(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一例である実施形態について説明する。
【0024】
<画像形成装置>
本実施形態に係る画像形成装置は、電子写真感光体と、電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電した電子写真感光体に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、トナーを含む現像剤を収納し、当該現像剤によって、電子写真感光体に形成された静電潜像をトナー像に現像する現像手段と、トナー像を被転写体に転写する転写手段と、トナー像が被転写体に転写された後、電子写真感光体が帯電される前に、電子写真感光体の表面に除電光を照射して除電する光除電手段と、を備える。
【0025】
電子写真感光体は、導電性基体と、導電性基体上に単層型の感光層と、を有する正帯電有機感光体(以下、「単層型感光体」と称することがある)である。
そして、単層型の感光層は、結着樹脂と、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料及びクロロガリウムフタロシアニン顔料から選択される少なくとも1種の電荷発生材料と、一般式(1)で表される正孔輸送材料と、一般式(2)で表される電子輸送材料と、を含み、且つ式(12)で表される指標Dが式(11)を満たす。
・式(11): D/M
ETM≦0.6
7
・式(12): D=−d×log(0.5)/A
(式(11)及び式(12)中、Dは、波長780nmの光を照射したとき感光層の光の侵入深さの指標を示す。M
ETMは、感光層の全固形分に対する電子輸送材料の含有量(質量%)を示す。dは、感光層の厚み(μm)を示す。Aは、感光層の波長780nmの光の吸光度を示す。)
【0026】
なお、単層型の感光層とは、電荷発生能と共に、正孔輸送性及び電子輸送性を持つ感光層である。
【0027】
ここで、従来、電子写真感光体としては、製造コスト、画質安定性の観点からは、単層型感光体が望ましい。
一方で、単層型感光体は、その単層型の感光層内に、電荷発生材料と正孔輸送材料と電子輸送材料とを含有するため、積層型の感光層を有する有機感光体ほどの感度が得られず、更なる高感度化が求められている。
しかしながら、単層型感光体において、感度を獲得するために、単に、高い電荷輸送性を持つ正孔輸送材料及び電子輸送材料を用いても、高感度化は実現されるものの、画像の点欠陥が発生する現象が生じる。これは、電荷輸送材料以外の構成材料である電荷発生材料との相互作用により、電荷発生材料の分散性が悪化し、電荷発生材料の凝集が発生するためと考えられる。
【0028】
これに対して、上記特定の組み合わせで、電荷発生材料、正孔輸送材料、及び電子輸送材料を含む単層型の感光層を有する電子写真感光体を採用すると、高感度で、且つ画像の点欠陥が抑制される。
この理由は定かではないが、上記特定の構造を持つ正孔輸送材料及び電子輸送材料の電荷輸送性が高いことに加え、上記特定の組み合わせにより、電荷発生材料とその他材料との相互作用である濡れ性の均衡が保たれ、電荷発生材料の分散性が向上するためと考えられる。
【0029】
一方で、この単層型の感光層を有する電子写真感光体を、光除電方式の画像形成装置に搭載すると、電子写真感光体の帯電電位が低下することがある。この現象が生じる理由は次のように考えられる。単層型の感光層を有する電子写真感光体の場合、除電光(例えば780nm又はその前後の波長、具体的には550nm以上900nmの範囲の波長)の照射により感光層中で発生した電子の多くが、光除電後、帯電までの間に感光層中を移動しきれず残留電荷となる。この残留電荷は帯電で感光層が高電場にさらされると、再び移動し始める。これにより、感光層の暗減衰が増大し、帯電電位が低下する。さらに、繰り返し画像形成を重ねるほど、感光層中の残留電荷が多くなるため、さらに帯電電位が低下してゆく。
【0030】
そこで、上記特定の組み合わせで、電荷発生材料、正孔輸送材料、及び電子輸送材料を含む感光層を有する電子写真感光体において、式(12)で表される指標Dが式(11)を満たすようにする。これにより、電子写真感光体が高感度で、且つ画像の点欠陥を抑制しつつ、光除電方式を採用しても、電子写真感光体の帯電電位が維持される。
この理由は次のように考えられる。式(12)において、Dは、波長780nmの光を照射したとき感光層の光の侵入深さの指標を示している。つまり、正帯電有機感光体において、この指標は光により感光層中で発生した電子の移動距離に相当する指標(即ち電子の輸送特性を表す指標)であると言い換えられる。一方、式(11)において、M
ETMは、電子輸送材料の含有量(質量%)を示している。つまり、この電子輸送材料の含有量は、感光層中で発生した電子のドリフト移動度に比例する指標である。よって、電子輸送材料の含有量M
ETMとの関係において、式(12)で表される指標Dが式(11)を満足すると、言い換えれば、式(11)を満たす指標Dとなるようにすると、780nm又はその前後の除電光が照射されたとき、感光層中の電荷発生領域が浅くなって、感光層の表層側で電荷が発生し易くなり、電子輸送能が高まると考えられる。これにより、光除電後、帯電までの間に、光除電により感光層中で発生した電子が移動しきって、残留電荷となることが抑制される。
【0031】
以上から、本実施形態に係る画像形成装置では、電子写真感光体が高感度で、且つ画像の点欠陥を抑制しつつ、光除電方式を採用しても、電子写真感光体の帯電電位が維持される。
【0032】
ここで、本実施形態に係る画像形成装置において、電子写真感光体(その単層型の感光層)は、式(11)を満たすが、式(11−2)を満たすことが望ましく、式(11−3)を満たすことがより望ましい。なお、「D/M
ETM」の下限値は 感光層が有するべき正孔輸送能力と電子輸送能力のバランスの点から、0.1であることがよい。つまり、式:0.1≦D/M
ETMを満たすことがよい。
・式(11−2): D/M
ETM≦0.60
・式(11−3): D/M
ETM≦0.55
(式(11−2)及び式(11−3)中、D、及びM
ETMは、式(11)中のD、及びM
ETMと同義である。)
【0033】
指標Dが式(11)を満たすには、例えば、電子輸送材料の含有量M
ETM、感光層の厚みd、及び感光層の波長780nmの光の吸光度Aを各々調整する。特に、吸光度Aは、例えば、電荷発生材料の分散状態により調整できる。例えば、電荷発生材料の分散性を高めると、電荷発生材料の凝集体が少なくなり、電荷発生材料の表面積が増大し、吸光度Aが高くなる傾向がある。
【0034】
なお、波長780nmの光を照射したとき感光層の光の侵入深さの指標Dは、帯電電位の低下を抑制する点から、0.8μm以上8.0μm以下、より望ましくは1.0μm以上7.0μm以下がよい。
感光層の全固形分に対する電子輸送材料の含有量M
ETMは、帯電電位の低下を抑制する点から、7質量%以上22質量%以下、より望ましくは10質量%以上16質量%以下である。
感光層の厚みdは、帯電電位の低下を抑制する点から、12μm以上40μm以下、より望ましくは18μm以上35μm以下がよい。
つまり、式(12)で表される指標Dは、D、M
ETM、d、及びAが上記範囲内において、式(11)を満たすことがよい。
【0035】
感光層の厚みdは、次のようにして測定された値である。カッター等により、電子写真感光体から感光層を切り取り、10個の測定試料を得る。卓上型膜厚計フィッシャースコープMMS((株)フィッシャー・インストルメンツ製)を用い、各々、10個の測定試料の厚みを測定する。そして、この10個の測定試料の厚みの平均値を感光層の厚みdとする。
【0036】
感光層の波長780nmの光の吸光度Aは、次のようにして測定された値である。カッター等により、電子写真感光体から感光層を切り取り、10個の測定試料を得る。UV−2600 UV−VIS SPECTROMETER(島津製作所(株)製)を用い、各々、10個の測定試料の吸光度を測定する。そして、この10個の測定試料の吸光度の平均値を感光層の波長780nmの光の吸光度Aとする。
【0037】
以下、図面を参照しつつ、本実施形態に係る画像形成装置を詳細に説明する。
【0038】
図1は、本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
本実施形態に係る画像形成装置101は、
図1に示すように、例えば、矢印Aで示すように、時計回り方向に回転する電子写真感光体10と、電子写真感光体10の上方に、電子写真感光体10に相対して設けられ、電子写真感光体10の表面を帯電させる帯電装置20(帯電手段の一例)と、帯電装置20により帯電した電子写真感光体10の表面に露光して、静電潜像を形成する露光装置30(静電潜像形成手段の一例)と、露光装置30により形成された静電潜像に現像剤に含まれるトナーを付着させて電子写真感光体10の表面にトナー像を形成する現像装置40(現像手段の一例)と、記録紙P(被転写媒体の一例)をトナーの帯電極性とは異なる極性に帯電させて記録紙Pに電子写真感光体10上のトナー像を転写させる転写装置50と、電子写真感光体10の表面をクリーニングするクリーニング装置70(トナー除去手段の一例)と、転写装置50によってトナー像が記録紙Pに転写された後、帯電装置20によって電子写真感光体10の表面が帯電される前に、電子写真感光体10の表面に除電光を照射して除電する光除電装置80(光除電手段の一例)と、を備える。そして、本実施形態に係る画像形成装置101は、トナー像が形成された記録紙Pを搬送しつつ、トナー像を定着させる定着装置60を備える。
【0039】
以下、本実施形態に係る画像形成装置101における主な構成部材の詳細について説明する。
【0040】
[電子写真感光体]
図2は、本実施形態に係る電子写真感光体10の一部の断面を概略的に示している。
図2に示した電子写真感光体10は、例えば、導電性基体4を備え、導電性基体4上に、下引層1、単層型の感光層2、及び保護層3がこの順で設けられて構成されている。
なお、下引層1、及び保護層3は、必要に応じて、設けられる層である。
【0041】
以下、電子写真感光体10の各要素について説明する。なお、符号は省略して説明する。
【0042】
(導電性基体)
導電性基体としては、従来から使用されているものであれば、如何なるものを使用してもよい。例えば、薄膜(例えばアルミニウム、ニッケル、クロム、ステンレス鋼等の金属類、及びアルミニウム、チタニウム、ニッケル、クロム、ステンレス鋼、金、バナジウム、酸化錫、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO)等の膜)を設けたプラスチックフィルム等、導電性付与剤を塗布又は含浸させた紙、導電性付与剤を塗布又は含浸させたプラスチックフィルム等が挙げられる。基体の形状は円筒状に限られず、シート状、プレート状としてもよい。
【0043】
導電性基体として金属パイプを用いる場合、表面は素管のままであってもよいし、予め鏡面切削、エッチング、陽極酸化、粗切削、センタレス研削、サンドブラスト、ウエットホーニングなどの処理が行われていてもよい。
【0044】
(下引層)
下引層は、導電性基体表面における光反射の防止、導電性基体から感光層への不要なキャリアの流入の防止などの目的で、必要に応じて設けられる。
【0045】
下引層は、例えば、結着樹脂と、必要に応じてその他添加物とを含んで構成される。
下引層に含まれる結着樹脂としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂などの公知の高分子樹脂化合物、また電荷輸送基を有する電荷輸送性樹脂やポリアニリン等の導電性樹脂などが挙げられる。これらの中でも、上層の塗布溶剤に不溶な樹脂が望ましく用いられ、特にフェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などが望ましく用いられる。
【0046】
下引層には、シリコン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機チタン化合物、有機アルミニウム化合物等の金属化合物等を含有してもよい。
【0047】
金属化合物と結着樹脂との比率は、特に制限されず、目的とする電子写真感光体特性を得られる範囲で設定される。
【0048】
下引層には、表面粗さ調整のために下引層中に樹脂粒子を添加してもよい。樹脂粒子としては、シリコーン樹脂粒子、架橋型ポリメタクリル酸メチル(PMMA)樹脂粒子等が挙げられる。なお、表面粗さ調整のために下引層を形成後、その表面を研磨してもよい。研磨方法としては、バフ研磨、サンドブラスト処理、ウエットホーニング、研削処理等が用いられる。
【0049】
ここで、下引層の構成として、結着樹脂と導電性粒子とを少なくとも含有する構成が挙げられる。なお、導電性粒子は、例えば体積抵抗率が10
7Ω・cm未満の導電性を有するものがよい。
【0050】
導電性粒子としては、例えば、金属粒子(アルミニウム、銅、ニッケル、銀などの粒子)、導電性金属酸化物粒子(酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛などの粒子)、導電性物質粒子(カーボンファイバ、カーボンブラック、グラファイト粉末の粒子)等が挙げられる。これらの中でも、導電性金属酸化物粒子が好適である。導電性粒子は、2種以上混合して用いてもよい。
また、導電性粒子は、疎水化処理剤(例えばカップリング剤)等により表面処理を施して、抵抗調整して用いてもよい。
導電性粒子の含有量は、例えば、結着樹脂に対して、100質量%以上700質量%以下であることが望ましく、より望ましくは300質量%以上500質量%以下である。
【0051】
下引層の形成の際には、上記成分を溶媒に加えた下引層形成用塗布液が使用される。
また、下引層形成用塗布液中に粒子を分散させる方法としては、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用される。ここで、高圧ホモジナイザーとしては、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式などが挙げられる。
【0052】
下引層形成用塗布液を導電性基体上に塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等が挙げられる。
【0053】
下引層の膜厚は、15μm以上が望ましく、20μm以上50μm以下がより望ましい。
【0054】
ここで、図示は省略するが、下引層と感光層との間に中間層をさらに設けてもよい。中間層に用いられる結着樹脂としては、ポリビニルブチラールなどのアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、カゼイン、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ゼラチン、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂などの高分子樹脂化合物のほかに、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム、マンガン、珪素原子などを含有する有機金属化合物などが挙げられる。これらの化合物は、単独にあるいは複数の化合物の混合物あるいは重縮合物として用いてもよい。中でも、ジルコニウムもしくはシリコンを含有する有機金属化合物は残留電位が低く環境による電位変化が少なく、また繰り返し使用による電位の変化が少ないなど点から好適である。
【0055】
中間層の形成の際には、上記成分を溶媒に加えた中間層形成用塗布液が使用される。
中間層を形成する塗布方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等の通常の方法が用いられる。
【0056】
なお、中間層は上層の塗布性改善の他に、電気的なブロッキング層の役割も果たすが、膜厚が大きすぎる場合には電気的な障壁が強くなりすぎて減感や繰り返しによる電位の上昇を引き起こすことがある。したがって、中間層を形成する場合には、0.1μm以上3μm以下の膜厚範囲に設定することがよい。また、この場合の中間層を下引層として使用してもよい。
【0057】
(単層型の感光層)
単層型の感光層は、結着樹脂と、電荷発生材料と、正孔輸送材料と、電子輸送材料と、必要に応じて、その他添加剤と、を含んで構成される。
【0058】
−結着樹脂−
結着樹脂としては、特に制限はないが、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーンアルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、スチレン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリシラン等が挙げられる。これらの結着樹脂は、単独又は2種以上混合して用いてもよい。
これらの結着樹脂の中でも、特に、感光層の成膜性の観点から、例えば、粘度平均分子量30000以上80000以下のポリカーボネート樹脂がよい。
【0059】
結着樹脂の感光層の全固形分に対する含有量は、35質量%以上60質量%以下、望ましくは20質量%以上35質量%以下である。
【0060】
−電荷発生材料−
電荷発生材料としては、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料及びクロロガリウムフタロシアニン顔料から選択される少なくとも1種が適用される。
電荷発生材料としては、これら顔料を単独で用いてもよいが、必要に応じて併用してもよい。そして、電荷発生材料としては、感光体の高感度化、及び画像の点欠陥抑制の観点から、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料がよい。
【0061】
ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料としては、特に制限はないが、V型のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料がよい。
特に、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料としては、例えば、600nm以上900nm以下の波長域での分光吸収スペクトルにおいて、810nm以上839nm以下の範囲に最大ピーク波長を有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料がより優れた分散性が得られる観点から望ましい。電子写真感光体の材料として用いた場合に、優れた分散性と、十分な感度、帯電性及び暗減衰特性とが得られ易くなる。
【0062】
また、上記の810nm以上839nm以下の範囲に最大ピーク波長を有するヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、平均粒径が特定の範囲であり、且つ、BET比表面積が特定の範囲であることが望ましい。具体的には、平均粒径が0.20μm以下であることが望ましく、0.01μm以上0.15μm以下であることがより望ましく、一方、BET比表面積が45m
2/g以上であることが望ましく、50m
2/g以上であることがより望ましく、55m
2/g以上120m
2/g以下であることが特に望ましい。平均粒径は、体積平均粒径(d50平均粒径)でレーザ回折散乱式粒度分布測定装置(LA−700、堀場製作所社製)にて測定した値である。また、BET式比表面積測定器(島津製作所製:フローソープII2300)を用い窒素置換法にて測定した値である。
ここで、平均粒径が0.20μmより大きい場合、又は比表面積値が45m
2/g未満である場合は、顔料粒子が粗大化しているか、又は顔料粒子の凝集体が形成される傾向があり、分散性や、感度、帯電性及び暗減衰特性といった特性に欠陥が生じやすい傾向にあり、それにより画質欠陥を生じ易くなることがある。
【0063】
ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料の最大粒径(一次粒子径の最大値)は、1.2μm以下であることが望ましく、1.0μm以下であることがより望ましく、より望ましくは0.3μm以下である。かかる最大粒径が上記範囲を超えると、黒点が発生しやすい傾向にある。
【0064】
ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、感光体が蛍光灯などに暴露されたことに起因する濃度ムラを抑制する観点から、平均粒径が0.2μm以下、最大粒径が1.2μm以下であり、且つ、比表面積値が45m2/g以上であることが望ましい。
【0065】
ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料は、CuKα特性X線を用いたX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.3゜,16.0゜,24.9゜,28.0゜に回折ピークを有するV型であることが望ましい。
【0066】
一方、クロロガリウムフタロシアニン顔料としては、特に制限はないが、 電子写真感光体材料として優れた感度が得られる、ブラッグ角度(2θ±0.2°)7.4°、16.6°、25.5°及び28.3°に回折ピークを有するものであることが望ましい。
クロロガリウムフタロシアニン顔料の好適な分光吸収スペクトルの最大ピーク波長、平均粒径、最大粒径、及び比表面積値は、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料と同様である。
【0067】
電荷発生材料の感光層の全固形分に対する含有量は、1質量%以上5質量%以下がよく、望ましくは1.2質量%以上4.5質量%以下である。
【0068】
−正孔輸送材料−
正孔輸送材料としては、一般式(1)で表される正孔輸送材料が適用される。
【化5】
【0069】
一般式(1)中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、及びR
6は、各々独立に、水素原子、低級アルキル基、アルコキシ基、フェノキシ基、ハロゲン原子、又は、低級アルキル基、低級アルコシ基及びハロゲン原子から選ばれる置換基を有していてもよいフェニル基を示す。m及びnは。各々独立に、0又は1を示す。
【0070】
一般式(1)中、R
1〜R
6が示す低級アルキル基としては、例えば、直鎖状又は分岐状で、炭素数1以上4以下のアルキル基が挙げられ、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基等が挙げられる。
これらの中でも、低級アルキル基としては、メチル基、エチル基が望ましい。
【0071】
一般式(1)中、R
1〜R
6が示すアルコキシ基としては、例えば、炭素数1以上4以下のアルコキシ基が挙げられ、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
【0072】
一般式(1)中、R
1〜R
6が示すハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0073】
一般式(1)中、R
1〜R
6が示すフェニル基としては、例えば、未置換のフェニル基;p−トリル基、2,4−ジメチルフェニル基等の低級アルキル基置換のフェニル基;p−メトキシフェニル基等の低級アルコキシ基置換のフェニル基;p−クロロフェニル基等のハロゲン原子置換のフェニル基等が挙げられる。
なお、フェニル基に置換し得る置換基としては、例えば、R
1〜R
6が示す低級アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子が挙げられる。
【0074】
一般式(1)で表される正孔輸送材料として、高感度化、及び画像の点欠陥抑制の観点から、m及びnが1を示す正孔輸送材料がよく、特に、R
1〜R
6が各々独立に、水素原子、低級アルキル基、又はアルコキシ基を示し、m及びnが1を示す正孔輸送材料が望ましい。
【0075】
以下、一般式(1)で表される正孔輸送材料の例示化合物を示すがこれに限定されるわけではない。なお、以下の例示化合物番号は、例示化合物(1−番号)と以下表記する。具体的には、例えば、例示化合物15は、「例示化合物(1−15)」と以下表記する。
【0080】
なお、上記例示化合物中の略記号は、以下の意味を示す。
・4−Me:フェニル基の4−位に置換するメチル基
・3−Me:フェニル基の3−位に置換するメチル基
・4−Cl:フェニル基の4−位に置換する塩素原子
・4−MeO:フェニル基の4−位に置換するメトキシ基
・4−F:フェニル基の4−位に置換するフッ素原子
・4−Pr:フェニル基の4−位に置換するプロピル基
・4−PhO:フェニル基の4−位に置換するフェノキシ基
【0081】
正孔輸送材料の感光層の全固形分に対する含有量は、10質量%以上40質量%以下がよく、望ましくは20質量%以上35質量%以下である。なお、この正孔輸送材料の含有量は、一般式(1)で表される正孔輸送材料と他の正孔輸送材料を併用した場合、その正孔輸送材料全体の含有量である。
【0082】
−電子輸送材料−
電子輸送材料としては、一般式(2)で表される電子輸送材料が適用される。
【0084】
一般式(2)中、R
11、R
12.R
13.R
14、R
15、R
16、及びR
17は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、又はアリール基を示す。R
18は、炭素数
4以上
11以下の直鎖状のアルキル基を示す。
【0085】
一般式(2)中、R
11〜R
17が示すハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0086】
一般式(2)中、R
11〜R
17が示すアルキル基としては、例えば、直鎖状又は分岐状で、炭素数1以上4以下(望ましくは1以上3以下)のアルキル基が挙げられ、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基等が挙げられる。
【0087】
一般式(2)中、R
11〜R
17が示すアルコキシ基としては、例えば、炭素数1以上4以下(望ましくは1以上3以下)のアルコキシ基が挙げられ、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
【0088】
一般式(2)中、R
11〜R
17が示すアリール基としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、トリル基等が挙げられる。
これらの中でも、フェニル基が望ましい。
【0089】
一般式(2)で表される電子輸送材料として、高感度化、及び画像の点欠陥抑制の観点から、特に、R
11〜R
17が各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、又はアルキル基を示し、R
18が炭素数5以上10以下の直鎖状のアルキル基を示す電子輸送材料が望ましい。
【0090】
以下、一般式(2)で表される電子輸送材料の例示化合物を示すがこれに限定されるわけではない。なお、以下の例示化合物番号は、例示化合物(2−番号)と以下表記する。具体的には、例えば、例示化合物15は、「例示化合物(2−15)」と以下表記する。
【0092】
電子輸送材料の感光層の全固形分に対する含有量は、7質量%以上22質量%以下がよく、望ましくは10質量%以上16質量%以下である。なお、この電子輸送材料の含有量は、一般式(2)で表される電子輸送材料と他の電子輸送材料を併用した場合、その電子輸送材料全体の含有量である。
【0093】
−その他電荷輸送材料−
上記特定の正孔輸送材料及び電子輸送材料以外にも、機能を損ねない範囲で、他の電荷輸送材料(他の正孔輸送材料、他の電子輸送材料)を併用してもよい。但し、他の電荷輸送材料は、正孔輸送材料及び電子輸送材料全体に対して10質量%以下で併用することがよい。
【0094】
他の電荷輸送材料としては、例えば、p−ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、アントラキノン等のキノン系化合物、テトラシアノキノジメタン系化合物、2,4,7−トリニトロフルオレノン等のフルオレノン化合物、キサントン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノビニル系化合物、エチレン系化合物等の電子輸送性化合物;トリアリールアミン系化合物、ベンジジン系化合物、アリールアルカン系化合物、アリール置換エチレン系化合物、スチルベン系化合物、アントラセン系化合物、ヒドラゾン系化合物などの正孔輸送性化合物が挙げられる。これらの他の電荷輸送材料は1種を単独で又は2種以上を混合して用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0095】
他の電荷輸送材料としては、電荷移動度の観点から、下記構造式(B−1)で示されるトリアリールアミン誘導体、および下記構造式(B−2)で示されるベンジジン誘導体が望ましい。
【0097】
構造式(B−1)中、R
B1は、水素原子またはメチル基を示す。n11は1または2を示す。Ar
B1およびAr
B2は各々独立に置換若しくは未置換のアリール基、−C
6H
4−C(R
B3)=C(R
B4)(R
B5)、または−C
6H
4−CH=CH−CH=C(R
B6)(R
B7)を示し、R
B3乃至R
B7はそれぞれ独立に水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基、または置換若しくは未置換のアリール基を表す。置換基としてはハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、または炭素数1以上3以下のアルキル基で置換された置換アミノ基を示す。
【0099】
(構造式(a−2)中、R
B8およびR
B8’は同一でも異なってもよく、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、を示す。R
B9、R
B9’、R
B10、およびR
B10’は同一でも異なってもよく、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルキル基、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、炭素数1以上2以下のアルキル基で置換されたアミノ基、置換若しくは未置換のアリール基、−C(R
B11)=C(R
B12)(R
B13)、または−CH=CH−CH=C(R
B14)(R
B15)を示し、R
B11乃至R
B15は各々独立に水素原子、置換若しくは未置換のアルキル基、または置換若しくは未置換のアリール基を表す。m12、m13、n12およびn13は各々独立に0以上2以下の整数を示す。)
【0100】
ここで、構造式(a−1)で示されるトリアリールアミン誘導体、および構造式(a−2)で示されるベンジジン誘導体のうち、特に、「−C
6H
4−CH=CH−CH=C(R
B6)(R
B7)」を有するトリアリールアミン誘導体、および「−CH=CH−CH=C(R
B14)(R
B15)」を有するベンジジン誘導体が望ましい。
【0101】
−電荷発生材料と電子輸送材料との比率−
電荷発生材料と電子輸送材料との比率は、質量比(電荷発生材料/電子輸送材料)で、1/20以上1/2以下であることが望ましく、より望ましくは1/18以上2/5以下、更に望ましくは1/15以上3/10以下である。この比率を上記範囲内とすると、指標Dが式(11)を満たし易くなる、つまり、帯電電位の低下がより抑制され易くなる。
なお、本比率は、他の電荷発生材料、他の電荷輸送材料を併用した場合、その合計での比率である。
【0102】
−正孔輸送材料と電子輸送材料との比率−
正孔輸送材料と電子輸送材料との比率は、質量比(正孔輸送材料/電子輸送材料)で、50/50以上90/10以下が望ましく、より望ましくは60/40以上80/20以下である。
なお、本比率は、他の電荷輸送材料を併用した場合、その合計での比率である。
【0103】
−その他添加剤−
単層型の感光層には、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤等の周知のその他添加剤を含んでいてもよい。また、単層型の感光層が表面層となる場合、フッ素樹脂粒子、シリコーンオイル等を含んでいてもよい。
【0104】
−単層型の感光層の形成−
単層型の感光層は、上記成分を溶剤に加えた感光層形成用塗布液を用いて形成される。
特に、感光層形成用塗布液は、単層型の感光層中の電荷発生材料の分散性が高められ、式(12)で表される指標Dが式(11)を満足し易くなる点から、1)まず、電荷発生材料を溶剤に加えて混合した後、撹拌を5時間以上行って分散液を調製し、2)得られた分散液に、他の成分を加えて、混合することにより得ることがよい。
【0105】
溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素類、アセトン、2−ブタノン等のケトン類、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環状もしくは直鎖状のエーテル類等の通常の有機溶剤が挙げられる。これら溶剤は単独又は2種以上混合して用いる。
【0106】
感光層形成用塗布液中に粒子(例えば電荷発生材料)を分散させる方法としては、ボールミル、振動ボールミル、アトライター、サンドミル、横型サンドミル等のメディア分散機や、攪拌、超音波分散機、ロールミル、高圧ホモジナイザー等のメディアレス分散機が利用される。高圧ホモジナイザーとしては、高圧状態で分散液を液−液衝突や液−壁衝突させて分散する衝突方式や、高圧状態で微細な流路を貫通させて分散する貫通方式などが挙げられる。
【0107】
感光層形成用塗布液を下引層上に塗布する方法としては、浸漬塗布法、突き上げ塗布法、ワイヤーバー塗布法、スプレー塗布法、ブレード塗布法、ナイフ塗布法、カーテン塗布法等が挙げられる。
【0108】
単層型の感光層の膜厚は、望ましくは5μm以上60μm以下、より望ましくは10μm以上50μm以下の範囲に設定される。
【0109】
(保護層)
保護層は、感光層の機械的強度を向上させ、電子写真感光体の表面の磨耗、傷などへの耐性をさらに改善したりするために必要に応じて設けられる層である。
保護層としては、周知の保護層が挙げられるが、反応性電荷輸送材料の重合膜(架橋膜)、硬化性樹脂中に電荷輸送材料を含む樹脂硬化膜、導電性材料を結着樹脂中に含有させて形成された膜等があるが、電荷輸送材料を使用した膜が望ましい。
【0110】
保護層の厚みは、例えば、望ましくは3μm以上40μm以下、より望ましくは5μm以上35μm以下、さらに望ましくは5μm以上15μm以下の範囲に設定される。
[帯電装置]
帯電装置20としては、例えば、導電性の帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電フィルム、帯電ゴムブレード、帯電チューブ等を用いた接触型帯電器が挙げられる。また、帯電装置20としては、例えば、非接触方式のローラ帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン帯電器やコロトロン帯電器等のそれ自体公知の帯電器等も挙げられる。帯電装置20としては、接触型帯電器がよい。
【0111】
[露光装置]
露光装置30としては、例えば、電子写真感光体10表面に、半導体レーザ光、LED光、液晶シャッタ光等の光を、像様に露光する光学系機器等が挙げられる。光源の波長は電子写真感光体10の分光感度領域にあるものがよい。半導体レーザの波長としては、例えば、780nm前後に発振波長を有する近赤外がよい。しかし、この波長に限定されず、600nm台の発振波長レーザや青色レーザとして400nm以上450nm以下に発振波長を有するレーザも利用してもよい。また、露光装置30としては、例えばカラー画像形成のためにはマルチビーム出力するタイプの面発光型のレーザ光源も有効である。
【0112】
[現像装置]
現像装置40は、例えば、トナー及びキャリアからなる2成分現像剤を収容する容器内に、現像領域で電子写真感光体10に対向して配置された現像ロール41が備えられた構成が挙げられる。現像装置40としては、2成分現像剤により現像する装置であれば、特に制限はなく、周知の構成が採用される。
【0113】
ここで、現像装置40に使用される現像剤は、トナーからなる一成分現像剤であってもよいし、トナーとキャリアを含む二成分系現像剤であってもよい。
【0114】
[転写装置]
転写装置50としては、例えば、ベルト、ローラ、フィルム、ゴムブレード等を用いた接触型転写帯電器、コロナ放電を利用したスコロトロン転写帯電器やコロトロン転写帯電器等のそれ自体公知の転写帯電器が挙げられる。
【0115】
[クリーニング装置]
クリーニング装置70は、例えば、筐体71と、クリーニングブレード72と、クリーニングブレード72の電子写真感光体10回転方向下流側に配置されるクリーニングブラシ73と、を含んで構成されている。また、クリーニングブラシ73には、例えば、固形状の潤滑剤74が接触して配置されている。
【0116】
[光除電装置]
光除電装置80としては、例えば、タングステンランプ、LED(Light Emitting Diode)等の光源を備えた公知の光除電装置が挙げられる。
【0117】
以下、本実施形態に係る画像形成装置101の動作について説明する。まず、電子写真感光体10が矢印aで示される方向に沿って回転すると同時に、帯電装置20により負に帯電する。
【0118】
帯電装置20によって表面が負に帯電した電子写真感光体10は、露光装置30により露光され、表面に潜像が形成される。
【0119】
電子写真感光体10における潜像の形成された部分が現像装置40に近づくと、現像装置40(現像ロール41)により、潜像にトナーが付着し、トナー像が形成される。
【0120】
トナー像が形成された電子写真感光体10が矢印aに方向にさらに回転すると、転写装置50によりトナー像は記録紙Pに転写される。これにより、記録紙Pにトナー像が形成される。
その後、クリーニング装置70により電子写真感光体10の表面をクリーニングした後、光除電装置80により電子写真感光体10の表面全面に対して除電光を照射した除電を行う。そして、再び、帯電装置20によって、帯電がなされて、次のサイクル(画像プロセス)が行われる。
【0121】
画像が形成された記録紙Pは、定着装置60でトナー像が定着される。
【0122】
なお、本実施形態に係る画像形成装置101は、例えば、
図3に示すように、筐体11内に、電子写真感光体10、帯電装置20、露光装置30、現像装置40、クリーニング装置70、及び光除電装置80を一体に収容させたプロセスカートリッジ101Aを備えた形態であってもよい。このプロセスカートリッジ101Aは、複数の部材を一体的に収容し、画像形成装置101に脱着させるものである。
プロセスカートリッジ101Aの構成は、これに限られず、例えば、少なくとも、電子写真感光体10、及び光除電装置80を備えてえればよく、その他、例えば、帯電装置20、露光装置30、現像装置40、転写装置50、及びクリーニング装置70から選択される少なくとも一つを備えていてもよい。
【0123】
また、本実施形態に係る画像形成装置101は、上記構成に限られず、例えば、電子写真感光体10の周囲であって、転写装置50よりも電子写真感光体10の回転方向下流側でクリーニング装置70よりも電子写真感光体の回転方向上流側に、残留したトナーの極性を揃え、クリーニングブラシで除去しやすくするための第1除電装置を設けた形態であってもよい。
【0124】
また、本実施形態に係る画像形成装置101は、上記構成に限れず、周知の構成、例えば、電子写真感光体10に形成したトナー像を中間転写体に転写した後、記録紙Pに転写する中間転写方式の画像形成装置を採用してもよいし、タンデム方式の画像形成装置を採用してもよい。
【実施例】
【0125】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0126】
<感光体1>
電荷発生材料としてCukα特性X線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.3゜,16.0゜,24.9゜,28.0゜の位置に回折ピークを有するV型のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料 3質量部と、結着樹脂としてビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:5万)47質量部と、表1に示す電子輸送材料 13質量部と、表1に示す正孔輸送材料 37質量部と、溶剤としてテトラヒドロフラン250質量部と、からなる混合物を、直径1mmφのガラスビーズを用いたサンドミルにて4時間分散し、感光層形成用塗布液を得た。なお、表1〜表3中、この感光層形成用塗布液を調製するときの「電荷発生材料の分散方法」を「工程1」と表記する。
この感光層形成用塗布液を浸漬塗布法にて、直径30mm、長さ244.5mmのアルミニウム基材上に塗布し、140℃、30分の乾燥硬化を行い、厚さ30μmの単層型の感光層を形成した。
以上の工程を経て、電子写真感光体を作製した。
【0127】
<感光体2〜4、7〜10、13〜16、19〜22、25〜28、比較感光体1〜24、27〜30、33〜36、39〜42>
表1〜表3に従って、電荷発生材料、電子輸送材料、正孔輸送材料、及び結着樹脂の種類及び量を変更した以外は、感光体1と同様にして、電子写真感光体を作製した。なお、表1〜表3中の「部」は質量部を示している。
【0128】
<感光体5>
電荷発生材料としてCukα特性X線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.3゜,16.0゜,24.9゜,28.0゜の位置に回折ピークを有するV型のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料 3質量部と、溶剤としてテトラヒドロフラン250質量部と、からなる混合物を、プロペラ撹拌機付きの容器に入れ、プロペラによる上記混合物の撹拌を5時間行って顔料を濡らし、顔料分散液を得た。
次に、得られた顔料分散液に、結着樹脂としてビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:5万)55質量部と、表1に示す電子輸送材料 5質量部と、表1に示す正孔輸送材料 37質量部とを加え、得られた混合液を直径1mmφのガラスビーズを用いたサンドミルにて4時間分散し、感光層形成用塗布液を得た。なお、表1〜表3中、この感光層形成用塗布液を調製するときの「電荷発生材料の分散方法」を「工程2」と表記する。
この感光層形成用塗布液を浸漬塗布法にて、直径30mm、長さ244.5mmのアルミニウム基材上に塗布し、140℃、30分の乾燥硬化を行い、厚さ30μmの単層型の感光層を形成した。
以上の工程を経て、電子写真感光体を作製した。
【0129】
<感光体6、11〜12、17〜18、23〜24、29〜30、比較感光体25〜26、31〜32、37〜38、43〜44>
表1〜表3に従って、電荷発生材料、電子輸送材料、正孔輸送材料、及び結着樹脂の種類及び量を変更した以外は、感光体5と同様にして、電子写真感光体を作製した。なお、表1〜表3中の「部」は質量部を示している。
【0130】
<実施例1〜30>
表4に従った電子写真感光体をBrother社製の画像形成装置HL2240Dに搭載して、この画像形成装置を実施例1〜30の装置とした。
【0131】
<比較例1〜30>
表5に従った電子写真感光体をBrother社製の画像形成装置HL2240D(但し、光除電装置を取り外した装置)に搭載して、この画像形成装置を比較例1〜30の装置とした。
【0132】
<比較例31〜74>
表6に従った電子写真感光体をBrother社製の画像形成装置HL2240Dに搭載して、この画像形成装置を比較例31〜74の装置とした。
【0133】
<評価>
各例の画像形成装置及びその電子写真感光体について、以下の評価を行った。その結果を表4〜表6に示す。
【0134】
−電荷発生材料の分散性−
顔料分散性の評価は、日立社製、紫外可視分光光度計U2000を用いて吸光度を測定し、下記式に従って、粗大粒子の割合を算出して、評価した。
・式:粗大粒子の割合=A1000/A780×100
式中、A1000は波長1000nmでの吸光度であり、A780は波長780nmでの吸光度である。
なお、粗大粒子の割合の値が20以上であると、電荷発生材料の凝集物による画質欠陥(点欠陥)が生じ、実用上問題が生じると評価する。
【0135】
−ゴースト評価−
ゴースト評価は、画像形成装置により
図4(A)に示したGと黒領域を有する画像を印刷し、例えば、
図4(B)及び
図4(C)等で示すようなゴースト(前画像の履歴が残ることで生じる残像現象)の発生度合いを以下の基準で評価した。なお、ゴースト評価は、カラーモード、及び白黒モードの双方で実施した。
5:ポジゴースト大変悪い(許容できないレベル)
4:ポジゴースト悪い(許容できないレベルだが5よりは軽微)
3:ポジゴースト悪い(許容できないレベルだが4よりは軽微)
2:ポジゴースト悪い(許容できないレベルだが3よりは軽微)
1:ポジゴースト普通(発生はしているが許容できるレベルで、2よりも軽微)
0:未発生
−1:ネガゴースト普通(発生はしているが許容できるレベルで、−2よりも軽微)
−2:ネガゴースト悪い(許容できないレベルだが−3よりは軽微)
−3:ネガゴースト悪い(許容できないレベルだが−4よりは軽微)
−4:ネガゴースト悪い(許容できないレベルだが−5よりは軽微)
−5:ネガゴースト大変悪い(許容できないレベル)
【0136】
−帯電電位維持性の評価−
帯電電位維持性の評価は、画像形成装置により、30℃、85%RHの環境下で、文字とパッチのある総合パターンの画像を5万枚を連続して出力した後、電子写真感光体の表面の帯電電位(V)を電位プローブにより測定し、初期帯電電位から上昇した分の差(△VH(V))を求めることで実施した。表4〜表6には、△VHを示す。
【0137】
−感光体の感度の評価−
感光体の感度の評価は、+800Vに帯電させた時の半減露光量として、評価した。20℃、40%RHの環境下、+800に帯電させた後、タングステンランプの光を、モノクロメーターを用いて780nmの単色光にし、感光体表面上で1μW/cm
2になるように調整して、照射した。
そして、帯電直後における感光体表面の表面電位V
0(V)、感光体表面の光照射により表面電位が1/2×V
O(V)となる半減露光量E1/2(μJ/cm
2)を測定した。
なお、感光体の感度は、0.2μJ/cm
2以下の半減露光量が得られたとき、高感度化されたと評価する。
【0138】
−点欠陥画質評価−
点欠陥画質評価は、画像形成装置により、50%ハーフトーンを印刷し、画像の点欠陥を以下の基準で評価した。
5:大変良い(点欠陥なし)
4:良い(点欠陥がほとんどない)
3:普通(点欠陥があるが問題のない範囲)
2:悪い(点欠陥があり問題になる範囲)
1:大変悪い(点欠陥が多くあり問題になる範囲)
なお、評価2以下であると実用上問題を生ずることがあると評価する。
【0139】
【表1】
【0140】
【表2】
【0141】
【表3】
【0142】
【表4】
【0143】
【表5】
【0144】
【表6】
【0145】
上記結果から、光除電方式を採用した本実施例1〜30では、比較例31〜30に比べ、電荷発生材料の分散性、ゴースト、感光体の感度、点欠陥画質の評価について、共に良好な結果が得られつつ、帯電電位維持性の評価についても良好な結果が得られていることがわかる。
なお、光除電方式を採用しなかった比較例1〜30では、帯電電位の低下は見られなかった。
【0146】
以下、表1〜表3中の略称の詳細について示す。
−電荷発生材料−
・CGM1: HOGaPC(V型):Cukα特性X線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.3゜,16.0゜,24.9゜,28.0゜の位置に回折ピークを有するV型のヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料(600nm以上900nm以下の波長域での分光吸収スペクトルにおける最大ピーク波長=820nm、平均粒径=0.12μm、最大粒径=0.2μm、比表面積値=60m
2/g)
・CGM2: ClGaPC:Cukα特性X線を用いたX線回折スペクトルのブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも7.4゜,16.6゜,25.5゜,28.3゜の位置に回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン顔料(600nm以上900nm以下の波長域での分光吸収スペクトルにおける最大ピーク波長=780nm、平均粒径=0.15μm、最大粒径=0.2μm、比表面積値=56m
2/g)
・CGM3: TiOPC: ブラッグ角度(2θ±0.2°)が少なくとも9.6°、27.3°の位置に回折ピークを有するY型のチタニルフタロシアニン顔料。
・CGM4: H
2PC: 無金属フタロシアニン顔料(フタロシアニン骨格の中心に2個の水素原子が配位したフタロシアニン)
【0147】
−電子輸送材料−
・ETM1: 一般式(2)で表される電子輸送材料の例示化合物(2−11)[一般式(2)中、R
11〜R
17=H、R
18=n−C
4H
9の電子輸送材料]
・ETM2: 一般式(2)で表される電子輸送材料の例示化合物(2−12)[一般式(2)中、R
11〜R
17=H、R
18=n−C
11H
23の電子輸送材料]
・ETM3: 下記構造の電子輸送材料
【0148】
−正孔輸送材料−
・HTM1: 一般式(1)で表される正孔輸送材料の例示化合物(1−1)
・HTM2: 一般式(1)で表される正孔輸送材料の例示化合物(1−2)
・HTM3: 下記構造の正孔輸送材料
【0149】
−結着樹脂−
・樹脂1: ビスフェノールZポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量:5万)
【0150】
【化14】