特許第6209899号(P6209899)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6209899転炉排ガス処理装置の炉口抵抗算出方法、排ガス吹出量算出方法、炉圧制御装置、炉圧制御プログラムおよび炉圧制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6209899
(24)【登録日】2017年9月22日
(45)【発行日】2017年10月11日
(54)【発明の名称】転炉排ガス処理装置の炉口抵抗算出方法、排ガス吹出量算出方法、炉圧制御装置、炉圧制御プログラムおよび炉圧制御方法
(51)【国際特許分類】
   C21C 5/38 20060101AFI20171002BHJP
【FI】
   C21C5/38 A
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-169738(P2013-169738)
(22)【出願日】2013年8月19日
(65)【公開番号】特開2015-38235(P2015-38235A)
(43)【公開日】2015年2月26日
【審査請求日】2016年7月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】北川 慎治
(72)【発明者】
【氏名】大山 雅寿
【審査官】 國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭55−134119(JP,A)
【文献】 特開昭55−134120(JP,A)
【文献】 特開2003−034815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21C 5/00
C21C 5/28− 5/50
F27D 17/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
転炉で発生した排ガスをガスホルダに回収する転炉排ガス処理装置における炉口とスカートとの間の炉口抵抗を算出する方法であって、
前記排ガスに含まれる気体の濃度を計測した濃度データと、排ガス流量を、前記気体の濃度と前記排ガス流量との計測時間差に応じた第1の時間だけ前記濃度データの計測時刻より前に計測した流量データと、炉内圧と大気圧との差圧である炉圧を、前記気体の濃度と前記炉圧との計測時間差に応じた第2の時間だけ前記濃度データの計測時刻より前に計測した炉圧データと、を取得し、
前記炉圧データが前記炉口からの空気の吸い込みを示す場合には、
前記流量データと前記濃度データとに基づいて、前記炉口からの空気の吸込量を算出し、
前記炉圧データと前記空気の吸込量とに基づいて、前記炉口抵抗を算出し、
前記炉圧データが前記炉口からの空気の吸い込みを示さない場合には、
過去に算出された炉口抵抗、前記炉口抵抗として算出することを特徴とする転炉排ガス処理装置の炉口抵抗算出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の転炉排ガス処理装置の炉口抵抗算出方法であって、
前記炉圧データが前記炉口からの空気の吸い込みを示す場合には、
前記流量データと前記濃度データとに基づいて、前記排ガスに含まれる窒素の流量を算出し、
前記窒素の流量と空気中の窒素の濃度とに基づいて、前記空気の吸込量を算出し、
前記炉圧データと前記空気の吸込量とに基づいて、前記炉口抵抗を算出することを特徴とする転炉排ガス処理装置の炉口抵抗算出方法。
【請求項3】
請求項2に記載の転炉排ガス処理装置の炉口抵抗算出方法であって、
前記炉圧データが前記炉口からの空気の吸い込みを示す場合に、前記転炉の底部から窒素が吹き込まれているときには、
前記転炉の底部からの窒素の吹込量を、前記第2の時間だけ前記濃度データの計測時刻より前に計測した吹込量データをさらに取得し、
前記流量データと前記濃度データとに基づいて、前記排ガスに含まれる窒素の流量を算出し、
前記窒素の流量と前記吹込量データとの差分と、空気中の窒素の濃度とに基づいて、前記空気の吸込量を算出し、
前記炉圧データと前記空気の吸込量とに基づいて、前記炉口抵抗を算出することを特徴とする転炉排ガス処理装置の炉口抵抗算出方法。
【請求項4】
前記炉圧データが前記炉口からの空気の吸い込みを示さない場合に、
請求項1ないし請求項3の何れかに記載の転炉排ガス処理装置の炉口抵抗算出方法によって算出された炉口抵抗と、前記炉圧データとに基づいて、前記炉口からの前記排ガスの吹出量を算出することを特徴とする転炉排ガス処理装置の排ガス吹出量算出方法。
【請求項5】
転炉で発生した排ガスをガスホルダに回収する転炉排ガス処理装置における炉内圧と大気圧との差圧である炉圧を制御する制御装置であって、
前記排ガスに含まれる気体の濃度を計測した濃度データと、排ガス流量を、前記気体の濃度と前記排ガス流量との計測時間差に応じた第1の時間だけ前記濃度データの計測時刻より前に計測した流量データと、前記炉圧を、前記気体の濃度と前記炉圧との計測時間差に応じた第2の時間だけ前記濃度データの計測時刻より前に計測した炉圧データと、に基づいて、炉口とスカートとの間の炉口抵抗を算出する炉口抵抗算出部と、
前記炉口抵抗が大きいほど小さくなるように比例ゲインを設定する比例ゲイン設定部と、
前記炉口抵抗が大きいほど大きくなるように積分時間を設定する積分時間設定部と、
前記比例ゲインおよび前記積分時間に応じて、前記炉圧を目標値に制御する制御信号を出力するPI制御部と、
を有し、
前記炉口抵抗算出部は、
前記炉圧データが前記炉口からの空気の吸い込みを示す場合には、
前記流量データと前記濃度データとに基づいて、前記炉口からの空気の吸込量を算出し、
前記炉圧データと前記空気の吸込量とに基づいて、前記炉口抵抗を算出し、
前記炉圧データが前記炉口からの空気の吸い込みを示さない場合には、
過去に算出された炉口抵抗、前記炉口抵抗として算出することを特徴とする転炉排ガス処理装置の炉圧制御装置。
【請求項6】
転炉で発生した排ガスをガスホルダに回収する転炉排ガス処理装置における炉内圧と大気圧との差圧である炉圧を制御するための制御プログラムであって、
コンピュータに、
前記排ガスに含まれる気体の濃度を計測した濃度データと、排ガス流量を、前記気体の濃度と前記排ガス流量との計測時間差に応じた第1の時間だけ前記濃度データの計測時刻より前に計測した流量データと、前記炉圧を、前記気体の濃度と前記炉圧との計測時間差に応じた第2の時間だけ前記濃度データの計測時刻より前に計測した炉圧データと、に基づいて、炉口とスカートとの間の炉口抵抗を算出する炉口抵抗算出処理と、
前記炉口抵抗が大きいほど小さくなるように比例ゲインを設定する比例ゲイン設定処理と、
前記炉口抵抗が大きいほど大きくなるように積分時間を設定する積分時間設定処理と、
前記比例ゲインおよび前記積分時間に応じて、前記炉圧を目標値に制御する制御信号を出力する制御信号出力処理と、
を実行させ、
前記炉口抵抗算出処理は、
前記炉圧データが前記炉口からの空気の吸い込みを示す場合には、
前記流量データと前記濃度データとに基づいて、前記炉口からの空気の吸込量を算出し、
前記炉圧データと前記空気の吸込量とに基づいて、前記炉口抵抗を算出し、
前記炉圧データが前記炉口からの空気の吸い込みを示さない場合には、
過去に算出された炉口抵抗に基づいて、前記炉口抵抗を算出することを特徴とする転炉排ガス処理装置の炉圧制御プログラム。
【請求項7】
転炉で発生した排ガスをガスホルダに回収する転炉排ガス処理装置における炉内圧と大気圧との差圧である炉圧を制御する方法であって、
前記排ガスに含まれる気体の濃度を計測した濃度データと、排ガス流量を、前記気体の濃度と前記排ガス流量との計測時間差に応じた第1の時間だけ前記濃度データの計測時刻より前に計測した流量データと、前記炉圧を、前記気体の濃度と前記炉圧との計測時間差に応じた第2の時間だけ前記濃度データの計測時刻より前に計測した炉圧データと、を取得し、
前記炉圧データが前記炉口からの空気の吸い込みを示す場合には、
前記流量データと前記濃度データとに基づいて、前記炉口からの空気の吸込量を算出し、
前記炉圧データと前記空気の吸込量とに基づいて、炉口とスカートとの間の炉口抵抗を算出し、
前記炉圧データが前記炉口からの空気の吸い込みを示さない場合には、
過去に算出された炉口抵抗に基づいて、前記炉口抵抗を算出し、
前記炉口抵抗が大きいほど小さくなるように比例ゲインを設定し、
前記炉口抵抗が大きいほど大きくなるように積分時間を設定し、
前記比例ゲインおよび前記積分時間に応じて、前記炉圧を目標値に制御する制御信号を出力することを特徴とする転炉排ガス処理装置の炉圧制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転炉排ガス処理装置の炉口抵抗算出方法、排ガス吹出量算出方法、炉圧制御装置、炉圧制御プログラム、および炉圧制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
転炉で発生する排ガスは、可燃性ガスである一酸化炭素を高濃度に含み、燃料として用いることができる。また、操業に応じて間欠的に発生する転炉排ガスを有効活用するため、ガスホルダに回収して一時的に貯留しておく転炉排ガス処理装置が用いられている。
【0003】
転炉排ガス処理装置では、排ガスを効率的に回収するため、炉内圧と大気圧との差圧である炉圧を適切に制御する必要がある。炉圧が正の場合、すなわち、炉内圧が大気圧より高い場合には、転炉の炉口から排ガスが吹き出し、排ガスの回収量自体が低下してしまう。一方、炉圧が負の場合、すなわち、炉内圧が大気圧より低い場合には、炉口から空気が吸い込まれ、空気中の酸素により一酸化炭素が燃焼するため、排ガスに含まれる一酸化炭素の濃度が低下してしまう。したがって、一酸化炭素を高濃度に含む排ガスを効率的に回収するためには、炉圧を0付近に制御する必要がある。
【0004】
例えば特許文献1や特許文献2では、ダンパの開度を調節することにより炉圧を制御して、排ガスに含まれる一酸化炭素の回収量や回収率を増加させる方法が開示されている。また、これらの炉圧制御には、PI(Proportional-Integral:比例・積分)制御などのフィードバック制御が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−342628号公報
【特許文献2】特開昭61−56220号公報
【特許文献3】特開平11−287424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、炉圧をP0とし、炉口からの空気の吸込量をFinとすると、炉圧P0は、
【数1】

と表される。ここで、kは、スカートの高さに応じて変化する炉口とスカートとの間の流入抵抗であり、炉口抵抗と呼ばれる(例えば特許文献3を参照)。この炉口抵抗kは、転炉排ガス処理装置(プラント)の炉圧制御におけるゲインに直接関係するため、これを用いて、制御パラメータ(PI制御の比例ゲインや積分時間など)を変更しながらより効率的に炉圧を制御することができる。
【0007】
しかしながら、炉口からの空気の吸い込みは、P0<0の場合にのみ発生するため、P0>0の場合には、上記の式(1)から炉口抵抗kを求めることができず、炉口抵抗kを炉圧制御に用いることができない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した課題を解決する主たる本発明は、転炉で発生した排ガスをガスホルダに回収する転炉排ガス処理装置における炉口とスカートとの間の炉口抵抗を算出する方法であって、前記排ガスに含まれる気体の濃度を計測した濃度データと、排ガス流量を、前記気体の濃度と前記排ガス流量との計測時間差に応じた第1の時間だけ前記濃度データの計測時刻より前に計測した流量データと、炉内圧と大気圧との差圧である炉圧を、前記気体の濃度と前記炉圧との計測時間差に応じた第2の時間だけ前記濃度データの計測時刻より前に計測した炉圧データと、を取得し、前記炉圧データが前記炉口からの空気の吸い込みを示す場合には、前記流量データと前記濃度データとに基づいて、前記炉口からの空気の吸込量を算出し、前記炉圧データと前記空気の吸込量とに基づいて、前記炉口抵抗を算出し、前記炉圧データが前記炉口からの空気の吸い込みを示さない場合には、過去に算出された炉口抵抗、前記炉口抵抗として算出することを特徴とする転炉排ガス処理装置の炉口抵抗算出方法である。
【0009】
また、前述した課題を解決するその他の主たる本発明は、転炉で発生した排ガスをガスホルダに回収する転炉排ガス処理装置における炉内圧と大気圧との差圧である炉圧を制御する制御装置であって、前記排ガスに含まれる気体の濃度を計測した濃度データと、排ガス流量を、前記気体の濃度と前記排ガス流量との計測時間差に応じた第1の時間だけ前記濃度データの計測時刻より前に計測した流量データと、前記炉圧を、前記気体の濃度と前記炉圧との計測時間差に応じた第2の時間だけ前記濃度データの計測時刻より前に計測した炉圧データと、に基づいて、炉口とスカートとの間の炉口抵抗を算出する炉口抵抗算出部と、前記炉口抵抗が大きいほど小さくなるように比例ゲインを設定する比例ゲイン設定部と、前記炉口抵抗が大きいほど大きくなるように積分時間を設定する積分時間設定部と、前記比例ゲインおよび前記積分時間に応じて、前記炉圧を目標値に制御する制御信号を出力するPI制御部と、を有し、前記炉口抵抗算出部は、前記炉圧データが前記炉口からの空気の吸い込みを示す場合には、前記流量データと前記濃度データとに基づいて、前記炉口からの空気の吸込量を算出し、前記炉圧データと前記空気の吸込量とに基づいて、前記炉口抵抗を算出し、前記炉圧データが前記炉口からの空気の吸い込みを示さない場合には、過去に算出された炉口抵抗、前記炉口抵抗として算出することを特徴とする転炉排ガス処理装置の炉圧制御装置である。
【0010】
本発明の他の特徴については、添付図面及び本明細書の記載により明らかとなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、操業中の炉口抵抗をリアルタイムに算出して炉圧制御などに用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態における炉口抵抗の算出方法を説明するフローチャートである。
図2】各計測データの計測時間差の一例を示す模式図である。
図3】転炉排ガス処理装置の構成の一例を示す図である。
図4】炉口からの空気の吸込量Finおよび排ガスの吹出量Foutの算出方法を説明するフローチャートである。
図5】吸込量Finおよび吹出量Foutを積算して転炉排ガス処理装置の炉圧制御系の制御性を評価する方法を説明する図である。
図6】本発明の一実施形態における転炉排ガス処理装置の炉圧制御装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0014】
===転炉排ガス処理装置の構成および動作===
以下、図3を参照して、転炉排ガス処理装置の構成および動作について説明する。
【0015】
図3に示されている転炉排ガス処理装置は、転炉1で発生した排ガスをガスホルダ10に回収するための装置であり、このほかに、スカート2、ボイラ3、ガス冷却洗浄器4、IDF(Induced Draft Fan:誘引ファン)5、三方弁6、バイパス弁7、ガス放散塔8、回収弁9、およびダンパ11を含んで構成されている。
【0016】
転炉1で発生した排ガスは、転炉1の上部を覆うスカート2によって集められる。このとき、スカート2が下降することにより、炉口での一酸化炭素の燃焼がなくなり、排ガスに含まれる一酸化炭素の濃度が高くなる。また、スカート2によって集められた排ガスは、高温でダストが多いため、ボイラ3およびガス冷却洗浄器4で減温除塵される。
【0017】
減温除塵された排ガスは、IDF5で送風され、三方弁6に到達する。その際、ダンパ11の開度を調節することにより、排ガス流量が制御され、その結果、炉圧が制御される。また、三方弁6は、排ガスの流路をガスホルダ10側またはガス放散塔8側に切り替える。三方弁6がガスホルダ10側の場合、排ガスは回収弁9を経由してガスホルダ10に到達し、回収される。一方、三方弁6がガス放散塔8側の場合、排ガスはガス放散塔8に到達し、一酸化炭素を燃焼させた後大気に放散される。なお、転炉排ガス処理装置には、三方弁6の故障などに備えて、排ガスをガス放散塔8に導くバイパス弁7も設けられている。
【0018】
このようにして、転炉1で発生した排ガスは、三方弁6の状態に応じて、ガスホルダ10に回収され、あるいはガス放散塔8から大気に放散される。そして、ガスホルダ10に貯留された排ガスは、他の副生ガスと混合されたうえで、加熱炉や発電システムなどで使用される。
【0019】
さらに、転炉排ガス処理装置には、様々なセンサ類が取り付けられている。例えば、スカート2上部のダクトには、炉圧P0を計測する炉圧計21が配置されている。また、減温除塵前の排ガスの経路であるボイラ3には、排ガスに含まれる一酸化炭素の濃度(以下、CO濃度と称する)R1を計測するCO分析計22、および二酸化炭素の濃度(以下、CO濃度と称する)R2を計測するCO分析計23が配置されている。一方、ボイラ3およびガス冷却洗浄器4による減温除塵後の排ガスの経路には、排ガス流量F1を計測する流量計24と、排ガスに含まれる酸素(O)の濃度を計測するO分析計25とが配置されている。
【0020】
なお、各センサ類による計測データは、ダンパ11の開度に応じて変化する。ダンパ11の開度を調節することにより、排ガス流量F1および炉圧P0が制御され、その結果、各分析計(22,23,25)によって計測される気体の濃度も変化する。また、転炉1の底部から炉内に窒素が吹き込まれる場合には、炉口抵抗の算出において、当該窒素の吹込量(以下、N吹込量と称する)F2が用いられる。
【0021】
===炉口抵抗の算出方法===
以下、図1および図2を参照して、本発明の一実施形態における炉口抵抗の算出方法について説明する。
【0022】
各センサ類による計測データ間には、各センサ類の位置や、各分析計において気体の分析に要する時間により、計測時間差が存在する。例えば、ある時刻に排ガスの発生量や排ガスに含まれる気体の濃度が変化した場合、炉内圧と大気圧との差圧である炉圧P0や、炉内への窒素の吹込量F2には、当該変化がほぼ時間差なく反映される。一方、ガス冷却洗浄器4とIDF5との間の流路で計測される排ガス流量F1には、排ガスの移動時間Taの分だけ変化が遅れて反映されることとなる。また、CO濃度R1やCO濃度R2には、各分析計における分析時間Tb(>Ta)の分だけ変化が遅れて反映されることとなる。
【0023】
したがって、図2に示すように、時刻tに計測したCO濃度R1(t),CO濃度R2(t)に対しては、時刻t−t1に計測した排ガス流量F1(t−t1)、および時刻t−t2に計測した炉圧P0(t−t2),N吹込量F2(t−t2)を対応付けて用いる必要がある。ここで、第1の時間t1は、CO濃度R1,CO濃度R2と、排ガス流量F1との計測時間差に相当し、t1=Tb−Taである。一方、第2の時間t2は、CO濃度R1,CO濃度R2と、炉圧P0との計測時間差に相当し、t2=Tbである。
【0024】
図1に示すように、時刻tにおける炉口抵抗k(t)の算出においては、まず、CO濃度R1(t),CO濃度R2(t),排ガス流量F1(t−t1),炉圧P0(t−t2)を取得する(S11)。なお、CO濃度R1(t),CO濃度R2(t)が濃度データに相当し、排ガス流量F1(t−t1)が流量データに相当し、炉圧P0(t−t2)が炉圧データに相当する。
【0025】
次に、炉圧P0(t−t2)<0であり、炉口からの空気の吸い込みを示している場合(S12:YES)には、排ガス流量F1(t−t1),CO濃度R1(t),CO濃度R2(t)に基づいて、排ガスに含まれる窒素の流量(以下、N流量と称する)F3(t)を算出する(S13)。ここで、排ガスに含まれる気体は、ほぼ窒素、一酸化炭素、および二酸化炭素のみであるものとすると、N流量F3(t)は、
【数2】

と算出される。
【0026】
次に、転炉1の底部から炉内に窒素が吹き込まれている場合(S14:YES)には、N吹込量F2(t−t2)を取得し(S15)、N流量F3(t)とN吹込量F2(t−t2)との差分に基づいて、炉口からの空気の吸込量Fin(t)を算出する(S16)。なお、N吹込量F2(t−t2)が吹込量データに相当する。当該吸込量Fin(t)は、
【数3】

と算出される。ここで、R0は、空気中の窒素の濃度であり、約78%である。一方、転炉1の底部から炉内に窒素が吹き込まれていない場合(S14:NO)には、
【数4】

と算出される(S17)。
【0027】
最後に、炉圧P0(t−t2),吸込量Fin(t)に基づいて、炉口抵抗k(t)を算出する(S18)。当該炉口抵抗k(t)は、
【数5】

と算出される。ここで、炉圧P0(t−t2)<0であるため、炉口抵抗k(t)>0である。式(2),(3),(5)より、転炉1の底部から炉内に窒素が吹き込まれている場合(S14:YES)には、
【数6】

となる。一方、式(2),(4),(5)より、転炉1の底部から炉内に窒素が吹き込まれていない場合(S14:NO)には、
【数7】

となる。
【0028】
一方、炉圧P0(t−t2)≧0であり、炉口からの空気の吸い込みを示していない場合(S12:NO)には、炉口から排ガスが吹き出しているため、式(6),(7)から炉口抵抗k(t)を算出することはできない。そこで、この場合には、式(6),(7)から最後に算出された炉口抵抗を炉口抵抗k(t)として算出することとする。ここで、炉口抵抗k(t)が所定の計測周期Δtごとに算出されるものとすると、この場合の炉口抵抗k(t)は、前回の計測周期における炉口抵抗k(t−Δt)を用いて、
【数8】

と算出すればよい(S19)。
【0029】
このようにして、炉口から空気が吸い込まれる(P0<0)場合も、炉口から排ガスが吹き出す(P0≧0)場合も、操業中の炉口抵抗をリアルタイムに算出することができる。
【0030】
なお、本実施形態では、炉口から排ガスが吹き出している場合には、炉口から空気が吸い込まれている状態で最後に算出された炉口抵抗を炉口抵抗k(t)として算出しているが、これに限定されるものではない。炉口から排ガスが吹き出している場合の炉口抵抗k(t)は、過去に算出された炉口抵抗に基づいて、他の方法により算出してもよい。例えば、各計測周期における炉口抵抗を記憶手段に所定期間分記憶させておき、炉口から排ガスが吹き出している場合には、当該所定期間分の移動平均値を炉口抵抗k(t)として算出してもよい。このとき、記憶手段には、各計測周期における炉口抵抗を常に記憶させても、炉口から空気が吸い込まれている状態で算出された炉口抵抗のみを記憶させてもよい。
【0031】
===炉圧制御系の制御性評価方法===
以下、図4および図5を参照して、算出された炉口抵抗を用いて転炉排ガス処理装置の炉圧制御系の制御性を評価する方法について説明する。
【0032】
図1に示したように操業中の炉口抵抗をリアルタイムに算出することにより、従来から算出可能であった炉口からの空気の吸込量だけでなく、炉口からの排ガスの吹出量も算出することができる。
【0033】
図4に示すように、炉圧P0(t−t2)<0であり、炉口からの空気の吸い込みを示している場合(S21:YES)には、式(3),(4)から吸込量Fin(t)を算出して用いることができる(S22)。
【0034】
一方、炉圧P0(t−t2)≧0であり、炉口からの空気の吸い込みを示していない場合(S21:NO)には、炉口抵抗k(t),炉圧P0(t−t2)に基づいて、炉口からの排ガスの吹出量Fout(t)を算出する(S23)。当該吹出量Fout(t)は、
【数9】

と算出することができる。
【0035】
そして、このように算出した吸込量Finおよび吹出量Foutを積算して、転炉排ガス処理装置の炉圧制御系の制御性評価指標として用いることができる。図5に示すように、まず、操業開始時に各積算値をリセットしたうえで、排ガスの回収開始時に積算を開始し、回収終了時に積算を停止する。このとき、炉口から空気が吸い込まれている(P0<0)間は吸込量Finが積算され、炉口から排ガスが吹き出している(P0≧0)間は吹出量Foutが積算される。
【0036】
前述したように、炉口から空気が吸い込まれる場合も、炉口から排ガスが吹き出す場合も、排ガスに含まれる一酸化炭素の回収量が低下してしまう。したがって、吸込量Finおよび吹出量Foutの積算値が小さいほど、一酸化炭素を高濃度に含む排ガスが効率的に回収されていると評価することができる。
【0037】
このように、炉口からの空気の吸込量だけでなく、炉口抵抗を用いて炉口からの排ガスの吹出量も算出することによって、それらの積算値を評価指標として転炉排ガス処理装置の炉圧制御系の制御性を評価することができる。これにより、例えば1日における複数回の操業を比較したり、複数操業日における同一時間帯の操業を比較したりすることもできる。
【0038】
===炉圧制御装置の構成===
以下、図6を参照して、本発明の一実施形態における転炉排ガス処理装置の炉圧制御装置の構成について説明する。
【0039】
図6に示されている炉圧制御装置30は、バス309を介して互いに接続された、炉口抵抗算出部301、比例ゲイン設定部302、積分時間設定部303、PI制御部304、通信部305、入力部306、出力部307、および記憶部308を含んで構成されている。なお、炉圧制御装置30の機能は、通信部305、入力部306、出力部307、記憶部308、およびバス309を備えるコンピュータ300によって実現することができる。
【0040】
通信部305は、転炉排ガス処理装置のセンサ類およびダンパ11と通信可能になっている。通信部305は、炉圧計21から炉圧P0を、CO分析計22からCO濃度R1を、CO分析計23からCO濃度R2を、流量計24から排ガス流量F1を、転炉1からN吹込量F2を、それぞれ受信する。そして、受信した各計測データは、時系列データとして記憶部308に格納される。
【0041】
炉口抵抗算出部301には、炉圧P0(t−t2),CO濃度R1(t),CO濃度R2(t),排ガス流量F1(t−t1),N吹込量F2(t−t2)が入力される。また、炉口抵抗算出部301から出力される炉口抵抗k(t)は、比例ゲイン設定部302および積分時間設定部303に入力される。さらに比例ゲイン設定部302から出力される比例ゲインKp、および積分時間設定部303から出力される積分時間Tiは、PI制御部304に入力される。そして、PI制御部304から出力された制御信号MVは、通信部305からダンパ11に送信される。
【0042】
===炉圧制御装置の動作===
以下、本実施形態における転炉排ガス処理装置の炉圧制御装置の動作について説明する。
【0043】
炉圧制御装置30による転炉排ガス処理装置の制御は、炉口抵抗算出部301による炉口抵抗算出処理、比例ゲイン設定部302による比例ゲイン設定処理、積分時間設定部303による積分時間設定処理、およびPI制御部304による制御信号出力処理からなる。なお、前述したように、炉圧制御装置30の機能は、コンピュータ300によって実現することができる。例えば、コンピュータ300に炉圧制御プログラムを実行させることによって、炉口抵抗算出処理、比例ゲイン設定処理、積分時間設定処理、および制御信号出力処理を実行することができる。
【0044】
炉口抵抗算出処理では、図1に示したように操業中の炉口抵抗k(t)をリアルタイムに算出する。また、比例ゲイン設定処理および積分時間設定処理では、算出された炉口抵抗k(t)を用いて、それぞれ比例ゲインKpおよび積分時間Tiを設定する。
【0045】
ここで、炉口抵抗kが小さいと、炉圧P0の小さな変動でも、炉口からの空気の吸込量Finや排ガスの吹出量Foutが大きくなる。すなわち、炉口抵抗kが小さい場合には、プラントの炉圧制御におけるゲインが小さくなるため、操作端を多く動作させる必要がある。そのため、PI制御部304の比例ゲインKpを大きくし、積分時間Tiを小さくする必要がある。一方、炉口抵抗kが大きい場合には、プラントの炉圧制御におけるゲインが大きくなるため、操作端を少なく動作させる必要がある。そのため、PI制御部304の比例ゲインKpを小さくし、積分時間Tiを大きくする必要がある。
【0046】
したがって、比例ゲイン設定処理では、炉口抵抗kが大きいほど比例ゲインKpが小さくなるように設定し、積分時間設定処理では、炉口抵抗kが大きいほど積分時間Tiが大きくなるように設定する。そして、制御信号出力処理では、設定された比例ゲインKpおよび積分時間Tiに応じて、炉圧P0を目標値に制御する制御信号MVを出力し、ダンパ11の開度を調節することにより、排ガス流量F1および炉圧P0を制御する。
【0047】
このように、炉口抵抗を用いてPI制御の制御パラメータを設定することによって、より効率的に炉圧を制御することができる。
【0048】
前述したように、転炉排ガス処理装置における炉口抵抗の算出方法において、炉圧P0(t−t2)<0の場合には、排ガス流量F1(t−t1),CO濃度R1(t),CO濃度R2(t)に基づいて吸込量Fin(t)を算出し、炉圧P0(t−t2),吸込量Fin(t)に基づいて炉口抵抗k(t)を算出し、炉圧P0(t−t2)≧0の場合には、過去に算出された炉口抵抗に基づいて炉口抵抗k(t)を算出することによって、炉口から空気が吸い込まれる場合も、炉口から排ガスが吹き出す場合も、操業中の炉口抵抗をリアルタイムに算出して炉圧制御などに用いる。
【0049】
また、排ガス流量F1(t−t1),CO濃度R1(t),CO濃度R2(t)に基づいてN流量F3(t)を算出することによって、N流量F3(t),空気中の窒素濃度R0に基づいて、吸込量Fin(t)を算出することができる。
【0050】
また、転炉1の底部から炉内に窒素が吹き込まれている場合には、N流量F3(t)とN吹込量F2(t−t2)との差分と、空気中の窒素濃度R0とに基づいて、N流量F3(t)を算出することによって、N流量F3(t),空気中の窒素濃度R0に基づいて、吸込量Fin(t)を算出することができる。
【0051】
また、炉口からの空気の吸込量Fin(t)だけでなく、炉圧P0(t−t2)≧0の場合に、炉口抵抗k(t),炉圧P0(t−t2)に基づいて、炉口からの排ガスの吹出量Fout(t)を算出することによって、算出した吸込量Finおよび吹出量Foutの積算値を評価指標として転炉排ガス処理装置の炉圧制御系の制御性を評価することができる。
【0052】
また、前述したように、転炉排ガス処理装置の炉圧を制御する炉圧制御装置30において、炉口抵抗kが大きいほど比例ゲインKpが小さくなり、積分時間Tiが大きくなるように設定することによって、炉口から空気が吸い込まれる場合も、炉口から排ガスが吹き出す場合も、操業中の炉口抵抗をリアルタイムに算出して、より効率的に炉圧を制御することができる。
【0053】
また、コンピュータに、炉圧制御装置30の炉口抵抗算出部301、比例ゲイン設定部302、積分時間設定部303、およびPI制御部304に相当する処理を実行させるためのプログラムにおいて、炉口抵抗kが大きいほど比例ゲインKpが小さくなり、積分時間Tiが大きくなるように設定することによって、操業中の炉口抵抗をリアルタイムに算出して、より効率的に炉圧を制御することができる。
【0054】
また、炉口抵抗kが大きいほど比例ゲインKpが小さくなり、積分時間Tiが大きくなるように設定することによって、操業中の炉口抵抗をリアルタイムに算出して、より効率的に炉圧を制御することができる。
【0055】
なお、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【符号の説明】
【0056】
1 転炉
2 スカート
3 ボイラ
4 ガス冷却洗浄器
5 IDF(誘引ファン)
6 三方弁
7 バイパス弁
8 ガス放散塔
9 回収弁
10 ガスホルダ
11 ダンパ
21 炉圧計
22 CO(一酸化炭素)分析計
23 CO(二酸化炭素)分析計
24 流量計
25 O(酸素)分析計
30 炉圧制御装置
300 コンピュータ
301 炉口抵抗算出部
302 比例ゲイン設定部
303 積分時間設定部
304 PI(比例・積分)制御部
305 通信部
306 入力部
307 出力部
308 記憶部
309 バス
図1
図2
図3
図4
図5
図6