(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0014】
===転炉排ガス処理装置の構成および動作===
以下、
図3を参照して、転炉排ガス処理装置の構成および動作について説明する。
【0015】
図3に示されている転炉排ガス処理装置は、転炉1で発生した排ガスをガスホルダ10に回収するための装置であり、このほかに、スカート2、ボイラ3、ガス冷却洗浄器4、IDF(Induced Draft Fan:誘引ファン)5、三方弁6、バイパス弁7、ガス放散塔8、回収弁9、およびダンパ11を含んで構成されている。
【0016】
転炉1で発生した排ガスは、転炉1の上部を覆うスカート2によって集められる。このとき、スカート2が下降することにより、炉口での一酸化炭素の燃焼がなくなり、排ガスに含まれる一酸化炭素の濃度が高くなる。また、スカート2によって集められた排ガスは、高温でダストが多いため、ボイラ3およびガス冷却洗浄器4で減温除塵される。
【0017】
減温除塵された排ガスは、IDF5で送風され、三方弁6に到達する。その際、ダンパ11の開度を調節することにより、排ガス流量が制御され、その結果、炉圧が制御される。また、三方弁6は、排ガスの流路をガスホルダ10側またはガス放散塔8側に切り替える。三方弁6がガスホルダ10側の場合、排ガスは回収弁9を経由してガスホルダ10に到達し、回収される。一方、三方弁6がガス放散塔8側の場合、排ガスはガス放散塔8に到達し、一酸化炭素を燃焼させた後大気に放散される。なお、転炉排ガス処理装置には、三方弁6の故障などに備えて、排ガスをガス放散塔8に導くバイパス弁7も設けられている。
【0018】
このようにして、転炉1で発生した排ガスは、三方弁6の状態に応じて、ガスホルダ10に回収され、あるいはガス放散塔8から大気に放散される。そして、ガスホルダ10に貯留された排ガスは、他の副生ガスと混合されたうえで、加熱炉や発電システムなどで使用される。
【0019】
さらに、転炉排ガス処理装置には、様々なセンサ類が取り付けられている。例えば、スカート2上部のダクトには、炉圧P0を計測する炉圧計21が配置されている。また、減温除塵前の排ガスの経路であるボイラ3には、排ガスに含まれる一酸化炭素の濃度(以下、CO濃度と称する)R1を計測するCO分析計22、および二酸化炭素の濃度(以下、CO
2濃度と称する)R2を計測するCO
2分析計23が配置されている。一方、ボイラ3およびガス冷却洗浄器4による減温除塵後の排ガスの経路には、排ガス流量F1を計測する流量計24と、排ガスに含まれる酸素(O
2)の濃度を計測するO
2分析計25とが配置されている。
【0020】
なお、各センサ類による計測データは、ダンパ11の開度に応じて変化する。ダンパ11の開度を調節することにより、排ガス流量F1および炉圧P0が制御され、その結果、各分析計(22,23,25)によって計測される気体の濃度も変化する。また、転炉1の底部から炉内に窒素が吹き込まれる場合には、炉口抵抗の算出において、当該窒素の吹込量(以下、N
2吹込量と称する)F2が用いられる。
【0021】
===炉口抵抗の算出方法===
以下、
図1および
図2を参照して、本発明の一実施形態における炉口抵抗の算出方法について説明する。
【0022】
各センサ類による計測データ間には、各センサ類の位置や、各分析計において気体の分析に要する時間により、計測時間差が存在する。例えば、ある時刻に排ガスの発生量や排ガスに含まれる気体の濃度が変化した場合、炉内圧と大気圧との差圧である炉圧P0や、炉内への窒素の吹込量F2には、当該変化がほぼ時間差なく反映される。一方、ガス冷却洗浄器4とIDF5との間の流路で計測される排ガス流量F1には、排ガスの移動時間Taの分だけ変化が遅れて反映されることとなる。また、CO濃度R1やCO
2濃度R2には、各分析計における分析時間Tb(>Ta)の分だけ変化が遅れて反映されることとなる。
【0023】
したがって、
図2に示すように、時刻tに計測したCO濃度R1(t),CO
2濃度R2(t)に対しては、時刻t−t1に計測した排ガス流量F1(t−t1)、および時刻t−t2に計測した炉圧P0(t−t2),N
2吹込量F2(t−t2)を対応付けて用いる必要がある。ここで、第1の時間t1は、CO濃度R1,CO
2濃度R2と、排ガス流量F1との計測時間差に相当し、t1=Tb−Taである。一方、第2の時間t2は、CO濃度R1,CO
2濃度R2と、炉圧P0との計測時間差に相当し、t2=Tbである。
【0024】
図1に示すように、時刻tにおける炉口抵抗k(t)の算出においては、まず、CO濃度R1(t),CO
2濃度R2(t),排ガス流量F1(t−t1),炉圧P0(t−t2)を取得する(S11)。なお、CO濃度R1(t),CO
2濃度R2(t)が濃度データに相当し、排ガス流量F1(t−t1)が流量データに相当し、炉圧P0(t−t2)が炉圧データに相当する。
【0025】
次に、炉圧P0(t−t2)<0であり、炉口からの空気の吸い込みを示している場合(S12:YES)には、排ガス流量F1(t−t1),CO濃度R1(t),CO
2濃度R2(t)に基づいて、排ガスに含まれる窒素の流量(以下、N
2流量と称する)F3(t)を算出する(S13)。ここで、排ガスに含まれる気体は、ほぼ窒素、一酸化炭素、および二酸化炭素のみであるものとすると、N
2流量F3(t)は、
【数2】
と算出される。
【0026】
次に、転炉1の底部から炉内に窒素が吹き込まれている場合(S14:YES)には、N
2吹込量F2(t−t2)を取得し(S15)、N
2流量F3(t)とN
2吹込量F2(t−t2)との差分に基づいて、炉口からの空気の吸込量Fin(t)を算出する(S16)。なお、N
2吹込量F2(t−t2)が吹込量データに相当する。当該吸込量Fin(t)は、
【数3】
と算出される。ここで、R0は、空気中の窒素の濃度であり、約78%である。一方、転炉1の底部から炉内に窒素が吹き込まれていない場合(S14:NO)には、
【数4】
と算出される(S17)。
【0027】
最後に、炉圧P0(t−t2),吸込量Fin(t)に基づいて、炉口抵抗k(t)を算出する(S18)。当該炉口抵抗k(t)は、
【数5】
と算出される。ここで、炉圧P0(t−t2)<0であるため、炉口抵抗k(t)>0である。式(2),(3),(5)より、転炉1の底部から炉内に窒素が吹き込まれている場合(S14:YES)には、
【数6】
となる。一方、式(2),(4),(5)より、転炉1の底部から炉内に窒素が吹き込まれていない場合(S14:NO)には、
【数7】
となる。
【0028】
一方、炉圧P0(t−t2)≧0であり、炉口からの空気の吸い込みを示していない場合(S12:NO)には、炉口から排ガスが吹き出しているため、式(6),(7)から炉口抵抗k(t)を算出することはできない。そこで、この場合には、式(6),(7)から最後に算出された炉口抵抗を炉口抵抗k(t)として算出することとする。ここで、炉口抵抗k(t)が所定の計測周期Δtごとに算出されるものとすると、この場合の炉口抵抗k(t)は、前回の計測周期における炉口抵抗k(t−Δt)を用いて、
【数8】
と算出すればよい(S19)。
【0029】
このようにして、炉口から空気が吸い込まれる(P0<0)場合も、炉口から排ガスが吹き出す(P0≧0)場合も、操業中の炉口抵抗をリアルタイムに算出することができる。
【0030】
なお、本実施形態では、炉口から排ガスが吹き出している場合には、炉口から空気が吸い込まれている状態で最後に算出された炉口抵抗を炉口抵抗k(t)として算出しているが、これに限定されるものではない。炉口から排ガスが吹き出している場合の炉口抵抗k(t)は、過去に算出された炉口抵抗に基づいて、他の方法により算出してもよい。例えば、各計測周期における炉口抵抗を記憶手段に所定期間分記憶させておき、炉口から排ガスが吹き出している場合には、当該所定期間分の移動平均値を炉口抵抗k(t)として算出してもよい。このとき、記憶手段には、各計測周期における炉口抵抗を常に記憶させても、炉口から空気が吸い込まれている状態で算出された炉口抵抗のみを記憶させてもよい。
【0031】
===炉圧制御系の制御性評価方法===
以下、
図4および
図5を参照して、算出された炉口抵抗を用いて転炉排ガス処理装置の炉圧制御系の制御性を評価する方法について説明する。
【0032】
図1に示したように操業中の炉口抵抗をリアルタイムに算出することにより、従来から算出可能であった炉口からの空気の吸込量だけでなく、炉口からの排ガスの吹出量も算出することができる。
【0033】
図4に示すように、炉圧P0(t−t2)<0であり、炉口からの空気の吸い込みを示している場合(S21:YES)には、式(3),(4)から吸込量Fin(t)を算出して用いることができる(S22)。
【0034】
一方、炉圧P0(t−t2)≧0であり、炉口からの空気の吸い込みを示していない場合(S21:NO)には、炉口抵抗k(t),炉圧P0(t−t2)に基づいて、炉口からの排ガスの吹出量Fout(t)を算出する(S23)。当該吹出量Fout(t)は、
【数9】
と算出することができる。
【0035】
そして、このように算出した吸込量Finおよび吹出量Foutを積算して、転炉排ガス処理装置の炉圧制御系の制御性評価指標として用いることができる。
図5に示すように、まず、操業開始時に各積算値をリセットしたうえで、排ガスの回収開始時に積算を開始し、回収終了時に積算を停止する。このとき、炉口から空気が吸い込まれている(P0<0)間は吸込量Finが積算され、炉口から排ガスが吹き出している(P0≧0)間は吹出量Foutが積算される。
【0036】
前述したように、炉口から空気が吸い込まれる場合も、炉口から排ガスが吹き出す場合も、排ガスに含まれる一酸化炭素の回収量が低下してしまう。したがって、吸込量Finおよび吹出量Foutの積算値が小さいほど、一酸化炭素を高濃度に含む排ガスが効率的に回収されていると評価することができる。
【0037】
このように、炉口からの空気の吸込量だけでなく、炉口抵抗を用いて炉口からの排ガスの吹出量も算出することによって、それらの積算値を評価指標として転炉排ガス処理装置の炉圧制御系の制御性を評価することができる。これにより、例えば1日における複数回の操業を比較したり、複数操業日における同一時間帯の操業を比較したりすることもできる。
【0038】
===炉圧制御装置の構成===
以下、
図6を参照して、本発明の一実施形態における転炉排ガス処理装置の炉圧制御装置の構成について説明する。
【0039】
図6に示されている炉圧制御装置30は、バス309を介して互いに接続された、炉口抵抗算出部301、比例ゲイン設定部302、積分時間設定部303、PI制御部304、通信部305、入力部306、出力部307、および記憶部308を含んで構成されている。なお、炉圧制御装置30の機能は、通信部305、入力部306、出力部307、記憶部308、およびバス309を備えるコンピュータ300によって実現することができる。
【0040】
通信部305は、転炉排ガス処理装置のセンサ類およびダンパ11と通信可能になっている。通信部305は、炉圧計21から炉圧P0を、CO分析計22からCO濃度R1を、CO
2分析計23からCO
2濃度R2を、流量計24から排ガス流量F1を、転炉1からN
2吹込量F2を、それぞれ受信する。そして、受信した各計測データは、時系列データとして記憶部308に格納される。
【0041】
炉口抵抗算出部301には、炉圧P0(t−t2),CO濃度R1(t),CO
2濃度R2(t),排ガス流量F1(t−t1),N
2吹込量F2(t−t2)が入力される。また、炉口抵抗算出部301から出力される炉口抵抗k(t)は、比例ゲイン設定部302および積分時間設定部303に入力される。さらに比例ゲイン設定部302から出力される比例ゲインKp、および積分時間設定部303から出力される積分時間Tiは、PI制御部304に入力される。そして、PI制御部304から出力された制御信号MVは、通信部305からダンパ11に送信される。
【0042】
===炉圧制御装置の動作===
以下、本実施形態における転炉排ガス処理装置の炉圧制御装置の動作について説明する。
【0043】
炉圧制御装置30による転炉排ガス処理装置の制御は、炉口抵抗算出部301による炉口抵抗算出処理、比例ゲイン設定部302による比例ゲイン設定処理、積分時間設定部303による積分時間設定処理、およびPI制御部304による制御信号出力処理からなる。なお、前述したように、炉圧制御装置30の機能は、コンピュータ300によって実現することができる。例えば、コンピュータ300に炉圧制御プログラムを実行させることによって、炉口抵抗算出処理、比例ゲイン設定処理、積分時間設定処理、および制御信号出力処理を実行することができる。
【0044】
炉口抵抗算出処理では、
図1に示したように操業中の炉口抵抗k(t)をリアルタイムに算出する。また、比例ゲイン設定処理および積分時間設定処理では、算出された炉口抵抗k(t)を用いて、それぞれ比例ゲインKpおよび積分時間Tiを設定する。
【0045】
ここで、炉口抵抗kが小さいと、炉圧P0の小さな変動でも、炉口からの空気の吸込量Finや排ガスの吹出量Foutが大きくなる。すなわち、炉口抵抗kが小さい場合には、プラントの炉圧制御におけるゲインが小さくなるため、操作端を多く動作させる必要がある。そのため、PI制御部304の比例ゲインKpを大きくし、積分時間Tiを小さくする必要がある。一方、炉口抵抗kが大きい場合には、プラントの炉圧制御におけるゲインが大きくなるため、操作端を少なく動作させる必要がある。そのため、PI制御部304の比例ゲインKpを小さくし、積分時間Tiを大きくする必要がある。
【0046】
したがって、比例ゲイン設定処理では、炉口抵抗kが大きいほど比例ゲインKpが小さくなるように設定し、積分時間設定処理では、炉口抵抗kが大きいほど積分時間Tiが大きくなるように設定する。そして、制御信号出力処理では、設定された比例ゲインKpおよび積分時間Tiに応じて、炉圧P0を目標値に制御する制御信号MVを出力し、ダンパ11の開度を調節することにより、排ガス流量F1および炉圧P0を制御する。
【0047】
このように、炉口抵抗を用いてPI制御の制御パラメータを設定することによって、より効率的に炉圧を制御することができる。
【0048】
前述したように、転炉排ガス処理装置における炉口抵抗の算出方法において、炉圧P0(t−t2)<0の場合には、排ガス流量F1(t−t1),CO濃度R1(t),CO
2濃度R2(t)に基づいて吸込量Fin(t)を算出し、炉圧P0(t−t2),吸込量Fin(t)に基づいて炉口抵抗k(t)を算出し、炉圧P0(t−t2)≧0の場合には、過去に算出された炉口抵抗に基づいて炉口抵抗k(t)を算出することによって、炉口から空気が吸い込まれる場合も、炉口から排ガスが吹き出す場合も、操業中の炉口抵抗をリアルタイムに算出して炉圧制御などに用いる。
【0049】
また、排ガス流量F1(t−t1),CO濃度R1(t),CO
2濃度R2(t)に基づいてN
2流量F3(t)を算出することによって、N
2流量F3(t),空気中の窒素濃度R0に基づいて、吸込量Fin(t)を算出することができる。
【0050】
また、転炉1の底部から炉内に窒素が吹き込まれている場合には、N
2流量F3(t)とN
2吹込量F2(t−t2)との差分と、空気中の窒素濃度R0とに基づいて、N
2流量F3(t)を算出することによって、N
2流量F3(t),空気中の窒素濃度R0に基づいて、吸込量Fin(t)を算出することができる。
【0051】
また、炉口からの空気の吸込量Fin(t)だけでなく、炉圧P0(t−t2)≧0の場合に、炉口抵抗k(t),炉圧P0(t−t2)に基づいて、炉口からの排ガスの吹出量Fout(t)を算出することによって、算出した吸込量Finおよび吹出量Foutの積算値を評価指標として転炉排ガス処理装置の炉圧制御系の制御性を評価することができる。
【0052】
また、前述したように、転炉排ガス処理装置の炉圧を制御する炉圧制御装置30において、炉口抵抗kが大きいほど比例ゲインKpが小さくなり、積分時間Tiが大きくなるように設定することによって、炉口から空気が吸い込まれる場合も、炉口から排ガスが吹き出す場合も、操業中の炉口抵抗をリアルタイムに算出して、より効率的に炉圧を制御することができる。
【0053】
また、コンピュータに、炉圧制御装置30の炉口抵抗算出部301、比例ゲイン設定部302、積分時間設定部303、およびPI制御部304に相当する処理を実行させるためのプログラムにおいて、炉口抵抗kが大きいほど比例ゲインKpが小さくなり、積分時間Tiが大きくなるように設定することによって、操業中の炉口抵抗をリアルタイムに算出して、より効率的に炉圧を制御することができる。
【0054】
また、炉口抵抗kが大きいほど比例ゲインKpが小さくなり、積分時間Tiが大きくなるように設定することによって、操業中の炉口抵抗をリアルタイムに算出して、より効率的に炉圧を制御することができる。
【0055】
なお、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。