(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記受光処理部は、光学フィルタ、集光レンズ及び4分割光検知器から構成され、前記第1光信号の周波数を保持し、保持した周波数の光信号を、予測した前記所定の周期に受光するように構成されていることを特徴とする請求項2または3記載の移動体の制御方式。
【背景技術】
【0002】
従来から、飛翔体などの移動体を、地上装置が光通信を用いて制御する様々な手法が開発されている。
例えば、特許文献1には、光信号を用いる飛翔体を誘導するシステムであって、より秘匿性の高いシステムが開示されている。特許文献1の飛翔体の誘導システムは、ロケット飛翔体と、飛翔体を目標位置に誘導する地上誘導装置とを備える。地上誘導装置は、飛翔体を誘導する誘導信号を光信号に変換して送信し、飛翔体は、地上誘導装置からの光信号を受信して誘導信号に復調し、誘導信号に基づいて飛翔体の飛翔方向を変化させる。
【0003】
また、特許文献2には、飛翔体の空中位置の同定を高精度に行い得る飛翔体の空中位置同定方法が開示されている。特許文献2の同定方法は、地上の複数箇所に分散して配置した、相互の距離が既知の複数の反射体に向けて空中の飛翔体からパルスレーザ光を照射するとともに少なくとも飛翔体の進行方向に対して交差する方向にパルスレーザ光を走査する。この走査により最も強い反射光が戻ってきた位置を反射体の位置と認識してパルスレーザ光が、各反射体2,3で反射して戻る迄の時間に基づき各反射体迄の距離を用いて飛翔体の空中の位置を同定する。
さらに、特許文献3には、レーザ光で飛翔体に操縦指令信号を送信して誘導する飛翔体の指令誘導方式が開示されている。
特許文献4には、物体を出発から(自由空間に)電光センサ系の助けで誘導し、前記センサ系は(常時)位置と軌道上の移動物体を位置決めでき、センサが検知した信号を、地上局で操縦命令をはっするための信号処理と評価の回路に導入する移動体の操縦方法が開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。各図面において同一の構成または機能を有する構成要素および相当部分には、同一の符号を付し、その説明は省略する。
まず
図1を参照して一実施形態の移動体の制御方式について説明する。
【0013】
図1は、実施形態1の移動体制御システムの構成例を示すブロック図である。移動体制御システムは、地上装置100と移動体200とを備える。
地上装置100は、受光処理部110、検出処理部120、及び発光処理部130を備える。
受光処理部110は、移動体200が所定の周期で発光する光信号(第1光信号)を受光する。例えば、移動体200から定期的に発光されるレーザダイオード(光信号)を受光し、受光したレーザダイオード(光信号)を処理して検出処理部120で解析できるように処理する。所定の周期はあらかじめ設定される。
検出処理部120は、移動体200が発光する光信号から、移動体200の所望の位置(ターゲット)からのずれを検出し、検出したずれに基づいて、位置情報を生成する。位置情報は、地上装置100が移動体200に位置を調整することを通知(指示)する情報である。例えば、検出処理部120は、受光処理部110が受光したレーザダイオード(光信号)を用いて、移動体200の位置の誤差を誤差角として検出し、位置情報として生成する。
発光処理部130は、位置情報を光信号(第2光信号)として移動体200に向けて発光する。例えば、発光処理部130は、検出処理部120が生成した位置情報を、レーザダイオードを用いて移動体200の方向へ発光することによって、目標との位置ずれ情報を伝送する。
【0014】
移動体200は、受光部210、発光部220、信号制御部230、及び機体制御部240を備える。
受光部210は、地上装置100が発光する光信号(第2光信号)を受光する。例えば、受光部210は、地上装置100によって発光されたレーザダイオード(光信号)を受光する受光回路から構成される。
発光部220は、精度の高い発振器を所有しており、その発振周期に応じてレーザダイオード(第1光信号)を発光させる発光回路から構成されている。その発振器の元となる水晶発振器は、受光部210の回路にも使用されているため、移動体の中で同期が取れている。
【0015】
信号制御部230は、受光部210が受光する光信号から位置情報を取得し、取得した位置情報に基づいて、自装置の機体の制御を機体制御部240へ通知する。例えば、信号制御部230は、受光部210が受光した光信号から位置情報を抽出して信号を生成する回路(制御回路)から構成される。加えて、信号制御部230は、移動体200を制御する機能を有する。信号制御部230は、発光部220が所定の周期でレーザダイオードを発振するように制御する。信号制御部230は、受光部210が受光する光信号を解析する。信号制御部230は、解析結果に基づいて、機体制御部240へ自装置の機体の制御を指示する。
機体制御部240は、位置情報に応じて自装置を移動させる。具体的には、信号制御部230からの指示に基づいて、自装置の機体の動き、位置等を制御する。例えば、機体制御部240は、位置情報に含まれる、地上装置100が指示する移動体200の所望の位置と、現在の移動体200の位置との誤差(ずれ)を用いて、移動体200を移動させる回路(機体制御回路)から構成される。
【0016】
図1の構成を備えることにより、移動体制御システムは、距離が離れた移動体200と地上装置100を光通信で結び、移動体200の動きを制御するための通信ラインを確立する。具体的には、あらかじめ指定された精度の高い周期で移動体200が光を発光することにより、地上装置が該当周期の光信号のみを扱う構成にする。言い換えると、地上装置100は、移動体200から光信号を受光する際に、移動体200が精度の高い任意の周期で光信号を発光することを前提とするため、この周期以外に光信号を受光しないように構成され、移動体200からの光信号と、その他自然界にある散乱光などとを選別することを可能にする。また、受光したタイミングで信号処理を開始し、移動体200の位置情報を地上装置100から移動体200に向かって送信する。
一方、移動体200は、地上装置100に向けて発光している光信号のタイミングを基準に、受光するタイミングを設定することができる。このため、地上装置100と同様に、移動体200は、地上装置100が発光する光信号と、自然界にある散乱光などとを区別し、必要な情報を位置情報を受信する。
【0017】
このようにして、地上装置100と移動体200との間に安定した通信ループを構成することができる。
以下、
図1の構成をより具体的にした実施形態について図面を参照して説明する。
【0018】
実施形態1.
実施形態1では、
図1の地上装置100の具体的な構成の一態様を説明する。
図2は、実施形態1の地上装置の構成例を示すブロック図である。地上装置100Aは、受光処理部110A、検出処理部120A、及び発光処理部130Aを備える。
図2では、受光処理部110Aは、集光レンズ111、4分割検知部112及び干渉フィルタ113を含み、検出処理部120Aは、誤差角検出回路121、アナログ/デジタル変換回路(A/D変換回路)122、及びパラレル/シリアル変換回路123を含み、発光処理部130Aは、レーザダイオード発光回路131とレーザダイオード132を含む構成例を示す。
本実施形態では、地上装置100Aは、
図1に示す移動体200と、光信号としてレーザダイオードを用いて光通信を実施することを前提として説明する。
【0019】
集光レンズ111は、移動体200が発光するレーザダイオードを集光するレンズである。ここでは、集光レンズ111は、集光した光を4分割検知部112に出力するように構成される。集光レンズ111は、移動体200の所望の位置が中心となるように設定され、所望の位置と、現在の移動体200の位置とのずれが角度として検出できるように設定される。
4分割検知部112は、集光レンズ111が集光したレーザダイオードを4分割して検知する。このとき、移動体200の位置と所望の位置(ターゲット)とのずれを角度の誤差(誤差角)として検出できるように構成される。
干渉フィルタ113は、移動体200が発光するレーザダイオードの波長のみを抽出する。
誤差角検出回路121は、4分割検知部112が検知したレーザダイオードに基づいて、現在の移動体200の位置を把握し、現在の移動体200の位置と、所望の移動体の位置との誤差を、誤差角として検出する。
A/D変換回路122は、誤差角検出回路121が検出した誤差角の値をアナログからデジタルに変換する。
パラレル/シリアル変換回路123は、A/D変換回路122が変換したデジタルデータをシリアルデータとして変換する。
レーザダイオード発光回路131は、パラレル/シリアル変換回路123が変換したシリアルデータを、レーザダイオード132の発光のON/OFFによって移動体200へ通知する。
【0020】
図3に
図2の地上装置100Aのより具体的な構成例を示す。
地上装置300は、光学フィルタ311、集光レンズ312、4分割検知器313、信号処理部321、S&H(Sample & Hold)信号生成回路322、アナログ/デジタル変換回路(A/D変換回路)323、パラレル/シリアル変換回路(P/S変換回路)324、発振回路331、論理積回路332、第1レーザドライバ333、第2レーザドライバ334、第1発光器335、第2発光器336、回路電源(+5V電源又は+3.3V電源)351、及びその他の電源352〜356を有する。
図4に
図1の移動体200の具体的な構成例を示す。
移動体400は、光学フィルタ411、レンズ412、受光器413、発振器421、第1レーザドライバ422、第2レーザドライバ423、第1発光器424、第2発光器425、O/E(Optical/Electrical)変換・S/P(Serial/Parallel)変換回路431、受信レベル・誤差角制御回路441、電源451、及び水晶発振器461を備える。
図3,4において、第1及び第2発光器335,336,424,425は、レーザダイオードが用いられ、受光器413は、APD(アバランシェ・フォトダイオード)が用いられる。
レーザドライバ(第1レーザドライバ422及び第2レーザドライバ423)と、O/E変換回路(O/E変換・S/P変換回路431)は、同じ水晶発振器461を使用しているため、移動体の中で同期している。地上装置300が移動体からのレーザダイオード(光信号)を受光してからの処理時間を一定にすることにより、移動体のレーザダイオードが発光するタイミングを基準にして、地上装置のレーザダイオードの発光タイミングを認識しておくことができる。
【0021】
次に、
図3の地上装置300と
図4の移動体400との動作例を説明する。
移動体400は、飛翔体後部に精度の高い発振器421を取り付け、発振器421に同期させて半導体レーザ光(波長:905nm)を発光させる。具体的には、第1及び第2レーザドライバ422、423は、発振器421が発振する信号に同期させてレーザドライバを動作させ、第1及び第2発光器424、425から発光させる。
地上装置300は、レーザダイオード(905nm)以外の波長を受光しない様、干渉フィルタとして光学フィルタ311を設け、4分割検知器313に集光できる様に集光レンズ312を実装する。4分割検知器313は、中心軸をあらかじめターゲットに照準させる。4分割検知器313は、中心軸と移動体400が重なった場合、誤差角X、Yを、ゼロとして出力する。それ以外の場合には、4分割検知器313は、中心軸との誤差(ずれ)を誤差角X、Y(2次元の値X,Y)として出力する。
【0022】
信号処理部321は、4分割検知器313にて受光したパルスのピーク値を検出し、サンプル&ホールドしやすい状態にアナログ信号を処理する。受光したパルスの一部は、S&H信号生成回路322へ送られ、そのパルスを基準にあらかじめ決められた移動体が発光するレーザダイオード424,425の周期でS&H信号が生成され、誤差角として出力され、A/D変換回路323へと送られる。
A/D変換回路323は、アナログ信号として検出された誤差角をデジタル信号へ変換する。
P/S変換回路324は、変換されたデジタル信号をシリアルに変換する。
シリアル信号に変換された誤差角の情報を用いて、地上装置300より移動体400に向けて、光信号として送信する。発振回路331は、光パルス幅に応じてパルスを発振する。論理積回路332は、P/S変換回路324の出力と発振回路331の出力との論理積を出力する。第1及び第2レーザドライバ333、334は、論理積回路332から出力される信号に同期させてレーザダイオード光を出力し、第1及び第2発光器335、336から発光させる。
地上装置300から移動体400へレーザダイオードを発光ささせる際、光のパルス幅は、100nsとし、1bitあたり5回パルスを発振させる。P/S変換回路324から出力されるシリアル信号がHIGHの場合は、5回送信し、LOWの場合にはその時間分何も発光せず放置する。誤差角1軸あたり8bit、合計で16bitの信号を送信する。
【0023】
移動体400側は、自らが発光した光を基準にして約250μs後に地上装置から信号を受光することになる。移動体400では、そのタイミングで該当するbitに1つでもフラグがたった場合には、HIGHと判断し、それ以外はLOWと判断する。そのシリアル信号は、飛翔体に実装されたFPGA(field-programmable gate array)に一旦取り込ませ、データが揃ったところでパラレル信号として機体側へ送信する。移動体400では、移動体400は、光学フィルタ411、レンズ412、受光器413を介して受光した信号を、O/E変換・S/P変換回路431によってデジタル信号に変換する。
移動体400は、その情報を元に地上装置から見て、誤差角がゼロとなる方向へ機体を移動させる。受信レベル・誤差角制御回路441は、変換されたデジタル信号から、受信レベル(Σ)、誤差角(X,Y)を取得し、誤差角に基づいて、機体を移動させる制御を、8ビットパラレル出力、1ビット更新により実施する。
【0024】
上述した構成により、本実施形態では、地上装置300と移動体400との間で通信ループ(仮想同期ループ)を確立する。ここで、通信ループは、地上装置300と移動体400との間で、所定の周期、ここでは、精度の高い発振器421が発振する信号の周期で通信を実施するというループである。具体的には、移動体400から所定の周期で光信号を送信すると、その後所定の期間経過後に地上装置300から移動体400へ光信号を送信(返信)するというループを確立しておき、この前提のもとで、移動体400と地上装置300との間で光信号を送受信する。言い換えると移動体400は、自機のレーザダイオード発光タイミングを基準に地上装置300からいつ信号が返信される事を予め認識した上で自機の動作を制御する。
【0025】
以上説明したように、本発明にかかる実施形態の一態様によれば、次のような有利な効果を奏することができる。
通信ループを構築することにより、通信の安定性、信頼性を向上させる事ができる。
発光周期の精度を良くし、その周期に適合しない信号は信号処理しないため、散乱光や反射光の障害に強い。
地上装置からの送信は、1bitあたりの信号を5回出力し、その1回を取り込むことができればデータとして認識できるため、散乱光等の障害及び飛翔体の動揺等による影響を受け難い。
4分割検知器を使用することにより、飛翔体の方角を認識し、位置情報として出力することができる。
【0026】
実施形態2.
実施形態1では、地上装置側の受光装置(例えば、
図1の受光処理部110)を
図2のように、集光レンズ111及び4分割検知部112で構成する場合や、集光レンズ312、4分割検知器313、及び信号処理部321で構成する場合を説明したが、これに限られるわけではない。
例えば、地上装置側の受光装置をCCD(Charge Coupled Device)カメラによるものに変更し、カメラの前面に光学フィルタをつけることにより、ある特定の波長光を発光する移動体のみを認識させ、位置情報として取り込みを行う。その位置情報を光通信により、移動体へ伝送する。
受光装置にCCDカメラを用いる場合にも、実施形態1と同様の有利な効果を奏することが可能である。
【0027】
上述した各実施形態の移動体の制御方式及び方法は、誘導弾、視界範囲内車両等の遠隔制御、電波の使用できない箇所での遠隔制御等に用いることができる。
【0028】
なお、本発明は上記に示す実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲において、上記実施形態の各要素を、当業者であれば容易に考えうる内容に変更、追加、変換することが可能である。