(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基板と、ゲート電極と、ゲート絶縁層と、チャンネル層を構成するIn−Ga−Zn−O系の半導体層と、前記半導体層を被覆する保護層とを有するボトムゲート型の薄膜トランジスタにおいて、
前記半導体層と前記保護層の間に、絶縁性の希土類水素化物を含む絶縁層が設けられており、
前記絶縁性の希土類水素化物が、Pm、Eu、及びYbを除くランタノイド系希土類元素をRとした結晶性RH3型の水素化物、Y又はScをRとした結晶性RH3型の水素化物、Eu又はYbをRとした結晶性RH2型の水素化物(EuH2又はYbH2)のいずれかであることを特徴とする、薄膜トランジスタ。
基板と、ゲート電極と、ゲート絶縁層と、チャンネル層を構成するIn−Ga−Zn−O系の半導体層と、前記半導体層を被覆する保護層とを有する薄膜トランジスタの製造方法であって、
前記半導体層上に、Pmを除くランタノイド系希土類元素、Y、Scのいずれかからなる希土類元素の膜を成膜装置により成膜する工程と、
前記希土類元素の膜上に前記保護層を形成することで、前記半導体層及び前記保護層から水素を前記希土類元素の膜に取り込ませ、絶縁性の希土類水素化物を含む絶縁層を形成する工程とを含むことを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法。
前記希土類元素の膜を成膜する工程では、前記成膜装置としてイオンプレーティング装置を用いて、該イオンプレーティング装置により希土類元素を蒸着することを特徴とする、請求項2に記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【背景技術】
【0002】
現在、電界効果型トランジスタは、半導体メモリ集積回路、高周波信号増幅素子等として広く用いられている。その中でも薄膜トランジスタ(TFT)は、液晶表示装置(LCD)、有機ELエレクトロルミネッセンス表示装置(OLED)等の平面薄型画像表示装置(Flat Panel Display:FPD)のスイッチング素子として用いられている。FPDに用いられるTFTは、ガラス基板上にチャンネル層としてアモルファスシリコン薄膜または多結晶シリコン薄膜が使用されている。しかしながら、前者は電界効果移動度が1cm
2/V・sec未満と小さい。後者は、電界効果移動度が大きいものの、比較的高温の熱工程を要するなどの欠点を有する。
【0003】
これに対して、近年、In−Ga−Zn−O系(以下IGZOと表記)のアモルファス半導体をチャンネル層とした薄膜トランジスタの開発が活発に行われている(例えば非特許文献1)。この半導体は、アモルファスであるにも関わらず、その電界効果移動度が10cm
2/V・secに達する場合もあり、今後も期待の大きな半導体デバイスである。
【0004】
このアモルファスIGZO膜を有するTFTにおいて、閾値電圧の最適化は大きな問題となっている。この問題克服のために、アモルファスIGZO膜を熱処理することは有効な方法である。例えば、IGZO膜の形成後の乾燥あるいは湿潤酸素雰囲気による閾値電圧、サブスレショルド値の改善が報告されている(例えば非特許文献2)。また、通常より低温での閾値電圧の制御方法としては、IGZO膜のオゾン処理による閾値電圧の改善が報告されている(例えば特許文献1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これまで述べてきたように、又、それ以外にも、現在まで電界効果移動度、サブスレショルド値の改善、閾値電圧の最適化などの薄膜トランジスタ特性改善のための、数多くの研究、発明がなされている。
【0008】
薄膜トランジスタの構造をアモルファスシリコンの場合と同様にボトムゲート型にする場合、実デバイスでは、アモルファスIGZO膜の上面に保護層を設けることが多い。この保護層は、プラズマCVDで作られるSiO
2であることが多い。
【0009】
しかしながら、プラズマCVDで作られるSiO
2膜を保護層とする場合、成膜中などに水素がIGZO膜に取り込まれ、閾値電圧がデプレッション側にシフトする等の欠点を有する。
【0010】
本発明は、上記状況を鑑みてなされたもので、IGZO膜を有する薄膜トランジスタにおいて、閾値電圧を容易に適正化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明は、基板と、ゲート電極と、ゲート絶縁層と、チャンネル層を構成するIn−Ga−Zn−O系の半導体層と、半導体層を被覆する保護層とを有するボトムゲート型の薄膜トランジスタにおいて、半導体層と保護層の間に、絶縁性の希土類水素化物を含む絶縁層が設けられて
おり、絶縁性の希土類水素化物が、Pm、Eu、及びYbを除くランタノイド系希土類元素をRとした結晶性RH3型の水素化物、Y又はScをRとした結晶性RH3型の水素化物、Eu又はYbをRとした結晶性RH2型の水素化物(EuH2又はYbH2)のいずれかであることを特徴とする薄膜トランジスタである。第1の発明では、保護層の下部に、水素を取り込むことで絶縁層となる希土類水素化物層が設けられている。この層は、閾値電圧の最適化及び調整に重きを置いた層である。なお、本発明の保護層は、通常の保護層の他に、エッチングストッパー層等も含む。
【0012】
ここで、第1の発明に係る薄膜トランジスタ13は、例えば、
図1に示す形態となる。薄膜トランジスタ13は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極2と、ゲート電極2上にゲート電極2を覆うように形成されたゲート絶縁層4と、ゲート絶縁層4上に形成された半導体層5と、半導体層5に接続されたソース電極8及びドレイン電極9とを備えた、ボトムゲート・トップコンタクト型の薄膜トランジスタである。そして、半導体層5上に、半導体層5を二つの領域に分割するように、絶縁性の希土類水素化物を含む絶縁層6(絶縁性のPmを除くランタノイド系希土類水素化物膜)と保護層7が形成されている。ソース電極8及びドレイン電極9は、それぞれ分割された半導体層5の各領域に接触して電気的に接続されている。また、ドレイン電極9は、保護層7の一部を被覆するようにして画素電極12と接続している。また、ゲート絶縁層4を挟んでドレイン電極9の下にキャパシタ電極3が形成されている。
【0013】
保護層7をプラズマCVDで半導体層5上に成膜する場合、上述したように成膜中に水素がIGZO膜に取り込まれ、閾値電圧がデプレッション側にシフトする。このようなデプレッション側へのシフトを避けるために、保護層7を成膜する前に、水素化により絶縁層7と成る層として、例えば、Pmを除くランタノイド系希土類金属膜をIGZO膜上に成膜することが望ましい。そのために、Pmを除くランタノイド系希土類金属膜の製造方法(成膜方法)について、蒸着法を用いることが望ましい。
【0014】
ここでは、Y(イットリウム)、Sc(スカンジウム)、ランタノイド系希土類金属の水素化物膜の形成方法について述べる。IGZO膜の上に、例えばイッテルビウム(以後Yb)膜を蒸着などにより成膜する。この蒸着に使用するYbのインゴットは、空気中で表面が酸化されるが、内部までは犯されない。そのため、不活性ガスで充填保管されているYbインゴットであることが望ましい。このようなYbインゴットを蒸着源として成膜されたYb膜は、水素とも反応しやすく、水素化物のYbH
2となりやすい。ここでは、詳細は割愛するが、蒸着などによってYbを主とした膜を成膜する。保護層7にプラズマCVDにより作られたSiO
2を使用する場合、このSiO
2に水素が多く含まれるために、Yb膜中のYbH
2の割合は増加しやすい。又、SiO
2成膜中に水素がYb膜に取り込まれるために、酸化膜中の水素量は少なく、IGZO膜に与える影響も少ない。又、Ybを主とした膜は、安価な製造装置で成膜可能である。
【0018】
第
2の発明は、基板と、ゲート電極と、ゲート絶縁層と、チャンネル層を構成するIn−Ga−Zn−O系の半導体層と、半導体層を被覆する保護層とを有する薄膜トランジスタの製造方法であって、半導体層上に
、Pmを除くランタノイド系希土類元素、Y、Scのいずれかからなる希土類元素の膜を成膜装置により成膜する工程と、希土類元素の膜上に保護層を形成することで、半導体層及び保護層から水素を希土類元素の膜に取り込ませ、絶縁性の希土類水素化物を
含む絶縁層を形成する工程とを含むことを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法である。
【0019】
第
3の発明は、第
2の発明において、希土類元素の膜を成膜する工程では、成膜装置として抵抗加熱装置を用いて、抵抗加熱装置により希土類元素を蒸着する。
【0020】
第
4の発明は、第
2の発明において、希土類元素の膜を成膜する工程では、成膜装置として電子ビーム蒸着装置を用いて、電子ビーム蒸着装置により希土類元素を蒸着する。
【0021】
第
5の発明は、第
2の発明において、希土類元素の膜を成膜する工程では、成膜装置としてイオンプレーティング装置を用いて、イオンプレーティング装置により希土類元素を蒸着する。
【発明の効果】
【0022】
保護層下部にPmを除くランタノイド系希土類水素化物の絶縁層を設けることにより想定される閾値電圧Vthが変化する例を示す。
図4は、保護層の下部にPmを除くランタノイド系希土類水素化物の絶縁層を設けないでTFT作製した場合のトランジスタのゲート電圧Vgとソースドレイン電流Idの特性を示す。
図5は、保護層下部にPmを除くランタノイド系希土類水素化物の絶縁層を設けたTFTを作製した場合のトランジスタのゲート電圧Vgとソースドレイン電流Idの特性を示す。ゲート電圧は−20Vから+20V、ソースとドレイン電圧10Vで測定を行っている。前者は
図4に示すように全くトランジスタとして動作していないのに対して、後者は
図5に示すように閾値電圧が0V近傍の良好な特性を示す。これは、Pmを除くランタノイド系希土類水素化物に強く依存して閾値電圧を制御することが可能であることを示している。このように、本発明によれば、IGZO膜を有する薄膜トランジスタにおいて、閾値電圧を容易に適正化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本実施の形態に係る薄膜トランジスタ13について詳細に説明する。薄膜トランジスタ13は、基板1と、ゲート電極2と、ゲート絶縁層4と、チャンネル層を構成するIn−Ga−Zn−O系の半導体層5と、半導体層5を被覆する保護層7とを有するボトムゲート型の薄膜トランジスタである。半導体層5と保護層7の間に、絶縁性の希土類水素化物を含む絶縁層6が設けられている。絶縁性の希土類水素化物は、Pm、Eu、及びYbを除くランタノイド系希土類元素Rを含む結晶性RH
3型の水素化物、Y又はScを希土類元素Rとして含む結晶性RH
3型の水素化物、又は、Eu又はYbを希土類元素Rとして含む結晶性RH
2型の水素化物(EuH
2又はYbH
2)である。
【0025】
なお、薄膜トランジスタ13の製造方法は、半導体層5上に希土類元素の膜を成膜する工程と、希土類元素の膜上に保護層7を形成することで、半導体層5及び保護層7から水素を希土類元素に取り込ませ、絶縁性の希土類水素化物の絶縁層6を形成する工程とを含む。希土類元素の膜は、希土類元素を成膜装置により成膜してもよいし、希土類元素を抵抗加熱装置により蒸着して成膜してもよいし、希土類元素を電子ビーム蒸着装置により蒸着して成膜してもよいし、希土類元素をイオンプレーティング装置により蒸着して成膜してもよい。
【0026】
具体的に、
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る薄膜トランジスタ13は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極2と、ゲート電極2上にゲート電極2を覆うように形成されたゲート絶縁層4と、ゲート絶縁層4上に形成された半導体層5と、半導体層5に接続されたソース電極8及びドレイン電極9とを備えた、ボトムゲート・トップコンタクト型の薄膜トランジスタである。そして、半導体層5上に、半導体層5を二つの領域に分割するように、Pm(プロメチウム)を除くランタノイド系希土類水素化物6(絶縁層)と保護層7(保護膜)の積層体が形成されている。ソース電極8及びドレイン電極9は、それぞれ分割された半導体層5領域に接触して電気的に接続されている。
図1では、半導体層5のうち絶縁層6と保護層7の積層体の左側にソース電極8が接触し、この積層体の右側にドレイン電極9が接触している。また、ドレイン電極9は、Pmを除くランタノイド系希土類水素化物6と保護層7の一部を被覆するようにして画素電極12と接続している。また、ゲート絶縁層4を挟んでドレイン電極9の下にキャパシタ電極3が形成されている。
【0027】
以下、本発明の各構成要素について、製造工程に沿って詳細に説明する。
【0028】
本発明の実施の形態に係る基板1として、非アルカリガラス基板、石英ガラス基板のほかにポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート、シクロオレフィンポリマー、ポリエーテルサルフォン、ポリビニルフルオライドフィルム、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合樹脂、耐候性ポリプロピレン、ガラス繊維強化アクリル樹脂フィルム、ガラス繊維強化ポリカーボネート、透明性ポリイミド、フッ素系樹脂、環状ポリオレフィン樹脂を使用することができるが、本発明ではこれらに限定されるものではない。
【0029】
本発明の実施の形態に係る基板1が有機物フィルムである場合は、アクティブマトリクス基板上の素子の耐久性を向上させるためのガスバリア層(図示せず)を形成することができる。ガスバリア層としては、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、酸化ケイ素(SiO
2)、窒化ケイ素(SiN)、酸化窒化ケイ素(SiON)、炭化ケイ素(SiC)及びダイヤモンドライクカーボン(DLC)などを用いることができるが、本発明ではこれらに限定されるものではない。また、これらのガスバリア層は、2層以上積層して使用することもできる。ガスバリア層は、有機物フィルムを用いた基板1の片面だけに形成してもよいし、両面に形成しても構わない。ガスバリア層は、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、レーザーアブレーション法、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法、ホットワイヤーCVD法、又はゾルゲル法などを用いて形成することができるが、本発明ではこれらに限定されるものではない。
【0030】
まず基板1上に、ゲート電極2及びキャパシタ電極3と、それぞれの配線とを形成する。電極部分と配線部分は明確に分かれている必要はなく、本発明では、特に薄膜トランジスタの各構成要素としては電極と呼称している。なお、以下では、電極と配線を区別する必要のない場合に、配線を含めてゲート、ソース、ドレイン、キャパシタ等と記載する場合がある。
【0031】
図2(a)は、ゲート及びキャパシタを形成した段階での概略平面図及び当該平面図のI−I’での概略断面図である。
図2(a)では、ゲート電極とゲート配線、キャパシタ電極とキャパシタ配線が、一体化されてストライプ状のハッチング領域に形成されている。従って、このゲート及びキャパシタのライン上に、薄膜トランジスタのアレイを配置していくことができる。
【0032】
本発明の実施の形態に係る各電極(ゲート電極2、ソース電極8、ドレイン電極9、キャパシタ電極3、画素電極12)及び各配線には、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、コバルト(Co)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、白金(Pt)、及びチタン(Ti)などの金属を用いることができる。
【0033】
更に、酸化インジウム(In
2O
3)、酸化スズ(SnO
2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化カドミウム(CdO)、酸化インジウムカドミウム(CdIn
2O
4)、酸化カドミウムスズ(Cd
2SnO
4)、酸化亜鉛スズ(Zn
2SnO
4)、酸化インジウム亜鉛(In−Zn−O)等の酸化物材料を用いてもよい。また、これらの酸化物材料に不純物をドープしたものも好適に用いられる。例えば、酸化インジウムにスズ(Sn)やモリブデン(Mo)、チタン(Ti)をドープしたもの、酸化スズにアンチモン(Sb)やフッ素(F)をドープしたもの、酸化亜鉛にインジウム、アルミニウム、ガリウム(Ga)をドープしたものなどを用いることができる。また、これらの酸化物材料(導電性酸化物材料)と、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、コバルト(Co)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、白金(Pt)、及びチタン(Ti)などの金属の薄膜とを複数積層したものも使用できる。
【0034】
ゲート、キャパシタ、ソース、ドレイン、及び画素電極は、同じ材料であっても構わないし、また全て違う材料であっても構わない。しかし、工程数を減らすために、ゲートとキャパシタ、ソースとドレインは同一の材料であることが望ましい。これらの配線および電極は、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタ法、レーザーアブレーション法、プラズマCVD法、光CVD法、またはスクリーン印刷、凸版印刷、インクジェット法等で形成することができるが、これらに限定されず、公知一般の方法を用いることができる。パターニングは、例えばフォトリソグラフィ法を用いてパターン形成部分に保護膜(レジスト膜)を形成し、エッチングにより不要部分を除去して行うことができるが、パターニングについてもこの方法に限定されず、公知一般のパターニング方法を用いることができる。
【0035】
次に、ゲート電極2を覆うようにゲート絶縁層4(絶縁体層)を形成する。ゲート絶縁層4は、
図1に示すように、基板1上の全面に亘って形成することができる。本発明の実施の形態に係るゲート絶縁層4の材料には、SiO
2、SiNx、SiON、Al
2O
3、Ta
2O
5、Y
2O
3、HfO
2、HfAlO、ZrO
2、TiO
2等の無機材料、または、PMMA(ポリメチルメタクリレート)等のポリアクリレート、PVA(ポリビニルアルコール)、PS(ポリスチレン)、透明性ポリイミド、ポリエステル、エポキシ、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。ゲートリーク電流を抑えるためには、ゲート絶縁層4の絶縁材料の抵抗率は、10
11Ωcm以上、より好ましくは10
14Ωcm以上であることが望ましい。ゲート絶縁層4は、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタ法、レーザーアブレーション法、プラズマCVD、光CVD法、ホットワイヤーCVD法等のドライ成膜法や、スピンコート法、ディップコート法、スクリーン印刷法等のウェット成膜法を材料に応じて適宜用いて形成される。これらのゲート絶縁層4は、単層として用いても構わないし、2層以上積層して用いることもできる。また成長方向に向けて組成を傾斜したものでも構わない。
【0036】
次に、
図2(b)に示すように、半導体層5をゲート絶縁層4上のゲート電極2直上の位置に形成する。本発明の実施の形態に係る半導体層5としては、InGaZnO系アモルファス半導体が望ましい。しかし、水素が半導体層5のキャリヤーの増減に寄与する可能性のある金属酸化物を主成分とする酸化物半導体材料も使用できる。例えば、酸化物半導体材料は、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、スズ(Sn)、タングステン(W)、マグネシウム(Mg)、及びガリウムのうち1種類以上の元素を含む酸化物であり、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム(In
2O
3)、酸化インジウム亜鉛(InZnO系)、酸化スズ(SnO)、酸化タングステン(WOx)を用いることができる。これらの材料の構造は、単結晶、多結晶、微結晶、結晶とアモルファスの混晶、ナノ結晶散在アモルファス、アモルファスのいずれであっても構わない。これらの材料は、CVD法、スパッタ法、パルスレーザー堆積法、真空蒸着法、ゾルゲル法等の方法を用いて形成される。スパッタ法としてはRFマグネトロンスパッタ法、DCスパッタ法、真空蒸着としては加熱蒸着、電子ビーム蒸着、イオンプレーティング法などを用いることができるが、これらに限定されるものではない。なお、半導体層5の膜厚は20nm以上が好ましい。
【0037】
次に、
図2(c)に示すように、Pmを除くランタノイド系希土類水素化物6と保護層7とからなる積層体を、ゲート絶縁層4及び半導体層5上の全面に亘って形成する。本発明の実施の形態に係るPmを除くランタノイド系希土類水素化物6には、Pm(プロメチウム)、Eu(ユウロピウム)、Yb(イッテルビウム)を除くランタノイド系希土類元素Rを含む結晶性RH
3型の水素化物や、Eu又はYbをランタノイド系希土類元素Rとして含む結晶性RH
2型(EuH
2又はYbH
2)の水素化物のいずれかを選択することが望ましい。希土類水素化物6の膜厚としては、2nm以上10nm以下が望ましい。また、保護層7には、SiO
2、SiNx窒化シリコン、SiON,Al
2O
3等の無機材料を選択できるが、半導体層5として酸化物半導体材料を用いる場合には、保護層7として酸化シリコンを選択することが望ましい。
【0038】
Pmを除くランタノイド系希土類水素化物6と保護層7は、本発明に係る薄膜トランジスタ13の半導体層5に電気的影響を与えないために、その抵抗率が1×10
11Ωcm以上、特に1×10
14Ωcm以上であることが好ましい。Pmを除くランタノイド系希土類水素化物6は、真空蒸着法のドライ成膜法を材料に応じて適宜用いて形成される。真空蒸着としては、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、イオンプレーティング法などを用いることができる。保護層7は、無機材料であれば真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタ法、レーザーアブレーション法、プラズマCVD、光CVD法等のドライ成膜法を材料に応じて適宜用いて形成される。
【0039】
次に、
図2(d)に示すように、保護層7となる層上に、フォトリソ工程によりPmを除くランタノイド系希土類水素化物6と保護層7の最終形状に合わせて、第1のレジスト膜10を形成する。
図1で示すように、Pmを除くランタノイド系希土類水素化物6と保護層7は、半導体層5におけるソース電極8およびドレイン電極9との接触部分以外を覆うものであり、保護層7を形成する領域は、半導体層5を二つの領域に分割するように半導体層5の一部を露出させること以外には、特に制限はない。そのため、保護層7上の第1のレジスト膜10も、保護層7と同様の形状に形成される。なお、チャネル幅は、半導体層5の幅で決まるが、本発明の実施の形態においてはソース電極8及びドレイン電極9を保護層7よりも後に形成するため、チャネル長は、Pmを除くランタノイド系希土類水素化物6と保護層7の積層体の幅で決まる。続いて、
図3(a)に示すように、この第1のレジスト膜10をマスクとして、Pmを除くランタノイド系希土類水素化物6と保護層7をエッチングしてパターニングする。
【0040】
本発明の実施の形態に係る第1のレジスト膜10には、感光性アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポジ型フォトレジスト等を用いることができ、後述する第2のレジスト膜11も同様の材料を用いることができる。
【0041】
次に、
図3(b)に示すように、ソース電極8、ドレイン電極9及び画素電極12となる配線・電極材料の導電材料を、ゲート絶縁層4、半導体層5、及び、Pmを除くランタノイド系希土類水素化物6と保護層7上の基板1の全面に亘って成膜し、Pmを除くランタノイド系希土類水素化物6と保護層7を含めて被覆する。
【0042】
次に、
図3(c)に示すように、ソース電極8及びドレイン電極9が、2箇所の半導体層5の露出した表面(
図3(c)において上面)をそれぞれ覆いつつ半導体層5に電気的に接続され、かつ、ソース電極8とドレイン電極9とが半導体層5のみを介して接続されるように導電材料層をパターニングする。ソース電極8及びドレイン電極9のパターニング工程は、ソース電極8及びドレイン電極9のパターンと同形状の第2のレジスト膜11を、基板1の全面に導電材料層上にパターン形成し、これをマスクとして、導電材料層をエッチングすることにより行われる。なお、ソース電極8及びドレイン電極9は、Pmを除くランタノイド系希土類水素化物6及び保護層7と重なるようにパターニングすることが望ましい。これにより、第2のレジスト膜11のエッチング(後述)の際に、半導体層5が、ソース電極8とドレイン電極9と保護層7の何れかに覆われるため、半導体層5がエッチングされる恐れが無い。
【0043】
通常、薄膜トランジスタの半導体層上に設けられる保護層が、ソース・ドレイン電極のパターニングの際のエッチストッパとして働く。画素電極12を備えたアクティブマトリクス基板として薄膜トランジスタを用いる場合には、画素電極12とドレイン電極9とを層間絶縁層に形成されたビアを介して接続するが、このときドレイン電極9上に第2のレジスト膜11の残渣があると、接続の信頼性が低下するため、第2のレジスト膜11の除去(後述)は、念入りに行うことが望ましい。本発明では、Pmを除くランタノイド系希土類水素化物6及び保護層7が半導体層5上に形成されているため、第2のレジスト膜11を完全に除去するまでエッチングを行っても、半導体層5までエッチングされるのを確実に防ぐことができる。また、半導体層5とレジストのような有機系の絶縁材料とが直接接触すると、トランジスタの駆動に支障が生じることが報告されているが(例えば、特許文献2)、本発明においては、Pmを除くランタノイド系希土類水素化物6及び保護層7を設けることで、第1のレジスト膜10や後述の層間絶縁層などを構成するエポキシやアクリル等の樹脂が半導体層5と接触することによる半導体層5の劣化を防止することができる。
【0044】
次に、
図3(d)に示すように、ソース電極8又はドレイン電極9上に形成された第2のレジスト膜11の除去と共に、保護層7上に形成された第1のレジスト膜10の一部も除去される。このように、従来別個に行っていた保護層7上の第1のレジスト膜10を除去する工程をソース電極8又はドレイン電極9上の第2のレジスト膜11の除去工程と共に行うため、第1のレジスト膜10を除去する工程を減らして、歩留まりを向上させることが出来る。
【0045】
なお、エッチング方法やエッチング時間によっては第1のレジスト膜10は完全に除去されず、半導体層5に一部残る場合がある。特に、ソース電極8及びドレイン電極9は、第1のレジスト膜10と一部重なって形成されるため、ソース電極8及びドレイン電極9が重なっている部分の第1のレジスト膜10は除去されずに残る可能性が高い。
【0046】
本発明の薄膜トランジスタ13をディスプレイの駆動などに用いるアクティブマトリクス基板とする場合には、ソース電極8と画素電極12を絶縁するための層間絶縁層をソース電極8及びドレイン電極9を形成した基板1上に形成する。保護層7により、層間絶縁層を形成する際の各種成膜・塗工法による影響から半導体層5を保護することができる。
【0047】
層間絶縁層の材料としては、SiO
2、SiNx、SiON、Al
2O
3、Ta
2O
5、Y
2O
3、HfO
2、HfAlO、ZrO
2、TiO
2等の無機材料、または、PMMA(ポリメチルメタクリレート)等のポリアクリレート、PVA(ポリビニルアルコール)、PS(ポリスチレン)、透明性ポリイミド、ポリエステル、エポキシ、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール等を使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
層間絶縁層は、ソース配線や画素電極間を絶縁するために、その抵抗率が1×10
11Ωcm以上、特に1×10
14Ωcm以上であることが好ましい。層間絶縁層は、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタ法、レーザーアブレーション法、プラズマCVD、光CVD法、ホットワイヤーCVD法等のドライ成膜法や、スピンコート法、ディップコート法、スクリーン印刷法等のウェット成膜法を材料に応じて適宜用いて形成される。これらの層間絶縁層は2層以上積層して用いても良い。また成長方向に向けて組成を傾斜したものとしても良い。
【0049】
続いて、層間絶縁層に画素電極12とのスルーホールを設け、ドレイン電極9と接続するよう層間絶縁層上に導電性材料を成膜し、所定の画素形状にパターニングして、第2の画素電極を形成することによりアクティブマトリクス基板とすることができる。
【0050】
このようにして作成したアクティブマトリクス基板上に、画像表示要素及び対向電極を積層することで画像表示装置とすることができる。画像表示要素の例としては、電気泳動方式の表示媒体(電子ペーパー)や、液晶表示媒体、有機EL、無機EL等が挙げられる。積層方法としては、本発明のアクティブマトリクス基板と、対向基板、対向電極、画像表示要素の積層体を貼り合わせる方法や、画素電極上に画像表示要素、対向電極、対向基板を順次積層する方法等、画像表示要素の種類により適宜選択すればよい。
【0051】
なお、本実施形態の薄膜トランジスタ13は、液晶、OLED素子を用いた画像表示装置のスイッチング素子、駆動素子などとして用いることができる。さらに、本実施形態の薄膜トランジスタ13を用いた画像表示装置は、携帯電話ディスプレイ、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、コンピュータディスプレイ、自動車の情報ディスプレイ、TV用モニター、または一般照明を含む幅広い分野に応用可能である。さらに、本実施形態の薄膜トランジスタ13の基板を、プラスチックフィルム等の可撓性基板とし、ICカードまたはIDタグなどに応用することもできる。