(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記閉ループ状領域の外側の外部領域を備え、前記ループ状領域を囲む前記外部領域が、複数の非球状磁性又は磁化可能粒子を含み、前記外部領域内の前記複数の非球状磁性又は磁化可能粒子の少なくとも一部が、その最長軸が前記OELの平面と実質的に垂直となるように配向するか、又はランダムに配向した、請求項1に記載の光学効果層(OEL)。
前記複数の非球状磁性又は磁化可能粒子の少なくとも一部が、非球状光学可変磁性又は磁化可能顔料で構成された、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学効果層(OEL)。
前記非球状光学可変磁性又は磁化可能顔料が、磁性薄膜干渉顔料、磁性コレステリック液晶顔料、及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項5に記載の光学効果層(OEL)。
光学効果層を形成する磁界発生装置であって、前記装置が、支持表面上又は基板上にコーティング組成物を受容するように構成され、前記コーティング組成物が複数の非球状磁性又は磁化可能粒子及びバインダ材料を含み、前記支持表面の下方に2つ以上の磁石を備え、前記磁石が、前記支持表面と実質的に垂直な回転軸の周りに回転可能に配置され、前記回転軸周りの前記磁石の回転により、ループ形状を規定する領域及び前記ループ形状から離隔して前記ループ形状に囲まれた中央領域内において、前記支持表面と実質的に平行な磁力線が生成され、
前記装置が、前記光学効果層の少なくとも1つのループ状領域において、前記複数の非球状磁性又は磁化可能粒子の少なくとも一部を前記光学効果層の平面と平行に配向させるように構成され、前記OELに垂直であり、中央領域の中心から延びた断面において、前記ループ状領域に存在する前記配向粒子の最長軸が、仮想的な楕円又は円の負湾曲部又は正湾曲部の接線に従い、前記中央領域内の前記複数の非球状磁性又は磁化可能粒子の一部を、その最長軸が前記OELの平面と実質的に平行となるように配向させて、前記ループ状本体の前記中央領域内に突起の光学効果を構成するように構成された、磁界発生装置。
前記ループ状領域が、リングの形態のループ状本体の光学的印象を与え、前記ループ状領域に囲まれた前記中央領域が、中実円又は半球の光学的印象を与える、請求項9に記載の磁界発生装置。
【発明の概要】
【0008】
[008]したがって、本発明は、上述の従来技術の欠点を克服することを目的とする。これは、例えば書類等の物品上において、拡張された全長にわたって視角に応じた画像特徴の見掛けの運動を示し、良好な鮮明性及び/又はコントラストを有し、容易に検出可能な光学効果層を提供することによって実現される。本発明は、検出が容易な改良された公然のセキュリティ対策として、又はその追加又は代替として、例えば書類機密の分野における秘密のセキュリティ対策として、このような光学効果層を提供する。
【0009】
[009]本明細書には、セキュリティ要素を含む光学効果層(OEL)と、前記光学効果層を備えたセキュリティ書類とを開示及び請求する。具体的には、光学効果層(OEL)であって、OELが、バインダ材料を含むコーティング組成物中に分散した複数の非球状磁性又は磁化可能粒子を含み、当該OELの少なくとも1つのループ状領域において、上記複数の非球状磁性又は磁化可能粒子の最長軸が当該OELの平面と実質的に平行となるように、当該粒子の少なくとも一部が配向しており、前記ループ状領域が中央領域を囲むループ状本体の光学的印象を構成し、当該OELに垂直であり、中央領域の中心から延びた断面において、ループ状領域に存在する配向粒子の最長軸が、仮想的な楕円又は円の負湾曲部又は正湾曲部の接線に従う、光学効果層(OEL)を提供する。このように非球状磁性又は磁化可能粒子を配向させることにより、観察者に対して、ループ状本体の光学効果が生成される。
【0010】
[010]また、本明細書には、ここに記載の光学効果層の製造に使用可能な磁界発生装置も記載及び請求する。具体的には、光学効果層を形成する磁界発生装置であって、装置が、複数の非球状磁性又は磁化可能粒子及びバインダ材料を含むコーティング組成物を受容するように構成され、光学効果層の少なくとも1つのループ状領域において、上記複数の非球状磁性又は磁化可能粒子の少なくとも一部を光学効果層の平面と平行に配向させるように構成された1つ又は複数の磁石を備え、前記ループ状領域が中央領域を囲むループ状本体の光学的印象を構成し、OELに垂直であり、中央領域の中心から延びた断面において、ループ状本体の光学的印象を構成するループ状領域に存在する配向粒子の最長軸が、仮想的な楕円又は円の負湾曲部又は正湾曲部の接線に従う、磁界発生装置を提供する。コーティング組成物は、この装置の一部であり、固体部材(板等)で構成された支持表面又はこのような支持表面上に設けられた基板に直接塗布可能である。或いは、この基板が、コーティング組成物用の支持表面の役割を担うことができる。
【0011】
[011]また、本明細書には、セキュリティ要素の製造プロセス、当該セキュリティ要素を含む光学効果層、及びセキュリティ書類の偽造防止又はグラフィックアートにおける装飾用途のための光学効果層の使用も記載及び請求する。具体的に、本発明は、光学効果層(OEL)を製造するプロセスであって、
a)バインダ及び複数の非球状磁性又は磁化可能粒子を含むコーティング組成物を磁界発生装置の支持表面上又は基板表面上に塗布するステップであり、前記コーティング組成物が第1の(流体)状態にある、ステップと、
b)第1の状態のコーティング組成物を磁界発生装置、好ましくは請求項8〜12のいずれか一項に記載の磁界発生装置の磁界に曝露することによって、1つの中央領域を囲む少なくとも1つのループ状領域で非球状磁性又は磁化可能粒子の少なくとも一部を配向させ、OELに垂直であり、中央領域の中心から延びた断面において、ループ状領域に存在する粒子の最長軸が、仮想的な楕円又は円の負湾曲部又は正湾曲部の接線に従うようにするステップと、
c)コーティング組成物を固化させて第2の状態とすることにより、非球状磁性又は磁化可能粒子を所定の位置及び向きに固定するステップと、
を含む、プロセスに関する。
本発明の他の好適な実施形態及び態様については、従属請求項及び以下の説明を参照することにより明らかとなるであろう。
本発明のいくつかの態様については、以下のようにまとめられる。
1.光学効果層(OEL)であって、OELが、バインダ材料を含むコーティング組成物中に分散した複数の非球状磁性又は磁化可能粒子を含み、
当該OELの少なくとも1つのループ状領域において、前記複数の非球状磁性又は磁化可能粒子の最長軸が当該OELの平面と実質的に平行となるように、前記粒子の少なくとも一部が配向しており、前記ループ状領域が中央領域を囲む閉ループ状本体の光学的印象を構成し、当該OELに垂直であり、前記中央領域の中心から延びた断面において、前記ループ状本体の印象を構成する前記ループ状領域に存在する前記配向粒子の最長軸が、仮想的な楕円又は円の負湾曲部又は正湾曲部の接線に従う、光学効果層(OEL)。
2.前記閉ループ状領域の外側の外部領域を備え、前記ループ状領域を囲む前記外部領域が、複数の非球状磁性又は磁化可能粒子を含み、前記外部領域内の前記複数の非球状磁性又は磁化可能粒子の一部が、その最長軸が当該OELの平面と実質的に垂直となるように配向するか、又はランダムに配向した、項目1に記載の光学効果層(OEL)。
3.前記ループ状領域に囲まれた前記中央領域が、複数の非球状磁性又は磁化可能粒子を含み、前記中央領域内の前記複数の非球状磁性又は磁化可能粒子の一部が、その最長軸が当該OELの平面と実質的に平行となるように配向して、前記ループ状本体の前記中央領域内に突起の光学効果を構成した、項目1又は2に記載の光学効果層(OEL)。
4.前記突起の外周形状の少なくとも一部が、前記ループ状本体の形状に類似した、項目3に記載の光学効果層(OEL)。
5.前記ループ状本体がリングの形態を有し、前記突起が中実円又は半球の形状を有する、項目4に記載の光学効果層(OEL)。
6.前記複数の非球状磁性又は磁化可能粒子の少なくとも一部が、非球状光学可変磁性又は磁化可能顔料で構成された、項目1〜5のいずれか一項に記載の光学効果層(OEL)。
7.前記非球状光学可変磁性又は磁化可能顔料が、磁性薄膜干渉顔料、磁性コレステリック液晶顔料、及びこれらの混合物から成る群から選択される、項目6に記載の光学効果層(OEL)。
8.光学効果層を形成する磁界発生装置であって、前記装置が、複数の非球状磁性又は磁化可能粒子及びバインダ材料を含むコーティング組成物を受容するように構成され、前記光学効果層の少なくとも1つのループ状領域において、前記複数の非球状磁性又は磁化可能粒子の少なくとも一部を前記光学効果層の平面と平行に配向させるように構成された1つ又は複数の磁石を備え、前記ループ状領域が中央領域を囲む閉ループ状本体の光学的印象を構成し、前記OELに垂直であり、前記中央領域の中心から延びた断面において、前記ループ状本体の印象を構成する前記ループ状領域に存在する前記配向粒子の最長軸が、仮想的な楕円又は円の負湾曲部又は正湾曲部の接線に従う、磁界発生装置。
9.a)前記コーティング組成物を受容する支持表面を備え、前記支持表面が、
a1)前記コーティング組成物を直接塗布可能な板、
a2)前記コーティング組成物を塗布可能な基板を受容する板、又は
a3)前記コーティング組成物を直接塗布可能な磁石の表面又は前記コーティング組成物を塗布可能な基板を上方又は上に設けることができる表面、
によって構成されるか、又は
b)前記光学効果層を設ける基板であって、前記支持表面の代わりとなる、基板を受容するように構成された、項目8に記載の磁界発生装置。
10.支持表面を備えるか、又は前記支持表面の代わりとなる基板を受容するように構成され、
a)前記支持表面又は前記支持表面の代わりとなる前記基板の下方に配置され、前記支持表面/前記基板表面と垂直なNS軸を有する棒状双極子磁石及び磁極片であって、
a1)前記磁極片が前記棒状双極子磁石の下方に配設され、前記磁石の磁極の一方と接触し、及び/又は
a2)前記磁極片が前記棒状双極子磁石から離隔して横方向に囲む、棒状双極子磁石及び磁極片、
b)前記支持表面の下方において、前記支持表面と実質的に垂直な回転軸の周りに回転可能な一対又は複数対の棒状双極子磁石であって、前記支持表面と実質的に平行なNS軸及び前記回転軸に対して実質的に放射状の磁気的NS軸を有し、
b1)磁気的NS方向が反対、又は
b2)磁気的NS方向が同じであり、
各対が、前記回転軸に関して実質的に対称に配置された2つの棒状双極子磁石で構成された、一対又は複数対の棒状双極子磁石、
c)前記支持表面の下方において、前記支持表面と実質的に垂直な回転軸の周りに回転可能な一対又は複数対の棒状双極子磁石であって、i)前記支持表面と実質的に垂直なNS軸及びii)前記回転軸と実質的に平行な磁気的NS軸を有し、iii)磁気的NS方向が反対であり、各対が、前記回転軸に関して対称に配設された2つの棒状双極子磁石のアセンブリから成る、一対又は複数対の棒状双極子磁石、
d)前記支持表面の下方において、前記支持表面と実質的に垂直な回転軸の周りに回転可能に設けられた3つの棒状双極子磁石であって、当該3つの棒状双極子磁石のうちの2つが前記回転軸の両側に配置され、第3の棒状双極子磁石が前記回転軸上に配置され、i)前記磁石がそれぞれ、前記支持表面と実質的に平行なNS軸を有し、ii)前記回転軸から離隔した前記2つの磁石が、前記回転軸に対して実質的に放射状のNS軸を有し、iii)前記回転軸から離隔した前記2つの棒状双極子磁石のNS方向が、同一すなわち前記回転軸に関して非対称であり、iv)前記回転軸上の第3の棒状双極子磁石のNS方向が、離隔した前記2つの棒状双極子磁石のNS方向と反対である、3つの棒状双極子磁石、
e)前記支持表面又は前記支持表面の代わりとなる前記基板の下方の双極子磁石であって、前記磁石がループ状本体から成り、前記ループ状本体の中心から周囲まで放射状に延びた磁気的NS軸を有する、双極子磁石、
f)前記支持表面又は前記支持表面の代わりとなる前記基板の下方において、前記支持表面/前記基板表面と実質的に垂直な回転軸の周りに回転可能な1つ又は複数の棒状双極子磁石であって、前記1つ又は複数の棒状双極子磁石のそれぞれが前記支持表面/基板表面と実質的に平行な磁気的NS軸及び前記回転軸に対して実質的に放射状の磁気的NS軸を有し、前記1つ又は複数の棒状双極子磁石のNS方向がすべて前記回転軸側又はその反対側を向いた、1つ又は複数の棒状双極子磁石、又は
g)前記支持表面の下方の3つ以上の棒状双極子磁石であって、前記3つ以上の棒状双極子磁石のすべてが対称中心の周りに固定様態で配置され、前記3つ以上の棒状双極子磁石のそれぞれがi)前記支持表面と実質的に平行な磁気的NS軸及びii)前記対称中心から実質的に放射状に延びるように整列した磁気的NS軸を有し、iii)前記3つ以上の棒状双極子磁石のNS方向がすべて前記対称中心側又はその反対側を向いた、3つ以上の棒状双極子磁石、
をさらに備えた、項目9に記載の磁界発生装置。
11.前記回転軸周りの前記磁石の回転により、ループ形状を規定する領域及び前記ループ形状から離隔して前記ループ形状に囲まれた中央領域内において、前記支持表面と実質的に平行な時間依存性の磁力線が生成される、項目10の実施形態b2)、c)、又はd)に記載の光学効果層を形成する磁界発生装置。
12.前記ループ状本体がリングの形態であり、前記ループ状本体に囲まれた前記中央領域が、中実円又は半球の形態である、項目12に記載の磁界発生装置。
13.項目8〜12のいずれか一項に記載の磁界発生装置を備えた印刷アセンブリ。
14.項目1〜7のいずれか一項に記載のOELを製造するための、項目8〜12のいずれか一項に記載の磁界発生装置の使用。
15.光学効果層(OEL)を製造するプロセスであって、
a)バインダ及び複数の非球状磁性又は磁化可能粒子を含むコーティング組成物を磁界発生装置の支持表面又は基板表面上上に塗布するステップであり、前記コーティング組成物が第1の状態にある、ステップと、
b)第1の状態の前記コーティング組成物を磁界発生装置、好ましくは請求項8〜12のいずれか一項に記載の磁界発生装置の磁界に曝露することによって、1つの中央領域を囲む少なくとも1つのループ状領域で前記非球状磁性又は磁化可能粒子の少なくとも一部を配向させ、前記OELに垂直であり、前記中央領域の中心から延びた断面において、前記ループ状領域に存在する前記粒子の最長軸が、仮想的な円の負湾曲部又は正湾曲部の接線に従うようにするステップと、
c)前記コーティング組成物を固化させて第2の状態とすることにより、前記非球状磁性又は磁化可能粒子を所定の位置及び向きに固定するステップと、
を含む、プロセス。
16.前記固化ステップc)を紫外・可視光放射線硬化によって行う、項目15に記載のプロセス。
17.項目15又は16に記載のプロセスによって取得可能な、項目1〜7のいずれか一項に記載の光学効果層。
18.項目1〜7のいずれか一項又は項目17に記載の1つ又は複数の光学効果層を基板上に備えた光学効果被覆基板(OEC)。
19.項目1〜7のいずれか一項又は項目17に記載の光学効果層を備えたセキュリティ書類、好ましくは紙幣又は身分証明書類。
20.偽造又は不正に対するセキュリティ書類の保護又は装飾用途のための、項目1〜7のいずれか一項又は項目18に記載の光学効果層又は項目18に記載の光学効果被覆基板の使用。
【0012】
[012]以下、図面及び特定の実施形態を参照して、本発明に係る光学効果層(OEL)及びその製造をより詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(定義)
[013]以下の定義を用いることによって、本明細書及び特許請求の範囲に記載の用語の意味を解釈するものとする。
【0015】
[014]本明細書において、不定冠詞「a」は、1つ及び2つ以上を示し、必ずしもその指示対象の名詞を単数に限定するものではない。
【0016】
[015]本明細書において、用語「約」は、対象とする量又は値が指定された特定の値又はその近傍の他の値であってもよいことを意味する。一般的に、ある値を示す用語「約」は、その値の±5%の範囲を示すことを意図している。一例として、表現「約100」は、100±5の範囲すなわち95〜105の範囲を示す。一般的に、用語「約」を使用する場合は、本発明に係る類似の結果又は効果が指定値の±5%の範囲で得られることが予想され得る。
【0017】
[016]本明細書において、用語「及び/又は」は、前記群の要素のすべて又は1つだけが存在していてもよいことを意味する。例えば、「A及び/又はB」は、「Aのみ、Bのみ、又はA及びBの両者」を意味するものとする。「Aのみ」の場合、この用語は、Bが存在しない可能性すなわち「AのみであってBではない」という可能性も網羅している。
【0018】
[017]用語「実質的に平行」は、平行整列からの逸脱が20°未満であることを表し、用語「実質的に垂直」は、垂直整列からの逸脱が20°未満であることを表す。用語「実質的に平行」は、平行整列からの逸脱が10°以下であることを表し、用語「実質的に垂直」は、垂直整列からの逸脱が10°以下であることを表すのが好ましい。
【0019】
[018]用語「少なくとも一部」は、後続の特性がある程度又は完全に満たされていることを示すことを意図している。この用語は、後続の特性が好ましくは少なくとも50%以上、より好ましくは少なくとも75%、さらに好ましくは少なくとも90%満たされていることを示す。この用語は、「完全に」を示すのが好ましい場合もある。
【0020】
[019]用語「実質的に」及び「本質的に」は、後続の特徴、特性、又はパラメータが完全に(全面的に)実現若しくは満足されているか、又は意図する結果に悪影響を及ぼさない範囲で大いに実現若しくは満足されていることを示すのに用いる。したがって、用語「実質的に」又は「本質的に」は、状況に応じて、例えば少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%を意味するのが好ましい。
【0021】
[020]本明細書において、用語「備える(具備する、含む)」は、非排他的且つオープンエンドであることを意図している。したがって、例えば化合物Aを含むコーティング組成物は、A以外の化合物を含んでいてもよい。ただし、用語「備える(具備する、含む)」は、「〜から本質的に成る」及び「〜から成る」というより限定的な意味も網羅するため、例えば「化合物Aを含むコーティング組成物」は、化合物Aから(本質的に)成っていてもよい。
【0022】
[021]用語「コーティング組成物」は、本発明の光学効果層(OEL)を固体基板上に形成可能であるとともに、印刷法によって優先的且つ非排他的に塗布可能な任意の組成物を表す。コーティング組成物は、少なくとも複数の非球状磁性又は磁化可能粒子及びバインダを含む。粒子は、形状が非球状であることから、非等方的な反射性を有する。
【0023】
[022]本明細書において、用語「光学効果層(OEL)」は、少なくとも複数の配向非球状磁性又は磁化可能粒子及びバインダを含み、非球状磁性又は磁化可能粒子の配向がバインダ内で固定された層を示す。
【0024】
[023]本明細書において、用語「光学効果被覆基板(OEC)」は、OELの基板上への提供により得られる製品を示すのに用いる。OECは、基板及びOELから成っていてもよいが、他の材料及び/又はOEL以外の層を含んでいてもよい。したがって、OECという用語は、紙幣等のセキュリティ書類も網羅する。
【0025】
[024]用語「ループ状領域」は、それ自体と再結合してループ状本体の光学効果又は光学的印象を与えるOEL内の領域を示す。この領域は、1つの中央領域を囲む閉ループの形態である。「ループ状」としては、円形、長円形、楕円形、正方形、三角形、長方形、又は任意の多角形状が可能である。ループ形状の例としては、円、長方形又は正方形(角丸が好ましい)、三角形、五角形、六角形、七角形、八角形等が挙げられる。ループを形成する領域は、それ自体と交差しないのが好ましい。用語「ループ状本体」は、3次元ループ状本体の印象が観察者に与えられるように、ループ状領域の非球状磁性又は磁化可能粒子を配向させることによって得られる光学効果を示すのに用いる。
【0026】
[025]用語「セキュリティ要素」は、認証目的で使用可能な画像又は図形要素を示すのに用いる。セキュリティ要素は、公然及び/又は秘密のセキュリティ要素が可能である。
【0027】
[026]用語「磁気軸」又は「NS軸」は、磁石のNS極を接続するとともに貫通して延びる理論的な線を示す。この線は、特定の方向を有さない。一方、用語「NS方向」は、NS軸又は磁気軸に沿ったN極からS極への方向を示す。
(発明の詳細な説明)
【0028】
[027]一態様において、本発明は、通常は基板上に設けられ、OECを構成するOELに関する。OELは、非球状であるために非等方的な反射性を有する複数の非球状磁性又は磁化可能粒子を含む。粒子は、バインダ材料中に分散しており、光学効果を与える特定の配向を有する。この配向は、以下に詳述する外部磁界に従って粒子を配向させることにより実現している。
【0029】
[028]OELにおいて、非球状磁性又は磁化可能粒子は、当該非球状磁性又は磁化可能粒子の配向を固定する固化バインダ材料を含むコーティング組成物中に分散している。固化バインダ材料は、200nm〜2500nmの範囲の1つ又は複数の波長の電磁放射線に対して、少なくとも一部が透明である。固化バインダ材料は、200〜800nmの範囲、より好ましくは400〜700nmの範囲の1つ又は複数の波長の電磁放射線に対して、少なくとも一部が透明であることが好ましい。本明細書において、用語「1つ又は複数の波長」は、バインダ材料が所与の波長範囲の1つの波長に対してのみ透明であるか、又は所与の範囲のいくつかの波長に対して透明であってもよいことを示す。バインダ材料は、所与の範囲の2つ以上の波長に対して透明であることが好ましく、所与の範囲のすべての波長に対して透明であることがより好ましい。したがって、より好適な一実施形態においては、固化バインダ材料が約200〜約2500nm(又は200〜800nm、又は400〜700nm)の範囲のすべての波長に対して、少なくとも一部が透明である。また、固化バインダ材料は、これらの範囲のすべての波長に対して完全に透明であるのがさらに好ましい。
【0030】
[029]本明細書において、用語「透明」は、OEL(非球状磁性又は磁化可能粒子は含まないが、OELのその他任意選択の成分があれば、それらをすべて含む)に存在する固化バインダ材料の20μmの層に対する電磁放射線の透過率が少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%であることを示す。これは、例えばDIN5036−3(1979−11)等の確立した試験方法に従って固化バインダ材料(非球状磁性又は磁化可能粒子は含まず)の試験片の透過率を測定することによって決定可能である。
【0031】
[030]本明細書に記載の非球状磁性又は磁化可能粒子は、非球状であることから、固化バインダ材料の少なくとも一部が透明である入射電磁放射線に対して非等方的な反射性を有する。本明細書において、用語「非等方的な反射性」は、第1の角度からの入射放射線が粒子により特定の(観察)方向(第2の角度)に反射される割合が粒子の配向の関数であること、すなわち、第1の角度に対する粒子の配向の変化に応じて観察方向への反射の大きさが異なり得ることを示す。
【0032】
[031]本明細書に記載の複数の非球状磁性又は磁化可能粒子はそれぞれ、粒子の配向の変化によって当該粒子による反射が特定の方向に変化するように、約200〜約2500nmの波長範囲の一部又は全部における入射電磁放射線に対して非等方的な反射性を有することが好ましく、約400〜約700nmの波長範囲の一部又は全部における入射電磁放射線に対して非等方的な反射性を有することがより好ましい。
【0033】
[032]本発明のOELにおいては、動的なループ状セキュリティ要素を構成するように、非球状磁性又は磁化可能粒子が設けられている。
【0034】
[033]本明細書において、用語「動的」は、セキュリティ要素の外観及び光反射が視角に応じて変化することを示す。言い換えるなら、セキュリティ要素の外観は、異なる角度から見ると異なっている。すなわち、セキュリティ要素は、(例えば、OELの平面に関し、約90°の視角に対して約22.5°の視角から見た場合に)異なる外観を示す。この挙動は、非等方的な反射性を有する非球状磁性又は磁化可能粒子の配向及び/又は(後述する光学可変顔料等の)上記のような視角に応じた外観を有する非球状磁性又は磁化可能粒子の特性を原因とする。
【0035】
[034]用語「ループ状本体」は、OELがそれ自体と再結合する閉塞本体の視覚的印象を観察者に与えるように非球状磁性又は磁化可能粒子が設けられ、1つの中央領域を囲む閉ループ状本体を構成していることを示す。「ループ状本体」は、円形、長円形、楕円形、正方形、三角形、長方形、又は任意の多角形状を有し得る。ループ形状の例としては、円、長方形又は正方形(角丸が好ましい)、三角形、(正又は非正)五角形、(正又は非正)六角形、(正又は非正)七角形、(正又は非正)八角形、任意の多角形状等が挙げられる。ループ状本体は、(例えば、二重ループ又はオリンピックのリングのように複数のリングが互いに重なった形状のようには)互いに交差していないのが好ましい。ループ形状の例は、
図13にも示す。
【0036】
[035]本発明において、ループ状本体の光学的印象は、非球状磁性又は磁化可能粒子の配向によって構成される。すなわち、ループ状本体のループ形状は、例えば印刷等により、バインダ材料及び非球状磁性又は磁化可能粒子を含むコーティング組成物を基板上のループ状に塗布することによってではなく、OELのループ状領域における磁界に従って非球状磁性又は磁化可能粒子を整列させることによって実現される。このように、ループ状領域は、当該ループ状領域のほかにも、非球状磁性又は磁化可能粒子が全く整列していない(すなわち、ランダムな配向を有する)か、又はループ状本体の印象に寄与しないように整列した部分を含むOELの全領域の一部を表す。ループ状本体の印象に寄与しないこの部分においては通常、最長軸がOELの平面と実質的に垂直となるように、粒子の少なくとも一部を配向させる。
【0037】
[036]非球状磁性又は磁化可能粒子は、扁長若しくは扁平な楕円体状、血小板状、若しくは針状の粒子、又はこれらの混合物であるのが好ましい。したがって、非球状であるために単位表面積当たり(例えば、μm
2当たり)の固有の反射性が粒子の全表面にわたって一様であっても、粒子の反射性は、粒子の可視領域がその観察方向によって決まるため非等方的である。一実施形態において、非球状であるために非等方的な反射性を有する非球状磁性又は磁化可能粒子は、反射性及び屈折率が異なる層の存在によって、例えば光学可変磁性顔料のように、固有の非等方的な反射性をさらに有していてもよい。本実施形態において、非球状磁性又は磁化可能粒子は、非球状光学可変磁性又は磁化可能顔料等、固有の非等方的な反射性を有する非球状磁性又は磁化可能粒子を含む。
【0038】
[037]本明細書に記載の非球状磁性又は磁化可能粒子の適当な例としては、コバルト、鉄、又はニッケル等の強磁性又はフェリ磁性金属、鉄、マンガン、コバルト、鉄、又はニッケルの強磁性又はフェリ磁性合金、クロム、マンガン、コバルト、鉄、ニッケル、又はこれらの混合物の強磁性又はフェリ磁性酸化物、及びこれらの混合物を含む粒子が挙げられるが、これらに限定されない。クロム、マンガン、コバルト、鉄、ニッケル、又はこれらの混合物の強磁性又はフェリ磁性酸化物は、純粋又は混合酸化物であってもよい。磁性酸化物の例としては、赤鉄鉱(Fe
2O
3)、磁鉄鉱(Fe
3O
4)、二酸化クロム(CrO
2)、磁性フェライト(MFe
2O
4)、磁性スピネル(MR
2O
4)、磁性ヘキサフェライト(MFe
12O
19)、磁性オルソフェライト(RFeO
3)、磁性ガーネット(M
3R
2(AO
4)
3)等の鉄酸化物が挙げられるが、これらに限定されない。ここで、Mは2価、Rは3価、Aは4価の金属イオンを表し、「磁性」は強磁性又はフェリ磁性を表す。
【0039】
[038]光学可変要素は、セキュリティ印刷の分野において知られている。光学可変要素(当技術分野においては、変色要素又はゴニオクロマチック要素とも称する)は、視角又は入射角に応じた色を示し、一般的に利用可能なカラースキャン、印刷、及びコピー用オフィス機器による偽造及び/又は違法複製に対して紙幣等のセキュリティ書類を保護するために用いられる。
【0040】
[039]本明細書に記載の複数の非球状磁性又は磁化可能粒子の少なくとも一部は、非球状光学可変磁性又は磁化可能顔料によって構成されているのが好ましい。このような非球状光学可変磁性又は磁化可能顔料は、扁長若しくは扁平な楕円体状、血小板状、若しくは針状の粒子、又はこれらの混合物であるのが好ましい。
【0041】
[040]複数の非球状磁性又は磁化可能粒子は、非球状光学可変磁性顔料若しくは磁化可能顔料及び/又は光学可変特性を持たない非球状磁性粒子若しくは磁化可能粒子を含んでいてもよい。
【0042】
[041]以下に説明する通り、ループ状本体の光学的印象は、磁界の磁力線に従って複数の非球状磁性又は磁化可能粒子を配向(整列)させることにより形成され、高動的な視角に応じたループ状本体の印象が現れる。本明細書に記載の複数の非球状磁性又は磁化可能粒子の少なくとも一部が非球状光学可変磁性又は磁化可能顔料によって構成されている場合は、別の効果が得られる。非球状光学可変磁性又は磁化可能顔料の色は、顔料の平面に対する視角又は入射角に大きく依存することから、視角に応じた動的なループ状効果との組み合わせ効果が得られるためである。
図2A及び
図2Bに示すように、本発明に係る動的なループ状本体の印象を構成するOELの領域において磁気的に配向した非球状光学可変顔料を使用すると、明領域の視角コントラストが高くなり、書類機密及び装飾用途におけるループ状本体の視覚的影響が改善される。磁気的に配向した非球状光学可変変色顔料を用いて得られた光学可変顔料に見られる色変化に対して動的なループ形状を組み合わせると、肉眼で容易に確認できる色の差がループ状本体に生じる。このように、本発明の好適な一実施形態において、ループ状本体の光学的印象は少なくとも部分的に、磁気的に配向した非球状光学可変顔料によって構成されている。
【0043】
[042]非球状光学可変磁性又は磁化可能顔料の変色特性によってもたらされる公然のセキュリティ対策は、例えば可視化及び/又は検出が可能でありながら、製造及び/又はコピーは依然として困難であることから、本発明に係るOELを有するOEC(セキュリティ書類等)を人間の感覚のみで容易に検出、認識、及び/又はその考え得る偽造品から識別可能であるが、これに加えて、非球状光学可変磁性又は磁化可能顔料の変色特性をOEL認識用の機械可読ツールとして使用するようにしてもよい。したがって、粒子の光学(例えば、スペクトル)特性を解析する認証プロセスにおいては、秘密又は準秘密のセキュリティ対策として、非球状光学可変磁性又は磁化可能顔料の光学可変特性を同時に使用するようにしてもよい。
【0044】
[043]非球状光学可変磁性又は磁化可能顔料を使用すると、OELのセキュリティ書類用途におけるセキュリティ要素としての意義が高くなる。このような材料(すなわち、光学可変磁性又は磁化可能顔料)は、セキュリティ書類印刷業のためのものであって、一般には市販されていないためである。
【0045】
[044]上述の通り、複数の非球状磁性又は磁化可能粒子は、少なくとも一部が非球状光学可変磁性又は磁化可能顔料によって構成されているのが好ましい。これらは、磁性薄膜干渉顔料、磁性コレステリック液晶顔料、及びこれらの混合物から成る群から選択可能であるのがより好ましい。
【0046】
[045]磁性薄膜干渉顔料については、当業者に既知であって、例えば米国特許第4,838,648号、国際公開第2002/073250A2号パンフレット、欧州特許出願公開第686675号、国際公開第2003/000801A2号パンフレット、米国特許第6,838,166号、国際公開第2007/131833A1号パンフレット、及びこれらの関連文献に開示されている。これらは、その磁性により機械可読であるため、磁性薄膜干渉顔料を含むコーティング組成物は、例えば特定の磁気検出器により検出するようにしてもよい。したがって、磁性薄膜干渉顔料を含むコーティング組成物は、セキュリティ書類の秘密又は準秘密のセキュリティ要素(認証ツール)として使用可能である。
【0047】
[046]磁性薄膜干渉顔料は、5層ファブリペロー多層構造を有する顔料及び/又は6層ファブリペロー多層構造を有する顔料及び/又は7層ファブリペロー多層構造を有する顔料を含んでいるのが好ましい。好ましい5層ファブリペロー多層構造は、吸収体/誘電体/反射体/誘電体/吸収体の多層構造から成り、反射体及び/又は吸収体が磁性層である。好ましい6層ファブリペロー多層構造は、吸収体/誘電体/反射体/磁性体/誘電体/吸収体の多層構造から成る。好ましい7層ファブリペロー多層構造は、米国特許第4,838,648号等に開示されている吸収体/誘電体/反射体/磁性体/反射体/誘電体/吸収体の多層構造から成り、より好ましくは吸収体/誘電体/反射体/磁性体/反射体/誘電体/吸収体の7層ファブリペロー多層構造である。本明細書に記載の反射体層は、金属、金属合金、及びこれらの組み合わせから成る群から選択されることが好ましく、反射金属、反射金属合金、及びこれらの組み合わせから成る群から選択されることが好ましく、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、及びこれらの混合物から成る群から選択されることがさらに好ましく、アルミニウム(Al)であることがなお好ましい。誘電体層は、フッ化マグネシウム(MgF
2)、二酸化ケイ素(SiO
2)、及びこれらの混合物から成る群から独立して選択されることが好ましく、フッ化マグネシウム(MgF
2)であることがより好ましい。吸収体層は、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、金属合金、及びこれらの混合物から成る群から独立して選択されるのが好ましい。磁性体層は、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、及び/又はコバルト(Co)を含む合金、並びにこれらの混合物から成る群から選択されるのが好ましい。磁性薄膜干渉顔料は、Cr/MgF
2/Al/Ni/Al/MgF
2/Cr多層構造から成る吸収体/誘電体/反射体/磁性体/反射体/誘電体/吸収体の7層ファブリペロー多層構造を含むのが特に好ましい。
【0048】
[047]本明細書に記載の磁性薄膜干渉顔料は通常、ウェブ上への異なる所要層の真空蒸着によって製造される。例えばPVDによって所望数の層を蒸着した後は、適当な溶媒中での剥離層の溶解又はウェブからの材料の剥離によって層スタックをウェブから除去する。そして、このように得られた材料を粉砕することにより、研削、ミル加工、又は任意の適当な方法でさらに処理する必要がある薄片を得る。得られる製品は、縁部が破砕され、形状が不規則で、アスペクト比が異なる平らな薄片から成る。適当な磁性薄膜干渉顔料の作製に関する詳細については、例えば欧州特許出願公開第1710756号に見られるが、これを本明細書中に援用する。
【0049】
[048]光学可変特性を示す適当な磁性コレステリック液晶顔料としては、単層コレステリック液晶顔料及び多層コレステリック液晶顔料が挙げられるが、これらに限定されない。このような顔料については、例えば国際公開第2006/063926A1号パンフレット、米国特許第6,582,781号、及び米国特許第6,531,221号に開示されている。国際公開第2006/063926A1号パンフレットは、高い輝度及び変色特性のほか、磁化可能性等の特定の特性を有する単層及び当該単層から得られた顔料を開示している。この開示の単層及び当該単層の粉砕により得られた顔料は、3次元架橋したコレステリック液晶混合物及び磁性ナノ粒子を含む。米国特許第6,582,781号及び米国特許第6,410,130号は、配列がA
1/B/A
2の血小板状のコレステリック多層顔料を開示している。ここで、A
1及びA
2は、同じであってもよいし又は異なっていてもよく、それぞれ少なくとも1つのコレステリック層を含む。Bは、層A
1及びA
2から送られた光の全部又は一部を吸収するとともに磁気特性を付与する中間層である。米国特許第6,531,221号は、配列がA/Bであり、必要に応じてCを含む血小板状のコレステリック多層顔料を開示している。ここで、A及びCは、磁気特性を付与する顔料を含む吸収層であり、Bはコレステリック層である。
【0050】
[049]ループ状セキュリティ要素及び/又はOELには、非球状磁性又は磁化可能粒子(これらは、非球状光学可変磁性又は磁化可能顔料を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよいし、非球状光学可変磁性又は磁化可能顔料から成っていてもよいし、成っていなくてもよい)のほか、非磁性又は非磁化可能粒子がループ状セキュリティ要素の外側及び/又は内側に含まれていてもよい。これらの粒子は、当技術分野において既知の着色顔料であってもよく、光学可変特性を有していてもよいし、有していなくてもよい。さらに、これらの粒子は、球状又は非球状であってもよく、等方的又は非等方的な光反射性を有していてもよい。
【0051】
[050]OELにおいて、本明細書に記載の非球状磁性又は磁化可能粒子は、バインダ材料中に分散している。非球状磁性又は磁化可能粒子は、約5〜約40重量%、より好ましくは約10〜約30重量%の量だけ存在することが好ましい。この重量百分率は、バインダ材料、非球状磁性又は磁化可能粒子、及びOELのその他任意選択の成分を含むOELの総乾燥重量に基づく。
【0052】
[051]上述の通り、固化バインダ材料は、200〜2500nmの範囲、好ましくは200〜800nmの範囲、より好ましくは400〜700nmの範囲の1つ又は複数の波長の電磁放射線に対して、少なくとも一部が透明である。このように、バインダ材料は、少なくともその固化又は固体状態(以下では第2の状態とも称する)において、約200nm〜約2500nmの範囲の1つ又は複数の波長すなわち通常「光学スペクトル」と称し、電磁スペクトルの赤外、可視、及び紫外部分を含む波長範囲の電磁放射線に対して、少なくとも一部が透明であるため、固化又は固体状態にあるバインダ材料に含まれる粒子及びその配向に応じた反射性は、バインダ材料を通して確認可能である。
【0053】
[052]バインダ材料は、約400nm〜約700nmの可視スペクトルの範囲で少なくとも一部が透明であるのがより好ましい。OELの表面を通って入射する入射電磁放射線、例えば可視光は、OEL内に分散した粒子に到達し、そこで反射され、反射光が再度OELから離れて、所望の光学効果を生成可能である。入射放射線の波長を可視領域の外側、例えば近紫外領域に選択する場合、OELは、秘密のセキュリティ対策としても機能可能である。そして、この場合に選択した非可視波長を含む各照明条件下においてOELが生成する(完全な)光学効果を検出するには通常、技術的な手段が必要となる。この場合、OEL及び/又はこれに含まれるループ状領域は、入射放射線に含まれる可視スペクトルの外側の選択波長に応答して発光する発光性顔料を含むのが好ましい。電磁スペクトルの赤外、可視、及び紫外部分は、700〜2500nm、400〜700nm、及び200〜400nmの波長範囲にそれぞれ略対応する。
【0054】
[053]OELを基板上に設ける場合、少なくともバインダ材料及び非球状磁性又は磁化可能粒子を含むコーティング組成物は、例えば印刷、特に銅版凹版印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、又はローラ塗りにより処理することによって、紙基板又は後述するような基板等に塗布できる形態である必要がある。さらに、基板上へのコーティング組成物の塗布後は、磁界を印加することによって球状磁性又は磁化可能粒子を配向させ、磁力線に沿って粒子を整列させる。本明細書において、非球状磁性又は磁化可能粒子は、基板の平面に垂直な方向から基板を見ている観察者に対してループ状本体の光学的印象が構成されるように、基板上のコーティング組成物のループ状領域において配向させる。磁界の印加により粒子を配向/整列させるステップの後又は同時に、粒子の配向を固定する。このように特筆すべきこととして、コーティング組成物は第1の状態すなわち液体又はペースト状態を有する必要があり、十分に湿潤又は柔軟であるため、コーティング組成物中に分散した非球状磁性又は磁化可能粒子は、磁界への曝露により自由に移動、回転、及び/又は配向可能である。また、第2の固化(例えば、固体)状態も有する必要があり、この場合の非球状粒子は、それぞれの位置及び配向で固定又は停止される。
【0055】
[054]このような第1及び第2の状態は、ある種のコーティング組成物を用いることによって提供するのが好ましい。例えば、コーティング組成物の非球状磁性又は磁化可能粒子以外の成分は、インク又は機密用途、例えば紙幣印刷に用いられるようなコーティング組成物の形態であってもよい。
【0056】
[055]上述の第1及び第2の状態は、例えば温度変化又は電磁放射線への曝露等の刺激に反応して粘度が大幅に高くなる材料を用いて提供可能である。すなわち、流体のバインダ材料は、固化又は凝固によって、第2の状態すなわち固化又は固体状態に変換され、粒子が現在の位置及び配向に固定されて、バインダ材料内で移動も回転もできなくなる。
【0057】
[056]当業者には既知の通り、基板等の表面上に塗布するインク又はコーティング組成物に含まれる成分及び当該インク又はコーティング組成物の物性は、当該インク又はコーティング組成物の表面への移動に用いられるプロセスの性質によって決まる。その結果、本明細書に記載のインク又はコーティング組成物に含まれるバインダ材料は通常、当技術分野において既知の材料から選定されるとともに、当該インク又はコーティング組成物の塗布に用いられる被覆又は印刷プロセス及び選定された固化プロセスによって決まる。
【0058】
[057]一実施形態においては、ポリマー熱可塑性バインダ材料又は熱硬化性バインダ材料を採用してもよい。熱可塑性樹脂は、熱硬化性樹脂と異なり、加熱及び冷却によって、特性に重大な変化を来たすことなく、繰り返し溶融及び凝固可能である。熱可塑性樹脂又はポリマーの代表例としては、ポリアミド、ポリエステル、ポリアセタール、ポリオレフィン、スチレン系高分子、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリフェニレン系樹脂(例えば、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレン酸化物、ポリフェニレン硫化物)、ポリスルホン、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
[058]基板上へのコーティング組成物の塗布及び非球状磁性又は磁化可能粒子の配向の後は、コーティング組成物を固化(すなわち、固体又は固体様状態へ変換)させることによって、粒子の配向を固定する。
【0060】
[059]この固化は、例えばコーティング組成物がポリマーバインダ材料及び溶媒を含み、高温で塗布される場合の純粋な物理的性質とすることが可能である。そして、磁界の印加により高温で粒子を配向させ、溶媒を蒸発させた後、コーティング組成物を冷却する。これにより、コーティング組成物が固化するとともに、粒子の配向が固定される。
【0061】
[060]或いは、コーティング組成物の「固化」は、例えばセキュリティ書類の通常の使用で起こり得る単純な温度上昇(例えば、最大80℃)では不可逆の硬化による化学反応を伴うのが好ましい。用語「硬化」又は「硬化性」は、塗布したコーティング組成物中の少なくとも1つの成分が化学反応、架橋、又は重合によって開始材料よりも大きな分子量を有するポリマー材料に変化するプロセスを表す。硬化によって、3次元ポリマーネットワークが形成されるのが好ましい。
【0062】
[061]このような硬化は一般的に、(i)磁界発生装置の支持表面上又は基板表面への塗布後、及び(ii)磁性又は磁化可能粒子の配向の後又は同時に、コーティング組成物に外部刺激を印加することによって引き起こされる。したがって、コーティング組成物は、放射線硬化性組成物、熱乾燥組成物、酸化乾燥組成物、及びこれらの組み合わせから成る群から選択されるインク又はコーティング組成物であるのが好ましい。特に、コーティング組成物は、放射線硬化性組成物から成る群から選択されるインク又はコーティング組成物であるのが好ましい。
【0063】
[062]好ましい放射線硬化性組成物としては、紫外・可視光放射線(以下、紫外・可視光硬化性と称する)又は電子ビーム放射線(以下、EBと称する)によって硬化可能な組成物が挙げられる。放射線硬化性組成物は、当技術分野において既知であり、SITA Technology Limitedと提携したJohn Wiley & Sonsが1997年〜1998年に7巻を発行した「Chemistry & Technology of UV & EB Formulation for Coatings, Inks & Paints」シリーズ等の標準的な教科書に見られる。
【0064】
[063]本発明の特に好適な一実施形態によれば、本明細書に記載のインク又はコーティング組成物は、紫外・可視光硬化性組成物である。紫外・可視光硬化は、硬化プロセスを非常に高速化できるため、本発明並びに前記OELを含む論文及び文献に係る当該OELの作製時間が劇的に短くなって都合が良い。紫外・可視光硬化性組成物は、ラジカル硬化性化合物、カチオン硬化性化合物、及びこれらの混合物から成る群から選択される1つ又は複数の化合物を含むのが好ましい。カチオン硬化性化合物は、酸等のカチオン種を遊離させて硬化を開始することにより、モノマー及び/又はオリゴマーの反応及び/又は架橋によってコーティング組成物を固化させる1つ又は複数の光開始剤の放射による活性化を通常含むカチオン機構によって硬化する。ラジカル硬化性化合物は、1つ又は複数の光開始剤の放射によってラジカルを生成することにより重合を開始してコーティング組成物を固化させる活性化を通常含むフリーラジカル機構によって硬化する。
【0065】
[064]コーティング組成物は、磁性材料、発光材料、導電材料、赤外線吸収材料、並びにこれらの混合物から成る群から選択される1つ又は複数の機械可読材料をさらに含んでいてもよい。本明細書において、用語「機械可読材料」は、肉眼では確認できない少なくとも1つの特別な特性を示し、ある層に含めることによって、特定の専用機器の使用により当該層又は当該層を含む物品を認証する方法を提供可能な材料を表す。
【0066】
[065]コーティング組成物は、有機及び向き顔料及び有機色素から成る群から選択される1つ若しくは複数の着色成分並びに/又は1つ若しくは複数の添加剤をさらに含んでいてもよい。後者としては、粘度(例えば、溶媒、増粘剤、及び界面活性剤)、稠度(例えば、硬化防止剤、充填剤、及び可塑剤)、起泡性(例えば、消泡剤)、潤滑性(ワックス、オイル)、紫外線安定性(光増感剤及び光安定剤)、密着性、帯電防止特性、保存性(重合防止剤)等のコーティング組成物の物理的、流動学的、及び化学的パラメータの調整に用いられる化合物及び材料が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に記載の添加剤は、当該添加剤の寸法のうちの少なくとも1つが1〜1000nmの範囲である所謂ナノ材料の形態等、当技術分野において既知の量及び形態でコーティング組成物中に存在していてもよい。
【0067】
[066]磁界発生装置の支持表面又は基板表面上へのコーティング組成物の塗布の後又は同時に、所望の配向パターンに従って配向させるための外部磁界を用いて、非球状磁性又は磁化可能粒子を配向させる。これにより、永久磁性粒子は、その磁気軸が粒子位置における外部磁界の磁力線の方向と一致するように配向する。固有の永久磁界がない磁化可能粒子は、外部磁界によって、その最長寸法の方向が粒子位置における磁力線と一致するように配向する。以上は、磁性又は磁化可能性を有する層を含む層構造を粒子が有すべき場合にも同様に当てはまる。この場合、磁性層の最長軸又は磁化可能層の最長軸は、磁界の方向と一致する。
【0068】
[067]磁界の印加により、非球状磁性又は磁化可能粒子がコーティング組成物の層で配向することによって、OELの少なくとも一方の表面から視認できる動的なループ状本体の視覚的外観又は光学的印象が生成される(例えば、
図1及び
図2参照)。その結果、観察者は、OELの回転又は傾斜により動的な視覚上の運動効果を示す反射領域として動的なループ状本体を視認可能であり、当該ループ状本体は、OELのその他の部分とは異なる平面で移動するように見える。非球状磁性又は磁化可能粒子の配向の後又は同時に、例えば紫外・可視光硬化性コーティング組成物の場合は紫外・可視光の照射によって、コーティング組成物を固化させることにより配向を固定する。
【0069】
[068]入射光の所与の方向、例えば垂直において、配向が固定された粒子を含むOEL(L)の反射性が最も高い領域すなわち非球状磁性又は磁化可能粒子の鏡面反射領域は、視角(傾斜角)の関数として位置が変化する。OEL(L)を左側から見るとループ状明領域が位置1に見られ、OELを上から見るとループ状明領域が位置2に見られ、当該層を右側から見るとループ状明領域が位置3に見られる。このように、観察方向を左から右に変化させると、ループ状明領域も左から右に移動するように見える。また、観察方向を左から右に変化させるとループ状明領域が右から左に移動するように見える逆の効果を得ることも可能である。ループ状本体に存在する非球状磁性又は磁化可能粒子の曲率の符号(負(
図1B参照)又は正(
図1C参照))に応じて、動的なループ状要素は、OELに対する観察者の動きに関して、観察者に近づくように(
図1Cの正湾曲の場合)又は観察者から離れるように(
図1Bの負湾曲の場合)観察可能である。なお、
図1において、観察者の位置は、OELの上方である。このような動的な光学効果又は光学的印象は、OELが傾斜している場合に観察される。また、ループ形状であることから、OELが設けられている紙幣等の傾斜方向に関係なく、効果を観察することができる。例えば、OELを有する紙幣が左右及び上下に傾斜している場合に効果を観察することができる。
【0070】
[069]ループ状本体の光学的印象を構成するOELの領域(すなわち、OELのループ状領域)は、配向した非球状磁性又は磁化可能粒子を含むため、1つの中央領域を囲む少なくとも1つのループ状本体(閉ループ)の光学効果を構成する。この領域において、非球状磁性又は磁化可能粒子の最長軸の配向は、中央領域の中心からループ状領域の外側の空間まで延びる方向すなわちループ状領域の中央領域との境界からループ状領域の外側の領域との境界まで延びる方向の断面で見た場合に、仮想的な楕円又は円の負湾曲部又は正湾曲部の接線に従う。このループ状領域の断面図において、粒子の配向は、ループ状領域の略中央においてOELの平面と実質的に平行であり、このような断面図におけるループ状領域の境界に向かって、徐々に平行ではない(通常、実質的に垂直な)配向へと変化する。これを
図1に示すとともに、さらに
図14A及び
図14Bにも示す。なお、実質的に平行な配向からより垂直な配向への変化率は、一定であってもよいし(非球状粒子の配向が円の負湾曲部又は正湾曲部の接線に従う)、又はループ状領域の幅に沿って変化してもよい(非球状粒子の配向が楕円の負湾曲部又は正湾曲部の接線に従う)。
【0071】
[070]
図14Aには、支持体(S)上にループ状領域が設けられたOEL及びその内部における非球状磁性又は磁化可能粒子の配向の一実施形態を示している。上部には、OELの平面図として、ループ状本体の光学的印象を示す。下部には、中央領域の中心からループ状本体の光学的印象を構成するループ状領域の外側の空間まで延びる方向の断面を示す。詳細には、ループ状本体の光学効果を構成するループ状領域(1)が中央領域(2)を囲む。図の下部に示すように、中央領域(2)の中心(4)からループ状領域の外側の空間まで延びる方向の断面(3)で見た場合、非球状磁性又は磁化可能粒子(5)は、ループ状領域の中央領域との境界からループ状本体の外側の領域との境界までの領域(粒子(5)が存在する灰色の箱で示す)において、最長軸が仮想的な楕円又は円(
図14Aの円(6))の負湾曲分の接線に従うように配向している。当然のことながら、仮想的な楕円又は円の正湾曲分の接線に従う配向も可能である。
【0072】
[071]
図14Aには、ループ状本体の光学的印象を構成する領域中の非球状磁性又は磁化可能粒子のみを示している。ただし、以下では、中央領域(2)及びループ状本体の光学的印象を構成するループ状領域の外側にも、このような粒子が存在していてもよいことが明らかとなるであろう。
【0073】
[072]このような断面図において、仮想的な楕円又は円(6)の中心は、OELに垂直で、ループ状本体を規定する領域すなわちループ状領域の中央領域との境界からループ状本体の外側の領域との境界までの領域(粒子(5)を示す
図14aの灰色の箱によって表し、ループ状領域の「幅」とも称する)の中心周りから延びた線(すなわち、
図14Aの下部の垂直線)に沿って配置されているのが好ましい。さらに好適な一実施形態においては、この追加又は代替として、仮想的な円の直径又は仮想的な楕円の最長軸若しくは最短軸は、ループ状領域の幅と略同じであるため、ループ状領域の中央領域との境界及びループ状本体の外側の領域との境界においては、OELの平面と実質的に垂直な非球状粒子の配向が実現され、ループ状領域の幅の中心(すなわち、
図14Aの灰色の箱の中央)に向かって、徐々に平行な配向へと変化する。ループ状領域に囲まれた中央領域は、磁性又は磁化可能粒子を含まないようにすることができ、この場合、中央領域はOELの一部でなくてもよい。これは、印刷ステップにおいて、中央領域にコーティング組成物を提供しないことによって実現可能である。
【0074】
[073]或いは一方で、中央領域はOELの一部であり、基板にコーティング組成物を提供する際には省略されないのが好ましい。これにより、コーティング組成物を基板表面の大部分に塗布可能であることから、OELの製造を容易化可能である。このような場合は、中央領域にも非球状磁性又は磁化可能粒子が存在する。これらは、ランダムな配向が可能であって、特定の効果ではなく、小さな反射率を与える。ただし、中央領域に存在する非球状磁性又は磁化可能粒子は、光学効果層(OEL)の平面と実質的に垂直となって、OELの同じ側から照射した場合に、OELの平面と垂直な方向には本質的に反射性を与えないのが好ましい。
【0075】
[074]ループ状本体の光学的印象を構成するループ状領域の外側の非球状磁性又は磁化可能粒子については、OELの平面と実質的に垂直又はランダムに配向可能である。一実施形態においては、中央領域及びループ状領域の外側の両者の粒子(すなわち、ループ状領域の内側及び外側の粒子)がOELの平面と実質的に垂直となるように配向している。
【0076】
[075]
図1Bは、中央領域の中心からループ状領域の外側境界まで延びる方向のループ状領域の一部(すなわち、ループ状領域の幅)の断面を示している。本明細書において、OEL(L)中の非球状磁性又は磁化可能粒子(P)は、バインダ材料中に固定されており、仮想的な円の表面の負湾曲部の接線に従う。
図1Cは、同様の断面を示しており、OEL中の非球状磁性又は磁化可能粒子が仮想的な楕円(
図1及び
図14の円)の表面の正湾曲部の接線に従う。
【0077】
[076]
図1、
図14A、及び
図14Bにおいて、非球状磁性又は磁化可能粒子(P)は、OELの全体積にわたって分散しているのが好ましい一方、支持表面、好ましくは基板の表面に対する当該OEL内の配向について論じるには、粒子がすべて、OELの同一の平面断面内にあるものと仮定する。これらの非球状磁性又は磁化可能粒子はそれぞれ、最長軸を表す短い線で図示する。実際、
図14Aに示すように、当然のことながら、非球状磁性又は磁化可能粒子の一部は、OEL上から見た場合に、互いに一部又は全部が重なっていてもよい。
[077]OEL中の非球状磁性又は磁化可能粒子の総数は、所望の用途の関数として適当に選定するようにしてもよい。ただし、視認可能な効果を生じる表面被覆パターンを構成するには、OEL表面の1平方ミリメートルに対応する体積において、数千個の粒子、例えば約1,000〜10,000個の粒子が一般的に必要となる。
【0078】
[078]複数の非球状磁性又は磁化可能粒子は、併せて本発明のセキュリティ要素の光学効果を生じるものであるが、OEL中の粒子総数の全部又は一部にのみ対応していてもよい。例えば、ループ状本体の光学効果を生じる粒子は、従来型又は特殊な着色顔料粒子が考えられる、バインダ材料中に含まれる他の粒子と組み合わさってもよい。
【0079】
[079]
図2Bに示すように、本発明の特に好適な一実施形態によれば、本明細書に記載の光学効果層(OEL)は、ループ状領域に囲まれた中央領域の反射領域による所謂「突起」の光学効果をさらに与えてもよい。この「突起」は中央領域の一部を満たし、ループ状本体の内側境界と突起の外側境界との間には、間隙の光学的印象が存在しているのが好ましい。このような間隙の光学的印象は、ループ状領域の内側境界と突起の外側境界との間の領域における非球状磁性又は磁化可能粒子をOELの平面と実質的に垂直に配向させることによって実現可能である。
【0080】
[080]この突起は、ループ状領域に囲まれた中央領域に存在する半球等の3次元物体の印象を与える。この3次元物体は一見したところ、(粒子が負湾曲又は正湾曲のいずれに従うかに応じて、直立又は反対の鉢を見る場合と同様に)OEL表面から観察者まで延びていてもよい。又は、一見したところ、OEL表面から観察者の反対側に延びていてもよい。これらの場合、OELは、当該OELの平面と実質的に平行に配向した非球状磁性又は磁化可能粒子を中央領域に含み、反射領域を提供する。
【0081】
[081]このような配向の一実施形態を
図14Bに示す。
図14Bの上部に示すように、中央領域(2)は、突起で満たされている。ループ状本体(1)の光学効果を与えるループ状領域に囲まれた中央領域(2)の中心(4)から延びた線(3)に沿う断面図において、ループ状領域の配向は、
図14Aに関して上述したものと同じである。中央領域の突起を構成している領域において、非球状磁性又は磁化可能粒子(5)の配向は、仮想的な楕円又は円の正湾曲部又は負湾曲部の接線に従い、この楕円又は円は、断面に垂直(すなわち、
図14Bの垂直方向)であり、ループ状領域に囲まれた中央領域の中心(4)周りを通って延びるように配置された線に沿って中心を有するのが好ましい(
図14Bの下部には、突起の中心からループ状領域の外側の領域までの部分のみを示す)。さらに、仮想的な楕円の最長軸若しくは最短軸又は仮想的な円の直径は、非球状粒子の最長軸の配向が突起の中心においてOELの平面と実質的に平行であり、突起の境界においてOELの平面と実質的に垂直となるように、突起の直径と略同じであるのが好ましい。ここでも、このような断面図における配向の変化率は、一定であってもよいし(粒子の配向が円の接線に従う)、又は異なっていてもよい(粒子の配向が楕円に従う)。
【0082】
[082]このように、動的なループ状本体は、例えばループ状本体が円を構成している場合に半球の中実円であるか、又は三角形のループの場合に三角形基部を有し得る中央の効果画像要素(すなわち、「突起」)で満たされる。このような実施形態において、突起の外周形状は、ループ形状の形態に従うのが好ましい(すなわち、ループ状本体がリングの場合は、突起が中実円又は半球であり、ループ状本体が中空の三角形の場合は、突起が中実三角形又は三角錐である)。本発明の一実施形態によれば、突起の外周形状の少なくとも一部は、ループ状本体の形状に類似しており、このループ状本体はリングの形態を有し、突起は中実円又は半球の形状を有するのが好ましい。さらに、突起は、ループ状本体の内側境界により規定される領域の少なくとも約20%を占めるのが好ましく、少なくとも約30%を占めるのがより好ましく、少なくとも約50%を占めるのが最も好ましい。
【0083】
[083]突起及びループ状領域における非球状粒子の配向は、同じであるのが好ましい。すなわち、上記に説明するとともに
図14Bの下部に示す断面図において、ループ状本体及び突起の光学的印象を構成する両領域では、
図14Bに示すように、各領域の中心(中央領域の中心及びループ状領域の幅の中心)周りから延びた垂直線に中心を有する仮想的な円又は楕円の負湾曲部又は正湾曲部の接線に粒子が従う。
【0084】
[084]本明細書に記載の本発明の別の態様は、本明細書に記載の光学効果層(OEL)を製造する磁界発生装置であって、1つ又は複数の磁石を備え、非球状磁性又は磁化可能粒子及びバインダ材料を含むコーティング組成物を受容するか、又は非球状磁性又は磁化可能粒子及びバインダ材料を含むコーティング組成物を設けた基板を受容するように構成され、これにより、光学効果層(OEL)を形成するための磁性又は磁化可能粒子の前記配向を実現する、磁界発生装置に関する。流体状態にあって、固化前に粒子が回転可能/配向可能であるコーティング組成物内の非球状磁性又は磁化可能粒子は、上述の通り磁力線に沿って自己整列するため、得られる粒子それぞれの配向(すなわち、磁性粒子の場合の磁気軸又は磁化可能粒子の場合の最大寸法)は、少なくとも平均として、粒子位置における磁力線の局所的な方向と一致する。或いは、本明細書に記載の磁界発生装置を用いることにより、部分的なOELすなわち例えば1/2円、1/4円等のループ形状の1つ又は複数の部分を示すセキュリティ対策を提供するようにしてもよい。
【0085】
[085]例えば
図5に示すように、1つ又は複数の磁石(M)の磁極から所与の距離(d)には通常、複数の非球状磁性又は磁化可能粒子(P)を含む流体状態(固化前)のコーティング組成物の層(L)が上方に設けられた支持表面(S)が配置され、この装置の平均磁界に曝露されている。
【0086】
[086]このような磁界発生装置の支持表面は、当該磁界発生装置の一部を成す磁石の一部であってもよい。このような一実施形態において、コーティング組成物は、非球状磁性又は磁化可能粒子の配向を行う支持表面(磁石)に直接塗布可能である。配向の後又は同時に、バインダ材料は(例えば、放射線硬化性組成物の場合は照射により)第2の状態に変化して、磁界発生装置の支持表面から剥離可能な固化膜を構成する。これにより、膜又はシートの形態のOELが製造され、配向/整列した非球状粒子がバインダ材料(この場合は通常、透明ポリマー材料)中に固定される。
【0087】
[087]或いは、本発明の磁界発生装置の支持表面は、ポリマー材料等の非磁性材料で構成された薄板(通常、0.5mm厚未満、例えば0.1mm厚)又は例えばアルミニウム等の非磁性材料で構成された金属板により形成されている。
図5に示すように、支持表面を構成するこのような板は、磁界発生装置の1つ又は複数の磁石の上方に設けられている。そして、この板(支持表面)には、コーティング組成物を塗布可能であり、その後、コーティング組成物の配向及び固化によって、上述と同様にOELを形成する。
【0088】
[088]当然のことながら、上記いずれの実施形態(支持表面が磁石の一部であるか、又は磁石上の板により形成されている)においても、コーティング組成物を塗布する基板(例えば後述する紙又はその他任意の基板で構成)を支持表面上に設けた後、配向及び固化を行うことができる。なお、コーティング組成物は、コーティング組成物が塗布された基板を支持表面上に載置する前に基板上に設けることができ、又は、コーティング組成物は、基板を支持表面上に載置する時点で基板上に塗布することも可能である。いずれの場合も、層L(すなわち、OEL)は基板上に設けてもよいが、これについては
図5に示していない。
【0089】
[089]OELを基板上に設ける場合、基板は、上記板の代わりに支持表面としての役割を担うことも可能である。特に、基板の寸法が安定している場合は、例えば基板を受容する板を設ける必要はなく、支持板を介在させることなく磁石の上部又は上方に基板を設けるようにしてもよい。以下の説明において、用語「支持表面」は、特にそれに対する磁石の配向の点で、上記のような実施形態においては、中間板の設置なく基板表面により確保される位置又は平面に関する場合がある。
【0090】
[090]支持表面上又は基板(別個の支持表面(板又は磁石)上に設けられるか、又は支持表面の役割を担う)上にコーティング組成物を設けた後、粒子(P)は、磁界発生装置の磁力線(F)と一致する。
【0091】
[091]磁界発生装置の磁石上に設けられた板によって支持表面が構成されている場合、磁石の磁極の端部と粒子の配向によりOELを形成する側の支持表面(基板が支持表面の代わりとなる場合は、当該基板)の表面との間の距離(d)は通常、0(すなわち、支持表面が磁石の表面であり、基板を使用していない)〜約5mm、好ましくは約0.1〜約5mmの範囲であり、設計要求に従って、然るべき動的なループ状要素を生成するように選択される。支持表面は、好ましくは距離(d)と厚さが等しい支持板であってもよく、磁界発生装置の機械的に硬いアセンブリを構成可能である。
【0092】
[092]前記距離(d)に応じて、同じ磁界発生装置により見え方の異なる動的なループ状本体を生成するようにしてもよい。当然のことながら、支持表面上の粒子の配向に先立ってコーティング組成物を基板に塗布し、支持表面に対する基板の反対側にOELを形成する場合、特に基板が支持表面の役割を担う場合は、磁石とコーティング組成物との間の距離に基板の厚さも寄与する。ただし通常は、基板が非常に薄いため(紙幣用の紙基板の場合は、約0.1mm等)、この寄与は実際には無視してもよい。一方、例えば基板の厚さが0.2mmを超える場合等、基板の寄与を無視できない場合は、基板の厚さが距離dに寄与するものと考えられる。
【0093】
[093]本発明の一実施形態によれば、
図3に示すように、OELを製造する磁界発生装置は、板により構成された支持表面又は支持表面の役割を担う基板の下方に設けられ、支持表面に垂直なNS軸を有する棒状双極子磁石Mを備える。この装置は、棒状双極子磁石の下方に配設され、磁石の磁極の一方と接触した磁極片Yをさらに備える。磁極片は、高い透磁率、好ましくは約2〜約1,000,000N・A
−2(ニュートン/平方アンペア)、より好ましくは約5〜約50,000N・A
−2、さらに好ましくは約10〜約10,000N・A
−2の透磁率を有する材料で構成された構造を示す。また、
図5から導き出せるように、磁極片は、磁石で発生した磁界の指向に役立つ。本明細書に記載の磁極片は、鉄ヨーク(Y)を備えるか、又は鉄ヨーク(Y)から成っているのが好ましい。
【0094】
[094]本発明の別の実施形態によれば、
図4に示すように、OELを製造する磁界発生装置は、軸方向に磁化され(すなわち、支持表面又は基板表面(板の形態の支持表面を使用していない場合)に垂直なNS軸を有し)、支持表面の下方に配置された棒状双極子磁石(M)と、当該棒状双極子磁石から離隔して横方向に囲む磁極片(Y)、好ましくは鉄ヨークとを備える。なお、本実施形態においては、磁極片を横方向にのみ設けている。すなわち、磁石の上方又は下方には存在しない。
【0095】
[095]或いは、
図5に示すように、OELを製造する磁界発生装置は、軸方向に磁化され(すなわち、支持表面又は基板表面(板の形態の支持表面を使用していない場合)に垂直なNS軸を有し)、支持表面の下方に設けられた棒状双極子磁石と、当該棒状双極子磁の下方に配設されて横方向にも囲む磁極片とを備える。本実施形態において、磁極片は、当該磁極片と接触した磁石の下方にも存在する。このように、
図5の装置は、
図3及び
図4の磁極片を組み合わせたものである。
【0096】
[096]
図5は、軸方向に磁化され(すなわち、支持表面に垂直なNS軸を有し)、支持表面の下方に設けられた棒状双極子磁石(M)と、円形のU字状鉄ヨークから成る磁極片(Y)とを備えたこのような磁界発生装置の断面を示している。磁力線(F)は、棒状双極子磁石(M)のNS軸の各側で下方に曲がり、円弧状の磁力線部分を形成している。この装置及び空間中の磁石(M)の3次元場は、中心垂直軸(z)に関して回転対称である。磁力線から推論できるように、非球状磁性又は磁化可能粒子を含むコーティング組成物が支持表面上(又は、薄い基板上)に直接配置され、距離dを
図5のように選定している場合、
図5に示す装置は、磁石の縁部と磁極片との間の空間に対応したOELの領域において、OELの表面(すなわち、装置の支持表面)に対して非球状磁性又は磁化可能粒子を実質的に平行に配向させる。磁石の直上及び磁極片の直上の空間に対応したOELの領域において、非球状磁性又は磁化可能粒子は、OELの表面に対して実質的に垂直な配向となる。したがって、
図5の装置は、「突起」で満たされておらず、反射性がほとんど又は全く観察されない中央領域を囲むループ状本体(リング)を形成する。
【0097】
[097]例えば
図6に示すように、本発明の別の実施形態によれば、本明細書に記載のOELを製造する磁界発生装置は、支持表面の下方の双極子磁石であって、上(支持表面側)から見た場合に中央領域から周辺に向かうNS軸を有するループ状本体の形態(
図6Aのリング、
図6Bの三角形、
図6Cのn角形、及び
図6Dの五角形)である、双極子磁石を備える。
図6は、磁気的NS軸が中心から周辺に向かうループ状本体(中空本体)であるこのような双極子磁石、すなわち言い換えるなら、ループ状本体(中空本体)であり、半径方向に磁化された双極子磁石の上面図である。
【0098】
[098]本発明の別の実施形態によれば、本明細書に記載のOELを製造する磁界発生装置は、支持表面(又は、板の形態の支持表面を使用していない場合は基板表面)の下方に配置された3つ以上の棒状双極子磁石であって、3つ以上の棒状双極子磁石のすべてが対称中心周りに固定して配置され、3つ以上の棒状双極子磁石のそれぞれが、i)基板又は支持表面と実質的に平行な磁気的NS軸を有し、ii)対称中心から実質的に放射状に延びるように磁気的NS軸が整列し、iii)3つ以上の棒状双極子磁石のNS方向がすべて対称中心側又はその反対側を向く、3つ以上の棒状双極子磁石を備える。
図7は、一実施形態に係る関連する磁気配向装置の上面図であって、磁石アセンブリの中心点(対称中心)から半径方向に磁気軸が整列した状態(すなわち、延伸したNS軸が磁石アセンブリの中心点で本質的に重なり合う状態)でn個の磁石(
図7ではn=8)が平面に配置されている。本発明に係る装置での使用の場合、磁気軸は、支持表面と平行である。このように配置されたn個の磁石を用いることによって、n角形(例えば、
図7の正八角形)の形態のループ形状を生成可能である。
【0099】
[099]
図3〜
図7に例示したOELを製造する磁界発生装置において、ループ状本体は、OELのループ状領域における(固定)ループ状磁界発生装置の磁界に従って磁化可能粒子又は磁性粒子を配向させることにより形成される。言い換えるなら、セキュリティ要素におけるループ状本体の光学効果は、ループ状本体の光学的印象を構成する位置において支持表面又は基板表面(基板を使用の場合)と平行の延びる永久(固定)磁界を有する磁界発生装置の磁力線に従って、支持表面と本質的に平行且つ最終OELの平面と平行に粒子を配向させることにより得られる。このように、OELに垂直であり、中央領域の中心から延びた断面において、非球状磁性又は磁化可能粒子の配向は、ループ状領域の「幅」の中心部において、OELの平面と実質的に平行であり、ループ状本体の光学的印象を構成するループ状領域に存在する配向粒子の最長軸は、このような断面図におけるループ状領域の幅の境界において、粒子の配向が平行ではなくなる(通常、実質的に垂直となる)ように、仮想的な楕円又は円の負湾曲部又は正湾曲部の接線に従う。したがって、断面図においては、中央領域の中心からループ状領域の外側の領域まで延びた線に沿って、配向が徐々に変化する。この断面図において、ループ状本体の光学効果を構成するループ状領域の幅全体にわたり、(非球状磁性又は磁化可能粒子の配向が仮想的な円の負湾曲部又は正湾曲部の接線に従う場合のように)配向の変化率は一定である必要はなく、ループ状本体の光学効果を構成する領域の幅全体にわたって変化可能である。粒子の配向の変化率が一定でない場合、粒子の配向は、仮想的な楕円の負湾曲部又は正湾曲部に従う。
【0100】
[0100]このため、
図7に示す装置において、ループ状領域のループ形状は通常、磁界発生装置の1つ又は複数の磁石の形態又は配置のループ形状に対応する。例えば、
図6において、磁石のN極及びS極を接続する磁力線は、リング形態のループ状磁石の上方及び下方の領域において平行に延びる。したがって、このような場合、ループ状本体の光学効果を構成するループ状領域における非球状磁性又は磁化可能粒子の配向は単に、これらの場合における磁界発生装置の1つ又は複数の磁石の磁気軸に平行な支持表面又はその上に設けられた基板上に直接、第1の状態のコーティング組成物を設けることによって実現可能であり、粒子の所望の配向を得るのに、磁界発生装置の磁石に対してコーティング組成物を相対的に移動させる必要はない。
【0101】
[0101]ただし、OELのループ状領域における非球状磁性又は磁化可能粒子の所要の配向は、このような固定磁界を有する磁界発生装置のみにより実現可能なわけではない。その代わりに、第1の状態のコーティング組成物が(直接又は基板上に)設けられた支持表面又は基板表面(例えば、板の形態の支持表面を使用していない場合)に対する磁界発生装置の1つ又は複数の磁石のループ状の移動を採用することも可能である。さらに、上述の「固定」装置とは異なり、このような磁界発生装置は、「突起」の印象となるループ状領域に囲まれた中央領域の内側の粒子の配向が実現されるように構成可能である。突起を囲むループ状本体又は突起を囲まないループ状本体を形成するこのような装置については、以下に説明する。
【0102】
[0102]本発明の一実施形態によれば、本明細書に記載のOELを製造する磁界発生装置は、支持表面(又は、板の形態の支持表面を使用していない場合は基板表面)の下方に1つ又は複数の棒状双極子磁石を備える。この1つ又は複数の磁石は、支持表面と実質的に垂直な回転軸の周りに回転可能に設けられており、支持表面/基板と実質的に平行且つ回転軸に対して実質的に放射状のNS軸を有する。磁界発生装置が2つ以上の磁石を備える場合、そのNS方向は、回転軸に関して同じ向き(すなわち、すべての磁石のNS方向が
図8のように回転軸側又はその反対側を向く)とするか、又は
図9のように、回転軸に関して異なる向きとすることができる。ここで、回転軸に関して「同じ」向き又は方向とは、磁石のNS方向の向きが回転軸に関して対称であることを意味する。
【0103】
[0103]任意選択として、機械的なバランスのため、回転の慣性モーメントが類似する2つ以上の棒状双極子磁石を回転軸に関して対称(例えば、反対)に設けることも可能である。例えば、
図8に示すように、回転軸(z)に関して、サイズが同様又は同じである磁石を対称に使用可能である。回転軸に関して、第2の磁石のNS方向の向きが第1の棒状双極子磁石のNS方向と同じである場合(すなわち、回転軸側又はその反対側を向く場合)、回転軸周りの回転によって、支持表面上のOEL(L)には、これらの磁石により同じ磁化パターンが生成される。
【0104】
[0104]磁界発生装置が2つ以上の磁石を備える場合は、略同じサイズを有するとともに、回転軸から略同じ距離に設けられているのが特に好ましい。この場合、回転軸周りに回転する場合の支持表面下方における磁石の経路が略同じであることから、OELのループ状領域における非球状磁性又は磁化可能粒子の所望の配向は、第1の状態のコーティング組成物を磁界発生装置の支持表面上に設け、回転軸周りに磁石を回転させることによって実現可能である。
【0105】
[0105]
図8は、機械軸(z)周りの平面で回転可能な2つの棒状双極子磁石(M)を備えたこのような磁界発生装置の一例を示している。棒状双極子磁石は、i)前記平面にNS軸を有し、当該NS軸は通常、ii)磁界発生装置の支持表面と実質的に平行である。
図8において、磁石は、iii)回転軸(z)に対して実質的に放射状の磁気軸を有し、iv)NS方向が回転軸に関して同じ方向を向く(すなわち、NS方向は、両方が回転軸側(内側)を向き、当該回転軸に関して対称である)。さらに、v)磁石は、略同じサイズを有するとともに、回転軸から略同じ距離において、実質的に対称に設けられている。棒状双極子磁石で発生する平均磁界は、前記軸(z)に関して回転対称である。
図8の磁力線から分かるように、回転軸周りの磁石の回転により、この装置は、時間に依存した適当な磁界を形成することによって、突起を含まないリングの形態のループ状要素を形成する。
【0106】
[0106]なお、
図8の2つの磁石それぞれのNS方向が反転している場合(各磁石のNS方向が回転軸と反対側を向く場合)は、ループ状領域における粒子の配向が同じとなる。したがって、これが、本発明の磁界発生装置の別の実施形態である。
【0107】
[0107]1つ又は複数の磁石の回転軸からの距離が(例えば、磁石と回転軸を構成するシャフトとの間に単一の棒を設けることにより)固定されるように磁界発生装置が構成され、さらに磁石が2つ以上である場合に、これらの磁石が略同じサイズを有するとともに回転軸から略同じ距離に設けられている場合、ループ状本体は必然的に、リングの形状となる(磁界発生装置の支持表面の下方における磁石の経路が円に従うため、ループ状領域の形状が円となるからである)。ただし、長円系、角丸の長方形、骨のような形状等、リング以外のループ状本体を構成するのが望ましい場合は、支持表面の下方における磁石の経路が対応するループ状領域の所望の形状と類似するように装置を構成することによって実現可能である。この場合は、例えば回転の中心となるカムシャフト型の構造を提供することによって、磁石の回転軸からの距離が回転軸周りの回転により変化するように装置を構成するのが望ましい場合がある。
【0108】
[0108]回転軸周りに回転可能に設けられた磁石を有する上述の磁界発生装置は、OELのループ状領域において磁性又は磁化可能粒子を配向させることによりループ状本体の光学効果を生じるように設計されており、粒子の少なくとも一部は、OELの平面と本質的に平行に配向しているため、OELの平面と垂直な方向から照射した場合に(又は、拡散光の下で)、この方向に反射性を与えるほか、上記説明の通り、仮想的な円又は楕円の負湾曲部又は正湾曲部の接線に従う。これらの装置により設けられたループ状領域は、1つの中央領域を囲み、当該中央領域は非球状磁性又は磁化可能粒子を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。粒子は、前記中央領域に含まれている場合は通常、上述の通り、(OELの平面と垂直な方向から照射した場合に、この方向に光の反射が全く又はほとんど起こらないように)OELの平面と垂直になるように配向し、「突起」を構成しない。
【0109】
[0109]ただし、好適な一態様において、本発明は、ループ状領域に囲まれた中央領域内に「突起」をさらに含むOELを製造する磁界発生装置にも関する。このような装置は、非球状磁性又は磁化可能粒子及びバインダ材料を含む第1の状態のコーティング組成物を(直接又は基板上に)受容する支持表面を備え、これにより、前記光学効果層を製造する。本明細書に記載の突起をさらに含むOELを製造する磁界発生装置は、支持表面の下方に2つ以上の磁石(例えば、2つ、3つ、4つ以上の磁石)を備える。これらは、支持表面と実質的に垂直な回転軸の周りに回転可能である。
【0110】
[0110]本発明のこのような一実施形態によれば、突起をさらに含むOELを製造する磁界発生装置は、一対又は複数対の棒状双極子磁石を備える。この一対又は複数対の磁石を構成する磁石は、支持表面の下方に設けられるとともに、支持表面と実質的に垂直な回転軸の周りに回転可能に設けられている。一対又は複数対の磁石はそれぞれ、回転軸から離間して配置された2つの棒状双極子磁石のアセンブリから成る。所与の対の棒状双極子磁石は、回転軸に対して放射状のNS軸を有し、さらに、そのNS方向が回転軸に関して非対称であり、回転軸に関して異なる方向を向く(一方が回転軸側を向き、他方がその反対側を向く)。一対の磁石を構成する磁石は、回転軸から略同じ距離に設けられている。
図9に示すように、磁界発生装置の一対又は複数対の棒状双極子磁石(M)は、i)支持表面(
図9においては板で構成)と実質的に平行な磁気軸と、ii)回転軸(z)に対して実質的に放射状の磁気軸と、iii)回転軸に関して異なる向きのNS方向(
図9の右側の磁石は回転軸側、
図9の左側の磁石はその反対側を向く)とを有する。
【0111】
[0111]本発明の別の実施形態によれば、突起をさらに含むOELを製造する磁界発生装置は、支持表面の役割を担う(すなわち、支持表面の代わりとなる)板又は基板により構成された支持表面の下方に配置され、支持表面と実質的に垂直な回転軸の周りに回転可能な一対又は複数対の棒状双極子磁石を備える。この一対又は複数対はそれぞれ、好ましくは回転軸から略同じ距離において、回転軸から離間して配置された2つの棒状双極子磁石のアセンブリから成る。双極子磁石は、回転軸を中心として互いに正反対に設けられているのが好ましい。さらに、
図10に示すように、突起を含まないループ状本体の光学効果を構成する上記実施形態とは異なり、突起を囲むループ状本体を構成する装置の本実施形態において、棒状双極子磁石の磁気軸は、支持表面又は基板と実質的に平行ではなく、支持表面又は基板と実質的に垂直に整列している。
【0112】
[0112]このような装置の好適な一実施形態を
図10に示す。
図10に示すように、磁界発生装置の一対又は複数対の棒状双極子磁石(M)は、i)支持表面又は基板と実質的に垂直なNS軸と、ii)回転軸(z)と実質的に平行なNS軸と、iii)反対の磁気的NS方向(
図10においては一方が上向き、もう一方が下向き)とを有する。
【0113】
[0113]
図11に示すように、本発明の突起をさらに含むOELを形成する磁界発生装置の別の実施形態によれば、この装置は、支持表面の役割を担う板又は基板により構成された支持表面の下方に設けられ、支持表面と実質的に垂直な回転軸の周りに回転可能な3つの棒状双極子磁石のアセンブリを備える。3つの磁石それぞれの磁気軸は、支持表面と実質的に平行である。3つの棒状双極子磁石のうちの2つは、好ましくは回転軸から略同じ距離において、回転軸周りの反対側に配置され、回転軸に対して実質的に放射状のNS軸を有し、NS方向が同一である(すなわち、一方が回転軸側、もう一方がその反対側を向き、当該回転軸に関して反対又は非対称である)。第3の棒状双極子磁石は、回転軸からある距離に設けられたその他2つの磁石の間に設けられており、回転軸上に設けられているのが好ましい(すなわち、回転軸が第3の磁石、好ましくはその中心を通って延びる)。3つの磁石はそれぞれ、支持表面と実質的に平行なNS軸を有し、ii)回転軸から離隔した2つの磁石は、回転軸に対して実質的に放射状のNS軸を有し、iii)回転軸から離隔した2つの棒状双極子磁石のNS方向は、非対称(すなわち、回転軸に関して反対)であり、iv)回転軸上の第3の棒状双極子磁石のNS方向は、離隔した2つの棒状双極子磁石のNS方向と反対である(
図11参照)。
【0114】
[0114]
図11に示すように、3つの棒状双極子磁石は、支持表面と実質的に平行な磁気軸を有し、回転軸に対して実質的に放射状且つ支持表面と実質的に平行な磁気軸を有し、回転軸から離間して設けられた2つの棒状双極子磁石の磁気的NS方向は、回転軸に関して反対である(すなわち、NS方向が非対称である)。また、第3の棒状双極子磁石は、回転軸上に設けられ、そのNS方向は、NS方向が回転軸側を向く棒状双極子磁石のNS方向と反対の方向を向く。
【0115】
[0115]本明細書に記載の固定磁界発生装置と同様に、本明細書に記載の回転可能な磁界発生装置は、1つ又は複数の付加的な磁極片をさらに備えていてもよい。
【0116】
[0116]当業者には既知の通り、本明細書に記載の回転可能な磁界発生装置に用いる1分当たりの回転速度及び回転数は、本明細書に記載の通り、すなわち仮想的な円の負湾曲部又は正湾曲部の接線に従うように非球状磁性又は磁化可能粒子を配向させるために調整される。
【0117】
[0117]本明細書に記載の磁界発生装置の磁石は、例えばアルニコ合金、バリウム若しくはストロンチウムヘキサフェライト/コバルト合金、又はネオジム/鉄/ホウ素合金等の希土類−鉄合金等、任意の永久磁石(硬質磁性)材料を含むか、又はそのような材料から成っていてもよい。ただし、ストロンチウムヘキサフェライト(SrFe
12O
19)又はネオジム/鉄/ホウ素(Nd
2Fe
14B)粉末等の永久磁石充填剤をプラスチック系又はゴム系マトリクスに含む加工が容易な永久磁石複合材が特に好ましい。
【0118】
[0118]また、本明細書には、本明細書に記載のOELを製造する磁界発生装置を備え、当該磁界発生装置が回転印刷機の一部として印刷シリンダ上に適合及び/又は挿入された回転印刷アセンブリを記載する。このような場合、磁界発生装置は、相応に設計され、回転ユニットの円筒表面に適応されることによって、インプリント表面と滑らかに接触するようになっている。
【0119】
[0119]また、本明細書には、本明細書に記載のOELを製造するプロセスであって、
a)バインダ材料及び本明細書に記載の複数の非球状磁性又は磁化可能粒子を含む第1の(流体)状態のコーティング組成物を支持表面又は好ましくは支持表面上に設けられた基板若しくは支持表面の役割を担う基板上に塗布するステップと、
b)第1の状態のコーティング組成物を磁界発生装置の磁界に曝露することによって、コーティング組成物内の非球状磁性又は磁化可能粒子を配向させるステップと、
c)コーティング組成物を固化させて第2の状態とすることにより、非球状磁性又は磁化可能粒子を所定の位置及び向きに固定するステップと、
を含む、プロセスを記載する。
【0120】
[0120]塗布ステップa)は、好ましくは銅版凹版印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、及びローラ塗りから成る群から選択され、より好ましくはスクリーン印刷、グラビア印刷、及びフレキソ印刷から成る群から選択される印刷プロセスである。これらのプロセスは、当業者には周知であって、例えばPrinting Technology,J.M.Adams and P.A.Dolin,Delmar Thomson Learning,5
th Editionに記載されている。
【0121】
[0121]本明細書に記載の複数の非球状磁性又は磁化可能粒子を含むコーティング組成物は、当該非球状磁性又は磁化可能粒子が移動及び回転できるように十分に湿潤又は柔軟な状態で(すなわち、コーティング組成物が第1の状態で)、磁界に曝露することにより、粒子の配向を実現する。非球状磁性又は磁化可能粒子を磁気的に配向させるステップは、塗布したコーティング組成物を「湿潤」な状態(すなわち、液体且つあまり粘性のない状態、すなわち第1の状態)で、本明細書に記載の磁界発生装置の支持表面又はその上方に生成された既定の磁界に曝露することにより、磁界の磁力線に沿って非球状磁性又は磁化可能粒子を配向させ、ループ状の配向パターンを形成するサブステップを含む。このサブステップにおいて、コーティング組成物は、磁界発生装置の支持表面と十分に接近又は接触している。
【0122】
[0122]磁界発生装置の支持表面にコーティング組成物を近づける場合且つ基板の一方側にOELを形成する場合、基板のコーティング組成物を有する側は、装置の1つ又は複数の磁石が設けられた側に対向していてもよく、又は、基板のコーティング組成物を有さない側が、磁石が設けられた側に対向していてもよい。コーティング組成物を基板の一方の表面のみに塗布する場合又は両側に塗布する場合で、磁石が設けられた側と対向するようにコーティング組成物の塗布側を配向させる場合は、支持表面が磁石の一部であるか、又は板で構成されているのであれば、支持表面と直接接触させない(装置の支持表面を構成する磁石又は板に対して基板を十分に近づけるのみで、接触はさせない)のが好ましい。基板が支持表面の役割を担う場合は、基板と磁石との間の距離dに対応した間隙を残すのが好ましい。
【0123】
[0123]特筆すべきこととして、コーティング組成物は実際のところ、磁界発生装置の支持表面に接触させてもよい。或いは、わずかな空隙又は中間分離層が設けられていてもよい。別の好適な選択肢として、この方法は、コーティング組成物を有さない基板表面が1つ又は複数の磁石と直接接触するように(すなわち、1つ又は複数の磁石が支持表面を構成するように)実行してもよい。
【0124】
[0124]ステップa)の前に、必要に応じて下塗層を基板に塗布するようにしてもよい。これにより、磁気転写粒子配向画像の品質が向上するか、又は密着性が促進される可能性がある。このような下塗層の例は、国際公開第2010/058026A2号パンフレットに見られる。
【0125】
[0125]バインダ材料及び複数の非球状磁性又は磁化可能粒子を含むコーティング組成物を磁界に曝露するステップ(ステップb))は、ステップa)と同時に実行するか、又はステップa)の後に実行することができる。すなわち、ステップa)及びステップb)は、同時に実行してもよいし、又は続けて実行してもよい。
【0126】
[0126]本明細書に記載のOELを製造するプロセスは、ステップ(b)と同時又はステップ(b)の後に、コーティング組成物を固化させて非球状磁性又は磁化可能粒子を所定の位置及び向きに固定することにより、コーティング組成物を第2の状態に移行させるステップ(ステップc))を含む。この固定により、固体のコーティング又は層が形成される。用語「固化」は、基板表面に強固に密着する本質的に固体の材料が形成されるように、任意選択として存在する架橋剤、任意選択として存在する重合開始剤、及び任意選択として存在する別の添加剤等、塗布したコーティング組成物中のバインダ成分の乾燥若しくは凝固、反応、硬化、架橋、又は重合を含むプロセスを表す。上述の通り、固化ステップ(ステップc))は、複数の非球状磁性又は磁化可能粒子も含むコーティング組成物に含まれるバインダ材料に応じて、異なる手段又はプロセスにより実行してもよい。
【0127】
[0127]固化ステップは一般的に、支持表面に密着する実質的に固体の材料が形成されるように、コーティング組成物の粘度を高くする任意のステップであってもよい。また、固化ステップは、溶媒等の揮発性成分の蒸発及び/又は水の蒸発に基づく物理的プロセス(すなわち、物理的乾燥)を伴っていてもよい。本明細書においては、高温空気、赤外線、又は高温空気と赤外線の組み合わせを用いてもよい。或いは、固化ステップは、コーティング組成物に含まれるバインダ並びに任意選択としての開始剤化合物及び/又は任意選択としての架橋化合物の硬化、重合、又は架橋等の化学反応を含んでいてもよい。このような化学反応は、物理的固化プロセスに関する上記概説の通り、加熱又は赤外線照射によって開始してもよいが、紫外・可視光放射線硬化(以下、紫外・可視光硬化と称する)及び電子ビーム放射線硬化(電子ビーム硬化)、酸化重合(通常、酸素とコバルト含有及びマンガン含有触媒等の1つ又は複数の触媒との協調作用により引き起こされる酸化細網化)、架橋反応、又はこれらの任意の組み合わせ等、或いはこれらに限定されない放射機構による化学反応の開始を含んでいるのが好ましい。
【0128】
[0128]放射線硬化が特に好ましく、紫外・可視光放射線硬化がさらに好ましい。これらの技術によれば、硬化プロセスが非常に高速となって、本明細書に記載のOELを備えた任意の物品の作製時間が劇的に短縮されて都合が良いためである。さらに、放射線硬化には、硬化放射線への曝露によりコーティング組成物の粘度を瞬時に高くすることによって、粒子のさらなる移動を最小限に抑えられるという利点がある。その結果、磁気的配向ステップ後の如何なる情報の損失も本質的に回避可能となる。特に、電磁スペクトルの紫外又は青色部分の波長成分(通常、300nm〜550nm、より好ましくは380nm〜420nmの「紫外・可視光硬化」)を有する化学光の影響下での光重合による放射線硬化が好ましい。紫外・可視光硬化用機器は、化学線源として、高出力発光ダイオード(LED)ランプ又は中圧水銀アーク(MPMA)又は金属蒸気アークランプ等のアーク放電ランプを備えていてもよい。固化ステップ(ステップc))は、ステップb)と同時又はステップb)の後に実行可能である。ただし、如何なる脱配向及び情報損失も回避するため、ステップb)の終了からステップc)の開始までの時間は、相対的に短くするのが好ましい。通常、ステップb)の終了とステップc)の開始との時間は、1分未満、好ましくは20秒未満、より好ましくは5秒未満、さらに好ましくは1秒未満である。特に、配向ステップb)の終了と固化ステップc)の開始との間には、本質的に時間差がないのが好ましい。すなわち、ステップc)がステップb)の直後に始まるか、又はステップb)の進行中に開始しているのが好ましい。
【0129】
[0129]上記概説の通り、ステップ(a)(支持表面又は好ましくは支持表面上に設けられた基板表面若しくは支持表面の役割を担う基板表面上への塗布)は、ステップb)と同時又はステップb)(磁界による粒子の配向)の前に実行可能であり、また、ステップc)(固化)は、ステップb)と同時又はステップb)(磁界による粒子の配向)の後に実行可能である。これは、特定の種類の機器に関しても可能となる場合があるものの、通常、3つのステップa)、b)、及びc)がすべて同時に行われることはない。また、ステップa)及びb)並びにステップb)及びc)は、部分的に同時に実行してもよい(すなわち、例えば固化ステップc)が配向ステップb)の終わりに開始となるように、各ステップの実行時間が部分的に重なっていてもよい)。
【0130】
[0130]セキュリティ書類の汚染耐性又は耐化学性及び清浄度ひいては流通寿命を向上させる目的又はその美的外観(例えば、光沢)を改良する目的で、OEL上には、1つ又は複数の保護層を塗布するようにしてもよい。1つ又は複数の保護層が存在する場合、当該層は通常、保護ワニスで構成されている。これらは、透明であってもよいし、わずかに着色又は染色されていてもよく、光沢度が高くてもよいし低くてもよい。保護ワニスは、放射線硬化性組成物、熱乾燥組成物、又はこれらの任意の組み合わせであってもよい。1つ又は複数の保護層は、好ましくは放射線硬化性組成物、より好ましくは紫外・可視光硬化性組成物である。保護層は、ステップc)におけるOELの形成後に塗布するようにしてもよい。
【0131】
[0131]上記プロセスによれば、1つの中央領域を囲む閉ループ状本体の光学効果を与えるOELを有する基板であって、閉塞状本体を構成するループ状領域に存在する非球状磁性又は磁化可能粒子を含むコーティング組成物の層の下方又は上方のいずれから磁界発生装置の磁界が印加されるかに応じて、非球状磁性又は磁化可能粒子が、仮想的な楕円又は円の負湾曲部(
図1B参照)又は正湾曲部(
図1C参照)の接線に従う、基板を得ることが可能である。このような配向は、
図1に示すように、非球状磁性又は磁化可能粒子の最長軸の配向が光学効果層の平面にある仮想的な半トロイド状本体の表面に従うように表してもよい。さらに、使用する機器の種類に応じて、ループ状本体に囲まれた中央領域には、所謂「突起」すなわち基板表面と実質的に平行に配向した磁性又は磁化可能粒子を含む領域を含むことが可能である。このような実施形態において、配向は、中央領域の中心からループ状本体の外側の領域まで延びた断面から見た場合に負湾曲又は正湾曲に従い、周囲のループ状本体に向かって変化する。ループ状本体と「突起」との間には、粒子が基板表面と実質的に垂直に配向することにより、光反射を全く又はほとんど示さない領域が存在するのが好ましい。
【0132】
[0132]これは特に、OELがインク、例えばセキュリティインク又はその他何らかのコーティング材料で構成され、例えば上述した印刷によって、セキュリティ書類等の基板上に永久に配設される用途において有用である。
【0133】
[0133]上述のプロセスにおいて、OELを基板上に設ける場合、当該OELは、基板上に直接設けて、永久に残るようにしてもよい(例えば、紙幣用途の場合)。ただし、本発明の別の実施形態においては、製造のための暫定的な基板上にOELを設け、後でOELを取り外すようにしてもよい。これにより、特にバインダ材料が流体状態のままである場合に、例えばOELの製造が容易化される可能性がある。その後、コーティング組成物を固化させてOELを製造したら、暫定基板をOELから取り外してもよい。当然のことながら、このような場合、コーティング組成物は、例えば固化によりプラスチック状又はシート状の材料が形成される場合に、固化ステップ後に物理的にまとまった形態である必要がある。これにより、OELそれ自体から成る(すなわち、非等方的な反射性を有する配向磁性又は磁化可能粒子と、当該粒子をそれぞれの配向に固定するとともにプラスチック膜等の膜状材料を形成する固化バインダ成分と、任意選択としての別の成分とから本質的に成る)膜状透明及び/又は半透明材料を提供可能である。
【0134】
[0134]或いは、別の実施形態において、基板は、OELを設ける側と反対側に接着層を備えていてもよい。又は、好ましくは固化ステップの完了後に、OELと同じ側でOEL上に接着層を設けることも可能である。このような場合は、接着層及びOELを含む接着ラベルが形成される。このようなラベルは、機械類や大きな労力を伴う印刷等のプロセスなく、あらゆる種類の書類又はその他の物品に取り付けるようにしてもよい。
【0135】
[0135]一実施形態によれば、OECは、独立した転写ステップにおいて書類又は物品に適用可能な転写箔の形態で製造される。この目的のため、基板には剥離コーティングを設け、その上において、本明細書に記載の通り、OELを製造している。このように製造されたOEL上には、1つ又は複数の接着層を塗布するようにしてもよい。
【0136】
[0136]本明細書に記載の基板は、紙又はセルロース、紙含有材料、ガラス、セラミック、プラスチック、及びポリマー等のその他繊維材料、ガラス、複合材、並びにこれらの混合物又は組み合わせから成る群から選択するのが好ましい。代表的な紙、紙状、又はその他の繊維材料は、アバカ、綿、麻、木材パルプ、及びこれらの混合等、様々な繊維で構成されるが、これらに限定されない。当業者には周知の通り、紙幣には綿及び綿/麻混合が好ましく、紙幣以外のセキュリティ書類には、木材パルプが一般的に用いられている。プラスチック及びポリマーの代表例としては、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)(PBT)、ポリ(エチレン 2,6−ナフトエート)(PEN)等のポリエステル、及びポリ塩化ビニル(PVC)等が挙げられる。基板としては、例えばTyvek(登録商標)という商標で販売されているスパンボンドオレフィン繊維も使用可能である。複合材の代表例としては、紙及び上記のような少なくとも1つのプラスチック又はポリマー材料の多層構造又は積層並びに上記のような紙状又は繊維材料に組み込まれたプラスチック及び/又はポリマー繊維等が挙げられるが、これらに限定されない。当然のことながら、基板には、サイジング剤、漂白剤、加工助剤、補強又は湿潤増強剤等、当業者に既知の別の添加剤を含むことも可能である。
【0137】
[0137]本発明の一実施形態によれば、光学効果被覆基板(OEC)は、本明細書に記載の基板上に2つ以上のOELを備え、例えば2つ、3つ等のOELを備えていてもよい。本明細書において、1つ又は2つ以上のOELは、単一の磁界発生装置又はいくつかの同じ磁界発生装置を用いて形成してもよいし、いくつかの異なる磁界発生装置を用いて形成してもよい。
図12は、基板上に設けられた複数の非球状磁性又は磁化可能粒子(P)が分散した例示的なOECの断面を示している。断面図において、本明細書に記載のOECは、基板上に配設された2つ(A及びB)のOELを備える。OEL A及びBは、
図12に示す断面に垂直な第3の次元において、互いに接続されていてもよいし、接続されていなくてもよい。
【0138】
[0138]OECは、第1のOEL及び第2のOELを備え、これら両者が基板の同じ側に存在していてもよいし、一方が基板の一方側に存在し、他方が基板の他方側に存在していてもよい。第1及び第2のOELは、基板の同じ側に設けられている場合、互いに隣接していてもよいし、隣接していなくてもよい。この追加又は代替として、一方のOELの一部又は全部が他方のOELと重なっていてもよい。
【0139】
[0139]2つ以上の磁界発生装置を用いて複数のOELを製造する場合は、複数の非球状磁性又は磁化可能粒子を配向させて1つのOELを製造する磁界発生装置と、別のOELを製造する磁界発生装置とを、i)基板の同じ側に載置して、負湾曲部(
図1B参照)又は正湾曲部(
図1C参照)を示す2つのOELを製造するようにしてもよいし、ii)基板の両側に載置して、負湾曲部を示す一方のOEL及び正湾曲部を示す他方のOELを有するようにしてもよい。第1のOELを製造するための非球状磁性又は磁化可能粒子及び第2のOELを製造するための非球状磁性又は磁化可能粒子の磁気的配向は、同時に行ってもよいし、続けて行ってもよく、バインダ材料の中間固化又は部分固化を伴ってもよいし、伴わなくてもよい。
【0140】
[0140]セキュリティ書類の偽造及び違法複製に対するセキュリティレベル及び耐性をさらに高くすることを目的として、基板には、印刷、被覆、レーザマーキング、又はレーザ穿孔証印、透かし、セキュリティスレッド、繊維、プランシェット、発光化合物、窓、箔、デカール、及びこれらの組み合わせを含んでいてもよい。セキュリティ書類の偽造及び違法複製に対するセキュリティレベル及び耐性をさらに高くするという同じ目的で、基板には、1つ又は複数のマーカ物質若しくはタガント及び/又は機械可読物質(例えば、発光物質、紫外/可視/赤外吸収物質、磁性物質、及びこれらの組み合わせ)を含んでいてもよい。
【0141】
[0141]本明細書に記載のOELは、装飾目的並びにセキュリティ書類の保護及び認証に用いてもよい。
【0142】
[0142]また、本発明は、本明細書に記載のOELを備えた物品及び装飾物体を包含する。この物品及び装飾物体は、本明細書に記載の光学効果層を2つ以上備えていてもよい。物品及び装飾物体の代表例としては、高級品、化粧品パッケージ、自動車部品、電子/家電製品、家具等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0143】
[0143]本発明の重要な一態様は、本明細書に記載のOELを備えたセキュリティ書類に関する。セキュリティ書類は、本明細書に記載の光学効果層を2つ以上備えていてもよい。セキュリティ書類としては、有価書類及び有価商品が挙げられるが、これらに限定されない。有価書類の代表例としては、紙幣、証書、チケット、小切手、証票、収入印紙及び納税印紙、契約書等、パスポート等の身分証明書類、身分証明書、ビザ、運転免許証、銀行カード、クレジットカード、取引カード、アクセス書類又はカード、入場券、公共交通乗車券又は証書等が挙げられるが、これらに限定されない。用語「有価商品」は、特に医薬品、化粧品、電子機器、又は食品産業において、偽造及び/又は違法複製に対する保護により、例えば本物の薬等のパッケージの内容物を保証すべきパッケージ材料を表す。これらパッケージ材料の例としては、認証ブランドラベル、不正防止ラベル等のラベル及びシールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0144】
[0144]本明細書に記載のセキュリティ書類は、紙幣、身分証明書類、権利付与書類、運転免許証、クレジットカード、アクセスカード、交通証書、銀行小切手、及び保護製品ラベルから成る群から選択するのが好ましい。或いは、OELは、例えばセキュリティスレッド、セキュリティストライプ、箔、デカール、窓、又はラベル等の補助基板上に製造し、その結果、独立したステップにおいて、セキュリティ書類に転写されるようにしてもよい。
【0145】
[0145]当業者であれば、本発明の主旨から逸脱することなく、上述した特定の実施形態について、いくつかの改良に想到し得る。このような改良についても、本発明に包含される。
【0146】
[0146]さらに、本明細書全体で引用したすべての文献は、その全内容を漏れなく本明細書に援用する。
【0147】
[0147]以下、実施例によって、本発明を説明する。ただし、実施例は、本発明の範囲を何ら制限するものではない。
(実施例)
実施例1
図5に係る磁界発生装置を用いて、基板としての黒い紙上で、紫外線硬化性スクリーン印刷インクの印刷層における非球状光学可変磁性顔料を配向させた。
インクの配合は以下の通りである。
【表1】
(*)JDS−Uniphase、Santa Rosa、CAから入手した直径d50が約15μm、厚さが約1μmの緑色〜青色の光学可変磁性顔料薄片
磁界発生装置は、直径5mm、厚さ8mmの軸方向磁化NdFeB永久磁性シリンダを配設した軟磁性鉄の下地板(ground plate)を備えたもので、磁気的なS極を軟磁性下地板上とした。軸方向磁化NdFeB永久磁性シリンダの磁気的なN極上には、外径16mm、内径12mm、及び深さ8mmの回転対称U字状軟磁性鉄ヨークを配設した。
紫外線硬化性スクリーン印刷インクの塗布層を有する紙基板は、環状永久磁石盤の磁極及び鉄ヨークから1mmの距離に配設した。このようにして得られた光学可変顔料の磁気的配向パターンは、塗布ステップの後、粒子を含む印刷層の紫外線硬化によって固定した。
得られた磁気的配向の画像を
図2Aに示す。
実施例2
図9に係る磁界発生装置を用いて、基板としての黒い紙上で、実施例1の配合に係る紫外線硬化性スクリーン印刷インクの印刷層における光学可変磁性顔料を配向させた。
磁界発生装置は、長さ10mm、幅10mm、及び高さ10mmで互いに15mm離間し、磁化方向が10mmの幅に沿った2つのNdFeB磁石を備えたものとした。磁石は、磁化方向が同一直線上となるように、回転軸周りに放射状に整列した。また、磁石は、300rpm(回転/分)の速度で回転する板上に搭載した。紫外線硬化性スクリーン印刷インクの印刷層を有する紙基板は、磁石の表面から0.5mmの距離に配設した。このようにして得られた光学可変顔料粒子の磁気的配向パターンは、塗布ステップの後、粒子を含む印刷層の紫外線硬化によって固定した。
得られた磁気的配向の画像を
図2Bに示す。3つの異なる視点から、視角に応じた画像の変化を示している。