特許第6209770号(P6209770)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6209770無電解銅メッキ用の銅コロイド触媒液並びに無電解銅メッキ方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6209770
(24)【登録日】2017年9月22日
(45)【発行日】2017年10月11日
(54)【発明の名称】無電解銅メッキ用の銅コロイド触媒液並びに無電解銅メッキ方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/30 20060101AFI20171002BHJP
   C23C 18/28 20060101ALI20171002BHJP
   C23C 18/40 20060101ALI20171002BHJP
   B01J 35/12 20060101ALI20171002BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20171002BHJP
   B01J 23/72 20060101ALI20171002BHJP
【FI】
   C23C18/30
   C23C18/28
   C23C18/40
   B01J35/12
   B01J37/02 301N
   B01J23/72 Z
【請求項の数】8
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2015-30395(P2015-30395)
(22)【出願日】2015年2月19日
(65)【公開番号】特開2016-151056(P2016-151056A)
(43)【公開日】2016年8月22日
【審査請求日】2017年2月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000197975
【氏名又は名称】石原ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092439
【弁理士】
【氏名又は名称】豊永 博隆
(72)【発明者】
【氏名】内田 衛
(72)【発明者】
【氏名】田中 薫
(72)【発明者】
【氏名】田中 雄也
【審査官】 辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−093076(JP,A)
【文献】 米国特許第4261747(US,A)
【文献】 米国特許第4339476(US,A)
【文献】 特開昭61−23762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 18/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無電解銅メッキを施す非導電性基板に接触させて触媒付与を行うための銅コロイド触媒液において、
(A)可溶性銅塩と、
(B)還元剤と、
(C)モノカルボン酸類、オキシカルボン酸類、アミノカルボン酸類、ポリカルボン酸類よりなる群から選ばれたコロイド安定剤の少なくとも一種と、
(D)ブドウ糖、果糖、乳糖、マルトール、パラチノース、キシロース、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、マルチトール、エリスリトール、還元水飴、ラクチトール、還元パラチノース、グルコノラクトンから選ばれた糖質の少なくとも一種
とを添加することで得られる 無電解銅メッキ用の銅コロイド触媒液。
【請求項2】
可溶性塩(A)とコロイド安定剤(C)の含有モル比率がA:C=1:0.03〜1:35であることを特徴とする請求項1に記載の無電解銅メッキ用の銅コロイド触媒液。
【請求項3】
さらに、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミンから選ばれた合成系水溶性ポリマーの少なくとも一種を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の無電解銅メッキ用の銅コロイド触媒液。
【請求項4】
還元剤(B)が、水素化ホウ素化合物、アミンボラン類、次亜リン酸類、アルデヒド類、アスコルビン酸類、ヒドラジン類、多価フェノール類、多価ナフトール類、フェノールスルホン酸類、ナフトールスルホン酸類、スルフィン酸類よりなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の無電解銅メッキ用の銅コロイド触媒液。
【請求項5】
コロイド安定剤(C)のうちの、モノカルボン酸類が、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びこれらの塩よりなる群から選ばれた少なくとも一種であり、
オキシカルボン酸類が、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸、グルコヘプトン酸、グリコール酸、乳酸、トリオキシ酪酸、アスコルビン酸、イソクエン酸、タルトロン酸、グリセリン酸、ヒドロキシ酪酸、ロイシン酸、シトラマル酸、及びこれらの塩よりなる群から選ばれた少なくとも一種であり、
アミノカルボン酸類が、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四プロピオン酸、ニトリロ三酢酸、イミノジ酢酸、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸、イミノジプロピオン酸、1,3−プロパンジアミン四酢酸、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、メタフェニレンジアミン四酢酸、1,2−ジアミノシクロヘキサン−N,N,N′,N′−四酢酸、ジアミノプロピオン酸、グルタミン酸、ジカルボキシメチルグルタミン酸、オルニチン、システイン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン、(S、S)−エチレンジアミンコハク酸及びこれらの塩よりなる群から選ばれた少なくとも一種であり、
ポリカルボン酸類(C)が、コハク酸、グルタル酸、マロン酸、アジピン酸、シュウ酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、メサコン酸及びこれらの塩よりなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の無電解銅メッキ用の銅コロイド触媒液。
【請求項6】
(a)ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤よりなる群から選ばれた吸着促進剤の少なくとも一種の含有液に非導電性基板を浸漬する吸着促進工程(前処理工程)と、
(b)請求項1〜5のいずれか1項の銅コロイド触媒液に非導電性基板を浸漬して、基板表面上に銅コロイド粒子を吸着させる触媒付与工程と、
(c)吸着処理された上記基板上に無電解銅メッキ液を用いて銅皮膜を形成する無電解メッキ工程
とからなることを特徴とする無電解銅メッキ方法。
【請求項7】
工程(a)の吸着促進剤が、カチオン系界面活性剤及び/又は両性界面活性剤であることを特徴とする請求項6に記載の無電解銅メッキ方法。
【請求項8】
上記請求項6又は7に記載の無電解銅メッキ方法で非導電性基板に銅皮膜を形成したことを特徴とする非導電性基板の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非導電性基板に無電解銅メッキを施すに際し、前処理としての触媒付与をするための銅コロイド触媒液、当該触媒液を用いた無電解銅メッキ方法並びに当該方法で銅皮膜を形成した非導電性基板に関して、銅触媒液の経時安定性を顕著に向上して、銅皮膜に優れた外観を付与できるものを提供する。
【背景技術】
【0002】
銅、又は銅合金製の基板を始め、特に、ガラス・エポキシ樹脂、ガラス・ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、PET樹脂などの樹脂基板を初め、ガラス基板、セラミックス基板などの非導電性基板上に無電解銅メッキを施すには、先ず、基板上にパラジウム、銀、白金などの貴金属を吸着させてこれを触媒核とした後、この触媒核を介して無電解銅メッキ液により銅皮膜を基板上に析出させる方式が一般的である。
【0003】
一方、貴金属の触媒を使用せず、安価な銅、ニッケル、コバルトなどの特定の金属を使用した触媒付与方式もあり、当該特定金属の触媒液では、可溶性金属塩を還元剤で処理して金属のコロイド粒子を生成させて、これを触媒核とすることが基本原理となっている。
【0004】
このうち、銅コロイド触媒液の従来技術を挙げると、特許文献1には、可溶性銅塩と、分散剤(ゼラチン、ノニオン性界面活性剤)と、錯化剤(ジカルボン酸、オキシカルボン酸など)を添加し、還元剤(水素化ホウ素ナトリウム、ジメチルアミンボランなど)により還元処理した後に安定剤(次亜リン酸ナトリウム、ジメチルアミンボランなど)を添加して無電解銅メッキ用の微細な銅触媒液を製造することが開示される。
【0005】
特許文献2には、銅塩(製造例2では、銅アンミン錯体)とアニオン性界面活性剤と還元剤からなる無電解メッキ用触媒を被メッキ物に付与し、無電解銅メッキを施した後、電気銅メッキを施すことが開示される(請求項1〜2、段落42)。
【0006】
特許文献3には、基板に酸化銅(I)コロイド触媒溶液による触媒付与をした後、銅塩と還元剤と錯化剤を含む溶液への浸漬で銅を基板にダイレクトプレーティングすることが開示される。
【0007】
特許文献4には、被メッキ物を界面活性剤(カチオン性、両性、ノニオン性など;段落56)を含むコンディショニング剤で前処理し、第一銅塩と次亜リン酸塩と塩素イオン、或いはさらに還元剤(アミンボラン類、水素化ホウ素類など)を含む触媒溶液で触媒処理し、無電解銅メッキをする方法(請求項8〜9、段落70)が開示される。
上記コンディショニング剤のうち、特にカチオン性界面活性剤を用いると、被メッキ物に吸着した界面活性剤の親水基がマイナスに帯電し、上記第一銅イオンが吸着し易くなることが記載される(段落58)。
【0008】
特許文献5には、貴金属/金属−コロイド(例えば、パラジウム/スズのコロイド溶液)を含む活性化剤の分散液で非導電性基板を処理し、次いで銅塩溶液と錯化剤と還元剤を含む導電体溶液に接触させた後、無電解メッキ及び電気メッキを行う方法が記載される(段落1、13、24、29、65、表1)。
【0009】
上記水系触媒液では、可溶性金属塩を還元剤で処理して金属の微細粒子を生成することを基本原理にしているが、この原理の触媒液は、上記特許文献1〜5のものを含めて、一般に経時安定性に問題があるものが多く、触媒付与と無電解メッキの作業の連続性を長時間に亘り円滑に確保することが容易でないという実情がある。
経時安定性が低下すると、触媒付与して無電解銅メッキを施ししても、皮膜が良好に析出しない場合や、部分的に皮膜析出しないメッキ欠け、或いはメッキ皮膜にムラが生じたり、均一性に劣るなどの問題がある。
例えば、建浴初期の触媒液で処理した後に無電解メッキした銅皮膜の場合、建浴時の経時安定性が低いほど皮膜外観は劣るが、建浴後数カ月単位の経時安定性も考慮する必要がある。即ち、建浴初期の触媒液で処理した皮膜外観は良い場合でも、建浴から数カ月経過後の触媒液で処理すると皮膜外観に上記メッキ欠けやムラが生じる場合が少なくないため、触媒液の経時安定性は重要である。
【0010】
そこで、本出願人は、特願2014−022271号(以下、先願発明という)で、銅触媒液に銅塩を安定させるオキシカルボン酸類、アミノカルボン酸類などのコロイド安定剤を含有させるとともに、銅塩と当該安定剤の混合比率を調整し、且つ、界面活性剤の含有量をゼロか、ごく少量以下に抑制することで、触媒液の経時安定性を改善した銅コロイド触媒液を提案した。
【0011】
無電解メッキで得られる銅皮膜の外観の向上や処理コストの軽減を考えると、触媒液の経時安定性をさらに改善することが望まれる。
そこで、触媒液への糖類の添加が液の経時安定性に及ぼす影響の有無に着目するとともに、触媒付与後に無電解銅メッキを行うに際し、糖類を使用する技術的事項を含む特許文献を抽出すると、次の通りである。
(1)特許文献6
非導電性基板に金属塩を還元して触媒付与処理をし、無電解銅メッキ処理をする方法であり(請求項1、段落1)、上記触媒付与を行う組成物には、ブドウ糖(グルコース)、ガラクトース、麦芽糖(マルトース)、果糖(フルクトース)、木糖(キシロース)などの還元糖を含む(請求項1、10、段落1、24)。また、上記組成物にはクエン酸、酒石酸、リンゴ酸などの緩衝剤を含有できる(段落19)。
類似の先行文献に特開2012−127002号公報(ローム&ハース)がある。
【0012】
(2)特許文献7
非導電性基板に金属塩(銅塩など)を還元して触媒付与処理をし、無電解銅メッキ処理をする方法であり(請求項1、3、段落29、表1)、上記還元剤にはブドウ糖が挙げられる(段落25)。また、触媒溶液に、酒石酸、クエン酸、コハク酸などのカルボン酸、ショ糖、果糖などの糖類を溶解させることで、基材表面への触媒金属の付着量を高められる(段落31)。
【0013】
(3)特許文献8
銅触媒液ではなく、銀コロイドの触媒液(前処理液)で触媒付与処理をした後、無電解銅メッキをする方法である(請求項1、35)。
上記触媒液にはクエン酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸などのオキシカルボン酸の外に(請求項1、3)、セルロース及びその誘導体、単糖類、多糖類及びその誘導体などの公知のコロイド分散剤を添加できる(段落46)。
単糖類、多糖類及びその誘導体は、ショ糖、マンニトール、ソルビトール、グリセロール、デキストリンなどである(段落50)。
【0014】
(4)特許文献9
樹脂成形体よりなる非導電性基板にエッチング処理をし、貴金属化合物(金、銀など)と第一スズ塩を含有するコロイド溶液に接触させた後、パラジウム化合物の水溶液に接触させて触媒付与処理をし、無電解銅メッキ処理をする方法である(請求項1〜2)。
上記触媒液ではなく、無電解銅メッキ液に対してブドウ糖、ソルビット、セルロース、ショ糖、マンニット、グルコノラクトンなどの還元性を有する糖類を含有できる(段落73)。
【0015】
(5)特許文献10
樹脂、セラミックス、ガラスなどの非導電性基板にエッチング処理をし、スズ塩(塩化第一スズなど)を付着させて感応化処理をし、硝酸銀溶液に浸漬してスズ上に銀を置換させてスズ−銀複合物を成長させ、還元性溶液に浸漬して活性化させた後、無電解銅メッキを行う方法であり(請求項1〜6、段落10、22)、上記還元性溶液にはブドウ糖を使用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平2−093076号公報
【特許文献2】特開平10−229280号公報
【特許文献3】特開平7−197266号公報
【特許文献4】特開2011−225929号公報
【特許文献5】特表2013−522476号公報
【特許文献6】特開2012−130910号公報
【特許文献7】特開2003−313670号公報
【特許文献8】特開2004−190042号公報
【特許文献9】特開2006−299366号公報
【特許文献10】特開2005−146330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上記特許文献6〜10には、前処理剤としての触媒液にブドウ糖、果糖、麦芽糖、セルロースなどの糖類、或いは、マンニトール、ソルビトールなどの糖アルコールが使用されている。
但し、特許文献9では、触媒液ではなく、無電解銅メッキ液に糖類や糖アルコールが使用されている。
本発明は、上記先願発明を基礎としてその特徴的な成分構成を発展させて、銅コロイド触媒液の経時安定性をさらに一段向上させることを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、上記特許文献6〜10を出発点にして、糖類や糖アルコールからなる糖質を添加した銅コロイド触媒液とその経時安定性との関係を鋭意研究した結果、特定の糖質を選択して銅コロイド触媒液に添加すると、糖質のない場合より触媒液の経時安定性を効率よく向上できること、また、特定以外の糖質を添加しても上記経時安定性は向上しないか、逆に低下することを見い出して、本発明を完成した。
【0019】
即ち、本発明1は、無電解銅メッキを施す非導電性基板に接触させて触媒付与を行うための銅コロイド触媒液において、
(A)可溶性銅塩と、
(B)還元剤と、
(C)モノカルボン酸類、オキシカルボン酸類、アミノカルボン酸類、ポリカルボン酸類よりなる群から選ばれたコロイド安定剤の少なくとも一種と、
(D)ブドウ糖、果糖、乳糖、マルトール、イソマルツロース、キシロース、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、マルチトール、エリスリトール、還元水飴、ラクチトール、還元パラチノース、グルコノラクトンから選ばれた糖質の少なくとも一種
とを添加することで得られる 無電解銅メッキ用の銅コロイド触媒液である。
【0020】
本発明2は、上記本発明1において、可溶性塩(A)とコロイド安定剤(C)の含有モル比率がA:C=1:0.03〜1:35であることを特徴とする無電解銅メッキ用の銅コロイド触媒液である。
【0021】
本発明3は、上記本発明1又は2において、さらに、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミンから選ばれた合成系水溶性ポリマーの少なくとも一種を含有することを特徴とする無電解銅メッキ用の銅コロイド触媒液である。
【0022】
本発明4は、上記本発明1〜3のいずれかにおいて、還元剤(B)が、水素化ホウ素化合物、アミンボラン類、次亜リン酸類、アルデヒド類、アスコルビン酸類、ヒドラジン類、多価フェノール類、多価ナフトール類、フェノールスルホン酸類、ナフトールスルホン酸類、スルフィン酸類よりなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする無電解銅メッキ用の銅コロイド触媒液である。
【0023】
本発明5は、上記本発明1〜4のいずれかにおいて、コロイド安定剤(C)のうちの、モノカルボン酸類が、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びこれらの塩よりなる群から選ばれた少なくとも一種であり、
オキシカルボン酸類が、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸、グルコヘプトン酸、グリコール酸、乳酸、トリオキシ酪酸、アスコルビン酸、イソクエン酸、タルトロン酸、グリセリン酸、ヒドロキシ酪酸、ロイシン酸、シトラマル酸、及びこれらの塩よりなる群から選ばれた少なくとも一種であり、
アミノカルボン酸類が、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四プロピオン酸、ニトリロ三酢酸、イミノジ酢酸、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸、イミノジプロピオン酸、1,3−プロパンジアミン四酢酸、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、メタフェニレンジアミン四酢酸、1,2−ジアミノシクロヘキサン−N,N,N′,N′−四酢酸、ジアミノプロピオン酸、グルタミン酸、ジカルボキシメチルグルタミン酸、オルニチン、システイン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン、(S、S)−エチレンジアミンコハク酸及びこれらの塩よりなる群から選ばれた少なくとも一種であり、
ポリカルボン酸類(C)が、コハク酸、グルタル酸、マロン酸、アジピン酸、シュウ酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、メサコン酸及びこれらの塩よりなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする無電解銅メッキ用の銅コロイド触媒液である。
【0024】
本発明6は、(a)ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤よりなる群から選ばれた吸着促進剤の少なくとも一種の含有液に非導電性基板を浸漬する吸着促進工程(前処理工程)と、
(b)上記本発明1〜5のいずれかの銅コロイド触媒液に非導電性基板を浸漬して、基板表面上に銅コロイド粒子を吸着させる触媒付与工程と、
(c)吸着処理された上記基板上に無電解銅メッキ液を用いて銅皮膜を形成する無電解メッキ工程
とからなることを特徴とする無電解銅メッキ方法である。
【0025】
本発明7は、上記本発明6において、工程(a)の吸着促進剤が、カチオン系界面活性剤及び/又は両性界面活性剤であることを特徴とする無電解銅メッキ方法である。
【0026】
本発明8は、上記本発明6又は7の無電解銅メッキ方法で非導電性基板に銅皮膜を形成したことを特徴とする非導電性基板の製造方法である。
【発明の効果】
【0027】
前記先願発明では、銅塩と還元剤とコロイド安定剤を含有する銅触媒液に非導電性基板を浸漬することで、その触媒活性により、次の無電解銅メッキ工程で良好な外観の銅皮膜を析出させることを提案した。
本発明では、この先願発明の銅触媒液の必須成分に特定の糖質をさらに付加することにより、触媒液の経時安定性を顕著に向上して、無電解メッキにより外観に優れた銅皮膜を得ることができる。
特に、建浴から数カ月経過してもコロイド触媒液は安定であるため、優れた外観の皮膜を得ることができ、触媒液のメンテナンスを軽減して無電解銅メッキの生産性を向上できる。
無電解銅メッキの予備処理としては、従来、スズ−パラジウム等による触媒付与があったが、本発明では貴金属を使用しないため、基板に付与したパラジウムの除去も必要なく基板製造のコストを安価にできる。
また、非導電性基板に触媒付与する前に界面活性剤により吸着促進処理をすると、銅コロイド触媒の効果を改善できる。特に、カチオン系活性剤で処理すると、銅コロイド触媒の効果が著しく向上する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、第一に、非導電性基板に接触させて触媒付与を行うための銅コロイド触媒液であって、(A)可溶性銅塩と(B)還元剤と(C)コロイド安定剤に、さらに(D)特定の糖質を添加することで得られる無電解銅メッキ用の銅コロイド触媒液であり、第二に、上記第一の触媒液を用いた無電解銅メッキ方法であり、予め非導電性基板を界面活性剤の含有液で吸着促進処理し、次いで、上記触媒液により触媒付与した後に無電解銅メッキを行う方法であり、第三に、第二のメッキ方法で銅皮膜を形成した非導電性基板の製造方法である。
上記非導電性基板は、ガラス・エポキシ樹脂、ガラス・ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、PET樹脂などの樹脂基板を初め、ガラス基板、セラミックス基板などをいう。
【0029】
上記本発明1の銅コロイド触媒液を製造するために添加する必須成分は、(A)可溶性銅塩と、(B)還元剤と、(C)コロイド安定剤と、(D)特定の糖質である。
上記可溶性塩(A)は、水溶液中で第一又は第二銅イオンを発生させる可溶性の塩であれば任意のものが使用でき、特段の制限はなく、難溶性塩をも排除しない。具体的には、硫酸銅、酸化銅、塩化銅、ピロリン酸銅、炭酸銅、或いは酢酸銅、シュウ酸銅及びクエン酸銅等のカルボン酸銅塩、又はメタンスルホン酸銅及びヒドロキシエタンスルホン酸銅等の有機スルホン酸銅塩などが挙げられ、硫酸銅、クエン酸銅、メタンスルホン酸銅が好ましい。

【0030】
上記還元剤(B)としては、水素化ホウ素化合物、アミンボラン類、次亜リン酸類、アルデヒド類、アスコルビン酸類、ヒドラジン類、多価フェノール類、多価ナフトール類、フェノールスルホン酸類、ナフトールスルホン酸類、スルフィン酸類などが挙げられる。アルデヒド類はホルムアルデヒド、グリオキシル酸又はその塩などであり、多価フェノール類はカテコール、ヒドロキノン、レゾルシン、ピロガロール、フロログルシン、没食子酸などであり、フェノールスルホン酸類はフェノールスルホン酸、クレゾールスルホン酸又はその塩などである。
【0031】
上記コロイド安定剤(C)はメッキ浴中で銅錯体を形成する化合物であり、触媒液の経時安定性を担保する機能を果たすものである。
当該コロイド安定剤(C)は、モノカルボン酸類、オキシカルボン酸類、アミノカルボン酸類、ポリカルボン酸類よりなる群から選ばれる。
上記モノカルボン酸類としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びこれらの塩などが挙げられる。
【0032】
上記オキシカルボン酸類としては、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸、ゴルコヘプトン酸、グリコール酸、乳酸、トリオキシ酪酸、アスコルビン酸、イソクエン酸、タルトロン酸、グリセリン酸、ヒドロキシ酪酸、ロイシン酸、シトラマル酸、及びこれらの塩などが挙げられる。
【0033】
上記アミノカルボン酸類としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、エチレンジアミンテトラプロピオン酸、ニトリロ三酢酸(NTA)、イミノジ酢酸(IDA)、イミノジプロピオン酸(IDP)、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸、1,3−プロパンジアミン四酢酸、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、メタフェニレンジアミン四酢酸、1,2−ジアミノシクロヘキサン−N,N,N′,N′−四酢酸、ジアミノプロピオン酸、グルタミン酸、ジカルボキシメチルグルタミン酸、オルニチン、システイン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン、(S、S)−エチレンジアミンコハク酸及びこれらの塩などが挙げられる。
【0034】
上記ポリカルボン酸類としては、コハク酸、グルタル酸、マロン酸、アジピン酸、シュウ酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、メサコン酸及びこれらの塩などが挙げられる。
【0035】
本発明のコロイド触媒液は特定の糖質(D)を選択・添加することに特徴がある。
上記糖質(D)は、主にコロイド触媒液の経時安定性を向上するために添加され、グルコース(ブドウ糖)、フルクトース(果糖)、ラクトース(乳糖)、マルトース(麦芽糖)、イソマルツロース(パラチノース)、キシロース、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、マルチトール、エリスリトール、還元水飴、ラクチトール、還元イソマルツロース、グルコノラクトンから選択される。
上記グルコース、フルクトース、キシロースなどは単糖類、グルコノラクトンは単糖類の誘導体、ラクトース、マルトースなどは二糖類、ソルビトール、キシリトール、マンニトールなどは糖アルコールに属するが、本発明の糖質は上記糖類及びその誘導体、糖アルコールを包含する概念である。
上記還元水飴は、ブドウ糖、マルトースなどの特定の上記糖類のアルデヒド基を水酸基に還元したものをいう。また、上記糖質(D)としては、グルコース、フルクトース、キシロースなどの特定の単糖類が3以上のグリコシド結合で重合したオリゴマーも同じく有効である。
一方、上記糖質は特定の成分から選択されるので、澱粉、デキストリンなどは排除される。
好ましい糖質には、 グルコース、フルクトース、ラクトース、マルトース、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、グルコノラクトン が挙げられ、糖アルコールが概ね好ましい。
【0036】
本発明の銅コロイド触媒液は水系なので、液の溶媒は水及び/又は親水性アルコールに限定され、有機溶媒(親油性アルコールを含む)単用は排除される。
また、当該触媒液については、中性付近では触媒活性が低下し易いため、液のpHは中性域(pH6〜8)を除く酸性側又はアルカリ側が好ましく、具体的にはpH1〜6及び8〜12が適しており、好ましくはpH2〜5及び8〜11に調整すると銅コロイド粒子は安定化し易い。
【0037】
銅コロイド触媒液において、上記可溶性銅塩(A)は単用又は併用でき、その含有量は0.005〜3モル/L、好ましくは0.05〜2モル/L、より好ましくは0.04〜1.2モル/Lである。
上記還元剤(B)は単用又は併用でき、その含有量は0.005〜4モル/L、好ましくは0.02〜3モル/L、より好ましくは0.03〜2.2モル/Lである。還元剤の含有量が適正量より少ないと銅塩の還元作用が低下し、逆に、多過ぎると無電解メッキで析出する銅皮膜の均質性が低下する恐れがある。
上記コロイド安定剤(C)は単用又は併用でき、その含有量は0.005〜4モル/L、好ましくは0.01〜2モル/L、より好ましくは0.05〜1.6モル/Lである。
上記糖質(D)は単用又は併用でき、その含有量は0.001〜4モル/L、好ましくは0.01〜3モル/L、より好ましくは0.05〜2.2モル/Lである。
【0038】
銅コロイド触媒液において、上記(A)と(C)の含有モル比率はA:C=1:0.03〜1:35であり、好ましくはA:C=1:0.5〜1:24である。コロイド安定剤(C)の相対含有率が少な過ぎると触媒液の経時安定性が低下し、ひいては無電解メッキにより得られる銅皮膜に析出不良を生じる要因ともなる。逆に、コロイド安定剤(C)の含有率が多過ぎても、触媒液の経時安定性を損ない、得られる銅皮膜の質を低下させることになる(後述の試験例参照)。
銅コロイド触媒液において、上記(A)と(B)の含有モル比率はA:B=1:0.01〜1:6であり、好ましくはA:B=1:0.05〜1:4、より好ましくはA:B=1:0.07〜1:2である。
銅コロイド触媒液において、上記(A)と(D)の含有モル比率はA:D=1:0.01〜1:40であり、好ましくはA:D=1:0.1〜1:25、より好ましくはA:D=1:1〜1:15である。糖質(D)の相対含有率が多すぎると、かえってコロイド触媒液が過剰に安定化して触媒活性を失い、非導電性基板への触媒核の付与、ひいては良好な外観の皮膜形成に支障がでる恐れがある。
【0039】
当該触媒液の調製に際しては、還元剤から銅イオンに電子を円滑に供与するため、還元剤の溶液を可溶性銅塩(及びコロイド安定剤)の含有溶液に時間をかけて緩やかに滴下して製造することを基本とする。例えば、5〜50℃(好ましくは10〜40℃)の還元剤溶液を銅塩溶液に滴下して20〜1200分間(好ましくは30〜300分間)撹拌し、触媒液を調製する。尚、触媒液の調製では、可溶性銅塩の溶液を還元剤の液に滴下することを排除するものではない。
本発明の触媒液において、還元剤の作用により可溶性銅塩から生じる銅コロイド粒子は適した平均粒径が1〜250nm、好ましくは1〜120nm、より好ましくは1〜100nmの微細粒子である。
銅コロイド粒子の平均粒径が250nm以下になると、触媒液に非導電性基板を浸漬した場合、コロイド粒子が基板の微細な凹凸面の窪みに入り込み、緻密に吸着し、或いは引っ掛かるなどのアンカー効果により基板表面に銅コロイド核の付与が促進されるものと推定できる。逆に、平均粒径が250nmより大きくなると、凝集、沈殿或いは分離などにより、安定な銅コロイドが得られにくいうえ、アンカー効果も期待できないため、銅コロイド粒子が基板表面に部分的にしか付与できなかったり、付与不良になる恐れがある。
【0040】
本発明1の銅コロイド触媒液には界面活性剤を含有することができるが、触媒活性が低下する恐れがあるため、950mg/L以下の少量に抑える方が好ましい。
上記界面活性剤はノニオン系、両性、カチオン系、或いはアニオン系の各種界面活性剤を意味し、特に、両性、カチオン系、アニオン系、或いは、低分子のノニオン系界面活性剤は好ましくない。
上記ノニオン系界面活性剤としては、C1〜C20アルカノール、フェノール、ナフトール、ビスフェノール類、(ポリ)C1〜C25アルキルフェノール、(ポリ)アリールアルキルフェノール、C1〜C25アルキルナフトール、C1〜C25アルコキシル化リン酸(塩)、ソルビタンエステル、ポリアルキレングリコール、C1〜C22脂肪族アミン、C1〜C22脂肪族アミドなどにエチレンオキシド(EO)及び/又はプロピレンオキシド(PO)を2〜300モル付加縮合させたものや、C1〜C25アルコキシル化リン酸(塩)などが挙げられる。
上記カチオン系界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩、或いはピリジニウム塩などが挙げられ、具体的には、ラウリルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルトリメチルアンモニウム塩、ラウリルジメチルエチルアンモニウム塩、オクタデシルジメチルエチルアンモニウム塩、ジメチルベンジルラウリルアンモニウム塩、セチルジメチルベンジルアンモニウム塩、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム塩、トリメチルベンジルアンモニウム塩、トリエチルベンジルアンモニウム塩、ジメチルジフェニルアンモニウム塩、ベンジルジメチルフェニルアンモニウム塩、ヘキサデシルピリジニウム塩、ラウリルピリジニウム塩、ドデシルピリジニウム塩、ステアリルアミンアセテート、ラウリルアミンアセテート、オクタデシルアミンアセテートなどが挙げられる。
上記アニオン系界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、{(モノ、ジ、トリ)アルキル}ナフタレンスルホン酸塩などが挙げられる。 上記両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン、イミダゾリンベタイン、スルホベタイン、アミノカルボン酸などが挙げられる。また、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドとアルキルアミン又はジアミンとの縮合生成物の硫酸化、或はスルホン酸化付加物も使用できる。
【0041】
本発明の銅コロイド触媒液には、コロイド粒子の分散性を向上し、無電解銅メッキに際して均一でムラのない皮膜を得るために、合成系の水溶性ポリマーを含有することができる。
当該合成系水溶性ポリマーを触媒液に含有するとコロイド粒子の分散性が向上し、もって無電解銅メッキに際して、優れた均一性とムラのない銅皮膜の析出に寄与する。
上記合成系水溶性ポリマーとは、ゼラチン、澱粉などの天然由来の水溶性ポリマーを排除する意味であり、半合成系のカルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)などのセルロース誘導体は排除しない。
本発明3の触媒液の含有対象である合成系の水溶性ポリマーは、上記界面活性剤との関係で、その属する成分に一部重複する可能性も考えられるが、本発明では両者は別の概念である。
本発明3の触媒液では、水溶性ポリマー以外の成分の含有については要件としないため、例えば、界面活性剤の含有の有無は問わず、含有しても、或いはしなくても良い。
上記合成系の水溶性ポリマーとしては、本発明3に示すように、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリアクリル酸塩などが挙げられ、特に、高分子量のPEG、PVP、PVAなどが好ましい。
合成系の水溶性ポリマーは単用又は併用でき、その触媒液に対する含有量は0.05〜100g/Lであり、好ましくは0.5〜50g/L、さらに好ましくは1.0〜30g/Lである。
【0042】
本発明6は、上記銅コロイド触媒液を用いた無電解メッキ方法であり、次の3つの工程を順次組み合わせてなる。
(a)吸着促進工程
(b)触媒付与工程
(c)無電解銅メッキ工程
上記吸着促進工程(a)はいわば(b)の触媒付与の前処理(予備処理)工程であり、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤よりなる群から選ばれた吸着促進剤の少なくとも一種の含有液に非導電性基板を浸漬する工程であり、基板を界面活性剤の含有液に接触させることで基板表面の濡れ性を高めて触媒活性を増強し、次工程での銅コロイド粒子の吸着を促進するものである。
吸着促進工程では、非導電性基板を界面活性剤の含有液を接触させることが必要であるため、液に浸漬させることが基本であるが、含有液を基板に噴霧したり、刷毛で塗布するなどしても差し支えない。
本発明7に示すように、吸着を促進する見地から、正電荷を帯びたカチオン系や両性界面活性剤が好適であり、特にカチオン系界面活性剤がより好ましい。また、カチオン系界面活性剤に少量のノニオン系界面活性剤を併用すると、吸着促進効果がさらに増す。
本発明の触媒液において、可溶性銅塩に還元剤を作用させて生じる銅コロイド粒子はゼータ電位がマイナスであるため、例えば、非導電性基板をカチオン性界面活性剤で接触処理すると、基板がプラス電荷を帯び易く、次工程における銅コロイド粒子の基板への吸着効率が増す。
界面活性剤の具体例は、前記本発明1の触媒液において排除又は抑制対象として述べた界面活性剤の説明の通りである。
界面活性剤の含有量は0.05〜100g/Lであり、好ましくは0.5〜50g/Lである。界面活性剤の含有液の温度は15〜70℃程度、浸漬時間は0.5〜20分間程度が好ましい。
【0043】
吸着促進処理を終えた非導電性基板は純水で洗浄した後、乾燥し、或いは乾燥することなく、次の触媒付与工程(b)に移行する。
触媒付与工程では、上記銅コロイド触媒液に非導電性基板を浸漬して、基板表面上に銅コロイドを吸着させる。
当該触媒液の液温は5〜70℃、好ましくは15〜60℃、浸漬時間は0.1〜20分、好ましくは0.2〜10分であり、浸漬処理に際しては、基板を触媒液に静置状態で浸漬すれば充分であるが、撹拌や揺動を行っても良い。
また、当該触媒付与工程(b)の後で、且つ、次の無電解銅メッキ工程(c)の前に、酸洗浄処理の工程を加入すると、酸洗浄なしの場合に比べて当該触媒活性による活性度を更に増進させることができ、ビアやスルホールのある複雑な形状の基板に対してもメッキむらや断線の弊害を確実に防止し、銅皮膜の密着性をより向上できる。
酸洗浄処理にあっては、酸の濃度は10〜200g/L、好ましくは20〜100g/Lであり、酸には硫酸、塩酸などの無機酸、有機スルホン酸、酢酸、酒石酸、クエン酸等のカルボン酸などの有機酸を使用できる。
酸洗浄の処理温度は5〜70℃、好ましくは15〜60℃であり、処理時間は0.1〜20分、好ましくは0.2〜10分である。
【0044】
触媒液に浸漬した非導電性基板は純水で洗浄した後、乾燥し、或いは乾燥することなく、無電解銅メッキ工程(c)に移行する。
無電解銅メッキは、従来と同様に処理すれば良く、特段の制約はない。無電解銅メッキ液の液温は一般に15〜70℃、好ましくは20〜60℃である。
銅メッキ液の撹拌では、空気撹拌、急速液流撹拌、撹拌羽根等による機械撹拌等を使用することができる。
本発明8は、上記無電解銅メッキ方法で非導電性基板に銅皮膜を形成した、非導電性基板の製造方法であり、本発明6の吸着促進、触媒付与、無電解メッキの各工程を経て上記基板に銅皮膜を形成する方法をいう。
非導電性基板は、前述した通り、ガラス・エポキシ樹脂、ガラス・ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂などの樹脂基板、或いはガラス基板やセラミックス基板などをいう。
【0045】
無電解銅メッキ液の組成に特段の制限はなく、公知の銅メッキ液を使用できる。
無電解銅メッキ液は、基本的に可溶性銅塩と、還元剤と、錯化剤を含有し、或いは、さらに界面活性剤やpH調整剤などの各種添加剤、又は酸を含有できる。
可溶性銅塩については、前記銅コロイド触媒液で述べた通りである。
【0046】
無電解銅メッキ液に含有される還元剤についても、前記銅コロイド触媒液で述べた通りであり、ホルムアルデヒド(ホルマリン水)を初め、次亜リン酸類、亜リン酸類、アミンボラン類、水素化ホウ素類、グリオキシル酸などであり、ホルマリン水が好ましい。
【0047】
無電解銅メッキ液に含有される錯化剤については、前記銅コロイド触媒液で述べたコロイド安定剤と共通する部分もあり、具体的には、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、イミノジ酢酸(IDA)などのアミノカルボン酸類、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンなどのポリアミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミノアルコール類、クエン酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸などのオキシカルボン酸類、チオグリコール酸、グリシンなどである。
【0048】
無電解銅メッキ液には、液のベース成分として有機酸及び無機酸、或いはその塩を含有しても良い。
上記無機酸には、硫酸、ピロリン酸、ホウフッ酸などが挙げられる。また、有機酸には、グリコール酸や酒石酸等のオキシカルボン酸、メタンスルホン酸や2―ヒドロキシエタンスルホン酸等の有機スルホン酸などが挙げられる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明の吸着促進剤の含有液、銅コロイド触媒液、並びに無電解銅メッキ液の調製を含む無電解銅メッキ方法の実施例を述べるとともに、銅コロイド触媒液の経時安定性と上記実施例で得られた銅皮膜の外観についての評価試験例を順次説明する。
尚、本発明は下記の実施例、試験例に拘束されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論である。
【0050】
《無電解銅メッキ方法の実施例》
下記の実施例1〜20のうち、実施例9〜10は触媒液に合成系の水溶性ポリマーを含有する例、それ以外の実施例は当該水溶性ポリマーを含まない例であり、概ね実施例2〜20は実施例1或いは実施例4を基本にして、成分などを変更したものである。
実施例1は触媒液にコロイド安定剤としてクエン酸、糖質としてキシリトール(糖アルコール)、還元剤として水素化ホウ素ナトリウムと次亜リン酸を夫々使用した例である。実施例2は実施例1を基本としてキシリトールの含有量を前記一般的な範囲の下限に調整した例、実施例3は同範囲の上限に調整した例である。実施例4は糖質にソルビトール(糖アルコール)を使用した例、同じく実施例5はマンニトール(糖アルコール)の使用例、実施例6はグルコノラクトン(単糖類の誘導体)の使用例、実施例7はグルコース(単糖類)の使用例、実施例8はマルトース(二糖類)の使用例である。実施例9は糖質にキシリトールを使用し、合成系の水溶性ポリマーにポリビニルピロリドンを使用した例である。実施例10は糖質にソルビトールを使用し、合成系の水溶性ポリマーにポリエチレングリコールを使用した例である。実施例11は糖質にキシリトールとソルビトールを併用した例(糖アルコール同士の併用例)、同じく実施例12は糖質にマンニトールとグルコースを併用した例である(糖アルコールと単糖類の併用例)。実施例13は実施例1を基本として可溶性銅塩を変更した例、実施例14は実施例4を基本として可溶性銅塩を変更した例である。実施例15〜16は実施例1を基本としてコロイド安定剤を変更した例、実施例17は実施例4を基本としてコロイド安定剤を変更した例である。実施例18は実施例4を基本として還元剤を変更した例、実施例19は実施例5を基本として還元剤を変更した例である。実施例20は実施例1を基本として触媒液のpHを弱アルカリ域に変更した例である。
また、実施例4と11は触媒付与工程の後で無電解銅メッキ工程の前に酸洗浄工程を介在させた例であり、他の実施例はすべて、酸洗浄なしで吸着促進→触媒付与→無電解銅メッキの各工程を順番に行った例である。
【0051】
一方、下記の比較例1〜3のうち、比較例1は触媒液にコロイド安定剤と糖質の両成分を含有しないブランク例である。比較例2は触媒液にコロイド安定剤を含み、本発明で規定する糖質とは異なる糖類(デンプン)を含む例である。比較例3は吸着促進工程なしで、直ちに触媒付与工程から無電解メッキ工程を行ったブランク例である。
また、基準例は前記先願発明に準拠したもので、触媒液にコロイド安定剤を含むが本発明で規定する糖質は含まない例である。
【0052】
(1)実施例1
《吸着促進、触媒付与並びに無電解メッキの処理手順》
先ず、非導電性基板であるガラス・エポキシ樹脂基板(板厚:1.0mm)をもって試料基板とした。
そして、下記(a)の吸着促進剤を用いて試料基板に吸着促進を行った後、下記(b)の触媒液に浸漬して触媒付与を行い、さらに下記(c)のメッキ液で無電解銅メッキを行った。
具体的には、前記吸着促進剤の含有液に前記試料基板を50℃、2分の条件で浸漬し、純水で洗浄した。次いで、吸着促進処理(前処理)を施した試料基板を前記銅コロイド触媒液に25℃、10分の条件で浸漬し、純水で洗浄した。その後、触媒付与を施した試料基板を上記無電解銅メッキ液中に浸漬して、50℃、10分の条件で無電解メッキを施して、試料基板上に銅皮膜を形成した後、純水で洗浄し、乾燥した。
(a)吸着促進剤の含有液の調製
次の組成で吸着促進剤の含有液を調製した。
[吸着促進剤の含有液]
ジアリルアミンポリマーの4級アンモニウム塩 5g/L
ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル 1g/L
pH 10.0
(b)銅コロイド触媒液の調製
[銅溶液]
硫酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
クエン酸 0.2モル/L
キシリトール 0.3モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.02モル/L
次亜リン酸 0.18モル/L
pH4.0に調整した25℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して45分撹拌し、銅コロイド触媒液を調製した。
上記触媒液の各成分のモル比率は、次の通りである。
銅塩:コロイド安定剤=1:2、銅塩:糖質=1:3、銅塩:還元剤=1:2
生成した銅コロイド粒子の平均粒径は約15nmであった。
(c)無電解銅メッキ液の調製
次の組成で無電解銅メッキ液を建浴した。当該メッキ液は下記の水酸化ナトリウムでpH調整した。
[無電解銅メッキ液]
硫酸銅五水和物(Cu2+として) 2.0g/L
ホルムアルデヒド 5.0g/L
EDTA 30.0g/L
水酸化ナトリウム 9.6g/L
残余 純水
pH(20℃) 12.8

【0053】
(2)実施例2
上記実施例1を基本として、銅コロイド触媒液を次の組成で調製した以外は、吸着促進剤の含有液と無電解銅メッキ液の組成並びに吸着促進、触媒付与、無電解銅メッキの各工程の処理条件は実施例1と同じとした。
(b)銅コロイド触媒液の調製
[銅溶液]
硫酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
クエン酸 0.2モル/L
キシリトール 0.001モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.02モル/L
次亜リン酸 0.18モル/L
pH4.0に調整した25℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して45分撹拌し、銅コロイド触媒液を調製した。
上記触媒液の各成分のモル比率は、次の通りである。
銅塩:コロイド安定剤=1:2、銅塩:糖質=1:0.01、銅塩:還元剤=1:2
生成した銅コロイド粒子の平均粒径は約25nmであった。
【0054】
(3)実施例3
上記実施例1を基本として、銅コロイド触媒液を次の組成で調製した以外は、吸着促進剤の含有液と無電解銅メッキ液の組成並びに吸着促進、触媒付与、無電解銅メッキの各工程の処理条件は実施例1と同じとした。
(b)銅コロイド触媒液の調製
[銅溶液]
硫酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
クエン酸 0.2モル/L
キシリトール 4.0モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.02モル/L
次亜リン酸 0.18モル/L
pH4.0に調整した25℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して45分撹拌し、銅コロイド触媒液を調製した。
上記触媒液の各成分のモル比率は、次の通りである。
銅塩:コロイド安定剤=1:2、銅塩:糖質=1:40、銅塩:還元剤=1:2
生成した銅コロイド粒子の平均粒径は約10nmであった。
【0055】
(4)実施例4
吸着促進、触媒付与、酸洗浄、無電解銅メッキの各工程を順番に行った例である。
但し、吸着促進、触媒付与、無電解銅メッキの各工程の処理条件並びに無電解銅メッキ液の組成は実施例1と同じであり、吸着促進剤の含有液と銅コロイド触媒液の各調製条件は次の通りである。
また、酸洗浄の処理条件は下記(d)に示す通りである。
(a)吸着促進剤の含有液の調製
次の組成で吸着促進剤の含有液を調製した。
[吸着促進剤の含有液]
ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド 5g/L
ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル 1g/L
pH 9.0
(b)銅コロイド触媒液の調製
[銅溶液]
硫酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
クエン酸 0.2モル/L
ソルビトール 0.3モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.02モル/L
次亜リン酸 0.18モル/L
pH4.0に調整した25℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して45分撹拌し、銅コロイド触媒液を調製した。
上記触媒液の各成分のモル比率は、次の通りである。
銅塩:コロイド安定剤=1:2、銅塩:糖質=1:3、銅塩:還元剤=1:2
生成した銅コロイド粒子の平均粒径は約40nmであった。
(d)酸洗浄の処理条件
硫酸50g/Lの洗浄液を調製し、上記触媒付与処理をした試料基板を当該洗浄液中に、45℃、1分間の条件で浸漬し、水洗した後、次の無電解銅メッキ工程に供した。
【0056】
(5)実施例5
吸着促進、触媒付与、無電解銅メッキの各工程の処理条件並びに無電解銅メッキ液の組成は実施例1と同じであり、吸着促進剤の含有液と銅コロイド触媒液の各調製条件は次の通りである。
(a)吸着促進剤の含有液の調製
次の組成で吸着促進剤の含有液を調製した。
[吸着促進剤の含有液]
ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン 5g/L
ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル 1g/L
pH 10.5
(b)銅コロイド触媒液の調製
[銅溶液]
硫酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
クエン酸 0.2モル/L
マンニトール 0.3モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.02モル/L
次亜リン酸 0.18モル/L
pH4.0に調整した25℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して45分撹拌し、銅コロイド触媒液を調製した。
上記触媒液の各成分のモル比率は、次の通りである。
銅塩:コロイド安定剤=1:2、銅塩:糖質=1:3、銅塩:還元剤=1:2
生成した銅コロイド粒子の平均粒径は約25nmであった。
【0057】
(6)実施例6
吸着促進、触媒付与、無電解銅メッキの各工程の処理条件並びに吸着促進剤の含有液と無電解銅メッキ液の組成は実施例1と同じであり、銅コロイド触媒液の調製条件は次の通りである。
(b)銅コロイド触媒液の調製
[銅溶液]
硫酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
クエン酸 0.2モル/L
グルコノラクトン 0.3モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.02モル/L
次亜リン酸 0.18モル/L
pH4.0に調整した25℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して45分撹拌し、銅コロイド触媒液を調製した。
上記触媒液の各成分のモル比率は、次の通りである。
銅塩:コロイド安定剤=1:2、銅塩:糖質=1:3、銅塩:還元剤=1:2
生成した銅コロイド粒子の平均粒径は約20nmであった。
【0058】
(7)実施例7
吸着促進、触媒付与、無電解銅メッキの各工程の処理条件並びに吸着促進剤の含有液と無電解銅メッキ液の組成は実施例1と同じであり、銅コロイド触媒液の調製条件は次の通りである。
(b)銅コロイド触媒液の調製
[銅溶液]
硫酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
クエン酸 0.2モル/L
グルコース 0.3モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.02モル/L
次亜リン酸 0.18モル/L
pH4.0に調整した25℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して45分撹拌し、銅コロイド触媒液を調製した。
上記触媒液の各成分のモル比率は、次の通りである。
銅塩:コロイド安定剤=1:2、銅塩:糖質=1:3、銅塩:還元剤=1:2
生成した銅コロイド粒子の平均粒径は約15nmであった。
【0059】
(8)実施例8
吸着促進、触媒付与、無電解銅メッキの各工程の処理条件並びに無電解銅メッキ液の組成は実施例1と同じであり、吸着促進剤の含有液と銅コロイド触媒液の各調製条件は次の通りである。
(a)吸着促進剤の含有液の調製
次の組成で吸着促進剤の含有液を調製した。
[吸着促進剤の含有液]
ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド 5g/L
ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル 1g/L
pH 10.5
(b)銅コロイド触媒液の調製
[銅溶液]
硫酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
クエン酸 0.2モル/L
マルトース 0.3モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.02モル/L
次亜リン酸 0.18モル/L
pH4.0に調整した25℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して60分撹拌し、銅コロイド触媒液を調製した。
上記触媒液の各成分のモル比率は、次の通りである。
銅塩:コロイド安定剤=1:2、銅塩:糖質=1:3、銅塩:還元剤=1:2
生成した銅コロイド粒子の平均粒径は約10nmであった。
【0060】
(9)実施例9
吸着促進、触媒付与、無電解銅メッキの各工程の処理条件並びに無電解銅メッキ液の組成は実施例1と同じであり、吸着促進剤の含有液と銅コロイド触媒液の各調製条件は次の通りである。
(a)吸着促進剤の含有液の調製
次の組成で吸着促進剤の含有液を調製した。
[吸着促進剤の含有液]
ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン 5g/L
ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル 1g/L
pH 10.0
(b)銅コロイド触媒液の調製
[銅溶液]
硫酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
クエン酸 0.2モル/L
キシリトール 0.3モル/L
ポリビニルピロリドン(平均分子量40,000) 2.0g/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.02モル/L
次亜リン酸 0.18モル/L
pH3.0に調整した25℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して45分撹拌し、銅コロイド触媒液を調製した。
上記触媒液の各成分のモル比率は、次の通りである。
銅塩:コロイド安定剤=1:2、銅塩:糖質=1:3、銅塩:還元剤=1:2
生成した銅コロイド粒子の平均粒径は約25nmであった。
【0061】
(10)実施例10
吸着促進、触媒付与、無電解銅メッキの各工程の処理条件並びに無電解銅メッキ液の組成は実施例1と同じであり、吸着促進剤の含有液と銅コロイド触媒液の各調製条件は次の通りである。
(a)吸着促進剤の含有液の調製
次の組成で吸着促進剤の含有液を調製した。
[吸着促進剤の含有液]
ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド 5g/L
ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル 1g/L
pH 10.0
(b)銅コロイド触媒液の調製
[銅溶液]
硫酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
クエン酸 0.2モル/L
ソルビトール 0.3モル/L
ポリエチレングリコール(平均分子量10,000) 1.0g/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.02モル/L
次亜リン酸 0.18モル/L
pH4.0に調整した25℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して90分撹拌し、銅コロイド触媒液を調製した。
上記触媒液の各成分のモル比率は、次の通りである。
銅塩:コロイド安定剤=1:2、銅塩:糖質=1:3、銅塩:還元剤=1:2
生成した銅コロイド粒子の平均粒径は約35nmであった。
【0062】
(11)実施例11
吸着促進、触媒付与、酸洗浄、無電解銅メッキの各工程を順番に行った例である。
但し、吸着促進、触媒付与、無電解銅メッキの各工程の処理条件並びに吸着促進剤の含有液と無電解銅メッキ液の組成は実施例1と同じであり、銅コロイド触媒液の調製条件は次の通りである。
また、酸洗浄の処理条件は下記(d)に示す通りである。
(b)銅コロイド触媒液の調製
[銅溶液]
硫酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
クエン酸 0.2モル/L
ソルビトール 0.2モル/L
キシリトール 0.1モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.02モル/L
次亜リン酸 0.18モル/L
pH4.0に調整した35℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して45分撹拌し、銅コロイド触媒液を調製した。
上記触媒液の各成分のモル比率は、次の通りである。
銅塩:コロイド安定剤=1:2、銅塩:糖質=1:3、銅塩:還元剤=1:2
生成した銅コロイド粒子の平均粒径は約25nmであった。
(d)酸洗浄の処理条件
硫酸50g/Lの洗浄液を調製し、上記触媒付与処理をした試料基板を当該洗浄液中に、45℃、1分間の条件で浸漬し、水洗した後、次の無電解銅メッキ工程に供した。
【0063】
(12)実施例12
吸着促進、触媒付与、無電解銅メッキの各工程の処理条件並びに無電解銅メッキ液の組成は実施例1と同じであり、吸着促進剤の含有液と銅コロイド触媒液の各調製条件は次の通りである。
(a)吸着促進剤の含有液の調製
次の組成で吸着促進剤の含有液を調製した。
[吸着促進剤の含有液]
ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド 5g/L
ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル 1g/L
pH 8.5
(b)銅コロイド触媒液の調製
[銅溶液]
硫酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
クエン酸 0.2モル/L
マンニトール 0.2モル/L
グルコース 0.2モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.02モル/L
次亜リン酸 0.18モル/L
pH3.0に調整した35℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して45分撹拌し、銅コロイド触媒液を調製した。
上記触媒液の各成分のモル比率は、次の通りである。
銅塩:コロイド安定剤=1:2、銅塩:糖質=1:4、銅塩:還元剤=1:2
生成した銅コロイド粒子の平均粒径は約15nmであった。
【0064】
(13)実施例13
吸着促進、触媒付与、無電解銅メッキの各工程の処理条件並びに吸着促進剤の含有液と無電解銅メッキ液の組成は実施例1と同じであり、銅コロイド触媒液の調製条件は次の通りである。
(b)銅コロイド触媒液の調製
[銅溶液]
メタンスルホン酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
クエン酸 0.2モル/L
キシリトール 0.3モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.02モル/L
次亜リン酸 0.18モル/L
pH5.0に調整した35℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して45分撹拌し、銅コロイド触媒液を調製した。
上記触媒液の各成分のモル比率は、次の通りである。
銅塩:コロイド安定剤=1:2、銅塩:糖質=1:3、銅塩:還元剤=1:2
生成した銅コロイド粒子の平均粒径は約10nmであった。
【0065】
(14)実施例14
吸着促進、触媒付与、無電解銅メッキの各工程の処理条件並びに吸着促進剤の含有液と無電解銅メッキ液の組成は実施例1と同じであり、銅コロイド触媒液の調製条件は次の通りである。
(b)銅コロイド触媒液の調製
[銅溶液]
クエン酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
クエン酸 0.2モル/L
ソルビトール 0.3モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.02モル/L
次亜リン酸 0.18モル/L
pH5.0に調整した35℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して45分撹拌し、銅コロイド触媒液を調製した。
上記触媒液の各成分のモル比率は、次の通りである。
銅塩:コロイド安定剤=1:2、銅塩:糖質=1:3、銅塩:還元剤=1:2
生成した銅コロイド粒子の平均粒径は約25nmであった。
【0066】
(15)実施例15
吸着促進、触媒付与、無電解銅メッキの各工程の処理条件並びに吸着促進剤の含有液と無電解銅メッキ液の組成は実施例1と同じであり、銅コロイド触媒液の調製条件は次の通りである。
(b)銅コロイド触媒液の調製
[銅溶液]
硫酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
ギ酸 0.2モル/L
キシリトール 0.3モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.02モル/L
次亜リン酸 0.18モル/L
pH4.0に調整した35℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して45分撹拌し、銅コロイド触媒液を調製した。
上記触媒液の各成分のモル比率は、次の通りである。
銅塩:コロイド安定剤=1:2、銅塩:糖質=1:3、銅塩:還元剤=1:2
生成した銅コロイド粒子の平均粒径は約15nmであった。
【0067】
(16)実施例16
吸着促進、触媒付与、無電解銅メッキの各工程の処理条件並びに吸着促進剤の含有液と無電解銅メッキ液の組成は実施例1と同じであり、銅コロイド触媒液の調製条件は次の通りである。
(b)銅コロイド触媒液の調製
[銅溶液]
硫酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
乳酸 0.2モル/L
キシリトール 0.3モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.02モル/L
次亜リン酸 0.18モル/L
pH4.0に調整した35℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して45分撹拌し、銅コロイド触媒液を調製した。
上記触媒液の各成分のモル比率は、次の通りである。
銅塩:コロイド安定剤=1:2、銅塩:糖質=1:3、銅塩:還元剤=1:2
生成した銅コロイド粒子の平均粒径は約10nmであった。
【0068】
(17)実施例17
吸着促進、触媒付与、無電解銅メッキの各工程の処理条件並びに吸着促進剤の含有液と無電解銅メッキ液の組成は実施例1と同じであり、銅コロイド触媒液の調製条件は次の通りである。
(b)銅コロイド触媒液の調製
[銅溶液]
硫酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
ニトリロ三酢酸 0.2モル/L
ソルビトール 0.3モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.02モル/L
次亜リン酸 0.18モル/L
pH4.0に調整した35℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して45分撹拌し、銅コロイド触媒液を調製した。
上記触媒液の各成分のモル比率は、次の通りである。
銅塩:コロイド安定剤=1:2、銅塩:糖質=1:3、銅塩:還元剤=1:2
生成した銅コロイド粒子の平均粒径は約15nmであった。
【0069】
(18)実施例18
吸着促進、触媒付与、無電解銅メッキの各工程の処理条件並びに吸着促進剤の含有液と無電解銅メッキ液の組成は実施例1と同じであり、銅コロイド触媒液の調製条件は次の通りである。
(b)銅コロイド触媒液の調製
[銅溶液]
硫酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
クエン酸 0.2モル/L
ソルビトール 0.3モル/L
[還元剤溶液]
ジメチルアミンボラン 0.02モル/L
アスコルビン酸 0.18モル/L
pH4.0に調整した25℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して45分撹拌し、銅コロイド触媒液を調製した。
上記触媒液の各成分のモル比率は、次の通りである。
銅塩:コロイド安定剤=1:2、銅塩:糖質=1:3、銅塩:還元剤=1:2
生成した銅コロイド粒子の平均粒径は約25nmであった。
【0070】
(19)実施例19
吸着促進、触媒付与、無電解銅メッキの各工程の処理条件並びに吸着促進剤の含有液と無電解銅メッキ液の組成は実施例1と同じであり、銅コロイド触媒液の調製条件は次の通りである。
(b)銅コロイド触媒液の調製
[銅溶液]
硫酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
クエン酸 0.2モル/L
マンニトール 0.3モル/L
[還元剤溶液]
ジメチルアミンボラン 0.02モル/L
アスコルビン酸 0.18モル/L
pH4.0に調整した25℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して45分撹拌し、銅コロイド触媒液を調製した。
上記触媒液の各成分のモル比率は、次の通りである。
銅塩:コロイド安定剤=1:2、銅塩:糖質=1:3、銅塩:還元剤=1:2
生成した銅コロイド粒子の平均粒径は約15nmであった。
【0071】
(20)実施例20
吸着促進、触媒付与、無電解銅メッキの各工程の処理条件並びに吸着促進剤の含有液と無電解銅メッキ液の組成は実施例1と同じであり、銅コロイド触媒液の調製条件は次の通りである。
(b)銅コロイド触媒液の調製
[銅溶液]
硫酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
EDTA 0.2モル/L
キシリトール 0.3モル/L
[還元剤溶液]
ジメチルアミンボラン 0.02モル/L
アスコルビン酸 0.18モル/L
pH9.0に調整した25℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して45分撹拌し、銅コロイド触媒液を調製した。
上記触媒液の各成分のモル比率は、次の通りである。
銅塩:コロイド安定剤=1:2、銅塩:糖質=1:3、銅塩:還元剤=1:2
生成した銅コロイド粒子の平均粒径は約30nmであった。
【0072】
(21)比較例1
上記実施例1を基本とするが、銅コロイド触媒液にコロイド安定剤と糖質を含まないブランク例である。
即ち、吸着促進、触媒付与、無電解銅メッキの各工程の処理条件並びに吸着促進剤の含有液と無電解銅メッキ液の組成は実施例1と同じであり、銅コロイド触媒液の調製条件は次の通りである。
(b)銅コロイド触媒液の調製
[銅溶液]
硫酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.02モル/L
次亜リン酸 0.18モル/L
pH4.0に調整した25℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して45分撹拌し、銅コロイド触媒液を調製した。
上記触媒液の各成分のモル比率は、次の通りである。
銅塩:コロイド安定剤=1:0、銅塩:還元剤=1:2
銅コロイド粒子は生成したが、凝集・沈殿した。
【0073】
(22)比較例2
上記実施例1を基本として、銅コロイド触媒液にコロイド安定剤と本発明の規定とは異なる糖質(澱粉)を含む例である。
即ち、吸着促進、触媒付与、無電解銅メッキの各工程の処理条件並びに吸着促進剤の含有液と無電解銅メッキ液の組成は実施例1と同じであり、銅コロイド触媒液の調製条件は次の通りである。
(b)銅コロイド触媒液の調製
[銅溶液]
硫酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
クエン酸 0.2モル/L
澱粉 0.3モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.02モル/L
次亜リン酸 0.18モル/L
pH4.0に調整した25℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して45分撹拌し、銅コロイド触媒液を調製した。
上記触媒液の各成分のモル比率は、次の通りである。
銅塩:コロイド安定剤=1:2、銅塩:糖質(澱粉)=1:3、銅塩:還元剤=1:2
生成した銅コロイド粒子の平均粒径は約200nmであった。
【0074】
(23)比較例3
上記実施例1を基本として、吸着促進工程を省略した例である。
即ち、試料基板に吸着促進処理を施すことなく、直ちに、実施例1の触媒液(b)に浸漬して触媒付与を行い、さらに実施例1のメッキ液(c)で無電解銅メッキを行った。触媒付与、無電解銅メッキの各工程の処理条件並びに銅コロイド触媒液、無電解銅メッキ液の各調製条件は実施例1と同じである。
【0075】
(24)基準例
冒述の先願発明に準拠したもので、上記実施例1を基本として、触媒液にコロイド安定剤を含むが糖質を含まない例である。
即ち、吸着促進、触媒付与、無電解銅メッキの各工程の処理条件並びに吸着促進剤の含有液と無電解銅メッキ液の組成は実施例1と同じであり、銅コロイド触媒液の調製条件は次の通りである。
(b)銅コロイド触媒液の調製
[銅溶液]
硫酸銅(Cu2+として) 0.1モル/L
クエン酸 0.2モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.02モル/L
次亜リン酸 0.18モル/L
pH4.0に調整した25℃の上記銅溶液に還元剤溶液を滴下して45分撹拌し、銅コロイド触媒液を調製した。
上記触媒液の各成分のモル比率は、次の通りである。
銅塩:コロイド安定剤=1:2、銅塩:糖質(澱粉)=1:0、銅塩:還元剤=1:2
生成した銅コロイド粒子の平均粒径は約30nmであった。
【0076】
《触媒液の経時安定性試験例》
そこで、上記実施例1〜20、比較例1〜3並びに基準例で建浴した各銅コロイド触媒液について、下記の基準でコロイド安定性の優劣を評価した。
◎:建浴後2カ月以上経過しても沈殿、或いは分解が起こらなかった。
○:建浴後1カ月を越え、2カ月経過するまでに沈殿が生じ、或いは分解した。
△:建浴後1カ月以内に沈殿が生じ、或いは分解した。
×:コロイド粒子が生成しないか、建浴後すぐに沈殿、或いは分解した。
【0077】
《無電解銅メッキにより析出した銅皮膜の外観評価試験例》
次いで、上記実施例1〜20、比較例1〜3並びに基準例で建浴した各銅コロイド触媒液について、建浴初期の触媒液を使用した場合、得られた銅メッキ皮膜の外観の優劣を目視により下記の基準で評価した。
○:銅メッキ皮膜が均一でムラがなかった。
△:銅メッキ皮膜にムラや一部未析出(メッキ欠け)が認められた。
×:銅皮膜が析出しなかった。
尚、析出皮膜の「ムラ」は、皮膜の緻密性や平滑性などに周囲と異なる部分があると認められる。皮膜の「ムラ」は皮膜の均一性とは別の観点である。
【0078】
《銅コロイド触媒液の経時安定性と皮膜外観についての試験結果》
皮膜外観 経時安定性 皮膜外観 経時安定性
実施例1 ○ ◎ 比較例1 × ×
実施例2 ○ ◎ 比較例2 △ ×
実施例3 ○ ◎ 比較例3 × ◎
実施例4 ○ ◎ 基準例 ○ ○
実施例5 ○ ◎
実施例6 ○ ◎
実施例7 ○ ◎
実施例8 ○ ◎
実施例9 ○ ◎
実施例10 ○ ◎
実施例11 ○ ◎
実施例12 ○ ◎
実施例13 ○ ◎
実施例14 ○ ◎
実施例15 ○ ◎
実施例16 ○ ◎
実施例17 ○ ◎
実施例18 ○ ◎
実施例19 ○ ◎
実施例20 ○ ◎
【0079】
《触媒液の経時安定性とメッキ皮膜外観の総合評価》
銅コロイド触媒液にコロイド安定剤と糖質を含まない比較例1では、触媒液の経時安定性に劣り、もって触媒液との接触後に非導電性基板に無電解メッキを施しても銅皮膜の析出はなかった。
一方、触媒液にコロイド安定剤を含んで糖質は含まない基準例では、触媒液の建浴後1カ月を経過しても沈殿を生じない良好な経時安定性を示し、銅皮膜の外観は良好であった。
しかしながら、コロイド安定剤と糖質が共存する触媒液において、当該糖質として本発明で規定する特定の糖質とは異なる澱粉を使用した比較例2では、経時安定性の低下により触媒液に生成した銅粒子は微細ではなく、形成した銅皮膜にメッキ欠けが認められ、皮膜外観に問題が生じた。
非導電性基板を吸着促進処理なしで直ちに触媒付与し、無電解銅メッキを施した比較例3では、触媒液の経時安定性は実施例と同様であったが、析出した銅皮膜にはメッキ欠けが認められたことから、触媒付与の前に吸着促進の予備処理がないことに因り、触媒活性が不足し、基板への銅コロイド粒子の吸着が実施例に比べて劣ることが判断できる。
【0080】
一方、吸着促進の予備処理をした後、触媒付与処理をし、次いで無電解銅メッキを施した実施例1〜20では、いずれも触媒液の経時安定性に優れ、無電解メッキで析出する銅皮膜は概ねムラやメッキ欠けがなく優れた外観を呈した。
上記基準例を比較例1に対比すると、ムラやメッキ欠けがない良好な外観の銅皮膜を得るためには、触媒液に銅塩と還元剤だけではなく、コロイド安定剤の含有が必須であることが分かる。
一方、上記実施例1〜20をこの基準例に対比すると、優れた外観の銅皮膜を得るには、触媒液にコロイド安定剤と本発明の特定の糖質を共存させることが必要であることが分かる。特に、触媒液の経時安定性に着目すると、基準例では建浴後1カ月以上の安定性を示して○の評価であったが、実施例1〜20の各触媒液では建浴後2カ月を越える安定性を示したことから、当該経時安定性について、基準例に対する実施例1〜20の各触媒液の優位性は明らかであり、触媒液のメンテナンスを基準例より簡略化でき、メッキの処理コストを軽減できる利点がある。
また、本発明で規定する特定の糖質とは異なる澱粉を用いた比較例2を実施例1〜20に対比すると、触媒液にコロイド安定剤と糖質が共存する場合でも、本発明で規定する特定の糖質を選択しないと、触媒液の経時安定性の改善は望めず、逆に、微細な銅コロイド粒子を円滑に形成できず、結果的に皮膜外観を損なうことから、触媒液の経時安定性の向上には特定の糖質を選択することの重要性が判断できる。
【0081】
次いで、実施例1〜20について詳細に検討する。
実施例1を基準として他の実施例との相対的な評価を説明する。先ず、実施例1はカチオン系界面活性剤であるジアリルアミンポリマーの4級アンモニウム塩を含む吸着促進剤で非導電性基板を予備処理し、硫酸銅を銅塩とし、水素化ホウ素ナトリウムを還元剤とし、クエン酸をコロイド安定剤とし、キシリトールを特定の糖質とする触媒液で触媒付与した後、無電解銅メッキした例であるが、触媒液の経時安定性は良好で、建浴後2カ月経過しても沈殿が生じたり、分解することはなく、また、無電解メッキで得られた銅皮膜は析出ムラやメッキ欠けも認められず、優れた外観を呈した。
実施例2は実施例1に対して糖質の含有量をきわめて減量した例、実施例3は逆にきわめて増量した例であるが、実施例1と同様に触媒液の経時安定性は良好で、得られた銅皮膜は優れた外観を呈した。
【0082】
糖質をソルビトール(糖アルコール)に変更した実施例4、同じくマンニトール(糖アルコール)に変更した実施例5、グルコノラクトン(単糖類の誘導体)に変更した実施例6、グルコース(単糖類)に変更した実施例7、マルトース(二糖類)に変更した実施例8、ソルビトールとキシリトール(糖アルコール同士の併用)に変更した実施例11、マンニトールとグルコース(糖アルコールと単糖類の併用)に変更した実施例12では、いずれも実施例1と同様に、高い経時安定性と優れた皮膜外観を示した。
キシリトールを含有する実施例1の触媒液を基本として、触媒液に水溶性ポリマーとしてPVP(平均分子量4万)を付加した実施例9では、触媒液の経時安定性とメッキ皮膜の外観について、実施例1と同様の評価であった。
ソルビトールを含有する実施例4の触媒液を基本として、触媒液に水溶性ポリマーとしてPEG(平均分子量1万)を付加した実施例10では、触媒液の経時安定性とメッキ皮膜の外観について、実施例4と同様の評価であった。
また、実施例1、4或いは5を基本として、可溶性銅塩、コロイド安定剤、還元剤を変更しても(実施例13〜19参照)、基本の各実施例と同じく高い経時安定性と優れた皮膜外観を示した。
触媒液をpH4.0に設定した実施例1に対して、弱アルカリ側のpH9に設定した実施例20では、同じく高い経時安定性と優れた皮膜外観を示した。
実施例4と実施例11は、共に触媒付与の処理後に酸洗浄を行ってから無電解銅メッキ処理をした例であり、他の実施例に比べて皮膜外観上の差異は特段見られなかったが、熱処理を施しても皮膜面と基板の間に変化は認められず、高い密着性が確認できた。