特許第6210008号(P6210008)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ JFEエンジニアリング株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6210008-水処理装置 図000002
  • 特許6210008-水処理装置 図000003
  • 特許6210008-水処理装置 図000004
  • 特許6210008-水処理装置 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6210008
(24)【登録日】2017年9月22日
(45)【発行日】2017年10月11日
(54)【発明の名称】水処理装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 61/00 20060101AFI20171002BHJP
   B01D 61/58 20060101ALI20171002BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20171002BHJP
   C02F 1/24 20060101ALI20171002BHJP
   B01D 61/02 20060101ALI20171002BHJP
【FI】
   B01D61/00 500
   B01D61/58
   C02F1/44 A
   C02F1/24 C
   B01D61/02 500
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-63406(P2014-63406)
(22)【出願日】2014年3月26日
(65)【公開番号】特開2015-182055(P2015-182055A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2016年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085109
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 政浩
(72)【発明者】
【氏名】功刀 亮
(72)【発明者】
【氏名】渕上 浩司
(72)【発明者】
【氏名】戸村 啓二
(72)【発明者】
【氏名】藤原 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】冨田 洋平
【審査官】 片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0267308(US,A1)
【文献】 特開2005−138060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/24、44
B01D 61/00−71/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水と、温度感応性薬剤を水に溶解した誘引溶液を半透膜を介して接触させ、前記被処理水中の水を前記半透膜を通して前記誘引溶液に移動させ、水で希釈された希釈誘引溶液と第一の膜濃縮水を得る順浸透膜処理装置と、前記順浸透膜処理装置から流出する希釈誘引溶液を前記誘引溶液の曇点以上の温度まで加温する加温手段と、前記加温手段で加温した希釈誘引溶液を、温度感応性薬剤濃度の高い下層液と温度感性薬剤濃度の低い上層液とに相分離する相分離槽と、前記相分離槽から流出した下層液を前記誘引溶液の曇点以下の温度まで冷却する冷却手段と、前記冷却手段で冷却された前記下層液を前記順浸透膜処理装置に循環する循環手段と、
前記相分離槽から流出した上層液に微細気泡を吹き込み、該上層液中に溶解している温度感応性薬剤を微細気泡とともに浮上分離させる泡沫分離槽と、
温度感応性薬剤を分離され、前記泡沫分離槽から流出する液を膜処理し、膜ろ過水と第二の膜濃縮水を得る膜処理装置と、
前記泡沫分離槽で生成した温度感応性薬剤を伴う泡沫を抜き出し気液分離する気体分離器と、
前記第二の膜濃縮水と前記気体分離器で分離された温度感応性薬剤を前記順浸透膜処理装置から流出する希釈誘引溶液に混合する手段とを有する水処理装置。
【請求項2】
誘引溶液の曇点が30℃〜80℃の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の水処理装置。
【請求項3】
前記気体分離器で分離された気体を泡沫分離槽に吹き込む気体として循環使用することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の水処理装置。
【請求項4】
相分離槽から流出する下層液と前記希釈誘引溶液との熱交換手段を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水、かん水などの被処理水から淡水を製造する水処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
海水から半透膜を用いて淡水を製造する方法は種々知られているが、海水に浸透圧以上の圧力を加えて水を強制的に透過させる逆浸透法が主に開発されてきた。しかし、この方法は高圧に加圧する必要があるため、設備費および運転費にコストがかかるという問題点がある。そこで、半透膜を介して海水と海水より高濃度の塩溶液を接触させ、加圧せずとも浸透圧により海水中の水をこの塩溶液に移動させ、分離、回収することにより淡水を製造する方法が開発されている。(特許文献1、2)。
【0003】
特許文献1の方法は、半透膜を介して海水と反対側にアンモニアと二酸化炭素を溶解して得られる塩溶液を流して、海水中の水を半透膜を通過させて該塩溶液に移動させ、得られた希釈塩溶液をイオン交換膜や蒸留塔等を用いてアンモニウムイオンと炭酸イオンを個別に分離して浄水を得るとともに、分離したアンモニウムイオンと炭酸イオンを該塩溶液に溶解して半透膜の元の部屋に戻す方法である。
【0004】
特許文献2の方法は、曇点を有する物質を溶質とした誘引溶液を用いており、図4に示すように、海水21を順浸透システム30に送って、そこで半透膜を介して誘引溶液24と接触させて海水21中の水を浸透圧により半透膜を透過させて誘引溶液22へ移動させる。水が誘引溶液に移動して残った濃縮海水22は順浸透システム30から流出する。一方、海水中の水で希釈された希釈誘引溶液25は加熱器を備えた沈殿システム34に送られ、そこで相分離あるいは沈殿を生じた希釈誘引溶液はポンプ37で加圧されてろ過システム32に送られる。その際、溶質の曇点より低い温度の液29を添加することができる。ろ過システム32で濃縮された誘引溶液24は順浸透システム30に返送される。一方、ろ過された膜ろ過水28は後処理部33でさらに精製されて飲料水となる。曇点を有する溶質には主にポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールからなる両親媒性高分子が使用され、ろ過システムのろ材にはナノろ過膜や逆浸透膜が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−83663号公報
【特許文献2】米国特許第8,021,553B2号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の方法では、誘引物質(例えば炭酸アンモニウム)の分離、回収を蒸発法で行うが、その際、アンモニアおよび同伴する水分の蒸発潜熱が多大で、膨大なエネルギーを要しコストも高い。さらに、蒸発設備サイズが極めて大きく、大量(例えば10万m/日)の飲料水製造には不向きである。また、投入エネルギーが大きいため熱交換器のサイズも大きくなり、大量処理には不向きである。さらに、炭酸アンモニウムを用いる場合にはFO膜からのバックフローによって膜濃縮水を介して環境中に漏洩する誘引物質が窒素を含むため、富栄養化の原因となる。
【0007】
特許文献2の方法は、誘引溶液の温度感応性を利用して誘引物質の一部を凝集させることにより、膜ろ過エネルギーを低減させることができる。この方法においては、誘引物質を凝集させた希釈誘引溶液はそのままろ過システムに送って凝集物をろ過分離していた。ところが、曇点温度以上となって凝集した粒子を高濃度のままろ過すると、膜面への蓄積による閉塞を引き起こし、ろ過分離に多大な時間とエネルギーを要していた。
【0008】
本発明者は、この問題を解決する手段として、誘引物質を凝集させた希釈誘引溶液を、そのままろ過システムに送るのではなく、一旦、相分離槽で温度感応性薬剤である誘引物質を主体とする下層液と水を主体とする上層液に分離して、下層液は曇点以下に冷却して誘引溶液として順浸透工程へ循環し、上層液のみをナノろ過膜等でろ過する方法を既に開示している。
【0009】
しかしながら、この方法においてもナノろ過膜等によるろ過で消費されるエネルギーを低減するために、上層液中の温度感応性薬剤の濃度をさらに低減することが望まれる。その手段として希釈誘引溶液を曇点を越えて大幅に加温する方法が考えられる。しかしながら、希釈誘引溶液を高温に加温する方法は多くの熱エネルギーを投入する必要がある。
【0010】
本発明の目的は、温度感応性薬剤を用いて順浸透法で水処理する装置において、順浸透膜処理装置から流出する希釈誘引溶液を相分離して得られる上層液のろ過の負担を安価で実用的な方法で軽減できる手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討の結果、相分離して得られる上層液に微細な気泡を吹き込むことによって疎水基を有する温度感応性薬剤が微細気泡に付着して分離されることを見出した。そこで、微細気泡によって形成される泡沫を引き抜いて気液分離することによって、上層液からは温度感応性薬剤が除去されて、温度感応性薬剤の濃度がさらに希薄な液が得られて、膜ろ過負担をさらに軽減することができる。
【0012】
また、気液分離された液相は温度感応性薬剤を高濃度で含んでいるので、希釈誘引溶液に混合して循環利用できる。
【0013】
本発明は、これらの知見に基づいてなされたもので、被処理水と、温度感応性薬剤を水に溶解した誘引溶液を半透膜を介して接触させ、前記被処理水中の水を前記半透膜を通して前記誘引溶液に移動させ、水で希釈された希釈誘引溶液と第一の膜濃縮水を得る順浸透膜処理装置と、前記順浸透膜処理装置から流出する希釈誘引溶液を前記誘引溶液の曇点以上の温度まで加温する加温手段と、前記加温手段で加温した希釈誘引溶液を、温度感応性薬剤濃度の高い下層液と温度感性薬剤濃度の低い上層液とに相分離する相分離槽と、前記相分離槽から流出した下層液を前記誘引溶液の曇点以下の温度まで冷却する冷却手段と、前記冷却手段で冷却された前記下層液を前記順浸透膜処理装置に循環する循環手段と、
前記相分離槽から流出した上層液に微細気泡を吹き込み、該上層液中に溶解している温度感応性薬剤を微細気泡とともに浮上分離させる泡沫分離槽と、
温度感応性薬剤を分離され、前記泡沫分離槽から流出する液を膜処理し、膜ろ過水と第二の膜濃縮水を得る膜処理装置と、
前記泡沫分離槽で生成した温度感応性薬剤を伴う泡沫を抜き出し気液分離する気体分離器と、
前記第二の膜濃縮水と前記気体分離器で分離された温度感応性薬剤を前記順浸透膜処理装置から流出する希釈誘引溶液に混合する手段とを有する水処理装置
を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、曇点を有する温度感応性薬剤を用いた順浸透法による水処理装置において、相分離した温度感応性薬剤の凝集液を水を主体とする液から効率よく分離し、膜ろ過工程におけるろ過負担を大幅に軽減することができる。さらに、水を主体とする液に残存する温度感応性薬剤を効率よく分解して、水を主体とする液の膜ろ過負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施態様を模式的に示すブロック図である。
図2】その要部の模式図である。
図3】本発明の別の実施態様を模式的に示すブロック図である。
図4】公知の水処理方法の概略を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に本発明の一実施態様を模式的に示す。
【0017】
本発明の装置で処理される被処理水は水を溶媒とする溶液であり、海水、かん水などである。かん水は、シェールガス、オイルサンド、CBM(炭層メタン)、石油等を採掘する坑井からの随伴水も含まれる。
【0018】
随伴水は、坑井からの採掘目的物に同伴して排出される水であり、塩分、有機物、懸濁物などを含んでいる。汚濁物質の濃度としては、例えば蒸発残留物(主にNa+、K+、Ca2+、Cl-、SO42-など)が1,000〜100,000mg/L、有機物(油分や添加した薬剤など)がTOCとして10〜1,000mg/L、懸濁物質が100〜10,000mg/Lといった範囲で含有される。
【0019】
油分と随伴水の分離手段は問わないが、例えば沈降などで油水分離が行われている。
【0020】
図1に示していないが、被処理水を必要によりまずろ過処理する。このろ過処理は、例えば、精密膜ろ過膜を用いたろ過器で行い、ろ過膜は、精密ろ過膜として使用されている通常の膜を使用することができる。例えば、酢酸セルロース、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリ塩化ビニルなどの外、セラミック製の膜や多孔質ガラス製の膜なども利用できる。精密膜ろ過処理では、精密ろ過膜を通過した膜ろ過水と、膜を通過しないで残った膜濃縮水が得られる。
精密膜ろ過のほか、限外膜ろ過、砂ろ過等のろ過処理が用いることができる。限外膜ろ過の材質は精密膜ろ過と同様のものが用いられる。
【0021】
順浸透膜処理装置
順浸透膜処理装置は、ろ過処理した被処理水と、温度感応性薬剤を水に溶解した高浸透圧の誘引溶液を半透膜を介して接触させ、前記被処理水中の水を前記半透膜を通して前記誘引溶液に移動させ、水で希釈された希釈誘引溶液と第一の膜濃縮水を得る装置である。
【0022】
半透膜は水を選択的に透過できるものがよく、順浸透(Forward Osmosis)膜が好ましいが、逆浸透膜も使用できる。材質は特に制限されないが、例示すれば、酢酸セルロース系、ポリアミド系、ポリエチレンイミン系、ポリスルホン系、ポリベンゾイミダゾール系のものなどを挙げることができる。半透膜の形態も特に制限されず、平膜、管状膜、中空糸などいずれであってもよい。
【0023】
この半透膜を装着する順浸透膜処理装置は通常は円筒形あるいは箱形の容器内に半透膜を設置して、この半透膜で仕切られた一方の室に被処理水を流し、他方の室に誘引溶液を流せるものであり、公知の半透膜装置を用いることができ、市販品を用いることができる。
【0024】
温度感応性薬剤は、低温では親水性で水によく溶けるが、ある温度以上になると疎水性化し溶解度が低下する物質であり、水溶性〜水不溶性に変化する温度が曇点と呼ばれる。この温度に達すると疎水性化した温度感応性薬剤が析出して白濁が起こる。
【0025】
この温度感応性薬剤は、各種界面活性剤、分散剤、乳化剤などとして利用されており、例示すれば、アルコールまたは脂肪酸とエチレンオキサイドの化合物、アルコールまたは脂肪酸とプロピレンオキサイドの化合物、アクリルアミドとアルキル基の化合物、エチレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、アミノ酸およびその誘導体などであり、好ましくは、ポリエチレングリコールとポリプロピレン/ポリブチレングリコールのブロック共重合体、グリセロールエトキシブチレート、トリメチロールプロパンエトキシブトキシレート等である。本発明において使用する温度感温性薬剤としては、曇点が30℃〜80℃の範囲、特に40℃から60℃の範囲のものが好ましい。
【0026】
誘引溶液の濃度は、誘引溶液の浸透圧が、被処理液の浸透圧より十分高くなるように調整しなければならない。
【0027】
順浸透膜処理装置で被処理水を半透膜を介して誘引溶液と接触させると浸透圧の差によって被処理水中の水が半透膜を通って誘引溶液に移動する。
【0028】
加温手段
順浸透膜処理装置から流出する希釈誘引溶液を曇点以上の温度まで加温して、温度感応性薬剤の少なくとも一部を凝集させる手段である。この凝集物は、温度感応性薬剤の濃厚溶液が相分離したものである。
【0029】
加温手段は所定の温度まで加熱できればよく、電気ヒーター、熱交換器など如何なるものでも用いることが出来る。
【0030】
この加温手段の熱源には、次の相分離槽で分離された下層液の顕熱を使用することが好ましい。
【0031】
相分離槽
相分離槽は、前記加温手段で加温した希釈誘引溶液を温度感応性薬剤の濃厚相液と温度感応性薬剤濃度の低い希薄相液に相分離する槽である。
【0032】
この相分離は曇点以上の液温で相分離槽内で静置または連続的に流通させながら行うことができる。その際、前記加温手段で凝集した温度感応性薬剤の濃厚相液は、微細な液滴の状態になる。そして、この状態で相分離槽に投入されると、濃厚相液の微細液滴は速やかに沈降し、液滴同士が合一して相分離槽の下に濃厚相液の層が形成される。一方で、加温された希釈誘引溶液から生じた温度感温性薬剤濃度が低い部分は上昇して、相分離槽の上に希薄相液の層が形成される。最終的に、上下に分離したそれぞれの溶液は、相分離槽内の上下から引き抜かれることによって次工程に送られる。
【0033】
冷却手段
前記相分離槽から流出した下層液は、これを前記誘引溶液の曇点より低い温度に冷却することで水に溶解させて誘引溶液に再生する。この温度は広い範囲で採用可能であるが、経済性を考慮すると常温かそれより高い温度が好ましい。この冷却熱源としては、被処理水あるいは順浸透膜処理装置において得られた希釈誘引溶液を用いることがエネルギーの効率利用の点で好ましい。
【0034】
再生した誘引溶液はそのまま循環使用できる。
【0035】
泡沫分離槽
泡沫分離槽は、前記相分離槽から流出した上層液に微細気泡を吹き込み、該上層液中に溶解している温度感応性薬剤を微細気泡とともに浮上分離させる槽であり、槽体の底部あるいはその近傍に気泡発生部が設けられ、上層液の入口と発生した泡沫の出口を有するものである。本発明では、気泡は直径が常圧100μm以下、特に1〜50μm程度のものが好ましく、気泡発生部には、微細な孔を有する膜や多孔質から気泡を発生させる方式、液の流動を利用して気泡を微細化する方式(旋回流式、スタティックミキサー式、エジェクター式、キャビテーション式)、水中にガスを加圧溶解させて急激に開放することで過飽和となったガスが水中に微細気泡として生成する加圧溶解式などを用いる。泡沫分離槽においては泡沫が増加していくので泡沫の出口は泡沫分離槽の上部に設けてそこから泡沫を溢流させればよい。泡沫分離槽内には、攪拌機を設けることができる。吹き込む気体は、不活性な気体が好ましく、安価で入手が安易な点で特に窒素が好ましい。不活性ガスは回収して繰返し使用するのがよい。このような微細な気泡による泡沫分離により、希薄相の感温性薬剤濃度は、5〜10%程度から、0.1〜5%程度に低減することができる。
【0036】
膜処理装置
膜処理装置では、温度感応性薬剤が分離されて、前記泡沫分離槽から流出する液をナノろ過膜や逆浸透膜などで膜ろ過して、そこに残存している温度感応性薬剤や凝集用固体粒子を除去する。膜ろ過水は淡水であり、飲料水などに利用できる。膜ろ過されないで残った第二の膜濃縮水は、温度感応性薬剤が含まれているので、相分離槽に循環するのがよい。あるいは、濃縮して誘引溶液として順浸透膜処理装置に直接返送することもできる。
【0037】
気体分離器
気体分離器は、前記泡沫分離槽から排出された泡沫を気液分離するものであり、そこでは破泡が行われる。気体分離器には、例えば、発生した泡沫を一時的に溜めて、泡が次第に合一して消えることで下部から液が、上部からガスが取り出される容器を用いる。
【0038】
気体分離器で分離された気体は、タンク等に収容し、圧縮機などを適宜設けて泡沫分離槽に再度吹き込み使用するのがよい。
【0039】
混合手段
前記第二の膜濃縮水と前記気体分離器で分離された温度感応性薬剤を前記順浸透膜処理装置から流出する希釈誘引溶液に混合する手段であり、これは単なる配管の接続によってもよく、混合槽を設けてもよい。
【0040】
一方、順浸透膜処理装置で得られた膜濃縮水は塩分を高濃度で含んでいるので、これを濃縮して塩分を析出させて分離し、有効利用することができる。
【0041】
この本発明の装置の一実施態様を図1に、その要部を図2に、それぞれ模式化して示す。図1に示すように、海水等の被処理水1は順浸透膜処理装置10に送入され、半透膜3を通して水が反対側の室に透過されて残った第一の膜濃縮水2aが排出される。順浸透膜処理装置10の反対側の室には凝集用固体粒子を含む誘引溶液4が流入しており、そこで半透膜3を介して被処理水1と向流接触して被処理水1から移行した水で希釈されて順浸透膜処理装置10を出る。順浸透膜処理装置10を出た希釈誘引溶液5は、加温器14で加温されて相分離槽11に入る。
【0042】
相分離槽11で分離された上層液6は泡沫分離槽18へ入る。この泡沫分離槽18には微細気泡発生器17から気泡が供給されている。泡沫分離槽18から排出される泡沫18aは気体分離器19で気液分離され、気体は微細気泡発生器17に循環される。一方、泡沫18aを分離して残った液18bはタンク5aからポンプにより膜ろ過装置12でろ過され、得られた膜ろ過水8は活性炭等の後処理装置(図示されていない。)でさらに精製されて精製水を得る。膜ろ過装置12でろ過されなかった第二の膜濃縮水2bは相分離槽11に返送されて希釈誘引溶液とともに相分離される。
【0043】
一方、相分離槽11で分離された下層液7は、冷却器15で冷却されてタンク4aに入れられ、ポンプにより誘引溶液4として順浸透膜処理装置10に返送される。
【0044】
本発明の装置の別の実施態様を図3に示す。この装置は、相分離槽11から出た下層液7を熱交換器16に送り、そこで順浸透膜処理装置10から出た希釈誘引溶液5と熱交換させる外は、図1の装置と同じである。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の方法は、海水から淡水の製造や、坑井からの随伴水の処理などに広く利用できる。
【符号の説明】
【0046】
1 被処理水
2a 第一の膜濃縮水
2b 第二の膜濃縮水
3 半透膜
4 誘引溶液
4a タンク
5 希釈誘引溶液
5a タンク
6 上層液
7 下層液
8 膜ろ過水
10 順浸透膜処理装置
11 相分離槽
12 膜ろ過装置
13 後処理装置
14 加温器
15 冷却器
16 熱交換器
17 微細気泡発生器
18 泡沫分離槽
18a 泡沫
18b 液
19 気体分離器
図1
図2
図3
図4