(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6209721
(24)【登録日】2017年9月22日
(45)【発行日】2017年10月11日
(54)【発明の名称】高温液体の冷却装置
(51)【国際特許分類】
F28D 15/02 20060101AFI20171002BHJP
【FI】
F28D15/02 101L
F28D15/02 K
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-121574(P2012-121574)
(22)【出願日】2012年5月29日
(65)【公開番号】特開2013-245903(P2013-245903A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2015年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】305060567
【氏名又は名称】国立大学法人富山大学
(73)【特許権者】
【識別番号】300071513
【氏名又は名称】トナミ運輸株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000236920
【氏名又は名称】富山県
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】川口 清司
(72)【発明者】
【氏名】水木 伸明
(72)【発明者】
【氏名】水野 渡
【審査官】
鈴木 充
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−320792(JP,A)
【文献】
実開昭49−125372(JP,U)
【文献】
国際公開第2010/058520(WO,A1)
【文献】
特開2009−287869(JP,A)
【文献】
特開2008−277684(JP,A)
【文献】
特開平04−084880(JP,A)
【文献】
特開昭63−151625(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/00−15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム又はその合金と、水酸化ナトリウム水溶液を反応させて水素を発生させるための反応容器を備え、
前記反応容器の内部に配設した冷媒封入部と、前記反応容器の外部に配設した放熱部とを有し、
前記冷媒封入部と放熱部とは冷媒蒸気連通部及び液冷媒戻り部を介して冷媒が循環可能であり、
前記冷媒封入部は、前記反応容器の内部に位置する下部側の液冷媒が貯留された沸騰部と上部側の冷媒蒸気部とを有し、
且つ、前記冷媒封入部は前記反応水溶液と接触する吸熱フィンまたは/および吸熱突部を有することを特徴とする水素発生装置用の高温液体の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高温液体の冷却装置に関し、特に、冷却する液体にて冷媒を沸騰させ、それにより生じる冷媒蒸気を放熱部で凝縮させる沸騰冷却原理を用いた冷却装置に係る。
【背景技術】
【0002】
例えば2種類以上の原材料を反応させて、目的物質を得る反応容器では反応液体が反応に伴う発熱で高温になるために冷却する必要がある。
このような反応装置にあって、従来は反応容器外壁面に放熱フィン等を設けることにより外部の低温空気をフィンに供給して、自然又は強制空冷することが一般に行われている。
しかし、反応容器の外壁フィンによる冷却は容器内の高温液体の自然対流熱伝達による外壁への熱伝達に依存するために冷却効率が低く、熱伝達率を増大させるためには反応容器の体積が大きくなる問題があった。
特許文献1,2には沸騰冷却の原理を用いた冷却装置を開示するが、発熱部からの吸熱効率が低く冷却装置が大型になるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−236669号公報
【特許文献2】特開2003−250262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は発熱部からの吸熱効果が高く、冷却構造のコンパクト化を図るのに有効な冷却装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る高温液体の冷却装置は水素発生装置用であって、アルミニウム又はその合金と、水酸化ナトリウム水溶液を反応させて水素を発生させるための反応容器を備え、前記反応容器の内部に配設した冷媒封入部と、前記反応容器の外部に配設した放熱部とを有し、前記冷媒封入部と放熱部とは冷媒蒸気連通部及び液冷媒戻り部を介して冷媒が循環可能であり、前記冷媒封入部は、前記反応容器の内部に位置する下部側の液冷媒
が貯留
された沸騰部と上部側の
冷媒蒸気部とを有し、
且つ、前記冷媒封入部は前記反応水溶液と接触する吸熱フィンまたは/および吸熱突部を有することを特徴とする。
【0006】
反応容器内部の水溶液は反応により高温の液体
となり、容器に入った液体の温度が容器の外部の温度よりも高
くなる。
本発明で冷媒封入部と放熱部との連結構造に制限はなく、冷媒封入部に封入された冷媒が高温液体の温度により沸騰し、相変化により発生した冷媒蒸気が放熱部に送り込まれ、この放熱部にて凝縮し、再生した液冷媒が冷媒封入部に戻るようになっていればよい。
封入部に設けた吸熱フィンは高温液体の中に延在することで吸熱面積を増大するものであり、この吸熱面積を増大させる手段として冷媒が内側に流れ込む吸熱突部を設けてもよい。
さらに、この吸熱フィンと吸熱突部とを組み合せてもよい。
【0007】
本発明に係る冷却装置は、高温液体を内部から冷却する手段として広く応用できる。
本発明は反応容器が発熱反応を伴う場合に適用でき、水素ガス等の気体発生装置に適用することも可能である。
高温液体中に水素ガス等の気体が発生する場合に、この発生した気体が液中を上昇するので、この流れを利用して封入部に設けた吸熱フィンや吸熱突部の表面近傍における温度境界層を撹拌し、熱伝達率を向上することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る冷却装置は冷媒の封入部を高温液体中に設けるとともに、この冷媒封入部に高温液体中に入り込む吸熱フィンと吸熱突部のうち、一方または両方を設けたので、高温液体からの吸熱効果が高く気化熱を利用した冷媒冷却作用が向上する。
また、反応容器と冷却装置との一体化を図るのが容易で装置全体としてのコンパクト化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る冷却装置を反応容器に組み込んだ例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は相対的に高温の液体を内部から冷却するものであって、高温液体が発生する全ての分野に適用できる。
以下、説明する実施例はアルミニウム又はその合金に水酸化ナトリウム水溶液を反応させることにより水素を発生させる水素発生装置に本発明に係る冷却装置を適用した例である。
【0011】
アルミは水酸化ナトリウムの水溶液と反応させることで水素を発生させることができ、このような水素を燃料電池に供給すると電気エネルギーとして利用することができる。
したがって、発熱反応である水素発生装置を小型化できれば、上記システム全体もコンパクトになり、得られた電気エネルギーの利用範囲も広がる。
【0012】
図1及び
図2に、水素発生装置に本発明に係る冷却装置を組み込んだ例を示す。
水素発生装置はSUS等にて製作した蓋付きの反応容器11内にアルミ系廃棄物から乾留技術等にて回収したアルミを反応原料(1)2として投入し、上部等から水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液を反応原料(2)として投入部3からポンプ等にて注入する。
すると、水素ガスを発生させながら反応容器11内に発熱反応が進行する液体1が留まり、60〜100℃の高温液体となる。
なお、発生した水素ガスは反応容器11に設けた発生気体の放出部4から取り出され、燃料電池に圧力制御しながら供給される。
【0013】
反応容器11内には冷媒20を封入した密封容器状の冷媒封入部12aを配置する。
冷媒封入部12aは下部側に液冷媒20aを貯留してあり、液冷媒20aは高温液体11により沸騰する沸騰部となり、上部に冷媒蒸気20bが発生する。
冷媒20は40〜70℃にて沸騰するものを選定するのが好ましい。
密封容器状の冷媒封入部12aにて発生した冷媒蒸気20bは冷媒蒸気連通部14を介して反応容器11の外側に設けた放熱部13に送り込まれる。
放熱部13にて冷却され凝縮した液冷媒は液冷媒戻り部15を介して反応容器11内に設けた冷媒封入部にリターンされる。
放熱部13は自然空冷でもよく、本実施例はファン30による強制空冷の例を示す。
したがって、冷却システムとしては冷媒封入部12aが吸熱部12として作用する。
吸熱部12は高温液体から効率よく、熱を吸熱するのが好ましく、
図1及び
図2に示すように冷媒封入部12aの周囲に放射状に複数枚の吸熱フィン12bを延在させてある。
本実施例では、吸熱フィンを断面筒形状の冷媒封入部12aの外壁に沿って鉛直方向に設けてあるので発生した水素ガスが気泡状態になり吸熱フィンの表面を撹拌しながら上昇するので、さらに吸熱効果が向上する。
また、気泡の上昇力を利用して吸熱フィンの熱伝達を向上するために吸熱フィンの表面に突起を設けてもよい。
【0014】
図3は吸熱フィン12bの替わりに冷媒が入り込む吸熱突部12cを液体中に向けて放射状に突出させた例を示す。
吸熱突部12Cの内側に冷媒が入り込むための空間を設けたことで、この空間部にも沸騰した液冷媒が流れ、沸騰により発生した気泡が上昇するので吸熱効果が高い。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明に係る冷却装置は高温液体を内部から冷媒冷却するので吸熱効果が高く、冷媒封入部の外周壁から吸熱フィンと吸熱突部のうち、一方または両方を延在させたので、さらに吸熱効果が向上する。
したがって多くの、高温液体の冷却が必要な分野に利用できる。
【符号の説明】
【0016】
1 液体
2 反応原料(1)
3 反応原料(2)の投入部
4 発生気体の放出部
11 反応容器
12 吸熱部
12a 冷媒封入部
12b 吸熱フィン
12c 吸熱突部
13 放熱部
14 冷媒蒸気連通部
15 液冷媒戻り部
20 冷媒
20a 液冷媒(沸騰部)
20b 冷媒蒸気
30 ファン