(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上記課題を解決することができる半導体装置の製造方法及びワイヤボンディング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様にかかる半導体装置の製造方法は、第1ボンド点と第2ボンド点とが接続されたワイヤループを有する半導体装置を製造する方法であって、ワイヤテールが先端から延出したボンディングツールを下降させてワイヤテールの先端を半導体装置のボンディング面に接触させるワイヤテール接触工程と、ボンディングツールを当該ボンディングツールの軸方向に交わる方向へ移動させて、ワイヤテールの先端をボンディング面に接触させながらワイヤテールを屈曲させるワイヤテール屈曲工程と、ボンディングツールを下降させて第1ボンド点においてワイヤテールの一部を加圧するとともに、ワイヤテールの先端が上方を向くようにワイヤテールを所定形状に整形する第1ボンディング工程と、ワイヤを繰り出しながらボンディングツールを移動させてワイヤを所定形状に延出させるワイヤルーピング工程と、ボンディングツールを下降させて第2ボンド点においてワイヤの一部を加圧する第2ボンディング工程と、ボンディングツールの先端からワイヤの一部を延出させるようにワイヤを切断するワイヤ切断工程と、を含む。
【0008】
上記構成によれば、ワイヤテールの先端をボンディング面に接触させながらボンディングツールを移動させてワイヤテールを屈曲させ、その後、ボンディングツールを下降させて第1ボンド点においてワイヤテールの一部を加圧するとともにワイヤテールを所定形状に整形する。これにより、例えばワイヤテールの整形のために別個の部材を用意することがなく、またボンディングツールの移動量を抑えることができる。したがって、第1ボンド点においてワイヤの先端が他の隣接する要素に接触することを防止することができ、半導体装置の損傷あるいは不良の発生を防止するとともに、設計自由が高く、簡便かつ効率的な半導体装置の製造方法を行うことができる。
【0009】
上記半導体装置の製造方法において、ワイヤテール屈曲工程において、ボンディングツールを、第1ボンド点と第2ボンド点とを結ぶワイヤ方向に沿って移動させることもできる。
【0010】
上記半導体装置の製造方法において、ワイヤテール屈曲工程において、ボンディングツールをワイヤ方向に沿って、ボンディング面に対して傾斜する方向に移動させることもできる。
【0011】
上記半導体装置の製造方法において、ワイヤテール屈曲工程において、ボンディングツールをワイヤ方向に沿って、ボンディング面に対して平行方向に移動させることもできる。
【0012】
上記半導体装置の製造方法において、ワイヤテール屈曲工程において、ボンディングツールをワイヤ方向に沿って、所定の曲線の軌跡を描くように移動させることもできる。
【0013】
上記半導体装置の製造方法において、ワイヤテール屈曲工程において、所定の曲線は、ボンディング面側が凹状をなす向きの曲線にすることもできる。
【0014】
上記半導体装置の製造方法において、ワイヤテール屈曲工程において、所定の曲線は、ボンディング面側が凸状をなす向きの曲線にすることもできる。
【0015】
上記半導体装置の製造方法において、第1ボンディング工程において、ボンディングツールをボンディング面に対して垂直方向に沿って下降させることもできる。
【0016】
上記半導体装置の製造方法において、第1ボンディング工程において、ボンディングツールをワイヤ方向に沿って、ボンディング面に対して傾斜するように下降させることもできる。
【0017】
上記半導体装置の製造方法において、ワイヤテール屈曲工程において、ボンディングツールをワイヤテールの長さ以上の距離だけワイヤ方向に沿って移動させることもできる。
【0018】
上記半導体装置の製造方法において、第1ボンディング工程において、第1ボンド点として半導体チップの電極においてワイヤテールの一部を加圧し、第2ボンディング工程において、第2ボンド点として半導体チップが搭載された基板の電極においてワイヤの一部を加圧させることもできる。
【0019】
本発明の一態様にかかるワイヤボンディング装置は、第1ボンド点と第2ボンド点とがワイヤで接続されるワイヤループを有する半導体装置を製造するためのワイヤボンディング装置であって、ボンディング面に対して平行な平面及び垂直な方向に移動可能なボンディングアームと、ボンディングアームの先端に取り付けられた超音波ホーンと、超音波ホーンの一端に取り付けられ、ワイヤが内部に挿通されたボンディングツールと、ボンディングツールの動作を制御する制御部と、を含み、制御部が、ワイヤテールが先端から延出したボンディングツールを下降させてワイヤテールの先端を半導体装置のボンディング面に接触させるワイヤテール接触工程と、ボンディングツールを当該ボンディングツールの軸方向に交わる方向へ移動させて、ワイヤテールの先端をボンディング面に接触させながらワイヤテールを屈曲させるワイヤテール屈曲工程と、ボンディングツールを下降させて第1ボンド点においてワイヤテールの一部を加圧するとともに、ワイヤテールの先端が上方を向くようにワイヤテールを所定形状に整形する第1ボンディング工程と、ワイヤを繰り出しながらボンディングツールを第2ボンド点に向かって移動させてワイヤを所定形状に延出させるワイヤルーピング工程と、ボンディングツールを下降させて第2ボンド点においてワイヤの一部を加圧する第2ボンディング工程と、ボンディングツールの先端からワイヤの一部を延出させるようにワイヤを切断するワイヤ切断工程と、を行うように構成されている。
【0020】
上記構成によれば、ワイヤボンディング装置の制御部が、ワイヤテールの先端をボンディング面に接触させながらボンディングツールを移動させてワイヤテールを屈曲させ、その後、ボンディングツールを下降させて第1ボンド点においてワイヤテールの一部を加圧するとともにワイヤテールを所定形状に整形するように構成されている。これにより、例えばワイヤテールの整形のために別個の部材を用意することがなく、またボンディングツールの移動量を抑えることができる。したがって、第1ボンド点においてワイヤの先端が他の隣接する要素に接触することを防止することができ、半導体装置の損傷あるいは不良の発生を防止するとともに、設計自由が高く、簡便かつ効率的なワイヤボンディング装置を提供することができる。
【0021】
上記ワイヤボンディング装置において、ワイヤテール屈曲工程において、ボンディングツールを、第1ボンド点と第2ボンド点とを結ぶワイヤ方向に沿って移動させることもできる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ワイヤボンディングにおけるワイヤテールの整形処理を簡便かつ効率的に行うことができる。よって、半導体装置の損傷あるいは不良の発生を防止するとともに、設計自由が高く、簡便かつ効率的な処理を行うことができる半導体装置の製造方法及びワイヤボンディング装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の構成要素は同一又は類似の符号で表している。図面は例示であり、各部の寸法や形状は模式的なものであり、本願発明の技術的範囲を当該実施の形態に限定して解するべきではない。
【0025】
図1は、本実施形態に係るワイヤボンディング装置を示した図であり、
図2は、ワイヤボンディング装置におけるボンディングアームの一部拡大図であり、
図2(A)は、ボンディングアームの頂面図、
図2(B)は、ボンディングアームの底面図である。
【0026】
図1に示すように、ワイヤボンディング装置1は、XY駆動機構10、Z駆動機構12、ボンディングアーム20、超音波ホーン30、ボンディングツール40、荷重センサ50、超音波振動子60及び制御部80を備える。
【0027】
XY駆動機構10はXY軸方向(平面方向)に移動可能に構成されており、XY駆動機構(リニアモータ)10には、ボンディングアーム20をZ軸方向(上下方向)に移動可能なZ駆動機構(リニアモータ)12が設けられている。
【0028】
ボンディングアーム20は、支軸14に支持され、XY駆動機構10に対して揺動自在に構成されている。ボンディングアーム20は、XY駆動機構10から、ボンディング対象物100が置かれたボンディングステージ16に延出するように略直方体に形成されている。ボンディング対象物100はボンディング面(ワイヤがボンディングされる側の表面)を有し、当該ボンディング面がXY軸方向の平面に一致するようにボンディングステージ16に置かれる。ボンディングアーム20は、XY駆動機構10に取り付けられるアーム基端部22と、アーム基端部22の先端側に位置して超音波ホーン30が取り付けられるアーム先端部24と、アーム基端部22とアーム先端部24とを連結して可撓性を有する連結部23とを備える。この連結部23は、ボンディングアーム20の頂面21aから底面21bの方向へ延出した所定幅のスリット25a、25b、及び、ボンディングアーム20の底面21bから頂面21aの方向へ延出した所定幅のスリット25cによって構成されている。このように、連結部23が各スリット25a、25b、25cによって局部的に薄肉部として構成されているため、アーム先端部24はアーム基端部22に対して撓むように構成されている。
【0029】
図1及び
図2(B)に示すように、ボンディングアーム20の底面21b側には、超音波ホーン30が収容される凹部26が形成されている。超音波ホーン30は、ボンディングアーム20の凹部26に収容された状態で、アーム先端部24にホーン固定ネジ32によって取り付けられている。この超音波ホーン30は、凹部26から突出した先端部においてボンディングツール40を保持しており、凹部26には超音波振動を発生する超音波振動子60が設けられている。超音波振動子60によって超音波振動が発生し、これが超音波ホーン30によってボンディングツール40に伝達され、ボンディングツール40を介してボンディング対象に超音波振動を付与することができる。超音波振動子60、例えば、ピエゾ振動子である。
【0030】
また、
図1及び
図2(A)に示すように、ボンディング20の頂面21a側には、頂面21aから底面21bに向かって順番にスリット25a及び25bが形成されている。上部のスリット25aは、下部のスリット25bよりも幅広に形成されている。そして、この幅広に形成された上部のスリット25aに、荷重センサ50が設けられている。荷重センサ50は、予圧用ネジ52によってアーム先端部24に固定されている。荷重センサ50は、アーム基端部22とアーム先端部24との間に挟みこまれるように配置されている。すなわち、荷重センサ50は、超音波ホーン30の長手方向の中心軸からボンディング対象に対する接離方向にオフセットして、ボンディングアーム20の回転中心とアーム先端部24における超音波ホーン30の取付面(すなわち、アーム先端部24におけるボンディングツール40側の先端面)との間に取り付けられている。そして、上記のように、ボンディングツール40を保持する超音波ホーン30がアーム先端部24に取り付けられているため、ボンディング対象からの反力によりボンディングツール40の先端に荷重が加わると、アーム基端部22に対してアーム先端部24が撓み、荷重センサ50において荷重を検出することが可能となっている。荷重センサ50は、例えば、ピエゾ荷重センサである。
【0031】
ボンディングツール40は、ワイヤ42を挿通するためのものであり、例えば
図4(A)に示すような、挿通穴41が設けられたキャピラリである。この場合、ボンディングツール40の挿通穴41にボンディングに使用するワイヤ42が挿通され、その先端からワイヤ42の一部を繰り出し可能に構成されている。また、ボンディングツール40の先端には、ワイヤ42を押圧するための押圧部47が設けられている。押圧部47は、ボンディングツール40の挿通穴41の軸方向の周りに回転対称の形状を有しており、挿通穴41の周囲の下面に押圧面48を有している。
【0032】
ボンディングツール40は、バネ力によって交換可能に超音波ホーン30に取り付けられている。また、ボンディングツール40の上方には、ワイヤクランパ44が設けられ、ワイヤクランパ44は所定のタイミングでワイヤ42を拘束又は解放するよう構成されている。ワイヤクランパ44のさらに上方には、ワイヤテンショナ46が設けられ、ワイヤテンショナ46はワイヤ42を挿通し、ボンディング中のワイヤ42に適度なテンションを付与するよう構成されている。
【0033】
ワイヤ42の材料は、加工の容易さと電気抵抗の低さなどから適宜選択され、例えば、金(Au)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)又は銀(Ag)等が用いられる。なお、ワイヤ42は、ボンディングツール40の先端から延出した一部(ワイヤテール)43が第1ボンド点にボンディングされる。
【0034】
図1に戻り、制御部80は、XY駆動機構10、Z駆動機構12、超音波ホーン30(超音波振動子60)及び荷重センサ50に接続されており、制御部80によってこれらの構成の動作を制御することにより、ワイヤボンディングのための必要な処理を行うことができるようになっている。制御部80は、例えばXY駆動機構10、Z駆動機構12、荷重センサ50、超音波ホーン30(超音波振動子60)、ワイヤクランパ44などの各構成との間で信号の送受信を行うインタフェース(図示しない)を備えている。具体的には、制御部80は、ボンディングツール40のXYZ軸方向の移動距離やZ方向の荷重の制御、ワイヤクランパ44の開閉動作、ボンディングツール40に付与される超音波振動のタイミングや時間及びスクラブ動作の制御など、ボンディングツールの動作に関わる制御を行う。
【0035】
また制御部80には、制御情報を入力するための操作部82と、制御情報を出力するための表示部84が接続されており、これにより作業者が表示部84によって画面を認識しながら操作部82によって必要な制御情報を入力することができるようになっている。なお、制御部80は、CPU及びメモリなどを備えるコンピュータ装置であり、メモリには予めワイヤボンディングに必要な処理を行うためのボンディングプログラムなどが格納される。制御部80は、後述する半導体装置の製造方法において説明するボンディングツール40の動作を制御するための各処理を行うための手段(各処理をコンピュータに実行させるためのプログラム)を備える。
【0036】
次に、
図3〜
図7を参照して、本実施形態にかかる半導体装置の製造方法を説明する。この半導体装置の製造方法は、上記ワイヤボンディング装置1を用いて行われる。
【0037】
ここで、
図3は、半導体装置の製造方法のフローチャートであり、
図4(A)〜(D)並びに
図5(A)及び(B)は半導体装置の製造方法の各処理を示したものである。また、
図6及び
図7は、ボンディングツールの移動の軌跡を示したものである。
【0038】
以下においては、説明の便宜上、ボンディングツールの移動の軌跡は、X座標が一定である場合(X=X0)について説明する。なお、ボンディング対象物100である半導体装置のボンディング面(第1ボンド点及び第2ボンド点を含む)は、実際には
図1に示すように半導体チップ110と基板120とにおいて異なる高さを有するが、
図6では略同じ高さであるとみなして図示する。
【0039】
最初に、ボンディングステージ16にボンディング対象物100を用意する。
【0040】
図1に示すように、ボンディング対象物100は、本実施形態の半導体装置の製造方法を用いて電気的に接続される第1ボンド点と第2ボンド点とを有する。第1ボンド点及び第2ボンド点は、ボンディング対象物100のボンディング面に配置された、ワイヤがボンディングされる箇所である。ここで、第1ボンド点とは、ワイヤで接続する2点間のうちの最初にボンディングする箇所を指し、第2ボンド点とは、当該2点間のうちの後にボンディングする箇所を指す。なお、本実施形態において「ボンド点」とは、ボンディングされる1つの空間座標に限るものではなく、ボンディングされる対象が存在する領域を示すものである。
【0041】
ボンディング対象物100は、少なくとも1つの半導体チップを含む半導体装置であり、例えば、
図1に示すように、第1ボンド点としての複数の電極112を有する半導体チップ110と、第2ボンド点としての複数の電極122を有する基板120とを備える。半導体チップ110における電極112の形成面(半導体素子が形成された側の表面)には、保護膜としてのパッシベーション114(
図1では省略。
図5(A)及び(B)参照。)が形成されており、複数の電極112はそれぞれパッシベーション114の開口部から露出している。半導体チップ110は、基板120上に搭載されており、第1ボンド点としての電極112のほうが、第2ボンド点としての電極122よりもZ方向に高い位置に配置されている。このような態様において、Z方向の高い位置から低い位置の順番にボンディングすることを、通常、正ボンディングと呼び、以下の例では正ボンディングの例を説明するが、本実施形態のワイヤボンディングはZ方向の低い位置から高い位置の順番にボンディングするいわゆる逆ボンディングに適用することもできる。
【0042】
まず、
図3に示すように、ワイヤテール43が先端から延出したボンディングツール40を用意する(S10)。
【0043】
ボンディングツール40は、例えば
図4(A)に示すようなキャピラリであり、Z方向に沿って挿通穴41が設けられ、当該挿通穴41の内部にワイヤ42が挿通されている。そして、ボンディングツール40の先端からは、ワイヤ42の一部がワイヤテール43として延出されている。なお、ワイヤテール43は
図4(A)に示すようにZ方向に沿って延出されていることが好ましいが、これに限るものではなく、例えば多少屈曲している形状であっても構わない。
【0044】
次に、
図3に示すように、ボンディングツール40を下降させてワイヤテール43の先端43aを半導体チップ110のボンディング面に接触させる(S11)。
【0045】
具体的には、
図4(A)に示すように、ワイヤクランパ44を閉じた状態にして、ボンディングツール40を、Z方向に沿って、ワイヤテール43の先端43aがボンディング面に接触する高さZ1まで下降させる。こうして、
図4(A)及び
図6に示すように、時刻t1において、ボンディングツール40を高さZ1及び平面座標(X0,Y1)に配置する。
【0046】
ここで、
図4(A)に示すように、ワイヤテール43がZ方向に沿って延出していれば、ワイヤテールの長さLはボンディング面からの高さZ1と略同一となる。そして、ワイヤテールの長さL(又は高さZ1)は、例えば、ボンディングツール40の幅Tと、挿通穴41の開口幅CDとにおいて、L≧(T−CD)/2の関係式を満たすように設定することもできる。これにより、例えば、後述する第1ボンディングにおけるワイヤ42の被押圧部分の長さを、ボンディングツール40の押圧面48の幅以上にすることができる。
【0047】
次に、
図3に示すように、ボンディングツール40をZ軸方向に交わる方向へ移動させてワイヤテール43を屈曲させる(S12)。
【0048】
具体的には、
図4(B)及び(C)に示すように、ワイヤテール43の先端43aをボンディング面に接触させながら、ボンディングツール40を所定の曲線(ボンディング面側が凹状をなす向きの曲線)の軌跡を描くように移動させる。こうして、ボンディング面に当接したワイヤテール43の先端43aを起点として、ワイヤテール43を屈曲させる。
【0049】
図6に示すように、時刻t2までのボンディングツール40の移動の軌跡は、その一部に所定の曲線の軌跡が含まれていればよく、例えば、時刻t1からt2までの時間のうち、前半は高さZ1のままY方向へ移動し、後半は高さZ1から高さZ2へ所定の曲線の軌跡を描くように移動させることもできる。所定の曲線の軌跡は、時刻t1及びt2の各空間座標の取り方、あるいは、時刻t1〜t2までの時間におけるXY駆動機構10及びZ駆動機構12によるボンディングツールの単位時間当たりの移動量の設定によって適宜設定することができる。例えば、所定の曲線の軌跡は、楕円状又は円状の一部の軌跡とすることも可能である。こうして、
図4(C)及び
図6に示すように、時刻t2においてボンディングツール40を高さZ2及び平面座標(X0,Y2)に配置する。
【0050】
ここで、XY平面上における時刻t1から時刻t2へのボンディングツール40の移動方向は、特に限定されるものではないが、例えば
図6及び7に示すように、第1ボンド点(電極112)と第2ボンド点(電極122)とを結ぶワイヤ方向(すなわち、第1ボンド点と第2ボンド点との間を接続するワイヤループが延出する方向)に沿ったものとすることもできる。これによれば、ボンディングツール40の移動方向に伴ってワイヤテール43の屈曲方向をワイヤ方向に揃えることができ、ひいては、後述するワイヤテール43の先端43aのXY平面における向きをワイヤ方向に揃えることができる。
【0051】
また、時刻t1から時刻t2までのボンディングツール40におけるXY平面上の移動距離(Y2−Y1)は、ワイヤテール長さL以上とすることもできる。こうすることで、後述する第1ボンド点での加圧のときに、最終的にワイヤテール43の先端43aをボンディング面から上方へ浮かせやすくすることができる。
【0052】
図6の矢印に示すような軌跡(ボンディング面側が凹状をなす向きの所定の曲線)に沿って時刻t1からt3にかけてボンディングツール40を移動させることによって、時刻t1〜t2の間、ワイヤテール43がボンディングツール40の貫通穴41に押し戻されるという弊害が発生する可能性を少なくするとともに、ワイヤテール43がボンディング面上を滑ることを抑止することができる。したがって、ワイヤテール43をより好適な屈曲形状に容易に整えることができる。
【0053】
次に、
図3に示すように、ボンディングツール40を下降させて第1ボンド点においてワイヤテール43の一部をボンディングするとともに、ワイヤテール43を所定形状に整形する(S13)。
【0054】
具体的には、
図4(D)に示すように、ボンディングツール40をZ方向に沿って下降させ、ボンディングツール40の押圧部47(押圧面48)によってワイヤ42の一部92を加圧するとともに、必要に応じて、熱、超音波及びスクラブ動作を作動させることによって、ワイヤ42と電極112とを接合する。そして、ボンディングツール40の加圧によってワイヤテール43の先端43aをボンディング面から上方を向くように塑性変形させて整形する。ここで、ワイヤテール43の整形後の形状は、先端43aがボンディング面から上方を向いてさえいればよく、例えば、ボンディング面から僅かに斜め上方を向いている態様を含む。例えば、ワイヤテール43の先端43aとボンディング面とのなす角度αは、0°<α<90°の範囲のいずれかの値であればよい。こうして、
図4(D)に示すように、時刻t3において、第1ボンド点でのボンディングを終えるとともにワイヤテール43を所定形状に整形する。
【0055】
なお、第1ボンド点でのボンディングは、ワイヤクランパ44を開いた状態にして行うこともできる。また、時刻t2においてボンディングツール40の下降を開始するときの高さZ2は、例えば、ボンディングツール40の下降速度の切り替わり点であるサーチレベルであってもよく、その高さは適宜設定することができる。
【0056】
次に、
図3に示すように、ボンディングツール40を移動させてワイヤ42をルーピングさせる(S14)。
【0057】
具体的には、
図6に示すように、ボンディングツール40を第1ボンド点(電極112)からZ方向に沿って上昇させ、ボンディングツール40をその先端からワイヤ42を繰り出しながら、
図6の矢印に示すような所定の軌跡に沿って移動させて第2ボンド点(基板120の電極122)の上方へ移動させる。こうして、第1ボンド点と第2ボンド点との間に所定のループ形状にワイヤを延出させることができる。
【0058】
次に、ボンディングツール40を下降させて第2ボンド点においてワイヤ42の一部をボンディングする(S15)。
【0059】
具体的には、
図5(A)に示すように、ワイヤクランパ44を閉じた状態にして、ボンディングツール40を、平面座標(X0,Y3)において、Z方向に沿って第2ボンド点に向かって下降させる。そして、ボンディングツール40の押圧部47(押圧面48)によってワイヤ42の一部94を加圧するとともに、必要に応じて、熱、超音波及びスクラブ動作を作動させることによって、ワイヤ42と電極122とを接合する。こうして、
図5(A)及び
図6に示すように、時刻t4において、第2ボンド点でのボンディングを終えて、第1ボンド点と第2ボンド点とが接続されたワイヤループ90を形成する。
【0060】
次に、ボンディングツール40を移動させて、ワイヤ42を切断する(S16)。
【0061】
具体的には、
図5(B)に示すように、ボンディングツール40の先端からワイヤ42の一部、すなわち新たなワイヤテール43を延出させるように、ワイヤ42を切断する。ワイヤ切断のためのボンディングツール40の移動処理は特に限定されるものではないが、例えば、ワイヤクランパ44を開いた状態にして、ボンディングツール40を第2ボンド点から離れる方向(例えばZ方向に沿った上昇方向)へ移動させ、これによりボンディングツール40の移動量に伴いボンディングツール40の先端からワイヤ42を所定量だけ繰り出し、その後、ワイヤクランパ44を閉じた状態でボンディングツール40を第2ボンド点からさらに離れる方向(例えばZ方向に沿った上昇方向)へ移動させて、ワイヤ42に引っ張り応力を加えて切断することもできる。XY駆動機構10及びZ駆動機構12の少なくとも1つを適宜作動させることによってボンディングツール40の移動方向を調整し、これによって、ボンディングツール40の先端から延出される新たなワイヤテール43の形状を整形すると同時にワイヤ42を切断することもできる。新たに形成するワイヤテール43は、
図5(B)に示すように、Z方向に沿って延出されていることが好ましいが、例えば所定の方向(例えばワイヤ方向)に屈曲している形状であっても構わない。
【0062】
このような処理によって、
図5(B)に示すように、第1ボンド点と第2ボンド点との間を接続するために所定形状に延出されたワイヤループ130を形成することができる。ワイヤループ130は、第1ボンド点である電極112上に接合部132を有し、第2ボンド点である電極122上に接合部134を有している。各接合部132,134は、ボンディングツール40(押圧面48)のボンディングによってワイヤ径よりも薄くなるように塑性変形されている。そして、第1ボンド点におけるワイヤループ130の先端133は、ボンディング面から上方を向いて延出しており、これにより他の隣接する要素(例えばパッシベーション114又は隣接する他の電極など)と接触することを防止できるようになっている。
【0063】
その後、
図3に示すように、ボンディング対象物100に対して次のワイヤボンディングを行う必要があるか否かを判定し(S17)、必要がある場合(S17 Yes)は、ボンディングツール40を次のワイヤボンディングのための第1ボンド点へ移動させて、S10〜S16の一連の工程を繰り返し行う。他方、次のワイヤボンディングを行う必要がなく、ボンディング対象物100に対するワイヤボンディングを全て終えた場合(S17 No)は、当該ボンディング対象物100に対してのワイヤボンディング工程を終了する。
【0064】
なお、ワイヤ切断工程後(S16)であって、次のS10の工程を行う前において、必要があれば、ボンディングツール40の先端から延出した新たなワイヤテール43をZ方向に沿って整形する処理を追加的に行うこともできる。
【0065】
以上のとおり、本実施形態によれば、ワイヤテール43の先端43aをボンディング面に接触させながらボンディングツール40を移動させてワイヤテール43を屈曲させ、その後、ボンディングツール40を下降させて第1ボンド点(電極112)においてワイヤテール43の一部92を加圧するとともにワイヤテール43を所定形状に整形する。これにより、例えばワイヤテール43の整形のために別個の部材を用意することがなく、またボンディングツール40の移動量を抑えることができる。したがって、第1ボンド点においてワイヤの先端43aが他の隣接する要素(例えばパッシベーション114又は隣接する他の電極など)に接触することを防止することができ、半導体装置の損傷あるいは不良の発生を防止するとともに、設計自由が高く、簡便かつ効率的な半導体装置の製造方法を行うことができる。
【0066】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく種々に変形して適用することが可能である。
【0067】
時刻t1〜t3の処理(ワイヤテール屈曲工程及び第1ボンディング工程)におけるボンディングツール40の移動の軌跡は、
図6の矢印に示す態様に限るものではなく様々な態様を採ることができる。
【0068】
ここで、
図8〜
図11は、時刻t1〜t3のボンディングツール40の移動の軌跡の変形例を示したものである。なお、時刻t1及びt3におけるボンディングツールの高さ及び平面座標、並びに、XY平面における移動方向(ワイヤ方向であってもよいこと)は、上記実施形態の説明と同様であり、時刻t1〜t3の間のボンディングツールの移動の軌跡が
図6に示す例と異なっている。
【0069】
例えば、
図8に示すように、時刻t1からt2にかけて、ワイヤテール43の先端43aをボンディング面に接触させながら、ボンディングツール40を所定の曲線(ボンディング面側が凹状をなす向きの曲線)の軌跡を描くように移動させ、時刻t2において、ボンディングツール40を高さZ2及び平面座標(X0,Y1´)に配置し、その後、時刻t2からt3にかけて、ボンディングツール40をボンディング面(XY平面)に対して傾斜するように下降させ、時刻t3において、ワイヤテール43の一部を電極112にボンディングすることもできる。
【0070】
これによれば、時刻t2からt3にかけてボンディングツール40をボンディング面に対して傾斜するように下降させるので、ワイヤテール43の先端43aをボンディング面から上方へより一層浮かせやすくすることができる。したがって、より確実にワイヤテール43を所定形状に整形することができる。
【0071】
あるいは、
図9に示すように、時刻t1からt2にかけて、ワイヤテール43の先端43aをボンディング面に接触させながら、ボンディングツール40を所定の曲線(ボンディング面と反対側が凹状をなす向きの曲線)の軌跡を描くように移動させ、時刻t2において、ボンディングツール40を高さZ2及び平面座標(X0,Y2)に配置し、その後、時刻t2からt3にかけて、ボンディングツール40をZ方向に沿って下降させ、時刻t3において、ワイヤテール43の一部を電極112にボンディングとすることもできる。
【0072】
あるいは、
図10に示すように、時刻t1からt2にかけて、ワイヤテール43の先端43aをボンディング面に接触させながら、ボンディングツール40をボンディング面(XY平面)に平行な方向に沿って移動させ、時刻t2において、ボンディングツール40を高さZ1及び平面座標(X0,Y2)に配置し、その後、時刻t2からt3にかけて、ボンディングツール40をZ方向に沿って下降させ、時刻t3において、ワイヤテール43の一部を電極112にボンディングとすることもできる。
【0073】
あるいは、
図11に示すように、時刻t1からt2にかけて、ワイヤテール43の先端43aをボンディング面に接触させながら、ボンディングツール40をボンディング面(XY平面)に対して傾斜するように下降させ、時刻t2において、ボンディングツール40を高さZ2及び平面座標(X0,Y2)に配置し、その後、時刻t2からt3にかけて、ボンディングツール40をZ方向に沿って下降させ、時刻t3において、ワイヤテール43の一部を電極112にボンディングとすることもできる。
【0074】
なお、上記
図9及び
図11に示す変形例では、時刻t2からt3にかけてボンディングツール40をZ方向に沿って下降させる例を説明したが、更なる変形例として、
図9及び
図11に示す例において時刻t2からt3にかけて、ボンディングツール40をボンディング面(XY平面)に対して傾斜するように下降させ、時刻t3において、ワイヤテール43の一部を電極112にボンディングとすることもできる。
【0075】
また、上記実施形態においては、
図4(A)に示すように、ワイヤテール43の先端43aが電極112の外側の領域に接触した例を説明したが、ワイヤテール43の先端43aが接触する領域は、例えば電極112の内側の領域とすることもできる。すなわち、ワイヤテールの長さL、電極112の大きさ、又は、ワイヤテール43の整形形状(例えばボンディング面から上方を向いて延出する部分の長さ)等に鑑みて、ワイヤテール43の先端43aの先端を電極112の内側の領域(ボンディング面に含まれる)に接触させながらワイヤテールを屈曲させることも可能である。
【0076】
また、上記実施形態においては、第1ボンド点として半導体チップの電極112にボンディングし、その後に第2ボンド点として基板120の電極122にボンディングする正ボンディングの例を説明したが、これとは逆に、第1ボンド点として基板120の電極122にボンディングし、その後に第2ボンド点として半導体チップ110の電極112にボンディングすることもできる。この場合、例えば、時刻t1からt2にかけて、ワイヤテール43の先端43aを、ボンディング面である基板120の所定の領域に接触させながら、その当接位置を起点としてワイヤテール43を屈曲させることもできる。
【0077】
なお、ボンディングツール40のXYZ方向への移動は、上記実施形態にかかる例で示した構成に限定されるものではない。またボンディングツール40の形状も図示するものに限定されるものではない。
【0078】
上記発明の実施形態を通じて説明された実施例や応用例は、用途に応じて適宜に組み合わせて、又は変更若しくは改良を加えて用いることができ、本発明は上述した実施形態の記載に限定されるものではない。そのような組み合わせ又は変更若しくは改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、請求の範囲の記載から明らかである。