環境において有害な影響を引き起こすことが分かっていることを考えれば、本発明の化合物は従来の金属をベースとした添加剤に対する価値ある代替物を代表するものである。
【0232】
実施例第4部
ポリマー系
放出試験
実験室アッセイのためのマルチウェルプレートの調製
2つのバッチのポリスチレン4×6マルチウェルプレート(ウェルの底部は2cm
2)を実験室アッセイ用に調製した。50mgのP(MMA−co−16.11−co−VP)を1.0mlのエタノールに溶解してポリマーのストック溶液を作製した。プレートを所望量のストック溶液(10μL、20μL、30μL、40μL、50μL及び70μL)でコーティングし、空気中、27℃で6時間置いた。次いでこれらのウェルに脱イオン水を加えた。24時間後、ウェルから水を完全に除去し、さらなる分析用に保存した。次いでポリスチレンプレートを乾燥空気流下で乾燥した。その間、対照試料を、水に浸漬させずに同じ方法で調製した。
【0233】
沈降アッセイ
コーティングを、フジツボキプリド沈降アッセイを用いて防汚効果について試験した。キプリドを上記のようにして培養した。5日後キプリドを得、これらを4℃で2日間エイジングし、次いで沈降実験を行った。実験のため、キプリドを、20〜40のエイジングしたキプリドを含む1mlろ過海水を各ウェルに移して加えた。マルチウェルプレートを24時間インキュベートし、次いで、沈降したキプリドの数、自由に遊泳している(沈降していない)キプリドの数及び死滅キプリドの数を各ウェルについて計数した。
【0234】
アッセイの結果を
図1に示す。すべての処理について、キプリド死滅率は10%未満であった。対照コーティング、P(MMA−co−tBA−co−VP)についての沈降は、コーティングしていないポリスチレンの場合と同様であった。P(MMA−co−16.11−co−VP)でコーティングされたウェルはキプリド沈降の減少を示しており、>40μlでの処理では、沈降は観察されなかった。
【0235】
HPLCによる定量化
24時間浸漬させた後に得られた一定分量の溶液を既知容積の内部標準と混合し、HPLC装置に直接注入し、226nmでモニターした。浸漬後に得られた溶液中へ放出された16.5の量を、放出速度の計算値と一緒に以下の表3に示す。それぞれの場合、放出された16.5の量は非常に狭い範囲内に入る(0.15〜0.45μg)。これは、それぞれの場合、ポリマーの量に関係なく、同じような表面積が水性環境に曝露されていることを表している。
【0236】
【表8】
【0237】
図1は、コーティングされたウェルにおけるフジツボの沈降の平均パーセンテージを示す。P(MMA−co−tBA−co−VP)を対照コーティングとして塗布した。このコーティング上への沈降は、コーティングされていないポリスチレンについてと同様であった。P(MMA−co−16.11−co−VP)の量を増大させると、フジツボ沈降は減少する結果となった。>40μlでの試験処理では沈降は認められなかった。すべての処理において、キプリド死滅率は10%未満であった。
【0238】
ポリマーからの活性化合物16.5の首尾よい放出に続いて、ポリマーから化合物16.11が加水分解されて、溶液中に化合物16.5を放出することについて分析を実施した。
【0239】
実験室分析のためのコーティングバイアルの調製
12mmの内径を有するガラス製バイアルの内側底部を粗いサンドペーパーでつや消し処理し、次いで、コポリマーの存在量がそれぞれ500μg及び2500μgのP(MMA−co−16.11−co−VP)となり、1.13cm
2の表面積を覆うように、エタノール中のP(MMA−co−16.11−co−VP)のストック溶液を播種した。バイアルを終夜かけてキュアリングし、次いで2mLの脱イオン水を各ウェルに加えた。24時間後、水を除去し2mLの新鮮な脱イオン水で置き換えた。さらに24時間後、またさらに48時間後、すなわち1日、2日及び4日の時間的経過でこれを繰り返した。集めた溶液の一定分量を、226nmでの応答比をモニタリングしながら、内部標準(フェノール)に対して実行した。指定された時間点での得られた放出16.5の質量を表4に示す。
【0240】
それぞれの場合、水の中の16.5の存在が、分析用HPLC−ESIによる一定分量の分析により確認された。
【表9】
【0241】
最初の4日間での平均放出速度を表5に示す。500μgと2500μgをコーティングしたバイアルの1日目での際立った放出速度の差(それぞれ0.468μg cm
2日
−1及び0.045μg cm
2日
−1)は、放出試験開始時のコーティング表面粗度の差を反映している。1日目の後では、放出速度の収束が見られ、この放出レベルはこの後6日間にわたって同程度のレベルで維持されている。
【表10】
【0242】
参照
本発明、及び本発明が関係する現況技術をより完全に説明し開示するために、いくつかの特許及び出版物を上記に引用している。これらの文献の全引用を以下に示す。これらの文献のそれぞれを、それぞれの個別的参照が具体的且つ個別的に参照により組み込んで示されているかのように同じ程度に、全体として参照により本開示に組み込む。
Armarego, W.L.F.; C.L.L. Chai. 2003.Purification of Laboratory Chemicals; 5th ed.; Butterwortth-Heinemann: Sydney.
Brar, A. S. and R. Kumar. "Investigationof Microstructure of the A/-Vinyl-2-pyrrolidone/Methyl Methacrylate Copolymersby NMR Spectroscopy" Inc. J AppI Polym Sci 85: 1328-1336, 2002.
Libermann H. R. "Estimating LD
50using the probit technique: a basic computer program" Drug Chem. Toxicol1983, 6, 1 11-1 16.
Pitombo F. B. 2004. Phylogenetic analysisof the Balanidae (Cirripedia, Balanomorpha). Zool. Scr. 33: 261-276.
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Rittschof D.; Branscomb, E.; Costlow, J. "Settlementand behavior in relation to flow and surface in larval barnacles, Balanusamphitrite Darwin" J. Exp. Mar. Biol. Ecol. 1984, 82, 131-146.
Teo, L. M. S., D. Rittschof, F. Jameson, C.Chai, C. L. Chen, S. C. Lee. Antifouling compounds for use in marineenvironment. PCT Int. Appl. (2009),
WO2009139729 A1 .
Voulvoulis, N. "Antifouling paintbooster biocides: occurrence and partitioning in water and sediments" In:Konstantinou, I. K. (ed). Antifouling Paint Biocides. The Handbook ofEnvironmental Chemistry, 2006, Volume 5, Part O, pp.155-170. Springer-VerlagBerlin-Heidelberg.
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