(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6209948
(24)【登録日】2017年9月22日
(45)【発行日】2017年10月11日
(54)【発明の名称】自動車用スライドドア
(51)【国際特許分類】
B60J 10/27 20160101AFI20171002BHJP
B60J 10/76 20160101ALI20171002BHJP
【FI】
B60J10/27
B60J10/76
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-232989(P2013-232989)
(22)【出願日】2013年11月11日
(65)【公開番号】特開2015-93539(P2015-93539A)
(43)【公開日】2015年5月18日
【審査請求日】2016年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 忠史
(72)【発明者】
【氏名】加藤 力也
【審査官】
菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−006788(JP,A)
【文献】
特開2009−274653(JP,A)
【文献】
特開2008−024112(JP,A)
【文献】
特開2009−241622(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0099911(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 10/00−10/90
B60J 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓枠部を有するプレスドアからなるスライドドア本体と、前記スライドドア本体の窓枠部を昇降動作により開閉するドアガラスとを備え、
前記スライドドア本体の窓枠部の内周部に形成された装着溝に、該窓枠部と前記ドアガラスとの間をシールするとともに該ドアガラスを昇降案内するガラスランが装着されており、
閉動作時の前記ドアガラスが前記窓枠部の上辺部における不感帯領域に入る前に異物が挟み込まれたときにその閉動作の停止あるいは開動作の制御を行うジャムプロテクション機能を有するパワーウィンドウ装置を備えている自動車用スライドドアであって、
前記スライドドア本体の窓枠部の上辺部において、前記ガラスランは、底壁部、車内側の側壁部及び車外側の側壁部により案内溝を形成する本体部と、前記車内側の側壁部から案内溝内に向けて傾斜状に形成されかつ前記ドアガラスに弾性的に接触し、前記ドアガラスの閉止状態における通常の弾性変形状態を越える過剰な弾性変形が可能な車内側のシールリップと、前記本体部の車外側の側壁部から案内溝内に向けて傾斜状に形成されかつ前記ドアガラスに弾性的に接触する車外側のシールリップとを備え、
前記車内側の側壁部には、前記ドアガラスの閉動作時における前記車内側のシールリップの過剰な弾性変形を当接により規制する変形規制部が設けられており、
前記変形規制部は、前記不感帯領域よりも下方において前記車内側のシールリップの過剰な弾性変形を規制することを特徴とする自動車用スライドドア。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車用スライドドアであって、
前記ガラスランの変形規制部は、前記車内側のシールリップの中腹部に対応する頂部を有する断面横向き山形状に形成されていることを特徴とする自動車用スライドドア。
【請求項3】
請求項2に記載の自動車用スライドドアであって、
前記ガラスランの変形規制部の頂部の位置は、前記車外側の側壁部側の最下端に対して下方2.5〜5mmの範囲内に設定されていることを特徴とする自動車用スライドドア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体に対して車両前後方向にスライドさせることによりドア開口部を開閉する形式の自動車用スライドドアに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用スライドドアの従来例について説明する。
図5は自動車用スライドドアの窓枠部の上辺部を示す断面図である。
図5に示すように、自動車用スライドドア110は、スライドドア本体112とドアガラス114とを備えている。スライドドア本体112は窓枠部116を有する。窓枠部116は、スライドドア本体112に窓開口部を形成している。ドアガラス114は、レギュレータ(不図示)による昇降動作によって窓開口部を開閉する。スライドドア本体112は、ドアインナパネル123とドアアウタパネル126とを接合してなるプレスドアからなる。窓枠部116の内周部において、ドアインナパネル123の窓開口部側のフランジ部124とドアアウタパネル126の窓開口部側のフランジ部127との間にはチャンネル部材129が介装されている。チャンネル部材129は、装着溝133を形成する底板部130、車内側の側板部131及び車外側の側板部132を有している。ドアインナパネル123のフランジ部124とチャンネル部材129の車内側の側板部131とは、スポット溶接等により結合されている。また、ドアアウタパネル126のフランジ部127とチャンネル部材129の車外側の側板部132とは、フランジ部127のヘミング加工により結合されている。
【0003】
チャンネル部材129の装着溝133には、スライドドア本体112の窓枠部116とドアガラス114との間をシールするとともにドアガラス114を昇降案内するガラスラン137が装着されている。ガラスラン137は、弾性を有する樹脂製で、本体部138と車内側のシールリップ140と車外側のシールリップ142とを備えている。本体部138は、案内溝147を形成する底壁部144、車内側の側壁部145及び車外側の側壁部146を有している。本体部138は、チャンネル部材129の装着溝133内に嵌着されている。車内側のシールリップ140は、本体部138の車内側の側壁部145の先端部から案内溝147内に向けて傾斜状に突出されている。車内側のシールリップ140の先端部はドアガラス114に弾性的に接触する。車内側のシールリップ140の自由状態が
図5に二点鎖線140で示されている。車外側のシールリップ142は、本体部138の車外側の側壁部146の先端部から案内溝147内に向けて傾斜状に突出されている。車外側のシールリップ142の先端部は、ドアガラス114に弾性的に接触する。なお、車外側のシールリップ142の自由状態が
図5に二点鎖線142で示されている。
【0004】
また、特許文献1には、従来例の自動車用スライドドアにおけるガラスランと同様のガラスランが開示されている。また、自動車用スライドドアには、ドアガラスをモータの駆動力によって昇降させるパワーウィンドウ装置を備えるものがある。パワーウィンドウ装置には、ドアガラスの閉動作時において、窓枠部の上辺部とドアガラスとの間に異物を挟み込んだときに、その閉動作を停止させたり、開動作させたりする制御を行うジャムプロテクション機能を有するものがある(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−20149号公報
【特許文献2】特開平7−158345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
プレスドアからなるスライドドア本体112の場合、ドアインナパネル123のフランジ部124とチャンネル部材129の車内側の側板部131とをスポット溶接等により接合する都合上、装着溝133の車内側の溝深さ133Dが装着溝133の車外側の溝深さ133dに比べて、大きくならざるを得ない。また、ドアアウタパネル126のフランジ部127とチャンネル部材129の車外側の側板部132とをヘミング加工により接合する都合上、装着溝133の溝幅133Wが大きくならざるを得ない。また、フラッシュサーフィス化を図るため、ドアガラス114は、ガラスラン137の案内溝147内において車外側に寄せて配置されている。このため、車内側のシールリップ140の長さ(基端部から先端部までの長さ)が、車外側のシールリップ142の長さに比べて長くなっている。このような理由により、車内側のシールリップ140が、ガラスラン137の車内側の側壁部145に向けて過剰に弾性変形することができる。なお、本明細書でいう「車内側のシールリップの過剰な弾性変形」とは、ドアガラスの閉止状態における車内側のシールリップの通常の弾性変形状態を越える弾性変形のことをいう。
【0007】
そうすると、パワーウィンドウ装置によるドアガラス114の閉動作時に、スライドドア本体112の窓枠部116の上辺部とドアガラス114との間に、例えば直径5〜10mm程度の棒状の異物160が挟まれた場合(
図6中、二点鎖線160参照)、異物160が剛性を有するものであれば、ジャムプロテクション機能の動作によりドアガラス114の閉動作が停止されたり、開動作されたりするため問題はない。しかし、柔軟性を有する異物160である場合、ジャムプロテクション機能が動作しないまま、異物160が案内溝147内に二つ折り状に無理に挟み込まれてしまうことが予想される(
図6中、実線160参照)。これにともない、車内側のシールリップ140は、異物160によって車内側の側壁部145に重なるようにして弾性変形させられる。また、ドアガラス114の上端部が案内溝147の車外側の側壁部(車外側の側板部132)を越えて上昇した場合、ジャムプロテクション機能が不感帯領域162R内として判断するため動作しない。したがって、異物の二つ折り状の挟み込みを防止することができない。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、スライドドア本体の窓枠部の上辺部とドアガラスとの間に対する異物の二つ折り状の挟み込みを防止することのできる自動車用スライドドアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、窓枠部を有するプレスドアからなるスライドドア本体と、スライドドア本体の窓枠部を昇降動作により開閉するドアガラスとを備え、スライドドア本体の窓枠部の内周部に形成された装着溝に、窓枠部とドアガラスとの間をシールするとともにドアガラスを昇降案内するガラスランが装着されている自動車用スライドドアであって、スライドドア本体の窓枠部の上辺部において、ガラスランは、底壁部、車内側の側壁部及び車外側の側壁部により案内溝を形成する本体部と、車内側の側壁部から案内溝内に向けて傾斜状に形成されかつドアガラスに弾性的に接触し、前記ドアガラスの閉止状態における通常の弾性変形状態を越える過剰な弾性変形が可能な車内側のシールリップと、本体部の車外側の側壁部から案内溝内に向けて傾斜状に形成されかつドアガラスに弾性的に接触する車外側のシールリップとを備え、車内側の側壁部には、ドアガラスの閉動作時における車内側のシールリップの過剰な弾性変形を当接により規制する変形規制部が設けられている。この構成によると、ドアガラスの閉動作時に、スライドドア本体の窓枠部の上辺部とドアガラスとの間に挟まれた柔軟性を有する異物が案内溝内に挟み込まれようとした場合、ガラスランの車内側のシールリップが変形規制部に当接する。これにより、車内側のシールリップの過剰な弾性変形を規制することができる。したがって、スライドドア本体の窓枠部の上辺部とドアガラスとの間に対する異物の二つ折り状の挟み込みを防止することができる。また、ジャムプロテクション機能を有するパワーウィンドウ装置を備える自動車用スライドドアにおいては、ドアガラスが不感帯領域に入る前において、ジャムプロテクション機能を動作させることができるので、異物の二つ折り状の挟み込みを防止することができる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、ガラスランの変形規制部は、車内側のシールリップの中腹部に対応する頂部を有する断面横向き山形状に形成されている。この構成によると、車内側のシールリップの過剰な弾性変形時には、そのシールリップの中腹部が変形規制部の頂部に当接することにより、車内側のシールリップの過剰な弾性変形を早めに規制することができる。
【0011】
第3の発明は、第2の発明において、ガラスランの変形規制部の頂部の位置は、車外側の側壁部側の最下端に対して下方2.5〜5mmの範囲内に設定されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態にかかる自動車用スライドドアを示す側面図である。
【
図5】従来例にかかる自動車用スライドドアの窓枠部の上辺部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための一実施形態について図面を用いて説明する。
図1は自動車用スライドドアを示す側面図、
図2は
図1のII−II線矢視断面図、
図3は窓枠部の上辺部を示す断面図である。
図1に示すように、自動車用スライドドア10は、スライドドア本体12とドアガラス14とを備えている。スライドドア本体12は窓枠部16を有する。窓枠部16は、上辺部17及び前後の両側辺部18,19を備えており、窓開口部21を形成している。ドアガラス14は、スライドドア本体12にレギュレータ(不図示)を介して昇降可能に設けられており、レギュレータによる昇降動作によって窓開口部21を開閉する。ドアガラス14は、例えばガラス板により形成されている。
【0014】
図2に示すように、スライドドア本体12は、ドアインナパネル23とドアアウタパネル26とを接合してなるプレスドアからなる。プレスドアとは、ドアインナパネル23及びドアアウタパネル26のうちの少なくとも一方のパネルのドア本体部と窓枠部16とがプレス成形により一体形成されているドアのことである。本実施形態では、ドアインナパネル23及びドアアウタパネル26がプレスドアからなる。また、ドアインナパネル23の裏側の所定部位にはリインフォース28が配置されている。
【0015】
図3に示すように、窓枠部16の内周部において、ドアインナパネル23の窓開口部側のフランジ部24とドアアウタパネル26の窓開口部側のフランジ部27との間にはチャンネル部材29が介装されている。チャンネル部材29は、断面U字状に形成されており、装着溝33を形成する底板部30、車内側の側板部31及び車外側の側板部32を有している。ドアインナパネル23のフランジ部24とチャンネル部材29の車内側の側板部31とは、重ね合わせた状態でスポット溶接等により結合されている。また、ドアアウタパネル26のフランジ部27とチャンネル部材29の車外側の側板部32とは、重ね合わせた状態でフランジ部27の端部を車外側の側板部32にヘミング加工することによって結合されている。また、チャンネル部材29の車内側の側板部31には、装着溝33側に突出する抜け止め凸部35が形成されている。なお、チャンネル部材29の断面形状は、窓枠部16の上辺部17及び両側辺部18,19(
図1参照)のチャンネル部材29に共通している。また、チャンネル部材29は、窓枠部16の各辺部17,18,19に沿って延びる長尺状をなしている。
【0016】
チャンネル部材29の装着溝33には、スライドドア本体12の窓枠部16とドアガラス14との間をシールするとともにドアガラス14を昇降案内するガラスラン37が装着されている。ガラスラン37は、弾性を有する樹脂製で、本体部38と車内側のシールリップ40と車外側のシールリップ42とを備えている。本体部38は、断面U字状に形成されており、案内溝47を形成する底壁部44、車内側の側壁部45及び車外側の側壁部46を有している。本体部38の車内側の側壁部45には、チャンネル部材29の抜け止め凸部35に係合する抜け止めリップ49が形成されている。
【0017】
車内側のシールリップ40は、本体部38の車内側の側壁部45の先端部から案内溝47内に向けて傾斜状に突出されている。車内側のシールリップ40の先端部は、ドアガラス14(詳しくは車内側の面)に弾性的に接触する。なお、車内側のシールリップ40の自由状態が
図3に二点鎖線40で示されている。
車外側のシールリップ42は、本体部38の車外側の側壁部46の先端部から案内溝47内に向けて傾斜状に突出されている。車外側のシールリップ42の先端部は、ドアガラス14(詳しくは車外側の面)に弾性的に接触する。なお、車外側のシールリップ42の自由状態が
図3に二点鎖線42で示されている。また、車内側のシールリップ40は、車外側のシールリップ42の肉厚よりも厚い肉厚で形成されている。
【0018】
車内側の側壁部45の先端部には、車内側に向けて折り返し状に突出する車内側のカバーリップ51が形成されている。車内側のカバーリップ51は、ドアインナパネル23のフランジ部24の周辺部を覆っている。なお、車内側のカバーリップ51の自由状態が
図3に二点鎖線51で示されている。
また、車外側の側壁部46の先端部には、車外側に傾斜状に突出する車外側のカバーリップ53が形成されている。車外側のカバーリップ53は、ドアアウタパネル26のフランジ部27の窓開口部21の端部の周辺部を覆っている。
なお、ガラスラン37の断面形状は、窓枠部16の上辺部17及び両側辺部18,19(
図1参照)のガラスラン37に共通している。また、ガラスラン37は、窓枠部16の各辺部17,18,19に沿って延びる長尺状をなしている。
【0019】
なお、前記従来例と同様、ドアインナパネル23のフランジ部24とチャンネル部材29の車内側の側板部31とをスポット溶接等により接合する都合上、装着溝33の車内側の溝深さが装着溝33の車外側の溝深さに比べて、大きくなっている。また、ドアアウタパネル26のフランジ部27とチャンネル部材29の車外側の側板部32とをヘミング加工により接合する都合上、装着溝33の溝幅が大きくなっている。また、フラッシュサーフィス化を図るため、ドアガラス14は、ガラスラン37の案内溝47内において車外側に寄せて配置されている。このため、車内側のシールリップ40の長さ(基端部から先端部までの長さ)が、車外側のシールリップ42の長さに比べて長くなっている。
【0020】
自動車用スライドドア10は、ドアガラス14をモータの駆動力によって昇降させるパワーウィンドウ装置(不図示)を備えている。パワーウィンドウ装置は、ドアガラス14の閉動作時において、スライドドア本体12の窓枠部16の上辺部17とドアガラス14との間に異物を挟み込んだときに、その閉動作を停止させたり、開動作させたりする制御を行うジャムプロテクション機能を有する。
【0021】
図3に示すように、スライドドア本体12の窓枠部16の上辺部17において、ガラスラン37の車内側の側壁部45の案内溝47側の側面45aには肉盛部57が形成されている。肉盛部57の断面形状は、車内側のシールリップ40側へ向かって突出する頂部57aを有する断面横向き山形状に形成されている。肉盛部57の頂部57aは、車内側のシールリップ40の中腹部41に対応している。肉盛部57の上端側の裾部57bは、車内側の側壁部45の上端部に延びている。肉盛部57の下端側の裾部57cは、車内側の側壁部45の下端部に延びている。また、肉盛部57は、ガラスラン37の車内側の側壁部45に一体成形、二色成形等により形成されている。なお、肉盛部57は本明細書でいう「変形規制部」に相当する。
【0022】
また、ガラスラン37の肉盛部57の頂部57aの位置は、車外側の側壁部46側の最下端(符号、Aを付す)に対して下方2.5〜5mmの範囲内に設定されている。すなわち、肉盛部57の頂部57aと車外側の側壁部46側の最下端Aとの高さ方向(詳しくはドアガラス14に沿う高さ方向)の寸法差Lが2.5〜5mmの範囲内に設定されている。
【0023】
上記自動車用スライドドア10において、
図4に示すように、パワーウィンドウ装置によるドアガラス14の閉動作時に、スライドドア本体12の窓枠部16の上辺部17とドアガラス14との間に、例えば直径5〜10mm程度の棒状の柔軟性を有する異物60が挟まれて案内溝47内に挟み込まれようとした場合、従来では、ガラスラン37の車内側のシールリップ40が過剰に弾性変形させられる。
しかしながら、本実施形態によると、車内側のシールリップ40の中腹部41が車内側の側壁部45の肉盛部57の頂部57aに当接する。これにより、車内側のシールリップ40の過剰な弾性変形を規制することができる。したがって、スライドドア本体12の窓枠部16の上辺部17とドアガラス14との間に対する異物60の二つ折り状の挟み込みを防止することができる。また、ジャムプロテクション機能を有するパワーウィンドウ装置を備える自動車用スライドドア10においては、ドアガラス14が不感帯領域62R(
図4参照)に入る前において、ジャムプロテクション機能を動作させることができる。
【0024】
また、ガラスラン37の肉盛部57は、車内側のシールリップ40の中腹部41に対応する頂部57aを有する断面横向き山形状に形成されている。したがって、車内側のシールリップ40の過剰な弾性変形時には、そのシールリップ40の中腹部41が肉盛部57の頂部57aに当接することにより、車内側のシールリップ40の過剰な弾性変形を早めに規制することができる。
【0025】
また、ガラスラン37の肉盛部57の頂部57aの位置(
図3における寸法差L参照)は、車外側の側壁部46側の最下端Aに対して下方2.5〜5mmの範囲内に設定されている。したがって、異物60の太さ、例えば直径が5〜10mmの範囲内の場合において、車内側のシールリップ40の過剰な弾性変形を効果的に規制することができる。すなわち、既存のガラスランを基に寸法差Lを変えて実験を行ったところ、寸法差Lが2.5mm未満あるいは5mmを越える場合には、車内側のシールリップ40の過剰な弾性変形を規制する効果が低下することが判明した。したがって、ガラスラン37の肉盛部57の頂部57aの位置は、車外側の側壁部46側の最下端Aに対して下方2.5〜5mmの範囲内に設定することによって、車内側のシールリップ40の過剰な弾性変形を効果的に規制することができる。
【0026】
とくに、異物60の直径が5mmの場合、寸法差Lを2.5mmとしたときに一番効果がある。また、異物60の直径が10mmの場合は、寸法差Lを5mmとしたときに一番効果がある。すなわち、車内側のシールリップ40の過剰な弾性変形を規制する効果が一番高い。したがって、スライドドア本体12の窓枠部16の上辺部17とドアガラス14との間に対する異物60の二つ折り状の挟み込み防止について最良の効果が得られるとともに、ジャムプロテクション機能を有するパワーウィンドウ装置を備える自動車用スライドドア10におけるジャムプロテクション機能の動作について最良の効果が得られる。
【0027】
[他の技術的事項]
本発明は実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本発明は、スライドドア以外のドア、プレスドア以外のドアに適用することも可能である。また、スライドドアは、ドアインナパネル23及び/又はドアアウタパネル26により装着溝33が形成される場合は、チャンネル部材29は省略してもよい。また、変形規制部の断面形状は、横向き山形状に限らず、四角形状、半円形状等に変更してもよい。また、変形規制部は、ガラスラン37と別体で形成した変形規制部材を車内側の側壁部45に取付けることにより形成してもよい。また、実施形態では、窓枠部16の上辺部17におけるチャンネル部材29の断面形状は、窓枠部16の両側辺部18,19におけるチャンネル部材29と共通としたが、異なる断面形状としてもよい。また、窓枠部16の上辺部17におけるガラスラン37(肉盛部57を除いた残りの部分)の断面形状は、窓枠部16の両側辺部18,19におけるガラスラン37の断面形状と共通としたが、異なる断面形状としてもよい。
【符号の説明】
【0028】
10…自動車用スライドドア
12…スライドドア本体
14…ドアガラス
16…窓枠部
17…上辺部
33…装着溝
37…ガラスラン
38…本体部
44…底壁部
45…車内側の側壁部
46…車外側の側壁部
47…案内溝
40…車内側のシールリップ
41…中腹部
42…車外側のシールリップ
57…肉盛部(変形規制部)
57a…頂部