特許第6209850号(P6209850)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6209850
(24)【登録日】2017年9月22日
(45)【発行日】2017年10月11日
(54)【発明の名称】ダンパ装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/134 20060101AFI20171002BHJP
   F16D 7/02 20060101ALI20171002BHJP
【FI】
   F16F15/134 D
   F16D7/02 A
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-92979(P2013-92979)
(22)【出願日】2013年4月25日
(65)【公開番号】特開2014-214818(P2014-214818A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2016年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】中垣内 聡
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 智洋
(72)【発明者】
【氏名】江端 勝
(72)【発明者】
【氏名】関根 務
【審査官】 熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−193773(JP,A)
【文献】 特開2010−236601(JP,A)
【文献】 特開2005−106158(JP,A)
【文献】 特開2012−067845(JP,A)
【文献】 実開平02−041721(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/00−15/36
F16H 45/02
F16D 7/02
F16D 13/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の軸方向に互いに離間した位置に設けられ、前記回転軸に対して交差した状態で前記回転軸回りに互いに一体的に回転可能に構成された一対の第1プレートと、
前記一対の第1プレートの間に位置する部分を含むとともに開口部が設けられ、前記回転軸に対して交差した状態で前記回転軸回りに回転可能に構成された第2プレートと、
前記第1プレートと前記第2プレートとの間に設けられ、少なくとも前記回転軸の周方向に弾性的に変形する弾性部材と、
前記第2プレートの前記開口部の内側に位置し、前記一対の第1プレートに前記軸方向の両側から挟みこまれた状態で結合される第1部分と、前記第2プレートの前記開口部の外側に位置し、外部に取り付けられる第2部分とを含み、前記回転軸に対して交差した状態で前記回転軸回りに回転可能に構成された第3プレートとを備え、
前記第1部分と前記開口部の内側の端面とは、互いに当接可能に構成されており、前記第1部分と前記端面とが互いに当接した場合に、前記第1プレートおよび前記第3プレートと前記第2プレートとの前記回転軸回りの相対的な回転の範囲が制限されるように構成されており、
前記端面は、前記第1部分と前記周方向に対向する対向領域を含み、前記第1部分は、前記対向領域の前記軸方向の一方側の端部と他方側の端部との間の略中央に位置するように設けられており、
前記第1部分の前記軸方向の厚みは、前記第2プレートの前記開口部が設けられた部分のうち前記対向領域に対応した部分の前記軸方向の厚みよりも小さい、ダンパ装置。
【請求項2】
前記端面は、前記第1部分と前記周方向に対向する対向領域を含み、
前記第1部分は、前記対向領域の前記軸方向の一方側の端部と他方側の端部との間に位置するように設けられている、請求項1に記載のダンパ装置。
【請求項3】
前記一対の第1プレートの少なくとも一方と、前記一対の第1プレートの間に位置する前記第2プレートの部分とは、ベアリングを介して前記回転軸回りに互いに相対的に回転可能に構成されている、請求項1または2に記載のダンパ装置。
【請求項4】
前記第2部分は、環状に形成されており、
前記第1部分は、前記第2部分から前記回転軸の半径方向の内側に突出するように設けられており、
前記第2部分の前記第1部分よりも前記半径方向の外側の部分には、第1補強部が設けられている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のダンパ装置。
【請求項5】
前記第2部分は、環状に形成されており、
前記第1部分は、前記第2部分から前記回転軸の半径方向の内側に突出するように設けられており、
前記第2部分の前記半径方向の内側の端部には、第2補強部が設けられている、請求項1〜4のいずれか1項に記載のダンパ装置。
【請求項6】
前記第1部分に対応する前記第2プレートの部分には、第3補強部が設けられている、請求項1〜5のいずれか1項に記載のダンパ装置。
【請求項7】
前記第2プレートに設けられたトルクリミッタ部をさらに備え、
前記弾性部材および前記トルクリミッタ部は、それぞれ、前記第3プレートの前記第1部分に対して、前記回転軸の半径方向の内側および外側に設けられている、請求項1〜6のいずれか1項に記載のダンパ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ダンパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転軸回りに回転する一対の第1プレートと、一対の第1プレートの間に位置する部分を含む第2プレートと、一対の第1プレートと第2プレートとの間に設けられ、回転軸の周方向に弾性的に変形する弾性部材とを備え、一対の第1プレートの間に、第1プレートと第2プレートとの回転軸回りの相対的な回転の範囲を制限するストッパ部として機能するスペーサ部材が設けられたダンパ装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−193773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来のダンパ装置では、ストッパ部が設けられる部分において軸方向のサイズが大型化する場合がある。このため、ダンパ装置の軸方向のサイズの小型化を図ることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によるダンパ装置は、一例として、回転軸の軸方向に互いに離間した位置に設けられ、回転軸に対して交差した状態で回転軸回りに互いに一体的に回転可能に構成された一対の第1プレートと、一対の第1プレートの間に位置する部分を含むとともに開口部が設けられ、回転軸に対して交差した状態で回転軸回りに回転可能に構成された第2プレートと、第1プレートと第2プレートとの間に設けられ、少なくとも回転軸の周方向に弾性的に変形する弾性部材と、第2プレートの開口部の内側に位置し、一対の第1プレートに軸方向の両側から挟みこまれた状態で結合される第1部分と、第2プレートの開口部の外側に位置し、外部に取り付けられる第2部分とを含み、回転軸に対して交差した状態で回転軸回りに回転可能に構成された第3プレートとを備え、第1部分と開口部の内側の端面とは、互いに当接可能に構成されており、第1部分と開口部の内側の端面とが互いに当接した場合に、第1プレートおよび第3プレートと第2プレートとの回転軸回りの相対的な回転の範囲が制限されるように構成されており、端面は、第1部分と周方向に対向する対向領域を含み、第1部分は、対向領域の軸方向の一方側の端部と他方側の端部との間の略中央に位置するように設けられており、第1部分の軸方向の厚みは、第2プレートの開口部が設けられた部分のうち対向領域に対応した部分の軸方向の厚みよりも小さい。これにより、一例として、ダンパ装置の軸方向のサイズの小型化を図ることができる。また、一例として、第1部分と開口部の内側の端面(対向領域)とが軸方向にずれた状態で部分的に重なるように設けられる場合と異なり、第1部分および対向領域の互いに当接する部分にかかる面圧を小さくすることができる。
【0006】
上記ダンパ装置では、一例として、開口部の内側の端面は、第1部分と周方向に対向する対向領域を含み、第1部分は、対向領域の軸方向の一方側の端部と他方側の端部との間に位置するように設けられている。これにより、一例として、第1部分と開口部の内側の端面(対向領域)とが軸方向にずれた状態で部分的に重なるように設けられる場合と異なり、第1部分および対向領域の互いに当接する部分にかかる面圧を小さくすることができる。
【0007】
上記ダンパ装置では、一例として、一対の第1プレートの少なくとも一方と、一対の第1プレートの間に位置する第2プレートの部分とは、ベアリングを介して回転軸回りに互いに相対的に回転可能に構成されている。これにより、一例として、ベアリングによって、第1プレートと第2プレートとが互いに擦れて磨耗するのを抑制することができる。
【0008】
上記ダンパ装置では、一例として、第2部分は、環状に形成されており、第1部分は、第2部分から回転軸の半径方向の内側に突出するように設けられており、第2部分の第1部分よりも半径方向の外側の部分には、第1補強部が設けられている。これにより、一例として、第1補強部によって、第3プレートの剛性を高めることができる。
【0009】
上記ダンパ装置では、一例として、第2部分は、環状に形成されており、第1部分は、第2部分から回転軸の半径方向の内側に突出するように設けられており、第2部分の半径方向の内側の端部には、第2補強部が設けられている。これにより、一例として、第2補強部によって、第3プレートの剛性をより高めることができる。
【0010】
上記ダンパ装置では、一例として、第1部分に対応する第2プレートの部分の近傍には、第3補強部が設けられている。これにより、一例として、第3補強部によって、第2プレートの剛性を高めることができる。
【0011】
上記ダンパ装置では、第2プレートに設けられたトルクリミッタ部をさらに備え、弾性部材およびトルクリミッタ部は、それぞれ、第3プレートの第1部分に対して、回転軸の半径方向の内側および外側に設けられている。これにより、一例として、第1部分の半径方向の内側および外側のスペースを利用して、弾性部材およびトルクリミッタ部を設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態によるダンパ装置の全体構成の一例を示した図である。
図2図2は、図1のII−II線に沿った断面図である。
図3図3は、図2に示した第3プレートの第1部分(ストッパ部)と、第2プレートの開口部の内側の対向領域とを拡大して示した拡大図である。
図4図4は、実施形態によるダンパ装置の第2プレートの全体構成の一例を示した図である。
図5図5は、図3のV−V線に沿った断面図である。
図6図6は、実施形態によるダンパ装置の第3プレートの全体構成の一例を示した図である。
図7図7は、図5のVII−VII線に沿った断面図である。
図8図8は、図5のVIII−VIII線に沿った断面図である。
図9図9は、実施形態によるダンパ装置の第3プレートの第1部分(ストッパ部)と第2プレートの開口部の内側の端面とが互いに離間した状態の一例を示した概略図である。
図10図10は、実施形態によるダンパ装置の第3プレートの第1部分(ストッパ部)が第2プレートの開口部の内側の端面に当接した状態の一例を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
まず、図1図10を参照して、実施形態によるダンパ装置100の構成の一例について説明する。このダンパ装置100は、エンジン(動力装置:図示せず)とトランスミッション(変速装置:図示せず)との間に配置され、駆動力の変動(トルク差)を緩和する(小さくする)機能を有する。
【0016】
図1および図2に示すように、ダンパ装置100は、回転軸Axに対して交差した状態で回転軸Ax回りに回転(回動)可能に構成された複数の板状部材(後述する第1プレート10、第2プレート20、第3プレート30、第4プレート40および第5プレート50など)を備える。これら複数の板状部材は、金属などにより構成されている。なお、以下では、回転軸Axの延びる方向(X方向)を軸方向とし、回転軸Axと直交する方向(R方向)を半径方向とし、回転軸Ax回りの回転方向(C方向)を周方向として説明する。なお、図1では、後述する結合具C1〜C4の図示を省略している。また、図1は、図2に示したダンパ装置100を軸方向の一方側(図2の右側)から見た図(破断図)である。
【0017】
図1および図2に示すように、ダンパ装置100は、周方向に弾性的に変形(伸縮)することによってトルク差を吸収する(一時的に蓄える)弾性部材60を備える。この弾性部材60は、コイルスプリングなどにより構成されている。また、図1に示すように、弾性部材60は、樹脂などからなる一対の支持部材61によって周方向の両側から支持されている。また、図2に示すように、弾性部材60および支持部材61は、第1プレート10と第2プレート20との間(一対の第1プレート10の間で、かつ、第2プレート20の後述する開口部26の内側)に設けられている。
【0018】
また、図2に示すように、ダンパ装置100は、摩擦によるヒステリシストルクを発生させることによって振動および騒音を低減するヒステリシス機構部70を備える。このヒステリシス機構部70は、第1プレート10と第2プレート20との間に設けられた摩擦材71や、摩擦材71を第2プレート20側に付勢する(弾性力によって押圧する)皿ばね72などを含むように構成されている。
【0019】
また、図1および図2に示すように、ダンパ装置100は、所定値以上の大きいトルク差が発生した場合に滑りを生じてトルク差を吸収するトルクリミッタ部80を備える。このトルクリミッタ部80は、第2プレート20に設けられている。また、トルクリミッタ部80は、半径方向から見て弾性部材60とオーバーラップするように、弾性部材60よりも半径方向の外側に設けられている。具体的には、弾性部材60およびトルクリミッタ部80は、それぞれ、第3プレート30の後述する第1部分33に対して半径方向の内側および外側に設けられている。
【0020】
図2に示すように、トルクリミッタ部80は、皿ばね81と、板状部材82と、2個の摩擦材83および84と、接続プレート85とを含む。これらの皿ばね81、板状部材82、摩擦材83、84および接続プレート85は、結合具C1(図2では、一例として、リベット)によって互いに結合(締結)された第2プレート20および第4プレート40の間に挟まれるように配置されている。なお、第2プレート20および第4プレート40には、それぞれ、結合具C1が挿入される貫通穴20aおよび40aが設けられている。ここで、第2プレート20は、軸方向から見て、内周部21および外周部22を含む円環形状を有する。同様に、第4プレート40は、軸方向から見て、内周部41および外周部42を含む円環形状を有する。
【0021】
トルクリミッタ部80の皿ばね81は、板状部材82を摩擦材83側に付勢するように構成されている。また、トルクリミッタ部80の接続プレート85は、2個の摩擦材83および84の間に挟まれるように配置されている。なお、接続プレート85の半径方向の内側の部分は、結合具C2(図2では、一例として、リベット)によって第5プレート50の後述する第1部分53に結合されている。
【0022】
図1および図2に示すように、第5プレート50は、軸方向から見て、内周部51(図2参照)および外周部52(図2参照)を含む円環形状を有する。また、図2に示すように、第5プレート50は、半径方向に延びる第1部分53と、第1部分53の半径方向の内側の端部から軸方向の他方側(図2の左側)に延びる第2部分54(内周部51を構成する部分)とを含む。第2部分54の内側には、トランスミッション(図示せず)の入力側に設けられるシャフトS1が挿入されている。具体的には、第2部分54の内周面およびシャフトS1の外周面には、それぞれ、スプラインなどの係合構造が設けられており、これらの係合構造を介して第2部分54とシャフトS1とが互いに固定されている。
【0023】
ここで、本実施形態では、図2に示すように、第1プレート10は、弾性部材60の軸方向の両側に一対設けられている。これら一対の第1プレート10は、軸方向に互いに離間した位置に設けられている。また、一対の第1プレート10は、それぞれ、軸方向から見て、内周部11および外周部12を含む円環形状を有する。また、一対の第1プレート10の弾性部材60に対応する部分には、それぞれ、開口部13が形成されている。
【0024】
また、図2図5に示すように、第2プレート20は、一対の第1プレート10の間で半径方向に延びる第1部分23と、第1部分23の半径方向の内側の端部から軸方向の他方側(図2の左側)に延びる第2部分(内周部21を有する部分)24と、一対の第1プレート10から半径方向の外側にはみ出した第3部分(外周部22を有する部分)25とを含む。なお、図4は、図2に示した第2プレート20を軸方向の他方側から見た図である。
【0025】
図4および図5に示すように、第2プレート20の半径方向の中間部分には、開口部26が設けられている。この開口部26は、第2プレート20の第1部分23と第3部分25とに跨って形成されている。また、開口部26は、第3プレート30の後述する第1部分33(図2および図3参照)が入る第1開口部26aと、弾性部材60および支持部材61(図2参照)が入る第2開口部26bとを含む。また、第2プレート20の開口部26よりも外周部22側の部分には、トルクリミッタ部80の板状部材82が入る開口部27が設けられている。なお、図4に示すように、開口部26は、周方向に間隔を隔てて4個設けられているとともに、開口部27は、周方向に間隔を隔てて3個設けられている。
【0026】
図2および図6図10に示すように、第3プレート30は、軸方向から見て、内周部31および外周部32を含む円環形状を有する。この第3プレート30は、第2プレート20の開口部26の内側(図2および図3参照)に配置される第1部分33と、第2プレート20の開口部26の外側(図2参照)に配置される第2部分34とを含む。なお、図6に示すように、第1部分33は、第2部分34から半径方向の内側に突出するように設けられている。また、第1部分33は、周方向に所定の幅を有して半径方向に延びるように設けられている。また、第1部分33は、第2プレート20に設けられた4個の開口部26に対応するように4個設けられている。これら4個の第1部分33は、第3プレート30の内周部31に沿って周方向に間隔を隔てて(略等間隔で)設けられている。
【0027】
また、第1部分33は、第2プレート20の開口部26の内側の端面に当接可能に構成されている。具体的には、図3図9および図10に示すように、第2プレート20の開口部26(第1開口部26a)の周方向の内側の端面は、第1部分33の周方向の端部33aと周方向に対向する対向領域26cを含み、この対向領域26cと、第1部分33の周方向の両端部33aとは、互いに当接可能に構成されている。より具体的には、第1部分33と、開口部26の周方向の内側の端面(対向領域26c)とは、第1プレート10および第3プレート30と第2プレート20とが回転軸Ax回りに相対的に回転した場合に、互いに当接するように構成されている。これにより、本実施形態によるダンパ装置100は、第1部分33と開口部26の内側の端面(対向領域26c)とが互いに当接した場合に、第1プレート10および第3プレート30と第2プレート20との回転軸Ax回りの相対的な回転の範囲が制限されるように構成されている。その結果、本実施形態では、第1部分33は、第1プレート10および第3プレート30と第2プレート20との回転軸Ax回りの相対的な回転の範囲を制限するストッパ部として機能するように構成されている。
【0028】
すなわち、本実施形態では、図9に示すように、弾性部材60が縮んでいない初期状態(第1プレート10および第3プレート30と第2プレート20との間にトルク差が生じていない状態)において、第1部分33(周方向の端部33a)は、開口部26(第1開口部26a)の内側の端面(対向領域26c)から離間した位置に配置される。また、本実施形態では、図10に示すように、弾性部材60が最大限に縮んだ状態(第1プレート10および第3プレート30と第2プレート20との間に大きいトルク差が発生した状態)において、第1部分33(周方向の端部33a)は、開口部26(第1開口部26a)の内側の端面(対向領域26c)に当接するように配置される。なお、図9および図10では、簡略化のため、第2プレート20、第3プレート30、弾性部材60および支持部材61のみを概略的に図示し、他の部材の図示を省略している。また、図9および図10では、第2プレート20の貫通穴20aや、第3プレート30のねじ挿入穴34aなどの図示も省略している。
【0029】
ここで、本実施形態では、図3に示すように、第1部分33の軸方向の厚みt1は、第2プレート20の開口部26が設けられた部分(第1部分33と対向する対向領域26cを内側に有する部分)の軸方向の厚みt2よりも小さい。これにより、第1部分33を、第2プレート20の開口部26が設けられた部分から軸方向にはみ出すことなく配置することが可能である。なお、本実施形態では、第1部分33と、第2プレート20の開口部26が形成された部分とは、軸方向の中央部が互いに略一致するように配置されている。すなわち、本実施形態では、第1部分33は、開口部26の内側の端面(対向領域26c)の軸方向の一方側(図3の右側)の端部E1と他方側(図3の左側)の端部E2との間の略中央に位置するように設けられている。
【0030】
図2および図3に示すように、第1部分33は、一対の第1プレート10に軸方向の両側から挟みこまれた状態で、結合具C3(図2および図3では、一例として、リベット)によって一対の第1プレート10に結合されている。すなわち、第1部分33および第1プレート10の互いに対応する部分(面接触する部分)には、それぞれ、結合具C3が挿入される貫通穴33bおよび10aが設けられている。また、図2に示すように、第2部分34は、結合具C4(図2では、一例として、ねじ部材)によって外部(エンジン(図示せず)の出力側のシャフトS2に取り付けられたフライホイールFW)に取り付けられている。すなわち、第2部分34およびフライホイールFWの互いに対応する部分には、それぞれ、結合具C4が挿入されるねじ挿入穴34aおよびねじ穴が設けられている。なお、第2プレート20の外周部22および第4プレート40の外周部42のそれぞれの結合具C4に対応する部分には、結合具C4(ねじ挿入穴34a)を軸方向の一方側(図2の右側)に露出させるための切欠き部22aおよび42aが設けられている。
【0031】
また、図2および図7に示すように、第2部分34の第1部分33よりも半径方向の外側の部分には、軸方向の一方側(図2および図7の右側)に突出する第1リブ35が形成されている。なお、第1リブ35は、「第1補強部」の一例である。ここで、図6に示すように、第1リブ35は、第1部分33の周方向の端部に対応する位置(第1部分33の周方向の端部と第2部分34との間に構成される隅部36よりも半径方向の外側)に1個ずつ設けられており、第3プレート30全体で合計8個設けられている。これらの第1リブ35は、それぞれ、第1部分33の周方向の端部33aと第2部分34との間に構成される隅部36を跨ぐように、周方向に沿って延びるように形成されている。なお、本実施形態では、図2に示すように、第2部分34の結合具C1に対応する部分には、組み付け時の位置決めや出荷時の検査などに用いられる貫通穴34bが設けられている。図6に示すように、貫通穴34bは、周方向に間隔を隔てて(略等間隔で)12個設けられている。
【0032】
また、本実施形態では、図6に示すように、第2部分34の半径方向の内側の端部(第3プレート30の内周部31における4個の第1部分33の間の部分)には、周方向に沿って延びる第2リブ37が形成されている。なお、第2リブ37は、「第2補強部」の一例である。図2および図8に示すように、第2リブ37は、第2部分34の半径方向の内側の端部から軸方向の一方側(図2および図8の右側)に傾斜して延びるように形成されている。具体的には、第2リブ37は第2部分34の半径方向の内側の端部が軸方向の一方側に切り起こされることにより構成されている。
【0033】
また、本実施形態では、図2および図5に示すように、第2プレート20の第1部分33に対応する部分(第1部分33の周方向の端部33a(図6参照)と周方向に対向する対向領域26c(図3参照)を内側に有する部分)の近傍には、軸方向の他方側(図2および図5の左側)に突出する段差状の第3リブ28が形成されている。なお、第3リブ28は、「第3補強部」の一例である。図4に示すように、第3リブ28は、4個の開口部26の各々の第1開口部26aの外周部22側の縁部と、4個の開口部26の間の部分とに、周方向に沿って延びるように設けられている。
【0034】
なお、本実施形態では、図2に示すように、一対の第1プレート10のうち、軸方向の他方側(図2の左側)に配置された第1プレート10の内周部21は、ベアリング(転がり軸受)91を介して第2プレート20の第2部分24に接続されている。これにより、第1プレート10と第2プレート20とは、回転軸Ax回りに互いに相対的に回転するように構成されている。また、一対の第1プレート10は、第3プレート30の第1部分33に結合具C3によって結合(共締め)されている。これにより、第1プレート10と第3プレート30とは、回転軸Ax回りに互いに一体的に回転するように構成されている。
【0035】
また、本実施形態では、第2プレート20の第2部分24は、樹脂製のブッシュなどからなる滑り軸受92を介して第5プレート50の第2部分54に接続されているとともに、第2プレート20の第3部分25は、第4プレート40およびトルクリミッタ部80(接続プレート85)を介して第5プレート50の第2部分54に接続されている。これにより、トルクリミッタ部80に滑りが生じた場合には、第2プレート20と第4プレート40とは、回転軸Ax回りに互いに相対的に回転するとともに、トルクリミッタ部80に滑りが生じていない場合には、第2プレート20と第4プレート40とは、回転軸Ax回りに互いに一体的に回転するように構成されている。
【0036】
以上説明したように、本実施形態では、一例として、第3プレート30は、第2プレート20の開口部26の内側に設けられる第1部分33を含む。これにより、一例として、第3プレート30の全体が開口部26の外側に設けられている場合(たとえば、第3プレート30と第2プレート20とが軸方向に互いに離間した位置に設けられている場合)と異なり、ダンパ装置100の軸方向のサイズの小型化を図ることができる。
【0037】
また、本実施形態では、一例として、第1部分33(周方向の端部33a)と開口部26(第1開口部26a)の内側の端面(対向領域26c)とが互いに当接可能に構成されており、第1部分33が、第1プレート10および第3プレート30と第2プレート20との回転軸Ax回りの相対的な回転の範囲を制限するストッパ部として機能する。これにより、一例として、ストッパ部を第3プレート30とは別個に設ける場合(第3プレート30とは別個のストッパ部を一対の第1プレート10の間に設ける場合)と異なり、部品点数を削減することができるとともに、ダンパ装置100のストッパ部が設けられる部分の軸方向のサイズの小型化を図ることができる。
【0038】
また、本実施形態では、一例として、開口部26(第1開口部26a)の内側の端面は、第1部分33と周方向に対向する対向領域26cを含み、第1部分33は、対向領域26cの軸方向の一方側の端部E1と他方側の端部E2との間に位置するように設けられている。これにより、一例として、第1部分33と開口部26の内側の端面(対向領域26c)とが軸方向にずれた状態で部分的に重なるように設けられる場合と異なり、第1部分33および対向領域26cの互いに当接する部分にかかる面圧を小さくすることができる。
【0039】
すなわち、本実施形態では、一例として、第3プレート30の第1部分33の軸方向の厚みt1は、第2プレート20の開口部26が形成された部分(第1部分33の周方向の端部33aと周方向に対向する対向領域26cを内側に有する部分)の軸方向の厚みt2よりも小さく、第1部分33は、第2プレート20の開口部26が形成された部分から軸方向にはみ出すことなく設けられている。これにより、一例として、第1部分33が、第2プレート20の開口部26が形成された部分から軸方向にはみ出す場合と異なり、ダンパ装置100の軸方向のサイズの小型化を図ることができる。
【0040】
また、本実施形態では、一例として、一対の第1プレート10のうち軸方向の他方側(図2の左側)の第1プレート10と、一対の第1プレート10の間に位置する第2プレート20の部分(第2部分24)とは、ベアリング91を介して回転軸Ax回りに互いに相対的に回転可能に構成されている。これにより、一例として、ベアリング91によって、第1プレート10と第2プレート20とが互いに擦れて磨耗するのを抑制することができるとともに、第1プレート10と第2プレート20とをスムーズに互いに相対的に回転させることができる。
【0041】
また、本実施形態では、一例として、第2部分34の第1部分33よりも半径方向の外側の部分には、第1リブ35が形成されている。これにより、一例として、第1リブ35によって、第3プレート30の剛性を高めることができる。また、本実施形態では、一例として、第1リブ35が、第1部分33と第2部分34との間に構成される隅部36に対応する位置に設けられているので、第1リブ35によって、第1部分33と第2部分34との間に構成される隅部36にかかる応力が高くなるのを抑制することができる。
【0042】
また、本実施形態では、一例として、第2部分34の半径方向の内側の端部には、第2リブ36が形成されている。これにより、一例として、第2リブ36によって、第3プレート30の剛性をより高めることができる。すなわち、一例として、第1部分33と開口部26の内側の端面とが当接することに起因して第1部分33に加わる荷重によって、第2部分34の半径方向の内側の端部が変形するのを抑制することができる。
【0043】
また、本実施形態では、一例として、第1部分33に対応する第2プレート20の部分(第1部分33の周方向の端部33aと周方向に対向する対向領域26cを内側に有する部分)の近傍には、第3リブ28が形成されている。これにより、一例として、第3リブ28によって、第2プレート20の剛性を高めることができる。すなわち、一例として、第1部分33と開口部26の内側の端面とが当接することに起因して第2プレート20(開口部26が形成された部分)に加わる加重によって、第2プレート20が変形するのを抑制することができる。
【0044】
また、本実施形態では、一例として、弾性部材60およびトルクリミッタ部80は、それぞれ、第3プレート30の第1部分33に対して、半径方向の内側および外側に設けられている。これにより、一例として、第1部分33の半径方向の内側および外側のスペースを利用して、容易に、弾性部材60およびトルクリミッタ部80をそれぞれ設けることができる。
【0045】
以上、本発明の実施形態を例示したが、上記実施形態はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、上記実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明と、その均等の範囲とに含まれる。また、上記実施形態の各構成要素のスペック(構造、種類、方向、形状、大きさ、長さ、幅、厚み、高さ、数、配置、位置および材質など)は、適宜に変更して実施することが可能である。
【0046】
たとえば、上記実施形態では、エンジンとトランスミッションとの間にダンパ装置を設ける例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明によるダンパ装置は、上記以外の2個の回転要素の間(たとえば、エンジンと回転電機(モータジェネレータ)との間)に設けることが可能である。また、本発明によるダンパ装置は、種々の車両(たとえば、ハイブリッド自動車)や、回転要素を有する一般的な機械などに設けることが可能である。
【符号の説明】
【0047】
10…第1プレート、20…第2プレート、26…開口部、26c…対向領域、28…第3リブ(第3補強部)、30…第3プレート、33…第1部分、34…第2部分、35…第1リブ(第1補強部)、37…第2リブ(第2補強部)、60…弾性部材、80…トルクリミッタ部、91…ベアリング、100…ダンパ装置、Ax…回転軸、FW…フライホイール(外部)。
図1
図2
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図4
図5
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図8
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図10