特許第6209908号(P6209908)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6209908成形材料用樹脂組成物の製造方法およびその成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6209908
(24)【登録日】2017年9月22日
(45)【発行日】2017年10月11日
(54)【発明の名称】成形材料用樹脂組成物の製造方法およびその成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 1/08 20060101AFI20171002BHJP
   C08L 33/14 20060101ALI20171002BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20171002BHJP
   C08L 59/00 20060101ALI20171002BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20171002BHJP
   C08B 3/12 20060101ALI20171002BHJP
【FI】
   C08L1/08
   C08L33/14
   C08L23/00
   C08L59/00
   C08L77/00
   C08B3/12
【請求項の数】10
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-185311(P2013-185311)
(22)【出願日】2013年9月6日
(65)【公開番号】特開2015-52052(P2015-52052A)
(43)【公開日】2015年3月19日
【審査請求日】2016年6月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109635
【氏名又は名称】星光PMC株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉村 知章
(72)【発明者】
【氏名】山田 修平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 明弘
【審査官】 久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−117768(JP,A)
【文献】 特開2012−214563(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/099530(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08B 3/00−3/30
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂から選ばれる少なくとも1種である熱可塑性樹脂、
(b)疎水基とカルボキシル基を有するセルロース繊維、及び
(c)ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算での重量平均分子量が5,000〜500,000であるエポキシ基を有する添加剤
を、前記(a)/前記(b)/前記(c)=25〜94/5〜55/1〜25の質量比にて混合することを特徴とする、成形材料用樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記(c)のエポキシ当量が150〜1000g/eqである、請求項1に記載の成形材料用樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
前記(b)が、セルロース繊維中の水酸基を、(d)多価塩基酸無水物と反応させて疎水基とカルボキシル基を導入したものおよび/またはその多価金属塩である、請求項1に記載の成形材料用樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
(d)多価塩基酸無水物が、アルキル若しくはアルケニルコハク酸無水物から選ばれる少なくとも1種である、請求項に記載の成形材料用樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
前記(c)が、スチレン/(メタ)アクリレート/グリシジル基と不飽和結合を有するモノマーの共重合体および/または(メタ)アクリレート/グリシジル基と不飽和結合を有するモノマーの共重合体である、請求項1に記載の成形材料用樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
前記グリシジル基と不飽和結合を有するモノマーがグリシジル(メタ)アクリレートである、請求項に記載の成形材料用樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
前記(c)中のグリシジル基と不飽和結合を有するモノマー単位の含有比率が、5〜99質量%である、請求項5または6に記載の成形材料用樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
前記(a)、前記(b)、及び前記(c)を混合した後、更に前記(a)を加えて、混合して得られる、請求項1〜のいずれか一項に記載の成形材料用樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
混合が溶融混練である、請求項1又はに記載の成形材料用樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか一項に記載の成形材料用樹脂組成物の製造方法で得られた成形材料用樹脂組成物を成形加工したものである、前記(a)/前記(b)/前記(c)=67〜92/5〜30/3〜10なる質量比を有する成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形材料用途に好適な成形材料用樹脂組成物の製造方法、およびその成形体に関し、詳しくは成形体の強度を飛躍的に向上し得る、熱可塑性樹脂とセルロース繊維の複合体である成形材料用樹脂組成物の製造方法およびその成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、成形材料用樹脂に用いられる補強材料として、炭素繊維やガラス繊維等が広く一般的に使用されている。しかしながら、炭素繊維は燃え難いため、サーマルリサイクルに不向きで、かつ価格が高い。また、ガラス繊維は比較的安価であるが、サーマルリサイクルにおいては廃棄に問題がある。
【0003】
一方、植物繊維から得られるミクロフィブリル化セルロースは比較的安価であり、かつサーマルリサイクルに優れている。また、鋼鉄の5分の1の軽さで同等以上の強度や剛性(弾性率)を有することから、成形材料用樹脂の補強剤として注目されている。
【0004】
しかしながら、ミクロフィブリル化セルロース親水性が高く、セルロースよりも疎水性が高い成形材料用樹脂との親和性に乏しい。この為、単純に混合するだけでは成形材料用樹脂にミクロフィブリル化セルロースを均一に分散させることが難しく、ミクロフィブリル化セルロースと樹脂との間の界面ので接着強度も低い為、ミクロフィブリル化セルロースによる補強効果が十分に発現せず、逆に曲げ強度等の機械的強度が低下する場合もある。
【0005】
このような課題に対して、ミクロフィブリル化セルロースの樹脂中での分散性を改善させる目的で、相溶化剤を用いる。あるいは、ミクロフィブリル化工程の前後においてセルロース繊維を疎水変性剤等によって疎水変性処理する試みがなされている。
【0006】
例えば特許文献1等に記載されているように、セルロース系のミクロフィブリル化植物繊維とポリプロピレン等のポリオレフィンからなる樹脂組成物において、マレイン酸変性ポリプロピレンを相溶化剤、又は界面補強剤として使用することが広く知られている。
【0007】
また、特許文献2では、ミクロフィブリル化セルロースの水酸基の一部に疎水変性剤として多価塩基酸無水物を用い、得られた疎水変性セルロース繊維を樹脂の補強材料として用いることが記載されている。
【0008】
上記いずれの方法を用いても、ミクロフィブリル化セルロースの補強効果が発現し成形体の機械的強度は向上するが、更なる機械的強度の向上が望まれていた。また、セルロースの水酸基の一部に多価塩基酸無水物を用いる場合、同時にカルボキシル基も導入されるため、樹脂を高温で溶融混練や成形加工した際の、樹脂組成物の着色や、樹脂にポリアセタールを用いた場合の分解物に起因するホルムアルデヒド由来の臭気が課題となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許公開公報第US2008/0146701号
【特許文献2】特開2012−214563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、熱可塑性樹脂と変性セルロース繊維との混合物を高温で溶融混練して成形する際の臭気や成形体とした際に問題となる着色の発生、成形体の強度の低下を招かない耐熱性能に優れた成形材料用樹脂組成物の製造方法、およびその成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、熱可塑性樹脂と、疎水基とカルボキシル基を有するセルロース繊維とを溶融混練する際に、同時に、特定のエポキシ基を有する添加剤を加えることで、高温で溶融混練や成形加工されても分解物の発生が少なく、相対的に着色が抑制された成形体とすることができる成形材料用樹脂組成物を得ることができる。また、本発明の成形材料用樹脂組成物を成形材料の補強材料として用いた場合に高強度の成形体が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明は、
(1)(a)熱可塑性樹脂、
(b)疎水基とカルボキシル基を有するセルロース繊維、及び
(c)ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算での重量平均分子量が5,000〜500,000であるエポキシ基を有する添加剤
を、前記(a)/前記(b)/前記(c)=25〜94/5〜55/1〜25の質量比にて混合することを特徴とする、成形材料用樹脂組成物の製造方法、
(2)前記(c)のエポキシ当量が150〜1000g/eqである、前記(1)に記載の成形材料用樹脂組成物の製造方法、
(3)前記(a)が、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂から選ばれる少なくとも1種である、前記(1)に記載の成形材料用樹脂組成物の製造方法、
(4)前記(b)が、セルロース繊維中の水酸基を、(d)多価塩基酸無水物と反応させて疎水基とカルボキシル基を導入したものおよび/またはその多価金属塩である、前記(1)の成形材料用樹脂組成物の製造方法、
(5)(d)多価塩基酸無水物が、アルキル若しくはアルケニルコハク酸無水物から選ばれる少なくとも1種である、前記(4)に記載の成形材料用樹脂組成物の製造方法、
(6)前記(c)が、スチレン/(メタ)アクリレート/グリシジル基と不飽和結合を有するモノマーの共重合体および/または(メタ)アクリレート/グリシジル基と不飽和結合を有するモノマーの共重合体である、前記(1)に記載の成形材料用樹脂組成物の製造方法、
(7)前記グリシジル基と不飽和結合を有するモノマーがグリシジル(メタ)アクリレートである、前記(6)に記載の成形材料用樹脂組成物の製造方法、
(8)
前記(c)中のグリシジル基と不飽和結合を有するモノマー単位の含有比率が、5〜99質量%である、前記(6)または(7)に記載の成形材料用樹脂組成物の製造方法、
(9)前記(a)、前記(b)、及び前記(c)を混合した後、更に前記(a)を加えて、混合して得られる、前記(1)〜(8)のいずれか一項に記載の成形材料用樹脂組成物の製造方法、
(10)混合が溶融混練である、前記(1)又は(9)に記載の成形材料用樹脂組成物の製造方法。
(11)前記(1)〜(10)のいずれか一項に記載の成形材料用樹脂組成物の製造方法で得られた成形材料用樹脂組成物を成形加工したものである、前記(a)/前記(b)/前記(c)=67〜92/5〜30/3〜10なる質量比を有する成形体、
である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の成形材料用樹脂組成物の製造方法によれば、成形材料用樹脂組成物を成形体とすると着色を相対的に抑制することができ、成形する際の臭気の発生を相対的に抑制することができ、また得られた成形材料用樹脂組成物を成形材料の補強材料として用いた場合、高強度の成形体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の成形材料用樹脂組成物の製造方法においては、(a)熱可塑性樹脂、(b)疎水基とカルボキシル基を有するセルロース繊維、及び(c)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略することがある。)により測定したポリスチレン換算での重量平均分子量(以下、Mwと略することがある。)が5,000〜500,000であるエポキシ基を有する添加剤を、前記(a)/前記(b)/前記(c)=25〜94/5〜55/1〜25なる質量比にて混合する。
【0015】
本発明の成形材料用樹脂組成物の製造方法で用いる(a)熱可塑性樹脂としては、成形材料用樹脂組成物として通常用いられている熱可塑性樹脂であれば特に限定されない。ポリアセタール樹脂;ナイロンなどのポリアミド樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体などのポリオレフィン樹脂;ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂;ポリメチルメタクリレートやポリエチルメタクリレートなどのアクリル樹系脂;ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン樹脂、アクリロニトリル−エチレンゴム−スチレン樹脂、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン樹脂、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体などのスチレン樹脂;アイオノマー樹脂;ポリアクリルニトリル;エチレン−酢酸ビニル樹脂;エチレン−アクリル酸樹脂、エチレン−エチルアクリレート樹脂、エチレン−ビニルアルコール樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデンなどの塩素樹脂;ポリフッ化ビニルやポリフッ化ビニリデンなどのフッ素樹脂;変性ポリフェニレンエーテル樹脂、メチルペンテン樹脂、セルロース樹脂等の熱可塑性樹脂、ならびにオレフィン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、スチレン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等の熱可塑性エラストマー等樹脂およびこれらの二種以上の混合物が挙げられる。溶融混練時の好適な混練温度が120〜280℃であるポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂を用いた場合に好適である。
【0016】
本発明の成形材料用樹脂組成物の製造方法で用いる(b)疎水基とカルボキシル基を有するセルロース繊維は、セルロースに疎水基とカルボキシル基を導入したものであれば特に限定されないが、熱可塑性樹脂に対する分散性の観点から、混合する熱可塑性樹脂に応じて、適度な置換度を有することが好ましく、また機械強度向上の観点から、混合後の成形材料用樹脂組成物中に適度な比表面積、繊維径、繊維長を有するミクロフィブリル化された状態で、十分に分散していることが好ましい。本発明の成形材料用樹脂組成物の製造方法において、原料の(b)疎水基とカルボキシル基を有するセルロース繊維は、混合後の成形材料用樹脂組成物中で十分にミクロフィブリル化されていれば良く、混合前に必ずしもミクロフィブリル化されたものである必要はない。ミクロフィブリル化の方法としては、特に限定されないが、混合時にミクロフィブリル化する場合は、疎水基とカルボキシル基を有するセルロース繊維と熱可塑性樹脂を一軸又は多軸混練機、ニーダー等で処理する方法が好ましい。
【0017】
(b)疎水基とカルボキシル基を有するセルロース繊維を製造する際の、セルロース繊維への疎水基とカルボキシル基の導入方法は特に限定されず、少なくとも疎水基とカルボキシル基が導入されていれば良い。特にセルロース繊維の水酸基に、変性化剤として多価塩基酸無水物をエステル化反応して、疎水基とカルボキシル基を導入する方法が、疎水基とカルボキシル基の導入効率、製造の容易性、製造コスト、あるいは樹脂組成物中の不純物(未反応物、副生成物、触媒等)が他の方法に比べ少なくなるなどの点から総合的に好ましい。また、導入されたカルボキシル基を金属塩とする場合は多価金属の水酸化物、塩化物等の処理により、カルボン酸多価金属塩となっていることが好ましい。
前記多価塩基酸無水物としては、特に限定されないが、アルキル若しくはアルケニルコハク酸無水物、マレイン酸無水物、フマル酸無水物、コハク酸無水物などが挙げられる。樹脂との相溶性の観点から、アルキル若しくはアルケニルコハク酸無水物が好ましく、より好ましくは、オクテニルコハク酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、ヘキサデセニルコハク酸無水物、オクタデセニルコハク酸無水物である。
【0018】
また、前記多価金属の水酸化物としては、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどを挙げられ、塩化物としては、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウムなどが挙げられ、これらを単独あるいは2種以上用いて、半エステルの形でセルロース上に導入したカルボキシル基を部分的にあるいは全て多価金属塩として用いることができる。この中でも、製造コストの面から、塩化カルシウム、塩化マグネシウムが好ましい。
【0019】
(b)疎水基とカルボキシル基を有するセルロース繊維の置換度(セルロースのグルコース単位あたり1つの水酸基が置換された場合、置換度1と表す。以下、DSと略することがある。)は、0.05〜2.0が好ましく、0.1〜1.0がより好ましく、0.1〜0.8がさらに好ましい。DSを0.05以上に設定することによって、樹脂に対する分散性が良好となり、得られる成形体の機械強度を向上させることができる。また、DSを2.0以下に設定することによって、ミクロフィブリル化セルロース内部まで過剰に水酸基が置換されることを防ぎ、水素結合力の低下を抑制することができる。そのため、セルロース繊維の強度の低下を抑制することができ、期待される補強効果が得られる。
【0020】
なお、本発明におけるDSは、洗浄により原料として用いた変性化剤や、それらの加水分解物等の副生成物を除去した後、重量増加率により求めたものである。
【0021】
(b)疎水基とカルボキシル基を有するセルロース繊維を得るのに使用する原料としては、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、綿、ビートなどに含まれる植物由来の繊維が挙げられる。好ましいセルロース繊維原料としては木材が挙げられ、例えば、マツ、スギ、ヒノキ、ユーカリ、アカシアなどが挙げられ、また、これらを原料として得られる紙、あるいは古紙なども用いることができる。植物由来の繊維は、1種単独でも用いてもよく、これらから選ばれた2種以上を用いてもよい。
【0022】
セルロース繊維としては、前記植物繊維含有材料から得られるパルプ、マーセル化を施したセルロース繊維、レーヨンやセロファン、リヨセル等の再生セルロース繊維などを含むものも挙げられる。
【0023】
前記パルプとしては、植物原料を化学的、若しくは機械的に、又は両者を併用してパルプ化することで得られるケミカルパルプ(未晒クラフトパルプ(UKP)、漂白クラフトパルプ(BKP)、亜硫酸パルプ(SP))、セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグランドパルプ(CGP)、ケミメカニカルパルプ(CMP)、砕木パルプ(GP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等が挙げられる。
【0024】
本発明の製造方法で用いる前記(c)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる測定において、ポリスチレン換算で重量平均分子量が5,000以上である必要がある。重量平均分子量が5,000未満であると、着色の低減や成形体の機械的強度の向上には寄与しない。重量平均分子量100,000以上になると、機械的強度はほとんど変わらなくなるが、混合工程での樹脂との混ざりやすさや加工のし易さを考慮すれば、500,000以下であることが好ましい。強度の観点から、より好ましくは10,000以上であり、加工適性の観点から、300,000以下、更に好ましくは100,000以下である。
【0025】
本発明の製造方法で用いる前記(c)は、前記重量平均分子量を有し、かつエポキシ基を有するものであれば特に限定されないが、例えば、スチレン/(メタ)アクリレート/グリシジル基と不飽和結合を有するモノマーの共重合体および/または(メタ)アクリレート/グリシジル基と不飽和結合を有するモノマーの共重合体が挙げられる。
【0026】
グリシジル基と不飽和結合を有するモノマーは、特に限定されず、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテルなどが挙げられ、1種または2種以上を混合して前記(c)の重合に用いても構わない。
【0027】
スチレン/(メタ)アクリレート/グリシジル基と不飽和結合を有するモノマーの共重合体および/または(メタ)アクリレート/グリシジル基と不飽和結合を有するモノマーの共重合体としては、スチレン/(メタ)アクリレート/グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、(メタ)アクリレート/グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン/グリシジル(メタ)アクリレート共重合体が好ましく、より好ましくはスチレン/(メタ)アクリレート/グリシジル(メタ)アクリレート共重合体、(メタ)アクリレート/グリシジル(メタ)アクリレート共重合体である。これら(c)は、単独で用いても、あるいは2種以上混合して用いても構わない。また、発明の効果を妨げない範囲で、前記(c)を重合する際、他の重合可能な不飽和結合を有するモノマーを用いても構わない。
【0028】
本発明の製造方法で用いる前記(c)中のグリシジル基と不飽和結合を有するモノマー単位の含有比率が、5〜99質量%であることが好ましく、10〜70質量%であることがより好ましく、15〜50質量%であることがさらに好ましい。前記(c)中のグリシジル基と不飽和結合を有するモノマー単位の含有比率が、5〜99質量%であるとは、前記グリシジル基と不飽和結合を有するモノマーが共重合体成分に占める質量比率のことである。
【0029】
前記(c)のエポキシ当量が150〜1000g/eqであるものが、少量の添加で熱的劣化を抑制する効果が得られることから好ましい。エポキシ当量が1000g/eqよりも多くなると、熱的劣化を抑制する効果は得られるものの、得られる樹脂組成物の機械強度に悪影響を及ぼす恐れがある。本発明の前記(c)のエポキシ当量は1当量のエポキシ基を含む前記(c)の質量であり、以下の式から算出されたものである。

エポキシ当量(g/eq)=(グリシジル基と不飽和結合を有するモノマーの分子量)×100÷((c)中のグリシジル基と不飽和結合を有するモノマー単位の含有比率(質量%))
【0030】
本発明の成形材料用樹脂組成物の製造方法においては、前記した(a)熱可塑性樹脂、(b)疎水基とカルボキシル基を有するセルロース繊維、(c)ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算での重量平均分子量が5,000〜500,000であるエポキシ基を有する添加剤を前記(a)/前記(b)/前記(c)=25〜94/5〜55/1〜25なる質量比にて混合し、所望の成形材料用樹脂組成物を製造する。成形材料用樹脂組成物の加工適性(分散性、混練時間短縮、ペレット化など)を考慮すれば、成形材料用樹脂組成物中に(a)熱可塑性樹脂が、25質量%以上含まれている必要がある。また、成形体の機械強度を十分に得るためには、成形材料用樹脂組成物中に(b)疎水基とカルボキシル基を有するセルロース繊維が少なくとも5質量%含まれている必要がある。そして、溶融混練時や成形加工時の熱的劣化を抑制するためには、成形材料用樹脂組成物中に前記(c)が、少なくとも1質量%含まれている必要がある。また、前記(c)は成形材料用樹脂組成物中に少なくとも1質量%含まれていれば、溶融混練時に加えてもよいし、成形加工時に加えてもよいし、溶融混練時と成形加工時の両方に加えてもよい。
【0031】
本発明の製造方法においては、(a)熱可塑性樹脂と(b)疎水基とカルボキシル基を有するセルロース繊維と前記(c)との混合は、混練が好ましく、特に、溶融混練とすることが好ましい。
【0032】
本発明の製造方法においては、一軸又は多軸混練機、ニーダー等を用いて、(a)熱可塑性樹脂と(b)疎水基とカルボキシル基を有するセルロース繊維と前記(c)とを混合し、樹脂成分中に繊維成分を均一に微細分散させて樹脂組成物を製造する。混合前の(b)疎水基とカルボキシル基を有するセルロース繊維が、予め解繊されていないものを用いる場合、この混合工程において繊維成分が十分に解繊される。
【0033】
また、(a)熱可塑性樹脂と(b)疎水基とカルボキシル基を有するセルロース繊維と前記(c)とを混合する前に、前記(b)と、粉末化した前記(a)とをあらかじめ混合しておいてもよい。あらかじめ混合しておくことで、混合時に(b)疎水基とカルボキシル基を有するセルロース繊維をより容易に(a)熱可塑性樹脂に分散させやすくなる。(b)疎水基とカルボキシル基を有するセルロース繊維と、粉末化した(a)熱可塑性樹脂とをあらかじめ混合する際には、乾燥した前記(b)と、乾燥し粉末化した前記(a)とをミキサー等で混合してもよいし、(a)熱可塑性樹脂と(b)疎水基とカルボキシル基を有するセルロース繊維のいずれとも反応しない溶剤中に粉末化した前記(a)と前記(b)を分散させ、この分散液を濾過、乾燥してもよい。
【0034】
そして、本発明の製造方法においては、一軸又は多軸混練機、ニーダー等を用いて混合を行うが、混合における原料の配合順や混合温度、溶融のタイミングは特に限定されない。例えば、(a)熱可塑性樹脂と、(b)疎水基とカルボキシル基を有するセルロース繊維と、前記(c)とを溶融して混練しても良いし、または、予め(a)熱可塑性樹脂を溶融しておき、混練時に前記(b)と前記(c)を一緒にあるいは別々に混合しても良い。具体的な好ましい一の態様として、次の(I)〜(III)工程を経る溶融混練が挙げられる。
【0035】
(I)一軸又は多軸混練機、ニーダー等に(a)熱可塑性樹脂を供給して、機内で(a)熱可塑性樹脂を溶融させる工程、(II)(b)疎水基とカルボキシル基を有するセルロース繊維と、前記(c)とを混合した混合物を供給し、混練することで、前記(b)を前記(a)中で微細分散させる工程、(III)混練物を取り出す工程。
【0036】
この場合において、(I)の工程は加工性や(a)熱可塑性樹脂および(b)疎水基とカルボキシル基を有するセルロース繊維の分散や劣化を考慮すると、温度が120〜240℃であることが好ましく、(II)の工程は(b)疎水基とカルボキシル基を有するセルロース繊維の分散や劣化を考慮すると、温度が120〜200℃であることが好ましく、(III)の工程は温度が120〜200℃で、あることが好ましい。また、一軸又は多軸混練機のスクリュー回転速度は全工程とも25〜400rpmの範囲であることが好ましい。
【0037】
また、本発明の成形材料用樹脂組成物の製造方法においては、(a)熱可塑性樹脂、(b)疎水基とカルボキシル基を有するセルロース繊維、及び前記(c)を溶融混練した後に、更に(a)熱可塑性樹脂を溶融混練して成形材料用樹脂組成物を得る態様も含まれる。
【0038】
1回の工程で(a)熱可塑性樹脂、(b)疎水基とカルボキシル基を有するセルロース繊維、及び前記(c)を全量溶融混練する工程で得られた成形材料用樹脂組成物と、前記(b)、前記(c)が比較的多い状態で一度前記(a)、前記(b)、前記(c)を溶融混練する工程を経た後、更に前記(a)を加えて溶融混練することで得られた成形材料用樹脂組成物とでは、略同等の機械強度を有する。分割回数は特に制限されないが、工程が煩雑にならない1〜3回程度の分割溶融混練が望ましい。
【0039】
上述の分割溶融混練は、先述の成形材料用樹脂組成物の溶融混練と同様に行うことができ、具体的には、成形材料用樹脂組成物と、(a)熱可塑性樹脂とを予め混合したものを溶融、あるいは別々に溶融したものを混合し、混練する。
【0040】
前記成形材料用樹脂組成物の製造方法で得られた成形材料用樹脂組成物を成形加工して、成形体を得る。成形体は、前記(a)/前記(b)/前記(c)=67〜92/5〜30/3〜10なる質量比を有することが、成形体の加工適性、機械的強度の点から好ましい。
【0041】
上述した本発明で得られる成形材料用樹脂組成物には、必要に応じて、本発明の効果を妨げない範囲で滑材、ワックス類、着色剤、安定剤、フィラー、その他の各種の添加剤を配合してもよい。
【0042】
本発明で得られる成形材料用樹脂組成物は、種々の形状に成形し、樹脂成形材料として用いることが出来る。形状としては、例えば、シート状、フィルム状、ペレット状、粉末状等が挙げられる。これらの形状を有する成形材料は、例えばプレス成形、射出成形、押出成形、ブロー成形、延伸成形、発泡成形等を用いて得られる。そして、本発明で得られる成形材料用樹脂組成物を最終製品で用いる形態に、先述した成形方法により成形することで、成形体を製造することができる。得られた成形体は、自動車部品、家電筐体、建築資材、包装材料等に利用することが可能である。
【0043】
成形体中で前記(b)がミクロフィブリル化されていることが好ましく、その確認は、成形体中の(a)を、(a)を溶かす溶剤で洗い流した後、電子顕微鏡で観察することによって可能となる。ミクロフィブリル化セルロースの繊維径は、平均値が通常4〜200nm、好ましくは4〜150nm、特に好ましくは4〜100nmである。なお、ミクロフィブリル化セルロースの繊維径の平均値(平均繊維径)は、電子顕微鏡の視野内の変性ミクロフィブリル化セルロースの少なくとも50本以上について測定した時の平均値である。
【実施例】
【0044】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特にことわりのないかぎり、「部」とあるのは「質量部」を示す。
【0045】
これらの実施例の一部で用いられた物性値測定法は、以下のとおりである。
(1)疎水基とカルボキシル基置換度(DS)の算出
DSの算出は以下の式より算出した。


(2)引張弾性率(ヤング率)…(a)熱可塑性樹脂がポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂の樹脂組成物はJISK−6732に準拠して、オリエンテック(株)製引張試験機「テンシロンRTM−50」で測定した。(a)熱可塑性樹脂がポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂の複合材料はJISK−6732に準拠してオリエンテック(株)製万能引張圧縮試験機「テンシロンUTM−10」で測定した。
(3)色目
(a)熱可塑性樹脂がポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂である樹脂組成物について、手動射出成形機(井元製作所(株)製;型式18D1)により作製した成形材料用樹脂組成物成形体を試料として、ORBECO ANALYTICAL SYSTEMS,INC.製ガードナー・ヘリーゲ色相計(カラーディスク:No.620C−43、No.620C−44)を用いて、試料とカラーディスクとの色調を比較し、最も近い標準色のカラーナンバーを選択した。
(4)カルシウム量の算出
セルロース繊維に疎水基とカルボキシル基を導入した後、塩化カルシウムによりカルボン酸塩としたものについては、ICP発光分光分析装置(Seiko Instruments Inc.製、SPS7800)を用いて、カルシウム量を測定した。
【0046】
[(b)セルロース繊維(B−1)の製造例]
含水の針葉樹漂白パルプ(以下、NBKPと略することがある。)250g(固形分50g)にN−メチルピロリドン(以下、NMPと略することがある。)を2000g加え、撹拌機でよく攪拌した後、ブフナー漏斗で吸引濾過を行った。この操作を3回繰り返し、NMPで膨潤させたNBKP500gを得た。得られたNMPで膨潤させたNBKP500gを、攪拌機、温度計、還流冷却器を備えたセパラブルフラスコに入れ、NMPを500g加えた後、攪拌しながら70℃に昇温した。次いで、ヘキサデセニルコハク酸無水物(分子量322)を99.4g、炭酸カリウムを21.3g加え、70℃で1時間反応させた。反応後、エタノール、酢酸水、水で順次洗浄し、エタノールで溶剤置換することで、エタノールに膨潤した疎水基とカルボキシル基を有するセルロース繊維を得た。得られたセルロース繊維の多価塩基酸無水物の置換度(DS)は0.35であった。これを(B−1)とした。
【0047】
[(b)セルロース繊維(B−2)の製造例]
含水のNBKP500g(固形分100g)にNMPを4000g加え、撹拌機でよく攪拌した後、ブフナー漏斗で吸引濾過を行った。この操作を3回繰り返し、NMPで膨潤させたNBKP1000gを得た。得られたNMPで膨潤させたNBKP1000gをセパラブルフラスコに入れ、NMPを1000g加えた後、攪拌しながら70℃に昇温した。次いで、ヘキサデセニルコハク酸無水物(分子量322)を198.8g、炭酸カリウムを42.6g加え、70℃で1時間反応させた。反応後、全体の半量を取り出し、エタノール、酢酸水、水で順次洗浄し、エタノールで溶剤置換することで、エタノールに膨潤した疎水基とカルボキシル基を有するセルロース繊維を得た。得られたセルロース繊維の多価塩基酸無水物の置換度(DS)は0.35であった。
残る半量について、エタノール、水で順次洗浄した。さらにこれを水に分散させて、3質量%の水分散液とし、攪拌している所に16質量%の塩化カルシウム水溶液150gを添加して1時間攪拌した。これを水洗し、エタノールで溶剤置換することにより、エタノールに膨潤したカルボキシル基の一部がカルシウムで変性されたカルボキシル基と疎水基を有するセルロース繊維を得た。これを(B−2)とした。(B−2)についてカルシウム量を測定したところ、カルシウム量は1.2質量%であり、カルボキシル基の半量がカルシウム塩となっていることがわかった。
【0048】
[(b)セルロース繊維(B−3)の製造例]
含水のNBKP500g(固形分100g)にNMPを4000g加え、撹拌機でよく攪拌した後、ブフナー漏斗で吸引濾過を行った。この操作を3回繰り返し、NMPで膨潤させたNBKP1000gを得た。得られたNMPで膨潤させたNBKP1000gを攪拌機、温度計、還流冷却器を備えたセパラブルフラスコに入れ、NMPを1000g加えた後、攪拌しながら70℃に昇温した。次いで、変性化剤としてドデセニルコハク酸無水物(分子量266)を164.2g、炭酸カリウムを42.6g加え、70℃で1時間反応させた。反応後、全体の半量を取り出し、エタノール、酢酸水、水で順次洗浄し、エタノールで溶剤置換することで、エタノールに膨潤した疎水基とカルボキシル基を有するセルロース繊維を得た。得られたセルロース繊維の多価塩基酸無水物の置換度(DS)は0.35であった。残る半量について、エタノール、水で順次洗浄した。さらにこれを水に分散させて、3質量%の水分散液とし、攪拌している所に16質量%の塩化カルシウム水溶液150gを添加して1時間攪拌した。これを水洗し、エタノールで溶剤置換することにより、エタノールに膨潤したカルボキシル基の一部がカルシウムで変性されたカルボキシル基と疎水基を有するセルロース繊維を得た。これを(B−3)とした。(B−3)についてカルシウム量を測定したところ、カルシウム量は1.3質量%であり、カルボキシル基の約半量がカルシウム塩となっていることが分かった。
【0049】
[(b)セルロース繊維(B−4)の製造例]
セルロース繊維(B−1)〜(B−3)と同じ含水のNBKP250g(固形分50g)にエタノールを1000g加えて攪拌した後濾過することで、エタノールに膨潤した未変性セルロース繊維(B−4)を得た。
【0050】
【表1】
【0051】
[(c)エポキシ基を有する添加剤(C−1)の製造例]
攪拌機、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えた5000mLセパラブルフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート500gを入れ、窒素雰囲気下、攪拌を行いながらフラスコ内が140℃になるように油浴の温度を調整した。スチレン500g、メチルメタクリレート230g、グリシジルメタクリレート270gとジ−t−ブチルパーオキサイド5gを、3時間にわたり滴下して反応させた。滴下終了後、140℃で3時間反応を行った後、フラスコ内が185℃になるまで常圧でプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを除去した。その後アスピレーターでフラスコ内を減圧しながら、フラスコ内が185℃でプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの除去を1時間行い、減圧終了後、反応物を取り出し、冷却することで、エポキシ基含有の樹脂組成物の固形品を得た。得られたエポキシ基を有する添加剤(C−1)のエポキシ当量は526g/eqである。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算での重量平均分子量は47,000であった。
【0052】
[(c)エポキシ基を有する添加剤(C−2)の製造例]
攪拌機、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えた5000mLセパラブルフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート500gを入れ、窒素雰囲気下、攪拌を行いながらフラスコ内が140℃になるように油浴の温度を調整した。メチルメタクリレート710g、グリシジルメタクリレート270g、n−ブチルアクリレート20gとジ−t−ブチルパーオキサイド10gを、3時間にわたり滴下して反応させた。滴下終了後、140℃で3時間反応を行った後、フラスコ内が185℃になるまで常圧でプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを除去した。その後アスピレーターでフラスコ内を減圧しながら、フラスコ内が185℃でプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの除去を1時間行い、減圧終了後、反応物を取り出し、冷却することで、エポキシ基含有の樹脂組成物の固形品を得た。得られたエポキシ基を有する添加剤(C−2)のエポキシ当量は526g/eqである。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算での重量平均分子量は28,000であった。
【0053】
[(c)エポキシ基を有する添加剤(C−3)の製造例]
攪拌機、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えた5000mLセパラブルフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1000gを入れ、窒素雰囲気下、攪拌を行いながらフラスコ内が140℃になるように油浴の温度を調整した。スチレン500g、メチルメタクリレート230g、グリシジルメタクリレート270gとジ−t−ブチルパーオキサイド35gを、3時間にわたり滴下して反応させた。滴下終了後、140℃で3時間反応を行った後、フラスコ内が185℃になるまで常圧でプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを除去した。その後アスピレーターでフラスコ内を減圧しながら、フラスコ内が185℃でプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの除去を1時間行い、減圧終了後、反応物を取り出し、冷却することで、エポキシ基含有の樹脂組成物の固形品を得た。得られたエポキシ基を有する添加剤(C−3)のエポキシ当量は526g/eqである。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算での重量平均分子量は10,000であった。
【0054】
[(c)エポキシ基を有する添加剤(C−4)の製造例]
攪拌機、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えた5000mLセパラブルフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1000gを入れ、窒素雰囲気下、攪拌を行いながらフラスコ内が140℃になるように油浴の温度を調整した。スチレン500g、メチルメタクリレート305g、グリシジルメタクリレート195gとジ−t−ブチルパーオキサイド35gを、3時間にわたり滴下して反応させた。滴下終了後、140℃で3時間反応を行った後、フラスコ内が185℃になるまで常圧でプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを除去した。その後アスピレーターでフラスコ内を減圧しながら、フラスコ内が185℃でプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの除去を1時間行い、減圧終了後、反応物を取り出し、冷却することで、エポキシ基含有の樹脂組成物の固形品を得た。得られたエポキシ基を有する添加剤(C−4)のエポキシ当量は728g/eqである。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算での重量平均分子量は10,000であった。
【0055】
【表2】
GMA:グリシジルメタクリレート
MMA:メチルメタクリレート
BA:n−ブチルアクリレート
St:スチレン
Mw:重量平均分子量
【0056】
[実施例1]
(a)熱可塑性樹脂としてポリエチレン樹脂16部(住友精化(株)製「フロービーズHE3040」)、(b)セルロース繊維として(B−1)17部をとり、エタノールを加えて5%のエタノール分散液を作成し、撹拌機でよく攪拌した後、濾過、乾燥して前記(a)と前記(b)の混合粉末を得た。混合粉末にポリエチレン樹脂57部(住友精化(株)「フロービーズHE3040」)、(c)エポキシ基を有する添加剤として(C−1)10部をプラスチックカップにとり、薬さじでよく攪拌した後、小型二軸混練機(東洋精機(株)製、商品名ラボプラストミル)に投入し、100rpm、140℃で10分間溶融混練した。得られた混練物を手動射出成形機(井元製作所(株)製;型式18D1)に投入し、射出温度170℃、金型温度25℃で射出成形し、厚さ2mmのダンベル型試験片を得た。
【0057】
[比較例1]
混合粉末に加えるポリエチレン樹脂57部を67部にし、(c)エポキシ基を有する添加剤として(C−1)を用いない以外は、実施例1と同様にして、厚さ2mmのダンベル型試験片を得た。
【0058】
[比較例2]
(a)熱可塑性樹脂としてポリエチレン樹脂80部(住友精化(株)製「フロービーズHE3040」)と、(b)セルロース繊維として(B−4)10部、(c)エポキシ基を有する添加剤として(C−1)10部をプラスチックカップにとり、薬さじでよく攪拌した後、小型二軸混練機(東洋精機(株)製、商品名ラボプラストミル)に分投入し、100rpm、140℃で10分間溶融混練した。得られた混練物を手動射出成形機(井元製作所(株)製;型式18D1)に投入し、射出温度170℃、金型温度25℃で射出成形し、厚さ2mmのダンベル型試験片を得た。
【0059】
[参考例1]
(a)熱可塑性樹脂としてポリエチレン樹脂100部(住友精化(株)製「フロービーズHE3040」)を手動射出成形機(井元製作所(株)製;型式18D1)に投入し、射出温度170℃、金型温度25℃で射出成形し、厚さ2mmのダンベル型試験片を得た。
【0060】
[成形材料用樹脂組成物成形体の物性評価]
実施例1、比較例1、2、参考例1で得られた成形体の物性(色目、ダンベル型試験片の弾性率)を表3に示す。
【0061】
【表3】
PE:ポリエチレン樹脂(住友精化(株)製「フロービーズHE3040」)
【0062】
[実施例2]
(a)熱可塑性樹脂としてポリプロピレン樹脂81部((株)プライムポリマー製「H−700」)、(b)セルロース繊維として減圧乾燥により乾固した(B−3)16部、(c)エポキシ基を有する添加剤として(C−1)3部をプラスチックカップにとり、薬さじでよく攪拌した後、小型二軸混練機(東洋精機(株)製、商品名ラボプラストミル)に投入し、100rpm、180℃で10分間溶融混練した。得られた混練物を手動射出成形機(井元製作所(株)製;型式18D1)に投入し、射出温度190℃、金型温度25℃で射出成形し、厚さ2mmのダンベル型試験片を得た。
【0063】
[実施例3]
(a)熱可塑性樹脂としてポリプロピレン樹脂81部を73部に、(b)セルロース繊維として減圧乾燥により乾固した(B−3)16部を(B−1)17部に、(c)エポキシ基を有する添加剤として(C−1)3部を10部にした以外は実施例2と同様にして、厚さ2mmのダンベル型試験片を得た。
【0064】
[比較例3]
加えるポリプロピレン樹脂81部を83部に、(b)セルロース繊維として減圧乾燥により乾固した(B−3)16部を(B−1)17部に、(c)エポキシ基を有する添加剤として(C−1)を用いない以外は、実施例2と同様にして、厚さ2mmのダンベル型試験片を得た。
【0065】
[参考例2]
(a)熱可塑性樹脂としてポリプロピレン樹脂100部((株)プライムポリマー製「H−700」)を手動射出成形機(井元製作所(株)製;型式18D1)に投入し、射出温度190℃、金型温度25℃で射出成形し、厚さ2mmのダンベル型試験片を得た。
【0066】
[成形材料用樹脂組成物成形体の物性評価]
実施例2、3、比較例3、参考例2で得られた成形体の物性(色目、ダンベル型試験片の弾性率)を表4に示す。
【0067】
【表4】
PP:ポリプロピレン樹脂((株)プライムポリマー製「H−700」)
【0068】
[実施例4]
(a)熱可塑性樹脂としてポリアミド樹脂88部(ダイセルエボニック(株)製「ベストジント2159natural」)、(b)セルロース繊維として減圧乾燥により乾固した(B−2)9部、(c)エポキシ基を有する添加剤として(C−1)3部をプラスチックカップにとり、薬さじでよく攪拌した後、小型二軸混練機(東洋精機(株)製、商品名ラボプラストミル)に投入し、100rpm、180℃で5分間溶融混練した。得られた混練物を手動射出成形機(井元製作所(株)製;型式18D1)に投入し、射出温度210℃、金型温度120℃で射出成形し、厚さ2mmのダンベル型試験片を得た。
【0069】
[比較例4]
(a)熱可塑性樹脂としてポリアミド樹脂88部を91部にし、(c)エポキシ基を有する添加剤として(C−1)を用いない以外は実施例4と同様にして、厚さ2mmのダンベル型試験片を得た。
【0070】
[参考例3]
(a)熱可塑性樹脂としてポリアミド樹脂100部(ダイセルエボニック(株)製「ベストジント2159natural」)を手動射出成形機(井元製作所(株)製;型式18D1)に投入し、射出温度210℃、金型温度120℃で射出成形し、厚さ2mmのダンベル型試験片を得た。
【0071】
[成形材料用樹脂組成物成形体の物性評価]
実施例4、比較例4、参考例3で得られた成形体の物性(色目、ダンベル型試験片の弾性率)を表5に示す。
【0072】
【表5】
PA:ポリアミド樹脂(ダイセルエボニック(株)製「ベストジント2159natural」
【0073】

[実施例5]
(a)熱可塑性樹脂としてポリアセタール樹脂88部(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製「ユピタールF30−01F」)、(b)セルロース繊維として減圧乾燥により乾固した(B−2)9部、(c)エポキシ基を有する添加剤として(C−1)3部をプラスチックカップにとり、薬さじでよく攪拌した後、小型二軸混練機(東洋精機(株)製、商品名ラボプラストミル)に投入し、75rpm、180℃で5分間溶融混練した。得られた混練物を手動射出成形機(井元製作所(株)製;型式18D1)に投入し、射出温度190℃、金型温度120℃で射出成形し、厚さ2mmのダンベル型試験片を得た。射出成形時に臭気は感じられなかった。
【0074】
[実施例6]
(c)エポキシ基を有する添加剤として(C−1)の代わりに(C−2)とし、75rpmで溶融混錬する代わりに150rpmで溶融混錬する以外は実施例5と同様にして、厚さ2mmのダンベル型試験片を得た。射出成形時に臭気は感じられなかった。
【0075】
[実施例7]
(c)エポキシ基を有する添加剤として(C−1)の代わりに(C−3)とし、5分間溶融混錬する代わりに20分間溶融混錬する以外は実施例5と同様にして、厚さ2mmのダンベル型試験片を得た。射出成形時に臭気は感じられなかった。
【0076】
[実施例8]
(a)熱可塑性樹脂としてポリアセタール樹脂88部を85部とし、(c)エポキシ基を有する添加剤として(C−1)3部を(C−4)6部とし、5分間溶融混練する代わりに20分間溶融混練する以外は実施例5と同様にして、厚さ2mmのダンベル型試験片を得た。射出成形時に臭気は感じられなかった。
【0077】
[比較例5]
加えるポリアセタール樹脂88部を91部にし、(c)エポキシ基を有する添加剤として(C−1)を用いない以外は、実施例5と同様にして、厚さ2mmのダンベル型試験片を得た。射出成形時に激しい臭気が感じられた。
【0078】
[比較例6]
(c)エポキシ基を有する添加剤としてゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算での重量平均分子量が5,000未満であるポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス(株)製「デナコールEX−830」)3部を用いた以外は実施例5と同様の操作を行い、厚さ2mmのダンベル型試験片を得た。射出成形時に臭気は感じられなかった。
【0079】
[参考例4]
(a)熱可塑性樹脂としてポリアセタール樹脂100部(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製「ユピタールF30−01F」)を手動射出成形機(井元製作所(株)製;型式18D1)に投入し、射出温度190℃、金型温度120℃で射出成形し、厚さ2mmのダンベル型試験片を得た。射出成形時に臭気は感じられなかった。
【0080】
[成形材料用樹脂組成物成形体の物性評価]
実施例5〜8、比較例5、6、参考例4で得られた成形体の物性(ダンベル型試験片の弾性率)を表6に示す。
【0081】
【表6】
POM:ポリアセタール樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製「ユピタールF30−01F」)
EX:ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス(株)製「デナコールEX−830」)
【0082】
[実施例9]
(b)セルロース繊維として(B−2)の代わりに(B−1)を用いた以外は実施例5と同様にして、厚さ2mmのダンベル型試験片を得た。射出成形時に臭気は感じられなかった。
【0083】
[実施例10]
(a)熱可塑性樹脂としてポリアセタール樹脂88部を85部とし、(c)エポキシ基を有する添加剤として(C−1)3部を6部とする以外は実施例9と同様にして、厚さ2mmのダンベル型試験片を得た。射出成形時に臭気は感じられなかった。
【0084】
[実施例11]
(a)熱可塑性樹脂としてポリアセタール樹脂88部を81部とし、(c)エポキシ基を有する添加剤として(C−1)3部を10部とする以外は実施例9と同様にして、厚さ2mmのダンベル型試験片を得た。射出成形時に臭気は感じられなかった。
【0085】
[成形材料用樹脂組成物成形体の物性評価]
実施例9〜11で得られた成形体の物性(ダンベル型試験片の弾性率)を表7に示す。
【0086】
【表7】
POM:ポリアセタール樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製「ユピタールF30−01F」)
【0087】
<樹脂の分割溶融混練>
[実施例12]
(a)熱可塑性樹脂としてポリアセタール樹脂54部(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製「ユピタールF30−01F」)、(b)セルロース繊維として減圧乾燥により乾固した(B−2)34部、(c)エポキシ基を有する添加剤として(C−1)12部をプラスチックカップにとり、薬さじでよく攪拌した後、小型二軸混練機(東洋精機(株)製、商品名ラボプラストミル)に投入し、25rpm、180℃で5分間溶融混練した。
【0088】
[実施例13]
(a)熱可塑性樹脂としてポリエチレン樹脂29部(住友精化(株)製「フロービーズHE3040」)、(b)セルロース繊維として減圧乾燥により乾固した(B−1)51部、(c)エポキシ基を有する添加剤として(C−1)20部をプラスチックカップにとり、薬さじでよく攪拌した後、小型二軸混練機(東洋精機(株)製、商品名ラボプラストミル)に投入し、100rpm、140℃で10分間溶融混練した。
【0089】
[実施例14]
実施例12で得られた混練物のうち25部をとり、(a)熱可塑性樹脂としてポリアセタール樹脂75部(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製「ユピタールF30−01F」)と併せて小型二軸混練機(東洋精機(株)製、商品名ラボプラストミル)に投入し、150rpm、180℃で5分間溶融混練した。得られた混練物を手動射出成形機(井元製作所(株)製;型式18D1)に投入し、射出温度190℃、金型温度120℃で射出成形し、厚さ2mmのダンベル型試験片を得た。射出成形時に臭気は検出されなかった。
【0090】
[実施例15]
実施例13で得られた混練物のうち33部をとり、(a)熱可塑性樹脂としてポリエチレン樹脂67部(住友精化(株)製「フロービーズHE3040」)と併せて小型二軸混練機(東洋精機(株)製、商品名ラボプラストミル)に投入し、100rpm、140℃で10分間溶融混練した。得られた混練物を手動射出成形機(井元製作所(株)製;型式18D1)に投入し、射出温度170℃、金型温度25℃で射出成形し、厚さ2mmのダンベル型試験片を得た。
【0091】
実施例14で得られた成形体の物性(ダンベル型試験片の弾性率)を表9に、実施例15で得られた成形体の物性(色目、ダンベル型試験片の弾性率)を表10に示す。
【0092】
【表8】
POM:ポリアセタール樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製「ユピタールF30−01F」)
PE:ポリエチレン樹脂(住友精化(株)製「フロービーズHE3040」)
【0093】
【表9】
POM:ポリアセタール樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製「ユピタールF30−01F」)
【0094】
【表10】
PE:ポリエチレン樹脂(住友精化(株)製「フロービーズHE3040」)
【0095】
実施例の表3〜表10より、本発明の製造方法において規定された(a)熱可塑性樹脂、(b)疎水基とカルボキシル基を有するセルロース繊維、及び(c)エポキシ基を有する添加剤を用いた実施例1〜15は、(a)熱可塑性樹脂のみからなる参考例1〜4に比べ、得られる成形材料用樹脂組成物から作成した成形体の弾性率が飛躍的に向上した。
また、(a)熱可塑性樹脂に(b)疎水基とカルボキシル基を有するセルロース繊維を添加し、(c)エポキシ基を有する添加剤を用いなかった比較例1、3、4、5に比べて、得られる成形体の弾性率が向上し、(a)熱可塑性樹脂にポリアセタール樹脂を用いた場合には、成形加工時の臭気発生を抑制でき、また、ポリオレフィン樹脂やポリアミド樹脂を用いた場合には、同じ樹脂を用いて得られる樹脂組成物から作成した成形体の着色が抑制できた。
さらに、本発明の範囲外である、重量平均分子量が極めて低い(c)エポキシ基を有する添加剤を用いた比較例6では、臭気の発生は抑制できるが成形体の弾性率を低下させる結果となった。
加えて、疎水基とカルボキシル基を導入していないセルロース繊維(B−4)を用いた比較例2では成形体の弾性率が不十分であった。