(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ソリッドコアに1層又は2層以上のカバーを被覆してなり、該ソリッドコアが球状の第1層、該第1層を被覆する第2層、及び該第2層を被覆する第3層を有するマルチピースソリッドゴルフボールにおいて、上記第1層の直径が3〜12mmであり、上記第3層がポリブタジエンゴムを主材とするゴム組成物にて形成されると共に、上記ソリッドコアを半分に切断した際の断面における
コア中心のJIS−C硬度での断面硬度を(a)、
第1層と第2層との境界面より1mm内側の第1層のJIS−C硬度での断面硬度を(b)、
上記境界面より1mm外側の第2層のJIS−C硬度での断面硬度を(c)、
第2層と第3層との境界面より1mm内側の第2層のJIS−C硬度での断面硬度を(d)、
上記境界面より1mm外側の第3層のJIS−C硬度での断面硬度を(e)、
第3層のJIS−C硬度での表面硬度を(f)とすると、
(b)の値が86〜95
(b)−(c)の値が5〜40、
(e)−(d)の値が−40〜−5、
(f)−(a)の値が−10〜10、及び
(a)+(b)+(c)+(d)+(e)+(f)の値が440〜480の範囲であり、且つ、第2層及びソリッドコアの体積比(第2層/ソリッドコア)が0.10〜0.50であることを特徴とするマルチピースソリッドゴルフボール。
第1層に第2層を被覆した球体(第2層被覆球体)に対して、初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量と、ソリッドコアに対して、初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量の比(第2層被覆球体/ソリッドコア)が0.90〜1.20である請求項1〜6のいずれか1項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
ソリッドコアに対して、初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量と、ボールに対して、初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量の比(ソリッドコア/ボール)が1.00〜1.30である請求項1〜7のいずれか1項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
ボールに対して、初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重5,880N(600kgf)を負荷したときまでのたわみ量と、初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときまでのたわみ量の比(600kgf/130kgf)が3.30〜3.70である請求項1〜8のいずれか1項記載のマルチピースソリッドゴルフボール。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明のマルチピースソリッドゴルフボールは、特に図示はしないが、球状の第1層、該第1層を被覆する第2層、及び該第2層を被覆する第3層を有する多層構造のソリッドコアに1層又は2層以上のカバーを被覆してなるものである。
【0011】
上記第1層は本発明のゴルフボールにおいて最も内側に位置する層であり、球状である。この第1層を形成し得る材料は、特に制限されるものではないが、ポリブタジエンを基材ゴムとするゴム組成物、又は熱可塑性樹脂を主材とする樹脂組成物を用いて形成することができる。
【0012】
まず、上記第1層をゴム組成物を用いて形成する場合について説明する。
本発明では、ゴム組成物を用いて上記第1層を形成する場合、ポリブタジエンを基材ゴムとするゴム組成物を好適に採用し得る。
【0013】
ここで、上記のポリブタジエンは、特に制限されるものではないが、シス−1,4−結合を60%以上、好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上有するものであることが推奨される。
【0014】
また、上記のポリブタジエンは、特に制限されるものではないが、そのムーニー粘度(ML
1+4(100℃))が30以上、好ましくは35以上、より好ましくは40以上、更に好ましくは50以上、最も好ましくは52以上であることが推奨される。また、その上限も特に制限されるものではなく、100以下であり、好ましくは80以下、より好ましくは70以下、更に好ましくは60以下であることが推奨される。
【0015】
なお、本発明でいうムーニー粘度とは、いずれも回転可塑度計の1種であるムーニー粘度計で測定される工業的な粘度の指標(JIS K 6300)であり、単位記号としてML
1+4(100℃)を用いる。また、Mはムーニー粘度、Lは大ロータ(L型)、1+4は予備加熱時間1分間、ロータの回転時間4分間を示し、100℃の条件下にて測定したことを示す。
【0016】
更に、上記ポリブタジエンの分子量分布Mw/Mn(Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)は、特に制限されるものではないが、2.0以上、好ましくは2.2以上、より好ましくは2.4以上、更に好ましくは2.6以上である。また、その上限も特に制限はないが、6.0以下、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.0以下、更に好ましくは3.4以下である。Mw/Mnが小さすぎると作業性が低下し、大きすぎると反発性が低下する場合がある。
【0017】
上記ポリブタジエンは、Ni触媒、Co触媒、VIII族金属触媒及び希土類元素系触媒を用いて合成したものを使用することができ、本発明では特にNi触媒及び希土類元素系触媒で合成したものを好適に使用することができる。また、必要に応じてこれらの触媒に有機アルミニウム化合物、アルモキサン、ハロゲン含有化合物及びルイス塩基等を組み合せて使用することも任意である。本発明において、上記で例示した各種化合物は、特開平11−35633号公報に記載されているものを好適に使用することができる。
【0018】
上記希土類元素系触媒の中でも、特にランタン系列希土類元素化合物であるネオジム化合物を用いたネオジム系触媒の使用が推奨され、この場合、1,4−シス結合が高含量、1,2−ビニル結合が低含量のポリブタジエンゴムを優れた重合活性で得ることができる。
【0019】
希土類元素系触媒の存在下でブタジエンを重合させる場合、溶媒を使用しても、溶媒を使用せずにバルク重合あるいは気相重合してもよく、重合温度は通常−30〜150℃、好ましくは10〜100℃とすることができる。
【0020】
上記のポリブタジエンは、上記の希土類元素系触媒による重合に引き続き、ポリマーの活性末端に末端変性剤を反応させることにより得られるものであってもよい。
【0021】
末端変性剤の具体例及び反応させる方法は、例えば、特開平11−35633号公報、特開平7−268132号公報、特開2002−293996号公報等に記載されているもの及び方法を挙げることができる。
【0022】
上記ポリブタジエンは、特に制限されるものではないが、基材ゴム中に60質量%以上、好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上、上限として100質量%以下、好ましくは98質量%以下、更に好ましくは95質量%以下配合されたものであることが推奨される。配合量が足りないと、良好な反発性が付与されたゴルフボールを得ることが困難になることがある。
【0023】
また、上記ポリブタジエン以外のゴムを本発明の目的を損なわない範囲で併用・配合することもできる。具体例として、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)などを挙げることができる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0024】
上記第1層は、上記基材ゴムに対し、不飽和カルボン酸又はその金属塩、有機硫黄化合物、無機充填剤、有機過酸化物及び老化防止剤等の添加剤を所定量配合したゴム組成物にて形成される。
【0025】
上記の不飽和カルボン酸は、具体例として、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等を挙げることができ、特にアクリル酸、メタクリル酸を好適に使用し得る。
【0026】
また、不飽和カルボン酸の金属塩としては、メタクリル酸亜鉛、アクリル酸亜鉛等の不飽和脂肪酸の亜鉛塩、マグネシウム塩等を例示することができ、特にアクリル酸亜鉛を好適に使用し得る。
【0027】
上記不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩の配合量は、特に制限されないが、上記基材ゴム100質量部に対し、10質量部以上とすることが好ましく、より好ましくは15質量部以上とすることができる。一方、その上限も特に制限されないが、50質量部以下とすることが推奨される。配合量が多すぎると硬くなりすぎてしまい、耐え難い打感となり、少なすぎると、反発性が低下してしまうことがある。
【0028】
必要に応じて有機硫黄化合物を配合することができる。この有機硫黄化合物は、優れた反発性を付与するために好ましく用いられる。具体的には、チオフェノール類、チオナフトール類、ハロゲン化チオフェノール類又はそれらの金属塩を配合することが推奨され、より具体的には、ペンタクロロチオフェノール、ペンタフルオロチオフェノール、ペンタブロモチオフェノール、パラクロロチオフェノール、ペンタクロロチオフェノール等の亜鉛塩、硫黄数が2〜4のジフェニルポリスルフィド、ジベンジルポリスルフィド、ジベンゾイルポリスルフィド、ジベンゾチアゾイルポリスルフィド、ジチオベンゾイルポリスルフィド等が挙げられるが、特に、ペンタクロロチオフェノールの亜鉛塩、ジフェニルジスルフィドを好適に用いることができる。
【0029】
有機硫黄化合物の配合量は、0超とすることができ、好ましくは上記基材ゴム100質量部に対して0.1質量部以上、より好ましくは0.2質量部以上、更に好ましくは0.4質量部以上とすることができる。また、配合量の上限は特に制限されないが、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下、更に好ましくは3質量部以下、最も好ましくは2質量部以下とすることができる。配合量が多すぎると硬さが軟らかくなりすぎてしまい、少なすぎると、反発性の向上が見込めない。
【0030】
無機充填剤としては、例えば、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等を挙げることができる。その配合量は、特に制限されないが、上記基材ゴム100質量部に対し、好ましくは5質量部以上、より好ましくは6質量部以上、更に好ましくは7質量部以上、最も好ましくは8質量部以上とすることができる。また、配合量の上限は、好ましくは80質量部以下、より好ましくは60質量部以下、更に好ましくは40質量部以下、最も好ましくは20質量部以下とすることができる。配合量が多すぎたり、少なすぎたりすると適正な重量とならなかったり、好適な反発性を得ることができないおそれがある。
【0031】
有機過酸化物としては、硬度分布を大きくするために、比較的半減期の短い有機過酸化物を用いることが好ましい。具体的には、155℃における半減期atが、5秒以上、より好ましくは10秒以上、更に好ましくは15秒以上の有機過酸化物を用いる。また、155℃における半減期atが、120秒以下、より好ましくは90秒以下、更に好ましくは60秒以下であるものを用いる。上記の条件を満たす有機過酸化物としては、1,1−ビス(t−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン(商品名「パーヘキサHC」)、1,1−ビス(t−ヘキシルペルオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(商品名「パーヘキサTMH」)、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(商品名「パーヘキサ3M」)、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン(商品名「パーヘキサC」)等を例示することができる。これらはいずれも日油社製である。
【0032】
有機過酸化物の配合量は、特に制限されないが、上記基材ゴム100質量部に対し、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは0.4質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上である。また、配合量の上限も特に制限はないが、好ましくは4質量部以下、より好ましくは3質量部以下、更に好ましくは2質量部以下、最も好ましくは1.5質量部以下とすることが推奨される。本発明では、好適な反発性、耐久性を得るために配合量を上記範囲とすることが好ましい。配合量が多すぎると、反発性、耐久性が低下してしまう場合があり、一方、少なすぎると、架橋に要する時間が長くなり、生産性の低下が大きく、コンプレッションも大きく低下してしまう場合がある。
【0033】
上記ゴム組成物には、必要に応じて老化防止剤を配合することができる。この老化防止剤としては、例えば、市販品として「ノクラックNS−6」、「同NS−30」(大内新興化学工業社製)、「ヨシノックス425」(吉富製薬社製)等が挙げられる。
【0034】
老化防止剤の配合量は、0超とすることができ、好ましくは上記基材ゴム100質量部に対して0.03質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上とすることができる。また、配合量の上限は特に制限されないが、好ましくは0.4質量部以下、より好ましくは0.3質量部以下、更に好ましくは0.2質量部以下とすることができる。本発明では、好適な反発性、耐久性を得ることができる点から老化防止剤の配合量を上記範囲とすることが推奨される。
【0035】
また、必要に応じて硫黄を配合することができる。具体的には、商品名「硫黄Z(ゼット)」(鶴見化学工業社製)等が例示される。硫黄の配合量は、0超とすることができ、好ましくは上記基材ゴム100質量部に対して0.005質量部以上、更に好ましくは0.01質量部以上とすることができる。また、配合量の上限は特に制限されないが、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.4質量部以下、更に好ましくは0.1質量部以下とすることができる。硫黄の添加によりコアの硬度分布を大きくすることができる。なお、硫黄の配合量が多すぎた場合、加熱成形の際、ゴム組成物が爆発するなどの不具合を生じたり、反発性が大きく低下したりするおそれがある。
【0036】
上記第1層(加熱成形物)をゴム組成物を用いて形成する場合、後述する断面硬度が得られるように、上述したゴム組成物を適宜選択し、公知のゴルフボール用ゴム組成物と同様の方法で加硫・硬化させることによって作製することができる。加硫条件については、例えば、加硫温度100〜200℃、加硫時間10〜40分にて実施することができる。この場合、本発明の所望のコア用ゴム架橋体を得る観点から、加硫温度は、150℃以上であることが好ましく、特に155℃以上が好ましく、上限としては、200℃以下、より好ましくは190℃以下、更に好ましくは180℃以下、最も好ましくは170℃以下である。
【0037】
次に、熱可塑性樹脂を用いて第1層を形成する場合、特に制限はないが、具体的には、ナイロン、ポリアリレート、アイオノマー樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性樹脂を使用することができる。これらの樹脂は、市販品を使用することができ、例えば「サーリンAD8512」(デュポン社製アイオノマー樹脂)、「ハイミラン1706」,「同1707」(三井・デュポン社製アイオノマー樹脂)、「リルサンBMNO」(アルケマ社製ナイロン樹脂)、「UポリマーU−8000」(ユニチカ製ポリアリレート樹脂)等を好適に使用し得る。
【0038】
また、本発明では上記の熱可塑性樹脂の中でも特にアイオノマー樹脂、その未中和物、或いは高中和なアイオノマー樹脂を用いることが好適である。アイオノマー樹脂、又はその未中和物としては、下記(A−I)、(A−II)
(A−I)オレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル3元ランダム共重合体及び/又はその金属塩、及び
(A−II)オレフィン−不飽和カルボン酸2元ランダム共重合体及び/又はその金属塩
の樹脂成分をベース樹脂とした樹脂組成物を好適に採用し得る。以下、この樹脂組成物について説明する。
【0039】
(A−I)成分のオレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル3元ランダム共重合体及び/又はその金属塩の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100,000以上、より好ましくは110,000以上、更に好ましくは120,000以上である。一方、その上限は、好ましくは200,000以下、より好ましくは190,000以下、更に好ましくは180,000以下である。また、上記共重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比は、好ましくは3以上、より好ましくは4.5以上であり、その上限は、好ましくは7以下、より好ましくは6.5以下である。
【0040】
また、(A−II)成分のオレフィン−不飽和カルボン酸2元ランダム共重合体及び/又はその金属塩の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは150,000以上、より好ましくは160,000以上、更に好ましくは170,000以上である。一方、その上限値は、好ましくは200,000以下、より好ましくは190,000以下、更に好ましくは180,000以下である。また、上記共重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比は、好ましくは3以上、より好ましくは4.5以上、であり、その上限は、好ましくは7以下、より好ましくは6.5以下である。
【0041】
この場合、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、GPC(ゲルパーミェションクロマトグラフィー)におけるポリスチレン換算にて算出されるものである。GPC分子量測定に関して述べると、2元共重合体及び3元共重合体は、分子中の不飽和カルボン酸基により、その分子がGPCのカラムに吸着されるため、そのままではGPC測定ができない。通常、不飽和カルボン酸基をエステル化後にGPC測定を行い、ポリスチレン換算した平均分子量Mw及びMnを算出する。
【0042】
ここで、上記(A−I)成分及び(A−II)成分中に含まれるオレフィンは、例えば、炭素数2以上、上限として8以下、特に6以下のものが好ましく、具体的には、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン等が挙げられ、特にエチレンであることが好ましい。
【0043】
また、不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等を挙げることができ、特にアクリル酸、メタクリル酸であることが好ましい。
【0044】
更に、上記(A−I)成分中に含まれる不飽和カルボン酸エステルとしては、上述した不飽和カルボン酸の低級アルキルエステル等が好適で、具体的には、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル等を挙げることができ、特にアクリル酸ブチル(n−アクリル酸ブチル、i−アクリル酸ブチル)であることが好ましい。
【0045】
(A−I)成分及び(A−II)成分のランダム共重合体は、上記成分を公知の方法に従ってランダム共重合させることにより得ることができる。ここで、ランダム共重合体中に含まれる不飽和カルボン酸の含量(酸含量)は、特に制限されるものではないが、好ましくは2質量%以上、より好ましくは6質量%以上、更に好ましくは8質量%以上とすることができる。また、その上限も特に制限されないが、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下であることが推奨される。酸含量が少ないと反発性が低下する可能性があり、多いと材料の加工性が低下する可能性がある。
【0046】
(A−I)成分及び(A−II)成分の配合比率は、質量比で通常100:0〜0:100であり、好ましくは100:0〜25:75、より好ましくは100:0〜50:50、更に好ましくは100:0〜75:25、最も好ましくは100:0にすることが必要である。
【0047】
(A−I)、(A−II)成分の共重合体の金属塩は、上述した(A−I)、(A−II)成分のランダム共重合体中の酸基を部分的に金属イオンで中和することによって得ることができる。ここで、酸基を中和する金属イオンの具体例としては、例えば、Na
+、K
+、Li
+、Zn
++、Cu
++、Mg
++、Ca
++、Co
++、Ni
++、Pb
++等が挙げられる。本発明においては、この中でも特にNa
+、Li
+、Zn
++、Mg
++、Ca
++等を好適に用いることができ、更にはZn
++、Mg
++であることが推奨される。
【0048】
また、(A−I)、(A−II)成分として上記共重合体の金属中和物を使用する場合、即ち、アイオノマー樹脂を使用する場合には、その金属中和物の種類や中和度については特に制限はない。その一例として具体的には、60モル%Zn(亜鉛中和度)のエチレン−アクリル酸共重合体、40モル%Mg(マグネシウム中和度)のエチレン−アクリル酸共重合体、及び40モル%Mg(マグネシウム中和度)のエチレン−メタクリル酸−イソブチレンアクリレート三元共重合体、60モル%Zn(亜鉛中和度)のエチレン−メタクリル酸−イソブチレンアクリレート三元共重合体等が挙げられる。
【0049】
(A−I)成分のオレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル3元ランダム共重合体として具体的には、商品名「ニュクレルAN4318」、「同AN4319」、「同AN4311」、「同N035C」、「同N0200H」(三井・デュポンポリケミカル社製)等が挙げられる。また、オレフィン−不飽和カルボン酸−不飽和カルボン酸エステル3元ランダム共重合体の金属塩として具体的には、商品名「ハイミランAM7316」、「同AM7331」、「同1855」、「同1856」(三井・デュポンポリケミカル社製)や商品名「サーリン6320」、「同8120」(米国デュポン社製)等が挙げられる。
【0050】
また、(A−II)成分のオレフィン−不飽和カルボン酸2元ランダム共重合体の具体例としては、商品名「ニュクレル1560」、「同1525」、「同1035」(三井・デュポンポリケミカル社製)等が挙げられる。オレフィン−不飽和カルボン酸2元ランダム共重合体の金属塩として、具体的には、商品名「ハイミラン1605」、「同1601」、「同1557」、「同1705」、「同1706」(三井・デュポンポリケミカル社製)や商品名「サーリン7930」、「同7920」(米国デュポン社製)、更には、商品名「エスコール5100」、「エスコール5200」(ExxonMobil Chemical社製)等が挙げられる。
【0051】
更に、良好な反発性を得るために、上記(A−I)成分及び(A−II)成分に後述する(B)分子量280以上1500以下の脂肪酸又はその誘導体及び(C)塩基性無機金属化合物を加熱混合することで中和度を向上させた高中和アイオノマー樹脂を使用することができる。
【0052】
(B)成分は、分子量280以上1500以下の脂肪酸又はその誘導体であり、加熱混合物の流動性の向上に寄与する成分で、上記(A)成分の熱可塑性樹脂と比較して分子量が極めて小さく、混合物の溶融粘度の著しい減少に寄与するものである。また、(B)成分中の脂肪酸(誘導体)は、分子量が280以上1500以下で高含量の酸基(誘導体)を含むため、添加による反発性の損失が少ないものである。
【0053】
(B)成分の脂肪酸又はその誘導体は、アルキル基中に二重結合又は三重結合を含む不飽和脂肪酸(誘導体)であっても、アルキル基中の結合が単結合のみで構成される飽和脂肪酸(誘導体)であってもよいが、1分子中の炭素数は、通常18以上、上限として80以下、特に40以下であることが推奨される。炭素数が少ないと、耐熱性が劣り、酸基の含量が多すぎてベース樹脂中に含まれる酸基との相互作用により所望の流動性が得られなくなり、炭素数が多い場合には、分子量が大きくなるため流動性が低下する場合があり、材料として使用困難になるおそれがある。
【0054】
(B)成分の脂肪酸として、具体的には、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、リグノセリン酸等が挙げられ、特に、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、オレイン酸を好適に用いることができる。
【0055】
また、脂肪酸誘導体は、脂肪酸の酸基に含まれるプロトンを置換したものが挙げられ、このような脂肪酸誘導体としては、金属イオンにより置換した金属せっけんを例示することができる。金属せっけんに用いられる金属イオンとしては、例えば、Li
+、Ca
++、Mg
++、Zn
++、Mn
++、Al
+++、Ni
++、Fe
++、Fe
+++、Cu
++、Sn
++、Pb
++、Co
++等が挙げられ、特にCa
++、Mg
++、Zn
++が好ましい。
【0056】
(B)成分の脂肪酸誘導体として、具体的には、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸亜鉛、アラキジン酸マグネシウム、アラキジン酸カルシウム、アラキジン酸亜鉛、ベヘニン酸マグネシウム、ベヘニン酸カルシウム、ベヘニン酸亜鉛、リグノセリン酸マグネシウム、リグノセリン酸カルシウム、リグノセリン酸亜鉛等が挙げられ、特にステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、アラキジン酸マグネシウム、アラキジン酸カルシウム、アラキジン酸亜鉛、ベヘニン酸マグネシウム、ベヘニン酸カルシウム、ベヘニン酸亜鉛、リグノセリン酸マグネシウム、リグノセリン酸カルシウム、リグノセリン酸亜鉛を好適に使用することができる。
【0057】
(B)成分の配合量は、上記ベース樹脂100質量部に対して、30質量部以上、好ましくは45質量部以上、より好ましくは60質量部以上、更に好ましくは80質量部以上である。また、配合量の上限は170質量部以下であり、好ましくは150質量部以下、より好ましくは130質量部以下、更に好ましくは110質量部以下である。
【0058】
なお、上述した(A)成分の使用に際し、公知の金属せっけん変性アイオノマー樹脂(米国特許第5312857号明細書、米国特許第5306760号明細書、国際公開第98/46671号パンフレット等)を使用することもできる。
【0059】
(C)成分の塩基性無機金属化合物は、上記(A)、(B)成分中の酸基を中和するために配合するものである。従来例でも挙げたように、(A)、(B)成分のみ、特に金属変性アイオノマー樹脂のみ(例えば、上記特許公報に記載された金属せっけん変性アイオノマー樹脂のみ)を加熱混合すると、下記に示すように金属せっけんとアイオノマー樹脂に含まれる未中和の酸基との交換反応により脂肪酸が発生する。この発生した脂肪酸は熱的安定性が低く、成形時に容易に気化するため、成形不良の原因となるばかりでなく、発生した脂肪酸が成形物の表面に付着した場合、塗膜密着性が著しく低下する原因になる。
【0061】
このような問題を解決すべく、(C)成分として、上記(A)、(B)成分中に含まれる酸基を中和する塩基性無機金属化合物を必須成分として配合する。(C)成分の配合で、上記(A)、(B)成分中の酸基が中和され、これら各成分配合による相乗効果により、樹脂組成物の熱安定性が高まると同時に、良好な成形性が付与され、ゴルフボール用材料としての反発性が向上するという優れた特性が付与される。
【0062】
(C)成分は、上記(A)、(B)成分中の酸基を中和することができる塩基性無機金属化合物であるが、好ましくは一酸化物又は水酸化物であることが推奨される。これらの化合物は、アイオノマー樹脂との反応性が高く、反応副生成物に有機物を含まないため、熱安定性を損なうことなく、樹脂組成物の中和度を上げることができる。
【0063】
ここで、塩基性無機金属化合物に使われる金属イオンとしては、例えば、Li
+、Na
+、K
+、Ca
++、Mg
++、Zn
++、Al
+++、Ni
+、Fe
++、Fe
+++、Cu
++、Mn
++、Sn
++、Pb
++、Co
++等が挙げられ、無機金属化合物としては、これら金属イオンを含む塩基性無機充填剤、具体的には、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム等が挙げられる。これらの中でも、上述したように一酸化物又は水酸化物が好適であり、好ましくはアイオノマー樹脂との反応性の高い酸化マグネシウムや水酸化カルシウムを好適に使用できる。
【0064】
上記(C)成分の配合量は、所望の中和度を得るために適宜選定することができ、特に制限されるものではないが、上記(A)、(B)成分中の酸基に対して、好ましくは30モル%以上、より好ましくは45モル%以上、更に好ましくは60モル%以上、最も好ましくは70モル%以上とすることができる。また、その上限値は、好ましくは130モル%以下、より好ましくは110モル%以下、更に好ましくは100モル%以下、最も好ましくは90モル%以下とすることができる。また、上記の配合量を質量ベースで表現すれば、上記ベース樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましい。この場合、より好ましい下限値は0.5質量部以上であり、更に好ましくは0.8質量部以上、最も好ましくは1質量部以上である。一方、より好ましい上限値は8質量部以下であり、更に好ましくは5質量部以下、最も好ましくは4質量部以下である。
【0065】
上記樹脂組成物のメルトフローレート(JIS K 6760(試験温度190℃、試験荷重21N(2.16kgf)にて測定))は、好ましくは1g/10min以上、より好ましくは2g/10min以上、更に好ましくは3g/10min以上である。また、その上限値は、好ましくは30g/10min以下、より好ましくは20g/10min以下、更に好ましくは15g/10min以下、最も好ましくは10g/10min以下である。この樹脂組成物のメルトフローレートが低いと加工性が著しく低下してしまう。
【0066】
上記の樹脂組成物の製造方法としては、特に制限はないが、(A−I)、(A−II)成分のアイオノマー樹脂又は未中和のポリマーと(B)成分と(C)成分とを一緒にホッパーに投入し、所望の条件で押出す方法を採用することができる。また、(B)成分については、別のフィーダーから投入してもよい。この場合、上記の(C)成分である金属カチオン源による(A−I)、(A−II)及び(B)成分中のカルボン酸への中和反応を各種の押出機によって行うことができる。この場合、押出機は、単軸押出機及び2軸押出機のいずれも使用することができるが、混練効果が大きい2軸押出機をより好適に使用できる。また、これらの押出機の連結型でもよく、例えば、単軸押出機−2軸押出機、2軸押出機−2軸押出機等の連結タイプが挙げられる。これらの装置の構成は特別なものではなく、既存の押出機で十分である。
【0067】
また、熱可塑性樹脂を用いて上記第1層を形成する方法は、特に制限されるものではなく、型付けや射出成形等の公知の方法を採用し得、特に射出成形にて製造することが好ましい。この場合、コア形成用金型のキャビティ内に上述した熱可塑性樹脂材料を射出する方法を好適に採用できる。
【0068】
上記第1層の直径は、3〜24mmに設定される。この場合、その直径の好ましい下限値は5mm以上であり、より好ましくは7mm以上、更に好ましくは9mm以上である。一方、その直径の好ましい上限値は20mm以下であり、より好ましくは15mm以下である。上記の直径が上記の範囲を逸脱した場合、W#1打撃時に十分な初速が得られなくて、飛距離が伸びない場合がある。
【0069】
第2層は、上記第1層を被覆する層であり、上記ソリッドコアを構成する3層の内、中間に位置する層である。この第2層は、特に制限されるものではないが、上記第1層の形成に使用する材料と同様の材料を用いて形成することができる。即ち、上述したポリブタジエンを基材ゴムとするゴム組成物や熱可塑性樹脂を好適に使用することができる。
【0070】
上記第2層をゴム組成物を用いて形成する方法は、公知の方法を採用し得、特に制限されるものではないが、以下の方法を好適に採用し得る。まず、所定の金型に第2層形成用材料を入れ、一次加硫(半加硫)して一対の半球殼状のハーフカップを作製する。次いで、予め作製した球状の第1層を前記で作製したハーフカップで包んだ状態で二次加硫(全加硫)を行う。即ち、加硫工程を2段階に分けた方法を好適に採用し得る。また、第1層の周囲に第2層形成用材料を射出して成形する方法も好適に採用できる。
【0071】
また、上記第1層が熱可塑性樹脂で形成されたものである場合、該第1層の表面に予め接着剤を塗布することにより、第1層と第2層との界面を強固に結合させることができる。接着剤で両者を強固に結合することによりゴルフボールの耐久性をより向上させ、高い反発性を得ることができる。また、第1層の表面に対して、バレル研磨機等による研磨処理、プラズマ処理、コロナ放電、又は化学処理等の前処理を施して表面に微細な凹凸を形成することにより、上記第1層と上記第2層との密着性を更に高めることができる。
【0072】
上記第2層を熱可塑性樹脂を用いて形成する方法についても、特に制限されるものではないが、公知の方法を採用し得、例えば、第1層の球体の周囲に第2層形成用材料を射出して成形する方法や、予め第2層形成用材料で一対の半球殼状のハーフカップを作製し、これらハーフカップで上記第1層を包み、140〜180℃で2〜10分間加圧加熱成形する方法等を採用することができる。
【0073】
上記第1層に第2層を被覆した球体(第2層被覆球体)の直径は、特に制限されるものではないが、20〜33mmとすることができる。この場合、その直径の好ましい下限値は23mm以上であり、より好ましくは25mm以上である。一方、好ましい上限値は30mm以下であり、より好ましくは28mm以下である。
【0074】
第3層は、上記第2層を被覆する層であり、上記ソリッドコアを構成する3層の内、最も外側に位置する層である。本発明において、この第3層は、ポリブタジエンを主材とするゴム組成物にて形成されることが必要であり、特に、上記第1層の形成に好適に使用し得るゴム組成物と同様のゴム組成物を使用することができる。
【0075】
上記第3層の形成方法は、特に制限されるものではないが、上記第2層の形成方法と同様の方法を好適に採用することができる。即ち、所定の金型に第3層形成用材料を入れ、一次加硫(半加硫)して一対の半球殼状のハーフカップを作製し、次いで、予め作製した第2層被覆球体を前記で作製したハーフカップで包んだ状態で二次加硫(全加硫)を行う方法や、上記第2層の周囲に第3層形成用材料を射出して成形する方法を好適に採用できる。
【0076】
また、上記第2層が熱可塑性樹脂で形成されたものである場合、該第2層の表面に予め接着剤を塗布することにより、第2層と第3層との界面を強固に結合させることができる。接着剤で両者を強固に結合することによりゴルフボールの耐久性をより向上させ、高い反発性を得ることができる。また、第2層の表面に対して、バレル研磨機等による研磨処理、プラズマ処理、コロナ放電、又は化学処理等を施して表面に微細な凹凸を形成することにより、上記第2層と上記第3層との密着性を更に高めることができる。
【0077】
以上のようにして上記第1層〜第3層を積層したソリッドコアの直径は、特に制限されるものではないが、33〜41mmであることが好ましい。この直径のより好ましい下限値は35mm以上であり、更に好ましくは37mm以上である。また、より好ましい上限値は40mm以下、更に好ましくは39mm以下である。
【0078】
本発明は、第1層〜第3層を有するソリッドコアにおいて、第1層から第3層に向かって断面硬度を段々と低くなるように設定することにより最適化したものである。より具体的には、上記ソリッドコアを半分に切断した際の断面におけるコア中心のJIS−C硬度での断面硬度を(a)、
第1層と第2層との境界面より1mm内側の第1層のJIS−C硬度での断面硬度を(b)、
上記境界面より1mm外側の第2層のJIS−C硬度での断面硬度を(c)、
第2層と第3層との境界面より1mm内側の第1層のJIS−C硬度での断面硬度を(d)、
上記境界面より1mm外側の第3層のJIS−C硬度での断面硬度を(e)、
第3層のJIS−C硬度での表面硬度を(f)とした時、
(b)−(c)の値が0〜40、
(e)−(d)の値が−40〜0、
(a)+(b)+(c)+(d)+(e)+(f)の値が430〜490の範囲であることを要する。
以下、上記のソリッドコア断面各部の硬度(a)〜(f)について詳述する。
【0079】
コア中心の断面硬度(a)は、特に制限されるものではないが、JIS−C硬度で70以上、好ましくは75以上、より好ましくは80以上とすることができる。また、その上限も特に制限されないが、JIS−C硬度で95以下、好ましくは90以下、より好ましくは85以下とすることができる。上記断面硬度(a)が小さすぎると、W#1打撃時に十分な初速が得られない場合があり、一方、大きすぎると、W#1打撃時にスピン量が多くなりすぎる場合がある。
【0080】
第1層と第2層との境界面より1mm内側の第1層の断面硬度(b)は、特に制限されるものではないが、JIS−C硬度で70以上、好ましくは75以上、より好ましくは80以上とすることができる。また、その上限も特に制限されないが、JIS−C硬度で95以下、好ましくは90以下とすることができる。
【0081】
上記境界面より1mm外側の第2層の断面硬度(c)は、特に制限されるものではないが、JIS−C硬度で50以上、好ましくは55以上、より好ましくは60以上とすることができる。また、その上限も特に制限されないが、JIS−C硬度で80以下、好ましくは75以下、より好ましくは70以下とすることができる。
【0082】
第2層と第3層との境界面より1mm内側の第2層の断面硬度(d)は、特に制限されるものではないが、JIS−C硬度で60以上、好ましくは65以上、より好ましくは70以上とすることができる。また、その上限も特に制限されないが、JIS−C硬度で90以下、好ましくは85以下、より好ましくは80以下とすることができる。
【0083】
上記境界面より1mm外側の第3層の断面硬度(e)は、特に制限されるものではないが、JIS−C硬度で60以上、好ましくは65以上、より好ましくは70以上とすることができる。また、その上限も特に制限されないが、JIS−C硬度で90以下、好ましくは85以下、より好ましくは80以下とすることができる。
【0084】
第3層の表面硬度(f)は、特に制限されるものではないが、JIS−C硬度で60以上、好ましくは65以上、より好ましくは70以上とすることができる。また、その上限も特に制限されないが、JIS−C硬度で95以下、好ましくは90以下、更に好ましくは85以下とすることができる。
【0085】
上記(b)−(c)の値は、上述した通り、0〜40とすることが必要である。この場合、好ましい下限値は5以上であり、より好ましくは10以上である。また、その値の好ましい上限値は30以下であり、より好ましくは20以下である。上記(b)−(c)の値が大きすぎると、割れ耐久性が十分でない場合があり、小さすぎると、W#1打撃時に十分な初速が得られない場合がある。
【0086】
(e)−(d)の値は、上述の通り、−40〜0とすることが必要である。この場合、好ましい下限値は−20以上であり、より好ましくは−10以上である。また、その値の好ましい上限値は−5以下である。上記(e)−(d)の値が大きすぎると、打感が硬くなりすぎる場合があり、小さすぎると、W#1打撃時に十分な初速が得られない場合がある。
【0087】
(f)−(a)の値は、特に制限されるものではないが、−10〜10とすることが好ましい。この場合、より好ましい下限値は−7以上であり、更に好ましくは−5以上である。また、その値のより好ましい上限値は7以下であり、より好ましくは5以下である。上記(f)−(a)の値が大きすぎると、割れ耐久性が十分でない場合があり、小さすぎると、打感が硬くなりすぎる場合がある。
【0088】
(a)+(b)+(c)+(d)+(e)+(f)の値は、上述した通り、430〜490の範囲であることを要する。この場合、より好ましい下限値は440以上であり、更に好ましくは450以上である。また、その値のより好ましい上限値は480以下であり、更に好ましくは470以下である。上記(a)+(b)+(c)+(d)+(e)+(f)の値が大きすぎると、打感が硬くなりすぎる場合があり、小さすぎると、W#1打撃時に十分な初速が得られない場合がある。
【0089】
上記のように、ソリッドコア断面各部の断面硬度(a)〜(f)を最適化することにより、実打時の反発性が非常に高く、良好な打感を得ることができる。
【0090】
上記第1層及び第2層被覆球体の直径比(第1層/第2層被覆球体)は、特に制限されるものではないが、0.20〜0.50とすることが好ましい。この場合、上記直径比のより好ましい下限値は0.25以上、更に好ましく0.30以上である。この直径比の値が大きすぎると、W#1打撃時にスピン量が多くなりすぎる場合があり、小さすぎると、W#1打撃時に十分な初速が得られない場合がある。
【0091】
上記第2層の体積(第1層を含まない第2層のみの体積)とソリッドコアの体積との比(第2層/ソリッドコア)は、特に制限されるものではないが、0.10〜0.50とすることが好ましい。この場合、上記体積比のより好ましい下限値は0.15以上であり、更に好ましくは0.20、最も好ましくは0.25である。また、上記体積比のより好ましい上限値は0.40以下であり、更に好ましくは0.30以下である。この体積比の値が大きすぎると、W#1打撃時にスピン量が多くなりすぎる場合があり、小さすぎると、W#1打撃時に十分な初速が得られない場合がある。
【0092】
本発明のマルチピースソリッドゴルフボールは、上記ソリッドコアに1層又は2層以上のカバーを被覆形成してなる。本発明では、特に制限はないが、該カバーを形成する材料として公知のカバー材料を使用することができる。具体的には、公知の熱可塑性樹脂、アイオノマー樹脂、上述したような高中和なアイオノマー樹脂組成物、熱可塑性及び熱硬化型のポリウレタン、或いは、ポリアミド系、ポリエステル系等の熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。また、カバーの形成には、通常の射出成形を好適に採用し得る。
【0093】
本発明では、上述したカバー材料のうち、アイオノマー樹脂、高中和アイオノマー樹脂組成物、熱可塑性ポリウレタン、ポリエステル系熱可塑性エラストマー等を採用することが好適であり、特にアイオノマー樹脂を採用することが推奨される。また、カバーが1層の場合には、特に制限されるものではないが、その厚さは0.5〜2.0mmとすることが好ましく、カバーの材料硬度はショアD硬度で30〜65に設定することが好適である。なお、カバーの材料硬度とは、カバー材料を所定厚のシート状に成形した時の硬度を意味する。
【0094】
また、カバーが2層以上の場合、内層カバーの厚さは、特に制限されるものではないが、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは0.7mm以上、更に好ましくは0.9mm以上、最も好ましくは1.1mm以上とすることができる。また、その上限値も特に制限されないが、好ましくは3mm以下、より好ましくは2.5mm以下、更に好ましくは2mm以下、最も好ましくは1.5mm以下とすることができる。一方、内層カバーの材料硬度は、特に制限されるものではないが、ショアD硬度で30以上とすることが好ましく、より好ましくは35以上、更に好ましくは40以上、最も好ましくは45以上とすることができる。また、その上限値は特に制限されないが、好ましくは58以下、より好ましくは56以下、更に好ましくは54以下、最も好ましくは52以下とすることができる。
【0095】
外層カバーの厚さは、特に制限されるものではないが、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは0.7mm以上、更に好ましくは0.9mm以上、最も好ましくは1.1mm以上とすることができる。また、その上限値も特に制限されないが、好ましくは3mm以下、より好ましくは2.5mm以下、更に好ましくは2mm以下、最も好ましくは1.5mm以下とすることができる。一方、外層カバーの材料硬度は、特に制限されるものではないが、ショアD硬度で好ましくは55以上、より好ましくは56以上、更に好ましくは57以上とすることができる。また、その上限値は特に制限されないが、好ましくは70以下、より好ましくは65以下、更に好ましくは63以下とすることができる。
【0096】
上記カバーを上記のように形成することにより、飛距離増大効果に加えて、打感、耐擦過傷性との両立を図ることができる。
【0097】
上述したコア及びカバーを形成したゴルフボールの直径は、ゴルフボールの規格に対応するべく、42.67mm以上であることが好ましい。また、その上限値は、特に制限されるものではないが、44mm以下とすることが好ましく、より好ましくは43.8mm以下、更に好ましくは43.5mm以下、最も好ましくは43mm以下とすることができる。
【0098】
また、上記ゴルフボールの直径の範囲において、ボール全体の初期荷重98N(10kgf)から終荷重1275N(130kgf)まで負荷したときの変形量(別名、製品硬度とも呼ばれる。)は、特に制限されるものではないが、好ましくは2.0mm以上、より好ましくは2.2mm以上、更に好ましくは2.4mm以上である。また、その上限は特に制限されないが、好ましくは5.0mm以下、より好ましくは4.5mm以下、更に好ましくは4.0mm以下、最も好ましくは3.5mm以下である。上記の変形量が大きすぎると、W#1打撃時に十分な初速が得られない場合があり、小さすぎると、W#1打撃時にスピン量が多くなりすぎる場合がある。
【0099】
更に、ボール全体の初期荷重98N(10kgf)から終荷重5880N(600kgf)まで負荷したときの変形量は、特に制限されるものではないが、好ましくは7.2mm以上、より好ましくは7.6mm以上、更に好ましくは8mm以上である。また、その上限は特に制限されないが、好ましくは14mm以下、より好ましくは12mm以下、更に好ましくは10mm以下である。上記の変形量が大きすぎると、W#1打撃時に十分な初速が得られない場合があり、小さすぎると、W#1打撃時にスピン量が多くなりすぎる場合がある。
【0100】
そして、特に制限されるものではないが、上記第2層被覆球体の初期荷重98N(10kgf)から終荷重1275N(130kgf)まで負荷したときの変形量と、上記ソリッドコアの初期荷重98N(10kgf)から終荷重1275N(130kgf)まで負荷したときの変形量との比(第2層被覆球体/ソリッドコア)が、0.90〜1.20であることが好ましい。この場合、上記変形量比のより好ましい下限値は0.95以上であり、更に好ましくは1.00以上である。また、この変形量比のより好ましい上限値は1.15以下、更に好ましくは1.10以下である。この変形量比の値が大きすぎると、W#1打撃時にスピン量が多くなりすぎる場合があり、小さすぎると、W#1打撃時に十分な初速が得られない場合がある。
【0101】
また、特に制限されるものではないが、上記ソリッドコアの初期荷重98N(10kgf)から終荷重1275N(130kgf)まで負荷したときの変形量と、上記のボール全体の初期荷重98N(10kgf)から終荷重1275N(130kgf)まで負荷したときの変形量との比(ソリッドコア/ボール)が、1.00〜1.30であることが好ましい。この場合、上記変形量比のより好ましい下限値は1.05以上である。また、この変形量比のより好ましい上限値は1.20以下であり、更に好ましくは1.15以下である。この変形量比の値が大きすぎると、打感が硬くなりすぎる場合があり、小さすぎると、W#1打撃時にスピン量が多くなりすぎる場合がある。
【0102】
更に、特に制限されるものではないが、ボール全体の初期荷重98N(10kgf)から終荷重5880N(600kgf)まで負荷したときの変形量と、上記のボール全体の初期荷重98N(10kgf)から終荷重1275N(130kgf)まで負荷したときの変形量との比(600kgf/130kgf)が、3.30〜3.70であることが好ましい。この場合、この変形量比のより好ましい上限値は3.60以下であり、更に好ましくは3.50以下である。この変形量比の値が大きすぎると、W#1打撃時に十分な初速が得られない場合があり、小さすぎると、W#1打撃時にスピン量が多くなりすぎる場合がある。
【0103】
本発明のゴルフボールにおいては、更に空力特性を高めて飛距離を増大させるために、通常のゴルフボールと同様にカバーの表面に多数のディンプルを形成することができる。この場合、ボール表面に形成されるディンプルの個数については、特に制限はないが、好ましくは280個以上、より好ましくは300個以上、更に好ましくは320個以上である。また、その上限は特に制限されないが、好ましくは400個以下、より好ましくは380個以下、更に好ましくは350個以下とすることができる。ディンプルの個数が上記範囲より多くなると、ボールの弾道が低くなり飛距離が出なくなることがある。一方、ディンプルの個数が上記範囲より少なくなると弾道が高くなり飛距離が伸びなくなる場合がある。
【0104】
一方、ディンプルの幾何学的配列としては、8面体、20面体等が採用でき、更に、ディンプルの形状は、円形のほか、スクウェア型、ヘキサゴン型、ペンタゴン型、トライアングル型等の各種多角形、デュードロップ形、楕円形等の中から1種又は2種以上を適宜使用することができる。その直径(多角形においては対角長)は、特に制限されるものではないが、2.5〜6.5mmとすることが好ましい。また、深さについても、特に制限されるものではないが、0.08〜0.30mmとすることが好ましい。
【0105】
また、ディンプルの縁に囲まれた平面下のディンプルの空間体積を、前記平面を底面とし、かつこの底面からのディンプルの最大深さを高さとする円柱体積で除した値V
0は、特に制限されるものではないが、本発明においては0.35〜0.80とすることができる。
【0106】
ディンプルの縁に囲まれた平面で定義されるディンプル面積の合計が、ボール表面にディンプルが存在しないと仮定した仮想球の表面積に占める比率SRは、特に制限されるものではないが、空気抵抗を低減する観点から60〜90%とすることが好ましい。なお、このSRは、形成するディンプルの個数を増やすほか、直径の異なる複数種のディンプルを混在させたり、隣接ディンプル間距離(土手幅)が実質的に0になるような形状とすることにより高めることができる。
【0107】
ディンプルの縁に囲まれた平面から下方に形成されるディンプル空間体積の合計が、ボール表面にディンプルが存在しないと仮定した仮想球の体積に占める比率VRは、特に制限されるものではないが、本発明においては0.6〜1とすることができる。
【0108】
本発明においては、上記のV
0、SR及びVRを上記範囲とすることにより、空気抵抗を低減すると共に、良好な飛距離が得られる弾道になりやすく、飛び性能を向上させることができる。
【0109】
なお、本発明では、ゴルフボールのデザイン性や耐久性を向上させるために、上記のカバー表面に下地処理、スタンプ、塗装等の種々の処理を行うことは任意である。
【実施例】
【0110】
以下、実施例
、参考例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0111】
〔実施例1〜
5、参考例1、比較例1〜10〕
下記表1に示すゴム組成物を調製した後、155℃、15分間の加硫条件で加硫成形することにより第1層の球状成形物を作製した。ただし、実施例2は、表3のNo.1に示した樹脂材料を使用し、射出成形により球体成形物を得た。
第2層については、まず、表2に示すゴム組成物を混練ロールを用いて混練し、130℃,6分間で一次加硫(半加硫)して一対の半球殼状のハーフカップを作製した。次いで、得られたハーフカップで上記の第1層を包み、金型内で155℃、15分間の条件にて二次加硫(全加硫)して第2層を形成し、第2層被覆球体を作製した。
第3層についても、上記第2層と同様の方法で形成した。より具体的に述べると、まず、表2に示すゴム組成物を混練ロールを用いて混練し、130℃,6分間で一次加硫(半加硫)して一対の半球殼状のハーフカップを作製した。次いで、得られたハーフカップで上記の第2層被覆球体を包み、金型内で155℃、15分間の条件にて全体を二次加硫(全加硫)して第3層を形成し、3層構造を有するソリッドコアを作製した。なお、比較例10は、表3のNo.2に示す樹脂材料を上記第2層の周囲に射出することにより第3層を形成した。
【0112】
次に、各ソリッドコアについて、表3に示した組成の樹脂材料(カバー材料)を射出成形して、内層カバー(中間層)と、同一形状、配列、個数のディンプルを表面に有する外層カバーとをそれぞれ形成し、3層構造のソリッドコアに2層カバーを被覆したマルチピースソリッドゴルフボールを得た。この際、カバー表面には
図1に示したディンプルを形成した。このディンプルの詳細については表4に示した。
【0113】
【表1】
【0114】
【表2】
【0115】
表1及び表2に記載した材料の詳細は下記の通りである。
ポリブタジエンゴム:JSR社製「BR730」、Nd系触媒を用いて得られたポリブタジエンゴム、シス−1,4−結合含有量96質量%、ムーニー粘度「55」、分子量分布「3」
アクリル酸亜鉛:日本蒸留工業社製
過酸化物:日油社製「パーヘキサC−40」、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサンを無機充填剤で40%に希釈、155℃の半減期が約50sec
酸化亜鉛:堺化学工業社製
硫酸バリウム:堺化学工業社製「沈降性硫酸バリウム100」
老化防止剤:大内新興化学工業社製「ノクラックNS−6」
【0116】
【表3】
【0117】
表3に記載した材料の詳細は下記の通りである。
サーリン:Dupont社製のアイオノマー樹脂
ニュクレルN035C:三井デュポンポリケミカル製のエチレン−メタクリル酸−エステル3元共重合体
ハイミラン:三井デュポンポリケミカル製のアイオノマー樹脂
パンデックス:DIC Bayer Polymer社製のMDI−PTMGタイプの熱可塑性ポリウレタン
ステアリン酸マグネシウム:日油社製「マグネシウムステアレートG」
酸化マグネシウム:協和化学工業社製「キョーワマグMF150」
ポリイソシアネート化合物:4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート
ハイトレル:東レ・デュポン社製の熱可塑性ポリエステルエラストマー
酸化チタン:石原産業社製「タイペークR550」
ポリエチレンワックス:三洋化成社製「サンワックス161P」
【0118】
【表4】
【0119】
ディンプルの定義
直径:ディンプルの縁に囲まれた平面の直径
深さ:ディンプルの縁に囲まれた平面からのディンプルの最大深さ
V
0 :ディンプルの縁に囲まれた平面下のディンプルの空間体積を、前記平面を底面とし、かつこの底面からのディンプルの最大深さを高さとする円柱体積で除した値
SR:ディンプルの縁に囲まれた平面で定義されるディンプル面積の合計が、ボール表面にディンプルが存在しないと仮定した仮想球の表面積に占める比率
VR:ディンプルの縁に囲まれた平面から下方に形成されるディンプル空間体積の合計が、ボール表面にディンプルが存在しないと仮定した仮想球の体積に占める比率
【0120】
得られたゴルフボールについて、下記の物性を調べた。また、下記方法で飛び試験を行い、フィーリングも評価した。その結果を表5〜表8に示す。
【0121】
ソリッドコアの断面硬度及び表面硬度(JIS−C硬度)
ソリッドコアの中心及び断面硬度については、コアの中心を通るようにコアをカットして断面を平面にして、その断面の所定箇所に硬度計の針を垂直に押し当てて測定した。JIS−C硬度の値で示される。
ソリッドコアの表面硬度については、球状のコアの表面部分に垂直になるように硬度計をセットしてJIS−C硬度規格に基づいて硬度を計測した。JIS−C硬度の値で示される。23℃に温調後の測定値である。
上記断面硬度及び表面硬度の具体的な測定箇所は以下の通りである。
(a)コアの中心
(b)第1層と第2層との境界面より1mm内側の第1層
(c)第1層と第2層との境界面より1mm外側の第2層
(d)第2層と第3層との境界面より1mm内側の第2層
(e)第2層と第3層との境界面より1mm外側の第3層
(f)第3層の表面
【0122】
中間層及びカバーの材料硬度(ショアD硬度)
材料硬度は、測定対象となる材料を6mm厚のシート状とした測定サンプルについて、ASTM−D2240に準拠したタイプDデュロメータにより測定した値である。
【0123】
変形量
ボール、第2層被覆球体及びソリッドコアについて、インストロン・コーポレーション製 4204型を用いて、10mm/minの速度で圧縮し、初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1275N(130kgf)に負荷したときまでのたわみ変形量を計測した。また、同様に初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重5880N(600kgf)に負荷したときまでのたわみ変形量を計測した。
【0124】
ボールの初速
ボールの初速は、R&Aの承認する装置であるUSGAのドラム回転式の初速計と同方式の初速測定器を用いて測定した。ボールは23±1℃の温度で3時間以上温度調節し、室温23±2℃の部屋でテストされた。10個のボールを各々2回打撃して、6.28ft(1.91m)の間を通過する時間を計測し、初速を計算した。
【0125】
W#1での飛距離
ゴルフ打撃ロボットにブリヂストンスポーツ社製の「Tour Stage X−Drive」(ロフト角10.5°)のドライバー(W#1)でヘッドスピード(HS)50m/sで各ボールを10発ずつ打撃し、スピン量(rpm)及びトータル飛距離(m)を測定した。初速については、高速カメラを用いて測定した。なお、飛距離の評価基準は以下の通りである。
○:257m以上
×:257m未満
【0126】
打感(フィーリング)
3人のトップアマチュアゴルファーが、ヘッドスピード(HS)40〜50m/sでドライバー(W#1)でボールを打撃した時の打感を下記の基準に従って評価した。
○:良好な打感
×:硬すぎる、又は軟らかすぎる
【0127】
【表5】
【0128】
【表6】
【0129】
【表7】
【0130】
【表8】
【0131】
比較例1は、コアが2層で、ドライバー(W#1)での初速が十分でないため、飛距離が出ていない。
比較例2は、コアが2層で、ドライバー(W#1)での初速が十分でないため飛距離が出ていない。
比較例3は、コアが単層で、ドライバー(W#1)での初速が十分でないため飛距離が出ていない。
比較例4は、コアの第1層の直径が大きく、スピンも多いため飛距離が出ていない。
比較例5は、(a)+(b)+(c)+(d)+(e)+(f)の値が大きいため、打感が硬くなってしまう。
比較例6は、(a)+(b)+(c)+(d)+(e)+(f)の値が小さいため、ドライバー(W#1)での初速が遅く、飛距離が出ていない。
比較例7は、(e)−(d)の値が0を超えているため、ドライバー(W#1)での初速が遅く、飛距離が出ていない。
比較例8は、(b)−(c)の値が0未満のため、ドライバー(W#1)での初速が遅く、飛距離が出ていない。
比較例9は、(b)−(c)の値が0未満のため、飛距離が出ていない。
比較例10は、コアの第3層が熱可塑性樹脂を用いて形成されているため、飛距離が出ていない。