(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明にかかる車両用前照灯の実施形態(実施例)の2例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
図6は、コンピュータシミュレーションにより作図された路面上の配光パターンを簡略化して示す等照度曲線の説明図である。この等照度曲線の説明図において、中央の等照度曲線は、高照度を示し、外側の等照度曲線は、低照度を示す。数字の単位は、「m」である。また、
図9、
図10、
図11において、符号「VU−VD」は、スクリーンの上下の垂直線を示す。符号「HL−HR」は、スクリーンの左右の水平線を示す。さらに、
図9、
図10、
図11は、コンピュータシミュレーションにより作図されたスクリーン上の配光パターンを簡略化して示す等光度曲線の説明図である。この等光度曲線の説明図において、中央の等光度曲線は、高光度を示し、外側の等光度曲線は、低光度を示す。さらにまた、
図4、
図5、
図12、
図13、
図14において、レンズおよび光制御部材の断面のハッチングは、省略してある。この明細書において、前、後、上、下、左、右は、この発明にかかる車両用前照灯を車両に搭載した際の前、後、上、下、左、右である。
【0017】
(実施形態1の構成の説明)
図1〜
図13は、この発明にかかる車両用前照灯の実施形態1を示す。以下、この実施形態1にかかる車両用前照灯の構成について説明する。
図1中、符号1は、この実施形態1にかかる車両用前照灯(たとえば、ヘッドランプなど)である。前記車両用前照灯1は、車両Cの前部の左右両端部に搭載されている。
【0018】
(ランプユニットの説明)
前記車両用前照灯1は、
図1〜
図3に示すように、ランプハウジング(図示せず)と、ランプレンズ(図示せず)と、半導体型光源2と、レンズ(固定レンズ)3と、光制御部材(可動レンズ)4と、駆動部材5と、レンズカバー部材6と、軸受部材7と、ベース部材8と、冷却部材9と、を備えるものである。
【0019】
前記半導体型光源2および前記レンズ3および前記光制御部材4および前記駆動部材5および前記レンズカバー部材6および前記軸受部材7および前記ベース部材8および前記冷却部材9は、ランプユニットを構成する。前記ランプハウジングおよび前記ランプレンズは、灯室(図示せず)を画成する。前記ランプユニット2、3、4、5、6、7、8、9は、前記灯室内に配置されていて、かつ、上下方向用光軸調整機構(図示せず)および左右方向用光軸調整機構(図示せず)を介して前記ランプハウジングに取り付けられている。
【0020】
(半導体型光源2の説明)
前記半導体型光源2は、
図1、
図4、
図5、
図12、
図13に示すように、この例では、たとえば、LED、OELまたはOLED(有機EL)などの自発光半導体型光源である。前記半導体型光源2は、発光チップ(LEDチップ)20と、前記発光チップ20を封止樹脂部材で封止したパッケージ(LEDパッケージ)と、前記パッケージを実装した基板21と、前記基板21に取り付けられていて前記発光チップ20に電源(バッテリー)からの電流を供給するコネクタ22と、から構成されている。なお、
図4、
図5、
図12、
図13においては、前記コネクタ22の図示を省略してある。
【0021】
前記基板21は、位置決め孔および位置決めピンなどにより前記ベース部材8の光源取付部80に位置決めされ、かつ、スクリューなどにより、前記ベース部材8の前記光源取付部80に取り付けられている。この結果、前記半導体型光源2は、前記ベース部材8に取り付けられている。
【0022】
前記発光チップ20は、この例では、平面矩形形状(平面長方形状)をなす。すなわち、4個の正方形のチップをX軸方向(水平方向)に配列してなるものである。なお、2個もしくは3個もしくは5個以上の正方形のチップ、あるいは、1個の長方形のチップ、あるいは、1個の正方形のチップ、を使用しても良い。前記発光チップ20の正面この例では長方形の正面が発光面23をなす。前記発光面23は、前記レンズ3の基準光軸(基準軸)Zの前側に向いている。前記発光チップ20の前記発光面23の中心Oは、前記レンズ3の基準焦点Fもしくはその近傍に位置し、かつ、前記レンズ3の基準光軸Z上もしくはその近傍に位置する。
【0023】
図において、X、Y、Zは、直交座標(X−Y−Z直交座標系)を構成する。X軸は、前記発光チップ20の前記発光面23の中心Oを通る左右方向の水平軸であって、この実施形態1において、右側が+方向であり、左側が−方向である。また、Y軸は、前記発光チップ20の前記発光面23の中心Oを通る上下方向の鉛直軸であって、この実施形態1において、上側が+方向であり、下側が−方向である。さらに、Z軸は、前記発光チップ20の前記発光面23の中心Oを通る法線(垂線)、すなわち、前記X軸および前記Y軸と直交する前後方向の軸であって、この実施形態1において、前側が+方向であり、後側が−方向である。
【0024】
(レンズ3の説明)
前記レンズ3は、光透過性部材から構成されている。前記レンズ3は、
図1〜
図5、
図12、
図13に示すように、主レンズ部30と、補助レンズ部(付加レンズ部)31と、取付部32と、から構成されている。なお、
図12における二点鎖線は、前記主レンズ部30と前記補助レンズ部31との境界線を示す。前記取付部32は、前記主レンズ部30の左右両端部に一体に設けられている。前記取付部32は、前記レンズカバー部材6を介して位置決め孔および位置決めピンなどにより前記ベース部材8のレンズ取付部81に位置決めされ、かつ、スクリューなどにより、前記ベース部材8の前記レンズ取付部81に取り付けられている。この結果、前記レンズ3は、前記レンズカバー部材6を介して前記ベース部材8に取り付けられている。前記取付部32は、この例では、前記レンズ3と一体構造であるが、前記レンズ3と別体構造であっても良い。
【0025】
前記レンズ3は、前記半導体型光源2からの光を、
図6(A)に示す第1配光パターンとしてのロービーム用配光パターン(すれ違い用配光パターン)LP、および、
図6(B)、
図11(A)に示す第2配光パターンとしてのハイビーム用配光パターン(走行用配光パターン)HPとして車両Cの前方に照射するものである。前記ロービーム用配光パターンLPは、下水平カットオフラインと、斜めカットオフラインと、上水平カットオフラインとを、有する。前記ハイビーム用配光パターンHPは、中央部にホットゾーン(高光度帯)を有する。
【0026】
(主レンズ部30の説明)
前記主レンズ部30は、
図4、
図5に示すように、前記基準光軸Zおよび前記基準焦点Fを有する。前記主レンズ部30は、前記半導体型光源2から放射される光のうち、中央光L1および周辺光の一部を利用するものである。前記中央光L1は、前記半導体型光源2の半球放射範囲のX軸もしくはY軸から所定の角度(この例では、約40°)以上の範囲の光であって、前記主レンズ部30の中央部に入射する光である。また、前記周辺光は、前記半導体型光源2の半球放射範囲のX軸もしくはY軸から所定の角度(この例では、約40°)以下の範囲の光である。前記周辺光の一部は、前記周辺光のうち前記主レンズ部30の周辺部に入射する光である。前記主レンズ部30は、この例では、前記半導体型光源2からの光を透過させる透過タイプのレンズ部である。
【0027】
前記主レンズ部30は、前記半導体型光源2からの光(前記中央光L1および前記周辺光の一部)を主配光パターン(基本配光パターン)、この実施形態1においては、ロービーム用配光パターンLPの主配光パターン、および、ハイビーム用配光パターンHPの主配光パターン、として車両Cの前方に照射する。すなわち、前記主レンズ部30は、前記半導体型光源2からの直接入射した光(前記中央光L1および前記周辺光の一部)を前記ロービーム用配光パターンLPの主配光パターンとして車両Cの前方に照射し、かつ、前記半導体型光源2から前記光制御部材4を透過した光(前記中央光L1)および前記半導体型光源2からの直接入射した光(前記周辺光の一部)を前記ハイビーム用配光パターンHPの主配光パターンとして車両Cの前方に照射する。
【0028】
前記主レンズ部30は、前記半導体型光源2からの光が前記主レンズ部30中に入射する入射面300と、前記主レンズ部30中に入射した光が出射する出射面301と、から構成されている。前記主レンズ部30の前記入射面300は、自由曲面あるいは複合2次曲面から構成されている。前記主レンズ部30の前記出射面301は、前記半導体型光源2と反対側に突出した凸形状をなし、自由曲面あるいは複合2次曲面から構成されている。
【0029】
(補助レンズ部31の説明)
前記補助レンズ部31は、
図4、
図5に示すように、前記主レンズ部30の周辺この実施形態1においては下辺(下側)に設けられている。この結果、
図12に示すように、前記半導体型光源2と、前記レンズ3の上部との間には、開口部(上部開口部WU)が形成されている。
【0030】
前記補助レンズ部31は、前記半導体型光源2から放射される光のうち、周辺光の他の一部L2を有効利用するものである。前記周辺光の他の一部L2は、前記周辺光のうち前記補助レンズ部31に入射する光である。前記補助レンズ部31は、この例では、前記周辺光の他の一部L2を全反射させる全反射タイプのレンズ部である。前記補助レンズ部31は、前記主レンズ部30と一体のものである。
【0031】
前記補助レンズ部31は、前記周辺光の他の一部L2を補助配光パターン、この実施形態1においては、ロービーム用配光パターンLPの補助配光パターン、および、ハイビーム用配光パターンHPの補助配光パターン、として車両Cの前方に照射する。すなわち、前記補助レンズ部31は、前記半導体型光源2から前記光制御部材4を透過した光(前記周辺光の他の一部L2)を前記ロービーム用配光パターンLPの補助配光パターンとして車両Cの前方に照射し、かつ、前記半導体型光源2からの直接入射した光(前記周辺光の他の一部L2)を前記ハイビーム用配光パターンHPの補助配光パターンとして車両Cの前方に照射する。
【0032】
前記補助レンズ部31は、前記周辺光の他の一部L2が前記補助レンズ部31中に入射する入射面310と、前記入射面310から前記補助レンズ部31中に入射した光が反射する反射面311と、前記反射面311で反射した反射光が前記補助レンズ部31中から外部に出射する出射面312と、から構成されている。前記入射面310および前記反射面311および前記出射面312は、それぞれ自由曲面あるいは複合2次曲面から構成されている。
【0033】
(光制御部材4の説明)
前記光制御部材4は、中央側の部分の可変焦点レンズ部40と、左右両側の部分の取付部41と、を備える。前記可変焦点レンズ部40と前記取付部41とは、光透過部材から構成されていて、一体構造をなす。前記取付部41は、前記軸受部材7を介して前記ベース部材8に位置決めされて取り付けられている。この結果、前記光制御部材4は、前記軸受部材7を介して前記ベース部材8に、第1位置と第2位置との間を回転可能に取り付けられている。前記光制御部材4の回転中心O1は、前記発光面23の中心Oよりも、後側でかつ下側に位置する。
【0034】
前記光制御部材4は、前記駆動部材5により前記第1位置と前記第2位置とに移動(回転)切替可能に構成されている。前記第1位置は、
図4に示すように、前記可変焦点レンズ部40が前記半導体型光源2の前記発光面23と、前記補助レンズ部31の前記入射面310との間に位置する位置である。前記第2位置は、
図5に示すように、前記可変焦点レンズ部40が前記半導体型光源2の前記発光面23と、前記主レンズ部30の前記入射面300の前記中央光L1が入射する中央部との間に位置する位置である。
【0035】
前記第1位置に位置する前記光制御部材4の前記可変焦点レンズ部40と前記レンズ3の前記補助レンズ部31とは、
図4、
図12、
図13に示すように、一部(大部分)が上下において重なる。この結果、
図12に示すように、前記半導体型光源2と、前記レンズ3の下部および前記光制御部材4との間には、若干の開口部(下部開口部WD)が形成されている。
【0036】
(可変焦点レンズ部40の説明)
前記可変焦点レンズ部40は、前記第1位置に位置するときには、
図4に示すように、前記周辺光の他の一部L2を透過させて前記補助レンズ部31中に入射させる。この結果、前記ロービーム用配光パターンLPの補助配光パターンが前記補助レンズ部31の前記出射面312から車両Cの前方に照射される。
【0037】
前記可変焦点レンズ部40は、前記第2位置に位置するときには、
図5に示すように、前記中央光L1を透過させて前記主レンズ部30の中央部中に入射させる。この結果、前記ハイビーム用配光パターンHPの主配光パターンの一部の可変配光パターンHPM(
図10(A)参照)が前記主レンズ部30の前記出射面301の中央部から車両Cの前方に照射される。
【0038】
前記可変焦点レンズ部40は、
図1、
図4、
図5に示すように、入射面400が凹形状をなし、かつ、出射面401が凸形状をなすものである。前記入射面400は、前記可変焦点レンズ部40の光軸(光出射軸)方向に凹形状をなす。すなわち、前記入射面400は、前記半導体型光源2の前記発光面23に対して前記可変焦点レンズ部40の内側に凹形状をなす。前記出射面401は、前記可変焦点レンズ部40の光軸(光出射軸)方向に凸形状をなす。すなわち、前記出射面401は、前記半導体型光源2の前記発光面23に対して前記可変焦点レンズ部40の外側に凸形状をなす。
【0039】
前記可変焦点レンズ部40は、前記補助レンズ部31の焦点を変化させるものである。すなわち、前記第1位置に位置するときの前記補助レンズ部31の焦点(疑似焦点)F1を、前記第2位置に位置するときの前記補助レンズ部31の焦点Fに対して、上側かつ右側に変位させるものである。なお、前記疑似焦点F1の上側の変位は、
図4、
図12に示すが、右側の変位は、図示しない。前記疑似焦点F1は、前記可変焦点レンズ部40を通した前記補助レンズ部31の疑似焦点である。
【0040】
前記可変焦点レンズ部40は、水平断面において、対向車線側この例では右側から走行車線側この例では左側にかけて徐々に前記入射面400と前記出射面401との間の距離が近くなる。すなわち、前記可変焦点レンズ部40の右側端部の前記入射面400と前記出射面401との間の距離は長く、前記可変焦点レンズ部40の左側端部の前記入射面400と前記出射面401との間の距離は短い。
【0041】
前記可変焦点レンズ部40は、鉛直断面において、上側から下側にかけて徐々に前記入射面400と前記出射面401との間の距離が近くなる。すなわち、前記可変焦点レンズ部40の上側端部の前記入射面400と前記出射面401との間の距離は長く、前記可変焦点レンズ部40の下側端部の前記入射面400と前記出射面401との間の距離は短い。なお、鉛直断面において、上側の前記入射面400と前記出射面401との間の距離と、下側の前記入射面400と前記出射面401との間の距離とは、変わらない場合がある。
【0042】
前記光制御部材4が
図4に示す前記第1位置に位置するとき、前記光制御部材4の前記可変焦点レンズ部40のうち前記主レンズ部30側に位置する部分40Uは、
図7中に示す上の二点鎖線よりも上側の部分である。前記光制御部材4が
図4に示す前記第1位置に位置するとき、前記光制御部材4の前記可変焦点レンズ部40のうち前記主レンズ部30側に位置する部分40Uと反対側の部分40Dは、
図7中に示す下の二点鎖線よりも下側の部分である。前記可変焦点レンズ部40のうち中間部分40Cは、
図7中に示す上の二点鎖線と下の二点鎖線との間の部分である。
【0043】
前記可変焦点レンズ部40の前記上側の部分40Uは、前記主レンズ部30の前記基準焦点Fを下側(
図8中のF40U参照)に連続的に変位させるものである。前記可変焦点レンズ部40の前記中間部分40Cは、前記主レンズ部30の前記基準焦点Fを上側(
図8中のF40C参照)に連続的に変位させるものである。前記可変焦点レンズ部40の前記下側の部分40Dは、前記主レンズ部30の前記基準焦点Fを上側(
図8中のF40D参照)に、前記中間部分40Cよりも大きく、連続的に変位させるものである。
【0044】
すなわち、前記光制御部材4の前記可変焦点レンズ部40の上側の部分40Uの焦点F40Uは、他の部分の焦点(前記中間部分40Cの焦点F40C、前記下側の部分40Dの焦点F40D)に対して下側に変位している。反対に、前記光制御部材4の前記可変焦点レンズ部40の下側の部分40Dの焦点F40Dは、他の部分の焦点(前記中間部分40Cの焦点F40C、前記上側の部分40Uの焦点F40U)に対して上側に変位している。前記光制御部材4の前記可変焦点レンズ部40の前記中間部分40Cの焦点F40Cは、上下両側において変位していない。
【0045】
(駆動部材5の説明)
前記駆動部材5は、
図1、
図2に示すように、前記光制御部材4を前記第1位置と前記第2位置とに移動(回転、回動)切替可能に位置させるものである。前記駆動部材5は、ソレノイド50と、連結ピン51と、スプリング52と、から構成されている。
【0046】
前記ソレノイド50には、取付部53が一体に設けられている。前記取付部53は、位置決め孔および位置決めピンなどにより前記ベース部材8のベース取付部82の背面側に位置決めされ、かつ、スクリューなどにより、前記ベース部材8の前記ベース取付部82の背面側に取り付けられている。この結果、前記駆動部材5の前記ソレノイド50は、前記ベース部材8に取り付けられている。前記ソレノイド50は、進退ロッド54を有する。
【0047】
前記連結ピン51の一端は、前記進退ロッド54の先端に固定されている。前記連結ピン51の他端は、前記光制御部材4の前記取付部41に設けられている長孔42中に挿入されている。この結果、前記ソレノイド50の前記進退ロッド54の進退運動が前記連結ピン51および前記長孔42を介して前記光制御部材4の回転運動に変換される。
【0048】
前記スプリング52は、前記軸受部材7に取り付けられている。前記スプリング52の一端は、前記軸受部材7に弾性当接している。前記スプリング52の他端は、前記光制御部材4に弾性当接している。この結果、通常時すなわち前記ソレノイド50が非通電時においては、前記スプリング52の力により、前記光制御部材4は、前記第1位置に位置する。前記ソレノイド50に通電すると、前記スプリング52の力に抗して前進位置に位置する前記進退ロッド54が後退して、前記光制御部材4は、前記第1位置から前記第2位置に回転して前記第2位置に位置する。前記ソレノイド50への通電を遮断すると、前記スプリング52の力により、後退位置に位置する前記進退ロッド54が前進して、前記光制御部材4は、前記第2位置から前記第1位置に回転して前記第1位置に位置する。
【0049】
(レンズカバー部材6の説明)
前記レンズカバー部材6は、
図1〜
図3に示すように、前記レンズ3を覆う形状をなす。前記レンズカバー部材6は、たとえば、光不透過性の部材から構成されている。前記レンズカバー部材6の中央部には、前記半導体型光源2からの光を前記レンズ3の前記主レンズ部30および前記補助レンズ部31に通す開口部60が設けられている。前記レンズカバー部材6の左右両端部には、取付部61が一体に設けられている。前記取付部61は、前記レンズ3の前記取付部32と共に、位置決め孔および位置決めピンなどにより前記ベース部材8の前記レンズ取付部81に位置決めされ、かつ、スクリューなどにより、前記ベース部材8の前記レンズ取付部81に取り付けられている。この結果、前記レンズカバー部材6は、前記レンズ3と共に前記ベース部材8に取り付けられている。
【0050】
(軸受部材7の説明)
前記軸受部材7は、
図1、
図2に示すように、前記半導体型光源2および前記ベース部材8の前記光源取付部80を覆う形状をなす。前記軸受部材7は、たとえば、光不透過性の部材から構成されている。前記軸受部材7の中央部には、前記半導体型光源2からの光を前記レンズ3の前記主レンズ部30および前記補助レンズ部31、前記光制御部材4の前記可変焦点レンズ部40に通す開口部70が設けられている。前記軸受部材7の4角部には、取付部71が一体に設けられている。前記取付部71は、位置決め孔および位置決めピンなどにより前記ベース部材8の前記ベース取付部82の正面側に位置決めされ、かつ、スクリューなどにより、前記ベース部材8の前記ベース取付部82の正面側に取り付けられている。この結果、前記軸受部材7は、前記ベース部材8に取り付けられている。
【0051】
前記軸受部材7の左右両側の中央部には、軸部72がそれぞれ一体に設けられている。前記軸部72には、前記光制御部材4の前記取付部41に設けられている回転孔43が回転可能に軸受されている。この結果、前記軸受部材7には、前記光制御部材4が前記第1位置と前記第2位置との間を回転可能に取り付けられている。
【0052】
前記軸受部材7と前記光制御部材4とには、それぞれストッパ73、44が一体に設けられている。これにより、前記光制御部材4を前記第1位置と前記第2位置とに位置させることができる。
【0053】
(ベース部材8の説明)
前記ベース部材8は、
図1〜
図3に示すように、前記ベース取付部82と、前記ベース取付部82の正面側の中央部の前記光源取付部80と、前記ベース取付部82の正面側の左右両端部の前記レンズ取付部81と、から構成されている。前記光源取付部80には、前記半導体型光源2が取り付けられている。前記レンズ取付部81には、前記レンズ3が前記レンズカバー部材6を介して取り付けられている。前記ベース取付部82の正面側には、前記光制御部材4が前記第1位置と前記第2位置との間を回転可能に軸受されている前記軸受部材7が取り付けられている。前記ベース取付部82の背面側には、前記駆動部材5および前記冷却部材9がそれぞれ取り付けられている。
【0054】
(冷却部材9の説明)
前記冷却部材9は、
図1、
図2に示すように、冷却ファンを有する。前記冷却部材9は、前記ベース部材8の前記ベース取付部82の背面側に位置決めされ、かつ、スクリューなどにより、前記ベース部材8の前記ベース取付部82の背面側に取り付けられている。この結果、前記冷却部材9は、前記ベース部材8に取り付けられている。
【0055】
(実施形態1の作用の説明)
この実施形態1にかかる車両用前照灯1は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。
【0056】
通常時すなわちソレノイド50が非通電時においては、スプリング52のスプリング力により、進退ロッド54が前進位置に位置していて光制御部材4が第1位置に位置する。このとき、光制御部材4の可変焦点レンズ部40は、
図4に示すように、半導体型光源2の発光面23とレンズ3の補助レンズ部31の入射面310との間に位置している。
【0057】
この通常時において、半導体型光源2の発光チップ20を点灯する。すると、発光チップ20の発光面23から放射される光のうち、半導体型光源2の中央光L1および周辺光の一部は、
図4に示すように、直接、レンズ3の主レンズ部30の入射面300から主レンズ部30中に入射する。このとき、入射光は、入射面300において配光制御される。主レンズ部30中に入射した入射光は、主レンズ部30の出射面301から出射する。このとき、出射光は、出射面301において配光制御される。主レンズ部30からの出射光は、下水平カットオフラインと、斜めカットオフラインと、上水平カットオフラインとを、有するロービーム用配光パターンLPの主配光パターンとして、車両Cの前方に照射される。
【0058】
一方、発光チップ20の発光面23から放射される光のうち、半導体型光源2の周辺光の他の一部L2は、
図4に示すように、光制御部材4の可変焦点レンズ部40の入射面400から可変焦点レンズ部40中に入射する。このとき、入射光は、入射面400において配光制御される。可変焦点レンズ部40中に入射した入射光は、可変焦点レンズ部40の出射面401から出射する。このとき、出射光は、出射面401において配光制御される。
【0059】
可変焦点レンズ部40からの出射光は、補助レンズ部31の入射面310から補助レンズ部31中に入射する。このとき、入射光は、入射面310において配光制御される。補助レンズ部31中に入射した入射光は、補助レンズ部31の反射面311で全反射する。このとき、反射光は、反射面311において配光制御される。全反射した反射光は、出射面312から出射する。このとき、出射光は、出射面312において配光制御される。補助レンズ部31からの出射光は、ロービーム用配光パターンLPの補助配光パターンとして、車両Cの前方に照射される。
【0060】
そして、前記の主配光パターンと、前記の補助配光パターンとが合成(重畳)されて、
図6(A)に示すロービーム用配光パターンLPが得られる。
【0061】
このとき、可変焦点レンズ部40の上側の部分40Uの焦点F40U、すなわち、可変焦点レンズ部40のうち主レンズ部30の基準光軸Z側となる上側の部分40Uの焦点F40Uは、中間部分40Cの焦点F40C(および下側の部分40Dの焦点F40D)に対して下側に変位している。
【0062】
このために、
図4に示すように、可変焦点レンズ部40の上側の部分40Uから出射される出射光L3は、下向きの出射光となる。このために、可変焦点レンズ部40の上側の部分40Uから出射される出射光L3が、補助レンズ部31ではなく主レンズ部30に入射しても、主レンズ部30から出射する出射光L4が、下向きとなる。この下向きの出射光L4は、ロービーム用配光パターンLPの一部となる。
【0063】
それから、ソレノイド50に通電する。すると、進退ロッド54がスプリング52のスプリング力に抗して後退して後退位置に位置していて、光制御部材4が第1位置から第2位置に向かって回転して第2位置に位置する。すなわち、今まで半導体型光源2と補助レンズ部31との間に位置している光制御部材4は、
図5に示すように、半導体型光源2の発光面23とレンズ3の主レンズ部30の入射面300との間に位置する。
【0064】
そして、発光チップ20の発光面23から放射される光のうち、半導体型光源2の中央光L1は、光制御部材4の可変焦点レンズ部40の入射面400から可変焦点レンズ部40中に入射する。このとき、入射光は、入射面400において配光制御される。可変焦点レンズ部40中に入射した入射光は、可変焦点レンズ部40の出射面401から出射する。このとき、出射光は、出射面401において配光制御される。
【0065】
可変焦点レンズ部40からの出射光は、主レンズ部30の入射面300から主レンズ部30中に入射する。また、半導体型光源2の周辺光の一部は、直接、主レンズ部30の入射面300から主レンズ部30中に入射する。このとき、入射光は、入射面300において配光制御される。主レンズ部30中に入射した入射光は、主レンズ部30の出射面301から出射する。このとき、出射光は、出射面301において配光制御される。主レンズ部30からの出射光は、ハイビーム用配光パターンHPの主配光パターンとして、車両Cの前方に照射される。
【0066】
一方、発光チップ20の発光面23から放射される光のうち、半導体型光源2の周辺光の他の一部L2は、
図5に示すように、直接、補助レンズ部31の入射面310から補助レンズ部31中に入射する。このとき、入射光は、入射面310において配光制御される。補助レンズ部31中に入射した入射光は、補助レンズ部31の反射面311で全反射する。このとき、反射光は、反射面311において配光制御される。全反射した反射光は、出射面312から出射する。このとき、出射光は、出射面312において配光制御される。補助レンズ部31からの出射光は、ハイビーム用配光パターンHPの補助配光パターンとして、車両Cの前方に照射される。
【0067】
そして、前記の主配光パターンと、前記の補助配光パターンとが合成(重畳)されて、
図6(B)に示すハイビーム用配光パターンHPが得られる。
【0068】
ここで、可変焦点レンズ部40の上側の部分40Uの焦点F40Uは、中間部分40Cの焦点F40C(および下側の部分40Dの焦点F40D)に対して下側に変位している。このために、可変焦点レンズ部40の上側の部分40Uから出射される出射光は、下向きの出射光となる。これにより、可変焦点レンズ部40の上側の部分40Uから出射された下向きの出射光が主レンズ部30を透過して下方に偏向される。この結果、可変焦点レンズ部40の上側の部分40Uおよび主レンズ部30から照射される第1可変配光パターンHPM1は、
図9(A)に示すように、下側に拡散されている(下側に暈されている)。
【0069】
反対に、可変焦点レンズ部40の下側の部分40Dの焦点F40Dは、中間部分40Cの焦点F40C(および上側の部分40Uの焦点F40U)に対して上側に変位している。このために、可変焦点レンズ部40の下側の部分40Dから出射される出射光は、上向きの出射光となる。これにより、可変焦点レンズ部40の下側の部分40Dから出射された上向きの出射光が主レンズ部30を透過して上方に偏向される。この結果、可変焦点レンズ部40の下側の部分40Dおよび主レンズ部30から照射される第3可変配光パターンHPM3は、
図9(C)に示すように、上側に拡散されている(上側に暈されている)。
【0070】
可変焦点レンズ部40の中間部分40Cの焦点F40Cは、変位していない。このために、可変焦点レンズ部40の中間部分40Cから出射される出射光は、そのままの向きの出射光となる。これにより、可変焦点レンズ部40の中間部分40Cから出射されたそのままの向きの出射光が主レンズ部30をそのままの向きで透過する。この結果、可変焦点レンズ部40の中間部分40Cおよび主レンズ部30から照射される第2可変配光パターンHPM2は、
図9(B)に示すように、上下側に拡散されていない(上下側に暈されていない)。
【0071】
前記の第1可変配光パターンHPM1と、前記の第2可変配光パターンHPM2と、前記の第3可変配光パターンHPM3とが合成(重畳)されて、
図10(A)に示す可変配光パターンHPMが得られる。なお、
図10(B)に示す可変配光パターンHPMAは、焦点が変位されておらず固定されている可変焦点レンズ部を使用した場合において得られる可変配光パターンである。このように、
図10(A)に示す可変配光パターンHPMは、
図10(B)に示す可変配光パターンHPMAに対して、上下両側に拡散されている(上下両側に暈されている)。すなわち、
図10(A)に示す可変配光パターンHPMは、上下両側に十分な光が配されている。
【0072】
そして、
図10(A)に示す可変配光パターンHPMと、図示されていない固定配光パターンとが合成(重畳)されて、
図11(A)に示すハイビーム用配光パターンHPが得られる。なお、
図11(B)に示すハイビーム用配光パターンHPAは、
図10(B)に示す可変配光パターンHPMAと、図示されていない固定配光パターンとが合成(重畳)されて得られるハイビーム用配光パターンである。固定配光パターンは、
図11(A)に示すハイビーム用配光パターンHPから
図10(A)に示す可変配光パターンHPMを除いた配光パターンである。すなわち、固定配光パターンは、可変焦点レンズ部40および主レンズ部30から照射される可変配光パターンHPM以外の配光パターンであって、可変焦点レンズ部40を通らずに主レンズ部30から照射される固定配光パターンと、補助レンズ部31から照射される固定配光パターンとを合成(重畳)してなる固定配光パターンである。
【0073】
ここで、
図10(B)に示す可変配光パターンHPMAは、上下両側に十分な光が配されていない。このために、
図11(B)に示すハイビーム用配光パターンHPAにおいて、上方部の光が不足する(
図11(B)中の矢印参照)。このために、交通標識(オーバーヘッドサイン)や立木や人などの視認性において課題がある。一方、下方部の光が不足して、配光の一部(
図11(B)中の小円参照)が抜けて、可変配光パターンHPMAと固定配光パターンとの間において配光の割れが発生して、車両の手前側から側方の視認性において課題がある。
【0074】
これに対して、
図10(A)に示す可変配光パターンHPMは、上下両側に十分な光が配されている。このために、
図11(A)に示すハイビーム用配光パターンHPにおいて、上方部の光が十分となる(
図11(A)中の矢印参照)。このために、交通標識(オーバーヘッドサイン)や立木や人などの視認性が向上される。一方、下方部の光も十分となり、配光の一部(
図11(A)中の小円参照)の抜けが防止されて、可変配光パターンHPMと固定配光パターンとの間において配光の割れがなくなり、車両の手前側から側方の視認性が向上される。
【0075】
それから、ソレノイド50への通電を遮断する。すると、進退ロッド54がスプリング52のスプリング力により前進して前進位置に位置していて、光制御部材4が第2位置から第1位置に向かって回転して第1位置に位置する。すなわち、今まで半導体型光源2と主レンズ部30との間に位置していた光制御部材4は、半導体型光源2と補助レンズ部31との間に位置する。
【0076】
(実施形態1の効果の説明)
この実施形態1にかかる車両用前照灯1は、以上のごとき構成および作用からなり、以下、その効果について説明する。
【0077】
この実施形態1にかかる車両用前照灯1は、光制御部材4の可変焦点レンズ部40の上側の部分40Uの焦点F40Uが他の部分40C、40Dの焦点F40C、F40Uに対して下側に変位している。このために、
図5に示すように、光制御部材4が第2位置に位置するときには、光制御部材4の可変焦点レンズ部40の上側の部分40Uから出射される出射光は、下向きの出射光となる。一方、光制御部材4の可変焦点レンズ部40の下側の部分40Dの焦点が他の部分40C、40Uの焦点F40C、F40Uに対して上側に変位している。このために、
図5に示すように、光制御部材4が第2位置に位置するときには、光制御部材4の可変焦点レンズ部40の下側の部分40Dから出射される出射光は、上向きの出射光となる。これにより、光制御部材4の可変焦点レンズ部40から出射された上向きの出射光がレンズ3の主レンズ部30を透過して上方に偏向され、一方、光制御部材4の可変焦点レンズ部40から出射された下向きの出射光がレンズ3の主レンズ部30を透過して下方に偏向される。この結果、ハイビーム用配光パターンHPの上方部の光が十分となり、交通標識(オーバーヘッドサイン)や立木や人などの視認性を向上させることができる。また、ハイビーム用配光パターンHPの下方部の光が十分となり、配光の一部の抜けを防止して、配光の割れをなくして配光の連続性が改善されて、車両の手前側から側方の視認性を向上させることができる。このように、良好なハイビーム用配光パターンが得られる。
【0078】
この実施形態1にかかる車両用前照灯1は、可変焦点レンズ部40の中間部分40Cの焦点F40Cは、上下両側において変位していない。このために、可変焦点レンズ部40の中間部分40Cから出射される出射光は、そのままの向きの出射光となる。これにより、可変焦点レンズ部40の中間部分40Cから出射されたそのままの向きの出射光が主レンズ部30をそのままの向きで透過する。この結果、可変焦点レンズ部40の中間部分40Cおよび主レンズ部30から照射される第2可変配光パターンHPM2は、
図9(B)に示すように、上下側に拡散されていない(上下側に暈されていない)。これにより、ハイビーム用配光パターンHPの中央部においてホットゾーン(高光度帯)HZが得られ、遠方の視認性が確保される。
【0079】
この実施形態1にかかる車両用前照灯1は、光制御部材4の可変焦点レンズ部40のうち主レンズ部30の基準光軸Z側となる上側の部分40Uの焦点F40Uが、他の部分である下側の部分40Dの焦点F40Dに対して下側に変位している。このために、
図4に示すように、光制御部材4が第1位置に位置するときには、可変焦点レンズ部40の上側の部分40Uから出射される出射光L3が、下向きの出射光となる。このために、可変焦点レンズ部40の上側の部分40Uから出射される出射光L3が、補助レンズ部31ではなく主レンズ部30に入射しても、主レンズ部30から出射する出射光L4が、下向きとなる。この下向きの出射光L4は、ロービーム用配光パターンLPの一部となる。この結果、迷光の発生を防ぐことができる。
【0080】
ここで、可変焦点レンズ部40の上側の部分40Uの焦点が、下側の部分40Dの焦点に対して、変位していない、もしくは、上側に変位している場合について説明する。この場合においては、可変焦点レンズ部40の上側の部分40Uから出射される出射光が、下向きの出射光とはならない。このために、可変焦点レンズ部40の上側の部分40Uから出射される出射光が、主レンズ部30に入射すると、主レンズ部30から出射する出射光L5が、上向きとなる場合(
図4中の破線矢印参照)がある。この結果、迷光の発生を防ぐことができない。これに対して、この実施形態1にかかる車両用前照灯1は、前記の通り、迷光の発生を防ぐことができる。
【0081】
この実施形態1にかかる車両用前照灯1は、光制御部材4が第1位置に位置するときには、半導体型光源2からの光の一部(中央光L1および周辺光の一部)が直接レンズ3の主レンズ部30に入射し、かつ、半導体型光源2からの光の残り(周辺光の他の一部L2)が光制御部材4を介してレンズ3の補助レンズ部31に入射し、そのレンズ3からロービーム用配光パターンLPを車両Cの前方に照射する。また、光制御部材4が第2位置に位置するときには、半導体型光源2からの光の一部(中央光L1)が光制御部材4を介してレンズ3の主レンズ部30に入射し、また、半導体型光源2からの光の一部(周辺光の一部)が直接レンズ3の主レンズ部30に入射し、かつ、半導体型光源2からの光の残り(周辺光の他の一部L2)が直接レンズ3の補助レンズ部31に入射し、そのレンズ3からハイビーム用配光パターンHPを車両Cの前方に照射する。この結果、レンズ直射型のランプユニットにおいて、ロービーム用配光パターンLP、ハイビーム用配光パターンHPが確実に得られる。
【0082】
この実施形態1にかかる車両用前照灯1は、光制御部材4が第1位置に位置するときには、半導体型光源2からの光の一部(中央光L1および周辺光の一部)が直接主レンズ部30に入射し、かつ、半導体型光源2からの光の残り(周辺光の他の一部L2)が光制御部材4を介して補助レンズ部31に入射するので、半導体型光源2からの光(中央光L1および周辺光の一部、周辺光の他の一部L2)を有効に利用することができる。また、光制御部材4が第2位置に位置するときには、半導体型光源2からの光の一部(中央光L1)が光制御部材4を介して主レンズ部30に入射し、また、半導体型光源2からの光の一部(周辺光の一部)が直接主レンズ部30に入射し、かつ、半導体型光源2からの光の残り(周辺光の他の一部L2)が直接補助レンズ部31に入射するので、半導体型光源2からの光(中央光L1および周辺光の一部、周辺光の他の一部L2)を有効に利用することができる。
【0083】
この実施形態1にかかる車両用前照灯1は、一部品の光制御部材4を駆動部材5により第1位置と第2位置とに移動切替するものである。このために、光制御部材4の第1位置および第2位置の位置精度を向上させることができる。しかも、駆動部材5が安価な低出力のもの、たとえば、低出力のソレノイド50および小さいばね荷重のスプリング52で良いので製造コストを安価にすることができる。
【0084】
この実施形態1にかかる車両用前照灯1は、光制御部材4が、駆動部材5により第1位置と第2位置との間を回転し、光制御部材4の回転中心O1が、半導体型光源2の発光面23よりも後側に位置する。このために、
図13に示すように、光制御部材4の回転角度θ1を、発光面23の中心Oを光制御部材4の回転中心とした場合の回転角度θ2と比較して、小さくすることができる。これにより、駆動部材5を小型化および低出力化することができるので、ユニットの小型化および低コスト化を図ることができる。
【0085】
この実施形態1にかかる車両用前照灯1は、補助レンズ部31が、主レンズ部30に対して下側に配置されている。このために、駆動部材5の非駆動時において、光制御部材4を第1位置に位置させると、光制御部材4を下側すなわち重力方向に停止させることができる。これにより、駆動部材5が安価な低出力のもの、たとえば、低出力のソレノイド50および小さいばね荷重のスプリング52で良いので製造コストを安価にすることができる。
【0086】
この実施形態1にかかる車両用前照灯1は、第1位置に位置する光制御部材4と補助レンズ部31とが、一部が上下において重なる。このために、
図12に示すように、光制御部材4と補助レンズ部31とを下側に位置させると、上部に大きな上部開口部WUが得られると共に、下部に若干の下部開口部WDが形成される。これにより、
図12中の実線矢印Aに示すように、下部開口部WDから上部開口部WUへの熱対流が発生する。この結果、半導体型光源2において発生する熱(LED放射熱)を、
図12中の実線矢印Bに示すように、熱対流に沿って上部開口部WUから外部に逃がすことができ、放熱効果を向上させることができる。
【0087】
(実施形態2の構成作用効果の説明)
図14は、この発明にかかる車両用前照灯の実施形態2を示す。以下、この実施形態2にかかる車両用前照灯について説明する。図中、
図1〜
図13と同符号は、同一のものを示す。
【0088】
前記の実施形態1の車両用前照灯1は、補助レンズ部31を主レンズ部30に対して下側に位置させ、かつ、光制御部材4の第1位置を下側にしたものであって、光制御部材4の可変焦点レンズ部40の上側の部分40Uの焦点F40Uを下側に変位させ、かつ、光制御部材4の可変焦点レンズ部40の下側の部分40Dの焦点F40Dを上側に変位させるものである。これに対して、この実施形態2にかかる車両用前照灯は、補助レンズ部31を主レンズ部30に対して上側に位置させ、かつ、光制御部材4の第1位置を上側にしたものであって、光制御部材4の可変焦点レンズ部40の上側の部分40Uの焦点F40Uを上側に変位させ、かつ、光制御部材4の可変焦点レンズ部40の下側の部分40Dの焦点F40Dを下側に変位させるものである。
【0089】
この実施形態2にかかる車両用前照灯は、以上のごとき構成作用からなるので、前記の実施形態1の車両用前照灯1の効果とほぼ同様の効果を達成することができる。
【0090】
(実施形態1、2以外の例の説明)
この実施形態1、2においては、車両Cが左側通行の場合の車両用前照灯1について説明するものである。ところが、この発明においては、車両Cが右側通行の場合の車両用前照灯にも適用することができる。
【0091】
また、この実施形態1、2においては、レンズ3の主レンズ部30と補助レンズ部31とが一体である。ところが、この発明においては、レンズ3の主レンズ部30と補助レンズ部31とが別体のものであっても良い。
【0092】
さらに、この実施形態1、2においては、光制御部材4を第1位置と第2位置との間を回転させるものである。ところが、この発明においては、光制御部材4を第1位置と第2位置との間をスライドさせるものであっても良い。この場合においては、回転軸の代わりに、スライド手段を設ける。
【0093】
さらにまた、この実施形態1、2においては、駆動部材5としてソレノイド50を使用するものである。ところが、この発明においては、駆動部材5としてソレノイド50以外の部材、たとえば、モータなどを使用しても良い。この場合においては、モータと光制御部材4との間に駆動力伝達機構を設ける。
【0094】
さらにまた、この実施形態1、2においては、レンズ3の補助レンズ部31が全反射タイプのレンズ部である。ところが、この発明においては、レンズ3の補助レンズ部が全反射タイプのレンズ部以外のレンズ部、たとえば、屈折タイプのレンズ部やフレネルタイプのレンズ部であっても良い。
【0095】
さらにまた、この実施形態1においては、補助レンズ部31を主レンズ部30に対して下側に位置させ、かつ、光制御部材4の第1位置を下側にしたものであって、可変焦点レンズ部40の上側の部分40Uの焦点F40Uを下側に変位させ、かつ、可変焦点レンズ部40の下側の部分40Dの焦点F40Dを上側に変位させるものである。ところが、この発明においては、補助レンズ部31を主レンズ部30に対して下側に位置させ、かつ、光制御部材4の第1位置を下側にしたものであって、可変焦点レンズ部40の上側の部分40Uの焦点F40Uを上側に変位させ、かつ、可変焦点レンズ部40の下側の部分40Dの焦点F40Dを下側に変位させるものであっても良い。
【0096】
さらにまた、この実施形態2においては、補助レンズ部31を主レンズ部30に対して上側に位置させ、かつ、光制御部材4の第1位置を上側にしたものであって、可変焦点レンズ部40の上側の部分40Uの焦点F40Uを上側に変位させ、かつ、可変焦点レンズ部40の下側の部分40Dの焦点F40Dを下側に変位させるものである。ところが、この発明においては、補助レンズ部31を主レンズ部30に対して上側に位置させ、かつ、光制御部材4の第1位置を上側にしたものであって、可変焦点レンズ部40の上側の部分40Uの焦点F40Uを下側に変位させ、かつ、可変焦点レンズ部40の下側の部分40Dの焦点F40Dを上側に変位させるものであっても良い。
【0097】
さらにまた、この実施形態1、2においては、第1配光パターンがロービーム用配光パターンLPであり、第2配光パターンがハイビーム用配光パターンHPである。ところが、この発明においては、第1配光パターンとして、ロービーム用配光パターンLP以外の配光パターン、たとえば、AFSやADBなどにおいて、スクリーンの左右の水平線HL−HRよりも下方に照射される配光パターンであっても良いし、また、第2配光パターンとして、ハイビーム用配光パターンHP以外の配光パターン、たとえば、AFSやADBなどにおいて、スクリーンの左右の水平線HL−HRよりも上方に照射される配光パターンであっても良い。