(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明を実施するための形態(以下「実施の形態」という)について図面を参照しながら説明する。
【0019】
[実施の形態1]
図1から
図3は、実施の形態1に係る定着装置を用いた画像形成装置を示すものである。
図1はその画像形成装置の全体の概要を示し、
図2はその定着装置を正面側から見たときの概要を示し、
図3はその定着装置を側面側(用紙出口側)から見たときの概要を示している。
【0020】
実施の形態1に係る画像形成装置1は、例えばカラープリンタとして構成されたものである。この画像形成装置1は、
図1に示されるように、未定着のトナー像を被記録材の一例としての記録用紙9に形成する画像形成手段2と、画像形成手段2で形成されたトナー像を記録用紙9に定着させる定着装置5と、その画像形成手段2、定着装置5等の各動作を制御する制御装置3等を備えている。
図1中の符号1aは画像形成装置の筐体を示し、一点鎖線は筐体1aの内部において記録用紙9が搬送される主な搬送経路を示す。
【0021】
<画像形成手段の構成>
画像形成手段2は、現像剤を構成するトナーで現像されるトナー像を形成する複数の作像装置10と、各作像装置10で形成されたトナー像をそれぞれ一次転写により保持して最終的に記録用紙9に二次転写する二次転写位置まで搬送する中間転写装置20と、中間転写装置20の二次転写位置に供給すべき所要の記録用紙9を収容して搬送する給紙装置40とで構成されている。
【0022】
作像装置10は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の4色のトナー像を電子写真方式によりそれぞれ専用に形成する4つの作像装置10Y,10M,10C,10Kで構成されている。この4つの作像装置10(Y,M,C,K)は、例えばほぼ水平方向に一列に並べた状態で配置されており、また、扱う現像剤の種類(色)が異なる点を除けば、以下に示すようにほぼ共通した構成のものである。
【0023】
すなわち、各作像装置10(Y,M,C,K)は、矢印Aで示す方向に回転する感光ドラム11と、感光ドラム11の周面(像保持面)を所要の電位に帯電させる帯電装置12と、感光ドラム11の帯電された周面に画像の入力情報(信号)に基づく光を照射して静電潜像を形成する露光装置13と、その静電潜像を対応する色(Y,M,C,K)の現像剤のトナーで現像してトナー像にする現像装置14(Y,M,C,K)と、その各トナー像を中間転写装置20に転写するロール形態等の一次転写装置15と、一次転写後に感光ドラム11の像保持面に残留して付着するトナー等の付着物を取り除いて清掃するドラム清掃装置17等を備えている。
【0024】
中間転写装置20は、各作像装置10(Y,M,C,K)の下方の位置に存在するように配置されている。この中間転写装置20は、感光ドラム11と一次転写装置15(一次転写ロール)の間となる一次転写位置を通過しながら矢印Bで示す方向に回転する中間転写ベルト21と、中間転写ベルト21をその内周面から所望の状態に保持して回転自在に支持する複数のベルト支持ロール22a〜22fと、中間転写ベルト21上のトナー像を記録用紙9に二次転写させるロール形態の二次転写装置25と、二次転写装置25を通過した後に中間転写ベルト21の外周面に残留して付着するトナー、紙粉等の付着物を取り除いて清掃するベルト清掃装置27等を備えている。複数のベルト支持ロール22a〜22fのうちベルト支持ロール22aは駆動ロールとして構成され、ベルト支持ロール22cは張力付与ロールとして構成されている。二次転写装置25は、中間転写ベルト21をベルト支持ロール22eに押し付けて二次転写部(二次転写位置)を構成している。
【0025】
給紙装置40は、中間転写装置20及び二次転写装置25の下方側の位置に存在するように配置されている。この給紙装置40は、所望のサイズ、種類等の記録用紙9を積載した状態で収容する単数(又は複数)の用紙収容体41と、用紙収容体41から記録用紙9を1枚ずつ送り出す送出装置42とで構成されている。この給紙装置40と中間転写装置20の二次転写位置(中間転写ベルト21と二次転写装置25の接触部)との間には、給紙装置40から送り出される記録用紙9を二次転写位置まで搬送する複数の用紙搬送ロール対43a〜43dや図示しない搬送ガイド材で構成される給紙搬送路が設けられている。二次転写位置の直前の位置に配置される用紙搬送ロール対43dは、例えば記録用紙9の搬送時期を調整するロール(レジストロール)として構成されている。
【0026】
また、中間転写装置20の二次転写部と定着装置5との間には、中間転写ベルト21から剥離されて送り出される二次転写後の記録用紙9を定着装置5まで搬送するためのベルト形態等の用紙搬送装置45が設けられている。さらに、定着装置5と筐体1aに形成される記録用紙9の排出口との間には、定着装置5から送り出される定着後の記録用紙9を筐体1aの外部に排出するための用紙排出ロール対47a,47b等で構成される排紙搬送路が設けられている。
【0027】
次に、画像形成装置1による基本的な画像形成動作について説明する。ここでは、画像形成部2における上記4つの作像装置10(Y,M,C,K)を使用して、4色(Y,M,C,K)のトナー像を組み合わせて構成されるフルカラー画像を形成するときの画像形成動作を代表して説明する。
【0028】
画像形成装置1は、制御装置3が画像形成動作(プリント)の要求指令を受けると、まず、画像形成手段2の各作像装置10(Y,M,C,K)において、各感光ドラム11が矢印Aで示す方向に回転し始めた後、各帯電装置12が各感光ドラム11の周面を所要の極性(実施の形態1ではマイナス極性)及び電位にそれぞれ帯電させる。続いて、露光装置13が、帯電後の感光ドラム11の周面に対して、画像形成装置1に入力される画像の情報を各色成分(Y,M,C,K)に変換して得られる画像の信号に基づく光を照射し、その周面に所要の電位からなる各色成分の静電潜像をそれぞれ形成する。
【0029】
続いて、各現像装置14(Y,M,C,K)が、感光ドラム11に形成された各色成分の静電潜像に対し、所要の極性(マイナス極性)に帯電された対応する色(Y,M,C,K)のトナーを現像ロール等からそれぞれ供給して静電的に付着させて現像を行う。この現像により、各感光ドラム11には、4色(Y,M,C,K)のトナー像が専用に形成される。
【0030】
続いて、各作像装置10(Y,M,C,K)の感光ドラム11上に形成された各色のトナー像が一次転写位置まで搬送されると、一次転写装置15が、その各色のトナー像を中間転写装置20の矢印Bで示す方向に回転する中間転写ベルト21の外周面に対して順番に重ね合わせるような状態で一次転写させる。これにより、中間転写ベルト21に多重のトナー像が一次転写される。一次転写が終了した各作像装置10では、ドラム清掃装置17が一次転写後の感光ドラム11の周面を清掃する。
【0031】
続いて、中間転写装置20では、中間転写ベルト21の回転により一次転写された多重のトナー像を保持して二次転写位置まで搬送する。一方、給紙装置40では、作像動作に合わせて所要の記録用紙9を給紙搬送路に送り出す。給紙搬送路では、レジストロールとしての用紙搬送ロール対43dが記録用紙9を転写時期に合わせて二次転写位置に送り出して供給する。
【0032】
二次転写位置においては、二次転写装置25が、中間転写ベルト21上の多重のトナー像を記録用紙9に一括して二次転写させる。また、二次転写が終了した中間転写装置20では、ベルト清掃装置27が、二次転写後の中間転写ベルト21の外周面を清掃する。
【0033】
続いて、トナー像が二次転写された記録用紙9は、中間転写ベルト21から剥離された後に用紙搬送装置45により定着装置5まで搬送される。定着装置5では、後述するように必要な定着処理(加熱及び加圧)をして未定着のトナー像を記録用紙9に定着させる。最後に、定着が終了した後の記録用紙9は、その片面への画像の形成を行うだけの画像形成動作のときは、排紙搬送路を通して例えば筐体1aの外部に配置される図示しない排出収容部にむけて排出される。
【0034】
以上の画像形成動作により、4色のトナー像を組み合わせて構成されるフルカラー画像が形成された記録用紙9が出力される。
【0035】
<定着装置の構成>
次に、定着装置5について詳しく説明する。
【0036】
定着装置5は、
図1から
図3等に示されるように、筐体50を有し、その筐体50の内部に、加熱用ロール51と、加熱用ロール51の外周面(加熱面)51aに接触して未定着トナー像MTが形成された記録用紙9を通過させる定着処理部FNを形成する加圧用ロール52と、加圧用ロール52を回転駆動させる駆動装置53と、加圧用ロール52の外周面(加圧面)52aを清掃する清掃部材54と、加圧用ロール52を後述する3つの位置P1〜P3に変位させる変位機構55と、加熱用ロール51の外周面
52aを所要の温度に加熱する加熱手段の一例であるハロゲンヒータ56と、駆動装置53、変位機構55、ハロゲンヒータ56等の各動作を制御する制御装置31等が配置されている。
【0037】
図1、
図2等における符号57A、57Bは加熱用ロール51と加圧用ロール52の各外周面
52aの温度をそれぞれ測定する温度測定センサであり、符号58A,58Bは定着対象の未定着トナー像MTが形成された記録用紙9を定着装置5の導入時及び排出時にそれぞれ案内する導入案内部材と排出案内部材であり、符号59は加圧用ロール52の外周面
52aに空気(E)を吹きつけて冷却する送風装置である。
【0038】
加熱用ロール51は、アルミニウム等の金属材料からなる円筒状のロール基材51bの外周面に、例えばPFA等からなる離型層51cを積層した構造のロールである。また、加熱用ロール51は、そのロール両端部が筐体50内の図示しない支持部材に回転自在な状態で支持されている。加熱用ロール51は、回転駆動する加圧用ロール52と接触しているときに従動して二点鎖線の矢印で示す方向に回転する(
図2)。ハロゲンヒータ56は、加熱用ロール51のロール基材51bの内部空間に配置されている。また、ハロゲンヒータ56は、加熱用ロール51の外周面51aの温度を測定する温度センサ57Aの検出結果に基づいて、その外周面51aの温度を所要の定着用温度に加熱して保つよう作動する。
【0039】
加圧用ロール52は、アルミニウム等からなる円筒状のロール基体52bの外周面に、シリコーンゴム等からなる弾性層52cと、PFA等からなる離型層を順次積層した構造のロールである。また、加圧用ロール52は、加熱用ロール51の下方側に配置されるととともに、そのロール両端部の軸部52e,52fが変位機構55(の揺動フレーム)に回転自在な状態で支持されている。さらに、加圧用ロール52は、駆動モータ、回転伝達機構等で構成される駆動装置53により所要の時期に矢印で示す方向に回転駆動させられるよう構成されている。
【0040】
変位機構55は、
図2、
図3等に示されるように、加圧用ロール52を回転自在に支持するとともに一端部において支持軸552を中心に矢印C,Dで示す方向に揺動する支持フレーム551と、支持フレーム551の支持軸552がある一端部と反対の他端部を変位可能に支持するとともに回転駆動軸554の回転により所定の方向に所要の量(角度)だけ回転するカム板553と、加圧用ロール52の位置(実際には支持フレーム551等に設けられる被検出部の位置)を検出する図示しない位置検出センサとで構成されている。また、変位機構55には、加圧用ロール52を加熱用ロール51に所要の圧力で接触させるために加圧用ロール52に加圧力を付与する加圧機構556が組み合わせて設けられている。
【0041】
この変位機構55の変位させる3つの位置は、
図2、
図4、
図5等に示すように、加圧用ロール52を加熱用ロール51に接触させた(定着処理部FNを形成する)状態にする第1の位置(P1)と、加圧用ロール52を加熱用ロール51及び清掃部材55の双方から離間させた状態にする第2の位置(P2)と、加圧用ロール52を清掃部材55に接触させた状態にする第3の位置(P3)である。第1の位置P1は、換言すれば定着動作の実行時に存在させる定着位置であり、また清掃部材55から離間している位置でもある(
図2)。第2の位置P2は、換言すれば待機時(例えば次の画像形成動作を待っている時期)に存在させる待機位置である(
図4)。第3の位置P3は、換言すれば加圧用ローラ52の清掃作業の実行時にのみ存在させる清掃位置であり、また加熱用ロール51から離間している位置でもある(
図5)。なお実施の形態1では、第1の位置P1は、後述する加圧用ロール52の加熱動作のときに存在させる位置でもある。また、第3の位置P3は、後述する清掃部材54の予熱動作のときに存在させる位置でもある。
【0042】
また、変位機構55におけるカム板553は、この3つの位置P1〜P3に支持フレーム551を介して加圧用ロール52を変位させることができる寸法及び形状に設定されている。カム板553が固定されている回転駆動軸554は、図示しない駆動装置から回転動力が伝達されるように構成されている。加圧機構556は、コイルばねや支持アーム等で構成されている
。
【0043】
清掃部材54は、
図2、
図3等に示されるように、加圧用ロール52の軸方向の長さにほぼ相当する長さからなる支持板54bと、その支持板54bの上面側に固着される耐熱性樹脂繊維からなるフェルト(不織布)等で構成される清掃素材54cとで構成されている。また、清掃部材54は、加圧用ロール52の下方側の位置に所要の間隔をあけた状態で配置されているとともに、その清掃素材54cが加圧用ロール52の外周面52aと向き合う状態に保たれるよう筐体50の下部側に取り付けられている。
【0044】
送風装置59は、図示しない送風ファンと、送風ファンから送られる空気(E)を加圧用ロール52の下部側の外周面(その軸方向の全域にわたる表面部分)にむけて吹き付けるよう導く送風ダクト等で構成されている。この送風装置59は、定着動作の時期や待機時において加圧用ロール52の外周面に空気(E)を吹き付けることにより加圧用ロール52の過度な温度上昇を抑制している。この送風装置59による空気の吹き付けにより、例えば、定着性能、定着面の光沢度合い、用紙の搬送性能(定着処理部FNの通過及び排出)等を安定化させることや微調整することを行うことができる。
【0045】
制御装置31は、例えば、画像形成装置1における制御装置3の一部として構成されるものである。この定着装置の制御装置31を含む制御装置3は、中央演算処理部、各種プログラムや各種データが格納又は記憶される記憶部、入出力部、制御部等で構成されている。制御プログラムには、定着装置5の基本的な定着動作の全般を制御するための制御プログラムや、加圧用ロール52の清掃部材54による清掃関連動作に関して
図7に例示する制御動作を実行する制御プログラムが含まれる。
【0046】
制御装置31には、
図6に示されるように、加熱用ロール51の温度測定センサ
(温度検出部)57Aや、加圧用ロール52の温度測定センサ
(温度検出部)57Bや、加圧用ロール52の位置検出センサ(位置検出部)55
7等が接続されており、加熱用ロール51及び加圧用ロール52の表面温度に関する情報や加圧用ロール52の位置に関する情報が入力される。また、制御装置31には、加熱用ロール51のハロゲンヒータ56の動作を制御する加熱制御部311や、加圧用ロール52の駆動装置53(の駆動モータ)の動作を制御する加圧用ロール52の駆動制御部312や、加圧用ロール52の変位機構55(の駆動モータ)の動作を制御する駆動制御部313が接続されている。また、制御装置31には、加圧用ロール52の送風装置59(送風ファン)の動作を制御する駆動制御部315が接続されている。なお、送風装置59の駆動制御部315は、画像形成装置1における制御装置3に接続されていても構わない。さらに、制御装置31は、それら各制御部311〜313,315に対して制御プログラム等に基づく必要な制御情報を送信し、また必要に応じて各制御部311〜313が保有する情報を入手している。
【0047】
そして、この定着装置5においては、制御装置31により、
図7や
図8等に示されるような加圧用ロール52の清掃作業を実行するように構成されている。この制御装置31により実行される加圧用ロール52の清掃作業は、外周面(加圧面)52aが加熱され且つ回転が停止させられた状態の加圧用ロール52を清掃部材54に接触させて
清掃部材54を予熱する「予熱動作」と、その予熱動作の後に続けて加圧用ロール52を回転駆動させて清掃部材54により外周面52aを清掃する「清掃動作」とを実行するものである。
【0048】
この加圧用ロール52の清掃作業は、予め設定されている時期に自動的に実行されるように構成される他、例えば画像形成装置1の使用者が必要なときに清掃作業を指示入力したときに実行されるように構成される。予め設定されている時期としては、例えば、画像形成動作(特に記録用紙9として厚紙を使用した画像形成動作)の累積回数が所定の値以上になったときに実行中の最後の画像形成動作が終了した時期や、特別な紙詰まり(例えば、定着対象の未定着トナー像を有する記録用紙9が定着装置5に導入されて通過する際に発生する紙詰まりなど)の発生が検知されて紙の除去作業が終了した後の時期が挙げられる。
【0049】
予熱動作における加圧用ロール52の外周面52aの加熱は、後述するようにハロゲンヒータ56で加熱される加熱用ロール51の熱を利用して行われる。予熱動作を行う時間(予熱時間)は、清掃部材54における清掃素材54cの表面(清掃面)54aに硬くなって付着しているトナー等の付着物が加圧用ロール52の外周面52aを擦って傷つけるおそれがない程度に軟らかくなることを目安に予め実験等で確認した時間(Ht)に設定される。また、清掃動作を行う時間(清掃時間)は、清掃部材54の清掃面54aが加圧用ロール52の外周面52aを少なくとも1周以上移動する
のに要する時間を目安にして設定される時間(Ct:経過時間)に設定される。
【0050】
また、実施の形態1では、制御装置31が、上記予熱動作において、加圧用ロール52を清掃部材54に接触させる前にハロゲンヒータ56により加熱された状態にある加熱用ロール51に接触させて外周面52aを加熱する「加熱動作」を実行する制御を行うように構成している。しかも、制御装置31は、その予熱動作において、加圧用ロール52を清掃部材54に接触させる前の温度測定センサ57Bの測定結果が未定着のトナー像MTを構成するトナーのガラス転移温度(Tg)未満の温度である場合、上記加熱動作を実行する制御を行うように構成されている。トナーのガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量測定等の測定法を用いて測定されるものである。
【0051】
次に、この定着装置5における加圧用ロール52の清掃作業に関する動作について説明する。
【0052】
ここでは、加圧用ロール52の清掃作業が、主に画像形成動作(実際には定着動作)の終了後の時期に行われる場合を例にして説明する。
【0053】
加圧用ロール52の清掃作業の時期が到来すると、
図7に示すように、制御装置31において、加圧用ロール52の外周面52aの温度が画像形成で使用されるトナーのガラス転移温度(Tg)以上の温度であるか否かが温度測定センサ57ABの測定結果に照らして判断され(ステップ10:以後、これを「S10」のように略記することもある。)、また、加圧用ロール52の変位位置が位置P1,P2のいずれかであるかが位置検出センサ(位置検出部556)の検出結果を参照して判断される(S11)。なお、加熱ロール51は、この清掃作業の有無に関係なく、ハロゲンヒータ56によって所望の温度に保たれるよう加熱されるように制御されている(S00)。つまり、画像形成動作の実行時期には定着用加熱温度に保たれるよう加熱され、それ以外の時期(待機時)には定着用温度よりも低い温度(待機時加熱温度)に保たれるよう加熱される。
【0054】
この際、加圧用ロール52の外周面52aがトナーのガラス転移温度(Tg)未満の温度であり、しかも加圧用ロール52が待機位置P2にあると判断されると、
図8等にも示されるように、制御装置31が変位機構55を作動させて、加圧用ロール52を待機位置P2から定着位置P1
(図2)に変位させ(S12)、しかる後、制御装置31が加圧用ロール52の駆動装置53の駆動モータを作動させて、加圧用ロール52を回転駆動し始める(S13)。このように判断されるのは、画像形成動作が終了した後の時期には殆どないが、例えば、待機時に使用者による清掃作業の指示入力があって清掃作業を行う場合などである。しかも、この際、加熱ロール51の待機時加熱温度がトナーのガラス転移温度(Tg)以下の温度に設定されている場合である。この待機時から清掃動作が開始されるときの動作の一部は、
図8において二点鎖線で示している。
【0055】
これにより、加圧用ロール52(の外周面52a)は、加熱された状態の加熱用ロール51(の外周面51a)に接触して回転するので、その外周面52aが加熱され始める(予熱動作における加熱動作が開始される)。
【0056】
一方、ステップ10,11において加圧用ロール52の外周面52aがトナーのガラス転移温度(Tg)以上の温度であり、しかも加圧用ロール52が定着位置P1にあると判断された場合は、ステップ15に移行する。このように判断されるのは、清掃作業が定着動作終了の後に続けて行われる場合などである。
【0057】
この場合は、
図8に実線で示されるように、加熱用ロール51がハロゲンヒータ56の点灯により加熱された状態にあり、また、加圧用ロール52が駆動モータの作動により回転し続けている。このときの加圧用ロール52の外周面52aは、加熱用ロール51
との接触により既に加熱された状態に保たれている。ちなみに、この場合において、ハロゲンヒータ56は、
図8に示すように、例えば定着動作が完全に終了した時点(ts)になると、定着用温度等の高温設定温度(H)から待機時の低温設定温度(L)に切り替えられる。この待機時の低温設定温度は、一般に、トナーのガラス転移温度(Tg)よりも高い温度に設定される。また、上記時点(ts)になると、加圧用ロール52の送風装置59の送風ファンが停止し、これにより加圧用ロール52の加熱動作を妨げないように構成されている。
【0058】
続いて、制御装置31は、加圧用ロール52の外周面52aの温度がトナーのガラス転移温度(Tg)以上の温度であるか否かが判断される(S14)。このときにガラス転移温度以上であると判断されると、その時点(t1)で、制御装置31が駆動装置53を制御して加圧用ロール52の回転を停止させ(S15)、しかる後、変位機構55を作動させて加圧用ロール2を定着位置P1から清掃位置P3に変位させる(S16)。
【0059】
これにより、外周面(加圧面)52aが加熱され且つ回転が停止させられた状態の加圧用ロール52が、清掃部材54の清掃素材54cの清掃面54aに接触することになるので(
図5)、清掃部材54の清掃面54aが加熱される(清掃部材54の予熱動作が行われる)。
【0060】
この際、清掃部材54の清掃素材54cの清掃面54aには、加圧用ロール52の清掃により回収されて堆積しているトナー等の付着物が存在し、非清掃時に熱が付与されることなく硬くなって付着していることがある。これに対し、この定着装置5の場合には、その清掃部材54の清掃面54aは、加熱されて回転停止した状態の加圧用ロール52の接触によりトナーのガラス転移温度(Tg)以上の温度で加熱されて予熱されるので、その清掃面54a上に硬くなって付着しているトナー等の付着物(特にトナー)が次第に軟らかくなる。また、この予熱動作では、加熱された状態の加圧用ロール52が回転を停止した状態で清掃部材54の清掃面54aに接触するので、その清掃面52aに硬くなって存在するトナー等の付着物に接触しても、加圧用ロール52の外周面52aがその硬くなったトナー等の付着物で擦られて傷付けられることがない。
【0061】
この予熱動作は、制御装置31において加圧用ロール52の清掃部材54の清掃面54aに接触した時点(t2)からの経過時間(予熱時間)が予め定めた閾値時間(Ht)に達したか否かが判断され(S17)、その閾値時間に達するまで続行される。この閾値時間(Ht)は、少なくとも清掃部材54の清掃面54aに硬くなって存在するトナー等の付着物が加圧用ロール52の外周面52aを擦って傷つけるおそれがない程度に予熱動作により軟らかくなるまでに要する最低限の所要時間を目安にして設定される。具体的には、予熱時間を判断する閾値時間(Ht)は例えば数十秒に設定される。
【0062】
ステップ17において予熱時間が閾値時間(Ht)に達したと判断されると、その時間(t3)で、制御装置31が駆動装置53を作動させて加圧用ロール52を矢印で示す方向に回転させ始める(S18)。
【0063】
これにより、回転する加圧用ロール52の外周面52aが清掃部材54を通過することになり、その外周面52aが清掃部材54により清掃される(清掃動作)。つまり、定着動作により加熱用ロール51の外周面51aに付着するトナー、紙粉等の付着物が加圧用ロール52の外周面52aに転移して残着する付着物や、加圧用ロール52の外周面52aに記録用紙から直接転移して残着するトナー、紙粉等の付着物が、清掃部材54により回収されて除去される。
【0064】
清掃動作は、制御装置31において加圧用ロール52の回転始動した時点(t3)からの経過時間(清掃時間)が予め定めた閾値時間(Ct)に達したか否かが判断され(S19)、その閾値時間に達するまで続行される。この清掃時間に関する閾値時間(Ct)は、少なくとも加圧用ロール52の外周面52aに存在するトナー等の付着物が清掃部材54により除去されるまでに要する最低限の所要時間を目安にして設定される。具体的には、清掃時間を判断する閾値時間(Ct)は例えば加圧用ロール52が数十回ほど回転する
のに要する時間に設定される。
【0065】
ステップ20において清掃動作の経過時間が閾値時間(Ct)に達したと判断されると、その時間(t4)で、制御装置31が駆動装置53を制御して加圧用ロール52の回転を停止させ(S20)、しかる後、変位機構55を作動させて加圧用ロール52を清掃位置P3から待機位置P2に変位させる(S21)。ステップST21においては、加圧用ロール52の回転を停止させるのではなく、加熱動作時の回転速度よりも遅い速度(低速)で回転させるようにしても構わない。またこの際、
図8に示すように、加圧用ロール52が待機位置P2に変位したことを位置検出センサにより確認された時点(t5)で、送風装置59の送風ファンが始動して加圧用ロール52に空気を吹き付けて冷却する。
【0066】
以上により、加圧用ロール52の外周面52aに清掃作業が終了する。
【0067】
この定着装置5における加圧用ロール52の外周面52aの清掃作業では、清掃動作をする前に接触部材
54の予熱動作が行わるので、その外周面52aが清掃部材54に硬くなって付着していたトナー等の付着物により擦られて傷付けられることが抑制される。また、その予熱動作において加熱された状態の加圧用ロール52が清掃部材54に接触するときにその回転が停止した状態で接触するので、その接触する際の加圧用ロール52の外周面52aが清掃部材54に硬くなって付着していたトナー等の付着物により擦られて傷付けられることが確実に抑制される。
【0068】
さらに、この定着装置5を備えた画像形成装置1では、加圧用ロール52の外周面52aに形成される傷に起因した画質の低下(傷に対応した筋状の光沢むらなど)が発生することが防止される。
【0069】
[他の実施の形態]
実施の形態1では、清掃部材54の予熱動作を開始したときから加圧用ロール52の清掃動作を開始するときまでの予熱時間は、予め定めた一定の閾値時間(Ht)に達するまで行う構成を採用した場合を例示したが、その閾値時間(Ht)については適時変更して適用するように構成してもよい。上記清掃部材54の予熱動作を開始したときとは、加圧用ロール52が清掃部材に接触した時点(t2)であり、上記加圧用ロール52の清掃動作を開始するときとは、加圧用ロール52が回転駆動し始める時期(t4)である。また、予熱時間とは、換言すれば清掃動作が開始されるまでの待機時間でもある。
【0070】
この予熱時間、換言すれば待機時間を決定する閾値時間(Ht)は、例えば、清掃部材54の清掃面54aに付着するトナーの量に関係する情報に基づいて変更することができる。その情報としては、例えば、加圧用ロール52の清掃作業の実行累積回数や、画像形成の画素数の累積量などが挙げられる。閾値時間(Ht)を変更する場合、その閾値時間は、付着するトナーの量(清掃作業の実行累積回数、画素数の累積値など)が少ない段階では比較的短い時間にし、その付着するトナーの量が多くなった段階では比較的多い時間にするように変更すればよい。このように閾値時間(Ht)を変更するように構成した場合には、その閾値時間を一定にする場合に比べて、特に上記付着するトナーの量が少ない段階において予熱動作の時間が短くなって、その予熱動作が完了した後に行われる清掃動作が開始されるまでの待ち時間を短くすることができる。
【0071】
また、実施の形態1では、予熱動作において加熱動作をする場合、その加熱動作を終了して予熱動作に移行するときの判断を加圧用ロール52の外周面52aの温度がトナーのガラス転移温度(Tg)以上であるか否で行う例(
図7のS14の判断)を説明したが、この例に限定されない。この移行するときの判断については、例えば、加熱動作を開始した時点からの経過時間が予め定める閾値時間に達するか否かを判断するようにしてもよい。この場合の閾値時間は、加圧用ロール52の外周面52aが清掃部材54を予熱するに必要な加熱温度に達するまでの予測値として設定される。また、このときの加熱動作を開始した時点とは、加圧用ロール52を定着位置P1に変位させて加熱用ロール51に接触させた時点や、定着動作が完了した時点(ts)などである。さらに、加圧ロール52の加熱動作(加熱状態の加熱ロール51に接触させて回転させること)を、加圧ロール52が待機位置P2にあるときは、常に行うよう構成してもよい。
【0072】
実施の形態1では、定着装置として加熱用ロール及び加圧用ロールのようなロール形態の加熱回転体及び加圧回転体を適用した場合を例示したが、定着装置はベルト形態の加熱回転体及び加圧回転体を適用したものであってもよい。加圧回転体は、加熱手段を備えているものであっても構わない。この場合は、予熱動作における加熱動作を(加熱された状態の加熱回転体を使用せず)、その加熱手段を使用して行うことができる。また、加圧用ロール52の変位機構55については、実施の形態1で例示した3つの位置(P1〜P3)を変位させる構成に限定されない。変位機構55としては、例えば、加圧用ロール52を加熱用ロール51に接触させた状態にする位置と清掃部材54に接触させた状態にする位置の少なくとも2つの位置に変位させることができる構成のものであればよい。
【0073】
また、定着装置における清掃部材54としては、実施の形態1におけるパット形態のものに代えて、ブレード形態やブラシ形態のもの(固定式の清掃部材)を適用してもよく、さらに必要であれば回転ロール形態のものや、巻き取り式のシート形態のものを適用してもよい。巻き取り式のシート形態の清掃部材を適用した場合、その清掃シートの使用部分(加圧用ロール52と接触している面部分)を長めに使うことが可能になり、清掃シートの使用可能な寿命を延ばすことができる。
【0074】
この他、定着装置5や他の実施形態に係る定着装置等を用いる画像形成装置1については、未定着のトナー像を記録用紙9等の被記録材に形成する画像形成手段を備えたものであれば、単色画像を形成する画像形成装置であっても、他の形式の画像形成装置であっても勿論差し支えない。