(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1架台と第2架台とこれらの間に介装される防振部材とを有し、前記第1及び第2架台の何れか一方が設置面に固定され、他方に設備機器を設置し、当該設備機器の振動が設置面に伝わらないようにする防振架台に備え付けられる減震ストッパ構造であって、
前記第1架台に取り付けられ、前記第1架台と前記第2架台との間において水平方向に延び、且つ、貫通孔を備えた水平板部を有するストッパ板部材と、
前記第2架台に取り付けられ、前記第2架台と前記ストッパ板部材との間に配置される中継フレームと、
前記第2架台と前記中継フレームとの間に介装される板状の水平減震部材と、
前記中継フレームに取り付けられ、前記第1架台側に延びて前記貫通孔に挿通されるストッパボルトと、
前記ストッパボルトに螺入され、前記水平板部の上下に配置され、個々に上下に螺送可能に備えられた一対のストッパナットと、
前記ストッパボルトの上部及び下部に配置され、前記一対のストッパナットの最大離間距離を制限する一対の螺送制限部材とを備え、
前記ストッパ板部材の前記第1架台への取り付け、もしくは前記ストッパボルトの前記中継フレームへの取り付けのうちの少なくとも一方が、高さ調整可能であることを特徴とする減震ストッパ構造。
前記中継フレームが、前記第1架台と前記第2架台との間において水平に延びる一対の水平フレーム部を有した断面略コの字状とされ、前記一対の水平フレーム部の内の一方に前記ストッパボルトが取り付けられるとともに、他方が前記水平減震部材を介装して前記第2架台に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の減震ストッパ構造。
前記水平減震部材及び前記垂直減震部材が、粘弾性材料からなる板状基材の少なくとも1箇所以上に、前記板状基材を貫通するように、弾性ゴムからなる弾性部が設けられてなることを特徴とする請求項3〜請求項5の何れか一項に記載の減震ストッパ構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、特許文献1に記載の防振架台110の耐震ストッパ構造120においては、耐震枠116と耐震用弾性部材115との間の水平方向の隙間e及び鉛直方向の隙間fを適切に管理する必要がある。
水平方向の隙間e及び鉛直方向の隙間fが狭すぎると、上述した平時における防振機能を十分に果たすことができなくなり、逆に水平方向の隙間e及び鉛直方向の隙間fが広すぎると、地震時の大きな揺れによって、上部架台112と下部架台114とが、大きな振幅をもって相対運動し、耐震枠116と耐震用弾性部材115が衝突時に大きな衝撃力が発生する。この衝撃力によって、耐震ストッパ構造120の構成部材が破損したり、また、場合によっては、上部架台112に設置された設備機器が破損する虞がある。
【0010】
耐震枠116と耐震用弾性部材115との間の水平方向の隙間e及び鉛直方向の隙間fは、当該防振架台110に設置される設備機器の重量等によって適宜設定されるものであるが、例えば、1mm程度であることが望ましく、これによって、上述の防振機能を果たしつつ、耐震機能を果たす場合においては衝撃力を抑えることができる。
水平方向の隙間eは、上部架台112及び下部架台114の各部の寸法精度並びに組み付け精度を適切に設計することで適切に設定できるため、現場搬入前の工場での組み立て工程において、適切に管理できる。
【0011】
しかしながら、耐震ストッパ構造120において、鉛直方向の隙間fは、上部架台112と下部架台114と相対的な位置が決まった後に調整する必要がある。上部架台112と下部架台114との相対的な位置は、当該防振架台110上に設置される設備機器の重量や重心の位置並びに床スラブ111の水平度等、様々な要因に依存するため、工場での組み立て工程において管理することができず、設置現場で設置作業者が個々に設定する必要があった。
発電設備又は屋外空調機等の設備機器は、屋外の壁際などに設置されることが多く、複数個の設備機器を配置する場合においては、隣り合う設備機器同士をできるだけ近接させることで、屋外スペースを有効に使うことが一般的である。従って、設備機器を載置する防振架台110も、壁際や他の設備機器と近接した場所に設置されることとなるため、作業者が鉛直方向の隙間fを正確に調整することが困難であった。
【0012】
また、特許文献1に記載の防振架台110は、工場で組み立てを行った後、様々な輸送手段によって設置現場に搬入される。輸送手段としては、トラック等による陸上輸送、船舶による海上輸送、航空機による空輸等が挙げられ、これらの輸送手段は、輸送途中に輸送対象物に様々な振動を与える。防振架台110は、耐震枠116と耐震用弾性部材115との間の水平方向の隙間e及び鉛直方向の隙間fを有するため、輸送途中の振動によって、耐震枠116と耐震用弾性部材115との間に繰り返し衝撃が作用する。この衝撃によって、耐震ストッパ構造120を構成する部材が破損するおそれがある。
【0013】
さらに、特許文献1に記載の防振架台110の耐震ストッパ構造120においては、各耐震用弾性部材115、115が上部壁116Aの上下を挟むように、一定の隙間f、fが設けられて配置され、隙間管理と減震作用を一箇所の部材で行う構成とされている。しかしながら、このような隙間管理と減震作用の両方を同一の部材でまかなう構成では、その構造上、生産性の低下やコストアップにつながるおそれがある。
【0014】
また、上記構成では、各耐震用弾性部材115、115により、水平方向(せん断方向)における減震作用と、垂直方向(圧縮方向)における減震作用の両方を得るための構成とされている。しかしながら、このような構成では、水平方向の減震作用は効果的に得られるものの、垂直方向の減震作用が弱くなるおそれがある。このため、例えば、耐震ストッパ構造において、耐震用弾性部材を水平方向及び垂直方向で多数配置することで、圧縮方向及びせん断方向の両方で減震作用を顕著に発現させることも考えられるが、この場合には、耐震用弾性部材の使用量が増加し、コストアップや生産性の低下につながるおそれがある。
【0015】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、現場にて隙間を管理する必要がなく工場の組み立て工程で鉛直方向の隙間を管理することができ、輸送途中の振動による破損を防ぐとともに、水平方向及び垂直方向の両方で効果的に減震させることが可能な防振架台の減震ストッパ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、本発明の減震ストッパ構造は、第1架台と第2架台とこれらの間に介装される防振部材とを有し、前記第1及び第2架台の何れか一方が設置面に固定され、他方に設備機器を設置し、当該設備機器の振動が設置面に伝わらないようにする防振架台に備え付けられる減震ストッパ構造であって、前記第1架台に取り付けられ、前記第1架台と前記第2架台との間において水平方向に延び、且つ、貫通孔を備えた水平板部を有するストッパ板部材と、前記第2架台に取り付けられ、前記第2架台と前記ストッパ板部材との間に配置される中継フレームと、前記第2架台と前記中継フレームとの間に介装される板状の水平減震部材と、前記中継フレームに取り付けられ、前記第1架台側に延びて前記貫通孔に挿通されるストッパボルトと、前記ストッパボルトに螺入され、前記水平板部の上下に配置され、個々に上下に螺送可能に備えられた一対のストッパナットと、前記ストッパボルトの上部及び下部に配置され、前記一対のストッパナットの最大離間距離を制限する一対の螺送制限部材とを備え、前記ストッパ板部材の前記第1架台への取り付け、もしくは前記ストッパボルトの前記中継フレームへの取り付けのうちの少なくとも一方が、高さ調整可能であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の減震ストッパ構造は、上記構成において、前記中継フレームが、前記第1架台と前記第2架台との間において水平に延びる一対の水平フレーム部を有した断面略コの字状とされ、前記一対の水平フレーム部の内の一方に前記ストッパボルトが取り付けられるとともに、他方が前記水平減震部材を介装して前記第2架台に取り付けられる構成とすることができる。
【0018】
また、本発明の減震ストッパ構造は、上記構成において、前記中継フレームが、前記第1架台と前記第2架台との間において、前記ストッパ板部材側に配置されるとともに、前記ストッパボルトが取り付けられる第1フレームと、前記第2架台側に配置されるとともに、前記水平減震部材を介装して前記第2架台に取り付けられる第2フレームとからなり、前記第1フレームと第2フレームとが板状の垂直減震部材を介装して接続されている構成とすることができる。
【0019】
また、本発明の減震ストッパ構造は、上記構成において、前記第1フレーム及び前記第2フレームが、一対の垂直部と水平部とを有する断面略コの字状に形成されてなり、前記第1フレームと第2フレームとが、各々の前記一対の垂直部同士が互いに組み合わせられ、且つ、各々の前記垂直部間が前記垂直減震部材を介装して接続されている構成とすることができる。
【0020】
また、本発明の減震ストッパ構造は、上記構成において、前記第1フレーム及び前記第2フレームが、それぞれ水平部及び垂直部を有する断面略L字状に形成されてなり、前記第1フレームと第2フレームとが、各々の前記垂直部同士が重ね合わせられ、且つ、各々の前記垂直部間が前記垂直減震部材を介装して接続されている構成とすることができる。
【0021】
また、本発明の減震ストッパ構造は、上記構成において、さらに、前記第2架台に取り付けられる垂直部と、前記第2架台と前記第1架台との間に配置される水平部とを有する、断面略L字状の下部フレームが設けられており、前記中継フレームが、前記第1架台と前記第2架台との間において水平に延びる一対の水平フレーム部を有した断面略コの字状とされており、前記一対の水平フレーム部の内、一方の水平フレーム部に前記ストッパボルトが取り付けられるとともに、他方の水平フレーム部が前記下部フレームの水平部と前記第2架台との間に配置され、前記他方の水平フレームが、前記下部フレームと前記第2架台との間に狭持されるように、該下部フレーム及び第2架台の各々と前記水平減震部材を介装して接続されている構成とすることができる。
【0022】
また、本発明の減震ストッパ構造は、上記構成において、前記水平減震部材及び前記垂直減震部材が、粘弾性材料からなる板状基材の少なくとも1箇所以上に、前記板状基材を貫通するように、弾性ゴムからなる弾性部が設けられてなる構成とすることができる。
【0023】
また、本発明の減震ストッパ構造は、上記構成において、前記ストッパ板部材が、前記水平板部と、当該水平板部の端部から鉛直方向に延び同方向に長手方向を形成する長孔を備えた鉛直板部とからなり、前記第1架台の側面に、前記長孔を介して前記ストッパ板部材がボルト固定される構成とすることができる。
【0024】
本発明の防振架台は、上記の減震ストッパ構造を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明の減震ストッパ構造は、ストッパ板部材の水平板部に設けられた貫通孔にストッパボルトを挿通する構造により、前記貫通孔とストッパボルトの間に水平方向の隙間を形成している。また、水平板部の上下に配置されたストッパナットが螺送可能であり、螺送により水平板部とストッパナットとの間に鉛直方向の隙間を設けることができる。水平方向及び鉛直方向に隙間が設けられることによって、防振機能を阻害することがなく、地震などが発生し、防振架台に大きな振動が入力された場合において、水平方向においては、貫通孔とストッパボルトが干渉し、鉛直方向においては、水平板部とストッパナットが干渉することで、鉛直及び水平に設けられた隙間以上に、第1架台と第2架台が相対運動することがなく、設備機器の転倒を防止することができる。
【0026】
また、本発明の減震ストッパ構造は、前記ストッパ板部材の前記第1架台への取り付け、もしくは前記ストッパボルトの中継フレームへの取り付けのうち少なくとも一方が、高さ調整可能な構成であるため、減震ストッパ構造を備えた防振架台を設置する際に、予め、鉛直方向の隙間を調整しておき、設置現場において、設備機器を載置して第1架台と第2架台の距離が決まった後に、減震ストッパ構造を第1架台又は第2架台に固定することができる。即ち、減震ストッパ構造の上下方向の隙間を作業現場で調整する必要がなくなり、設置作業が簡易となる。
【0027】
また、本発明の減震ストッパ構造は、一対のストッパナットの最大離間距離を制限する一対の螺送制限部材を有する。螺送制限部材によって、予め一対のストッパナットと水平板部との鉛直方向の隙間を設定した状態において、ストッパナット同士の距離がそれ以上離れないようにできる。即ち、ストッパナットと水平板部との鉛直方向の隙間を設定し、その状態を、ストッパナット同士が最も離間した状態であるようにしておけば、その後にストッパナットを螺送し、ストッパナット同士を近接させても、最も離間した状態に戻せば、直ちに隙間を設定できるようになる。これにより、工場から設置現場に輸送する際に、一対のストッパナットによって水平板部を挟持し、ストッパボルトとストッパ板部材を固定することが可能となる。従って、この減震ストッパ構造は、輸送時におけるガタツキがなくなり、輸送時の振動により構成部材が破損することを防止できる。
【0028】
さらに、本発明の減震ストッパ構造は、第2架台に取り付けられて該第2架台とストッパ板部材との間に配置される中継フレームと、第2架台と中継フレームとの間に介装される板状の水平減震部材とを備える構成により、垂直方向(上下方向・圧縮方向)及び水平方向(せん断方向)の両方における減震作用が効果的に得られる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態である減震ストッパ構造を備えた防振架台について、
図1〜
図12を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0031】
[第1実施形態]
図1に、本発明の第1実施形態である減震ストッパ構造30が適用された防振架台1の斜視図を示す。防振架台1は、建築物等の床スラブ(設置面)18にアンカーボルト(図示略)などで固定された第2架台(下部架台)14と、第2架台14と所定の間隙を隔てて対向配置された第1架台(上部架台)12とを備えている。
【0032】
図1に示すように、第1架台12と第2架台14との間には、防振部材16が複数介装されており(
図1に示す例では6箇所)、これらの防振部材16によって第1架台12が第2架台14上に弾性支持されている。防振部材16は、内部に図示略のバネ材を有しており、第2架台14と第1架台12との間に配設され、第1架台12上に設置された設備機器の荷重を担持するとともに、設備機器から発生する振動を吸収・緩衝する作用を有する。防振部材16は、第1架台12上に設置される設備機器の重心位置を考慮し、第2架台14と第1架台12の間の適所に複数箇所設置されている。
【0033】
図1に示すように、第1架台12は、平面視で矩形枠状の部材であり、角部に配置された4つの第1コーナ部材22と、各第1コーナ部材22間を架け渡す4本のフレーム部材12a、12a、12a、12aとを備えている。第2架台14は、第1架台12と同様の構成からなり、角部に配置された4つの第2コーナ部材24と、各第2コーナ部材24間を架け渡す4本のフレーム部材14a、14a、14a、14aとを備えている。
【0034】
第1架台12及び第2架台14の第1及び第2コーナ部材22、24は、互いに直交する2本のフレーム部材12a、12a(又はフレーム部材14a、14a)の端部同士を接合するためのものであり、水平方向の外側に向けて開放された略箱型形状に形成されている。そして、第1及び第2コーナ部材22、24の側面のうち、水平方向の内側を向く面に、それぞれのフレーム部材12a、12a(又はフレーム部材14a、14a)が接合されている。
【0035】
防振架台1の四隅であって第1及び第2コーナ部材22、24の間には、予備ストッパ構造20が備えられている。この予備ストッパ構造20は、第1架台12と第2架台14とを鉛直方向及び水平方向に相対運動可能に連結するとともに、第2架台14に対する第1架台12の相対的な変位量を規制している。
【0036】
図2に、予備ストッパ構造20の正面視における部分断面図を示す。
この予備ストッパ構造20は、第1コーナ部材22の底板部22aに形成された貫通孔22bに挿通される予備ストッパボルト23と、当該予備ストッパボルト23を第2コーナ部材24の天板部24aに固定するためのワッシャ26、26並びにナット25、25を備えている。さらに、第1コーナ部材22に形成された貫通孔22bと予備ストッパボルト23の間には、弾性部材27が介装されている。
【0037】
弾性部材27は、円筒部27bとフランジ部27aとを有する。円筒部27bは、予備ストッパボルト23の軸部23bと貫通孔22bの間に介装される。また、フランジ部27aは、予備ストッパボルト23の頭部23aと第1コーナ部材22の底板部22aに介装される。
円筒部27bは、貫通孔22bの内周面に接し、さらに予備ストッパボルト23の軸部23bと水平方向の隙間pを設けて介装されている。
また、フランジ部27aは、第1コーナ部材22の底板部22a上に載置され、予備ストッパボルト23の頭部23a底面と鉛直方向の隙間qを設けて介装されている。
弾性部材27は、ゴムなどの弾性体から形成されている。従って、第1架台12と第2架台14の相対運動により、水平方向及び鉛直方向の隙間p、qがなくなり、予備ストッパ構造20の構成部材同士が衝突した際に、衝撃を吸収し、当該構成部材の破損を防ぐことができる。
【0038】
予備ストッパ構造20は、第1架台12と第2架台14とを相対移動可能に連結するとともに、鉛直方向及び水平方向に相対運動した際の変位量を規制している。
なお、水平方向の隙間p及び鉛直方向の隙間qは、設置現場における目視によって確認できる程度の広さであれば良く、それぞれ3〜5mm程度であることが好ましい。
また、この予備ストッパ構造20は、大きな地震に伴う振動により、詳細を後述する減震ストッパ構造30の構成部材の一部が変形した場合に、載置された設備機器の転倒を防ぐ目的で予備的に備えられるものである。従って、上述した水平方向の隙間p及び鉛直方向の隙間qは、
図5(a)、(b)を参照して、後段で詳しく説明する減震ストッパ構造30の構成部品同士の距離h、iよりも大きく設定することが望ましく、これによって減震ストッパ構造30の作用を阻害することはない。
【0039】
図1に示すように、第1架台12の長辺を構成する2つのフレーム部材12a、12aには、それぞれ2つの取付片部28が設けられている。各取付片部28には、設備機器固定用の取付孔29が形成されており、第1架台12に設備機器を載置した後、当該取付孔29にボルトを挿通し、設備機器と螺合することにより、設備機器を固定することができる。
第1架台12及び第2架台14を構成する各フレーム部材12a、14aは、防錆処理型鋼やFRP材を矩形に枠組みして形成されたものからなる構成を採用できる。
なお、
図1に示す防振架台の構成は一例であり、フレーム部材12a、14aの材質、第1架台12、第2架台14を構成する部材数等は、第1架台12に固定される設備機器の重量や当該設備機器の振動特性によって、適宜決定することが望ましい。
【0040】
第1架台12の長辺を構成する2つのフレーム部材12a、12aと、これに対向する第2架台14の長辺を構成する2つのフレーム部材14a、14aとの間には、それぞれ2つの減震ストッパ構造30が設けられている。即ち、
図1に示す例では、第1架台12及び第2架台14には、4つの減震ストッパ構造30が設けられている。この減震ストッパ構造30は、地震時に第1架台12と第2架台14とが大振幅で相対運動することを抑制し、設備機器の転倒を防止するものである。
【0041】
図3(a)、(b)に、
図1に示す減震ストッパ構造30の拡大図を示す。また、
図4に、減震ストッパ構造30の分解図を示す。
図3(a)、(b)並びに
図4に示すように、減震ストッパ構造30は、第1架台12に取り付けられるストッパ板部材2と、第2架台14に取り付けられる中継フレーム15と、第2架台14と中継フレーム15との間に介装される板状の水平減震部材17と、中継フレーム15に取り付けられ、面上から鉛直上方に突出するストッパボルト(螺送制限部材)4と、第1及び第2ストッパナット5、6と、ロックナット(螺送制限部材)7と、減震管10と、一対の減震ワッシャ11、11とから構成される。なお、本実施形態においては、一対の減震ワッシャ11、11は、それぞれの上方又は下方に配置される第1又は第2ストッパナット5、6に接着されている。
【0042】
また、図示例の減震ストッパ構造30は、中継フレーム15が、第1架台12と第2架台14との間において水平に延びる一対の水平フレーム部15a、15bを有した断面略コの字状とされている。そして、水平フレーム部15a、15bの内の一方、即ち、第1架台12側の水平フレーム部15aにストッパボルト4が取り付けられるとともに、他方の水平フレーム部15bが、水平減震部材17を介装して第2架台14に取り付けられている。また、図示例では、さらに、第2架台14に減震部材固定フレーム3が取り付けられており、中継フレーム15と第2架台14との間には、水平減震部材17に加えて減震部材固定フレーム3が介装されている。
【0043】
図4に減震ストッパ構造30の分解図を示す。ここで、
図4中においては、説明を分かり易くするため、減震ワッシャ11、11は、第1及び第2ストッパナット5、6と分離して示している。なお、実際には、ストッパ板部材2の水平板部2aに対して上方に位置する減震ワッシャ11は、第2ストッパナット6の下面に接着されており、下方に位置する減震ワッシャ11は、第1ストッパナット5の上面に接着されている。
【0044】
図4に示すように、ストッパ板部材2は、L字形状を有しており、鉛直方向に延びる鉛直板部2bと、当該鉛直板部2bの下端から水平方向に延びる水平板部2aとから構成される。
鉛直板部2bには、上下方向を長手方向とする2つの長孔2c、2cが並列して設けられている。一方、第1架台12のフレーム部材12aの側面には、水平方向に貫通する挿通孔8C、8Cが設けられている。
鉛直板部2bの長孔2c、2cには、第1架台12の内側から挿通孔8C、8Cを通った固定ボルト8A、8Aを挿通させ、固定ナット8B、8Bを外側から螺入して締結することにより、第1架台12にストッパ板部材2が固定される。
本実施形態の減震ストッパ構造30では、鉛直板部2bの長孔2c、2cにおいて、固定ボルト8A、8A及び固定ナット8B、8Bを用いて締結する高さを変えることにより、ストッパ板部材2の取り付け位置を、長孔2cの鉛直方向の長さの範囲内で任意の高さの位置(無段階)に調整することができる。
【0045】
水平板部2aには、上下方向に貫通する直径Dの貫通孔2dが設けられており、当該貫通孔2dにストッパボルト4が挿通されている。
第1架台12に設けられた挿通孔8C、8Cは、水平方向に横長の形状にすることが好ましい。挿通孔8C、8Cを、水平方向で横長に構成することにより、固定ボルト8A、8A及び固定ナット8B、8Bを用いてストッパ板部材2を締結する際の水平方向の位置を、上記の横長の形状の範囲内において、取付時に設定することができる。従って、第1架台12と第2架台14との間で、水平方向の組み立て誤差が生じている場合には、ストッパ板部材2の水平方向の位置を調整することによってこの誤差を吸収し、ストッパボルト4の位置と水平板部2aに設けられた貫通孔2dの位置を合わせることができる。
【0046】
減震部材固定フレーム3は、鉛直方向に延びる締結板部3bと、当該締結板部3bの上端から水平方向に延びる減震部材固着板部3aとから構成される。締結板部3bには、固定孔3c、3cが設けられ、第2架台14のフレーム部材14aの側面には、水平方向に貫通する挿通孔9C、9Cが設けられている。
そして、締結板部3bの固定孔3c、3cに、第2架台14の内側から挿通孔9C、9Cを通った固定ボルト9A、9Aを挿通させ、固定ナット9B、9Bを外側から螺入し締結することにより、第2架台14に減震部材固定部材3が固定される。また、減震部材固着板部3aには、水平減震部材17が接着されている。
【0047】
水平減震部材17は、上述したように、減震作用を有する板状部材である。
このような水平減震部材17をなす材料としては、低反発で高減衰であって、且つ、粘性系の材料であることが好ましく、例えば、TPE熱可塑性エラストマー(オレフィン系やスチレン系他)のような、伸び率が400%以上で大きなせん断変形歪に耐えうるものが好ましい。これらの材料は、粘弾性特性を有するので振動計算がし易く、また、一体成型用の金型を準備することで、インジェクション成型や加熱プレス成型法等で鋼材と一体化された成形品を容易に大量生産することができることから、低コスト化に繋がるという利点がある。
【0048】
また、水平減震部材17としては、板状部材全体を同一の材料から構成しても良いが、例えば、
図7(a)、(b)に示す例のように、上述のような粘弾性特性を有する材料からなる円形の板状基材17aの少なくとも1箇所以上に、板状基材17aを貫通するように、弾性ゴムからなる弾性部17bが設けられてなる構成とすることが、減震作用をより効果的に発現させることが可能となる点からより好ましい。図示例においては、板状基材17aの平面視中心部に弾性部17bが設けられるとともに、この中心部の弾性部17bを囲むように4箇所の弾性部17bが配置され、計5箇所の弾性部17bが設けられているが、弾性部17bの形成位置や数はこれには限定されず、適宜設定することが可能である。このように、水平減震部材17を、粘弾性特性を有する材料からなる板状基材17aと、弾性ゴムからなる弾性部17bとからなる複合構成とした場合、減衰性能が大きく歪み戻り速度が遅い(位相遅れが大きい)板状基材17aに対して、弾性部17bが作用するので、さらに効果的な減震作用が得られる。
【0049】
また、減震部材固着板部3aにおける水平減震部材17の固着方法は、特に限定されるものではなく、通常の接着等による方法を採用することができるが、上述のように、一体成型によって固着する方法を採用しても良い。
【0050】
中継フレーム15は、第2架台14上に水平減震部材17を介装して取り付けられ、第2架台14とストッパ板部材2との間に配置される。また、中継フレーム15は、上述したように、一対の水平フレーム部15a、15bを有した断面略コの字状とされ、一方の水平フレーム部15aにストッパボルト4が取り付けられるとともに、他方の水平フレーム部15bが、水平減震部材17及び減震部材固定フレーム3を介装して第2架台12に取り付けられている。
【0051】
本実施形態の減震ストッパ構造30によれば、上述のような中継フレーム15を備え、この中継フレーム15が第2架台14に対して水平減震部材17を介装して取り付けられることで、1箇所に設けられた水平減震部材17で、圧縮方向及びせん断方向の両方で減震作用が得られる。また、後述の隙間管理を行う構成と、減震作用を得るための構成である中継フレーム15及び水平減震部材17とを分離することで、生産性が向上するとともに、コストダウンが可能となる。
【0052】
通常、地震動は、上下動と比べて水平動の方が大きい。このため、水平動(水平力F)を低減すれば、防振架台に載置する機器類の転倒モーメント(M=水平力F×重心高さL)による引抜き圧縮力も小さくなる。このため、本実施形態の減震ストッパ構造30は、上述のような水平減震部材17を設けることで水平動を低減させることにより、十分な減震作用が得られる。
【0053】
ストッパボルト4は、所定の雄螺子が形成されてなり、このストッパボルト4には、対応する雌螺子が形成された第1及び第2ストッパナット5、6とロックナット7、7が螺入される。ストッパボルト4は、
図5(a)等に示す例では、その頭部4aが第2ストッパナット6に接する螺送制限部材とされ、ボルト部の下部が、中継フレーム15の一方の水平フレーム部15aに設けられた固定孔15cに螺入され、ロックナット7によって固定されている。
また、ストッパボルト4は、ストッパ板部材2の水平板部2aに設けられた貫通孔2dを挿通する他、一対の減震ワッシャ11、11並びに減震管10が挿通される。
【0054】
図5(a)に示すように、ストッパボルト4が螺入、又は挿通される各部材は、中継フレーム15側から第1架台12側のストッパボルト4の頭部4aにかけて、ロックナット7、中継フレーム15、ロックナット7、第1ストッパナット5、減震ワッシャ11、減震管10、減震ワッシャ11、第2ストッパナット6の順となっている。また、ストッパボルト4は、減震管10を介してストッパ板部材2の水平板部2aに挿通されている。
【0055】
ストッパ板部材2の水平板部2aに形成された貫通孔2dは、ストッパボルト4のボルト部の外径に比べて十分に大きな径を備えている。この貫通孔2dと、ストッパボルト4の外径部との間には、管状であって外径dを有する減震管10が介装されている。
減震管10の外周面と、貫通孔2dの内周面との間には、水平方向に距離iの隙間が確保されている。この距離iの隙間は1mm程度であることが望ましい。また、この距離iは、想定される地震の最大震度の大きさ等に応じて設定され、上記した1mm程度の隙間に限らず、設計段階で想定される地震の大きさに従って適宜決定すればよい。また、予備ストッパ構造20の水平方向の隙間pに対して距離iを小さく設定することで、予備ストッパ構造20により、水平方向の減震作用(地震のエネルギを減衰させる作用)が阻害されることが無く好ましい。
【0056】
本実施形態においては、減震管10の外周面と、貫通孔2dの内周面との間に、隙間が確保されている例を説明しているが、これに限定されるものではない。即ち、上記の隙間は、減震管10の外周面と前記貫通孔2dの内周面との間、及び前記減震管10の内周面とストッパボルト4の外径部との間の何れか一方、又は両方に確保されている構成とすればよい。
【0057】
減震管10は、減衰弾性体からなり、地震時に水平方向に大きな振動が加わった際に貫通孔2dの内周面と衝突し、地震の衝撃を和らげるとともに、地震のエネルギーを減衰させる目的で備えられている。減震管10は、弾性と減衰性を併せ持つ内側層と、該内側層よりも剛性の高い外側層との2層構造で構成されたものを採用することが望ましい。この場合、内側層としては、例えば、径方向に5mm程度の厚みを有する硬度30以上で且つ動的粘弾性特性tanδが0.5以上となる減衰ゴムや、高減衰性熱可塑性エラストマー樹脂等の材料によって形成することができる。また、外側層としては、径方向に1〜2mm程度の厚みを有し、硬度70度以上で硬く且つ摩擦係数μ=0.4程度の材料によって形成することができ、具体的には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂材料が好適である。
【0058】
上記減震管10の上下には、減震ワッシャ11、11が備えられている。この減震ワッシャ11は、減衰弾性体からなり、地震時に鉛直方向に大きな振動が加わった際に水平板部2aと衝突し、地震の衝撃を和らげるとともに、地震のエネルギーを減衰させる目的で備えられている。減震ワッシャ11は、弾性と減衰性を合わせ持つ材料からなるワッシャであり、その内径はストッパボルト4の外径よりも大きく、前記減震管10の外径dよりも小さく構成されている。また、減震ワッシャ11の材料としては、例えば、硬度30〜40度で且つ動的粘弾性特性tanδが0.5以上となる減衰ゴムや、高減衰性熱可塑性エラストマー樹脂等の材料によって形成することができる。
【0059】
水平板部2aの上下に配置される減震ワッシャ11、11は、それぞれ水平板部2aとの間に距離h、hの隙間を確保して配置される。この距離h、hの隙間は1mm程度であることが望ましい。この距離h、hは、想定される地震の最大震度の大きさ等に応じて設定され、上記した1mm程度の隙間に限らず、設計段階で想定される地震の大きさに従って適宜決定すればよい。また、予備ストッパ構造20の鉛直方向の隙間qに対して距離hを小さく設定することで、予備ストッパ構造20により、鉛直方向の減震作用(地震のエネルギを減衰させる作用)が阻害されることが無く好ましい。
【0060】
本実施形態において、減震ワッシャ11、11は、第1ストッパナット5及び第2ストッパナット6に接着されている。これにより、組み立て時の作業手順を軽減することができるが、これには限定されず、減震ワッシャ11、11は、必ずしも第1及び第2ストッパナット5、6に接着されている必要はない。
なお、減震ワッシャ11、11が、第1及び第2ストッパナット5、6に接着されていない場合においては、上方の減震ワッシャ11が減震管10に載置された状態となる。この場合には、
図5(b)に示すように、上方の減震ワッシャ11の下面と水平板部2aとの距離h
1、及び、上方の減震ワッシャ11の上面と第2ストッパナット6との距離h
2の合計(h
1+h
2)が、上述した距離hとなっていればよい。
即ち、隙間は、減震ワッシャ11と水平板部2aとの間、及び、減震ワッシャ11と第1又は第2ストッパナット5、6との間の何れか一方又は両方に確保されていれば良い。
【0061】
第1及び第2ストッパナット5、6は、それぞれストッパボルト4に螺入され、水平板部2a及び減震ワッシャ11、11を介して上下に配置されている。第1及び第2ストッパナット5、6の外形は、矩形形状とされていることが望ましい。これにより、第1及び第2ストッパナット5、6を、設置現場において、作業者が手回することによって螺送及び締結することが容易になる。但し、第1及び第2ストッパナット5、6の外形は、上記の矩形形状には限定されず、手回しが可能な形状であれば、特に限定されるものではない。
【0062】
下方に配置される第1ストッパナット5は、その下面においてロックナット7と接触しており、また、上方に配置される第2ストッパナット6も、その上面においてストッパボルト4の頭部4aと接触している。
ロックナット7、7としては、緩み止め効果を有するナットであれば、特に制限されるものではなく、既存の市販製品を使用することが可能である。また、ロックナット7、7として、2つのナットを用いたダブルナット法の構成を採用することが、緩み止め効果が得られる点からより好ましい。
また、
図5(a)の断面図に示すように、ストッパボルト4は、中継フレーム15の一方の水平フレーム部15aに設けられる固定孔(ネジ孔)15cに、スプリングワッシャ41を介装して螺入し、且つ、ロックナット7で固定される構成なので、ストッパボルト4と水平フレーム部15aとの相対的な位置関係が変わることは無い。
【0063】
第1及び第2ストッパナット5、6は、ストッパボルト4に螺入されているため、同軸上を螺送可能、即ち上下に移動可能である。第1ストッパナット5は、その下方にロックナット7が配置され、第2ストッパナット6も、その上方にストッパボルト4の頭部4aが配置されているため、それぞれ上方又は下方への螺送が制限されている。即ち、第1及び第2ストッパナット5、6同士の離間は、上下に配置されたストッパボルト4の頭部4a及びロックナット7によって制限されている。この機能から、ストッパボルト4の頭部4a及びロックナット7は、上下移動を制限する一対の螺送制限部材とされる。
なお、本実施形態においては、上下に配置されたストッパボルト4の頭部4a及びロックナット7に螺送制限部材としての機能を与えているが、これに限定されるものではない。例えば、第1ストッパナット5の下方に、中継フレーム15の一方の水平フレーム部15aを配置することにより、この水平フレーム部15aによって第1ストッパナット5の下方への螺送を制限する構成としても良い。
【0064】
次に、
図6(a)、(b)、(c)を参照して、減震ストッパ構造30を備えた防振架台1の設置手順の一例を示す。
図6(a)に、工場からの出荷段階の状態における減震ストッパ構造30を示す。まず、
図6(a)に示す状態に至るまでの、工場での組み立て工程について以下に説明する。
【0065】
まず、第2架台(下部架台)14に防振部材16(
図1参照)を設置し、さらに、この防振部材16上に第1架台(上部架台)12を設置する。この工程において、防振架台1の四隅である第1及び第2コーナ部材22、24の間に、予備ストッパ構造20を取り付ける(
図1参照)。
次に、第2架台14に、減震部材固着板部3a上に水平減震部材17が接着された減震部材固定フレーム3を取り付ける。この際、減震部材固定フレーム3に設けられた固定孔3cに固定ボルト9Aを挿通し、固定ナット9Bを締結することにより、第2架台14に減震部材固定フレーム3を固定する。
【0066】
次に、減震部材固定フレーム3の減震部材固着板部3a上に固着された水平減震部材17上に、中継フレーム15を取り付ける。この際、中継フレーム15に備えられる一対の水平フレーム部15a、15bの内の他方の水平フレーム部15bを、水平減震部材17上に重ね合わせるように、従来から金属や樹脂材料の分野で採用されている接着剤を用いて接着することができるが、これら各部材を、金型を用いた一体成型で固着させる方法を採用することも可能である。
【0067】
次に、ストッパボルト4に、第2ストッパナット6を螺入し、さらに、減震ワッシャ11、減震管10を順次挿通する。
次に、ストッパ板部材2の水平板部2aに設けられた貫通孔2dをストッパボルト4に挿通する。貫通孔2dの内径は、前記減震管10の外径より大きいため、ストッパボルト4の外径部と貫通孔2dの内周面の間に減震管10が介装された状態となる。
次に、ストッパボルト4に減震ワッシャ11を挿通しさらに第1ストッパナット5及びロックナット7を螺入する。
なお、本実施形態においては、減震ワッシャ11、11が第1及び第2ストッパナット5、6に接着されているため、上述の手順において、第1及び第2ストッパナット5、6を螺入することで、同時に減震ワッシャ11が挿通される。
【0068】
次に、第1及び第2ストッパナット5、6と、上側のロックナット7を螺送して上下位置を調整することにより、第1ストッパナット5と第2ストッパナット6との間に減震ワッシャ11、11を介してストッパ板部材2の水平板部2aが挟持された状態とするとともに、ロックナット7の上面と第1ストッパナット5の下面との距離j及び第2ストッパナット6の上面とストッパボルト4の頭部4aの下面との距離jを調整する。この作業により、一対の螺送制限部材、即ち、ストッパボルト4の頭部4aとロックナット7と間の鉛直方向の距離kが一意的に定まる。つまり、一対の螺送制限部材間の鉛直方向の距離kは、ロックナット7の上面と第1ストッパナット5の下面との距離j、及び、第2ストッパナット6の上面とストッパボルト4の頭部4aの下面との距離j、並びに、第1ストッパナット5、第2ストッパナット6、一対の減震ワッシャ11、11、及びストッパ板部材2の水平板部2aの厚さの合計となる。
【0069】
より具体的には、まず、上側のロックナット7の上面と第1ストッパナット5の下面との間に十分な隙間を設け、この隙間に、目標とする隙間の大きさである距離jと同じ厚さのスペーサを挿入し、第1ストッパナット5を下方に螺送し、ロックナット7の上面と第1ストッパナット5の下面との隙間を距離jとした後、スペーサを抜く。
さらに、第2ストッパナット6を下方に螺送し、第1ストッパナット5と第2ストッパナット6との間に減震ワッシャ11、11を介してストッパ板部材2の水平板部2aが挟持された状態とする。
次に、第2ストッパナット6の上面とストッパボルト4の頭部4aの下面との間に十分な隙間を設け、この隙間に、上述のスペーサ(厚みが目標とする隙間の大きさである距離jと同じ)を挿入し、頭部4aを下方に移送し、第2ストッパナット6の上面と頭部4aの下面との隙間を距離jとした後、スペーサを抜く。
なお、詳細な図示を省略しているが、第1及び第2ストッパナット5、6の外形は矩形となっているため、第1及び第2ストッパナット5、6の螺送及び締結は手回しにより行うことができる。
【0070】
その後、中継フレーム15の一方の水平フレーム部15aに設けられた固定孔15cにストッパボルト4を螺入する。この際、ストッパボルト4の下部に、スプリングワッシャ41を介装させてロックナット7を螺入させる。これにより、ストッパボルト4が、中継フレーム15に起立固定された状態となる。
【0071】
この状態において、固定ボルト8A及び固定ナット8Bを用いて、ストッパ板部材2を第1架台12に取り付ける。ストッパ板部材2の第1架台12への取り付けは、ストッパ板部材2の鉛直板部2bに設けられた長孔2cに固定ボルト8Aを挿入し、固定ナット8Bによって締結することでなされる。この際、固定ボルト8Aが、長孔2cの上部に挿通され且つ固定ナット8Bにより締結されるように、長孔2cの位置が設定されている。
【0072】
これらの工程を経て、減震ストッパ構造30は、
図6(a)に示すような状態となる。
図6(a)に示す状態においては、水平板部2aが上下方向から一対の減震ワッシャ11、11を介して第1及び第2ストッパナット5、6によって挟持されている。
減震ストッパ構造30には、鉛直方向の隙間がない状態となっている。また、水平方向の隙間は、水平板部2aの貫通孔2dと減震管10との間に形成された状態であるが、第1及び第2ストッパナット5、6が一対の減震ワッシャ11、11を介して水平板部2aを挟持しており、一対の減震ワッシャ11、11と水平板部2aとの間にフリクションが働くため、この水平方向の隙間によってガタツキを生じることはない。
【0073】
図6(a)に示す状態の防振架台1は、トラック輸送等の輸送手段によって現場に輸送される。第1架台12と第2架台14は、減震ストッパ構造30によって、固定された状態であるため、輸送の際に振動が加わったとしても、第1架台12と第2架台14とが相対的に運動することは無い。従って、防振架台1を輸送する際、減震ストッパ構造30において各部が衝突することが無いため、構成部材の破損を防ぐことができる。
【0074】
設置現場に搬送された
図6(a)に示す状態の防振架台1は、
図6(b)、(c)に示す手順によって設置される。
まず、設置現場の床スラブ18に第2架台14が固定される。
次に、
図6(b)に示すように、第1架台12とストッパ板部材2とを固定している固定ボルト8A及び固定ナット8Bを緩める。このように、固定ボルト8A及び固定ナット8Bを緩めても、水平板部2aが第1及び第2ストッパナット5、6によって一対の減震ワッシャ11、11を介して挟持されているため、ストッパ板部材2はその場に保持されている。
次に、設備機器13を第1架台12に載置し固定する。この際、設備機器13の重みにより、第1架台12と第2架台14との間に介装されている防振部材16(
図1参照)が沈み込み、第1架台12と第2架台14とが近接する。これに伴い、ストッパ板部材2の鉛直板部2bに設けられる長孔2cの上部に挿通された固定ボルト8Aが、長孔2cに沿って下方に移動する。
なお、第1架台12の沈み込み量は、第1架台12に載置する設備機器13の重量及び防振部材16(
図1参照)の弾発力によって決定されるため、長孔2cの鉛直方向の長さは、設備機器13の重量及び防振部材16の弾発力に応じて十分な長さに設定される。
【0075】
次に、固定ボルト8A及び固定ナット8Bを締結することにより、ストッパ板部材2を第1架台12に固定する。
さらに、
図6(c)に示すように、第1ストッパナット5を手回しにより下方に螺送し、上側のロックナット7の上面に接触させる。同様に、第2ストッパナット6を手回しにより上方に螺送し、ストッパボルト4の頭部4aの下面に接触させる。
これにより、ストッパ板部材2の水平板部2aとその上下に配置される一対の減震ワッシャ11、11に、距離h、hの隙間を形成する。
距離h、hの隙間は、
図6(a)を参照して説明した隙間の距離j、jと同じ値となる。即ち、工場において距離j、jを正確に設定することで、設置現場において専用の治具等を使用することなく、容易に所定の距離h、hの隙間を設定することができる。
以上の工程によって、第1実施形態の減震ストッパ構造30を備えた防振架台1の設置が完了する。
【0076】
本実施形態の減震ストッパ構造30は、ストッパ板部材2の水平板部2aに設けられた貫通孔2dにストッパボルト4を挿通する構造により、貫通孔2dとストッパボルト4の間に水平方向に距離i、iの隙間を形成する。
また、水平板部2aの上下に配置された第1及び第2ストッパナット5、6が螺送可能であり、螺送により水平板部2aと第1及び第2ストッパナット5、6との間に距離h、hの隙間を設けることが可能となる。
水平方向及び鉛直方向に隙間i、hが設けられることで、防振部材16(
図1参照)によって設備機器の振動が設置面に伝わるのを防止する防振機能を阻害することがない。また、地震などが発生し、防振架台1に大きな振動が印加された場合、水平方向においては、ストッパ板部材2の貫通孔2dとストッパボルト4とが干渉し、鉛直方向においては、ストッパ板部材2の水平板部2aと第1及びストッパナット5、6とが干渉することで、鉛直及び水平に設けられた隙間i、h以上に、第1架台12と第2架台14が相対運動することがないので、設備機器13の転倒を防止することが可能となる。
【0077】
また、本実施形態の減震ストッパ構造30において、ストッパ板部材2の第1架台12への取り付けは、ストッパ板部材2に設けられた鉛直方向に延びる長孔2cに、固定ボルト8A及び固定ナット8Bを用いて、ボルト固定することによってなされる。従って、長孔2cにおける固定ボルト8A及び固定ナット8Bの締結位置を変えることで、ストッパ板部材2の高さを容易に変更することができる。
これにより、設備機器13を載置して第1架台12と第2架台14の距離が決まった後に、減震ストッパ構造30のストッパ板部材2を第1架台12に固定することができる。即ち、予め、鉛直方向の隙間を距離h、hとして調整することが可能となるため、設置現場における鉛直方向の隙間管理が不要となり、設置作業が簡易となる。
【0078】
また、本実施形態の減震ストッパ構造30は、ストッパボルト4の頭部4a及びロックナット7が、一対の螺送制限部材として、第1及び第2ストッパナット5、6の最大離間距離を制限する。これにより、工場での組み立て段階において、第1及び第2ストッパナット5、6と水平板部2aとの鉛直方向の隙間を予め設定しておけば、隙間設定後に第1及び第2ストッパナット5、6を螺送しても、第1ストッパナット5をロックナット7の上面に接触させ、第2ストッパナット6をストッパボルト4の頭部4aの下面に接触させることにより、第1及び第2ストッパナット5、6を最も離間した状態に戻せば、直ちに隙間を設定できるようになる。従って、工場から設置現場に輸送する際に、第1及び第2ストッパナット5、6によって水平板部2aを挟持し、ストッパボルト4とストッパ板部材2を固定することが可能となる。これにより、この減震ストッパ構造30は、輸送時にガタツキが生じることがなく、輸送時の振動によって構成部材が破損するのを防止できる。
【0079】
また、本実施形態の減震ストッパ構造30は、第1及び第2ストッパナット5、6とストッパ板部材2の水平板部2aとの間に、それぞれ減衰弾性体からなる一対の減震ワッシャ11、11が介装されている。これにより、第1及び第2ストッパナット5、6と水平板部2aが直接衝突することを防ぎ、第1及び第2ストッパナット5、6と水平板部2aが破損することを防ぐのみならず、衝突時に振動によるエネルギーを吸収し、振動を減衰させることができる。
【0080】
また、本実施形態の減震ストッパ構造30は、ストッパ板部材2の貫通孔2dの内周面とストッパボルト4の外径部との間に、減衰弾性体からなる管状の減震管10が介装されている。これにより、貫通孔2dの内周面とストッパボルト4の外径部とが直接衝突するのを防止し、貫通孔2d及びストッパボルト4が破損するのを防止できるのみならず、衝突時の振動によるエネルギーを吸収することで、この振動を減衰させることができる。
【0081】
また、本実施形態の減震ストッパ構造30は、防振架台1の第1及び第2架台12、14の側面に、固定ボルト8A、9A及び固定ナット8B、9Bによって取り付けられる構造を有する。従って、第1及び第2架台12、14に固定ボルト8A、9Aを挿通する貫通孔を設けることで、容易に設置することができる。即ち、減震ストッパ構造を備えていない防振架台に、取付用の貫通孔(挿通孔8C、9Cに相当)を設け、さらに、本実施形態の減震ストッパ構造30を取り付けることで、防振架台に容易に減震機能を持たせることが可能となる。従って、減震ストッパ構造を、設置済みの防振架台に後付けすることが可能となる。
【0082】
本実施形態の減震ストッパ構造30は、第1架台12を上部架台として、この上部架台にストッパ板部材2が固定され、第2架台14を下部架台として、この下部架台にストッパボルト4が固定される構造を有する。
しかしながら、本発明が適用される防振架台は、これに限定されるものではない。即ち、第1架台12を下部架台として、この下部架台にストッパ板部材2が固定され、第2架台14を上部架台として、この上部架台にストッパボルト4が固定される構造であっても良い。このような場合には、詳細な図示を省略するが、第1架台12が床スラブ(設置面)18に固定され、第2架台上に設備機器13が載置され、ストッパボルト4とストッパ板部材2の上下の位置関係が反転する構成となる。
【0083】
また、本実施形態の減震ストッパ構造30は、ストッパ板部材2の鉛直板部2bに設けられた長孔2cによって、ストッパ板部材2の高さ調整が可能に構成されている。
さらに、減震ストッパ構造30は、例えば、中継フレーム15の一方の水平フレーム部15aに設けられた固定孔15cにストッパボルト4を螺入するにあたり、例えば、ロックナット7と水平フレーム部15aとの間に介装させるスプリングワッシャ41の個数(
図6(a)〜(c)等に示す例では1個)を調整することにより、ストッパボルト4の高さ調整を行う構造を採用することも可能である。
また、本発明においては、さらに、ストッパ板部材2、又はストッパボルト4のうち少なくとも一方が、高さ調整可能である構成を採用しても良い。即ち、ストッパ板部材2が高調整可能でなくても、ストッパボルト4の高さ調整が可能であれば構わない。
【0084】
(変形例)
図8に、第1実施形態の変形例である減震ストッパ構造35の断面図を示す。以下、
図8を参照して、減震ストッパ構造35について説明する。本実施形態の変形例である減震ストッパ構造35は、減震ストッパ構造31と比較して、ストッパ板部材2の第1架台12への取り付け構造が異なる。
なお、本変形例では、上述した本実施形態の減震ストッパ構造30と同一態様の構成要素については同一の符号を付し、その詳しい説明を省略する。また、
図8に示す例においては、ストッパ板部材2よりも下方に設けられる構成については、減震ストッパ構造30と同一態様であるため、その図示を省略している。
【0085】
減震ストッパ構造35において、第1架台12を構成するフレーム部材12aの側面には、取付板片36が溶接により接合され、溶接部37を介しフレーム部材12aの側面から垂下するように固定されている。この取付板片36において第1架台12より下方側には、固定ボルト38A、38Aを挿通する2つの孔が設けられており、この孔に挿通された固定ボルト38A、38Aを、ストッパ板部材2の鉛直板部2bの長孔2c、2cに挿通し、さらに、固定ナット38B、38Bを螺入して締結することにより、第1架台12にストッパ板部材2が固定される。
【0086】
本変形例でも、第1実施形態と同様に、鉛直板部2bの長孔2c、2cにおいて、固定ボルト38A、38A及び固定ナット38B、38Bを用いて締結する高さを変えることにより、ストッパ板部材2の取り付け位置を長孔2cの鉛直方向の長さの範囲内で任意の高さの位置(無段階)に調整することができる。
また、本変形例のように、取付板片36をフレーム部材12aの側面に溶接で接合することにより、フレーム部材12aに孔を形成することができない場合であっても、本発明の減震ストッパ構造を適用することが可能となる。
【0087】
なお、本変化例においては、取付板片36が溶接によってフレーム部材12aに接合されているが、取付板片36の接合方法は、これに限定さるものではなく、例えば、フレーム部材12aにボルト固定されていても良い。
本実施形態の変形例である減震ストッパ構造35においても、上述した本実施形態の減震ストッパ構造30と同様の効果を得ることができる。
【0088】
(作用効果)
以上説明したように、本実施形態の減震ストッパ構造30によれば、ストッパ板部材2の水平板部2aに設けられた貫通孔2dにストッパボルト4を挿通する構造により、貫通孔2dとストッパボルト4の間に水平方向の隙間を形成している。また、水平板部2aの上下に配置されたストッパナット5、5が螺送可能であり、螺送により水平板部2aとストッパナット5、5との間に鉛直方向の隙間を設けることができる。水平方向及び鉛直方向に隙間が設けられることによって、防振機能を阻害することがなく、地震などが発生し、防振架台1に大きな振動が入力された場合において、水平方向においては、貫通孔2dとストッパボルト4が干渉し、鉛直方向においては、水平板部2aとストッパナット5、5が干渉することで、鉛直及び水平に設けられた隙間以上に、第1架台12と第2架台14が相対運動することがなく、設備機器の転倒を防止することができる。
【0089】
また、減震ストッパ構造30によれば、ストッパ板部材2の第1架台12への取り付け、もしくはストッパボルト4の中継フレーム15への取り付けのうち少なくとも一方が、高さ調整可能な構成であるため、減震ストッパ構造30を備えた防振架台1を設置する際に、予め、鉛直方向の隙間を調整しておき、設置現場において、設備機器13を載置して第1架台12と第2架台14の距離が決まった後に、減震ストッパ構造30を第1架台12又は第2架台14に固定することができる。即ち、減震ストッパ構造30の上下方向の隙間を作業現場で調整する必要がなくなり、設置作業が簡易となる。
【0090】
また、減震ストッパ構造30によれば、一対のストッパナット5、6の最大離間距離を制限する一対の螺送制限部材であるストッパボルト4及びロックナット7を有する。螺送制限部材であるストッパボルト4の頭部4a及びロックナット7によって、予め、一対のストッパナット5、6と水平板部2aとの鉛直方向の隙間を設定した状態において、ストッパナット5、6同士の距離がそれ以上離れないようにできる。即ち、ストッパナット5、6と水平板部2aとの鉛直方向の隙間を設定し、その状態を、ストッパナット5、6同士が最も離間した状態であるようにしておけば、その後にストッパナット5、6を螺送し、ストッパナット5、6同士を近接させても、最も離間した状態に戻せば、直ちに隙間を設定できるようになる。これにより、工場から設置現場に輸送する際に、一対のストッパナット5、6によって水平板部2aを挟持し、ストッパボルト4とストッパ板部材2を固定することが可能となる。従って、この減震ストッパ構造30は、輸送時におけるガタツキがなくなり、輸送時の振動により構成部材が破損することを防止できる。
【0091】
さらに、減震ストッパ構造30によれば、第2架台14に取り付けられて該第2架台14とストッパ板部材2との間に配置される中継フレーム15と、第2架台14と中継フレーム15との間に介装される板状の水平減震部材17とを備える構成を採用している。通常、地震動は上下動と比べて水平動の方が大きいため、水平動を低減すれば、防振架台に載置する機器類の転倒モーメントによる引抜き圧縮力も小さくなることから、水平減震部材17を設けることで水平動を低減させることで、垂直方向及び水平方向の両方における減震作用が効果的に得られる。
【0092】
[第2実施形態]
図9、10に、本発明の第2実施形態である減震ストッパ構造31、32の断面図を示す。以下、
図9、10を参照しながら、減震ストッパ構造31、32について説明する。なお、これら
図9、10は、
図5(a)に示した本発明の第1実施形態の減震ストッパ構造30の断面図と対応しており、上述の第1実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付与するとともに、その詳細な説明を省略する。
【0093】
第2実施形態の減震ストッパ構造31(32)は、中継フレーム55(56)が、第1架台12と第2架台14との間において、ストッパ板部材2側に配置されるとともに、ストッパボルト4が取り付けられる第1フレーム55A(56A)と、第2架台12側に配置されるとともに、水平減震部材17Aを介装して第2架台14に取り付けられる第2フレーム55B(56B)とからなる。そして、本実施形態の減震ストッパ構造31(32)は、第1フレーム55A(56A)と第2フレーム55B(56B)とが、板状の垂直減震部材17Bを介装して接続された構成とされている点で、第1実施形態の減震ストッパ構造30とは異なる。
【0094】
即ち、
図9に示す減震ストッパ構造31においては、中継フレーム55を構成する第1フレーム55A及び第2フレーム55Bが、一対の垂直部55a、55aあるいは一対の垂直部55b、55bと、水平部55cあるいは水平部55dとを有する断面略コの字状に形成されてなる。そして、減震ストッパ構造31は、第1フレーム55Aと第2フレーム55Bとが、各々の一対の垂直部同士が互いに組み合わせられてなる。即ち、第1フレーム55Aの垂直部55aと第2フレーム55Bの垂直部55bとが、それぞれ2箇所で、垂直減震部材17B、17Bを介装して接続された構成とされている。また、下側に位置する第2フレーム55Bは、その水平部55dが、水平減震部材17Aを介装して第2架台14に取り付けられている。また、図示例においては、第2フレーム55Bの水平部55dが、水平減震部材17Aを介装して、第2架台14に取り付けられたベースフレーム45の上面45aと接続されている。
【0095】
また、
図10に示す減震ストッパ構造32においては、中継フレーム56を構成する第1フレーム56A及び第2フレーム56Bが、それぞれ水平部56aあるいは水平部56b、及び、垂直部56cあるいは垂直部56dを有する断面略L字状に形成されてなる。そして、減震ストッパ構造32は、第1フレーム56Aと第2フレーム56Bとが、各々に備えられる垂直部56cと垂直部56dとの間で垂直減震部材17Bを介装して接続された構成とされている。また、下側に位置する第2フレーム56Bは、その水平部56dが、水平減震部材17Aを介装して第2架台14に取り付けられている。また、図示例においては、第2フレーム56Bの水平部56dが、水平減震部材17Aを介装して、第2架台14に取り付けられたベースフレーム46の上面46aと接続されている。
【0096】
本実施形態では、ベースフレーム45(又はベースフレーム46)の第2架台14への取付構造としては、上述した減震部材固定フレーム3の場合と同様、締結板部45b(又は締結板部45b)の固定孔45c、45c(又は固定孔46c、46c)に、第2架台14の内側から挿通孔9C、9Cを通った固定ボルト9A、9Aを挿通させ、固定ナット9B、9Bを外側から螺入し締結する構成とすることができる。
また、第1フレーム55A(又は第1フレーム56A)と、第2フレーム55B(又は第2フレーム56B)とを、垂直減震部材17Bを介装して接続する手段としても、一体成型による溶着や、従来公知の接着剤を用いた手段等を何ら制限無く採用することができる。
【0097】
図9に示す減震ストッパ構造31、及び、
図10に示す減震ストッパ構造32によれば、上記構成を採用することにより、地震動等によるせん断歪を、水平方向あるいは垂直方向(上下方向)に分離することができる。即ち、水平減震部材17Aによって水平方向の減震作用が得られるとともに、垂直減震部材17Bによって垂直方向の減震作用が得られ、水平方向及び垂直方向で各々減震させることで、より効果的な減震が可能になる。
【0098】
なお、一般に、防振架台に載置する機器類の重心が高く、転倒モーメントが大きくなるような場合には、さらに、上下方向の引き抜き圧縮力の対策が必要になる。本実施形態の減震ストッパ構造31(32)によれば、上記構成を採用することにより、地震動等によるせん断歪を水平方向及び垂直方向(上下方向)で分離して減震させるので、重心の高い機器を防振架台に載置する場合であっても、機器の転倒が生じるのを抑制することができる。
【0099】
本実施形態の減震ストッパ構造31(減震ストッパ構造32)によれば、上述のような、第1フレーム55A(又は第1フレーム56A)と、第2フレーム55B(又は第2フレーム56B)とを、垂直減震部材17Bを介装して接続することで、垂直減震部材を構成する材料の粘性系特性から応答計算がし易くなるので、この計算の信頼性が向上する。例えば、垂直減震部材の厚さが3.5mmで設計伸び率が300%(一般に限界伸び率は400〜500%)とした場合、10.5mmの変形に耐えられることになり、垂直減震部材を薄く構成することができるので、減震ストッパ構造の小型化やコストダウンが可能になる。
また、減震ストッパ構造31(32)によれば、金属部材である第1フレーム及び第2フレームと、樹脂等の材料からなる垂直減震部材とを、一体溶着成型で接続することができるので、新たな一体成型金型が必要になるものの、大量生産が可能となり、また、大幅なコストダウンも可能になる。
【0100】
[第3実施形態]
図11に、本発明の第3実施形態である減震ストッパ構造33の断面図を示す。以下、
図11を参照しながら、減震ストッパ構造33について説明する。なお、
図11は、上記第2実施形態と同様、
図5(a)に示した本発明の第1実施形態の減震ストッパ構造30の断面図と対応しており、上述の第1実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付与するとともに、その詳細な説明を省略する。
【0101】
第3実施形態の減震ストッパ構造33は、第2架台14に取り付けられる垂直部34bと、第2架台14と第1架台12との間に配置される水平部34aとを有する、断面略L字状の下部フレーム34が設けられている。また、減震ストッパ構造33においては、中継フレーム57が、第1架台12と第2架台14との間において水平に延びる一対の水平フレーム部57a、57bを有した断面略コの字状とされており、一方の水平フレーム部57aにストッパボルト4が取り付けられている。また、他方の水平フレーム部57bは、下部フレーム34の水平部34aと第2架台14との間に狭持されるように配置されており、他方の水平フレーム57bと、下部フレーム34及び第2架台14の各々とが、水平減震部材17C、17Cを介装して接続されている。なお、図示例においては、他方の水平フレーム57bの上面側が、水平減震部材17Cを介装して下部フレーム34の水平部34aに接続されるとともに、他方の水平フレーム57bの下面側が、水平減震部材17Cを介装して、第2架台14に取り付けられたベースフレーム47の上面47aと接続されている。
【0102】
ベースフレーム47の第2架台14への取付構造としては、上述した減震部材固定フレーム3の場合と同様、締結板部47bの固定孔47c、47cに、第2架台14の内側から挿通孔9C、9Cを通った固定ボルト9A、9Aを挿通させ、固定ナット9B、9Bを外側から螺入し締結する構成とすることができる。
また、他方の水平フレーム57と、下部フレーム34及びベースフレーム47の各々とを、水平減震部材17C、17Cを介装して取り付ける手段としても、一体成型による固着や、従来公知の接着剤を用いた手段等を何ら制限無く採用することができる。
【0103】
減震ストッパ構造33によれば、上記構成を採用することにより、外形・外観がシンプルなものになり、設置現場における作業性が向上するという効果が得られる。
また、他方の水平フレーム57と、下部フレーム34及び第2架台14の各々とが、水平減震部材17C、17Cを介装して接続された構成により、引抜き・圧縮・水平せん断力の各方向において減震効果が得られ、比較的コンパクトな構成で、万全な地震や強風対策が可能になるという効果が得られる。
【0104】
以上、本発明の第1〜第3実施形態を説明したが、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。即ち、本発明は、本実施形態によって限定されることはない。