特許第6209859号(P6209859)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6209859
(24)【登録日】2017年9月22日
(45)【発行日】2017年10月11日
(54)【発明の名称】ゴルフクラブ
(51)【国際特許分類】
   A63B 53/10 20150101AFI20171002BHJP
   A63B 53/00 20150101ALI20171002BHJP
【FI】
   A63B53/10 Z
   A63B53/00 B
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-105493(P2013-105493)
(22)【出願日】2013年5月17日
(65)【公開番号】特開2014-226166(P2014-226166A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2016年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111763
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 隆
(72)【発明者】
【氏名】寺田 隆洋
【審査官】 宮本 昭彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−225485(JP,A)
【文献】 特開2013−048893(JP,A)
【文献】 実開昭62−005411(JP,U)
【文献】 特開2001−218343(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0124409(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/00 − 53/14
A63B 69/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトのグリップ側端部からヘッド側端部までの区間を収容する中空の環状の被覆材を有し、前記被覆材の一部が前記シャフトに固定されていることを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項2】
前記被覆材は、前記シャフトの長手方向に沿って、剛性の異なる区間を有することを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブ。
【請求項3】
前記被覆材は、前記ヘッド側端部と前記グリップ側端部が前記シャフトに固定されていることを特徴とする請求項1または2に記載のゴルフクラブ。
【請求項4】
前記被覆材は、前記ヘッド側端部と前記グリップ側端部の中間の部分が前記シャフトに固定されていることを特徴とする請求項3に記載のゴルフクラブ。
【請求項5】
前記シャフトの表面には配線が設けられており、前記被覆材は前記配線を覆うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1の請求項に記載のゴルフクラブ。
【請求項6】
前記被覆材は、前記シャフトと同様なテーパ形状のチューブであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1の請求項に記載のゴルフクラブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被覆材によりシャフトが被覆されたゴルフクラブに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブのシャフトを傷から保護するための技術として、特許文献1に開示されたものがある。この特許文献1に開示の技術では、繊維強化樹脂層を複数枚重ね合わせて形成した円筒状、または円柱状シャフトの周囲を熱収縮性フィルムの被覆層により被覆する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−327873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の技術では、シャフトの周囲の熱収縮性フィルムを加熱により収縮させ、剛性の大きな被覆層をシャフトの周囲に形成し、シャフトを傷から保護することができる。しかしながら、剛性の大きな被覆層がシャフトに密着した状態で形成されると、シャフト全体の剛性が被覆層形成前に比べて格段と大きくなり、ゴルフクラブをスイングした感覚が被覆層形成前と全く異なったものになるという問題があった。
【0005】
本発明は以上説明した事情に鑑みてなされたものであり、シャフト本来の剛性に大きな変化を与えることなくシャフト表面の保護されたゴルフクラブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、シャフトを収容する中空の環状の被覆材を有し、前記被覆材の一部が前記シャフトに固定されていることを特徴とするゴルフクラブを提供する。
【0007】
かかる発明によれば、被覆材の一部がシャフトに固定されているので、被覆材を形成したことによるシャフトの剛性への影響は少ない。従って、シャフト本来の剛性に大きな変化を与えることなくシャフト表面の保護されたゴルフクラブを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】この発明の第1実施形態であるゴルフクラブの構成を示す図である。
図2】この発明の第2実施形態であるゴルフクラブの構成を示す図である。
図3】この発明の第3実施形態であるゴルフクラブの構成を示す図である。
図4】この発明の第4実施形態であるゴルフクラブの構成を示す図である。
図5】この発明の第5実施形態であるゴルフクラブの構成を示す図である。
図6】この発明の第6実施形態であるゴルフクラブの構成を示す図である。
図7】この発明の第7実施形態であるゴルフクラブの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。
【0010】
<各実施形態の共通事項>
図1図7は、この発明の第1〜第7実施形態であるゴルフクラブの構成を示す図である。これらの図において、1はゴルフクラブのシャフト、2はグリップ、3はヘッドである。シャフト1は、グリップ2側からヘッド3側に向かうに従って小径化するテーパ状の中空の円筒体である。これらのゴルフクラブは、シャフト1の撓りを検出する機能を備えている。
【0011】
さらに詳述すると、シャフト1には、長手方向に沿って、歪センサS1〜S3(図1図3)または歪センサS1〜S4(図4図7)がほぼ均等な間隔を空けて固定されている。これらの歪センサS1〜S3(S4)は、シャフト1を囲む円周表面のうちゴルフクラブをスイングするときのスイング法線(ヘッド3が描く軌道を含む平面の法線)方向の頂部となる各位置に貼り付けられている。または、シャフト1を囲む円周表面のうちゴルフクラブをスイングするときのスイング方向(ヘッド3が描く軌道を含む平面の法線)の頂部となる各位置に貼り付けられている。
【0012】
シャフト1にはヘッド3寄りの歪センサS3(S4)からグリップ2側に向けて螺旋状にフレキシブル配線4が巻回されている。このフレキシブル配線4は、ポリエチレンテレフタラート等の可撓性を有する素材からなる紐状の基板に複数のパッドとそれらのパッドに接続された複数本の信号線とを形成してなるものである。シャフト1に固定された歪センサS1〜S4の各々は、フレキシブル配線4に設けられた各パッドのうち一部のものに接続される。フレキシブル配線4は、その両端部と途中の所定個数の箇所がシャフト1に固定されている。フレキシブル配線4全体ではなく、その一部のみをシャフト1に固定するのは、ゴルフスイングの際のシャフト1の撓りによりフレキシブル配線4がダメージ(例えば過度な引っ張り応力)を受けるのを防止するためである。
【0013】
シャフト1内のグリップエンド近傍の領域には撓り検出装置10が設けられている。この撓り検出装置10は、センサI/F(インタフェース)11と、信号処理部12と、無線通信部13とを有する。
【0014】
センサI/F11は、フレキシブル配線4の各信号線および各パッドを介して歪センサS1〜S3(S4)と各々電気的に接続されている。センサI/F11は、歪センサS1〜S3(S4)の各出力信号を増幅する複数のアンプと、これらのアンプの出力信号をデジタル形式の歪波形サンプル列に各々変換するA/D変換器とにより構成される。信号処理部12は、歪センサS1〜S3(S4)の各出力信号に基づいてセンサI/F11が出力する各歪波形サンプル列を内蔵のメモリに蓄積し、その中から適切な期間内の歪波形サンプル列(例えばスイング期間内の歪波形サンプル列)を取り出し、無線通信部13に供給する装置である。無線通信部13は、信号処理部12が出力する歪波形サンプル列によりキャリアを変調し、無線区間を介して、図示しないホストコンピュータに送信する装置である。このホストコンピュータは、無線通信部13から受信された歪波形サンプル列の解析を行い、ゴルフスイングの際のシャフト1の撓り挙動を求める。
【0015】
フレキシブル配線4が巻回されたシャフト1の表面は、熱収縮性フィルムからなるチューブである被覆材5により覆われている。この被覆材5となる熱収縮フィルムのチューブは、寸胴なチューブであってもよいが、シャフト1と同様なテーパ形状のチューブとしてもよい。この発明の各実施形態の特徴は、この被覆材5の構成にある。
【0016】
<第1実施形態>
図1において、被覆材5は、グリップ2側の端部近傍領域5Aが加熱されることにより収縮し、シャフト1の表面に密着した状態でシャフト1に固定されている。ここで、被覆材5の端部近傍領域5A以外の領域は、シャフト1の表面に密着しておらず、かつ、加熱されず収縮していないので剛性が小さい。すなわち、被覆材5の一部がシャフト1に固定されることによって、シャフト1は、被覆材5によって妨げられることなく、自由に撓ることができる。加熱されて収縮した端部近傍領域5Aは、シャフト1を圧迫しながら固定される。さらに、収縮した端部近傍領域5Aは、元の被覆材5と比べて剛性が高くなることによって、シャフト1への固定力が高くなる。この場合、被覆材5はシャフト1の長手方向に沿って、剛性の異なる区間を有することになる。従って、本実施形態によれば、シャフト1本来の剛性に大きな変化を与えることなく、シャフト1の表面のフレキシブル配線4や歪センサS1〜S3を保護することができる。また、本実施形態によれば、フレキシブル配線4が被覆材5により覆われているので、ゴルフクラブを手に持って移動するときにフレキシブル配線5を物に引っ掛けるといったトラブルを防止することができる。また、フレキシブル配線5が被覆材5により覆われているので、ゴルフクラブのスイング時にフレキシブル配線5が受ける空気抵抗を抑制することができ、また、風切音を防止することができる。
【0017】
<第2実施形態>
図2において、被覆材5は、グリップ2側の端部近傍領域5Aおよびヘッド3側の端部近傍領域5Bが加熱されることにより収縮し、シャフト1の表面に密着した状態でシャフト1の一部に固定されている。ここで、被覆材5の端部近傍領域5Aおよび5B以外の領域は、シャフト1と密着しておらず、かつ、加熱されず収縮していないので剛性が低い。シャフト1に固定される端部近傍領域5Aおよびヘッド3側の端部近傍領域5Bは、収縮して剛性を高めつつシャフト1を圧迫するため、固定力が強い。また、端部近傍領域5Aおよびヘッド3側の端部近傍領域5Bの間であって、端部近傍領域5Aおよびヘッド3側の端部近傍領域5B以外の領域の被覆材5は剛性が小さいので、シャフト1は、被覆材5によって大きく妨げられることなく、自由に撓ることができる。従って、本実施形態においても、上記第1実施形態と同様な効果が得られる。また、本実施形態によれば、被覆材5の両端がシャフト1に固定されるので、上記第1実施形態よりも被覆材5の動きが安定化するという利点がある。
【0018】
<第3実施形態>
図3において、被覆材5は、グリップ2側の端部近傍領域5Aが加熱されることにより収縮し、シャフト1の表面に密着した状態でシャフト1の一部に固定されている。端部近傍領域5Aは収縮して剛性を高めつつシャフト1を圧迫するため、固定力が強い。また、シャフト1において、被覆材5のヘッド3側の端部と対向する領域は低摩擦領域6となっている。そして、被覆材5のヘッド3側の端部は、シャフト1側に向けて折曲がっており、シャフト1の低摩擦領域6と当接している。本実施形態によれば、シャフト1が撓るとき、被覆材5のグリップ2側の端部近傍領域5Aは、シャフト1に固定されているが、ヘッド3側の端部は低摩擦領域6に沿って自由に移動する。従って、シャフト1は、被覆材5によって大きく妨げられることなく、自由に撓ることができる。また、被覆材5の両端がシャフト1により支持されているので、被覆材5の動きが安定化するという利点がある。
【0019】
<第4実施形態>
図4において、被覆材5は、グリップ2側の端部近傍領域5Aと、ヘッド3側の端部近傍領域5Bと、両端部間の中央の領域5Cが加熱されることにより収縮し、シャフト1の表面に密着した状態でシャフト1の一部に固定されている。端部近傍領域5Aと、ヘッド3側の端部近傍領域5Bと、両端部間の中央の領域5Cは収縮して剛性を高めつつシャフトを圧迫するため、固定力が強い。この態様においても、被覆材5における領域5A、5B、5C以外の領域は、シャフト1と密着しておらず、かつ、剛性が小さいので、シャフト1は、被覆材5によって大きく妨げられることなく、自由に撓ることができる。また、両端および中央の3カ所において、被覆材5がシャフト1に固定されているので、被覆材5の動きが安定化するという利点がある。なお、本実施形態および第5〜第7実施形態では、第1〜第3実施形態と異なり、被覆材5のヘッド3側の端部は、ヘッド3から離れた位置にある。これは、歪センサS1〜S4のうち最もヘッド3側にある歪センサS4がヘッド3から離れた位置にあるからである。何個の歪センサを配置するか、また、歪センサをどのような位置に配置するかは、シャフト1において撓りの挙動の解析が必要な範囲に基づいて決定すればよい。また、被覆材5は、少なくとも歪センサS1〜S4およびフレキシブル配線4の全体を覆うものであればよい。
【0020】
<第5実施形態>
図5において、被覆材5は、歪センサS1〜S4の各位置を包含する各領域51、52、53、54が加熱されることにより収縮し、シャフト1の表面に密着した状態でシャフト1の一部に固定されている。領域51、52,53、54は、収縮して剛性を高めつつシャフトを圧迫するため、固定力が強い。また、これらの領域のうち被覆材5の両端に位置する領域51および52は、歪センサS1、S4の位置から被覆材5の両端にまで及んでいる。このように被覆材5の両端をシャフト1表面に密着させることにより、水等が被覆材5とシャフト1との間隙に侵入するのを防止している。本実施形態においても、上記第4実施形態等と同様な効果が得られる。また、本実施形態によれば、被覆材5の領域51〜54が歪センサS1〜S4に密着し、歪センサS1〜S4がシャフト1の表面に強く押し当てられる。従って、歪センサS1〜S4によりシャフト1の撓り挙動を正確に計測することができる。
【0021】
<第6実施形態>
図6において、被覆材5は、上記第2実施形態と同様、グリップ2側の端部近傍領域5Aおよびヘッド3側の端部近傍領域5Bが加熱されることにより収縮し、シャフト1の表面に密着した状態でシャフト1の一部に固定されている。端部近傍領域5Aおよびヘッド3側の端部近傍領域5Bは収縮して剛性を高めつつシャフトを圧迫するため、固定力が強い。本実施形態の上記第2実施形態との相違点は、被覆材5のグリップ2側の端部の形状にある。本実施形態において、被覆材5のグリップ2側の端部は、グリップ2側にはみ出し、グリップ2の表面を覆っている。本実施形態においても、上記第2実施形態と同様な効果が得られる。また、本実施形態によれば、シャフト1がグリップ2から露出する境界領域が被覆材5により覆われるので、被覆材5とシャフト1との隙間、グリップ2とシャフト1との隙間に水分等が侵入するのを防止することができる。
【0022】
<第7実施形態>
図7において、被覆材5は、グリップ2側の端部近傍領域5A’、ヘッド3側の端部近傍領域5B’および両端間中央の領域5C’が他の領域よりも断面積が小さくなっており、シャフト1の表面と接している。本実施形態における被覆材5は、熱収縮性フィルムを用いてもよいし、熱収縮性フィルム以外のフィルムを成形したものを用いてもよい。固定具7A、7B、7Cは、紐やバンド等からなるものであり、被覆材5の領域5A’、5B’、5C’の周囲を取り囲んで締まることにより、被覆材5の領域5A’、5B’、5C’をシャフト1の表面に押し当てて固定している。好ましくは、剛性の高いゴム等で固定すれば、シャフト1を圧迫しながら固定できるので、固定力が高くなる。本実施形態においても、上記第4実施形態等と同様な効果が得られる。
【0023】
以上、この発明の各実施形態について説明した。被覆材5における、その一部がシャフト1の固定されること、シャフト1の長手方向に沿って剛性の異なる区間を有すること、によって本願の効果を得ることができる。また、この発明には他にも実施形態が考えられる。例えば上記各実施形態において、被覆材5を着色し、シャフト1の表面が見えないようにしてもよい。また、この発明は、シャフトの撓りの検出手段を備えていないゴルフクラブにも適用可能である。
【符号の説明】
【0024】
1…シャフト、2…グリップ、3…ヘッド、S1〜S4…歪センサ、4…フレキシブル配線、5…被覆材、5A,5B,5C,5A’,5B’,5C’,51〜54…被覆材の一部の領域、6…低摩擦領域、7A,7B,7C…固定具、10…撓り検出装置、11…センサI/F、12…信号処理部、13…無線通信部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7