【実施例】
【0041】
本発明のマスターバッチの優れた特性を、次の実験例で説明する。
尚、以下の実験例等で行った各種の特性、物性等の測定方法及びマスターバッチの作製、ならびに容器(ボトル)の成形に用いた樹脂等は次の通りである。
【0042】
1.マスターバッチの安定性評価
後述の方法で作製したマスターバッチ(マスターペレット)をガラス瓶に入れ、22℃60%RHの環境下で所定期間保管し、ペレット表面への液体成分の滲み出しの有無を目視にて評価した。液体の滲み出しが観察されなかったものを○、液体の滲み出しが観察されたものを×とした。
【0043】
2.マスターバッチを用いたボトル成形性評価
多層ボトルの最内層形成用樹脂として、後述の方法で作成したマスターバッチ(液体含有樹脂組成物)ペレットを高圧法低密度ポリエチレンに混合し、公知のダイレクトブロー成形法によりダイヘッド温度210℃にて多層ボトルを成形した。本ボトルの層構成は次の通りである。
最内層/接着層/ガスバリア層/接着層/最外層
ボトル成形時において、問題無く成形可能だったものを○、問題が生じたものを×とした。
【0044】
3.ガラス転移点測定
マスターバッチ作製用マトリックス樹脂、ならびに作製したマスターバッチペレットのガラス転移点を、示差走査熱量計(PERKIN ELMER社製 Diamond DSC)を用いて測定を行った。
試料として、各々約10mgを準備し、25℃から−30℃まで降温速度10℃/minで走査し、−30℃にて5分間保持し、−30℃から200℃まで昇温速度10℃/minで走査した際に得られたプロファイルから、各マトリックス樹脂、ならびにマスターバッチのガラス転移点を求めた。ガラス転移点がこの範囲に観測できなかったものについては、−30℃以下と判断した。
【0045】
<マスターバッチ作製用マトリックス樹脂>
環状オレフィン系樹脂A (COC−A、エチレン−テトラシクロドデセン共重合体)
MFR;15g/10min (260℃、2.16Kg)
密度;1.02g/cm
3
ガラス転移点(Tg);67℃
環状オレフィン系樹脂B (COC−B、エチレン−テトラシクロドデセン共重合体)
MFR;30g/10min (260℃、2.16Kg)
密度;1.02g/cm
3
ガラス転移点(Tg);74℃
環状オレフィン系樹脂C (COC−C、エチレン−テトラシクロドデセン共重合体)
MFR;15g/10min (260℃、2.16Kg)
密度;1.04g/cm
3
ガラス転移点(Tg);128℃
高圧法低密度ポリエチレン (LDPE)
MFR;0.3g/10min (190℃、2.16Kg)
密度;0.922g/cm
3
ガラス転移点(Tg);−30℃以下
【0046】
<液体>
中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)
表面張力:28.8mN/m (23℃)
粘度:33.8mPa・s (23℃)
沸点:210℃以上
引火点:242℃(参考値)
尚、液体の表面張力は固液界面解析システムDropMaster700(協和界面科学(株)製)を用いて23℃にて測定した値を用いた。なお、液体の表面張力測定に必要な液体の密度は、密度比重計DA−130(京都電子工業(株)製)を用いて23℃で測定した値を用いた。また、潤滑液の粘度は音叉型振動式粘度計SV−10((株)エー・アンド・デイ製)を用いて23℃にて測定した値を示した。
【0047】
<ボトル成形用樹脂>
(最内層形成用ベース材料)
低密度ポリエチレン(LDPE)
MFR;0.3g/10min
密度;0.92g/cm
3
(最外層形成用材料)
低密度ポリエチレン(LDPE)
MFR;0.3g/10min
(接着層形成用材料)
無水酸変性ポリエチレン
(ガスバリア層形成用材料)
エチレンビニルアルコール共重合体
(エチレン含量:32mol%、密度1.19g/cm
3、Tg61℃)
【0048】
<実験例1>
マスターバッチ作製用マトリックス樹脂として、環状オレフィン系樹脂A(COC−A)を、液体として中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)をそれぞれ用いて、COC−A:MCT=100:25(質量部)となるように、二軸混練押出機((株)テクノベル製 ULTNano05)を用い、シリンダー温度200℃の条件下で溶融混練し、マスターバッチペレットA(MB−A)を作製した。
作製したペレットを3ヶ月間保管した後、マスターバッチの安定性評価を行った。ペレット表面への液体の滲み出しは観察されなかった。
また、作製したマスターバッチペレットAのガラス転移点測定を行った。
さらに、マスターバッチペレットA(MB−A)を低密度ポリエチレンに1:3の重量比となるように混合したものを最内層形成用樹脂として用い、多層ボトルを成形し、ボトル成形性評価を行った。問題無く成形可能であった。また、成形したボトルの内面はMCTの油膜が形成されていた。結果をまとめて表1に示す。
【0049】
<実験例2>
環状オレフィン系樹脂A(COC−A):中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)=100:42(質量部)とした以外は実験例1と同様の条件で二軸混練押出機を用いてマスターバッチペレットB(MB−B)を作製した。作製したペレットを3ヶ月間保管した後、マスターバッチの安定性評価を行った。ペレット表面への液体の滲み出しは観察されなかった。
また、作製したマスターバッチペレットBのガラス転移点測定を行った。
さらに、マスターバッチペレットB(MB−B)を低密度ポリエチレンに1:5の重量比となるように混合したものを最内層形成用樹脂として用い、実験例1と同様に多層ボトルを成形し、ボトル成形性評価を行った。問題無く成形可能であった。また、成形したボトルの内面はMCTの油膜が形成されていた。結果をまとめて表1に示す。
【0050】
<実験例3>
環状オレフィン系樹脂B(COC−B):中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)=100:25(質量部)とした以外は実験例1と同様の条件で二軸混練押出機を用いてマスターバッチペレットC(MB−C)を作製した。作製したペレットを3ヶ月間保管した後、マスターバッチの安定性評価を行った。ペレット表面への液体の滲み出しは観察されなかった。
また、作製したマスターバッチペレットCのガラス転移点測定を行った。
さらに、マスターバッチペレットC(MB−C)を低密度ポリエチレンに1:3の重量比となるように混合したものを最内層形成用樹脂として用い、多層ボトルを成形し、ボトル成形性評価を行った。問題無く成形可能であった。また、成形したボトルの内面はMCTの油膜が形成されていた。結果をまとめて表1に示す。
【0051】
<実験例4>
環状オレフィン系樹脂B(COC−B):中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)=100:42(質量部)とした以外は実験例1と同様の条件で二軸混練押出機を用いてマスターバッチペレットD(MB−D)を作製した。作製したペレットを3ヶ月間保管した後、マスターバッチの安定性評価を行った。ペレット表面への液体の滲み出しは観察されなかった。
また、作製したマスターバッチペレットDのガラス転移点測定を行った。
さらに、マスターバッチペレットD(MB−D)を低密度ポリエチレンに1:5の重量比となるように混合したものを最内層形成用樹脂として用い、多層ボトルを成形し、ボトル成形性評価を行った。問題無く成形可能であった。また、成形したボトルの内面はMCTの油膜が形成されていた。結果をまとめて表1に示す。
【0052】
<実験例5>
環状オレフィン系樹脂B(COC−B):中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)=100:67(質量部)とした以外は実験例1と同様の条件で二軸混練押出機を用いてマスターバッチペレットE(MB−E)を作製した。作製したペレットを3ヶ月間保管した後、マスターバッチの安定性評価を行った。ペレット表面への液体の滲み出しは観察されなかった。
さらに、マスターバッチペレットE(MB−E)を低密度ポリエチレンに1:7の重量比となるように混合したものを最内層形成用樹脂として用い、多層ボトルを成形し、ボトル成形性評価を行った。問題無く成形可能であった。また、成形したボトルの内面はMCTの油膜が形成されていた。結果をまとめて表1に示す。
【0053】
<実験例6>
環状オレフィン系樹脂C(COC−C):中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)=100:42(質量部)とし、シリンダー温度を220℃とした以外は実験例1と同様の条件で二軸混練押出機を用いてマスターバッチペレットF(MB−F)を作製した。作製したペレットを3ヶ月間保管した後、マスターバッチの安定性評価を行った。ペレット表面への液体の滲み出しは観察されなかった。
また、作製したマスターバッチペレットFのガラス転移点測定を行った。
さらに、マスターバッチペレットF(MB−F)を低密度ポリエチレンに1:5の重量比となるように混合したものを最内層形成用樹脂として用い、多層ボトルを成形し、ボトル成形性評価を行った。問題無く成形可能であった。また、成形したボトルの内面はMCTの油膜が形成されていた。結果をまとめて表1に示す。
【0054】
<実験例7>
環状オレフィン系樹脂B(COC−B):中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)=100:11(質量部)とした以外は実験例1と同様の条件で二軸混練押出機を用いてマスターバッチペレットG(MB−G)を作製した。作製したペレットを3ヶ月間保管した後、マスターバッチの安定性評価を行った。ペレット表面への液体の滲み出しは観察されなかった。結果をまとめて表1に示す。
【0055】
<実験例8>
マスターバッチ作製用マトリックス樹脂として、高圧法低密度ポリエチレン (LDPE)を、液体として中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT)をそれぞれ用いて、LDPE:MCT=100:11(質量部)とした以外は実験例1と同様の条件で二軸混練押出機を用いてマスターバッチペレットH(MB−H)を作製した。作製したペレットを用いて、マスターバッチの安定性評価を行った。ペレット作製一日後から、ペレット表面への液体の滲み出しが観察された。3ヶ月後では、液体の滲み出しが顕著に進行していた。
また、マスターバッチペレットH(MB−H)を低密度ポリエチレンに1:1の重量比となるように混合したものを最内層形成用樹脂として用い、多層ボトルを成形し、ボトル成形性評価を行った。混合した樹脂がホッパー内でブロッキングをおこし、吐出量が安定しないため、安定した成形が困難であった。また、成形したボトルの内面はMCTの油膜が形成されていた。結果をまとめて表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
表1より、マトリックス樹脂(液体が未配合)のガラス転移点が35℃未満のマトリックス樹脂100質量部に対し、液体を11質量部配合した実験例8においては、マスターバッチの安定性評価の結果から、配合した液体の滲み出しが顕著に起こってしまうのに対し、マトリックス樹脂(液体が未配合)のガラス転移点が35℃以上のマトリックス樹脂100質量部に対し、液体を11乃至67質量部配合した実験例1から7においては、マスターバッチの安定性評価の結果から、配合した液体の滲み出しが抑制できていることが分かる。
また、ボトル成形性評価の結果から、マトリックス樹脂(液体が未配合)のガラス転移点が35℃以上の樹脂を用いて作製した実験例1から7のマスターバッチでは、問題無く成形可能であったのに対し、マトリックス樹脂(液体が未配合)のガラス転移点が35℃未満の樹脂を用いて作製した実験例8では、液体のペレット表面への滲み出しが顕著に起こったため、ホッパーにて混合した低密度ポリエチレンとブロッキングがおこり、吐出量が安定せず、成形が困難であった。
【0058】
以上のことから、長期にわたり滲み出しが防止された液体を含有するマスターバッチを得るためには、液体が配合されていない状態でのマトリックス樹脂のガラス転移点が35℃以上の樹脂を用いて、液体を分散させることが有効であるといえる。さらに、本マスターバッチは押出成形に特段の問題が無く使用可能であることが明らかになった。
【0059】
<考察>
ガラス転移点測定の結果から、マスターバッチ(液体含有樹脂組成物)のガラス転移点は、液体配合前のマトリックス樹脂のガラス転移点よりも低下していることが分かった。このガラス転移点の低下は、配合した液体がマトリックス樹脂中に相溶、あるいは部分相溶したためと解釈できる。本発明では、マスターバッチのマトリックス樹脂100質量部中に、最大で液体を67質量部含有させることが可能となるが、これは、マトリックス樹脂中に液体成分が相溶、ないし部分相溶していることが重要な役割をしていると推察される。また、マスターバッチ(液体含有樹脂組成物)の状態でのガラス転移点も35℃以上となっており、室温下でガラス状態となっているため、マトリックス中に分散された液体成分の滲み出しを有効に防止していると推察される。