(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
放射冷却を利用して構造物内の温度を調節する技術が知られている。
例えば特許文献1には可視光領域を透過して近赤外領域及び遠赤外線領域を遮断する素材から成るフィルムをビニールハウスの屋根面や側面に展開格納自在に取り付ける技術が開示されている。
このビニールハウスの場合、夏季の昼間はフィルムを展開することで光合成に不要な近赤外線及び遠赤外線がハウス内に入ることを防ぎ、夏季の夜間は格納することでハウス内の土や作物等が発する黒体放射による遠赤外線を宇宙空間に向かって逃がして放射冷却し、ハウス内を冷やすことができる。
また、冬季の昼間はフィルムを格納することで太陽光に含まれるエネルギーを全てハウス内に取り込み、冬季の夜間は展開することでハウス内の土や作物等が発する黒体放射による遠赤外線を遮断して放射冷却によるハウス内の温度低下を防ぐことができる。
また、屋根面の棟部分を段違い構造にすることでハウス内の上部に溜まった熱気を自然対流によってハウス外に放出することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献に開示された技術では次のような問題がある。
すなわち、屋根、壁、窓、床等で構成される一般住宅等の建築物の場合、特許文献1のように展開格納自在な大型のフィルムで屋根全体を覆うとすると、フィルム自体の費用や展開格納時の電気代が嵩むという問題や、風雨等による破損の可能性があり耐久性の面で現実的でないという問題がある。
また、農地に建てるビニールハウスとは異なり、建築物の場合は周囲に他の建築物や樹木が存在することがあり、これら周囲の建築物等から赤外線の放射を受けることで室温が上昇してしまうという問題がある。したがって建築物の場合は周囲の環境に対応した構造を採用する必要がある。
【0005】
本発明は、このような問題を考慮して、低コストで耐久性に優れた室内冷却機能を備える
建築物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の建築物は、
一つの部屋を構成する壁の上下に赤外線を透過させるための窓が取り付けられており、
高い位置にある前記窓の赤外線透過率の方が低い位置にある前記窓の赤外線透過率よりも高くなっており、前記部屋を構成する部材から放射される遠赤外線を
高い位置にある前記窓を透過させて宇宙空間に放出
し、屋外から放射されて前記部屋内に侵入する赤外線の量を低い位置にある前記窓で抑制することで、前記部屋の温度上昇を抑制することを特徴とする。
また、
前記壁が、複数の壁のうち太陽光の照射時間が最も短い壁であることを特徴とする。
また、
高い位置にある前記窓が、前記一つの部屋を構成する屋根に取り付けられており、前記遠赤外線を、屋根に取り付けられた前記窓を透過させて宇宙空間に放出することを特徴とする。
また、
前記窓が屋内側と屋外側の二層構造であり、前記屋内側の層の赤外線透過率の方が屋外側の層の赤外線透過率よりも低くなっており、前記屋内側の層が開閉自在であることを特徴とする。
【0007】
また、
前記一つの部屋の内部に遠赤外線反射部材を備えており、前記遠赤外線が前記遠赤外線反射部材で反射して前記窓に至ることを特徴とする。
また、前記窓への太陽光の照射量を抑えるための遮蔽構造を備えることを特徴とする。
【0008】
また、
前記窓が、前記遠赤外線が透過する際にその放射方向を変える機能を有することを特徴とする。
また、基礎に通気口を備えないことで基礎の内部を外気から遮断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明では屋根や壁に赤外線を透過させるための窓を設け、室内を構成する部材から放射される遠赤外線を窓から宇宙空間に放出するので耐久性に優れた室内冷却機能を備えた建築物を得ることができる。
本明細書において「窓」とは、屋内と屋外とを繋ぐ開口部に設置される建具を指す。一方、人の出入りに供される開口部に設置される玄関ドア等は本明細書の「窓」に該当しない。
本明細書の「窓」の構成部材としては例えば当該開口部の周縁に取り付けられる窓枠、当該開口部を塞ぐために窓枠に嵌め込まれるガラスや樹脂板等の板状の部材、板状の部材を開閉自在に支持する丁番等が挙げられるが、このうち窓枠及び丁番は窓の必須の構成部材ではない。すなわち、窓枠や丁番を備えずにガラスや樹脂板等の板状の部材を開口部に嵌め込んだだけのいわゆる「嵌め殺し」であっても本明細書の「窓」に含まれるものとする。また、丁番を用いずにガラスや樹脂板等の板状の部材をスライドさせることで開口部を開閉する構造の場合も本明細書の「窓」に含まれるものとする。
本明細書において「赤外線」とは「スペクトルが赤色の外側に現れる電磁波。波長は可視光線より長く、約800ナノメートル〜1ミリメートルくらいまで。」(広辞苑)を意味する。「赤外線」には近赤外線、中赤外線及び遠赤外線が含まれるものとする。
上記窓は屋根や壁に嵌め込んだままでよく、電気モーター等で移動させる必要がないので冷却機能を低コストで実現できる。
特に窓を太陽光の照射時間が最も短い屋根及び/又は壁に取り付けたり、太陽光の照射時間が最も短い屋根及び/又は壁に取り付けた窓の赤外線透過率を、他の屋根及び/又は壁に取り付けた窓の赤外線透過率よりも高くしたり、或いは、南面と北面のうち太陽光の照射時間が短い方の面の屋根及び/又は壁に窓を取り付けることにより、日中に太陽光が室内に侵入する時間を少なくして室内の温度上昇を抑制できるので、室内冷却性能を更に高めることができる。
本明細書において「北面」とは、面(壁又は屋根)に対して引いた垂線が北方向と南方向のうち僅かでも北に向いている場合には当該面を「北面」とする。
一つの壁に複数の窓を取り付ける場合には、高い位置の窓の赤外線透過率を低い位置の窓の赤外線透過率よりも高くするのが好ましい。高い位置の窓を利用して室内からの遠赤外線を宇宙空間に放出できる一方で屋外の地面や建物等からの赤外線を低い位置の窓で遮断することで室内の温度上昇を抑制できるためである。
【0010】
また、屋内に遠赤外線反射部材を設けることにより、室内からの遠赤外線を窓に集めて透過させることができる。
また、屋外に遠赤外線反射部材を設けることにより、窓を透過した遠赤外線を反射させて効率よく宇宙空間に放出できる。
また、遮蔽構造によって窓への太陽光の照射量を抑えることによっても日中に太陽光が室内に侵入する時間を少なくして室内の温度上昇を抑制できる。
また、スクリーンを設けてその展開・格納量を調節すれば窓から宇宙空間に放出される遠赤外線の量を調節できるし、また、1日の間で窓に直射日光が当たっていない時間帯にはスクリーンを格納することで遠赤外線を放出できる。
また、屋根や壁に赤外線反射部材を設けることによって、屋外の地面や建物等からの赤外線を反射することで室内の温度上昇を抑制できる。
窓の構成部材としては耐久性、値段及び入手の容易性を考慮してガラスが適しており、ガラスの特性としては紫外線よりも赤外線の透過率の方が高いものを使用するのが好ましい。建築物用として市販されているガラスは紫外線と赤外線の両者を遮断する機能を備えているものが多いが、本発明では両者を比較した場合に赤外線の透過率の方が高いものを使用するのが好ましい。
【0011】
また、窓を屋内側と屋外側の二層構造にして、これら二層の赤外線透過率を異ならせるのが好ましい。この場合、室内の温度を低くしたい夏期には赤外線の透過率が低い方の層(例えば赤外線反射ガラス)を使用せず、遠赤外線の透過率が高い層だけを使用することで赤外線を効率よく宇宙空間に放出することができる。そして、室内の温度を高くしたい冬期には赤外線の透過率が低い方と高い方の二層を共に使用することで遠赤外線の宇宙空間への放出量を抑制できる。また、二層構造にすることで層間の空気が断熱層として機能するので断熱効果も得られる。二層構造にする場合には層間の距離を短くすることで空気の対流が起こりにくくなるので断熱効果をより高められる。
赤外線の透過率が低い方の層を屋内側に設けた場合には居住者の操作性が向上するというメリットがあり、赤外線の透過率が低い方の層を屋外側に設けた場合には屋内側に設けた赤外線透過率が高い方の層の温度上昇を抑制できるというメリットがある。
二層構造の窓を屋根や壁の高い位置に取り付ける場合、夏期は遠赤外線の透過率が高いガラスだけを使用することで外気の熱が熱伝導により室内に侵入することが考えられるが、室内に熱が進入したとしても熱気は天井付近(室内の上方空間)で停滞するので人間が生活する空間(室内の下方空間)には影響を与えない。よって、夏期はガラス1枚でも断熱効果に問題はない。
また、遠赤外線が透過する際にその放射方向を変える機能を窓に持たせることで、窓の周囲に樹木や建築物が存在する場合には、これら樹木等を避けるように遠赤外線の放射方向を変えることで遠赤外線を効率よく宇宙空間に放出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1の実施の形態]
本発明の建築物及び窓の第1の実施の形態について説明する。
図1〜
図4に示すように、本実施の形態の建築物1は屋根10に窓20を備えている。
窓20は部屋の壁2や床等の室内を構成する部材から放射される遠赤外線FRを透過させて宇宙空間に放出するために設ける。遠赤外線FRを宇宙空間に放出することで放射冷却によって室内の温度を低下させることができる。
窓20の構成部材としては遠赤外線FRを透過する機能を有するガラスが挙げられる。石英ガラスは赤外線をよく通すため好ましい。使用するガラスの特性として紫外線よりも赤外線の透過率の方が高いものを用いるのが好ましい。ガラス以外にもアクリル、ポリカーボネイトなどの樹脂板を用いてもよい。厚さを抑えることで遠赤外線FRの透過率を高めることができる。
窓20は南面と北面のうち相対的に太陽光の照射時間が短い方の面の屋根10に設けるのが好ましく、建築物1を北半球に立てる場合には北面に設けるのが好ましい。
多くの遠赤外線FRを透過させるためには、窓20が水平面と成す角度をより小さく(水平に近く)する方が好ましい。窓20の構成部材であるガラス等の内部を遠赤外線FRが透過する距離が短くなるためである。当然のことながら窓20の面積を大きくする方が好ましい。
建築物1の壁2及び床として蓄熱効率が高い硬質の素材を使用すると大量の遠赤外線FRが放出されるため効率よく室内の温度を低下させることができる。
地面からの熱及び外気の熱がなるべく床に伝わらないようにして冷却効果を高めるには例えば建築物1の基礎に通気口を設けずに外気と遮断したり、基礎に断熱材を入れたり、基礎をベタ基礎にしたりするのが好ましい。
【0014】
本実施の形態の建築物1は、窓20への太陽光の照射量を抑えるための遮蔽構造30を備える。
具体的には
図2に示すように南面の屋根10の高さを北面よりも高くすることで棟に段差31を設けており、この段差31が遮蔽構造30に該当する。また、
図1に示すように段差31の下部と屋根10との屈曲箇所に三角形状の2枚の板体32を設けており、この板体32も遮蔽構造30に該当する。
仮に
図2(a)に示すように建築物1を立てた場所における夏至の日の南中角度が76°の場合、窓20の下端と段差31の上端とを結んだ直線Lと水平面が成す角度を76°より大きくしておけば、直射日光が窓20を通過して室内に入らない構造にすることができる。
あるいは、夏至の日よりも2か月程度あとの時期の方が気温が高くなることを考慮して、
図2(b)に示すようにその頃の南中角度が仮に68°とすれば、上記直線Lと水平面が成す角度を68°より大きくしておけばよい。
【0015】
本実施の形態の建物は更に遠赤外線反射部材40を備える。
具体的には
図3に示すように屋内用の遠赤外線反射部材40としてアルミ等の金属を貼り付けたロールカーテン41を天井に吊り下げている。また、屋外用の遠赤外線反射部材40として段差31の北面側と2枚の板体の内面側に鏡42を取り付けている。
室内を構成する部材から放射された遠赤外線FRは、そのまま窓20を透過したり、或いは一旦ロールカーテン41で反射したりしたあと窓20を透過する。窓20を透過した遠赤外線FRはそのまま宇宙空間に放出されたり、或いは一旦鏡42で反射したりして宇宙空間に放出される。
図4に示すように窓20を覆うことができる展開・格納自在なスクリーン50を屋外又は屋内に設けることにしてもよい。スクリーン50の展開量を調節することで宇宙空間に放出される遠赤外線FRの量を調節できる。
【0016】
室内の温度を低く保つためには建築物1の壁2や屋根10に窓20を設けないことで太陽光や地面からの赤外線IRが窓20を透過して室内に入らない構造が好ましい。窓20を設ける必要がある場合には
図3に示すように赤外線反射部材60として窓20の表面を格子61で覆ったり、窓20のガラスとして赤外線反射ガラス62(熱線反射ガラス)を用いたりするのが好ましい。
なお、窓20として
図5に示すように屋内側の層21と屋外側の層22とで赤外線透過率が異なる二層構造にしてもよい。
図5では赤外線の透過率が低い方の層を屋内側に設けて開閉自在にしており、これにより居住者による開閉作業の操作性が向上するというメリットがある。なお、
図5のような開閉式ではなく、使用しない方の層を壁2内にスライド収納する構造にしてもよい。
【0017】
また、遠赤外線FRが透過する際にその放射方向を変える機能を窓20に持たせてもよい。
具体的には例えば
図6(a)に示すように複数の板材70を上下左右方向に格子状に組み上げると共に左右方向にのびる板材70を水平面に対して傾斜させることで開口71が屋外に向かって上向きになるようにしている。
図6(b)に示すように遠赤外線FRは開口内を通過する際に板材の傾斜方向に沿ってその進路が上向きに変更されて外部に放射される。
このように、窓20に遠赤外線FRの放射方向を変える機能を持たせることで、窓20の周囲に樹木や建築物1が存在する場合に、これら樹木等を避けるように遠赤外線FRの放射方向を変えることで遠赤外線FRを効率よく宇宙空間に放出することができる。
【0018】
[第2の実施の形態]
次に本発明の建築物の第2の実施の形態について説明するが、上記第1の実施の形態と同一の構成となる箇所については同一の符号を付してその説明を省略する。
図7に示すように本実施の形態の建築物3は窓20を壁2に設ける点と一つの壁2に複数の窓20を取り付ける点に特徴を有する。この場合、南面と北面のうち相対的に太陽光の照射時間が短い方の面の壁2に窓20を設けるのが好ましい。
窓20を壁2に設けることにすれば、屋根10に設ける場合と比較して施工コストを抑えることができる。
一つの壁2に複数の窓20を取り付ける場合には、高い位置の窓20Uの赤外線透過率を低い位置の窓20Lの赤外線透過率よりも高くするのが好ましい。高い位置の窓20を利用して室内からの遠赤外線FRを宇宙空間に放出でき、屋外からの赤外線IRを低い位置の窓20で遮断することで室内の温度上昇を抑制できる。
【0019】
[第3の実施の形態]
次に本発明の建築物の第3の実施の形態について説明するが、上記各実施の形態と同一の構成となる箇所については同一の符号を付してその説明を省略する。
図8に示すように本実施の形態の建築物4はいわゆるドームハウスであり、その天頂部に窓20を設けると共に窓20への太陽光の照射量を抑えるための遮蔽構造30として円周方向に移動可能なフード80を備える点に特徴を有する。フードの内面には遠赤外線反射部材40として鏡81を貼り付けている。
本実施の形態の建築物4によればフード80を回転させることで一日中太陽光をフード80の外面で遮りながら、室内からの遠赤外線FRを直接又はフード80の内面の鏡81で反射させて宇宙空間に高効率で放出することができる。
【実施例1】
【0020】
本発明の建築物を模擬した構造体を使用して外気温度と室内温度の時間変化を計測した。
構造体は上部が開口した箱状の発泡スチロールの当該開口を透明フィルムで覆ったものを用いた。発泡スチロールは建築物の壁及び床に相当し、透明フィルムは屋根に設けた窓に相当する。
図9のグラフから、開口への直射日光の照射量が多くなる14時から15時の間で室内温度が外気温度を上回ったものの、それ以外の時間帯(10時から14時と15時から19時の間)は室内温度が外気温度を下回った。
以上より、室内への直射日光の侵入をコントロールすれば、遠赤外線FRを宇宙空間に放出することで日中の室内温度を外気温度よりも低い状態で維持できることが分かった。
【実施例2】
【0021】
次に、窓への太陽光の照射量を抑えるための遮蔽構造及び遠赤外線反射部材を屋外に設けた場合の効果及び窓ガラスの種類を変えた場合の効果を測定するべく実験を行った。
具体的には
図10及び
図11に示すように、上部開口を備える3つの発泡スチロールA〜Cを用意し、遮蔽構造としてほぼ正方形の板体100を発泡スチロールの上面に対して垂直に取り付けた。そして、AとCの遮蔽構造30にはガルバリウム製の鋼板101を貼り付け、Bの遮蔽構造30にはアルミ箔102を貼り付けた。
更に、AとBの発泡スチロールの開口にフロートガラス103を取り付け、Cの発泡スチロールに熱線反射ガラス104を取り付けた。フロートガラス103は赤外線を多く透過させ、熱線反射ガラス104は赤外線の多くを反射する。
温度計は各発泡スチロールA〜Cの内部に入れた。板体100の上端と発泡スチロールA〜Cの前端とを結ぶ直線が水平線と成す角度を76.0°にした。
図12のグラフから、以下の理由によりアルミ箔102とフロートガラス103を組み合わせた真ん中の発泡スチロールBの構成が最も優れた冷却機能を有することが確認できた。
・日中から夕方の温度が最も低い
・日中から夕方にかけての温度低下率が最も高い
・夜間の温度が最も低い
・夜間から早朝にかけての温度上昇率が最も低い
・早朝から10時頃までの温度が最も低い
なお、実験開始の11時から19時ごろまでと6時から実験終了の11時ごろまでの間、各発泡スチロールA〜Cの内部温度が外気温よりも高くなったのは、発泡スチロールA〜Cを炎天下の乾いた砂の上に置いたため、地面等から熱線が発泡スチロールA〜Cの内部に侵入したり、地面や空気からの熱伝導で発泡スチロールA〜Cが暖められたりしたためだと推測する。したがって、冷却機能を高めるには屋外に赤外線反射部材を設けたり、窓の位置を地面から離したりするのが効果的であることが分かる。
【実施例3】
【0022】
次に、窓を壁の低い位置(地面に近い位置)に設けると共に窓ガラスの種類を変えた場合の効果を測定するべく実験を行った。
具体的には
図13及び
図14に示すように奥行き1,000mm、左右の幅6,000mm、高さ約1,600mmの木製の直方体の小屋の内部を6つの区画に仕切り、各区画の前後左右上下の面を断熱材で覆った。小屋の上部に傾斜面を取り付け、下部にコンクリートブロック及び木材を敷くことで下部と地面との間に空間を設けた。各区画の前面に左右の幅約600mm、高さ1,100mmの開口を設け、各開口に窓を取り付けた。地面から窓の下端までの距離は約900mmである。
6つの区画(No.1〜6)のうち左右両端の2区画(No.1及び6)を除いた4区画(No.2〜5)の内部の温度変化を測定した。
窓ガラスの種類として、No.2には赤外線をほとんど通さないペアガラス(Low-Eガラス)、No.3には遠赤外線をよく通す普通のペアガラス、No.4には赤外線をほとんど通さない単板ガラス(Low-E単板ガラス)、No.5には遠赤外線をよく通す単板ガラス(フロートガラス)を使用した。
図15に示すように、No.3及び5の区画は、No.2及び4の区画と比較して日中の温度が高い。これは、窓ガラスが地面近くに位置するため、地面からの赤外線がガラスで反射されずに区画内に侵入したことと、窓ガラスが壁に設けられて垂直になっているため区画内からの遠赤外線を宇宙空間まで放出し辛いことが原因と考えられる。
反対にNo.2及び4の区画は地面からの赤外線がガラスで反射して区画内にほとんど侵入しなかったために日中の温度を低く抑えることができたと考えられる。
以上より、窓を壁の高い位置に設ける場合には赤外線透過率を高くして、窓を壁の低い位置に設ける場合には赤外線透過率を低くするのが室内冷却機能を高める点で有効であることが分かる。