【実施例】
【0049】
以下、本発明の吸着促進剤の含有液、銅コロイド触媒液、並びに無電解銅メッキ液の調製を含む無電解銅メッキ方法の実施例を述べるとともに、銅コロイド触媒液の経時安定性と上記実施例で得られた銅皮膜の外観についての評価試験例を順次説明する。
尚、本発明は下記の実施例、試験例に拘束されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論である。
【0050】
《無電解銅メッキ方法の実施例》
下記の実施例1〜20のうち、実施例9〜10は触媒液に合成系の水溶性ポリマーを含有する例、それ以外の実施例は当該水溶性ポリマーを含まない例であり、概ね実施例2〜20は実施例1或いは実施例4を基本にして、成分などを変更したものである。
実施例1は触媒液にコロイド安定剤としてクエン酸、糖質としてキシリトール(糖アルコール)、還元剤として水素化ホウ素ナトリウムと次亜リン酸を夫々使用した例である。実施例2は実施例1を基本としてキシリトールの含有量を前記一般的な範囲の下限に調整した例、実施例3は同範囲の上限に調整した例である。実施例4は糖質にソルビトール(糖アルコール)を使用した例、同じく実施例5はマンニトール(糖アルコール)の使用例、実施例6はグルコノラクトン(単糖類の誘導体)の使用例、実施例7はグルコース(単糖類)の使用例、実施例8はマルトース(二糖類)の使用例である。実施例9は糖質にキシリトールを使用し、合成系の水溶性ポリマーにポリビニルピロリドンを使用した例である。実施例10は糖質にソルビトールを使用し、合成系の水溶性ポリマーにポリエチレングリコールを使用した例である。実施例11は糖質にキシリトールとソルビトールを併用した例(糖アルコール同士の併用例)、同じく実施例12は糖質にマンニトールとグルコースを併用した例である(糖アルコールと単糖類の併用例)。実施例13は実施例1を基本として可溶性銅塩を変更した例、実施例14は実施例4を基本として可溶性銅塩を変更した例である。実施例15〜16は実施例1を基本としてコロイド安定剤を変更した例、実施例17は実施例4を基本としてコロイド安定剤を変更した例である。実施例18は実施例4を基本として還元剤を変更した例、実施例19は実施例5を基本として還元剤を変更した例である。実施例20は実施例1を基本として触媒液のpHを弱アルカリ域に変更した例である。
また、実施例4と11は触媒付与工程の後で無電解銅メッキ工程の前に酸洗浄工程を介在させた例であり、他の実施例はすべて、酸洗浄なしで吸着促進→触媒付与→無電解銅メッキの各工程を順番に行った例である。
【0051】
一方、下記の比較例1〜3のうち、比較例1は触媒液にコロイド安定剤と糖質の両成分を含有しないブランク例である。比較例2は触媒液にコロイド安定剤を含み、本発明で規定する糖質とは異なる糖類(デンプン)を含む例である。比較例3は吸着促進工程なしで、直ちに触媒付与工程から無電解メッキ工程を行ったブランク例である。
また、基準例は前記先願発明に準拠したもので、触媒液にコロイド安定剤を含むが本発明で規定する糖質は含まない例である。
【0052】
(1)実施例1
《吸着促進、触媒付与並びに無電解メッキの処理手順》
先ず、非導電性基板である
ガラス・エポキシ樹脂基板(板厚:1.0mm)をもって試料基板とした。
そして、下記(a)の吸着促進剤を用いて試料基板に吸着促進を行った後、下記(b)の触媒液に浸漬して触媒付与を行い、さらに下記(c)のメッキ液で無電解銅メッキを行った。
具体的には、前記吸着促進剤の含有液に前記試料基板を50℃、2分の条件で浸漬し、純水で洗浄した。次いで、吸着促進処理(前処理)を施した試料基板を前記銅コロイド触媒液に25℃、10分の条件で浸漬し、純水で洗浄した。その後、触媒付与を施した試料基板を上記無電解銅メッキ液中に浸漬して、50℃、10分の条件で無電解メッキを施して、試料基板上に銅皮膜を形成した後、純水で洗浄し、乾燥した。
(a)吸着促進剤の含有液の調製
次の組成で吸着促進剤の含有液を調製した。
[吸着促進剤の含有液]
ジアリルアミンポリマーの4級アンモニウム塩 5g/L
ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル 1g/L
pH 10.0
(b)銅コロイド触媒液の調製
[銅溶液]
硫酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
クエン酸 0.2モル/L
キシリトール 0.3モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.02モル/L
次亜リン酸 0.18モル/L
pH4.0に調整した25℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して45分撹拌し、銅コロイド触媒液を調製した。
上記触媒液の各成分のモル比率は、次の通りである。
銅塩:コロイド安定剤=1:2、銅塩:糖質=1:3、銅塩:還元剤=1:2
生成した銅コロイド粒子の平均粒径は約15nmであった。
(c)無電解銅メッキ液の調製
次の組成で無電解銅メッキ液を建浴した。当該メッキ液は下記の水酸化ナトリウムでpH調整した。
[無電解銅メッキ液]
硫酸銅五水和物(Cu2+として) 2.0g/L
ホルムアルデヒド 5.0g/L
EDTA 30.0g/L
水酸化ナトリウム 9.6g/L
残余 純水
pH(20℃) 12.8
【0053】
(2)実施例2
上記実施例1を基本として、銅コロイド触媒液を次の組成で調製した以外は、吸着促進剤の含有液と無電解銅メッキ液の組成並びに吸着促進、触媒付与、無電解銅メッキの各工程の処理条件は実施例1と同じとした。
(b)銅コロイド触媒液の調製
[銅溶液]
硫酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
クエン酸 0.2モル/L
キシリトール 0.001モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.02モル/L
次亜リン酸 0.18モル/L
pH4.0に調整した25℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して45分撹拌し、銅コロイド触媒液を調製した。
上記触媒液の各成分のモル比率は、次の通りである。
銅塩:コロイド安定剤=1:2、銅塩:糖質=1:0.01、銅塩:還元剤=1:2
生成した銅コロイド粒子の平均粒径は約25nmであった。
【0054】
(3)実施例3
上記実施例1を基本として、銅コロイド触媒液を次の組成で調製した以外は、吸着促進剤の含有液と無電解銅メッキ液の組成並びに吸着促進、触媒付与、無電解銅メッキの各工程の処理条件は実施例1と同じとした。
(b)銅コロイド触媒液の調製
[銅溶液]
硫酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
クエン酸 0.2モル/L
キシリトール 4.0モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.02モル/L
次亜リン酸 0.18モル/L
pH4.0に調整した25℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して45分撹拌し、銅コロイド触媒液を調製した。
上記触媒液の各成分のモル比率は、次の通りである。
銅塩:コロイド安定剤=1:2、銅塩:糖質=1:40、銅塩:還元剤=1:2
生成した銅コロイド粒子の平均粒径は約10nmであった。
【0055】
(4)実施例4
吸着促進、触媒付与、酸洗浄、無電解銅メッキの各工程を順番に行った例である。
但し、吸着促進、触媒付与、無電解銅メッキの各工程の処理条件並びに無電解銅メッキ液の組成は実施例1と同じであり、吸着促進剤の含有液と銅コロイド触媒液の各調製条件は次の通りである。
また、酸洗浄の処理条件は下記(d)に示す通りである。
(a)吸着促進剤の含有液の調製
次の組成で吸着促進剤の含有液を調製した。
[吸着促進剤の含有液]
ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド 5g/L
ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル 1g/L
pH 9.0
(b)銅コロイド触媒液の調製
[銅溶液]
硫酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
クエン酸 0.2モル/L
ソルビトール 0.3モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.02モル/L
次亜リン酸 0.18モル/L
pH4.0に調整した25℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して45分撹拌し、銅コロイド触媒液を調製した。
上記触媒液の各成分のモル比率は、次の通りである。
銅塩:コロイド安定剤=1:2、銅塩:糖質=1:3、銅塩:還元剤=1:2
生成した銅コロイド粒子の平均粒径は約40nmであった。
(d)酸洗浄の処理条件
硫酸50g/Lの洗浄液を調製し、上記触媒付与処理をした試料基板を当該洗浄液中に、45℃、1分間の条件で浸漬し、水洗した後、次の無電解銅メッキ工程に供した。
【0056】
(5)実施例5
吸着促進、触媒付与、無電解銅メッキの各工程の処理条件並びに無電解銅メッキ液の組成は実施例1と同じであり、吸着促進剤の含有液と銅コロイド触媒液の各調製条件は次の通りである。
(a)吸着促進剤の含有液の調製
次の組成で吸着促進剤の含有液を調製した。
[吸着促進剤の含有液]
ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン 5g/L
ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル 1g/L
pH 10.5
(b)銅コロイド触媒液の調製
[銅溶液]
硫酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
クエン酸 0.2モル/L
マンニトール 0.3モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.02モル/L
次亜リン酸 0.18モル/L
pH4.0に調整した25℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して45分撹拌し、銅コロイド触媒液を調製した。
上記触媒液の各成分のモル比率は、次の通りである。
銅塩:コロイド安定剤=1:2、銅塩:糖質=1:3、銅塩:還元剤=1:2
生成した銅コロイド粒子の平均粒径は約25nmであった。
【0057】
(6)実施例6
吸着促進、触媒付与、無電解銅メッキの各工程の処理条件並びに吸着促進剤の含有液と無電解銅メッキ液の組成は実施例1と同じであり、銅コロイド触媒液の調製条件は次の通りである。
(b)銅コロイド触媒液の調製
[銅溶液]
硫酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
クエン酸 0.2モル/L
グルコノラクトン 0.3モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.02モル/L
次亜リン酸 0.18モル/L
pH4.0に調整した25℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して45分撹拌し、銅コロイド触媒液を調製した。
上記触媒液の各成分のモル比率は、次の通りである。
銅塩:コロイド安定剤=1:2、銅塩:糖質=1:3、銅塩:還元剤=1:2
生成した銅コロイド粒子の平均粒径は約20nmであった。
【0058】
(7)実施例7
吸着促進、触媒付与、無電解銅メッキの各工程の処理条件並びに吸着促進剤の含有液と無電解銅メッキ液の組成は実施例1と同じであり、銅コロイド触媒液の調製条件は次の通りである。
(b)銅コロイド触媒液の調製
[銅溶液]
硫酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
クエン酸 0.2モル/L
グルコース 0.3モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.02モル/L
次亜リン酸 0.18モル/L
pH4.0に調整した25℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して45分撹拌し、銅コロイド触媒液を調製した。
上記触媒液の各成分のモル比率は、次の通りである。
銅塩:コロイド安定剤=1:2、銅塩:糖質=1:3、銅塩:還元剤=1:2
生成した銅コロイド粒子の平均粒径は約15nmであった。
【0059】
(8)実施例8
吸着促進、触媒付与、無電解銅メッキの各工程の処理条件並びに無電解銅メッキ液の組成は実施例1と同じであり、吸着促進剤の含有液と銅コロイド触媒液の各調製条件は次の通りである。
(a)吸着促進剤の含有液の調製
次の組成で吸着促進剤の含有液を調製した。
[吸着促進剤の含有液]
ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド 5g/L
ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル 1g/L
pH 10.5
(b)銅コロイド触媒液の調製
[銅溶液]
硫酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
クエン酸 0.2モル/L
マルトース 0.3モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.02モル/L
次亜リン酸 0.18モル/L
pH4.0に調整した25℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して60分撹拌し、銅コロイド触媒液を調製した。
上記触媒液の各成分のモル比率は、次の通りである。
銅塩:コロイド安定剤=1:2、銅塩:糖質=1:3、銅塩:還元剤=1:2
生成した銅コロイド粒子の平均粒径は約10nmであった。
【0060】
(9)実施例9
吸着促進、触媒付与、無電解銅メッキの各工程の処理条件並びに無電解銅メッキ液の組成は実施例1と同じであり、吸着促進剤の含有液と銅コロイド触媒液の各調製条件は次の通りである。
(a)吸着促進剤の含有液の調製
次の組成で吸着促進剤の含有液を調製した。
[吸着促進剤の含有液]
ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン 5g/L
ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル 1g/L
pH 10.0
(b)銅コロイド触媒液の調製
[銅溶液]
硫酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
クエン酸 0.2モル/L
キシリトール 0.3モル/L
ポリビニルピロリドン(平均分子量40,000) 2.0g/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.02モル/L
次亜リン酸 0.18モル/L
pH3.0に調整した25℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して45分撹拌し、銅コロイド触媒液を調製した。
上記触媒液の各成分のモル比率は、次の通りである。
銅塩:コロイド安定剤=1:2、銅塩:糖質=1:3、銅塩:還元剤=1:2
生成した銅コロイド粒子の平均粒径は約25nmであった。
【0061】
(10)実施例10
吸着促進、触媒付与、無電解銅メッキの各工程の処理条件並びに無電解銅メッキ液の組成は実施例1と同じであり、吸着促進剤の含有液と銅コロイド触媒液の各調製条件は次の通りである。
(a)吸着促進剤の含有液の調製
次の組成で吸着促進剤の含有液を調製した。
[吸着促進剤の含有液]
ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド 5g/L
ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル 1g/L
pH 10.0
(b)銅コロイド触媒液の調製
[銅溶液]
硫酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
クエン酸 0.2モル/L
ソルビトール 0.3モル/L
ポリエチレングリコール(平均分子量10,000) 1.0g/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.02モル/L
次亜リン酸 0.18モル/L
pH4.0に調整した25℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して90分撹拌し、銅コロイド触媒液を調製した。
上記触媒液の各成分のモル比率は、次の通りである。
銅塩:コロイド安定剤=1:2、銅塩:糖質=1:3、銅塩:還元剤=1:2
生成した銅コロイド粒子の平均粒径は約35nmであった。
【0062】
(11)実施例11
吸着促進、触媒付与、酸洗浄、無電解銅メッキの各工程を順番に行った例である。
但し、吸着促進、触媒付与、無電解銅メッキの各工程の処理条件並びに吸着促進剤の含有液と無電解銅メッキ液の組成は実施例1と同じであり、銅コロイド触媒液の調製条件は次の通りである。
また、酸洗浄の処理条件は下記(d)に示す通りである。
(b)銅コロイド触媒液の調製
[銅溶液]
硫酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
クエン酸 0.2モル/L
ソルビトール 0.2モル/L
キシリトール 0.1モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.02モル/L
次亜リン酸 0.18モル/L
pH4.0に調整した35℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して45分撹拌し、銅コロイド触媒液を調製した。
上記触媒液の各成分のモル比率は、次の通りである。
銅塩:コロイド安定剤=1:2、銅塩:糖質=1:3、銅塩:還元剤=1:2
生成した銅コロイド粒子の平均粒径は約25nmであった。
(d)酸洗浄の処理条件
硫酸50g/Lの洗浄液を調製し、上記触媒付与処理をした試料基板を当該洗浄液中に、45℃、1分間の条件で浸漬し、水洗した後、次の無電解銅メッキ工程に供した。
【0063】
(12)実施例12
吸着促進、触媒付与、無電解銅メッキの各工程の処理条件並びに無電解銅メッキ液の組成は実施例1と同じであり、吸着促進剤の含有液と銅コロイド触媒液の各調製条件は次の通りである。
(a)吸着促進剤の含有液の調製
次の組成で吸着促進剤の含有液を調製した。
[吸着促進剤の含有液]
ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド 5g/L
ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル 1g/L
pH 8.5
(b)銅コロイド触媒液の調製
[銅溶液]
硫酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
クエン酸 0.2モル/L
マンニトール 0.2モル/L
グルコース 0.2モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.02モル/L
次亜リン酸 0.18モル/L
pH3.0に調整した35℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して45分撹拌し、銅コロイド触媒液を調製した。
上記触媒液の各成分のモル比率は、次の通りである。
銅塩:コロイド安定剤=1:2、銅塩:糖質=1:4、銅塩:還元剤=1:2
生成した銅コロイド粒子の平均粒径は約15nmであった。
【0064】
(13)実施例13
吸着促進、触媒付与、無電解銅メッキの各工程の処理条件並びに吸着促進剤の含有液と無電解銅メッキ液の組成は実施例1と同じであり、銅コロイド触媒液の調製条件は次の通りである。
(b)銅コロイド触媒液の調製
[銅溶液]
メタンスルホン酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
クエン酸 0.2モル/L
キシリトール 0.3モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.02モル/L
次亜リン酸 0.18モル/L
pH5.0に調整した35℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して45分撹拌し、銅コロイド触媒液を調製した。
上記触媒液の各成分のモル比率は、次の通りである。
銅塩:コロイド安定剤=1:2、銅塩:糖質=1:3、銅塩:還元剤=1:2
生成した銅コロイド粒子の平均粒径は約10nmであった。
【0065】
(14)実施例14
吸着促進、触媒付与、無電解銅メッキの各工程の処理条件並びに吸着促進剤の含有液と無電解銅メッキ液の組成は実施例1と同じであり、銅コロイド触媒液の調製条件は次の通りである。
(b)銅コロイド触媒液の調製
[銅溶液]
クエン酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
クエン酸 0.2モル/L
ソルビトール 0.3モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.02モル/L
次亜リン酸 0.18モル/L
pH5.0に調整した35℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して45分撹拌し、銅コロイド触媒液を調製した。
上記触媒液の各成分のモル比率は、次の通りである。
銅塩:コロイド安定剤=1:2、銅塩:糖質=1:3、銅塩:還元剤=1:2
生成した銅コロイド粒子の平均粒径は約25nmであった。
【0066】
(15)実施例15
吸着促進、触媒付与、無電解銅メッキの各工程の処理条件並びに吸着促進剤の含有液と無電解銅メッキ液の組成は実施例1と同じであり、銅コロイド触媒液の調製条件は次の通りである。
(b)銅コロイド触媒液の調製
[銅溶液]
硫酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
ギ酸 0.2モル/L
キシリトール 0.3モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.02モル/L
次亜リン酸 0.18モル/L
pH4.0に調整した35℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して45分撹拌し、銅コロイド触媒液を調製した。
上記触媒液の各成分のモル比率は、次の通りである。
銅塩:コロイド安定剤=1:2、銅塩:糖質=1:3、銅塩:還元剤=1:2
生成した銅コロイド粒子の平均粒径は約15nmであった。
【0067】
(16)実施例16
吸着促進、触媒付与、無電解銅メッキの各工程の処理条件並びに吸着促進剤の含有液と無電解銅メッキ液の組成は実施例1と同じであり、銅コロイド触媒液の調製条件は次の通りである。
(b)銅コロイド触媒液の調製
[銅溶液]
硫酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
乳酸 0.2モル/L
キシリトール 0.3モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.02モル/L
次亜リン酸 0.18モル/L
pH4.0に調整した35℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して45分撹拌し、銅コロイド触媒液を調製した。
上記触媒液の各成分のモル比率は、次の通りである。
銅塩:コロイド安定剤=1:2、銅塩:糖質=1:3、銅塩:還元剤=1:2
生成した銅コロイド粒子の平均粒径は約10nmであった。
【0068】
(17)実施例17
吸着促進、触媒付与、無電解銅メッキの各工程の処理条件並びに吸着促進剤の含有液と無電解銅メッキ液の組成は実施例1と同じであり、銅コロイド触媒液の調製条件は次の通りである。
(b)銅コロイド触媒液の調製
[銅溶液]
硫酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
ニトリロ三酢酸 0.2モル/L
ソルビトール 0.3モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.02モル/L
次亜リン酸 0.18モル/L
pH4.0に調整した35℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して45分撹拌し、銅コロイド触媒液を調製した。
上記触媒液の各成分のモル比率は、次の通りである。
銅塩:コロイド安定剤=1:2、銅塩:糖質=1:3、銅塩:還元剤=1:2
生成した銅コロイド粒子の平均粒径は約15nmであった。
【0069】
(18)実施例18
吸着促進、触媒付与、無電解銅メッキの各工程の処理条件並びに吸着促進剤の含有液と無電解銅メッキ液の組成は実施例1と同じであり、銅コロイド触媒液の調製条件は次の通りである。
(b)銅コロイド触媒液の調製
[銅溶液]
硫酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
クエン酸 0.2モル/L
ソルビトール 0.3モル/L
[還元剤溶液]
ジメチルアミンボラン 0.02モル/L
アスコルビン酸 0.18モル/L
pH4.0に調整した25℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して45分撹拌し、銅コロイド触媒液を調製した。
上記触媒液の各成分のモル比率は、次の通りである。
銅塩:コロイド安定剤=1:2、銅塩:糖質=1:3、銅塩:還元剤=1:2
生成した銅コロイド粒子の平均粒径は約25nmであった。
【0070】
(19)実施例19
吸着促進、触媒付与、無電解銅メッキの各工程の処理条件並びに吸着促進剤の含有液と無電解銅メッキ液の組成は実施例1と同じであり、銅コロイド触媒液の調製条件は次の通りである。
(b)銅コロイド触媒液の調製
[銅溶液]
硫酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
クエン酸 0.2モル/L
マンニトール 0.3モル/L
[還元剤溶液]
ジメチルアミンボラン 0.02モル/L
アスコルビン酸 0.18モル/L
pH4.0に調整した25℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して45分撹拌し、銅コロイド触媒液を調製した。
上記触媒液の各成分のモル比率は、次の通りである。
銅塩:コロイド安定剤=1:2、銅塩:糖質=1:3、銅塩:還元剤=1:2
生成した銅コロイド粒子の平均粒径は約15nmであった。
【0071】
(20)実施例20
吸着促進、触媒付与、無電解銅メッキの各工程の処理条件並びに吸着促進剤の含有液と無電解銅メッキ液の組成は実施例1と同じであり、銅コロイド触媒液の調製条件は次の通りである。
(b)銅コロイド触媒液の調製
[銅溶液]
硫酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
EDTA 0.2モル/L
キシリトール 0.3モル/L
[還元剤溶液]
ジメチルアミンボラン 0.02モル/L
アスコルビン酸 0.18モル/L
pH9.0に調整した25℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して45分撹拌し、銅コロイド触媒液を調製した。
上記触媒液の各成分のモル比率は、次の通りである。
銅塩:コロイド安定剤=1:2、銅塩:糖質=1:3、銅塩:還元剤=1:2
生成した銅コロイド粒子の平均粒径は約30nmであった。
【0072】
(21)比較例1
上記実施例1を基本とするが、銅コロイド触媒液にコロイド安定剤と糖質を含まないブランク例である。
即ち、吸着促進、触媒付与、無電解銅メッキの各工程の処理条件並びに吸着促進剤の含有液と無電解銅メッキ液の組成は実施例1と同じであり、銅コロイド触媒液の調製条件は次の通りである。
(b)銅コロイド触媒液の調製
[銅溶液]
硫酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.02モル/L
次亜リン酸 0.18モル/L
pH4.0に調整した25℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して45分撹拌し、銅コロイド触媒液を調製した。
上記触媒液の各成分のモル比率は、次の通りである。
銅塩:コロイド安定剤=1:0、銅塩:還元剤=1:2
銅コロイド粒子は生成したが、凝集・沈殿した。
【0073】
(22)比較例2
上記実施例1を基本として、銅コロイド触媒液にコロイド安定剤と本発明の規定とは異なる糖質(澱粉)を含む例である。
即ち、吸着促進、触媒付与、無電解銅メッキの各工程の処理条件並びに吸着促進剤の含有液と無電解銅メッキ液の組成は実施例1と同じであり、銅コロイド触媒液の調製条件は次の通りである。
(b)銅コロイド触媒液の調製
[銅溶液]
硫酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
クエン酸 0.2モル/L
澱粉 0.3モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.02モル/L
次亜リン酸 0.18モル/L
pH4.0に調整した25℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して45分撹拌し、銅コロイド触媒液を調製した。
上記触媒液の各成分のモル比率は、次の通りである。
銅塩:コロイド安定剤=1:2、銅塩:糖質(澱粉)=1:3、銅塩:還元剤=1:2
生成した銅コロイド粒子の平均粒径は約200nmであった。
【0074】
(23)比較例3
上記実施例1を基本として、吸着促進工程を省略した例である。
即ち、試料基板に吸着促進処理を施すことなく、直ちに、実施例1の触媒液(b)に浸漬して触媒付与を行い、さらに実施例1のメッキ液(c)で無電解銅メッキを行った。触媒付与、無電解銅メッキの各工程の処理条件並びに銅コロイド触媒液、無電解銅メッキ液の各調製条件は実施例1と同じである。
【0075】
(24)基準例
冒述の先願発明に準拠したもので、上記実施例1を基本として、触媒液にコロイド安定剤を含むが糖質を含まない例である。
即ち、吸着促進、触媒付与、無電解銅メッキの各工程の処理条件並びに吸着促進剤の含有液と無電解銅メッキ液の組成は実施例1と同じであり、銅コロイド触媒液の調製条件は次の通りである。
(b)銅コロイド触媒液の調製
[銅溶液]
硫酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
クエン酸 0.2モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.02モル/L
次亜リン酸 0.18モル/L
pH4.0に調整した25℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して45分撹拌し、銅コロイド触媒液を調製した。
上記触媒液の各成分のモル比率は、次の通りである。
銅塩:コロイド安定剤=1:2、銅塩:糖質(澱粉)=1:0、銅塩:還元剤=1:2
生成した銅コロイド粒子の平均粒径は約30nmであった。
【0076】
《触媒液の経時安定性試験例》
そこで、上記実施例1〜20、比較例1〜3並びに基準例で建浴した各銅コロイド触媒液について、下記の基準でコロイド安定性の優劣を評価した。
◎:建浴後2カ月以上経過しても沈殿、或いは分解が起こらなかった。
○:建浴後1カ月を越え、2カ月経過するまでに沈殿が生じ、或いは分解した。
△:建浴後1カ月以内に沈殿が生じ、或いは分解した。
×:コロイド粒子が生成しないか、建浴後すぐに沈殿、或いは分解した。
【0077】
《無電解銅メッキにより析出した銅皮膜の外観評価試験例》
次いで、上記実施例1〜20、比較例1〜3並びに基準例で建浴した各銅コロイド触媒液について、建浴初期の触媒液を使用した場合、得られた銅メッキ皮膜の外観の優劣を目視により下記の基準で評価した。
○:銅メッキ皮膜が均一でムラがなかった。
△:銅メッキ皮膜にムラや一部未析出(メッキ欠け)が認められた。
×:銅皮膜が析出しなかった。
尚、析出皮膜の「ムラ」は、皮膜の緻密性や平滑性などに周囲と異なる部分があると認められる。皮膜の「ムラ」は皮膜の均一性とは別の観点である。
【0078】
《銅コロイド触媒液の経時安定性と皮膜外観についての試験結果》
皮膜外観 経時安定性 皮膜外観 経時安定性
実施例1 ○ ◎ 比較例1 × ×
実施例2 ○ ◎ 比較例2 △ ×
実施例3 ○ ◎ 比較例3 × ◎
実施例4 ○ ◎ 基準例 ○ ○
実施例5 ○ ◎
実施例6 ○ ◎
実施例7 ○ ◎
実施例8 ○ ◎
実施例9 ○ ◎
実施例10 ○ ◎
実施例11 ○ ◎
実施例12 ○ ◎
実施例13 ○ ◎
実施例14 ○ ◎
実施例15 ○ ◎
実施例16 ○ ◎
実施例17 ○ ◎
実施例18 ○ ◎
実施例19 ○ ◎
実施例20 ○ ◎
【0079】
《触媒液の経時安定性とメッキ皮膜外観の総合評価》
銅コロイド触媒液にコロイド安定剤と糖質を含まない比較例1では、触媒液の経時安定性に劣り、もって触媒液との接触後に非導電性基板に無電解メッキを施しても銅皮膜の析出はなかった。
一方、触媒液にコロイド安定剤を含んで糖質は含まない基準例では、触媒液の建浴後1カ月を経過しても沈殿を生じない良好な経時安定性を示し、銅皮膜の外観は良好であった。
しかしながら、コロイド安定剤と糖質が共存する触媒液において、当該糖質として本発明で規定する特定の糖質とは異なる澱粉を使用した比較例2では、経時安定性の低下により触媒液に生成した銅粒子は微細ではなく、形成した銅皮膜にメッキ欠けが認められ、皮膜外観に問題が生じた。
非導電性基板を吸着促進処理なしで直ちに触媒付与し、無電解銅メッキを施した比較例3では、触媒液の経時安定性は実施例と同様であったが、析出した銅皮膜にはメッキ欠けが認められたことから、触媒付与の前に吸着促進の予備処理がないことに因り、触媒活性が不足し、基板への銅コロイド粒子の吸着が実施例に比べて劣ることが判断できる。
【0080】
一方、吸着促進の予備処理をした後、触媒付与処理をし、次いで無電解銅メッキを施した実施例1〜20では、いずれも触媒液の経時安定性に優れ、無電解メッキで析出する銅皮膜は概ねムラやメッキ欠けがなく優れた外観を呈した。
上記基準例を比較例1に対比すると、ムラやメッキ欠けがない良好な外観の銅皮膜を得るためには、触媒液に銅塩と還元剤だけではなく、コロイド安定剤の含有が必須であることが分かる。
一方、上記実施例1〜20をこの基準例に対比すると、優れた外観の銅皮膜を得るには、触媒液にコロイド安定剤と本発明の特定の糖質を共存させることが必要であることが分かる。特に、触媒液の経時安定性に着目すると、基準例では建浴後1カ月以上の安定性を示して○の評価であったが、実施例1〜20の各触媒液では建浴後2カ月を越える安定性を示したことから、当該経時安定性について、基準例に対する実施例1〜20の各触媒液の優位性は明らかであり、触媒液のメンテナンスを基準例より簡略化でき、メッキの処理コストを軽減できる利点がある。
また、本発明で規定する特定の糖質とは異なる澱粉を用いた比較例2を実施例1〜20に対比すると、触媒液にコロイド安定剤と糖質が共存する場合でも、本発明で規定する特定の糖質を選択しないと、触媒液の経時安定性の改善は望めず、逆に、微細な銅コロイド粒子を円滑に形成できず、結果的に皮膜外観を損なうことから、触媒液の経時安定性の向上には特定の糖質を選択することの重要性が判断できる。
【0081】
次いで、実施例1〜20について詳細に検討する。
実施例1を基準として他の実施例との相対的な評価を説明する。先ず、実施例1はカチオン系界面活性剤であるジアリルアミンポリマーの4級アンモニウム塩を含む吸着促進剤で非導電性基板を予備処理し、硫酸銅を銅塩とし、水素化ホウ素ナトリウムを還元剤とし、クエン酸をコロイド安定剤とし、キシリトールを特定の糖質とする触媒液で触媒付与した後、無電解銅メッキした例であるが、触媒液の経時安定性は良好で、建浴後2カ月経過しても沈殿が生じたり、分解することはなく、また、無電解メッキで得られた銅皮膜は析出ムラやメッキ欠けも認められず、優れた外観を呈した。
実施例2は実施例1に対して糖質の含有量をきわめて減量した例、実施例3は逆にきわめて増量した例であるが、実施例1と同様に触媒液の経時安定性は良好で、得られた銅皮膜は優れた外観を呈した。
【0082】
糖質をソルビトール(糖アルコール)に変更した実施例4、同じくマンニトール(糖アルコール)に変更した実施例5、グルコノラクトン(単糖類の誘導体)に変更した実施例6、グルコース(単糖類)に変更した実施例7、マルトース(二糖類)に変更した実施例8、ソルビトールとキシリトール(糖アルコール同士の併用)に変更した実施例11、マンニトールとグルコース(糖アルコールと単糖類の併用)に変更した実施例12では、いずれも実施例1と同様に、高い経時安定性と優れた皮膜外観を示した。
キシリトールを含有する実施例1の触媒液を基本として、触媒液に水溶性ポリマーとしてPVP(平均分子量4万)を付加した実施例9では、触媒液の経時安定性とメッキ皮膜の外観について、実施例1と同様の評価であった。
ソルビトールを含有する実施例4の触媒液を基本として、触媒液に水溶性ポリマーとしてPEG(平均分子量1万)を付加した実施例10では、触媒液の経時安定性とメッキ皮膜の外観について、実施例4と同様の評価であった。
また、実施例1、4或いは5を基本として、可溶性銅塩、コロイド安定剤、還元剤を変更しても(実施例13〜19参照)、基本の各実施例と同じく高い経時安定性と優れた皮膜外観を示した。
触媒液をpH4.0に設定した実施例1に対して、弱アルカリ側のpH9に設定した実施例20では、同じく高い経時安定性と優れた皮膜外観を示した。
実施例4と実施例11は、共に触媒付与の処理後に酸洗浄を行ってから無電解銅メッキ処理をした例であり、他の実施例に比べて皮膜外観上の差異は特段見られなかったが、熱処理を施しても皮膜面と基板の間に変化は認められず、高い密着性が確認できた。