(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6209877
(24)【登録日】2017年9月22日
(45)【発行日】2017年10月11日
(54)【発明の名称】ライナーレスの印刷テープ用熱転写インクリボンとライナーレスの印刷テープとのセット
(51)【国際特許分類】
B41M 5/42 20060101AFI20171002BHJP
B41M 5/395 20060101ALI20171002BHJP
【FI】
B41M5/42 310
B41M5/395 300
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-138133(P2013-138133)
(22)【出願日】2013年7月1日
(65)【公開番号】特開2015-9524(P2015-9524A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2016年6月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237237
【氏名又は名称】フジコピアン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山田 正太
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 教一
【審査官】
野田 定文
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−343843(JP,A)
【文献】
特開2002−019307(JP,A)
【文献】
特開平05−016535(JP,A)
【文献】
特開2001−010243(JP,A)
【文献】
特開2006−247908(JP,A)
【文献】
特開平10−138648(JP,A)
【文献】
特開昭62−108089(JP,A)
【文献】
特開2012−017358(JP,A)
【文献】
特開2002−120424(JP,A)
【文献】
特表平11−509143(JP,A)
【文献】
特開2001−171247(JP,A)
【文献】
特開2000−135871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/382 − 5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一方の面(A面)に、離型層、着色層および接着層をこの順に積層した熱転写インクリボンであって、前記離型層中に、融点が60〜80℃の範囲にある、直鎖状炭化水素が主成分のパラフィンワックスを70〜100重量%含有するライナーレスの印刷テープ用熱転写インクリボンと粘着面に使用する粘着剤がアクリル系粘着剤であり、前記粘着面の反対面に熱転写印刷が可能なライナーレスの印刷テープからなることを特徴とするライナーレスの印刷テープ用熱転写インクリボンとライナーレスの印刷テープとのセット。
【請求項2】
前記離型層の厚みが、0.4〜1.5μmの範囲であり、前記着色層のバインダー樹脂として、ポリアミド樹脂を25〜45重量%含有することを特徴とする請求項1に記載のライナーレスの印刷テープ用熱転写インクリボンとライナーレスの印刷テープとのセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はラベルや包装、梱包などに使用するライナーレスの印刷テープ用の熱転写インクリボンに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、市場に出回っている図柄や文字など所望の印刷がされたロール状でライナーレスの各種テープは、印刷済みのフィルム基材に後工程で粘着塗工を行い、小巻加工したものが主流である。
【0003】
これに対して、印刷ローラー機構によりセロハンテープ等の各種テープに、各種の印刷を自由に行なえる印刷テープ供給装置(特許文献1参照)や、所望の印刷を行うことが可能な、印刷テープとインクリボンが収容されたテープカートリッジを用いた熱転写によるテープ印刷装置(特許文献2参照)など、テープの繰り出しと同時に印刷が行われるテープ印刷装置が提案されている。
【0004】
これらの印刷装置を用いれば、各種テープに所望の印刷を必要なだけ印刷することが可能であるが、テープの繰り出しと同時に印刷が行われ、印刷されたテープはそのままカットして使用するための装置であったため、印刷したテープをロール状に巻き取って保管するものではなかった。
【0005】
つまり、前記印刷装置により印刷されたテープは、印刷後にテープが再度ロール状に巻き取られることを想定していない。したがって、印刷後に印刷面とテープの粘着面とがロール状で接した状態のまま保管されることに対しては何ら考慮がされておらず、印刷面と粘着面とがロール状で接した状態のまま保管された後、再び印刷したテープをロールから引き出した際の印字耐久性は不充分なものであり、テープの印刷部分が粘着面に取られるといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−41197
【特許文献2】特開2000−62268
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記の問題を解決するものであって、印刷テープと熱転写インクリボンを用いた熱転写によるテープ印刷装置により、所望の印刷がされ、ラベルや包装、梱包などに使用するロール状のライナーレス印刷テープを作製する際、印刷したテープを印刷面と粘着面とが接するようロール状に巻き取って保管した後、再び印刷したテープを引き出した場合でも、テープの印刷部分が粘着面に取られることを防止するライナーレスの印刷テープ用熱転写インクリボンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明は、基材の一方の面(A面)に、離型層、着色層および接着層をこの順に積層した熱転写インクリボンであって、前記離型層中に、融点が60〜80℃の範囲にある、直鎖状炭化水素が主成分のパラフィンワックスを70〜100重量%含有するライナーレスの印刷テープ用熱転写インクリボンと粘着面に使用する粘着剤がアクリル系粘着剤であ
り、前記粘着面の反対面に熱転写印刷が可能なライナーレスの印刷テープからなることを特徴とするライナーレスの印刷テープ用熱転写インクリボンとライナーレスの印刷テープとのセットである。
【0009】
第2発明は、前記離型層の厚みが、0.4〜1.5μmの範囲であり、前記着色層のバインダー樹脂として、ポリアミド樹脂を25〜45重量%含有することを特徴とする
第1発明に記載のライナーレスの印刷テープ用熱転写インクリボンとライナーレスの印刷テープとのセットである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、印刷テープと熱転写インクリボンを用いた熱転写によるテープ印刷装置により、所望の印刷がされ、ラベルや包装、梱包などに使用するロール状のライナーレス印刷テープを作製する際、印刷したテープを印刷面と粘着面とが接するようロール状に巻き取って保管した後、再び印刷したテープを引き出した場合でも、テープの印刷部分が粘着面に取られることを防止するライナーレスの印刷テープ用熱転写インクリボンを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る熱転写インクリボンの構成について、以下に例を挙げて説明する。本発明の熱転写インクリボンは、基材の一方の面(A面)に、離型層、着色層および接着層をこの順に積層したものである。
【0012】
本発明における基材としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)、ポリエチレンナフタレートフィルム(PEN)、ポリアリレートフィルムなどのポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアミドフィルム、アラミドフィルム、その他熱転写インクリボンの基材用フィルムとして一般に使用されている各種のプラスチックフィルムが使用できる。基材の厚さは、熱伝導を良好にする点から1〜10μmの範囲、中でも2〜6μmの範囲が好ましい。
【0013】
基材の裏面(B面)には耐熱層を設けることが好ましい。耐熱層の材料としては、例えばシリコーン樹脂、フッ素樹脂、ニトロセルロース樹脂、あるいはこれらによって変性された、例えばシリコーン変性ウレタン樹脂、シリコーン変性アクリル樹脂など各種の耐熱性樹脂、あるいはこれらの耐熱性樹脂に滑剤を混合したものなどが挙げられる。
【0014】
本発明の特徴である離型層は、融点が60〜80℃の範囲にある、直鎖状炭化水素が主成分のパラフィンワックスを70〜100重量%含有するものである。
【0015】
すなわち、離型層に直鎖状炭化水素が主成分のパラフィンワックスを使用することで、印刷テープに熱転写インクリボンのインクが熱転写され、印刷されたテープを印刷面と粘着面とが接するようロール状に巻き取って保管した後、再び印刷されたテープをロールから引き出した際、テープの印刷部分が粘着面に取られない効果を見出したものである。
【0016】
パラフィンワックスは直鎖状炭化水素(n−パラフィン)を主成分とするものであるが、低分子量の油状成分をかなりの割合で含有している。このようなパラフィンワックスを離型層に使用すると、熱転写印刷された印像の上層に存在することになるパラフィンワックスから、低分子量の油状成分が印刷表面にブリード(移行)し、これによって印刷テープの粘着面と印刷表面との接着力を低下させ、テープの印刷部分が粘着面に取られないようになるものである。さらに、パラフィンワックスは極性が低いため、印刷テープの粘着面に使用するアクリル系粘着剤との接着力が弱く、テープの印刷部分が粘着面に取られないようになるものである。なお、離型層中のパラフィンワックス含有量が多いほど、粘着面と印刷表面との接着力を低下させる効果は高くなるため、パラフィンワックス含有量が離型層中の70重量%以上であることが好ましい。
【0017】
前記パラフィンワックスは、融点が低いほど低分子量の油状成分の含有割合が高くなるため、離型層中のパラフィンワックスは低融点ものが好ましい。但し、熱転写インクリボンのパンケーキ保存性(耐ブロッキング性)や熱転写性を考慮すると、融点が60〜80℃の範囲にあるパラフィンワックスがより好ましい。
【0018】
なお、離型層には上記効果を損なわない範囲で他のワックス状物質、例えば、木ロウ、ミツロウ、ラノリン、カルナバワックス、キャンデリラワックス、モンタンワックス、セレシンワックスなどの天然ワックス;イソパラフィンやシクロパラフィンを主成分とするマイクロクリスタリンワックス;酸化ワックス、エステルワックス、低分子量ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、α−オレフィン−無水マレイン酸共重合ワックスなどの合成ワックス;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸などの高級脂肪酸;ステアリルアルコール、ドコサノールなどの高級脂肪族アルコール;高級脂肪酸モノグリセリド、ショ糖の脂肪酸エステル、ソルビタンの脂肪酸エステルなどのエステル類;オレイルアミドなどのアミド類およびビスアミド類などの1種又は2種以上を適宜使用することができる。
【0019】
さらに、離型層には前記ワックス状物質以外に、必要に応じて充填剤、オイル類、脂肪酸類などを配合してもよいが、テープの粘着面と接着性が良好な熱可塑性樹脂類は含まない。
【0020】
なお、前記パラフィンワックスや前記ワックス状物質は、離型層中で粒子形態であってもよい。
【0021】
離型層の厚みは、0.4〜1.5μmの範囲が好ましく、0.5〜1.0μmの範囲がより好ましい。離型層の厚みが0.4μm未満だと、熱転写インクの熱転写性(基材からの離型性)が劣る傾向がある。一方、離型層の厚みが1.5μmを超えると、離型層を溶融させるのに必要な熱量が増えるため熱転写インクリボンの転写感度が劣ることと、基材との密着性が低下して基材から熱転写インクの脱落が起こりやすくなる。
【0022】
本発明における着色層は、熱可塑性樹脂によるバインダーと着色剤を主成分とするものであって、前記離型層の上に設けられる。
【0023】
前記熱可塑性樹脂(エラストマーを含む)としては、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酪酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン−アクリロニトリル共重合体、エチレン−アクリルアミド共重合体、エチレン−スチレン共重合体などのエチレン系共重合体、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−ビニルアルコール共重合体などの塩化ビニル系(共)重合体、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、アセトフェノン−ホルムアルデヒド系樹脂、セルロース系樹脂、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、イソプレン重合体、クロロプレン重合体、石油系樹脂、スチレン系樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、クマロン−インデン樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂などが挙げられる。これら樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
中でも、ポリアミド樹脂を着色層のバインダーに用いた場合、前記離型層の主成分であるパラフィンワックスと非相溶の溶剤に溶解して積層塗工することが可能であるため、塗工時に前記離型層と前記着色層とがその界面で混ざることがない。そのため、印刷テープにインクが熱転写印刷される際に、前記離型層と前記着色層は2層に積層された状態で印刷される。これにより、印刷されたテープを印刷面と粘着面とが接するようロール状に巻き取って保管した後、再び印刷されたテープを引き出した際、印刷された印像の離型層と着色層の層間密着力が弱いため、仮に離型層の一部がテープの粘着面に取られたとしても、着色層までは粘着面に取られないようにする効果をもたらすものである。よって、着色層のバインダー樹脂にはポリアミド樹脂を用いることがより好ましい。
【0025】
なお、着色層中のバインダー樹脂含有量としては、25〜45重量%の範囲が好ましい。含有量が25重量%未満だと着色層の凝集力が低下し、印刷したテープを引き出した際、着色層中で凝集破壊が起こりテープの粘着面に着色層が取られるやすくなる。また、含有量が45重量%を超えると印字濃度が低下する。
【0026】
着色層中の着色剤としては、熱転写インクリボンの着色剤として一般に使用されているカーボンブラックをはじめとした有機、無機の着色顔料、染料などが使用できる。また、着色層にはその他必要に応じて、分散剤、帯電防止剤などを配合してもよい。
【0027】
着色層の厚みは、0.2〜0.8μmの範囲が好ましく、0.3〜0.6μmの範囲がより好ましい。厚みが0.2μm未満だと、印字濃度が劣る傾向がある。一方、厚みが0.8μmを超えると、着色層を溶融させるのに必要な熱量が増えるため、転写感度が劣る傾向がある。
【0028】
本発明における接着層は、ワックス類および/又は熱可塑性樹脂を主成分とするものであって、前記着色層の上に設けられる。
【0029】
接着層中の前記ワックス類としては、カルナバワックス、キャンデリラワックスなどの植物系ワックス、ラノリンなどの動物系ワックス、モンタンワックスなどの鉱物系ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの石油系ワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプッシュワックスなどの合成ワックスなどが使用できる。接着層中の前記熱可塑性樹脂としては、エチレン/酢酸ビニル共重合体、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ケトン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、石油系樹脂、ロジン系樹脂などが使用できる。なお、これらのワックス類と熱可塑性樹脂は接着層中で粒子形態であってもよい。
【0030】
接着層の厚みは、0.3〜0.8μmの範囲が好ましく、0.4〜0.6μmの範囲がより好ましい。厚みが0.3μm未満だと印刷テープ表面への接着力が十分でなく、印字物の定着性が劣る傾向がある。一方、厚みが0.8μmを超えると、接着層を溶融して接着力を発現させるのに必要な熱量が増えるため、転写感度が劣る傾向がある。
【0031】
本発明の熱転写インクリボンは、熱転写機構を有するテープ印刷装置により、ライナーレスのロール状テープの粘着面と反対面に熱転写印刷が可能であり、且つ所望の印刷がされたテープを印刷面と粘着面とが接するようロール状に巻き取って保管した後、再び印刷したテープを引き出した場合でも、テープの印刷部分が粘着面に取られない印刷テープを提供することができる。
【実施例】
【0032】
次に実施例1〜15および比較例1〜6を挙げて、本発明を具体的に説明する。なお、本発明の範囲はこれらによって限定されるものではない。
【0033】
[離型層の形成]厚み4.5μmのPETフィルム基材の裏面(B面)に、厚さ0.2μmのシリコーン樹脂系耐熱層を設け、もう一方の面(A面)に、表1、表2に示す離型層処方をそれぞれエマルション溶液とした塗工液を作製し、乾燥後の膜厚が表1、表2の膜厚になるように塗工し、乾燥して実施例1〜15、比較例1〜6の離型層を形成した。
【0034】
[着色層の形成]つぎに、表1、表2に示す着色層処方のうち、実施例1〜9の着色層処方はメチルエチルケトンに溶解、実施例10〜15および比較例1〜6の着色層処方はイソプロピルアルコールに溶解した塗工液を作製し、乾燥後の膜厚が表1、表2の膜厚になるようにして、前記実施例1〜15、比較例1〜6の離型層の上に塗工し、乾燥して各着色層を形成した。
【0035】
[接着層の形成]さらに、前記実施例1〜15、比較例1〜6の着色層の上に、下記処方からなるエマルション塗工液を塗工し、乾燥して厚さ0.5μmの接着層を形成し、各熱転写インクリボンを作製した。
接着層インク処方
カルナバワックス 12.0重量部
メタノール 73.0重量部
水 15.0重量部
合計 100.0重量部
【0036】
得られた各熱転写インクリボンを使用し、印刷テープへの印字転写性、粘着面への印字取られ評価を下記の評価方法に基づいて実施した。結果を表1、表2に示す。
【0037】
(1)印刷テープへの印字転写性評価
前記各熱転写インクリボンを用い、熱転写用プリンタ(SATO製SR408)で、印刷テープ(厚さ70μm)のオレフィン系離型処理を施したPET基材上に印字を行い、その際の印字転写性を下記基準にしたがって目視評価した。
印字転写性評価基準
○:転写性良好
×:転写性不良
【0038】
(2)粘着面への印字取られ評価
前記各熱転写インクリボンを用い、前記熱転写用プリンタで印刷されたテープを、印刷面とアクリル系粘着剤からなるテープの粘着面(厚さ20μm)とが接するようロール状に巻き取って、常温×7日保管した後、再び印刷したテープを引き出したときのテープ粘着面への印字取られを下記基準にしたがって目視評価した。なお、印字取られ評価に用いた前記テープの初期接着力は、9.5N/25mm(JIS Z0237準拠)である。
印字取られ評価基準
◎:印字取られが全くない。
○:印字取られがほとんどない。
×:印字取られがある。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】