(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
燃焼率を変更して燃焼可能な複数のボイラを備えるボイラ群と、前記ボイラ群から出力される蒸気を集合する蒸気ヘッダと、前記ボイラ群の燃焼状態を制御する制御部と、を備え、前記蒸気ヘッダに集合した蒸気を蒸気使用設備に供給するボイラシステムであって、
前記複数のボイラそれぞれの蒸気圧力であるボイラ圧力を測定するボイラ圧力測定部と、
前記蒸気ヘッダの蒸気圧力であるヘッダ圧力を測定するヘッダ圧力測定部と、を更に備え、
前記制御部は、
前記ヘッダ圧力が目標圧力の近傍で安定した状態において、前記ヘッダ圧力と、前記蒸気ヘッダに蒸気供給を行っているボイラの前記ボイラ圧力と、の差圧を算出する差圧算出部と、
前記差圧算出部により算出された差圧を当該ボイラと前記蒸気ヘッダとの圧力ズレとして設定する圧力ズレ設定部と、
前記ヘッダ圧力と前記ボイラ圧力との差が前記圧力ズレ以下となった場合、又は前記ヘッダ圧力と前記ボイラ圧力との差から所定の裕度圧力を減じた値が前記圧力ズレ以下となった場合に当該ボイラが蒸気供給可能になったと判定する起蒸判定部と、を備えるボイラシステム。
前記起蒸判定部は、前記ヘッダ圧力と前記ボイラ圧力との差が前記圧力ズレ以下となった後、所定時間経過後に当該ボイラが蒸気供給可能になったと判定する請求項1〜4のいずれかに記載のボイラシステム。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のボイラシステムの好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。
まず、本発明のボイラシステム1の全体構成につき、
図1を参照しながら説明する。ボイラシステム1は、複数(3台)のボイラ20を含むボイラ群2と、これら複数のボイラ20において生成された蒸気を集合させる蒸気ヘッダ6と、この蒸気ヘッダ6の内部の圧力を測定するヘッダ圧力測定部としての蒸気圧センサ7と、ボイラ群2の燃焼状態を制御する台数制御装置3と、を備える。
【0016】
ボイラ群2は、蒸気使用設備18に供給する蒸気を生成する。
蒸気ヘッダ6は、ボイラ群2で生成された蒸気を集合させて貯留することにより、複数のボイラ20の相互の圧力差及び圧力変動を調整し、圧力が調整された蒸気を蒸気使用設備18に供給する。蒸気ヘッダ6は、鉛直蒸気管11及び集合蒸気管14を介してボイラ群2を構成する複数のボイラ20に接続されている。この蒸気ヘッダ6の下流側は、蒸気管12を介して蒸気使用設備18に接続されている。
【0017】
鉛直蒸気管11は、複数のボイラ20のそれぞれから鉛直方向上方に向かって立ち上がるように延びる。集合蒸気管14には、これら鉛直蒸気管11それぞれの先端部が接続される。また、集合蒸気管14の先端側は、鉛直方向下方に引き下げられて蒸気ヘッダ6と接続される。
鉛直蒸気管11と複数のボイラ20との接続部には、逆止弁111が設けられ、蒸気ヘッダ6や集合蒸気管14からボイラ20への蒸気の逆流を防止している。
【0018】
蒸気圧センサ7は、信号線13を介して、台数制御装置3に電気的に接続されている。蒸気圧センサ7は、蒸気ヘッダ6の内部の蒸気圧(ボイラ群2で発生した蒸気の圧力)を測定し、測定した蒸気圧に係る信号(蒸気圧信号)を、信号線13を介して台数制御装置3に送信する。
【0019】
台数制御装置3は、信号線16を介して、複数のボイラ20と電気的に接続されている。この台数制御装置3は、蒸気圧センサ7により測定される蒸気ヘッダ6の内部の蒸気圧に基づいて、各ボイラ20の燃焼状態を制御する。台数制御装置3の詳細については、後述する。
【0020】
以上のボイラシステム1は、ボイラ群2で発生させた蒸気を、蒸気ヘッダ6を介して、蒸気使用設備18に供給可能とされている。
ボイラシステム1において要求される負荷(要求負荷)は、蒸気使用設備18における蒸気消費量である。台数制御装置3は、この蒸気消費量の変動に対応して生じる蒸気ヘッダ6の内部の蒸気圧の変動を、蒸気圧センサ7が測定する蒸気ヘッダ6の内部の蒸気圧(物理量)に基づいて算出し、ボイラ群2を構成する各ボイラ20の燃焼状態を制御する。
【0021】
具体的には、蒸気使用設備18の需要の増大により要求負荷(蒸気消費量)が増加し、蒸気ヘッダ6に供給される蒸気量(後述の出力蒸気量)が不足すれば、蒸気ヘッダ6の内部の蒸気圧が減少することになる。一方、蒸気使用設備18の需要の低下により要求負荷(蒸気消費量)が減少し、蒸気ヘッダ6に供給される蒸気量が過剰になれば、蒸気ヘッダ6の内部の蒸気圧が増加することになる。従って、ボイラシステム1は、蒸気圧センサ7により測定された蒸気圧の変動に基づいて、要求負荷の変動をモニターすることができる。そして、ボイラシステム1は、蒸気ヘッダ6の蒸気圧に基づいて、蒸気使用設備18の消費蒸気量(要求負荷)に応じて必要とされる蒸気量である必要蒸気量を算出する。
【0022】
ここで、本実施形態のボイラシステム1を構成する複数のボイラ20について説明する。
図2は、本実施形態に係るボイラ群2の概略を示す図である。
本実施形態のボイラ20は、燃焼率を連続的に変更して燃焼可能な比例制御ボイラからなる。
比例制御ボイラとは、少なくとも、最小燃焼状態S1(例えば、燃焼率の20%の燃焼状態)から最大燃焼状態S2の範囲で、燃焼率が連続的に制御可能とされているボイラである。比例制御ボイラは、例えば、燃料をバーナに供給するバルブや、燃焼用空気を供給するバルブの開度(燃焼比)を制御することにより、燃焼率を調整するようになっている。
【0023】
また、燃焼率を連続的に制御するとは、後述のローカル制御部22における演算や信号がデジタル方式とされて段階的に取り扱われる場合(例えば、ボイラ20の出力(燃焼率)が1%刻みで制御される場合)であっても、事実上連続的に出力を制御可能な場合を含む。
【0024】
本実施形態では、ボイラ20の燃焼停止状態S0と最小燃焼状態S1との間の燃焼状態の変更は、ボイラ20(バーナ)の燃焼をオン/オフすることで制御される。そして、最小燃焼状態S1から最大燃焼状態S2の範囲においては、燃焼率が連続的に制御可能となっている。
より具体的には、複数のボイラ20のそれぞれには、変動可能な蒸気量の単位である単位蒸気量Uが設定されている。これにより、ボイラ20は、最小燃焼状態S1から最大燃焼状態S2の範囲においては、単位蒸気量U単位で、蒸気量を変更可能となっている。
【0025】
単位蒸気量Uは、ボイラ20の最大燃焼状態S2における蒸気量(最大蒸気量)に応じて適宜設定できるが、ボイラシステム1における出力蒸気量の必要蒸気量に対する追従性を向上させる観点から、ボイラ20の最大蒸気量の0.1%〜20%に設定されることが好ましく、1%〜10%に設定されることがより好ましい。
尚、出力蒸気量とは、ボイラ群2により出力される蒸気量を示し、この出力蒸気量は、複数のボイラ20のそれぞれから出力される蒸気量の合計値により表される。
【0026】
また、複数のボイラ20には、それぞれ優先順位が設定されている。優先順位は、燃焼指示や燃焼停止指示を行うボイラ20を選択するために用いられる。優先順位は、例えば整数値を用いて、数値が小さいほど優先順位が高くなるよう設定することができる。
図2に示すように、ボイラ20の1号機〜3号機のそれぞれに「1」〜「3」の優先順位が割り当てられている場合、1号機の優先順位が最も高く、3号機の優先順位が最も低い。この優先順位は、通常の場合、後述の制御部4の制御により、所定の時間間隔(例えば、24時間間隔)で変更される。
【0027】
以上のボイラ20は、
図1に示すように、燃焼が行われるボイラ本体21と、ボイラ20の燃焼状態を制御するローカル制御部22と、ボイラ20から発生する蒸気圧力を測定するボイラ圧力測定部としての蒸気圧センサ23と、を備える。
ボイラ本体21には、図示せぬ上部ヘッダが設けられ、ボイラ本体21の燃焼に伴い蒸気が発生すると、発生した蒸気は上部ヘッダに貯留される。
蒸気圧センサ24は、上部ヘッダに設けられており、この蒸気圧センサ23により上部ヘッダに貯留される蒸気の蒸気圧力(即ちボイラ20から発生した蒸気の蒸気圧力)が測定される。
【0028】
ローカル制御部22は、要求負荷に応じてボイラ20の燃焼状態を変更させる。具体的には、ローカル制御部22は、信号線16を介して台数制御装置3から送信される台数制御信号に基づいて、ボイラ20の燃焼状態を制御する。また、ローカル制御部22は、台数制御装置3で用いられる信号を、信号線16を介して台数制御装置3に送信する。台数制御装置3で用いられる信号としては、ボイラ20の実際の燃焼状態、蒸気圧センサ23で測定されたボイラ20の蒸気圧力及びその他のデータが挙げられる。
【0029】
次に、本実施形態のボイラシステム1による複数のボイラ20の燃焼状態の制御の詳細について説明する。
台数制御装置3は、蒸気圧センサ7からの蒸気圧信号に基づいて、要求負荷に応じたボイラ群2の必要燃焼量、及び必要燃焼量に対応する各ボイラ20の燃焼状態を算出し、各ボイラ20(ローカル制御部22)に台数制御信号を送信する。
この台数制御装置3は、
図1に示すように、記憶部5と、制御部4と、を備える。
【0030】
記憶部5は、台数制御装置3(制御部4)の制御により各ボイラ20に対して行われた指示の内容や、各ボイラ20から受信した燃焼状態等の情報、複数のボイラ20の燃焼パターンの設定条件等の情報、複数のボイラ20の優先順位の設定の情報、優先順位の変更(ローテーション)に関する設定の情報等を記憶する。また、この記憶部5には、後述の圧力ズレも記憶される。
【0031】
制御部4は、信号線16を介して各ボイラ20に各種の指示を行ったり、各ボイラ20から各種のデータを受信したりして、3台のボイラ20の燃焼状態や優先順位を制御する。各ボイラ20は、台数制御装置3から燃焼状態の変更指示の信号を受けると、その指示に従って当該ボイラ20を制御する。
【0032】
ところで、燃焼停止状態S0にあるボイラ20は、台数制御装置3から送信される制御信号に基づいて燃焼を開始(起蒸)するところ、ボイラ20は、燃焼を開始したとしても直ちに蒸気を供給することはできない。そのため、燃焼を開始したボイラ20は、台数制御装置3の制御(台数制御)に組み込まれない。
【0033】
そこで、制御部4は、燃焼を開始したボイラ20が蒸気ヘッダ6に蒸気を供給可能になったタイミング(起蒸タイミング)を判定し、当該ボイラ20を適切なタイミングで台数制御装置3の制御に組み込むこととしている。具体的には、制御部4は、燃焼を開始したボイラ20の蒸気圧力であるボイラ圧力とヘッダ圧力との差が所定の閾値を下回った場合に、当該ボイラ20を台数制御装置3の制御に組み込む。ところが、蒸気圧センサにより測定されるヘッダ圧力及びボイラ圧力には、若干の検出誤差が生じる。そして、この検出誤差に起因して、ボイラ20を適切なタイミングで台数制御装置3の制御に組み込むことができない場合が生じてしまう。
【0034】
そこで、本実施形態においては、この起蒸タイミングの判定をより正確に行うために、制御部4を以下のように構成している。
【0035】
以下、制御部4によるボイラ20の制御(起蒸制御)について、説明する。
図3は、制御部4の機能構成をブロック図である。
制御部4は、差圧算出部41と、圧力ズレ設定部42と、起蒸判定部43と、を備える。
【0036】
差圧算出部41は、ヘッダ圧力が目標圧力の近傍で安定した状態において、ヘッダ圧力と、蒸気ヘッダに蒸気供給を行っているボイラ20のボイラ圧力と、の差圧を算出する。これにより、差圧算出部41は、ボイラシステム1の燃焼状態が安定している状態において、ヘッダ圧力とボイラ圧力との間に生じている差圧を算出できる。ここで、差圧算出部41は、例えば、ヘッダ圧力と目標圧力との差が所定の閾値(例えば、±0.2MPa)以内の状態が所定時間(例えば、2分〜3分)継続した場合に、ヘッダ圧力が目標圧力の近傍で安定していると判定する。
【0037】
また、差圧算出部41は、ボイラ20の燃焼率が第1燃焼率(例えば、30%)を下回った状態においてヘッダ圧力とボイラ圧力との差圧を算出することが好ましい。これにより、ボイラ20から蒸気ヘッダ6までの圧力損失が少ない状態において、ヘッダ圧力とボイラ圧力との差圧を算出できる。
【0038】
また、差圧算出部41は、ボイラ群2の燃焼率(即ち、ボイラシステム1全体の燃焼率)が第2燃焼率(例えば、30%)を下回った状態においてヘッダ圧力とボイラ圧力との差圧を算出することが好ましい。これにより、他のボイラ20で生成された蒸気が差圧を算出するボイラ20のボイラ圧力に与える影響を低減できる。即ち、
図1に示すように、複数のボイラ20は、複数の鉛直蒸気管11及び集合蒸気管14を介して互いにつながっているため、逆止弁111が配置されていたとしても、一のボイラ20で生成された蒸気が他のボイラ20に流入してしまう場合がある。そこで、ボイラ群2の燃焼率が低い状態で差圧を算出することで、より正確な差圧を算出できる。
尚、差圧算出部41は、ボイラ群2を構成する複数のボイラ20それぞれについて、各ボイラ20が上述の条件を満たしたときに、ヘッダ圧力とボイラ圧力との差圧を算出する。
【0039】
圧力ズレ設定部42は、差圧算出部41により算出された差圧を、当該ボイラ20と蒸気ヘッダ6との圧力ズレとして設定し、記憶部5に記憶させる。即ち、上述のように、ヘッダ圧力が目標圧力の近傍で安定した状態においては、給蒸中のボイラ20のボイラ圧力と、ヘッダ圧力とは、概ね等しいと考えられる。そこで、本実施形態では、差圧算出部41により算出された差圧を、蒸気ヘッダ6の蒸気圧センサ7と、ボイラ20の蒸気圧センサ23との検出誤差(圧力ズレ)と判断し、この差圧を圧力ズレとして記憶部5に記憶させる。
【0040】
起蒸判定部43は、ヘッダ圧力とボイラ圧力との差が設定値として記憶部5に記憶された圧力ズレ以下となった場合に、当該ボイラ20が蒸気供給可能になったと判定する。そして、制御部4は、起蒸判定部43により蒸気供給可能になったと判定されたボイラ20を数制御装置3の制御に組み込む。これにより、蒸気ヘッダ6の蒸気圧センサ7と、ボイラ20の蒸気圧センサ23との検出誤差を考慮した上で起蒸判断を行えるため、ボイラ20を適切なタイミングで台数制御装置3の制御に組み込める。
尚、起蒸判定部43は、ヘッダ圧力とボイラ圧力との差が設定値として記憶部5に記憶された圧力ズレ以下となった後、所定時間(例えば、3秒)経過後に当該ボイラ20が蒸気供給可能になったと判定してもよい。これにより、所定時間の間にボイラ圧力が更に上昇されるため、起蒸判断の確実性をより向上させられる。
また、起蒸判定部43は、ヘッダ圧力とボイラ圧力との差から所定の裕度圧力α(例えば、0.01MPa〜0.02MPa)を減じた値が圧力ズレ以下となった場合に、当該ボイラ20が蒸気供給可能になったと判定してもよい。即ち、この場合、起蒸判定部43は、ヘッダ圧力とボイラ圧力との差から裕度αを減じた値をヘッダ圧力とボイラ圧力との差として圧力ズレと比較する。これにより、起蒸判定部43による起蒸判定に若干の余裕を持たせられる。
【0041】
本実施形態では、差圧算出部41は、所定期間毎(例えば、1週間毎)に差圧を算出する。これにより、ヘッダ圧力とそれぞれのボイラ20のボイラ圧力との圧力ズレの設定を定期的に更新できるので、時間の経過に伴う起蒸判定部43による起蒸判定精度の低下を抑制できる。
【0042】
図4は、本実施形態のボイラシステム1の制御状態の一例を示す図である。
ここでは、実際の蒸気ヘッダ6の圧力及び実際のボイラ20の圧力がいずれも0.83MPaのときに、蒸気圧センサ7で測定されるヘッダ圧力が0.80MPa、1号機ボイラ20〜3号機ボイラ20それぞれの蒸気圧センサ23で測定されるボイラ圧力が、0.82MPa、0.86MPa、0.79MPaであった場合のボイラシステム1の動作について説明する。
【0043】
この場合、
図4に示すように、差圧算出部41は、1号機ボイラ20〜3号機ボイラ20のそれぞれについて差圧を算出し、圧力ズレ設定部42は、これらの差圧をそれぞれのボイラ20と蒸気ヘッダ6との間の圧力ズレとして設定する。ここでは、1号機ボイラ20の圧力ズレは、−0.02MPa、2号機ボイラ20の圧力ズレは、−0.06MPa、3号機ボイラ20の圧力ズレは、0.01MPaと設定される。
【0044】
そして、起蒸判定部43は、起蒸判定を行う場合には、ヘッダ圧力とボイラ圧力との差が圧力ズレ以下になった場合に、当該ボイラ20を台数制御装置3の制御に組み込む。
本実施形態では、台数制御装置3(制御部4)は、各ボイラ20の蒸気圧センサ23で測定されるボイラ圧力を圧力ズレで補正した補正後ボイラ圧力を用いて起蒸判断を行う。
即ち、
図4に示す状態では、起蒸判定部43は、蒸気圧センサ7により測定されたヘッダ圧力と各ボイラ20の補正後ボイラ圧力を比較し、すべてのボイラ20が蒸気供給可能であると判定する。
【0045】
図5は、差圧算出部41及び圧力ズレ設定部42による制御を行わなかった場合のボイラシステムの状態の一例を示す図である。
この場合、台数制御装置3は、ヘッダ圧力とボイラ圧力との圧力ズレを考慮しない。そのため、台数制御装置3は、3台すべてのボイラ20について、ボイラ圧力がヘッダ圧力以上となったと判定して3台すべてのボイラ20を蒸気供給可能と判断し、台数制御装置3の制御に組み込む。しかしながら、1号機ボイラ20及び2号機ボイラ20の実際圧力は、蒸気ヘッダ6の実際圧力まで達していないため、これら1号機ボイラ20及び2号機ボイラ20は、実際には給蒸できない。これにより、蒸気供給可能と判定されたボイラ20からの給蒸がなされないことに起因して、ヘッダ圧力の変動が生じてしまう。
【0046】
以上説明した本実施形態のボイラシステム1によれば、以下のような効果を奏する。
【0047】
(1)制御部4を、ヘッダ圧力が目標圧力の近傍で安定した状態において、ヘッダ圧力とボイラ圧力との差圧を算出する差圧算出部41と、この差圧をボイラ圧力ズレとして設定する圧力ズレ設定部42と、ヘッダ圧力とボイラ圧力との差が圧力ズレ以下となった場合に当該ボイラ20が蒸気供給可能になったと判定する起蒸判定部43と、を含んで構成した。これにより、蒸気ヘッダ6の蒸気圧センサ7と、ボイラ20の蒸気圧センサ23との検出誤差(圧力ズレ)を考慮した上で起蒸判断を行えるため、ボイラ20を適切なタイミングで台数制御装置3の制御に組み込める。よって、燃焼させるボイラ20を増加させた場合における蒸気ヘッダ6の蒸気圧力の安定性を向上させられる。
特に、ボイラ20として比例制御ボイラを用いた場合には、ヘッダ圧力の変動がわずかであっても、このヘッダ圧力に基いて算出される必要蒸気量が変化する。そのため、わずかな圧力ズレであっても考慮した本実施形態のボイラシステム1は、比例制御ボイラにより構成されるボイラシステム1に特に好適に用いることができる。
【0048】
(2)差圧算出部41に、ボイラ20の燃焼率が第1燃焼率(例えば、30%)を下回った状態においてヘッダ圧力とボイラ圧力との差圧を算出させた。これにより、ボイラ20から蒸気ヘッダ6までの圧力損失が少ない状態において、ヘッダ圧力とボイラ圧力との差圧を算出できるので、起蒸判断をより正確に行える。
【0049】
(3)差圧算出部41に、ボイラ群2の燃焼率が第2燃焼率(例えば、30%)を下回った状態においてヘッダ圧力とボイラ圧力との差圧を算出させた。これにより、他のボイラ20で生成された蒸気が差圧を算出するボイラ20のボイラ圧力に与える影響を低減できる。即ち、複数のボイラ20は、複数の鉛直蒸気管11及び集合蒸気管14を介して互いにつながっているため、逆止弁111が配置されていたとしても、一のボイラ20で生成された蒸気が他のボイラ20に流入してしまう場合がある。そこで、ボイラ群2の燃焼率が低い状態で差圧を算出することで、より正確な差圧を算出できる。
【0050】
(4)差圧算出部41に、所定期間毎(例えば、1週間毎)に差圧を算出させた。これにより、ヘッダ圧力とそれぞれのボイラ20のボイラ圧力との圧力ズレの設定を定期的に更新できるので、時間の経過に伴う起蒸判定部43による起蒸判定精度の低下を抑制できる。
【0051】
(5)起蒸判定部43に、ヘッダ圧力とボイラ圧力との差が圧力ズレ以下となった後、所定時間(例えば、3秒)経過後に当該ボイラ20が蒸気供給可能になったと判定させた。これにより、所定時間の間にボイラ圧力が更に上昇されるため、起蒸判断の確実性をより向上させられる。
【0052】
以上、本発明のボイラシステム1の好ましい一実施形態につき説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0053】
例えば、本実施形態では、複数のボイラ20を比例制御ボイラにより構成することとしているが、ボイラ20は比例制御ボイラに限らず、段階値制御ボイラにより構成することとしてもよい。尚、段階値制御ボイラとは、複数の段階的な燃焼位置を有し、燃焼を選択的にオン/オフしたり、炎の大きさを調整したりすること等により燃焼量を制御して、選択された燃焼位置に応じて燃焼量を段階的に増減可能なボイラである。一例として、複数のボイラ20を、燃焼停止位置、低燃焼位置及び高燃焼位置の3位置を有する3位置ボイラにより、構成することとしてもよい。もちろん、ボイラ20は、3位置に限らず、任意のN位置の燃焼位置を有することとしてもよい。
【0054】
また、本実施形態では、本発明を、3台のボイラ20からなるボイラ群2を備えるボイラシステム1に適用したが、これに限らない。即ち、本発明を、4台以上のボイラからなるボイラ群を備えるボイラシステムに適用してもよく、また、2台のボイラからなるボイラ群を備えるボイラシステムに適用してもよい。