(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記眼鏡レンズの前記少なくとも一つの計算または最適化すべき面(14、16)の反復修正が目的関数を最小にすることを含む請求項1〜6のいずれか一項記載の方法。
物体距離モデルAl(x、y)であって、Alが物体距離を表し、(x、y)が規定された視線方向または規定可能な視線方向における前記眼鏡レンズの視箇所もしくは視点を表す物体距離モデルAl(x、y)を規定することと、
物体距離Alに対する瞳孔寸法r0の依存性を記述する関数r0=g(Al)を規定することと、
前記物体距離モデルAl(x、y)と前記規定された関数r0=g(Al)に基づいて前記少なくとも一つの主光線(10)について瞳孔寸法を確認することをさらに含む請求項1〜9のいずれか一項記載の方法。
コンピュータにロードされかつ実行されるとき、請求項1〜11のいずれか一項記載の眼鏡レンズ計算方法または最適化方法を実行するように設計されたコンピュータプログラム。
コンピュータプログラムを記憶した記憶媒体であって、前記コンピュータプログラムはコンピュータにロードされかつ実行されるとき請求項1〜11のいずれか一項記載の眼鏡レンズ計算方法または最適化方法を実行するように設計されている記憶媒体。
【発明の概要】
【0003】
しかしすべての視線方向で同時に完全補正することは通常可能でない。それゆえに、なかんずく主要利用領域、特に中央視領域において眼鏡レンズが眼球屈折異常の良好な補正と僅かな収差のみを生じる一方、周辺領域では一層大きな収差を許容するように眼鏡レンズは作製される。
【0004】
眼鏡レンズをこのように作製できるようにするために、まず眼鏡レンズ面の計算もしくは眼鏡レンズ面の少なくとも一つの眼鏡レンズ面の計算は不可避的収差の指定分布がこの計算によって生じるように行われる。この計算と最適化は通常、反復修正法によって目的関数を最小にすることによって行われる。目的関数として考慮されかつ最小にされるのは特に、球面度数S、円柱度数値Zおよび円柱の軸位置αに対して下記関数関係(「SZA」組合せとも称される)を有する関数Fである。
【数1】
【0005】
目的関数Fにおいて眼鏡レンズの評価点iで考慮されるのは少なくとも球面度数の実際の屈折不足S
Δ、iと円柱度数の実際の屈折不足Z
Δ、i、そして球面度数屈折不足の目標規定S
Δ、i、Sollと円柱度数屈折不足の目標規定Z
Δ、i、Sollである。
【0006】
既にDE10313275で認識されたように、目標規定は最適化すべき特性の絶対値としてではなく処方からのそれらの偏差として、つまり要求された局所不調整として示すと有利である。そのことの利点として、目標規定は処方(Sph
V、Zyl
V、Achse
V、Pr
V、B
V)に左右されず、また目標規定は個別処方毎に変更する必要がない。従ってまた、最適化すべき特性の「実際」値として目的関数に含まれるのはこれら光学特性の絶対値ではなく処方からの偏差である。そのことの利点として、目標規定は処方に左右されることなく規定することができ、個別処方毎に変更する必要がない。
【0007】
各評価点での各屈折不足は主に重み係数g
i、SΔもしくはg
i、ZΔで考慮される。その際、球面度数屈折不足の目標規定S
Δ、i、Sollおよび/または円柱度数屈折不足の目標規定Z
Δ、i、Sollは、特に重み係数g
i、SΔもしくはg
i、ZΔと共に、いわゆる眼鏡レンズ設計を形成する。さらに、その他の残余、特に例えばコマ収差および/または球面収差および/またはプリズムおよび/または倍率および/またはアナモフィック歪み等々のその他の最適化すべき値も考慮することができ、そのことは特に、目的関数Fの上記式において表現「+…」によって示唆されている。
【0008】
多くの事例において特に個別的眼鏡レンズ調整の著しい改善に寄与し得るのは、眼鏡レンズの最適化時に2次までの収差(球面屈折力、非点収差値、乱視軸位置)だけでなく高次収差(例えばコマ収差、三つ葉クローバー形収差、球面収差)も考慮されるときである。
【0009】
先行技術により、少なくとも二つの屈折界面によって限定された光学素子、特に眼鏡レンズに関して波面の形状を特定することは知られている。この特定は例えば、十分な数の隣接光線を数値計算し、それと合わせて引き続きゼルニケ多項式で波面をフィットすることによって行うことができる。別のアプローチは屈折時の局所波面追跡に依拠している(WO2008/089999A1参照)。そこでは、横断(主光線に垂直な)座標による波面の頂点深さの導関数を伴って、視点毎に単一光線(主光線)のみが計算される。これらの導関数は特定次数に至るまで形成することができ、第2導関数は波面の(例えば屈折力、非点収差等の)局所曲率特性を記述し、高次導関数が高次収差と関連している。
【0010】
眼鏡レンズを通る光の追跡時に波面の局所導関数は光線軌跡内の好適な位置で計算され、眼鏡装用者の屈折から生じる所望値とそこで比較される。波面の評価が行われるこのような位置として一般に援用されるのは頂点球面、または例えば当該注視方向における眼球の主平面である。その際、球面波面が物点から出発して第1眼鏡レンズ面にまで伝搬するものと仮定される。そこで波面は屈折し、引き続き第2眼鏡レンズ面へと伝搬し、そこで再び屈折する。次に第2界面から頂点球面(または眼球の主平面)にまで最後の伝搬が起き、そこで波面は眼鏡装用者の眼球の屈折補正用の規定値と比較される。
【0011】
各眼球の確認された屈折データを基にこの比較を行うために、頂点球面での波面評価のもとで非正視眼の既成モデルが想定され、このモデルでは屈折異常(屈折不足)が正視基本眼球に重ねられている。このことは特に実証された。というのも、各眼球の解剖学的構造もしくは光学(例えば屈折力分布、眼球長さ、長さに関係した非正視および/または屈折力性非正視)に関する広範な知識がこのために必要でないからである。眼鏡レンズと屈折不足とから成るこのモデルの詳細な説明は例えばDr. Roland Enders “Die Optik des Auges und der Sehhilfen”、Optische Fachveroffentlichung GmbH、Heidelberg、1995年、25頁以下とDiepes、Blendowske “Optik und Technik der Brille”、 Optische Fachveroffentlichung GmbH、Heidelberg、2002年、47頁以下に含まれている。実証されたモデルとして用いられたのはそこに述べられたREINERによる補正モデルである。
【0012】
その際屈折不足と見做されるのは、同じ長さの正視眼(残留眼球)と比較して非正視眼の光学系の屈折力の欠如または過剰である。屈折不足の屈折力は特に、負符号を有する遠用点屈折に近似的に等しい。屈折異常の完全補正のために眼鏡レンズと屈折不足は両方で望遠鏡系(アフォーカル系)を形成する。残留眼球(屈折不足を挿入していない非正視眼)は正視であると仮定される。それとともに眼鏡レンズは、その像側焦点が非正視眼の遠用点と一致し、従って屈折不足の物体側焦点とも一致するとき、遠用に関して完全補正されたと見做される。
【0013】
本発明の課題は、眼鏡レンズ、主に累進屈折力眼鏡レンズを計算または最適化する改良された方法を明示することであり、眼鏡レンズが眼鏡装用者の個別的諸要求に一層良好に適合されていなければならない。この課題は、独立請求項に明示された特徴を有するコンピュータ実装方法、装置、コンピュータプログラム製品および記憶媒体によって解決される。好ましい実施形態は従属請求項の対象である。
【0014】
かくして本発明が一態様により提案するのは、眼鏡装用者の少なくとも片眼用に眼鏡レンズを計算または最適化するコンピュータ実装方法である。このためまず眼鏡装用者の少なくとも片眼の屈折データが収集される。その際、屈折データは眼球の少なくとも球面屈折異常と非点収差屈折異常とを含む。好ましい一実施形態において、収集された屈折データは高次収差(HOA)も記述する。主に、屈折データは(アベロメータデータとも称され)例えばアベロメータを用いて検眼医によって測定される(他覚屈折データ)。選択的にまたは付加的に、自覚的に特定された屈折も援用することができる。屈折データは引き続き主に眼鏡レンズ製造業者に伝達され、および/または計算プログラムもしくは最適化プログラムに利用可能とされる。それとともに屈折データは、本発明に係る方法のために収集され特にデジタルの形で読み出されおよび/または受信されるように利用可能である。このステップは特に、従来の眼鏡レンズ計算方法もしくは最適化方法におけると同様に実行することができる。
【0015】
しかし従来の方法から離れて本発明に係る方法はいまや個別的眼球モデルを確定するステップを含み、この眼球モデルは少なくとも眼球の幾何学的特性と光学特性とに関する一定の規定を確定する。本発明に係る個別的眼球モデルにおいて少なくとも、少なくとも片眼の角膜前面の
トポグラフィーと、眼球の網膜位置を記述する眼球長さ(ここでは結像長さL
Aとも称する)と、眼球水晶体の位置および度数が特定の仕方で確定され、つまり眼球モデルによって記述される眼球が収集された屈折データを有するように確定される。眼球モデルの最も単純な事例において眼球の屈折は角膜前面と眼球水晶体と網膜とから成る光学系によって特定される。この単純なモデルにおいて角膜前面での光の屈折と眼球水晶体の(主に、球面収差、非点収差および高次収差を含む)屈折力は網膜に対する、眼球長さによって確定されるそれらの相対的位置と一緒に、眼球の屈折を確定する。その際主に、個々に特定された屈折データを満たすために、角膜前面の
トポグラフィーが個々に測定され、個別的眼球モデルの眼球水晶体が適宜計算される。
【0016】
眼鏡レンズの計算もしくは最適化のために、眼鏡レンズの第1面と第2面が特に開始面として規定される。好ましい一実施形態において二つの面の一方のみが最適化される。この面は主に眼鏡レンズの後面である。その際主に眼鏡レンズの前面に関しても後面に関しても当該開始面が規定される。しかし好ましい一実施形態において最適化操作中に一つの面のみが反復して修正もしくは最適化される。眼鏡レンズの他方の面は例えば単純な球状面または回転対称な非球状面とすることができる。但し、両方の面を最適化することも可能である。
【0017】
両方の規定された面から出発して本方法は眼鏡レンズの少なくとも一つの計算もしくは最適化すべき面の少なくとも一つの視点(i)を通る主光線の軌跡を確認することを含む。主光線は物点から出発して両方の眼鏡レンズ面、角膜前面および眼球水晶体を通って主に眼球網膜に至る幾何学的光線軌跡を記述する。
【0018】
本方法はさらに、主光線に沿って眼鏡レンズの第1面(前面)に入射する球面波面(w
O)を規定することを含む。この球面波面は物点から出発する光を記述する。眼鏡レンズの第1面に入射するときの球面波面の曲率は物体距離の逆数に一致する。それとともに本方法は主に、眼鏡レンズの少なくとも一つの最適化すべき面の各視線方向または各視点に物体距離を割り当てる物体距離モデルを規定することを含む。こうして主に、製造すべき眼鏡レンズが利用される個別的装用状況は記述される。
【0019】
眼鏡レンズに入射する波面は次に眼鏡レンズの前面で主に1回目として屈折する。引き続き波面は主光線に沿って眼鏡レンズ内部で前面から後面へと伝搬し、そこで2回目として屈折する。眼鏡レンズ内を透過する波面は次に主光線に沿って眼鏡レンズの角膜前面にまで伝搬し、そこで再び屈折する。眼球内部で眼球水晶体に至るまで波面がさらに伝搬したのち、波面はそこで再び屈折し、最後に眼球網膜にまで伝搬する。個々の光学素子(眼鏡レンズ面、角膜前面、眼球水晶体)の光学特性に応じて、各屈折過程は波面の変形ももたらす。
【0020】
網膜上の像点で物点の精確な結像を達成するために、波面は主に、その曲率が網膜との距離の逆数に正確に一致した収束球面波面として眼球水晶体から射出しなければならないであろう。しかしながら既に冒頭で触れたように、眼球のすべての視線方向について同時に、つまり少なくとも一つの最適化すべき眼鏡レンズ面のすべての視点について同時に眼球の屈折を完全補正することは一般に可能でない。従って主に、視線方向に応じて眼鏡レンズの意図的不調整が規定され、この不調整は応用状況に応じて特に眼鏡レンズの主要利用範囲内(例えば中央視点)では小さく、あまり利用されない範囲内(例えば周辺視点)では多少高い。この処理方式は原理的には従来の最適化方法から既に知られている。しかし従来の方法とは異なり本発明は、眼鏡レンズと眼球との間の一つの位置、例えば頂点球面で波面の評価を行うのでなく、個々に確定された眼球モデルに基づいて、眼球水晶体の背後に至るまでの波面の広範な計算を行い、合成波面の評価をそこで行うことを提案する。
【0021】
好ましい一実施形態において波面の評価は眼球水晶体の後面で行われる。このことが特別有利であるのは、使用される個別的眼球モデルが眼球水晶体をなかんずくその面(前面および/または後面)によって記述するときである。別の好ましい一実施形態において評価は眼球水晶体の像側主平面で行われる。このことが特別有利であるのは特に、使用される個別的眼球モデルが眼球水晶体を主平面によって記述するときである。しかし特に眼球モデル内の眼球水晶体と網膜との間の別の位置も、合成波面の評価をそこで行うのに可能である。このため主に、光線軌跡中の適宜な位置で合成波面の局所導関数が計算され、規定された目標収差(不調整)の所望値とそこで比較される。眼鏡レンズの最適化すべき面の個々の視点にわたる目標収差の分布は、場合によっては重み付けと一緒に、公知方法と同様に眼鏡レンズの「設計」を具現する。
【0022】
眼鏡レンズを最適化するために、合成波面の収差が規定された目標収差に一致するまで、つまり特に網膜上にその曲率中心のある球面波面から規定された収差値だけ相違するまで、眼鏡レンズの少なくとも一つの計算または最適化すべき面は反復修正される。この球面波面はここで参照波面とも称される。このため本方法は主に、特に冒頭で既に述べた目的関数と同様に目的関数Fを最小にすることを含む。特に高次収差を考慮するときの他の好ましい目的関数については以下でもなお説明される。
【0023】
個々にモデル化された眼球内に至る、特に眼球水晶体の背後に至るまでの波面(WF)の追跡は、眼鏡レンズ調整精度の予期せぬ効率的改善をもたらす。従来常に仮定されたのとは異なり評価の平面もしくは面(例えば頂点球面)は従来の計算法において重要な役割を演じることが判明した。装用値と目標値との間の比較結果も、眼鏡レンズの調整精度に関して、従来の最適化法において想定されたよりも一層強くこの面に左右される。眼球の個別的モデル化と個々にモデル化された眼球内に至るまでの波面の完全計算とによって、本発明は眼球の前で波面を評価するための好適な一つの面を選択するというこの問題を回避する。その際特に判明したように、眼球内部で、特に個々にモデル化された眼球水晶体の背後で波面を評価するための位置/面を具体的に選択することは、屈折異常を前置して標準眼球の前で評価する従来の場合よりも、眼鏡レンズの調整に対してはるかに危険性が少ない。本発明を応用すると、波面を評価するのに最も好ましい面/平面を選択する議論はもはや強いられていない。
【0024】
個別的眼球モデルの確認は主に、少なくとも片眼の角膜前面の個別的
トポグラフィーデータおよび/または個別的網膜位置L
Aもしくは長さを収集することを含む。そのことに基づいて個別的眼球モデルの確認は主に、眼球モデル内の眼球が眼鏡装用者の収集された屈折データによる屈折を有することになるように眼球の水晶体(眼球水晶体)の度数を確認(特に計算)することを含む。つまりこの場合、眼球の光学度数(特に屈折力)を個々に個別に測定する必要はない。むしろ主に、屈折測定時に特定された眼球収差が角膜前面の
トポグラフィーと眼球水晶体の光学度数とそれら相互の相対的位置と網膜に対するそれらの相対的位置との組合せによって特定されるものと考えられる。つまり角膜前面の
トポグラフィーと眼球水晶体に対するその相対的位置と網膜の距離が規定されるや、屈折測定から光学屈折特性は、特に高次収差を含め、確認することができる。実施形態に応じて、眼球の幾何学的値、特に角膜および眼球水晶体の相対的位置(距離)、眼球長さ、もしくは眼球水晶体および/または角膜前面に対する網膜の相対的位置を個々に測定し、または個別的眼球モデルの作成時に規定されるそれらの標準値を規定することが可能である。好ましい一実施形態において、すべての眼球モデル用に等しく用いられる固定標準値が幾何学的値用に規定される。その場合眼球モデルの個別化は主に屈折および/または角膜
トポグラフィーの個別的測定によって行われる。
【0025】
別の好ましい一実施形態において眼球の屈折‐特に球面処方‐と眼球長さとの間の関数関係が規定される。このような関数関係は多くの眼鏡装用者の平均的経験値に依拠することができ、それによれば遠視眼はふつう近視眼とは別の長さを有する。その場合個別的眼球モデルの確認は主に、規定された一般的関数関係と個別的眼球屈折とから眼球長さを、もしくは眼球水晶体または角膜前面に対する網膜の相対的位置L
Aを、個々に確認することを含む。
【0026】
他の好ましい一実施形態において眼球の幾何学的値、特に眼球長さ、および/または角膜と眼球水晶体との間もしくは眼球水晶体と網膜との間の距離は、個々に測定される。他の幾何学的値、例えば角膜の厚さ、角膜後面の
トポグラフィーまたは個々の水晶体面の
トポグラフィー等に、そして光学パラメータ、例えば眼球内の個別素子の屈折率等にも、同様のことがあてはまる。それらは個々に測定することができ、或は標準値として規定することができる。
【0027】
特別好ましくは、眼球モデルは三つの屈折面で確定され、これらの屈折面は特に眼球の角膜前面(cornea C)と水晶体前面(L
1)と水晶体後面(L
2)とを含む。その際特にGullstrand-EmsleyまたはBennett、Rabettsによる眼球モデルを基礎とすることができ、屈折面のパラメータは個々に確認もしくは確定される。正確に三つの屈折面を考慮することは特別効率的であることが判明した。こうして眼球モデルはごく良好な個別的調整可能性を得ると同時に十分に僅かな計算/モデル化支出を維持することになる。特に認識されたように、例えば角膜後面での屈折を特別に検討することは角膜厚が僅かであるためあまり重要でなく、無視し得るのであるが、それでもなお従来の計算方法、最適化方法に比べて本質的改善が達成される。
【0028】
波面追跡時の最後の伝搬、つまり眼球水晶体の後面L
2の頂点から網膜に至る伝搬は波論的観点のもとでのみ興味あるものであるので、幾何光学的観点のもとで有意な最後尾の位置はL
2である。そこに至るまで(または選択的に眼球の射出瞳APに至るまで)、最大可能な有意性を得るために幾何光学的波面追跡が実行される。
【0029】
頂点球面の検討に比べてこのような波面追跡の本質的進歩は、波面追跡が実際の装用光路中の眼球によって行われることにある。その代わりに、頂点球面での目標値‐実際値比較の基礎とされるアベロメータ測定の測定データは、場合によっては後の注視状況とは著しく異なることのある測定光路に由来する。自覚屈折の結果が取得される光路についても同じことがあてはまる。
【0030】
この理由から、眼球を通る完全波面追跡時の目標値‐実際値比較は頂点球面での計算時の目標値‐実際値比較とは、装用光路が測定光路と相違する程度に当然に相違することがある。光路におけるこれらの相違は一般に視線方向に左右される。所定の眼鏡レンズが完全補正を達成する視線方向の場合、例えば(理想的には)BFを通して注視するとき該当し得るようにそれらは一般に相違しない。ここで、両方の計算方式において目標値‐実際値比較はゼロ値を提供する。他方で両方の計算方式は、完全補正が損なわれるすべての注視方向に関して、場合によっては著しく異なる結果をもたらす。このことは、眼鏡レンズと眼球とによって生成される低次収差(LOA)の検討にも高次収差(HOA)の検討にもあてはまる。
【0031】
波面追跡の実行には実質的に以下のステップが属する。
a) 測定データと屈折データとからモデル眼球の有意な全データを確認するステップ、つまり個別的眼球モデルを確定するステップ。
b) 最適化すべき眼鏡レンズの特に装用状況におけるモデル眼球のデータに基づいて本来の波面追跡を実行するステップ。
【0032】
モデル眼球のすべての有意データを確認するときの本質的問題は、C、L
1、L
2のすべてのデータと眼球内のすべての有意長さがまさに測定によって必ずしも予め既知でないことにある。Cのデータは確かに主に角膜測定に基づいて存在しているが、しかしL
1、L
2と眼球内のすべての有意長さとについては場合によっては暫定的に住民の平均値が知られているにすぎない。その場合に存在するC、L
1、L
2と長さとのデータは一般に眼鏡装用者の個々に確認された(HOAを含む)屈折異常に合致しておらず、もしくはこの段階では矛盾している。それゆえに主にこれらの平均データの幾つかははねつけられ、その代わりに個別的値が個別的屈折異常に適合される。所要数の自由度のゆえに特にL
1および/またはL
2がこのため考慮の対象となる。そのことから以下の好ましい処理方式が得られる。
1. L
1が適合され、L
2用に平均値が用いられる(L
1を“満たす”)。
2. L
2が適合され、L
1用に平均値が用いられる(L
2を“満たす”)。
3. L
1もL
2も組合せて適合される。
【0033】
従って処理方式は主に以下のとおりである。
1. 波面追跡は記号で実行され、式が数値で評価されることはない(上記ステップbの第1部分)。主にこの波面追跡は複雑さのゆえに、3面眼球モデル内で交互する伝搬と屈折とを精確に考慮して純粋に記号で行われるのではない。諸項は、遅くともn=4次以降、コンピュータ実装記号計算法の場合でも殆ど処理不能であろう。むしろそれに代えて主に伝搬と屈折が交互に追跡され、中間ステップにおいて(つまり特に界面での入射波面と出射波面として)数値が波面を(例えば6次までの)Taylor表現で記述するのに利用される。
2. 測定光路内での波面追跡の記号解の諸条件は屈折異常から生じ、L
1またはL
2のデータに従って解かれる(上記ステップa)。
3. 波面追跡の記号解のなかでL
1またはL
2のデータが消去され、数値が挿入される(上記ステップbの第2部分)。引き続き装用光路中で波面追跡が実行される。
【0034】
伝搬と屈折とを記述するのに主に以下の関係が利用される。
【数2】
【数3】
【数4】
【数5】
【数6】
【数7】
【0035】
さらに、当該曲率行列が検討されねばならない。
【数8】
【0036】
これらの関係でもって2次特性に関してSの波面追跡、つまりS’のLOAは次の結果をもたらす。
【数9】
【0037】
S=S
messが測定光路内で角膜に入射する波面の離接運動行列である(従って自覚屈折または他覚屈折のいずれかから直接特定することができる)特殊事例において、S’は網膜に収束する球面波に一致しなければならない。すなわち、
【数10】
【0038】
式(2)は選択的にL
1またはL
2について解くことができる。
L
1について式(2)を解くと、
【数11】
【0039】
L
2について式(2)を解くと、
【数12】
【0040】
射出波面を含むHOAは半径d
LRの球面に一致しなければならない。すなわち、2次の拡張として妥当しなければならないのは、
【数13】
次に3次について妥当しなければならないのは、
【数14】
そして4次について、
【数15】
5次
【数16】
そして6次
【数17】
【0041】
一般項が得られるのは球面
【数18】
を適宜に頻繁に導くことによってである。
【0042】
上記式においてd
CL、n
CL、d
L、n
L、d
LR、n
LRはモデル眼球内の個々の素子(光学媒質)、特に角膜前面と第1水晶体面との間の光学媒質(添え字CL)、第1水晶体面と第2水晶体面との間の光学媒質(添え字L)、もしくは第2水晶体面と網膜との間の光学媒質(添え字LR)の厚さ(パラメータd)もしくは屈折率(パラメータn)を表す。
【0043】
L
1および/またはL
2のHOAの調整が達成されるのは主に方程式(7)〜(10)を考慮し、L
1もしくはL
2の求める値について適宜に解くことによってである。
【0044】
例えば、式(1)におけるような適宜な関係を高次についても導入するのが望ましい。例えば3次S’
xxxを特定したい場合、G. Esser、W. Becken、W. Muller、P. Baumbach、J. Arasa、D. Uttenweiler:“Derivation of the refraction equations for higher order aberrations of local wavefronts at oblique incidence”、JOSA A、Vol. 27、No. 2(2010)(以下で「参照[1]」とも称する)の式(74)を屈折に関して使用し、G. Esser、W. Becken、W. Muller、P. Baumbach、J. Arasa、D. Uttenweiler:“Derivation of the propagation equations for higher order aberrations of local wavefronts”、JOSA A、Vol. 28、No. 11(2011)(以下で「参照[2]」とも称する)の式(55)を伝搬に関して使用することができる。さらに例えば、添え字“xxy”、“xyy”、“yyy”を有するすべての別の値が消滅すべきであると仮定すると、射出する離接運動のHOA用の“xxx”成分は
【数19】
として特定することができ、式中
【数20】
【0045】
S
xxx=S
mess、xxxが測定光路内の、角膜に入射する波面の3次成分である(従って自覚屈折または他覚屈折のいずれかから直接特定することができる)特殊事例において、式(7)もしくは式(11)は射出する球面波に関してL
1、xxxまたはL
2、xxxについて解くことができる。これから得られるのは
【数21】
もしくは
【数22】
【0046】
式(13、14)に鑑み、一般にL
1またはL
2の高次成分をそんなに容易に特定できるのかとの疑問が生じる。それが実際に該当する。その理由は、参照[1]の式(74)も伝搬に関して参照[2]の式(55)も、各最高次数では直線的であるという特徴を有し、残りの項が含むのは先行次数よりも少なくとも1低い値のみであることにある。これにより、2次(例えばL
1)の成分が既知である場合、3次の成分はすべて残りなく特定することができる。それに基づいて次に4次成分等々の計算が行われる。L
1またはL
2の全成分の解は4次までを含めコンピュータ内に記号で実装することもできる。しかし好ましい一実施形態において、複雑さが増すので、それでもなお既に3次以降のすべての解のための諸項の数値評価が行われる。
【0047】
値の一つL
1またはL
2を測定値に適合させる場合、例えば住民平均に関する文献から読み取ることのできる別の仮定を介して措置しなければならない。それゆえに、低品質の情報が存在する水晶体部分を調整するのが有利である。
【0048】
L
1またはL
2が同じく文献から十分に読み取ることができるとしても、それでもなお、両方の水晶体面のいずれを調整するのかは重要でなくはない。式(2)をL
1またはL
2の成分について演繹し、“Bennett、Rabbetts“眼球の平均値(添え字φ)と正視屈折とについて評価すると、L
1の成分が一層敏感に、しかも約係数1.4だけ、S’に入り込むという結果が得られる。L
1の成分について得られるのは
【数23】
L
2の成分については
【数24】
L
1またはL
2を優先する場合LOAが決定的であるとの仮定から出発すると、この理由から適合にはL
1が容易に優先される。
【0049】
具体的屈折結果、収差測定データ、角膜
トポグラフィーデータが存在する場合、いまやそれを基に波面追跡を行うことができる。
【0050】
つまり好ましい一実施形態において個別的眼球モデルの確定は、入射波面から射出波面への変化が収集された屈折データを記述することになるように、確定すべき個別的眼球モデルの第1屈折面に入射する波面と確定すべき個別的眼球モデルの最終屈折面から射出する波面とを特定することを含む。特別好ましくは、入射波面が球面波面として特定される一方、射出波面は少なくとも片眼の屈折データを表す。特別好ましくは、入射波面はモデル眼球の網膜上の一点から射出しかつ(第1屈折面としての)後側水晶体面L
2に入射する球面波面として特定される一方、モデル眼球の角膜前面は最終屈折面として確定され、この最終屈折面から射出する波面は真眼球の収差測定時に確認された波面収差にその波面収差が一致したものである。こうしてモデルにおいて真の収差測定がごく正確に再現される。
【0051】
それとともに個別的眼球モデルの確定は主に、屈折率の異なる多数の光学媒質(モデル眼球の素子)の間の界面として多数の屈折面を確定することを含む。既に上で述べたように、三つの屈折面、特に角膜前面と水晶体前面と水晶体後面とを有する眼球モデルが特別適している。それとともにこれらの屈折面はモデル眼球の隣接する個々の素子(角膜、水晶体、硝子体)を相互に分離する。特別好ましい一実施形態において個別的眼球モデルの確定は特に、屈折面によって相互に分離されるモデル眼球素子のそれぞれについて主に波長依存屈折率(ばらつき)を確定することを含む。
【0052】
それとともに個別的眼球モデルの確定は主に、モデル眼球の多数の屈折面によって引き起こされる波面収差が眼鏡装用者の眼球で実際に測定された収差に一致することになるように、(眼球モデルの)モデル眼球の多数の屈折面を特定することを含む。このため特に、実際の測定が行われた光の波長も考慮される。このことは、モデル眼球の個々の素子のばらつきを考慮することと合わせて特別好ましい。収差測定はごく頻繁に例えば赤外光で実行される。これで測定された収差は測定波長における真眼球に正確に一致している。しかしこの収差が、真眼球内の個々の媒質のばらつきのゆえに、後の眼鏡利用時の光(可視光)の波長における収差と一致しない限り、十分に調整された眼鏡を作製するために、測定された収差の適宜な補正を行わねばならない。この問題は既に久しく知られている。従来のアベロメータは一般にこの補正を既に一括して、つまり個々の生理的パラメータを考慮することなく一緒に算入し、しばしば相応に修正された収差値を出力するだけである。
【0053】
しかし本発明を頼りに好ましい一実施形態において、少なくともモデル眼球の個々の屈折面の個々に特定された面曲率にわたって収差の波長依存性の考慮をやはり個々に行うことによって、個別的計算と最適化を著しく改善することがいまや可能である。本発明に係る処理方式でもって、一括して修正された収差を最適化のため考慮することがもはや必要でない。むしろ主に個別的眼球モデル確定時に真眼球の収差の精確な測定データは、測定されたこれらの収差をまさに引き起こし、しかも特に測定が行われたまさに波長において引き起こすようにモデル眼球を確定するのに援用される。このためモデル眼球の個々の素子(例えば角膜、水晶体、硝子体)についてそれぞれ屈折率の波長依存性(ばらつき)が規定される。その際、このばらつきを個々に確認することはまったく必要ない。その代わりに既知ばらつきまたはばらつきモデルの文献値を頼りとすることができる。個々の屈折面の距離および/または曲率は人物毎にもしくは眼球毎に著しく相違することがあるが、それとは異なり、眼球内の個々の媒質に関する屈折率およびそのばらつきの人物毎の変化は大抵ごく僅かであり、本発明の好ましい一実施形態の枠内で無視することさえできる。しかし屈折面の異なる面曲率は眼球の総屈折特性の波長依存性に個々に明確に影響することがある。
【0054】
収差測定の測定波長(例えば赤外線)に関して屈折面が測定された収差をまさにもたらすことになるように屈折面が調整されると、この(つまり屈折面の位置および曲率が確認された)モデル眼球は個々の媒質について考慮されたばらつきに基づいて可視光に対する真眼球の挙動も自動的にごく良好に再現する。真眼球の収差が既に従来の測定によって特定され、これらの収差が従来方法で既に一括して補正され、こうして測定波長とは別の波長において近似収差をもたらす場合、まず測定波長で測定された原収差に逆算することによって、こうして入り込んだ誤差を再び取り除くのが特別好ましい。これらの収差から次に、既に述べたように個別的眼球モデルは特定することができる。それとともに次に可視光への変換はモデル眼球の個々の素子のばらつきを考慮することを介して個々に行われる。
【0055】
つまり全体として特別好ましいのは、まず、多数の屈折面の主に位置および/または曲率のパラメータに基づいて個別的モデル眼球が確定され、次に例えば波面追跡法に基づいて上記の如くに真眼球の収集された屈折データを考慮してこれらのパラメータが個々に確認されるときである。その際特別好ましくは、モデル眼球の個々の屈折面での屈折率変化の波長依存性もしくは個々の光学素子の屈折率の波長依存性が予め確定される。個々の眼球素子のばらつきの好ましい例はなかんずくBennett & Rabbetts‘ “Clinical Visual Optics”、Butterworth Heinemann(2007)(例えばその15章、節“Chromatic aberrations”)に述べられており、またはD. A. Atchison、G. Smithの刊行物“Chromatic dispersions of the ocular media of human eyes”、J. Opt. Soc. Am. A、Vol. 22、no. 1にも述べられている。
【0056】
換言するなら個別的眼球モデルの確定は主に、少なくともその一つがパラメータセットによって記述される多数(主に三つ)の屈折面を規定することを含む。これらのパラメータは例えば(記号の形の)曲率行列の上記要素とすることができる。特に例えば両方の水晶体面の少なくとも一方L
1またはL
2はこうして記述できる一方、場合によっては別の屈折面は固定規定される。この規定はすべての眼球について同一に行うか、或は他の測定(例えば角膜前面)に基づいて個々に行うこともできる。次にパラメータセットについて個別値は、眼球モデルの眼球が収集された屈折データを有することになるように確認される。これは例えばL
1についての上記方程式(4)もしくはL
2についての上記方程式(5)に基づいて行うことができる。
【0057】
他の一態様において特別好ましくは、少なくとも片眼の屈折データの収集が測定波長の光によって屈折データを測定することを含む。その際やはり好ましくは、個別的眼球モデルの確定は、
【0058】
個別的眼球モデルの少なくとも一つの光学素子(例えば角膜および/または水晶体および/または硝子体)の屈折率(n)の波長依存性を確定することを含み、
【0059】
確定された波長依存性と測定波長とにおいて眼球モデルの眼球が測定された屈折データを有することになるように光学素子の幾何学形状(例えば屈折面の位置および/または曲率)を確認することを含む。
【0060】
好ましい一実施形態において合成波面(w
e)の確認は波面追跡によって行われる。その際特に個々の界面での波面の屈折は、さまざまな界面間での波面の伝搬と同様に、波面の曲率を記述するパラメータの変換によって行われる。
【0061】
別の一実施形態において、特に二つの屈折面の間での波面の伝搬を計算するために光線追跡(Ray-Tracing)が実行される。
【0062】
好ましい一実施形態において合成波面の確認は、
眼鏡レンズの第1面で(主光線の周辺において)屈折する波面を、規定された球面波面(w
0)と規定された第1面とから計算することと、
眼鏡レンズを通して主光線に沿って伝搬する波面を、第1面で屈折する計算された波面から計算することと、
眼鏡レンズの第2面で(主光線の周辺において)屈折する波面(w
g1)を、眼鏡レンズ内を伝搬する計算された波面と規定された第2面とから計算することと、
主光線に沿って角膜前面へと伝搬する波面(w
g2)を、第2面で屈折した計算された波面(w
g1)から計算することと、
角膜前面で(主光線の周辺において)屈折する波面を、角膜前面へと伝搬する計算された波面(w
g2)と個別的眼球モデルによって確定された角膜前面の
トポグラフィーとから計算することと、
主光線に沿って水晶体へと伝搬する波面を、角膜前面で屈折した計算された波面から計算することと、
水晶体によって(主光線の周辺において)屈折する波面(w
e)を、水晶体へと伝搬する計算された波面と個別的眼球モデルによって確定された水晶体の度数とから計算することを含む。
【0063】
実施形態に応じて、水晶体で屈折したこの波面は合成波面として直接援用することができ、または合成波面を得るために水晶体で屈折した波面の伝搬が再度計算される。
【0064】
波面の計算とその評価が行われる主光線周辺は主に、個々に特定(測定)された瞳孔寸法に従って選択される。周辺は特に、さまざまな視点(従ってさまざまな物体距離)について異なるように選択することができる。
【0065】
少なくとも片眼の屈折データの収集は主に、眼球の球面度数Sph
V、非点収差値Zyl
V、非点収差軸Achse
Vおよび少なくとも一つの他の高次屈折HOA
Vに関するデータを収集することを含む。
【0066】
特別好ましくは、高次収差も最適化において考慮される。その際本方法は主に処方データもしくは屈折データVを収集することを含み、処方データは球面度数Sph
V、非点収差値Zyl
V、非点収差軸Achse
Vおよび少なくとも一つの他の規定された高次屈折HOA
Vに関するデータを収集することを含む。
【0067】
高次収差はさまざまな仕方で目的関数において考慮することができる。好ましい一実施形態において本方法は、高次収差の値を明確に考慮する目的関数を例えば
【数25】
の形で最小にすることを含む。
R
Ist(i):眼鏡レンズ付き眼球モデルのi番目の評価点における実際の屈折誤差、すなわち個別的眼球モデル内でi番目の視点(評価点)で(つまり眼球水晶体の背後で)帰結する合成波面の球面成分と参照波面(つまり網膜上に収束する球面波面)との偏差、
R
Soll(i):i番目の評価点で要求される屈折誤差(設計規定)、
G
R、i:i番目の評価点で屈折誤差の重み付け(設計規定)、
A
Ist(i):個別的眼球モデル内のi番目の評価点での合成波面の実際の非点収差成分、
A
Soll(i):i番目の評価点で要求される非点収差不調整(設計規定)、
G
A、i:i番目の評価点で非点収差不調整を重み付け(設計規定)、
そして付加的に
C
Ist(i):個別的眼球モデル内のi番目の評価点での合成波面の実際のコマ収差、
C
Soll(i):i番目の評価点で要求されるコマ収差(設計規定)、
G
C、i:i番目の評価点でコマ収差の重み付け(設計規定)、
S
Ist(i):i番目の評価点での合成波面の実際の球面収差、
S
Soll(i):i番目の評価点で要求される球面収差(設計規定)、
G
S、i:i番目の評価点で球面収差の重み付け(設計規定)。
【0068】
しかし目的関数を高次収差の項だけ拡張すると、解くべき方程式系の冗長度が高まり、これにより幾つかの事例では最適化方法の安定性が劣化することがある。それゆえに、他の好ましい一実施形態において、目的関数内で合成波面を評価するとき高次収差を、設計からの独自の規定を有する独自の項として明確に目的関数に含めるのでなく、変換された球面円柱値の形で考慮することが提案される。その場合本方法は主に、屈折異常と合成波面の非点収差成分との変換された値を介して高次収差の値が暗示的に考慮される目的関数を例えば
【数26】
の形で最小化することを含む。
R
Ist、t(i):i番目の評価点での眼鏡レンズ付き眼球モデルの変換された屈折誤差、すなわち個別的眼球モデル内でi番目の視点(評価点)で(つまり眼球水晶体の背後で)帰結する合成波面の球面成分と参照波面(つまり網膜上に収束する球面波面)との変換された偏差、
R
Soll(i):i番目の評価点で要求される屈折誤差(設計規定)、
G
R、i:i番目の評価点で屈折誤差の重み付け(設計規定)、
A
Ist、t(i):個別的眼球モデル内のi番目の評価点での合成波面の変換された非点収差成分、
A
Soll(i):i番目の評価点で要求される非点収差不調整(設計規定)、
G
A、i:i番目の評価点で非点収差不調整の重み付け(設計規定)。
【0069】
つまり合成波面は主光線の周辺において主に(円柱+乱視軸、つまり非点収差を含むまでの)低次ゼルニケ多項式によって近似される。その際、主光線の周りでのゼルニケ展開の係数が波面収差値として目的関数に直接含まれるのではない。その代りに、主光線の周りの周辺でも波面近似を考慮する変換された低次係数値が用いられる。
【0070】
好ましい実施形態において、変換された球面円柱屈折が(マイナス円柱表記で)高次収差にどのように依存しているのかを示すために、主に以下の関数が用意される。
【数27】
でもって
【数28】
【0071】
高次収差が少なくとも明確には球面円柱値の変換に援用されない一実施形態において、変換された屈折は主に次式によって与えられる。
【数29】
式中、
【数30】
はOSA標準の表記法において波面の2次ゼルニケ係数を表し、n≧3の
【数31】
は高次ゼルニケ係数を表す‐例えば、Jason Porter et al. “Adaptive Optics for Vision Science“、Wiley(2006)、522頁参照。値r
0は瞳孔半径である。このため本方法は主に瞳孔半径r
0を収集することを含む。本方法はさらに主に2次ゼルニケ係数
【数32】
を確認することを含む。
【0072】
変換された球面円柱屈折の特定時に、つまり第2の二次係数に依存した球面円柱値の変換時に高次収差を考慮した好ましい一実施形態は、
【数33】
によって与えられている。
【0073】
これに代わる他の好ましい一実施形態は、
【数34】
によって与えられている。
【0074】
他の好ましい一実施形態は、
【数35】
によって与えられている。
【0075】
多少一層一般的に、好ましい一実施形態は関数
【数36】
によって与えられている。式中、変化
【数37】
は、波面の高次ゼルニケ係数
【数38】
の関数(特に連続関数)であり、n≧3である。
【0076】
特別好ましくは屈折データの収集は、第1物体距離に関する第1屈折データと第2物体距離に関する第2屈折データとを収集することを含む。それとともに特に、瞳孔寸法に対する物体距離の影響を考慮することができる。瞳孔寸法の変化はなかんずく高次収差に影響する。
【0077】
主に本方法はさらに、
物体距離モデルAl(x、y)を規定することを含み、Alは物体距離を表し、(x、y)は規定された視線方向または規定可能な視線方向における眼鏡レンズの視箇所もしくは視点を表し、
物体距離Alに対する瞳孔寸法r
0の依存性を記述する関数r
0=g(Al)を規定することを含み、
物体距離モデルAl(x、y)と規定された関数r
0=g(Al)とに基づいて少なくとも一つの主光線に関する瞳孔寸法を確認することを含む。
【0078】
最適化すべき眼鏡レンズは主に累進屈折力眼鏡レンズである。
【0079】
他の一態様において本発明が提案するのは眼鏡装用者の少なくとも片眼用に眼鏡レンズを計算または最適化する装置であって、
眼鏡装用者の少なくとも片眼の屈折データを収集するデータインタフェースを含み、
個別的眼球モデルを確定するモデル化モジュールを含み、収集された屈折データを眼球が有することになるようにこのモデル化モジュールが少なくとも、
少なくとも片眼の角膜前面の
トポグラフィーと、
眼球水晶体の位置および度数と、
眼球の網膜位置を確定し、
計算もしくは最適化すべき眼鏡レンズの第1面と第2面とを規定する面モデルデータベースを含み、
眼鏡レンズの計算または最適化すべき少なくとも一つの面の少なくとも一つの視点(i)を通る主光線の軌跡を確認する主光線確認モジュールを含み、
主光線に沿って眼鏡レンズの第1面に入射する球面波面(w
0)を規定する物体モデルモデル化モジュールを含み、
眼鏡レンズの少なくとも第1面および第2面と少なくとも片眼の角膜前面および水晶体との度数によって主光線の周辺で球面波面から帰結する少なくとも片眼の合成波面(w
e)を確認する波面計算モジュールを含み、
合成波面の収差が規定された目標収差に一致するまで眼鏡レンズの計算または最適化すべき少なくとも一つの面を反復修正するように設計された最適化モジュールを含む。
【0080】
本発明はさらに、好ましい一実施形態において特に、コンピュータにロードされかつ実行されるとき、本発明に係る眼鏡レンズ計算方法または最適化方法を実行するように設計されたコンピュータプログラム製品を提案する。
【0081】
本発明はさらにコンピュータプログラムを記憶した記憶媒体を提案し、好ましい一実施形態において特に、このコンピュータプログラムは、コンピュータにロードされかつ実行されるとき、本発明に係る眼鏡レンズ計算方法または最適化方法を実行するように設計されている。
【0082】
本発明がさらに提案する眼鏡レンズ製造方法は、
好ましい一実施形態において特に、本発明の一つに係る眼鏡レンズ計算方法または最適化方法に従って眼鏡レンズを計算または最適化することと、
こうして計算または最適化された眼鏡レンズを作製することを含む。
【0083】
本発明がさらに提案する眼鏡レンズ製造装置は、
好ましい一実施形態において特に、本発明に係る眼鏡レンズ計算方法または最適化方法に従って眼鏡レンズを計算または最適化するように設計された計算手段または最適化手段と、
眼鏡レンズを仕上げ加工するように設計された加工手段を含む。
【0084】
本発明はさらに、好ましい一実施形態において特に、本発明に係る製造方法に従って製造された眼鏡レンズを、特定眼鏡装用者の眼球の前で眼鏡レンズの規定された平均的装用位置または個別的装用位置において眼鏡装用者の屈折異常を補正することに使用することを提案する。
【0085】
本発明の好ましい実施形態は以下で添付図面を参考に例示的に解説される。
【発明を実施するための形態】
【0087】
眼鏡レンズ‐眼球系の収差を記述し計算するための眼鏡レンズと眼球屈折不足とから成る定評あるモデルに依拠した従来の最適化方法とは異なり、本発明は、まったく新規で個別的な眼球モデルに基づいて具体的に記述することのできる方法を提案する。本発明に係るアプローチにおいて波面は、個別的眼球モデルを具現する他の光学屈折面もしくは素子を通過後にはじめて評価される。波面収差の評価と、眼鏡レンズと眼球とを通した結像時の注視に対する波面収差の影響は、この個別的眼球モデルにおいて、本発明に係る個別的眼球モデルの結像系における最終屈折後にはじめて行われる。
【0088】
それとともに眼鏡レンズ最適化時や製造時にはじめて、眼球射出瞳内での高次収差を含む有効収差はすべて直接考慮することができる。つまり特に、本発明では主に合成波面の計算時に高次収差に対する角膜前面および眼球水晶体の影響も考慮される。合成波面の評価時にはじめて主に球面円柱組合せへの変換、つまり高次収差を一緒に含む変換された1次収差、2次収差への変換が行われる。安定しかつ迅速に収束する最適化プロセスのためのこの変換の好ましい例は上で既に指摘してある。
【0089】
従来の最適化方法ではこのような変換(つまり適宜な波面評価)は、同様に安定した仕方で目的関数を評価できるようにするために眼球の頂点球面または入射瞳で既に行わねばならない。それとともに高次収差に対する角膜前面および/または眼球水晶体の影響はもはや同様には考慮することができない。しかし本発明の枠内で認識されたように、まさにそのことによって、特に眼球が無視し得る高次収差をもはや持たないとき、眼鏡レンズの個別的調整の本質的改善は可能である。しかし大きな高次収差をそれ自身何ら持たない眼球が製造すべき眼鏡レンズによって引き起こされる高次波面収差に及ぼす影響でさえ、本発明に係るアプローチでもってはじめてごく効率的に考慮することができる。
【0090】
好ましい一実施形態において、所定の物点から主光線に沿って眼鏡レンズ、眼球角膜、眼球前室および眼球水晶体を通して眼球の網膜もしくは射出瞳に至る波面伝搬は視点(評価点)毎に計算される。その際本方法は詳細には主に以下の計算ステップを含む。
1. 眼鏡レンズの1視点について物点から眼球支点を通る主光線を追跡するステップ。このステップは従来の光線追跡法における当該計算と同様に行うことができる。
2. 眼鏡レンズ前面で物点から出発する球面波面を準備するステップ。その際、波面曲率は眼鏡レンズ前面からの物点距離の逆数に等しい。こうして物点は球面波面の中心点となる。
3. 前面通過後に主光線周辺の屈折波面を計算するステップ。
4. 眼鏡レンズを通して後面まで通過後に主光線周辺の伝搬波面を計算するステップ。
5. 後面通過後に主光線周辺の屈折波面を計算するステップ。
6. 眼鏡レンズ後面から角膜前面(cornea前面)まで伝搬後に主光線周辺の伝搬波面を計算するステップ。
7. 角膜前面通過後に主光線周辺の屈折波面を計算するステップ。
8. 角膜を通して角膜後面まで通過後に主光線周辺の伝搬波面を計算するステップ。
9. 角膜後面通過後に主光線周辺の屈折波面を計算するステップ。好ましい一実施形態において角膜後面は球状面と見做される。
10. 眼球水晶体にまで伝搬後、つまり眼球前室内を伝搬後に主光線周辺の伝搬波面を計算するステップ。
11. 眼球水晶体通過後に主光線周辺の屈折波面を計算するステップ。好ましい一実施形態においてこのステップは、特に水晶体前面での屈折、眼球水晶体内での伝搬および水晶体後面での屈折を計算するための複数の部分ステップをやはり含む。
12. 眼球水晶体から射出する波面(合成波面)を評価するステップ。この評価は特に目的関数を適宜評価することによって行われる。
【0091】
図1は規定された装用位置における眼鏡レンズの生理的、物理的モデルを例示的光線軌跡と一緒に示す略図であり、このモデルが本発明の好ましい一実施形態による個別的眼鏡レンズ計算もしくは最適化の基礎とされている。
【0092】
その際、眼鏡レンズの視点ごとに主に単一の光線(主に眼球支点Z’を通る主光線10)のみが計算され、但しそれに伴ってさらに横断(主光線に垂直な)座標に従って波面の頂点深さの導関数も計算される。これらの導関数は指定次数に至るまで考慮され、第2導関数は波面の局所曲率特性を記述し、高次導関数は高次収差と関連している。
【0093】
眼鏡レンズを通して個別的に用意された眼球モデルによる眼球12内にまで光を追跡するとき波面の局所導関数は最終的に光線軌跡内の一つの好適な位置で確認され、そこで、眼球12の網膜上にその曲率中心がある球面波面と比較される。好ましい一実施形態においてこの位置は例えば眼球水晶体20の後面および/または眼球12の射出瞳であり、これらは例えば距離L
Aを置いて網膜の前にある。
【0094】
このため、球面波面w
0が物点から出発して第1眼鏡レンズ面14まで伝搬すると仮定される。そこで球面波面は屈折し、引き続き第2眼鏡レンズ面16にまで伝搬し、そこで再び屈折する。眼鏡レンズから射出する波面w
g1は引き続き主光線に沿って眼球12の方向に伝搬(伝搬波面w
g2)して角膜18に入射し、そこで再び屈折する(波面w
C)。眼球前室内を眼球水晶体20にまでさらに伝搬したのち、波面は眼球水晶体20によってもやはり屈折し、これにより例えば眼球水晶体20の後面または眼球の射出瞳に合成波面w
eが生じる。この合成波面が球面参照波面w
Sと比較され、偏差はすべての視点について目的関数内で(主に、個々の視点について当該重みで)評価される。
【0095】
かくして屈折異常はもはや従来方法で一般的であったような薄い球面円柱水晶体によってのみ記述されるのでなく、主に角膜
トポグラフィーと眼球水晶体と眼球内の距離と眼球内での波面の(低次収差‐つまり球面屈折力、円柱屈折力、乱視軸位置‐を含む)変形が直接考慮される。それが(例えばIOLマスタ測定から)既知である場合、眼球内の実際の距離が用いられる。さもない場合、文献から既知の眼球モデル(グルストランド眼球、インディアナ眼球モデル、長さに関係した非正視眼等々)を頼りとすることができる。例えばここではAtchinson、Smith、“Optics of the Human Eye“、Butterworth Heinemann(2000)を参照するように指示する。そこでは例えば特に長さ(例えば光学素子間の距離、眼球長さ)、面屈折力、屈折率等々に関する例示的値が示されており、これらの値は‐当該値が個々に計測されず、個別的眼球モデル内で考慮されない限り‐個別的眼球モデルの完全化のため援用することができる。
【0096】
アベロメータ測定は主に、遠用、近用の実際の非正視眼の個別的波面変形(偏差、絶対的屈折力ではない)と個別的薄明視瞳孔直径、明所視瞳孔直径とを提供する。角膜
トポグラフィーの測定(角膜前面の平面的計測)から得られる実際の個別的角膜前面は一般に眼球の総屈折力のほぼ75%を占める。好ましい一実施形態において、角膜後面を計測することは必須でない。角膜後面は主に、房水との屈折率差が小さいので、球面屈折力と十分な近似で記述される。
【0097】
主に、眼球水晶体は独自に個別計測されるのではない。その代わりに主に、測定された波面収差が眼球内の規定された距離と測定された角膜
トポグラフィーとで生じることになるように眼球水晶体は計算される。その場合眼球水晶体は例えばアトーリック面と球状面とを有する均質水晶体と考えることができる。しかし眼球水晶体の不均質構造を有する文献で論議されたモデル(屈折率分布形レンズ)もこの場合用いることができる。これは主に少なくとも遠用測定と近用測定とで個別に実施され、主に、好適な例えば線形補間によって各調節状態もしくは物体距離用の柔軟な眼球モデルが得られる。
【0098】
それとともに、眼鏡レンズ最適化時に網膜結像品質に対する波面変形の影響を最良に考慮しかつ誤差を最小にすることがはじめて可能となる。
【0099】
次に本発明の好ましい一実施形態による波面伝搬を以下で詳しく解説する。これらの実施は例えば両方の眼鏡レンズ面14、16間での波面伝搬、および/または後側眼鏡レンズ面16から角膜前面18に至る波面伝搬、および/または角膜内部での伝搬、および/または角膜と眼球水晶体20との間での伝搬、および/または眼球水晶体内部での伝搬、および/または眼球水晶体20と眼球12の網膜との間での伝搬に応用可能である。
【0100】
図2に示したように、主に(x軸、y軸、z軸を有する)直角座標系が定義され、その原点は規定された主光線10の場合主光線10と原波面22との交点にある。z軸は主に主光線10の方向を向いている。x軸の方向とy軸の方向は主に、座標系が右回りとなるようにz軸に垂直かつ相互に垂直に選択される。原波面において屈折面の波面から出発し、つまり例えば眼鏡レンズまたは角膜前面18の表面14、16の波面から出発する場合、x軸および/またはy軸は主に主光線透過点の面もしくは面接線と平行に選択される。別の好ましい一実施形態においてx軸とy軸は原波面18の主曲率と平行に選択される。
【0101】
主に、
【数39】
による波面の記述から出発され、式中、値w(x、y)は係数
【数40】
を用いて
【数41】
によって表される。
【0102】
それとともに係数
【数42】
と局所収差
【数43】
との間の関係は
【数44】
によって記述することができる。
【0103】
2次までの収差の場合、主光線周辺の原波面の離接運動S
o=n/s
oを有する球面波面の伝搬は主に周知の如くに伝搬方程式
【数45】
によって表現することができ、式中、S
p=n/s
pは伝搬波面の離接運動を表す。
図3に示したように、s
oとs
pは原波面18もしくは伝搬波面20の頂点距離(例えば波面から物点26に至る主光線10に沿った距離)を表す。nは屈折率、dは伝搬距離を表す。
【0104】
波面の球面円柱形状は3次元に拡張することによって以下の如くに表すことができる。まず、曲率1/s
oと1/s
pが原波面18もしくは伝搬波面20の頂点深さの第2導関数と同一視される。3次元表現において第2導関数
【数46】
と
【数47】
は、原波面18と相応に伝搬波面20とについてそれぞれ離接運動行列の形でまとめられる。
【数48】
【0105】
その際、各離接運動行列の諸成分は
【数49】
に従って(そして伝搬波面についてと同様に)球面度数Sph、円柱度数値Cyl、円柱度数の乱視軸位置αの既知値と関連している。離接運動行列の形での表現を用いて、方程式(4)と同様に、非点収差波面の伝搬は単位行列
【数50】
を有する一般化した伝搬方程式
【数51】
を介して表現することができる。離接運動行列の形でのこの表現と等価に、3次元ベクトル空間内で原波面22と伝搬波面24とについてパワーベクトルとして以下を挿入することができる。
【数52】
【0106】
波面伝搬時の高次収差を考慮するためにk+1次元の当該ベクトルe
kを挿入することができる。
【数53】
【0107】
しかしながら、波面の記述に基づいてその局所導関数を介して屈折と伝搬を行うことは必ずしも必須ではない。選択的に、例えば屈折のみは波面の記述を用いて行い、それに対して伝搬は従来の仕方で例えばWO2008/089999A1で行われたように光線追跡によって行うことも基本的に可能であろう。但しこの文献では波面もしくは光線追跡の評価が本発明に係る処理方式とは異なりやはり確立した従来の仕方で例えば眼球の頂点球面または入射瞳で行われている。
【0108】
図4は眼鏡レンズを個別的に最適化する例示的方法を示している。その際主に眼鏡レンズの高次収差(HOA:higher order aberrations)も眼球の高次収差も考慮される。
【0109】
眼鏡装用者の眼球の個別的屈折特定SТ20時に主に球面屈折力、円柱屈折力および乱視軸位置の値、特に遠用および近用の値が自覚的に特定されるだけでなく、例えばゼルニケ係数
【数54】
によって記述される高次収差がアベロメータで付加的に特定される。主に、個別的屈折の確認SТ20はさらに、特に視線方向もしくは物体距離に依存した個別的瞳孔寸法を確認することを含む。
【0110】
図示した好ましい実施形態においてさらに、眼球の角膜前面の個別的
トポグラフィーが測定される(SТ22)。眼球のその他の幾何学データ、例えば角膜前面と眼球水晶体との間の距離、および/または網膜からの眼球水晶体の距離、および/または角膜後面の形状は、主に標準値としてデータベースに格納され、個別的眼球モデルを確認するためにステップSТ24でそこから呼び出される。例えば眼鏡装用者の眼球の前での眼鏡レンズの位置決めに関するその他の主に個別的なパラメータ(例えば角膜頂点距離、前傾角、フレームあおり角等)も、個別的眼球モデルの確認時に眼鏡レンズとモデル眼球とから成る光学系全体を確定するために考慮される。
【0111】
しかし少なくとも、眼球網膜に対する相対的位置における少なくとも角膜前面と眼球水晶体との協働によって、個別的に特定された眼球屈折が引き起こされることになるように、個別的眼球モデルは作成される。こうして主に、個々に確認された屈折と角膜前面の個々に確認された
トポグラフィーとから眼球水晶体の所要度数は計算される。例えば、角膜前面の測定された
トポグラフィーによって(少なくとも完全にではないが)引き起こされる眼球の非点収差が屈折特定時に測定される場合、この作用は個別的眼球モデルの確認時に眼球水晶体が原因であるとされる。
【0112】
製造すべき眼鏡レンズを計算するために、モデル眼球の前の主に個別的な装用状況に一致した一つの位置において眼鏡レンズの前面および後面の開始面がまず規定される(ステップSТ26)。これらの開始面と個別的眼球モデルとに基づいて、特に眼鏡レンズの各評価点について、特に眼球支点を(評価点に一致した眼球視線方向において)通る主光線の軌跡を確認することが行われる(ステップSТ28)。
【0113】
さらに、眼鏡レンズ前面に入射する発散球面波面が各評価点について規定され(ステップSТ30)、主光線上のこの球面波面の曲率中心は、主に個々に確定または選択された物体距離モデルによって示される物体距離にある。こうしてこの球面波面は当該物点から出発する光を記述する。
【0114】
波面はいまや各主光線に沿って少なくとも両方の眼鏡レンズ面と角膜前面と眼球水晶体とを通過し、各界面で屈折し、界面の間を例えば支障なく伝搬する。特に個別的眼球モデルによって界面と距離が少なくとも部分的に個別に確定されたなら、規定された球面波面からステップSТ32において眼球水晶体の背後の合成波面が確認される。
【0115】
引き続き合成波面の評価が行われる(ステップSТ34)。その際特別好ましくは、個別的瞳孔寸法に基づいて各視線方向について合成波面の係数(例えばゼルニケ係数)を合成収差の球面円筒表現に変換することが行われる。すなわち、球面屈折力、円柱屈折力、乱視軸位置の(「複合値」とも称される)変換された値が確認され、これらの値は瞳孔寸法によって特定された主光線周辺の合成波面に対する所望の調整を具現する。つまり主に、合成波面の評価時に高次波面収差はもはや明確には目的関数のなかで考慮されるのでなく、主に球面円柱組合せへの変換を介して間接的に目的関数に含まれるだけである。合成波面の評価は特に、参照波面との比較、特に各主光線に沿って網膜に至るまで収束する球面波面との比較に基づいて行われる。
【0116】
目的関数がまだ十分には最小化されていない(そしてその他でも最適化過程のための中断基準が存在しない)場合、最適化すべき眼鏡レンズ面が修正され、この過程はステップSТ28で主光線の軌跡を確認するとき少なくとも一つの修正された面に基づいて(修正されない前面と修正された後面とにおいて)再びスタートする。
【0117】
目的関数がステップSТ34で十分に最小化されたなら、眼鏡レンズ面を例えば頂点深さの形で出力し、眼鏡レンズを適宜仕上げることができる(SТ36)。