(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記内燃機関に電気的手段により運転する酸水素発生装置を設け、前記酸水素発生装置で発生する水素または酸水素を、前記空気より密度が小さい燃料として供給することを特徴とする請求項1〜3に記載の内燃機関。
【背景技術】
【0002】
内燃機関において、燃焼速度(火炎伝播速度)の向上を目的に、吸気流動である吸気スワール(以下「スワール)という。)を減衰させずに燃焼行程に移行するためには、球面状の燃焼室形状が望ましいが、従来の内燃機関ではエンジンに駆動されるカム機構の動作を機械式の伝達機構により弁に伝達して弁の開閉を行うので、燃焼室形状がペントルーフ形状に制約されるので、スワールには好ましくない形状に設計上制約される問題点がある。
この問題点の解決策として、前記機械式の伝動機構を流体圧式の伝動機構にすることにより、球面状の燃焼室と、前記燃焼室に放射状に配設される液体圧駆動式の弁と、エンジンにて駆動されるカム機構と、前記カム機構の動作を、流体圧を介して前記弁に伝達して前記弁を開閉させる流体機構とから成る内燃エンジン(特許文献1)がある。
燃焼室が球面状であるのでスワールの減衰を抑制できる効果と、燃焼室表面積が小さく冷却損失の抑制効果がある。
また、流体圧式の伝動機構として、4サイクル内燃機関で駆動する容積型ポンプを、ロータと、管状のカムと、ロータの回転軸に設けたベーンまたはプランジャとで構成し、カムを共用して多数の油圧回路を配置でき、簡素な構造により油圧供給手段の信頼性が高く、小型で安価に製作できる内燃機関の弁駆動機構(特許文献2)がある。
【0003】
内燃機関の燃焼として、燃焼範囲(Vol%)が水素(4.1〜75)はガソリン(1〜7.8)より広く、最小着火エネルギ(mj)が水素(0.02)はガソリン(0.24)より小さく、最大燃焼速度(cm/s)が水素(346)はガソリン(42)より大きいので、水素は点火しやすく、爆風圧が大きい利点があるが、燃料としては発熱量が小さく、エネルギ密度が小さい問題点がある。
水素等の気体燃料を有効に利用して燃料混合気のリーンリミットを拡大し、熱効率の向上と排気の改善とを実現させる目的で、燃料混合気を形成するための主燃料とは別の気体燃料を筒内に添加する内燃機関の気体燃料添加方法であって、前記気体燃料を吸気行程中に添加する第1 の添加行程と、前記気体燃料を圧縮行程中に添加する第2 の添加行程とを備える内燃機関の気体燃料添加方法(特許文献3)がある。
ノッキングの発生を効果的に抑制する目的で、ガソリン燃料を前記シリンダ内に噴射する筒内噴射ノズルと、水素燃料を吸気ポートにて噴射するポート噴射ノズルとを備える内燃機関で、一つの前記シリンダに対して一対の前記吸気ポートおよび一対の前記吸気バルブが設けられ、前記吸気バルブの開閉を制御する制御手段を備え、且つ、ノッキングが発生し易い運転領域にて、前記ポート噴射ノズルが前記吸気ポートにて水素燃料を噴射し、一つの前記シリンダに設けられた一対の前記吸気バルブのうち一方の前記吸気バルブが開弁すると共に他方の前記吸気バルブが閉弁して前記シリンダ内に吸気のスワールを発生させる内燃機関(特許文献4)がある。
【0004】
ディーゼル機関の燃焼として、発火点(℃)が水素(500℃)はディーゼル燃料油(225℃)より高いので、断熱圧縮の着火時の温度を制御して水素を予混合できるディーゼル機関とすることにより燃焼性を改善できる。
広範囲の運転領域にわたり安定して運転できる予混合圧縮着火燃焼方式の内燃機関の制御装置として、軽油又は軽油を含む混合燃料をエンジンに供給する燃料供給系と、水素をエンジンに供給するガス供給系と、水素添加濃度によって変化する複数の燃焼波形を予めデータとして有し利用する要求予混合ガス演算部とを備え、エンジンの状態に応じて熱効率が高くなる様に、複数の燃焼波形の中から適切な一つを選択し、燃焼波形に一致する様にエンジンに供給する水素添加濃度を決定することにより、PM及びNOxの生成量を低減することができるとともに、エンジンの熱効率を向上できる内燃機関の制御装置(特許文献5)がある。
僅かな含水素ガス添加量で熱効率の向上やスート排出量の低減などを目的に、気筒に連通する複数の吸気ポートと、吸気に含水素ガスを添加する水素インジェクタと、気筒内に含軽油燃料を噴射する燃料インジェクタと、を備え、複数の吸気ポートは、ヘリカルポートであるセカンダリ吸気ポートとタンゼンシャルポートであるプライマリ吸気ポートを含み、上記水素インジェクタは、これら吸気ポートのうち、セカンダリ吸気ポートを介して気筒に導入される吸気にのみ含水素ガスを添加するディーゼル内燃機関(特許文献6)がある。
【0005】
燃料の水素は燃料改質にて発生することもできるが、燃料を消費する問題点がある。
水素は水(電解液)を電気分解して水素と酸素を発生することもでき、電解液に超音波振動を伝搬し、電極から効率よく水素と酸素または酸水素を発生できる酸水素発生装置(特許文献7)があり、前記酸水素発生装置は水素、または酸水素を燃料とするハイブリッド車両等に搭載できる。
内燃機関の吸気系統に過給手段である駆動流で過給を行う空気流量増幅器を設け、前記駆動流は燃料である水素、CNG等の加圧貯蔵流体の圧力エネルギを利用し、過給と同時に均一な予混合ができる内燃機関の過給装置(特許文献8)がある。
【0006】
少量の燃料を燃焼室の中心に分布させて点火性を向上し、周囲の吸気と十分に混合して燃焼効率を向上する、あるいは、水素は着火性がよく爆風圧が大きいので、先に水素雰囲気に点火して燃焼速度を向上して他の燃料の燃焼を促進する等の前記従来において、火花点火式、圧縮着火式に係らず、燃焼が始まる燃焼室の中央から燃焼性がよい燃料を層状に配置し、且つ、吸気の酸素を有効に活用するために燃料と均一に混合することが望まれる。
この望ましい状況を実現するために、本願発明の請求項1は、燃焼室を球面状または略円錐状の軸対称形状とし、二つの吸気ポートから発生する強いスワールにて吸気と燃料を混合し、圧縮行程中に水素等の空気より密度が小さい燃料を遠心分離作用により燃焼室のシリンダ軸側に集め、残余を燃料の濃度により層状に分離して成層燃焼により燃焼性を向上する内燃機関である。
本願発明の請求項2は、前記空気より密度が小さい前記燃料が供給される内燃機関において、更に、前記空気より密度が小さい燃料より分子量が大きい主燃料を燃焼室に供給し、前記スワールによる遠心分離作用により燃焼性がよい水素を燃焼室のシリンダ軸側に集め、残余の予混合吸気を層状に分離し、成層燃焼により燃焼性を向上する内燃機関である。
本願発明の請求項3は、内燃機関の吸気系統に空気流量増幅器を備えた過給手段と、前記過給手段と燃焼室との間に過給圧力等を測定する過給センサと、を設け、前記駆動流を前記空気より密度が小さい燃料とし、燃料濃度を低くする場合は、更に、圧縮空気および/またはEGRガスを駆動流に供給し、過給と同時に燃料の予混合を行い、均一な予混合と前記スワールによる成層燃焼により燃焼性を向上する内燃機関である。
本願発明の請求項4は、電気的手段により運転する酸水素発生装置を設け、前記酸水素発生装置で発生する酸水素、または水素と酸素を前記内燃機関に供給し、水素を自給して燃焼性を向上する内燃機関である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
前記図面(
図1〜22)に従って、本願発明の各実施例(実施例1〜12)を、以下に説明する。
以下の説明において、容積型油圧供給手段の油圧ポンプは構造が簡素なベーンポンプで説明しているが、各実施例はベーンポンプを高圧の油圧に対応できるプランジャーポンプでもよい。
【実施例1】
【0019】
図1は、実施例1(請求項1対応)の燃焼手段を設けた内燃機関1の構成概念の説明図である。
図1は、内燃機関1にて駆動する容積型油圧供給手段7を備え、前記容積型油圧供給手段7が発生する油圧により弁シリンダ41を周期的に作動させ、前記弁シリンダ41にて吸気と排気のガス交換弁45を開閉作動する往復動機関1において、燃焼室を半径SRの略球面状とし、燃焼室に
図2に示すように放射状に前記ガス交換弁45であるガス交換弁(吸気)451とガス交換弁(排気)452を配置し、点火プラグ11を前記燃焼室のシリンダ46の中心軸との交点近傍に設け、更に、シリンダ46内に回転方向が同じスワールを発生する複数のタンゼンシャルポート210を設け、吸気系統である吸気通路21に水素、メタンのように空気より密度が小さい燃料をインジェクタ12より供給し、前記内燃機関1の運転状況に応じて前記燃料の供給を制御する4サイクル内燃機関1の構成概念の説明図である。
図1に示すように、内燃機関1は、点火プラグ11、インジェクタ12、クランク軸49に連動するピストン47、とシリンダ46を備えた出力手段4と、従動車752等から成る伝動手段75により出力手段4の二分の一回転数で駆動されるベーンポンプを備えた容積型油圧供給手段7と、インジェクタ12から噴射する加圧貯蔵燃料を貯蔵する燃料タンク95を備えた流体供給手段9と、流体供給手段9から供給される燃料を制御する減圧弁84と制御弁83を備えた流体制御手段8とで構成される。
【0020】
図1の内燃機関1の作用は、吸入行程にて出力手段4のインジェクタ12から噴射した燃料が予混合されて二つのタンゼンシャルポート210を通ってシリンダ46に流入してスワールが発生する。
圧縮行程にて、流入した吸気は略球面状の燃焼室にスワールの回転を妨げられることなく圧縮されるので、
図7で後述するように、燃焼室容積の形状変化によりスワールはシリンダ周辺部からシリンダ軸側にシフトし、運動エネルギを持ったスワール径が縮径することにより角速度が増大する。
スワールはシリンダ46の壁面との数回転の摩擦等により多少は減衰するが、前記角速度の増大によりシリンダ46の軸付近では増大した角速度により大きな遠心力が発生し、空気より軽い予混合燃料は遠心分離作用により中央に移動し、シリンダ46内での回転は長時間ではないので密度差による前記遠心分離の途中の段階で、燃料は異なる濃度で混合拡散しているので、シリンダ46内に高濃度可燃層を中心にした気体の密度勾配に応じた環状層が形成される。
図12で後述するように、密度差と組成割合に応じて、
図3、
図4に示すように燃焼室のシリンダ46の軸付近のバルジ状高濃度可燃層の外側に複数の環状層を形成し、少量の燃料でも点火プラグ11の点火部に前記高濃度可燃層が形成されるので確実に着火し、シリンダ46の軸付近のバルジ状の高濃度可燃層に短時間に火炎伝搬して火炎核を形成し、燃焼による前記可燃層の膨張とスワールの撹拌作用により、順次外側の環状層に均一に火炎伝播する。
燃料が水素の場合は、最小着火エネルギが小さい(ガソリン、メタンの十分の一以下)ので確実な着火と、大きな最大燃焼速度(ガソリン、メタンの8倍以上)により内燃機関の高速回転と、広い燃焼範囲により安定した燃焼と、燃料濃度に制約されることなくアイドリング回転数を低下できる。
従って、内燃機関1は少量の燃料でも確実な点火ができる成層燃焼によるリーンバーンエンジンで、予混合により吸気と燃料が均一に拡散混合して燃焼効率が向上する効果がある。
【0021】
実施例1に示すように、燃焼室を略球面状とするための流体圧式の伝動機構は、簡素な構造で多気筒にも対応できる容積型油圧供給手段7を利用する従来技術(文献2)である。
容積型油圧供給手段7は、容積型油圧供給手段7のカム71、ロータ72、およびベーン73から成る容積型ポンプを備え、前記カムプロフィール711により発生する油圧が、油圧中継路721、722、回転継手76、油圧通路781、782を通って、各々の弁シリンダ41に供給され、周期的にガス交換弁45が開弁し、油圧の漏れ等による負圧が発生する場合は、油圧補助手段77の油タンク771から前記負圧により油を補給する。
前記ロータ72は、回転伝動手段75にて出力手段4のクランク軸49の回転数の二分の一に回転が減速されたているので、4サイクルの内燃機関1の吸入行程または排気行程に対応して開弁する。
弁駆動に寄与しない油圧は、油圧中継路726、回転継手76を通って油圧補助手77の油タンク80に連通し、油圧は常に大気圧に解放される。
図1の実施例1では、容積型ポンプとして構造が簡素なベーンポンプにて説明したが、高圧油圧に対応できるプランジャーポンプに置き換えることもできる。
【0022】
図2は、前記実施例1(
図1)の弁と吸排気通路の配置を示す内燃機関1の平面図である。
図2は、出力手段4のシリンダ軸近傍に点火プラグを設け、前記シリンダ軸を中心に放射状にガス交換弁(吸気)451とガス交換弁(排気)452を各二個対向配置し、各々のガス交換弁には周期的に作動する弁シリンダ(411、412)を設ける。
各ガス交換弁(吸気)451には、シリンダ46の接線方向に設けたタンゼンシャルポート210を設け、各ガス交換弁(排気)452には、シリンダ軸を中心に略放射状に排気通路31を設ける。
吸気通路21に連通する各タンゼンシャルポート210にはインジェクタ12を設ける。
【0023】
図2の出力手段4の弁配置の作用は、吸気通路21を通る吸気にインジェクタ12にて燃料である水素またはメタンを噴射し、予混合気として吸入行程の負圧により対向配置したタンゼンシャルポート210よりシリンダ46に流入する。
図2に示すように、前記タンゼンシャルポート210はシリンダ46の接線方向に対向配置しているので、前記予混合気は反時計方向回転の強いスワールを発生しながらシリンダ46に充填する。
スワールの挙動については
図5〜
図7にて、その結果であるスワールの遠心分離作用による層状の燃料濃度分布の説明は
図3、
図4にて後述する。
本図は弁配置の説明図であるので、電気、油圧関連(配線、配管)は図示を省略する。
【実施例2】
【0024】
図3は、実施例2(請求項1対応)の内燃機関の燃焼行程点火時の層状の燃料濃度分布の説明図である。
図3の実施例2は、前記実施例1の
図2の出力手段の平面図のX―X断面であり、吸入行程でタンゼンシャルポート210fにより発生するスワールにて予混合気に遠心分離作用が働き、燃料より密度が大きい空気(酸素、窒素等)は遠心力により径方向の外側に移動し、空気より密度が小さい水素(空気の約7%)、メタン(空気の約57%)等の燃料は、空気と逆方向であるシリンダの軸心方向に移動し、点火プラグ11fを設けたシリンダ軸付近に集まる。
図1で説明したように、角速度が大きくなるシリンダ軸近傍では、大きな遠心力が働くので空気より密度が小さい燃料が密度勾配により遠心分離して高濃度域(F1)を形成し、遠心分離途中の拡散燃料により、内側から順次燃料濃度の低い環状層(F2〜F4)を形成する。
図6に示すように、圧縮行程で上図(P1)から下図(P2)に混合気を圧縮することにより、略球面状の燃焼室にスワール径が部分的に縮小するように圧縮されるので、
図3の燃焼室頂点の点火プラグ11f付近に前記各層の境界面は収束する。
【0025】
図3の内燃機関の燃焼行程点火時の層状分布の燃焼作用は、シリンダ軸付近の高濃度層(F1)に点火プラグ11により点火して高濃度層(F1)内に火炎核を形成し、火炎伝播と燃焼による熱膨張と略同心円スワールにより高濃度燃料を拡散しながら、前記各層の燃料濃度の高い内側から濃度の低い外側の層に均一に火炎伝播する。
前記高濃度層(F1)は、燃料が水素の場合は空気との密度差が大きいのでメタンより分離速度が大きく、高い濃度の高濃度層を形成し、
図12に示すように燃焼範囲(約4〜75%)が大きいので、確実な点火ができる。
吸気行程、圧縮行程でのスワールにより、遠心分離の初期分離状態であるので、予混合による燃料と空気(酸素)との混合拡散は、高濃度層F1、中濃度層F2、低濃度層F3、超低濃度層F4の燃料混合層であり、燃焼の火炎伝播は超低濃度層F4の外周では低温燃焼または壁面附近で消炎するのでノッキング現象が抑制され、前記超低濃度層F4での消炎により未燃焼燃料が減少するので、内燃機関の冷却損失の抑制による燃焼効率の向上の効果がある。
従って、成層燃焼により従来技術より少量の燃料による燃焼効率のよいリーンバーンエンジンとなる。
尚、以降の実施例の遠心分離により形成される各層の符号は、理解が容易なように実施例2(
図3)と同じ層符号(F1〜F4)を用いて説明する。
【実施例3】
【0026】
図4は、実施例3(請求項1対応)のピストン頂面に略球面状のキャビティを設けた内燃機関の燃焼行程点火時の層状の燃料濃度分布の説明図である。
図4の実施例3は、前記実施例2(
図3)のピストン47fを、
図4のピストン頂面の中央に半径SRpの球面状キャビティ470を設けたピストン47gに置き換えた内燃機関で、その他の構成、およびスワール作用等の説明は重複するので省略する。
図4の前記球面状キャビティ470の作用は、前記実施例2(
図3)の略球面状の燃焼室の作用と同様に圧縮行程での容積形状の変化による局部的なスワールの旋回径が縮径し、シリンダ軸附近にバルジ状の高濃度可燃層(F1g)、以下順次濃度が低下する複数の環状層(F2g〜F4g)を形成し、各層の境界面は球面状キャビティ470のシリンダ軸付近に収束する。
図4に示すように、上記作用によりピストン頂面の球面状キャビティ470には燃料濃度の低い複数の環状層が主に接触するので、ピストン47gにより高濃度可燃層(F1g)等の燃焼が妨げられないので燃焼性が向上し、ピストン47gの頂面の大半の面積が低い濃度層(F3g、F4g)に接するので熱損失が抑制されて出力が向上し、ピストン47gの過熱を抑制する効果がある。
【実施例4】
【0027】
図5は、実施例4(請求項1対応)の、上図は吸気通路に設けた案内板による二重スワールの説明図、下図はリング状のバルブリセスを設けたピストンの立体図である。
上図(H1)は、吸気の両方のガス交換弁(451h、451h2)を断面とする内燃機関の断面図で、吸気通路21hに、ねじれ角が小さい右ネジの案内板215R、その下流側には、ねじれ角が大きい右ネジの案内板216Rを設け、吸気通路21h2には、上流に、ねじれ角が小さい左ネジの案内板215L、下流に、ねじれ角が大きい左ネジの案内板216Lを設け、各々のタンゼンシャルポート(210h、210h2)から吸気をシリンダ46hの接線方向に流入し、同一方向に回転する二重スワールを発生する。
前記二重スワールは、各々のスパイラル状の気流により二重スパイラル状となり、図に示すように気流断面の左側は手前方向に流れるスワールが上下で交互に回転方向が異なる二重旋回流断面となり、気流断面の右側は奥側方向に流れるスワールが上下で交互に回転方向が異なる二重旋回流断面となるので、各々の旋回流の旋回流れが衝突しないので、旋回流が急速に減衰することなく二重スワールは旋回を継続する。
下図(H2)は、上図(H1)のV矢視図であるピストン47hの立体図で、頂面にスワールの流れを円滑にするリング状のバルブリセス471を設けている。
【0028】
吸気通路に設けた案内板とリング状のバルブリセスの作用は、同じ方向に流れる二重スワールが交互に逆回転に旋回するので、旋回流の回転同士は衝突することなく二重スワールは旋回し、空気より密度の低い燃料は二重スワールの気流の内側に寄せられて二重スパイラル状に分布し、圧縮行程で吸気と混合しながら前記遠心分離作用によりシリンダ軸附近に集まるので、シリンダ内壁への燃料分散が少なく、均一な予混合ができるので燃焼性を向上する効果がある。
ピストン47hの頂面にリング状のバルブリセス471を設け、スワールの流れ方向には干渉しないので、スワールの減衰を抑制でき、燃焼時の周方向の火炎伝播を均一にできるので、燃焼性を向上する効果がある。
ねじれ角が連続的に下流側に増大する形状の場合は、前記案内板は各一個でよい。
【0029】
図6は、前記実施例4(
図5)の2本の二重スパイラル状の二重スワールの説明図で、上図(P1)は吸入行程末期、下図(P2)は圧縮行程中の説明図である。
上図に示すように、吸気行程で発生する負圧によりタンゼンシャルポート210hからシリンダ46hに流入する吸気流は、シリンダ内でスワールを発生し、前記スワールは前記案内板により旋回流となり、図示しない他方の二重スワールは、軸方向に二分の一位相ずれて同様のスパイラル状のスワールを形成するが、前記2本の二重スワールは逆回転のねじれ旋回流となり、
図6では、2本のうちの一本の二重スワールを図示している。
下図(P2)に示すように、二重スパイラル状の一方の前記スワールは、圧縮行程でピストン47hにより軸方向に圧縮されて二重スワールは軸方向に圧縮変形し、略球面状の燃焼室ではスワール径の縮径が発生する。
【0030】
図7は、前記実施例4(
図6)の、(U1)は吸入完了時、(U2)は圧縮完了時の径方向の容積図、(U3(V))は圧縮行程の試算による体積占有率の変化の説明図である。
図7の目的より、旋回流の図示および説明は省略する。
上図左(U1)は、吸入完了時の径方向寸法を8等分した燃焼室の断面図であり、スワールにより左半分は手前方向に、右半分は奥方向にスワールが流れ上部の断面形状は略球面状の燃焼室で、周辺部と中央のシリンダ軸周辺との容積占有率の差はなだらかである。
上図右(U2)は、圧縮完了時の径方向に4等分(8分割)した燃焼室の断面図であり、スワールが減衰し、中央のシリンダ軸周辺と周辺部との容積占有率の差は拡大する。
下図(U3、U3V)は、縦軸が占有率、横軸がシリンダ径であり、縦軸の補助線は、シリンダ底面積を4等分する、シリンダ軸を中心とする同心円の各直径である。
下図左(U3)は、吸入完了時と圧縮完了時の燃焼室の断面図から換算したそれぞれの占有率であり、吸入完了時(破線)から圧縮完了時(実線)までの変化であり、圧縮行程で燃焼室形状の変化により径方向の前記等容積空間の占有率では、前記破線と実線で囲まれたハッチング部の高さに相当する変化量が発生し、シリンダ軸附近は前記破線の上部のハッチング分の占有率が増加し、周辺部は前記破線の下部のハッチング分の占有率が減少する。
尚、前記圧縮完了時(実線)は、二点鎖線で示す前記圧縮完了時の燃焼室の断面図(U2)を占有率に換算したものである。
下図右(U3V)は、シリンダ軸を中心として低面積が25%毎増加する同心円により4等分割しているので、各領域の占有率の増減の試算値で、最外周の(75〜100%)領域では、圧縮行程により占有率が半減し、一方シリンダ軸側の(0〜25%)領域の占有率は増加するので、各領域はシリンダ軸側にシフトし、スワールの旋回径が縮径するのでスワールの角速度が大きくなり高速回転するので、サイクロン効果のように遠心力の増大により強い遠心分離作用が発生し、点火時には高速の乱流火炎伝播が発生する。
下図右(U3V)の横軸から分かるように、シリンダの底面積は直径の二乗に比例するので、本願発明にて少量の燃料でもシリンダ軸側に燃料は集まり、点火プラグを設けたシリンダ軸付近に可燃層を確実に形成できる効果がある。
シリンダが垂直に設けられている場合は、空気より密度の小さい前記燃料は上方向に移動するので、更に点火プラグ附近に燃料が集まる。
【実施例5】
【0031】
図8は、実施例5(請求項1対応)の弁と吸排気通路の配置を示す3気筒内燃機関の平面図である。
図8は、各気筒のシリンダ軸近傍に点火プラグ11jを設け、吸気と排気の弁シリンダ(411j、412j)を放射状に配置し、シリンダに接線方向に吸気通路21jに連通する2個のタンゼンシャルポート210jを設け、一方の前記タンゼンシャルポート210jにインジェクタ12jを設け、前記弁シリンダ(411j、412j)、インジェクタ12jが干渉しないように各気筒に同じ角度で回転シフトしている。
本図は各弁シリンダと吸排気通路の配置の説明図であるので、油圧配管等の配線配管等は図示省略している。
本実施例5(
図8)の3気筒内燃機関1jは任意に気筒数を増減でき、更に、2組の3気筒内燃機関1jを、バンク角を挟んでクランク軸を共通化することによりV型6気筒内燃機関にもできる。
【0032】
図9は、前記実施例5(
図8)の吸気と排気のガス交換弁と冷却手段の断面図である。
図9は、前記
図8のJ−J断面のガス交換弁(451j、452j)の断面図で、前記ガス交換弁(451j、452j)の弁駆動機構である弁シリンダ(411j、412j)に送風ブレード(446、447)を設け、吸気の一部を前記ガス交換弁と弁シリンダの当接部空間に送り冷却を行う。
弁シリンダ441jのピストンに設けた送風ブレード446の往復動と各逆止弁(441、442、443)の作用により、前記送風ブレード446の上部と下部の空間をポンプ室とするポンプ作用により、冷却用の吸気を送り込み、逆止弁441から大気に解放する。
排気の弁シリンダは、冷却連通管444を通った吸気の一部が吸気導管445を通って同様の冷却を行う。
【実施例6】
【0033】
図10は、実施例6(請求項1対応)の弁と吸排気通路の配置を示す4気筒内燃機関の平面図である。
図10は、各気筒のシリンダ軸近傍に点火プラグ11kを設け、吸気と排気の弁シリンダ(411k、412k)を放射状に配置し、シリンダに接線方向に吸気通路21kに連通する2個のタンゼンシャルポート210kを設け、燃焼室に燃料噴射をするインジェクタ12kを設け、前記弁シリンダ(411k、412k)、インジェクタ12kが干渉しないように各気筒は交互に同じ角度に回転シフトしている。
本実施例6(
図10)の4気筒内燃機関1kは任意に気筒数を増減でき、更に、2組の4気筒内燃機関1kを、バンク角を挟んでクランク軸を共通化することによりV型8気筒内燃機関にもできる。
【実施例7】
【0034】
図11は、実施例7(請求項2対応)の燃料の水素と、水素より分子量が大きい主燃料を供給する火花点火機関1mの構成概念の説明図である。
図11は、空気より密度が小さい燃料である水素がインジェクタ12mにて吸気通路21mに供給される前記内燃機関1mにおいて、更に、燃焼室にインジェクタ12m2にて前記燃料である水素より分子量が大きい主燃料を適時に供給し、前記主燃料が、重油や軽油のように前記燃料より発火点の低い燃料の場合は、後述する実施例8(
図15)に示すように、前記点火プラグの替わりに前記主燃料を供給するインジェクタ12nを設けたディーゼル機関1nとし、前記内燃機関1mの運転状況に応じて前記燃料および前記主燃料の供給を制御することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関1mの構成概念の説明図である。
流体供給手段9m2の燃料タンク95m2に貯蔵する水素より分子量が大きい主燃料は、高圧燃料ポンプ13mで加圧し、エンジンコントロールユニット(以下「ECU」という。)にて制御されるインジェクタ12m2にて燃焼室に適時噴射する。
インジェクタ12mから供給する、水素の流体供給手段9m、流体制御手段8mの構成と作用は、実施例1(
図1)と同じであるので説明を省略する。
空気より密度が小さい燃料を水素とし、水素(分子量2)より分子量が大きい主燃料であるメタン(分子量16)、プロパン、ガソリンの火花点火機関の燃料の燃焼範囲と密度の関係を
図12に、ガソリンの成層燃焼プロセスを
図13に、メタン、プロパンの成層燃焼プロセスを
図14にて後述し、水素より分子量が大きい主燃料が重油または軽油のディーゼル機関の説明は
図15にて後述する。
【0035】
図12は、前記実施例7(
図11)の内燃機関の燃料と空気の特性図で、燃料は燃焼範囲と密度、空気は組成割合と密度を示す。
図の縦軸は気体の密度(Kg/m3)、横軸は、燃料は燃焼範囲、空気は組成割合(Vol%)である。
空気の主な組成割合は約21%の酸素と約78%の窒素であり、酸素の密度は空気の約1.07倍、窒素の密度は空気の約0.93倍で、空気との密度差が小さく空気中に拡散した酸素と窒素は、本発明の短時間の遠心分離では分離困難である。
燃料である水素の密度は空気の約0.07倍であり短時間の遠心分離で分離を開始し、メタンの密度は空気の約0.53倍であり水素ほど容易に遠心分離しないが、これらの燃料は遠心分離で密度勾配により形成される各層の最内側に分離される。
プロパンの密度は空気の約1.47倍であり、ガソリンの密度は空気の約2.71倍であるので、これらの燃料は遠心分離で密度勾配により形成される前記最内層より外側の濃度層に分離される。
燃料の横軸の燃焼範囲は、EGRガスに少量含まれる一酸化炭素を除けば、水素以外の燃料は小さい燃料範囲で燃焼するが、水素は4.1〜75(Vol%)と大きい範囲で燃焼する。
背景技術で述べたように、最小着火エネルギ(mj)が水素(0.02)はガソリン(0.24)より小さく、最大燃焼速度(cm/s)が水素(346)はガソリン(42)より大きいので、水素は着火性がよく、爆風圧が大きい利点があるので燃焼の起爆剤に適しているが、燃料としては発熱量が小さいのでエネルギ密度が小さい問題点がある。
前記
図7(U3V)に示すように、燃焼室の中心(シリンダ軸附近)にシリンダ径の50%の燃焼能域を形成するには水素は25%(Vol%)必要となる。
点火プラグによる点火に必要な可燃層を仮にシリンダ径の20%の直径と仮定すると、必要な可燃層はシリンダ容積の4%となり、前記可燃層の水素濃度を水素の燃焼範囲の下限の4.1%とすると、必要な水素は、前記可燃層のシリンダ容積の4%と、前記水素の燃焼範囲の下限の4.1%の積である約0.16%となり、見かけの濃度は極めて低い濃度であっても、試算上は局部的に水素の可燃層が形成できる。
前記試算は周辺に拡散する水素を無視した試算であり、実際には遠心分離作用の初期段階であるので水素は各層に拡散して存在するので、実際には前記試算値より大きくなる。
以上より、水素より分子量が大きい主燃料を少量の水素で局部的に可燃層を形成し、確実に点火して高速燃焼できる成層燃焼内燃機関(実施例7、実施例8)ができる。
【0036】
図13は、前記実施例7(
図11)の水素より分子量が大きい主燃料がガソリンの、吸入(G1、G2)、圧縮中の燃料噴射(G3)と点火時(G4)の各層とスワールの挙動説明図である。
上図左(G1)は、吸入行程の初期で、前記
図11で説明したように吸気通路に21mに設けたインジェクタ12mにより燃料である水素を予混合した吸気が、ピストン47mの下降によりタンゼンシャルポート210mから燃焼室に流入し、スワールの初期段階であるので遠心分離による分離層は部分的に形成される。
上図中(G2)は、吸入行程の後半で、スワールによる遠心分離により密度勾配による燃料の各層(F1g〜F4g)に分離する。
上図右(G3)では、圧縮行程の途中にインジェクタ12m2からガソリンを燃焼室中央付近に噴射し、中央の水素の高濃度層F1mにて拡散気化し、高速回転する高濃度層F1mの遠心分離作用により高濃度層F1mから遠心分離を開始するが燃料噴射から点火までの時間が短いので高濃度層F1mまたは中濃度層F2mに拡散する。
下図(G4)では、前記拡散したガソリン層G2は中濃度層F2mに拡散し、圧縮が終了して点火プラグ11mの電気的火花放電により最小着火エネルギが小さい水素の回転する高濃度層F1mに確実に点火できる。
点火後に球状の火炎核が形成され、燃焼速度が大きい高濃度層F1mの全体に速く火炎伝播するのでシリンダ軸方向に長いバルジ状の火炎が隣接するガソリン層G2に伝播し、順次外側の可燃層に火炎伝播するので、高速でシリンダ軸の中心から周方向に均一な燃焼となり、冷却損失が小さく、内燃機関の熱効率が向上する効果がある。
【0037】
図14は、前記実施例7(
図11)の水素より分子量が大きい主燃料がプロパン(又はメタン)の、吸入(S1、S2)、圧縮(S3)と点火時(S4)の各層とスワールの挙動説明図である。
上図左(S1)は、吸入行程の初期で、前記実施例7(
図11)で説明したように吸気通路に21mに設けたインジェクタ12mにより燃料である水素を予混合した吸気が、ピストン47mの下降によりタンゼンシャルポート210mから燃焼室に流入し、スワールによる遠心分離の初期段階であるので分離層の一部が形成される。
上図中(S2)は、吸入行程の途中で、スワールによる遠心分離により密度勾配による多濃度層(F1s〜F4s)に分離する前に、インジェクタ12m2からプロパン(又はメタン)を燃焼室中央付近に噴射し、高速回転するシリンダ軸付近の水素の高濃度可燃層周辺に旋回しながら拡散する。
上図右(S3)の圧縮行程開始時は、吸入行程で発生したスワールによる遠心分離作用により密度勾配に従って各層が形成され、前記噴射されたプロパン(又はメタン)は前記各層の中心層の外周周辺に拡散する。
前記噴射のタイミングを、燃料噴射量、運転状況により調整して、点火時のプロパン(又はメタン)の拡散層の位置を制御することができる。
下図(S4)では、前記噴射されたプロパン(又はメタン)は、密度勾配により高濃度層F1sまたは中濃度層F2sの外周付近に分離され、拡散したプロパンP2(又はメタンM2)の層を形成し、圧縮が終了して点火プラグ11mの電気的火花放電により最小着火エネルギが小さい水素の回転する高濃度層F1sに確実に点火できる。
点火後に球状の火炎核が形成され、燃焼速度が大きい高濃度層F1sの全体に速く火炎伝播するのでシリンダ軸方向に長いバルジ状の火炎が、前記拡散したプロパンP2(又はメタンM2)に伝播し、順次外側の可燃層に火炎伝播するので、高速でシリンダ軸の中心から周方向に均一な燃焼により、冷却損失が小さくなり内燃機関の熱効率が向上する効果がある。
尚、燃料がメタンの場合は、空気より軽い燃料同士であるので、前記インジェクタ12m2を吸気通路21mに移動する事もでき、実施例7では、空気より密度が小さい燃料の水素で説明をしたが、効果が水素ほど望めないが、メタンでもよい。
【実施例8】
【0038】
図15は、実施例8(請求項2対応)のディーゼル機関1nの燃料噴射時の着火と各層とスワールの説明図である。
図15は、前記実施例7(
図11)の燃料タンク95m2の燃料を水素より分子量が大きく、発火点が低い燃料である重油または軽油を主燃料とし、前記点火プラグ11mの替わりに前記主燃料を供給する図示しないインジェクタを設けたディーゼル機関1nとし、前記内燃機関1nの運転状況に応じて前記燃料である水素および前記主燃料の供給を制御する内燃機関1nの燃料噴射時の着火と各層とスワールの説明図である。
水素の発火点(585℃)は、ディーゼル機関の燃料である軽油の発火点(250℃)や重油の発火点(250〜380℃)より高いので、圧縮行程での断熱圧縮による温度上昇を管理することにより前記ディーゼル機関1nの水素燃料の予混合ができる。
前記ディーゼル機関1nは、前記実施例7と同様にスワールの遠心分離作用により、
図15に示すように圧縮行程の終了時に水素濃度が異なる各層(F1n〜F4n)を形成し、インジェクタ12nから重油または軽油を高濃度層F1nに噴射することにより、拡散、気化して着火するので複数の火炎核を形成し、燃焼速度が大きい高濃度層F1n全体に高速火炎伝播する。
高濃度層F1nのシリンダ軸方向に長いバルジ状の火炎と、高濃度層F1n内の重油または軽油の燃焼による熱膨張により、バルジ状の高濃度層F1nから火炎伝播と重油または軽油の燃焼拡散が促進され、前記水素の予混合により従来のディーゼル機関より高速燃焼となるので高速運転ができるので出力の向上と、シリンダ軸の中心から周方向に均一な火炎伝播により内燃機関の熱効率が向上する効果がある。
【実施例9】
【0039】
図16は、実施例9(請求項3対応)の水素を駆動流とする過給手段と、水素より分子量が大きい主燃料の供給手段と、を設けた火花点火機関の構成概念の説明図である。
図16は、前記内燃機関1pの吸気系統である吸気流入通路211と吸気流出通路212の間に、駆動流で過給を行う空気流量増幅器50を備えた過給手段5と、前記過給手段5と燃焼室との間に過給圧力等を測定する過給センサ54と、を設け、前記空気より密度が小さい燃料である流体供給手段9pから供給される水素を前記駆動流とし、前記内燃機関1pの運転状況に応じて、前記過給センサ54で検知する過給圧を流体制御手段8pによる前記駆動流の流量および圧力の調整にて制御する内燃機関1pの構成概念の説明図である。
実施例9(
図16)の内燃機関1pの構成は、前記実施例7(
図11)の吸気通路21mに上流から前記過給手段5と過給センサ54を備え、流体供給手段9mと流体制御手段8mを前記過給手段の駆動流とし、インジェクタ12mを不要とする内燃機関1pで、前記実施例7(
図11)の内燃機関1mを過給機付きとした内燃機関1pである。
過給手段5の空気流量増幅器50は、流量増幅比が大きい順に、トランスベクタ(
図17)、フロートランスベクタ、エジェクタ等があり、流量増幅比により燃料濃度の上限は制限される。
過給手段5である空気流量増幅器50は、駆動流(水素)が流体(吸気)を直接加速して流量増幅する構造で、吸気への燃料(水素)の予混合が均一にできる効果がある。
内燃機関1pの各サイクルの作用は、前記実施例7と同じであるので説明を省略する。
内燃機関1pは、空気流量増幅器50を備えた過給手段5により簡素な構成で応答性の高い過給運転ができ、均一な予混合により燃焼効率が向上する効果がある。
過給手段5に設けた逆止弁53は、水素の大気放出と逆流量増幅現象を防止する。
また、内燃機関1pの水素より分子量が大きい主燃料供給手段であるインジェクタ12p2、フュエルレール14p、高圧燃料ポンプ13p、および流体供給手段9p2を省略して、水素のみを燃料とする二酸化炭素を排出しない内燃機関にできるが、エネルギ密度が小さい問題点がある。
【0040】
図17は、前記実施例9(
図16)の前記過給手段5を構成する空気流量増幅器50の一例である、従来技術(特許文献8)のトランスベク51の過給運転中の断面図である。
図17のトランスベクタ51の作用は、前記流体制御手段8pで制御された駆動流(水素)が駆動流通路55を通って環状チャンバ514に供給されて周方向圧力が均一となり、前記環状チャンバ514に連通するリング状のノズル511から吸気流に大きな接触面積で流出することにより、高速の駆動流が発生するベルヌーイの定理による負圧により吸気を吸引し、この吸引した吸気と駆動流が衝突することにより吸気を加速すると同時に駆動流と吸気流が混合して空気流量増幅が行われる。
内燃機関1pが高速機関の場合は、吸気の流速が駆動流の流出速度より大きくなると過給ができないので、ノズル511の駆動流流出部の吸気通路断面積を、過給手段5の上流と下流である吸気流入通路211と吸気流出通路212より大きくして、吸気流速を小さくすることにより過給を行うことができる。
このように空気流量増幅器50は、構造が簡素で安価であり、吸気系統に容易に設置できるので設計裕度が大きく、通路抵抗が小さいので過給停止時のバイパス通路を設けることなく自然吸気運転を行うことができ、駆動流によりターボ過給機や機械式過給機(スーパーチャージャ)より高い応答性で過給が行え、前述のように吸引した吸気と駆動流が衝突することにより吸気を加速するので吸気と駆動流である水素との均一な予混合ができる効果がある。
空気流量増幅器50の逆流流量増幅現象の防止と、燃料の大気放出の防止のために、リードバルブ、リフトチェック弁等の逆止弁53を吸気流入通路211に設ける。
【実施例10】
【0041】
図18は、実施例10(請求項4対応)の、酸水素発生装置6で発生する酸水素と、水素より分子量が大きい主燃料を燃焼室に供給する火花点火機関4rの構成概念の説明図である。
図18は、前記内燃機関に電気的手段である二次電池66により運転する酸水素発生装置6を設け、前記酸水素発生装置6で発生する酸水素を、前記空気より密度が小さい燃料である(酸素を含んだ)水素燃料としてインジェクタ12rから供給し、更に、燃焼室に前記燃料である水素より分子量が大きい主燃料をインジェクタ12rから適時に供給し、前記内燃機関1rの運転状況に応じて前記燃料および前記主燃料の供給を制御する請求項2に記載の内燃機関1rの構成概念の説明図である。
実施例10(
図18)の内燃機関1rの構成は、前記実施例7(
図11)の流体供給手段9mを二次電池66により運転する酸水素発生装置6から成る流体供給手段9rに置き換え、流体制御手段8mの減圧弁84mを流体制御手段8rの逆止弁88rと制御弁83r2を備えたアキュムレータ87rに置き換えている。
前記酸水素発生装置6は、電解液タンク65から供給される水(電解液)を二次電池66から供給される電力で電気分解し、発生する酸水素をアキュムレータ87rに蓄積し、インジェクタ12rにより吸入行程の初期に燃焼室に噴射する。
前記酸水素発生装置6により、大量の水素を貯蔵する替わりに水(電解液)の供給を行うので、小型で管理が容易な装置となる効果がある。
内燃機関1rの各サイクルの作用は、前記実施例7と同じであるので説明を省略する。
【0042】
図19は、前記実施例10(
図18)の前記酸水素発生装置の一例である、従来技術(特許文献7)の電解液に超音波を付加する酸水素発生装置6rの構成概念の説明図である。
図19は、電解槽614内に層状配置する陰極611と陽極612と、前記陰極611と前記陽極612との間に直流電圧を印加する直流電源613と、電解液615の供給を制御する電解液制御手段であるポンプ617と、電気分解にて発生する気体を捕集する気体捕集手段である制御弁618と、で構成する電気分解手段61と、超音波発振子621と、前記超音波発振子621を電気的手段により超音波振動させる高周波発生器622と、で構成する超音波発振手段62と、を備えた酸水素発生装置6において、前記超音波振動子と前記電解液を伝搬する超音波振動の反射面との距離を超音波波長の4分の1の整数倍とし、前記電気分解手段61は、前記陰極611と前記陽極612を、前記超音波発振子621から発振する超音波振動の伝搬方向に対し垂直な平面上に配置し、超音波振動が前記陰極611と前記陽極612を通過して伝搬できるように前記陰極611と前記陽極612をスラット状またはグリッド状とし、更に、前記超音波発振子621の振動面から、超音波波長(λ)の4分の1の奇数倍の距離に前記陰極611を、超音波波長(λ)の4分の1の偶数倍の距離に前記陽極612を、配置する酸水素発生装置6rである。
上記酸水素発生装置1rは、電極の配置密度を大きくできるので酸水素発生装置を小型化できる。
更に、電解効率を低下させる陰極に発生する析出物を超音波の剥離除去作用により除去し、陽極に発生する気泡状のガスを超音波の電解液往復運動による気泡脱離作用により陽極から離脱するので、電解効率の低下を防止できる効果があり、移動手段への組み込みが容易となる。
【実施例11】
【0043】
図20は、実施例11(請求項4対応)の水素とEGRガスを駆動流とする過給手段5t、酸水素発生装置6t、と回生手段を設けたハイブリッド車両の内燃機関1tの構成概念の説明図である。
図20は、前記実施例9(
図16)の過給手段5の駆動流通路55と排気通路31pを排気還流通路36で連通してEGRを行い、EGRの制御はEGRセンサ57と制御弁58で行い、水素とEGRガスの逆流を防止する逆止弁(59、59t)を各々の通路に設け、駆動流の水素を実施例10(
図18)の流体制御手段8rと流体供給手段9r同じ構成とし、更にアシスト/回生手段として二次電池66tと酸水素発生装置6tの電源に接続し、出力手段4tに連動するモータ/発電機68を制御するインバータ67を設けたハイブリッド車両の内燃機関1tの構成概念の説明図である。
図20は内燃機関の構成概念の説明図なので、ハイブリッド車両の変速機等の駆動部は図示省略する。
スワールの遠心分離作用による可燃層の形成は前記実施例7と同様で、前記実施例9と同様に空気流量増幅器50tの駆動流である水素とEGRガスは、吸気を過給すると同時に予混合されて燃焼室でスワールの遠心分離作用により、水素はシリンダ軸側に集まり確実な点火が行え、EGRガスの二酸化炭素は空気より密度が大きい(約1.5倍)ので最外層に集まり燃焼阻害要因とならない。
構成、作用は前記実施例と重複するので省略し、ハイブリッド車両の内燃機関1tの制御システムは
図21にて、制御フローチャートは
図22にて説明する。
【0044】
図21は、前記実施例11(
図20)の前記ハイブリッド車両の火花点火機関1tの制御システムの構成概念の説明図である。
内燃機関1tの電子制御装置であるECU19は、CPU(中央演算処理装置)、RAMとROMからなる記憶素子、入力ポート、出力ポート、およびDC電源で構成され、本図では前記入出力ポートの接続は、中継機器(コントローラ、アンプ、コンバータ等)は図示省略している。
前記ハイブリッド車両の火花点火機関1tの、点火プラグ11t、インジェクタ12t、クランク角センサ16、図示しないノックセンサ、等の入出力情報と、前記ハイブリッド車両の制御補助装置であるアクセル開度センサ17、ブレーキ開度センサ18、図示しない車速センサ等の入出力情報と、前記水素とEGRガスによる過給手段5tの駆動流の流体制御手段8tと、酸水素発生装置6tと、アシスト/回生手段であるインバータ67からの入出力情報と、が入出力ポートを経由してECU19により制御される。
ECU16は、入力情報により内燃機関1tの運転状況を分析、判断、及び予想することにより、前記出力手段4t、過給手段5tの駆動流を制御する流体制御手段8t、酸水素発生装置6t、およびアシスト/回生手段であるインバータ67等を制御する。
【0045】
前記ハイブリッド車両の火花点火機関1tの作用は、流体供給手段9t2から供給される水素より分子量が大きい主燃料を適時にインジェクタ12tから燃焼室に噴射する4サイクル火花点火機関1tにおいて、燃焼性を向上する酸水素発生装置6tで発生する水素、および/または燃焼温度を抑制するEGRガスを駆動流として過給手段5tにより過給を行い、駆動流が水素の場合は均一な予混合と、実施例7と同様にスワールの遠心分離作用により水素を点火プラグ11t付近に集まり、最小着火エネルギが小さい水素に着火し、燃焼速度が大きい水素の火炎伝播により、シリンダ軸の中心から周方向に均一な燃焼となり、冷却損失が小さく内燃機関1tの熱効率が向上する効果がある。
酸水素発生装置6tにより発生する酸水素の酸素は、水素の燃焼に必要な酸素と等価となるので、吸気(空気)の酸素分圧は水素より分子量が大きい主燃料の燃焼に充当でき、過給との相乗効果により、大量の燃料を燃焼して大きな出力が得られるので、ダウンサイジング効果が得られる。
EGRを駆動流に利用することにより、排気残圧を過給に回生利用し、燃料である水素濃度の調整と、吸気の酸素分圧を低下することにより燃焼温度を低下することができる。
吸気の前記燃料である水素濃度は、空気流量増幅器50tの流量増幅比と、駆動流の燃料濃度で見かけの燃料濃度が制御できるが、点火部は更に高い濃度を形成するので、運転状況による学習機能が有効である。
インバータ67の制御により、モータ/発電機68を加速時等に駆動アシストするモータとし、減速時に二次電池66t、または酸水素発生器6tに電力を送る発電機としてエネルギ回生を行う。
更に、駆動流のEGRをタンクに貯蔵した圧縮空気、または内燃機関で駆動する圧縮機で発生する圧縮空気に置き換えることができる。
【0046】
図22は、前記実施例11(
図20)の前記ハイブリッド車両のモータ制御(駆動アシスト等)を除く火花点火機関1tの制御フローチャートである。
内燃機関1tの制御は、前記
図21に示すECU19の入出力情報等により制御され、加速あるいは減速等の判断は、主にアクセルあるいはブレーキのペダル操作によるアクセル開度センサ17、ブレーキ開度センサ18や図示しない車速センサ等からの入力情報により、運転者の意思や内燃機関1tの運転状況を分析、判断、予測し、各運転サブルーチンを本制御フローチャートに従い実行する。
前記制御フローチャートは、内燃機関1tの制御説明であるので、駆動アシスト等のモータ制御関連は省略する。
まず、ECU19は、アクセル開度センサ17、ブレーキ開度センサ18、前記車速センサ等により、加速のための燃焼が必要であるかを判断する(ステップS10)。
ここで、燃焼運転が必要であると判断した場合は、予測される要求出力により主燃料の供給が必要かを判断する(ステップS11)。
一方、燃焼運転が必要でないと判断した場合は、ブレーキ開度センサ17がONであるかを判断する(ステップS12)。
ここで、ブレーキ開度センサ17がONであると判断した場合は、エネルギ回生が可能かを判断する(ステップS13)。
具体的には、前記車速センサ等により回生できる運動エネルと予測される減速量によりエネルギ回生の可否判断を行う。
一方、ブレーキ開度センサ17がONでないと判断した場合は、積極的に加速も減速しない慣性運転(フリーラン)サブルーチン(ステップS14)を実行した後、RETURNにて本処理ルーチンを一旦終了する。
前記エネルギ回生が可能かの判断(ステップS13)で、エネルギ回生が可能であると判断した場合は、エネルギ回生サブルーチン(S15)を実行し、インバータ67にてモータ/発電機68で発電される電力を酸水素発生装置6tと二次電池66tに供給し、モータ/発電機68の逆起電力によるトルクを制動に利用する。
一方、エネルギ回生が可能でないと判断した場合は、エンジンブレーキサブルーチン(ステップS16)を実行する。
具体的には、燃料供給を停止し、圧縮仕事やポンピングロス等が発生するようにガス交換弁の開度やタイミングを制御する。
【0047】
前記主燃料の供給が必要かを判断する(ステップS11)では、予想される要求出力が小さい場合は酸水素発生装置6tで対応可能な水素燃料運転とし、水素濃度が過剰であるかを判断する(ステップS22)。
一方、予想される要求出力が水素燃料では対応できないと判断した場合は、主燃料(水素より分子量が大きい燃料)を供給すると判断し、次に過給運転が可能かを判断する(ステップS17)。
ここで、過給運転が可能であると判断した場合は、過給の駆動流にEGRが必要かを判断する(ステップS19)。
具体的には、過給圧を発生するのに必要な駆動流に水素燃料のみで対応できるのか、水素燃料の濃度は問題ないかを判断する。
一方、過給運転が可能でないと判断した場合は、主燃料による自然吸気運転サブルーチン(ステップS18)を実行した後、RETURNにて本処理ルーチンを一旦終了する。
前記過給の駆動流にEGRが必要かを判断する(ステップS19)で、過給の駆動流にEGRが必要であると判断した場合は、EGRと過給を行う二燃料運転サブルーチン(ステップS21)を実行した後、RETURNにて本処理ルーチンを一旦終了する。
具体的には、前記EGRと過給を行う二燃料運転サブルーチン(ステップS21)では、水素濃度をEGRガスにて調整し、過給圧と吸気の酸素分圧を考慮して主燃料を要求出力に応じて供給する。
一方、過給の駆動流にEGRが必要でないと判断した場合は、水素燃料で過給を行う二燃料運転サブルーチン(ステップS20)を実行した後、RETURNにて本処理ルーチンを一旦終了する。
前記水素濃度が過剰かを判断する(ステップS22)で、水素濃度が過剰であると判断した場合は、EGRと過給を行う水素運転サブルーチン(ステップS23)を実行した後、RETURNにて本処理ルーチンを一旦終了する。
具体的には、水素濃度を低下するために、制御弁58にてEGRガスを適量供給し、駆動流の水素濃度を低下し、過給センサ54tにて過給圧をフィードバックして駆動流である水素とEGRガスの総供給量を調整する。
前記駆動流の水素濃度を圧力にて正確に調整する方法の一つとして、特許第6007459号がある。
一方、水素濃度が過剰でないと判断した場合は、過給を行う水素運転サブルーチン(ステップS24)を実行した後、RETURNにて本処理ルーチンを一旦終了する。
以上の制御フローに従って、ハイブリッド車両の火花点火機関1tの運転状況に応じて、前記内燃機関1tの燃料供給、過給、EGR、エネルギ回生等を各サブルーチンに従って実行する。
以上のようにECU19の入出力情報により、前記ハイブリッド車両の内燃機関1tの制御システム(
図21)を制御し、本制御フローチャートは、前記内燃機関1tの運転中は繰り返し実行される。
【0048】
前記実施例1〜11は、本願発明の一例を説明したもので、各実施例の容積型油圧供給手段の油圧ポンプは、ベーンポンプをプランジャーポンプに置き換えてもよい。
各実施例の内燃機関は、制約のない限りディーゼル機関でも火花点火機関でもよく、制約のない限り燃料供給は吸気系統でも燃焼室でもよく、過給手段の空気流量増幅器は、エジェクタ、フロートランスベクタ、トランスベクタ等のいずれであってもよく、ハイブリッド車両はパラレルでもシリーズでもよい。
前記実施例1〜11は、本願発明の一例を示すもので本願発明を制約するものではなく、当業者により変更および改良ができる。
【課題】従来の燃焼室に燃料を噴射する成層燃焼は、燃焼室の点火部附近に燃料を効率よく確実に集めることができず、火炎伝播を周方向に均一にできるシリンダ軸に軸対称の可燃層を形成できないので燃焼効率の向上が困難である問題点がある。
【解決手段】内燃機関にて駆動する容積型油圧供給手段を備え、前記容積型油圧供給手段が発生する油圧によりガス交換弁を開閉作動する往復動機関において、燃焼室を略球面状または略円錐状とし、燃焼室に放射状に前記ガス交換弁を配置し、点火プラグを前記燃焼室のシリンダ軸との交点近傍に設け、更に、シリンダ内に回転方向が同じスワールを発生する複数のタンゼンシャルポートを設け、吸気系統および/または燃焼室に水素、メタンのように空気より密度が小さい燃料を供給し、前記内燃機関の運転状況に応じて前記燃料の供給を制御する4サイクル内燃機関とする。