(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ガスとともに灰が導入され、該ガスを燃焼させることにより、該灰を溶融させて溶融スラグを生成する溶融炉において生じた塊状スラグを打破するスラグ打破装置であって、
棒形状であるハンマーと、
前記溶融炉外に配され、前記ハンマーを移動させることで、該ハンマーを該溶融炉外と該溶融炉内とで往復させる駆動部と、
冷媒を貯留し、前記ハンマーが前記駆動部によって前記溶融炉外に位置している間、該ハンマーが常時該冷媒に浸漬される位置関係となる冷媒槽と、
を備えたことを特徴とするスラグ打破装置。
【背景技術】
【0002】
工業原料、廃棄物、下水汚泥等を焼却することによって生じた灰を、1000℃以上の高温で溶融して溶融スラグとする溶融炉が知られている。このような溶融炉には、下部に形成された排出口へ向けてその断面が漸減するように傾斜する傾斜部が設けられており、傾斜部において溶融スラグが集約され、集約された溶融スラグは、傾斜部を伝って排出口に導かれることとなる。また、排出口の下方には、水槽を含んで構成される水砕装置が設けられており、排出口を通じて排出された溶融スラグは、水槽に貯留された水によって冷却されて固体となり、一部は粒度調整工程を経て、セメント原料、土木建材用資材、ガラス原料等として再利用される。
【0003】
上述した溶融炉では、溶融炉内の温度が低下することにより、溶融スラグの流動性が低下し、傾斜部において溶融スラグが滞留して塊状となる場合があり、当該塊状のスラグ(塊状スラグ)によって排出口を閉塞してしまうおそれがある。
【0004】
そこで、ハンマーとシリンダとを含んで構成されるスラグ打破装置を溶融炉外に設けておき、溶融炉において塊状スラグが生じると、シリンダを駆動してハンマーを押し出し、当該ハンマーを溶融炉内に突出させて塊状スラグに衝突させることで、塊状スラグを打破して除去する技術が開示されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
また、塊状スラグを掻き取るための掻き取り棒と、当該掻き取り棒を伸縮したり回転させたりする駆動部を溶融炉外に設けておき、溶融炉において塊状スラグが生じると、駆動部を駆動して掻き取り棒を押し出して溶融炉内に突出させ、さらに掻き取り棒を回転させることにより塊状スラグを掻き取って除去する技術が開示されている(例えば、特許文献2)。
【0006】
このようなハンマーや掻き取り棒は、金属で形成されるため、溶融炉内といった1000℃以上の高温雰囲気に曝されると、変形するおそれがある。そこで、特許文献2には、溶融炉内に水を噴射するノズルを設けておき、掻き取り棒が溶融炉内に位置する際に、掻き取り棒に水を噴射して冷却する構成が記載されている。
【0007】
しかし、溶融炉内で水を噴射すると、噴射した水によって溶融炉内の温度が低下し、塊状スラグの生成量が増加してしまうおそれがある。そうすると、塊状スラグによる排出口の閉塞確率が上昇してしまう。
【0008】
そこで、スラグ溶融酸素バーナの内部に冷却流体を流通させることで、溶融炉内の熱によるバーナの変形を防止しつつ、バーナで塊状スラグを加熱して溶融する技術が開示されている(例えば、特許文献3)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0018】
近年、石炭、石油コークス(ペトロコークス)、バイオマス、タイヤチップ等のガス化原料をガス化してガス化ガスを生成する技術が開発されている。このようにして生成されたガス化ガスは、発電システムや、水素の製造、合成燃料(合成石油)の製造、化学肥料(尿素)等の化学製品の製造等に利用されている。
【0019】
ガス化ガスを生成する技術として、加熱した流動媒体が有する熱で、ガス化原料をガス化するガス化ガス生成装置が開発されている。このようなガス化ガス生成装置によって生成されたガス化ガスには、ガス化原料由来のタール、流動媒体を加熱するために利用した燃料の燃焼灰、流動媒体が含まれる。このため、ガス化ガスからタールを分解し、燃焼灰、および、流動媒体を除去するために改質炉(溶融炉)が利用されている。
【0020】
このような溶融炉では、溶融炉内の温度が低下することにより、溶融スラグの流動性が低下し、溶融スラグが滞留して塊状となり、排出口を閉塞してしまうおそれがある。そこで、本実施形態では、溶融炉内で生じた塊状のスラグに衝撃を与えて打破するスラグ打破装置について説明する。以下、まず、溶融炉として機能する改質炉を含んで構成されるガス化ガス生成システムについて説明し、続いてスラグ打破装置について詳述する。
【0021】
(ガス化ガス生成システム100)
図1は、ガス化ガス生成システム100を説明するための図である。
図1に示すようにガス化ガス生成システム100は、ガス化ガス生成装置110と、改質装置130と、精製装置180とを含んで構成される。なお、
図1中、ガス化原料、ガス、水蒸気、空気、酸化剤の流れを実線の矢印で、流動媒体(砂)の流れを一点鎖線の矢印で示す。
【0022】
(ガス化ガス生成装置110)
ガス化ガス生成装置110は、燃焼炉112と、媒体分離装置(サイクロン)114と、ガス化炉116とを含んで構成される。ガス化ガス生成装置110は、循環流動層式ガス化システムであり、全体として、粒径が300μm程度の硅砂(珪砂)等の砂で構成される流動媒体を熱媒体として循環させている。具体的に説明すると、まず、流動媒体は、燃焼炉112で900℃〜1000℃程度に加熱され、燃焼排ガスEXとともに媒体分離装置114に導入される。媒体分離装置114においては、高温の流動媒体と燃焼排ガスEXとが分離され、当該分離された燃焼排ガスEXは、不図示の熱交換器(例えば、ボイラー)等で熱回収された後、外部へ排出される。
【0023】
一方、媒体分離装置114で分離された高温の流動媒体は、ガス化炉116に導入される。そして、ガス化炉116に導入された流動媒体は、ガス化炉116の底面から導入されるガス化剤(水蒸気)によって流動層化された後、最終的に、燃焼炉112に戻される。
【0024】
ガス化炉116は、例えば、気泡流動層(バブリング流動層)ガス化炉であり、褐炭等の石炭、石油コークス、バイオマス、タイヤチップ等の固体原料や、黒液等の液体原料といったガス化原料を700℃〜900℃でガス化させてガス化ガスを生成する。本実施形態では、ガス化炉116に水蒸気を供給することにより、ガス化原料をガス化させてガス化ガスを生成する(水蒸気ガス化)。
【0025】
なお、ここでは、ガス化炉116として、循環流動層方式を例に挙げて説明したが、ガス化原料をガス化することができれば、ガス化炉116は、単なる流動層方式や、砂が自重で鉛直下方向に流下することで移動層を形成する移動層方式であってもよい。
【0026】
ガス化炉116で生成されたガス化ガスX1には、タール、燃焼灰、流動媒体、水蒸気等が含まれているため、下流の改質装置130、精製装置180に送出され、精製される。以下、ガス化ガスX1中に含まれる燃焼灰および流動媒体を「灰」と称する。
【0027】
(改質装置130)
図2は、改質装置130を説明するための図である。改質装置130は、改質炉140と、水砕装置160とを含んで構成される。
図2中、ガス、スラグ、水等の物質の流れを実線の矢印で示し、信号の流れを破線の矢印で示す。
【0028】
図2に示すように、改質炉140は、本体142と、酸化剤導入部150とを含んで構成される。本体142は、中心軸が鉛直方向(
図2中、Z軸方向)にある筒形状(例えば、円筒形状)の本体上部144と、本体上部144における下部開口144aよりも小径の上部開口146aを有するとともに、本体上部144よりも鉛直下方に位置する本体下部146と、本体上部144の下部開口144aと本体下部146の上部開口146aとを接続する傾斜部148とで構成される。また、本体下部146の下端146bは、後述する水砕装置160の水槽162によって水封される。
【0029】
本体142のうち、本体上部144、傾斜部148は、アルミナやシリカからなる耐火材(
図2中、クロスハッチングで示す)で構成され、本体下部146は、金属で構成される。また、本体下部146には耐熱性を持たせるため、水を流通させることで壁面を冷却する冷却管が配される。なお、当該壁面は、耐熱性を有すれば、金属壁で構成されてもよい。
【0030】
本体上部144の側面上部には、導入口144bが設けられており、当該導入口144bを通じて、ガス化炉116から本体上部144(本体142)にガス化ガスX1が導入される。また、本体上部144の上部には、酸化剤導入部150が設けられており、酸化剤導入部150は、本体142に酸化剤(例えば、酸素)を導入する。
【0031】
このように、導入口144bを通じてガス化ガスX1が導入されるとともに、酸化剤導入部150によって酸化剤が導入されると、酸化剤によってガス化ガスX1中の燃焼ガス(例えば、水素)の一部が燃焼し(酸化され)、ガス化ガスX1が900℃〜1500℃程度に昇温されて、ガス化ガスX1に含まれるタールが改質(酸化改質)される。
【0032】
また、タールとともにガス化ガスX1に含まれる灰は、ガス化ガスX1の熱によって溶融し、溶融スラグMSとなって、ガス化ガスX1から除去される。
【0033】
このようにして、タール、灰が除去されたガス化ガスX2は、本体下部146の側面に設けられた送出口146cを通じて、後段の精製装置180に送出される。一方、ガス化ガスX1の熱によって溶融した溶融スラグMSは、傾斜部148において集約され、傾斜部148を伝って流下して、水槽162に落下する。
【0034】
水砕装置160は、水槽162と、送出機構164とを含んで構成される。水槽162には、水が収容され、上述した改質炉140の本体下部146の下端146bを水封する。また、改質炉140の傾斜部148を伝って流下し、落下した溶融スラグMSは、水槽162に導入され、水槽162に収容された水によって冷却されて固体(固体スラグSS、
図2中、ハッチングで示す)となる。
【0035】
送出機構164は、例えば、コンベアで構成され、水槽162において固体となったスラグ(固体スラグSS)を外部に送出する。このようにして、送出された固体スラグSSは、粒度調整などの工程を経て、セメント原料、土木建材用資材、ガラス原料等として再利用される。
【0036】
(精製装置180)
図3は、精製装置180を説明するための図である。
図3に示すように、精製装置180は、熱交換器182と、第1冷却器184と、第2冷却器186と、昇圧器188と、排水処理器190と、脱硫器192と、脱アンモニア器194と、脱塩器196とを含んで構成される。なお、脱硫器192、脱アンモニア器194、脱塩器196はガス化ガスX2の用途およびガス化原料の種類に応じて、設置順序および設置有無を変更することができる。
【0037】
熱交換器182は、改質炉140から導入されたガス化ガスX2と水蒸気との熱交換を行い、すなわち、ガス化ガスX2の顕熱を水蒸気で回収し、ガス化ガスX2の出口温度を300℃〜600℃にする。
【0038】
第1冷却器184は、水をスプレー噴霧することにより、300℃〜600℃となったガス化ガスX2をさらに冷却する。これにより、ガス化ガスX2に残存するタールや粉塵(灰)が凝縮し、ガス化ガスX2から除去される。
【0039】
第2冷却器186は、海水、ブライン等を用いて、ガス化ガスX2を30℃以下にさらに冷却し、さらに残存するタールや粉塵を凝縮して除去する。なお、第2冷却器186の後段に電機集塵機等で構成されるミスト・粉塵除去器を設け、タールや粉塵をさらに除去することもできる。
【0040】
昇圧器188は、ブロワや圧縮機、ターボ型のポンプ、容積型のポンプ等で構成され、第2冷却器186を通過したガス化ガスX2を0.1MPa〜5MPaに昇圧する。なお、昇圧器188の後段にガス化ガスX2を30℃以下に冷却する冷却器を設け、タールや粉塵をさらに除去することもできる。
【0041】
排水処理器190は、第1冷却器184、第2冷却器186、昇圧器188で発生するタールや粉塵を含有する排水からタールや粉塵を除去する処理を行う。排水処理器190で処理した後の水(処理後水)は、熱交換器182や第1冷却器184等で再利用される。
【0042】
脱硫器192は、ガス化ガスX2に残存する硫黄や硫黄化合物を除去する。脱アンモニア器194は、ガス化ガスX2中のアンモニア等の窒素化合物を除去する。脱塩器196は、ガス化ガスX2中の塩素や塩素化合物を除去する。
【0043】
このように、ガス化ガス生成装置110で生成され、改質炉140でタール、燃焼灰、流動媒体が除去されたガス化ガスX2は、熱交換器182、第1冷却器184、第2冷却器186、昇圧器188においてタール、燃焼灰、流動媒体が除去され、脱硫器192で硫黄や硫黄化合物が、脱アンモニア器194でアンモニアやアンモニア化合物が、脱塩器196で塩素や塩素化合物がそれぞれ除去されることにより精製され、精製ガス化ガスとなる。
【0044】
(スラグ打破装置200)
図2に戻って説明すると、上述したように、改質炉140は、灰を溶融して溶融スラグMSにし、傾斜部148を流下させて水砕装置160に導入しているが、ガス化ガスX1の温度の低下や、酸化剤導入部150による酸化剤の導入量の減少等によって、改質炉140の温度が通常運転時よりも低下し、溶融スラグMSの流動性が低下する場合がある。そうすると、傾斜部148において溶融スラグMSが滞留して塊状(塊状スラグLS、
図2中、黒い塗りつぶしで示す)となり、傾斜部148と、本体下部146の上部開口146aを閉塞してしまうおそれがある。
【0045】
そこで、本実施形態にかかるスラグ打破装置200は、改質炉140で生じた塊状スラグLSに衝撃を与え、塊状スラグLSを打破して除去する。以下、スラグ打破装置200の具体的な構成について説明する。
【0046】
図4は、スラグ打破装置200を説明するための図である。
図4に示すように、スラグ打破装置200は、改質炉140外に設けられ、ハンマー210と、駆動部220と、バルブ230と、冷媒槽240と、制御部250と、液位計260と、冷媒導入部270とを含んで構成される。
図4中、水等の物質の流れを実線の矢印で示し、信号の流れを破線の矢印で示す。スラグ打破装置200は、ハンマー210を改質炉140外に保持する収納状態と(
図4(a)参照)、塊状スラグLSの打破を試みて、ハンマー210を改質炉140内に突出させる突出状態(
図4(b)参照)とに変移する。また、スラグ打破装置200は、改質炉140の周方向に複数(例えば90°間隔で4つ)設けられているとよい。ここでは、理解を容易にするために改質炉140に設けられた複数のスラグ打破装置200のうち1のスラグ打破装置200について例示する。
【0047】
ハンマー210は、金属で構成された棒形状の部材である。駆動部220は、改質炉140外に配され、後述する制御部250による制御指令に応じて、ハンマー210を直線的に移動させることで、ハンマー210を改質炉140内に突出させる(
図4(b)に示す突出状態)。詳細に説明すると、改質炉140における本体下部146には貫通路146dが設けられており、ハンマー210は貫通路146dを通じて、改質炉140外と改質炉140内とを往復することとなる。
【0048】
なお、貫通路146dにおける改質炉140の外側には、玉形弁やストップ弁からなるバルブ230が設けられており、ハンマー210の突出状態においては、バルブ230が開かれて、貫通路146d(改質炉140内)と改質炉140外とが連通され、ハンマー210の収納状態においては、バルブ230が閉じられて、貫通路146dと改質炉140外とが遮断される。
【0049】
具体的に説明すると、ハンマー210および駆動部220は、例えば、ガスシリンダで構成され、ハンマー210は、シリンダロッドとして機能する。また、駆動部220は、例えば、シリンダ222と、シリンダ222内に形成されるピストン側室またはロッド側室にガス(例えば、空気、窒素)を供給してハンマー210を移動させるガス供給源と、シリンダ222とガス供給源との接続を維持したり遮断したりするバルブ226、バルブ228とを含んで構成される。ここで、ガス供給源は、例えば、ガス化ガス生成システム100の他の設備で利用される圧縮(高圧)ガスラインである。
【0050】
図5は、ハンマー210の先端形状を説明するための図である。ハンマー210および駆動部220として、市販のガスシリンダを利用する場合であって、シリンダロッド210aが肉抜きされている(内部に空間が形成されている)場合、
図5(a)、(b)に示すように、シリンダロッド210aの先端に円柱形状の金属棒210bを接合してハンマー210とするとよい。なお、金属棒210bを接合する場合、金属棒210bの直径HDは、シリンダロッド210aの直径SDの1/2倍(
図5(a))〜1倍(
図5(b))であるとよい。
【0051】
金属棒210bの直径HDがシリンダロッド210aの直径SDの1/2倍未満であると、塊状スラグLSに衝突できない場合があったり、塊状スラグLSとの衝突によって変形したりするおそれがあるためである。
【0052】
また、金属棒210bの直径HDがシリンダロッド210aの直径SDの1倍を上回ると、塊状スラグLSへの衝突力が小さく(面圧が小さく)なり、効率よく塊状スラグLSを打破できなくなるおそれがあるためである。
【0053】
なお、シリンダロッド210aが肉抜きされていない場合、加工せずにハンマー210として利用してもよいし、先端のみを切削して、先端の直径SDをシリンダロッド210aの直径の1/2倍〜1倍未満としてもよい。
【0054】
図4に戻って説明すると、冷媒槽240は、冷媒(例えば、水)を貯留する槽であり、ハンマー210が駆動部220によって改質炉140外に位置している間、すなわち、収納状態にある間、ハンマー210が冷媒に浸漬される位置関係となるように冷媒を貯留する。本実施形態において、冷媒槽240のX方向、および、Y方向の長さは、ハンマー210およびシリンダ222を収容可能な大きさである、すなわち、ハンマー210およびシリンダ222を冷媒に浸漬可能な大きさである。しかし、冷媒槽240は、少なくともハンマー210を冷媒に浸漬可能な大きさであればよい。
【0055】
また、冷媒による傾斜部148の温度低下を抑制するために、冷媒槽240に収容された冷媒と本体下部146とが接触する面積は可能な限り小さい方が好ましい。
【0056】
冷媒槽240を備える構成により、ハンマー210を冷媒に浸漬するだけといった簡易な構成で、改質炉140内で加熱されたハンマー210を冷却することができ、ハンマー210の変形を抑制することが可能となる。また、塊状スラグLSの打破を試みて、ハンマー210を移動する場合、ハンマー210が改質炉140内に配される時間は、1〜2秒程度と極めて短時間であるため、冷媒槽240による改質炉140外での冷却であっても、十分にハンマー210が過熱されないようにすることができる。
【0057】
制御部250は、CPU(中央処理装置)を含む半導体集積回路で構成され、ROMからCPU自体を動作させるためのプログラムやパラメータ等を読み出し、ワークエリアとしてのRAMや他の電子回路と協働してスラグ打破装置200全体を管理および制御する。本実施形態において、制御部250は、駆動部220、バルブ230、後述する冷媒導入部270を制御する。制御部250による駆動部220、バルブ230、冷媒導入部270の制御については後に詳述する。
【0058】
液位計260は、冷媒槽240に貯留されている冷媒の液位を測定する。冷媒導入部270は、ポンプで構成され、制御部250の制御指令に応じて、水砕装置160の水槽162に収容された水を冷媒槽240に導入する。
【0059】
液位計260が測定した液位が、予め定められた液位未満となった場合、制御部250は、冷媒導入部270を駆動して水槽162に収容された水を冷媒槽240に導入させる。ここで、予め定められた液位は、バルブ230が開かれることによって、貫通路146dから改質炉140内に冷媒が流出したとしてもハンマー210を浸漬でき、かつ、貫通路146dが冷媒で封止できる液位の下限値であり、例えば、ハンマー210の位置を基準として鉛直上方に300mm〜400mmである。
【0060】
制御部250が、冷媒槽240の液位を、貫通路146dとハンマー210との間隙から改質炉140内に冷媒が流出したとしてもハンマー210を浸漬できるような液位に維持する構成により、冷媒槽240によって確実にハンマー210を冷却することができる。なお、バルブ230が開かれている間であっても、バルブ230の開口と比較して、貫通路146dとハンマー210との間隙が狭いため、改質炉140内への冷媒の流出量は相対的に少ない。
【0061】
また、制御部250が、冷媒槽240の液位を、貫通路146dが冷媒で封止できるような液位に維持する構成により、ガス化ガスX1が改質炉140外へ漏出してしまう事態を回避することができる。また、冷媒導入部270が冷媒槽240に既存の水槽162の水を導入する構成により、冷媒槽240専用の水源の別途の確保が不要となり、スラグ打破装置200の簡素化を図ることができる。
【0062】
(スラグ打破方法)
続いて、スラグ打破装置200を用いたスラグ打破方法について説明する。
図6は、スラグ打破方法の処理の流れを説明するためのフローチャートである。スラグ打破装置200は、初期状態においてバルブ230を閉状態としており、駆動部220は、ハンマー210の移動を停止している、すなわち、ハンマー210は、収納状態となっている。また、液位計260は、冷媒槽240の液位を常時測定しており、制御部250は、液位計260が測定した液位に基づいて、冷媒槽240の液位を予め定められた液位に維持しているものとする。
【0063】
図6に示すように、まず、制御部250は、改質炉140における上部開口146aの圧力と、送出口146cの圧力との差(上部開口146aと送出口146cとの差圧)が、予め定められた圧力P以上であり、かつ、上部開口146a付近に塊状スラグLSがあるか否かを判定する(ステップS310)。
【0064】
なお、上部開口146aと送出口146cとの差圧は不図示の圧力計で測定するとよい。また、上部開口146a付近に塊状スラグLSがあるか否かは、本体142に設けられた不図示の覗き窓を通じて作業者が目視で確認し、当該作業者の操作入力に応じて、制御部250が判定してもよいし、上部開口146a付近を撮像する撮像装置を設けておき、制御部250が撮像装置によって撮像された画像を解析することで、上部開口146a付近に塊状スラグLSがあるか否かを判定してもよい。
【0065】
そして、上部開口146aと送出口146cとの差圧が圧力P以上であり、かつ、上部開口146a付近に塊状スラグLSがあると判定すると(ステップS310におけるYES)、制御部250は、バルブ230を開状態にし(ステップS312)、駆動部220を制御して、ハンマー210を改質炉140外と改質炉140内とで移動(往復)させ、塊状スラグLSに衝撃を与えて、塊状スラグLSを打破する(ステップS314)。
【0066】
制御部250は、上部開口146aと送出口146cとの差圧が圧力P以上であり、かつ、上部開口146a付近に塊状スラグLSがあるか否かを判定し(ステップS316)、上部開口146aと送出口146cとの差圧が圧力P以上であり、かつ、上部開口146a付近に塊状スラグLSがある場合(ステップS316におけるYES)、ステップS314の処理に戻る。
【0067】
一方、上部開口146aと送出口146cとの差圧が圧力P以上でない、または、上部開口146a付近に塊状スラグLSがない場合(ステップS316におけるNO)、改質炉140の運転上、問題とならない程度まで塊状スラグLSが除去できたとみなし、駆動部220によるハンマー210の移動を停止し(ステップS318)、バルブ230を閉じて(ステップS320)、ステップS310の処理に戻る。
【0068】
以上説明したように、本実施形態にかかるスラグ打破装置200およびこれを用いたスラグ打破方法によれば、簡易な構成で、改質炉140内の熱によるハンマー210の変形を防止しつつ、塊状スラグLSの増加を抑制して、効率よく塊状スラグLSを打破することが可能となる。
【0069】
また、バルブ230を閉じることで、ハンマー210および駆動部220が改質炉140内から隔離された状態とすることができ、改質炉140の運転中であっても、ハンマー210、駆動部220をメンテナンスすることが可能となる。
【0070】
(変形例)
図7は、変形例にかかるスラグ打破装置400を説明するための図である。
図7に示すように、スラグ打破装置400は、改質炉140外に設けられ、ハンマー210と、駆動部220と、制御部250と、水槽162とを含んで構成される。
図7中、スラグ、水等の物質の流れを実線の矢印で示し、信号の流れを破線の矢印で示す。
【0071】
図7に示すように、変形例のスラグ打破装置400は、改質装置130を構成する水槽162を、駆動部220によってハンマー210が改質炉140外に配される際に、ハンマー210が冷媒に浸漬されるように冷媒を貯留する冷媒槽として機能させる。
【0072】
ハンマー210を冷却するための冷媒槽として既存の水槽162を利用することにより、ハンマー210の冷却専用の収容槽や収容槽に冷媒を導入する冷媒導入部が不要となり、さらに構成を簡易にすることができ、コストを低減することが可能となる。
【0073】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0074】
例えば、上述した実施形態において、スラグ打破装置200、400を、ガス化ガス中に含まれる灰を溶融する改質炉140に適用する構成を例に挙げて説明した。しかし、スラグ打破装置200、400は、塊状スラグLSが生じる溶融炉であれば、どのような溶融炉であっても適用することができる。例えば、工業原料、廃棄物、下水汚泥等を焼却することによって生じた灰を、1000℃以上の高温で溶融して溶融スラグMSとする溶融炉に適用することもできる。
【0075】
また、上述した実施形態において、駆動部220は、ハンマー210を直線的に移動させるとしたが、駆動部220は、ハンマー210を移動させられれば、どのような軌跡で移動させてもよい。
【0076】
また、上述した実施形態において、ハンマー210および駆動部220を、複動ガスシリンダで構成する場合を例に挙げて説明したが、シリンダ222内にバネ等の弾性体を備え、弾性体によって、ハンマー210の突出および収納(引き込み)のいずれか一方を為し、ガスの供給によって他方を為す単動ガスシリンダで構成してもよい。