(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面に基き本発明の実施形態を説明する。
【0027】
(1)全体構成
図1は、本実施形態に係る自動変速機1の構成を示す骨子図である。自動変速機1は、変速機ケース2内に、相互に同一軸心上に配置された、エンジン側から延びる入力軸3と、出力ギヤ4と、第1〜第4の4つのプラネタリギヤセット(以下「PGS」と表記する)11〜14と、第1・第2の2つのブレーキ21,22と、第1〜第3の3つのクラッチ31〜33とを備える。本実施形態では、反エンジン側が軸方向の一端側、エンジン側が軸方向の他端側である。
【0028】
変速機ケース2は、外周壁2aと、外周壁2aのエンジン側端部に設けられた第1中間壁2bと、第1中間壁2bの反エンジン側に設けられた第2中間壁2cと、外周壁2aの軸方向中間部に設けられた第3中間壁2dと、外周壁2aの反エンジン側端部に設けられた側壁2eと、側壁2eの中央部からエンジン側に延設されたボス部2fと、第2中間壁2cの内周側端部から反エンジン側に延設された円筒部2gとを有する。
【0029】
4つのPGS11〜14は、エンジン側から、第1PGS11、相互に径方向に重ねて配置された内周側の第2PGS12及び外周側の第3PGS13、第4PGS14の順に備えられている。4つのPGS11〜14は、いずれも、キャリヤ11c〜14cに支持されたピニオン(図示せず)がサンギヤ11s〜14sとリングギヤ11r〜14rとに直接噛合するシングルピニオン型である。
【0030】
2段に重ねて配置された第2PGS12のリングギヤ12r及び第3PGS13のサンギヤ13sが溶接や焼嵌め等により一体化されて(一体回転要素7)常時連結されている。第1PGS11のサンギヤ11s及び第2PGS12のサンギヤ12s、第1PGS11のリングギヤ11r及び第4PGS14のキャリヤ14c、第1PGS11のキャリヤ11c及び第3PGS13のキャリヤ13cがそれぞれ常時連結されている。入力軸3が第2PGS12のキャリヤ12cに、出力ギヤ4が第1PGS11のキャリヤ11c及び第3PGS13のキャリヤ13cにそれぞれ常時連結されている。出力ギヤ4はベアリング6を介して変速機ケース2の円筒部2gに回転自在に支持されている。
【0031】
第4PGS14のサンギヤ14sに第1回転部材81が連結され、反エンジン側に延設されている。第3PGS13のリングギヤ13rに第2回転部材82が連結され、反エンジン側に延設されている。一体回転要素7に第3回転部材83が連結され、反エンジン側に延設されている。第2PGS12のキャリヤ12cに入力軸3を介して第4回転部材84が連結されている。
【0032】
2つのブレーキ21,22のうち、第1ブレーキ21は変速機ケース2の第1中間壁2bに配設され、第2ブレーキ22は第3中間壁2dに配設されている。第1・第2ブレーキ21,22は、それぞれ、シリンダ21i,22iと、シリンダ21i,22iに嵌合されたピストン21p,22pと、シリンダ21i,22i及びピストン21p,22pで画成される作動油圧室21a,22aとを有し、作動油圧室21a,22aに油圧が供給されたときに摩擦板が締結され、第1ブレーキ21は第1PGS11のサンギヤ11s及び第2PGS12のサンギヤ12sを変速機ケース2に固定し、第2ブレーキ22は第4PGS14のリングギヤ14rを変速機ケース11に固定する。
【0033】
3つのクラッチ31〜33は、変速機ケース2内の反エンジン側端部に配設されている。3つのクラッチ31〜33は、軸方向の同じ位置で、第1クラッチ31の内周側に第2クラッチ32が位置し、第2クラッチ32の内周側に第3クラッチ33が位置するように、相互に径方向に重ねて配置されている。
【0034】
第1クラッチ31は、第4PGS14のサンギヤ14sと、第3PGS13のリングギヤ13rとを断接する。言い換えると、上記サンギヤ14sに連結された第1回転部材81と、上記リングギヤ13rに連結された第2回転部材82との接続状態を切り換える。
【0035】
第2クラッチ32は、第4PGS14のサンギヤ14sと、一体回転要素7(すなわち第2PGS12のリングギヤ12r及び第3PGS13のサンギヤ13s)とを断接する。言い換えると、上記サンギヤ14sに連結された第1回転部材81と、上記一体回転要素7に連結された第3回転部材83との接続状態を切り換える。
【0036】
第3クラッチ33は、第4PGS14のサンギヤ14sと、入力軸3及び第2PGS12のキャリヤ12cとを断接する。言い換えると、上記サンギヤ14sに連結された第1回転部材81と、入力軸3を介して上記キャリヤ12cに連結された第4回転部材84との接続状態を切り換える。
【0037】
その場合に、第1回転部材81は、第1クラッチ31で第2回転部材82との接続状態が切り換えられ、第2クラッチ32で第3回転部材83との接続状態が切り換えられ、第3クラッチ33で第4回転部材84との接続状態が切り換えられる。つまり、各クラッチ31〜33が接続状態を切り換える2つの回転部材のうちの共通する一方の回転部材である。そのため、第1〜第3クラッチ31〜33の反エンジン側に、変速機ケース2の反エンジン側の側壁2eに近接して、軸心と直交する壁部を有する共用回転部材5を配置し、この共用回転部材5に第1回転部材81を連結している。共用回転部材5は3つのクラッチ31〜33で共用されるものであり、各クラッチ31〜33のシリンダ、ピストン、作動油圧室、作動油圧通路、遠心バランス室、遠心バランス室構成部材等が共用回転部材5に支持される。
【0038】
以上のように、この自動変速機1は、4つのPGS11〜14と、2つのブレーキ21,22と、3つのクラッチ31〜33とを備え、
図2の締結表に示すように、5つの摩擦締結要素から3つの摩擦締結要素を選択的に締結(○印)することにより、前進1〜8速と後退速とが達成される。
図2において、CL1〜CL3は第1〜第3クラッチ31〜33を示し、BR1,BR2は第1・第2ブレーキ21,22を示す。
【0039】
(2)特徴的構成
以下、
図3〜
図10を参照して本実施形態の特徴部分を説明する。
図3は、上記共用回転部材5を
図1の矢印A方向から見た図、
図4〜
図6は、それぞれ
図3の矢印IV,V,VIに沿う上記自動変速機1の反エンジン側端部の断面図、
図7は、
図3の中央部の拡大図、
図8は、上記自動変速機1に備えられた共通部材8を
図1の矢印A方向から見た図、
図9・
図10は、それぞれ
図5・
図6の要部拡大図である。
【0040】
共用回転部材5は、
図3に示すように、円環状の壁部5xを有する。壁部5xの内周部(中央の円形開口の縁部)に、
図4に示すように、外側円筒部5dと内側円筒部5eとが形成されている。外側円筒部5dは壁部5xの一方の面から垂直に延設され、内側円筒部5eは壁部5xの他方の面から外側円筒部5dよりも長く垂直に延設されている。変速機ケース2のボス部2fに、外側円筒部5dが反エンジン側に位置し、内側円筒部がエンジン側に位置するように、外側円筒部5d及び内側円筒部5eが外嵌されている。これにより、共用回転部材5が変速機ケース2のボス部2fに回転自在に支持されている。また、外側円筒部5dの反エンジン側の端部と変速機ケース2の側壁2eとの間にベアリング9が介設されている。これにより、共用回転部材5がベアリング9を介して変速機ケース2の反エンジン側の側壁2eで支持されている。なお、ボス部2fの内周面に入力軸3の反エンジン側の端部が回転自在に支持されている。
【0041】
図3に示すように、壁部5xは、外側円筒部5dが形成された面(反エンジン側の面)において、厚壁部5aと薄壁部5bとを含む。厚壁部5aは壁部5xの内周部から外周部まで径方向に延びる四角柱状に形成され、6つの厚壁部5aが共用回転部材5の回転中心に対して等間隔(60°間隔)で放射状に配置されている。薄壁部5bは、隣接する厚壁部5aと厚壁部5aとの間の扇形の部分であり、
図5に示すように、壁部5xが反エンジン側からエンジン側に凹陥されて形成されている。すなわち、壁部5xの反エンジン側の面においては、6つの厚壁部5aが相互に周方向に並ぶように配置され、6つの厚壁部5aと6つの薄壁部5bとが周方向に交互に配置されている。
【0042】
図3に示すように、壁部5xの外周部に、連結部5cが形成されている。連結部5cは、共用回転部材5が第1回転部材81にスプライン係合によって連結される部分である。連結部5cは、
図4に示すように、壁部5xの外周部よりもさらに径方向外側の位置においてエンジン側に突設されている。
【0043】
図4及び
図9に示すように、壁部5xのエンジン側に3つのクラッチ31〜33が配設され、各クラッチ31〜33のシリンダ31i〜33i(
図5参照)、ピストン31p〜33p、作動油圧室31a〜33a、作動油圧通路31c〜33c(
図3参照)、遠心バランス室31j〜33j、遠心バランス室構成部材31k〜33k等が共用回転部材5に支持されている。
【0044】
すなわち、
図1に示すように、第4PGS14のサンギヤ14sに連結された第1回転部材81は、反エンジン側に延設された後、
図4に示すように、変速機ケース2のボス部2fないし共用回転部材5の内側円筒部5eの手前(すなわちエンジン側)で径方向外周側に曲折されて延び(径方向延設部81a)、変速機ケース2の外周壁2aに近接した位置で再び軸方向の反エンジン側に曲折されて延び(軸方向延設部81b)、変速機ケース2の反エンジン側の側壁2eに近接した位置で終わっている。そして、この第1回転部材81の上記軸方向延設部81bに共用回転部材5の連結部5cがスプライン係合されて、第1回転部材81に共用回転部材5が連結されている。
【0045】
ここで、第1回転部材81の上記径方向延設部81aは、軸心近傍から外周側の第1クラッチ31まで延びるので比較的大径である。また、共用回転部材5は、外周側の第1クラッチ31から軸心近傍まで延びるので比較的大径であるうえ、3つのクラッチ31〜33のピストン31p〜33pを支持して重量物である。そして、これらの第1回転部材81の径方向延設部81aと共用回転部材5(ピストン31p〜33pを支持する大径の部分)とが連結部5cを介して相互に連結され一体化されている。そのため、共用回転部材5が変速機ケース2の反エンジン側の側壁2eで支持されることにより、第1・第2クラッチ31,32を取り巻く第1回転部材81の部分全体が共用回転部材5と共に上記側壁2eで支持されることになる。
【0046】
第1回転部材81の軸方向延設部81bは、第1クラッチ31の第1回転部材81側(エンジン側からのトルクの流れの下流側)の摩擦板31xを保持するドラム部材である。そのため、
図9に示すように、第1回転部材81の軸方向延設部81bに上記摩擦板31xがスプライン係合されて保持されている。これにより、第1クラッチ31に第1回転部材81の回転が入力される。
【0047】
図1に示すように、第3PGS13のリングギヤ13rに連結された第2回転部材82は、第1回転部材81の内周側で反エンジン側に延設された後、
図4に示すように、第1回転部材81よりもわずかに反エンジン側の位置で径方向外周側に曲折されて延び(径方向延設部82a)、第1回転部材81よりも内周側の位置で再び軸方向の反エンジン側に曲折されて延び(軸方向延設部82b)、第1回転部材81よりもエンジン側の位置で終わっている。
【0048】
第2回転部材82の軸方向延設部82bは、第1クラッチ31の第2回転部材82側(エンジン側からのトルクの流れの上流側)の摩擦板31yを保持するドラム部材である。そのため、
図9に示すように、第2回転部材82の軸方向延設部82bに上記摩擦板31yがスプライン係合されて保持されている。これにより、第1クラッチ31に第2回転部材82の回転が入力される。
【0049】
図1に示すように、一体回転要素7に連結された第3回転部材83は、第2回転部材82の内周側で反エンジン側に延設された後、
図4に示すように、第2回転部材82よりもわずかに反エンジン側の位置で径方向外周側に曲折されて延び(径方向延設部83a)、第2回転部材82よりもわずかに内周側の位置で再び軸方向の反エンジン側に曲折されて延び(軸方向延設部83b)、第2回転部材82と略同じ位置で終わっている。
【0050】
第3回転部材83の軸方向延設部83bは、第2クラッチ32の第3回転部材83側(エンジン側からのトルクの流れの上流側)の摩擦板32yを保持するドラム部材である。そのため、
図9に示すように、第3回転部材83の軸方向延設部83bに上記摩擦板32yがスプライン係合されて保持されている。これにより、第2クラッチ32に第3回転部材83の回転が入力される。
【0051】
図1に示すように、第2PGS12のキャリヤ12cに入力軸3を介して連結された第4回転部材84は、
図4に示すように、第3回転部材83よりもわずかに反エンジン側の位置で径方向外周側に延び(径方向延設部84a)、第3回転部材83よりも内周側の位置で再び軸方向の反エンジン側に曲折されて延び(軸方向延設部84b)、第3回転部材83と略同じ位置で終わっている。
【0052】
第4回転部材84の軸方向延設部84bは、第3クラッチ33の第4回転部材84側(エンジン側からのトルクの流れの上流側)の摩擦板33yを保持するドラム部材である。そのため、
図4に示すように、第4回転部材84の軸方向延設部84bに上記摩擦板33yがスプライン係合されて保持されている(
図9参照)。これにより、第3クラッチ33に第4回転部材84の回転が入力される。
【0053】
次に、
図9に示すように、共用回転部材5の壁部5xのエンジン側の面に、第1クラッチ31の遠心バランス室構成部材31kと、第2クラッチ32の遠心バランス室構成部材32kとが設けられている。両構成部材31k,32kとも、径方向の断面形状がL字状の環状部材に形成され、壁部5xから軸方向エンジン側に延びた後、径方向外周側に延びるように、一端部が壁部5xに溶接等により結合されている。第1クラッチ31の構成部材31kは、比較的大径であり、壁部5xの外周側に配置されている。第2クラッチ32の構成部材32kは、比較的小径であり、第1クラッチ31の構成部材31kの内周側に配置されている。
【0054】
第1クラッチ31の構成部材31kと、共用回転部材5の壁部5xと、共用回転部材5の連結部5cとで画成される空間内に、第1クラッチ31のピストン31pが軸方向に移動可能に収容されている。ピストン31pは、連結部5cとの干渉を避けるため、径方向の断面形状がS字状の環状部材に形成されている。ピストン31pが上記空間内に収容されることにより、ピストン31pと壁部5xとの間に第1クラッチ31の作動油圧室31aが形成され、ピストン31pと遠心バランス室構成部材31kとの間に第1クラッチ31の遠心バランス室31jが形成される。つまり、作動油圧室31aと遠心バランス室31jとはピストン31pを挟んで対向する。
【0055】
第2クラッチ32の構成部材32kと、共用回転部材5の壁部5xと、第1クラッチ31の構成部材31kとで画成される空間内に、第2クラッチ32のピストン32pが軸方向に移動可能に収容されている。ピストン32pは、第1クラッチ31のピストン31pのような制約がないため、径方向の断面形状がh字状の環状部材に形成されている。ピストン32pが上記空間内に収容されることにより、ピストン32pと壁部5xとの間に第2クラッチ32の作動油圧室32aが形成され、ピストン32pと遠心バランス室構成部材32kとの間に第2クラッチ32の遠心バランス室32jが形成される。つまり、作動油圧室32aと遠心バランス室32jとはピストン32pを挟んで対向する。なお、第2クラッチ32の作動油圧室32aを油密にシールするためのシールプレート32uが壁部5xに溶接等により結合されている。
【0056】
第2クラッチ32の遠心バランス室構成部材32kのエンジン側の面に共通部材8が一体に結合されている。この共通部材8は、第2クラッチ32の第1回転部材81側(エンジン側からのトルクの流れの下流側)の摩擦板32xを保持するドラム部材と、第3クラッチ33の第1回転部材31側(エンジン側からのトルクの流れの下流側)の摩擦板33xを保持するドラム部材とが一体化されたものである。そのため、
図8に示すように、共通部材8の外周面と内周面とにスプラインが交互に形成され、共通部材8の外周側に第2クラッチ32の摩擦板32xがスプライン係合されて保持されると共に、共通部材8の内周側に第3クラッチ33の摩擦板33xがスプライン係合されて保持されている。これにより、第2クラッチ32及び第3クラッチ33に第1回転部材81の回転が入力される。なお、
図3に、共通部材8の配置位置をそのピッチ円(鎖線)で示した。
【0057】
図4に示すように、共用回転部材5の内側円筒部5eに、第3クラッチ33の遠心バランス室構成部材33kが設けられている。この構成部材33kは、径方向の断面形状がクランク状の環状部材に形成され、内側円筒部5eから径方向外周側に延びるように、一端部が内側円筒部5eに結合されている。
【0058】
第3クラッチ33の構成部材33kと、共用回転部材5の壁部5xと、共用回転部材5の内側円筒部5eと、第2クラッチ32の構成部材32k(
図9参照)とで画成される空間内に、第3クラッチ33のピストン33pが軸方向に移動可能に収容されている。ピストン33pは、第1クラッチ31のピストン31pのような制約がないため、径方向の断面形状がT字状の環状部材に形成されている。ピストン33pが上記空間内に収容されることにより、ピストン33pと壁部5xと内側円筒部5eとの間に第3クラッチ33の作動油圧室33aが形成され、ピストン33pと遠心バランス室構成部材33kと内側円筒部5eとの間に第3クラッチ33の遠心バランス室33jが形成される。つまり、作動油圧室33aと遠心バランス室33jとはピストン33pを挟んで対向する。なお、第3クラッチ33の作動油圧室33aを油密にシールするためのシールプレート33uが壁部5xに溶接等により結合されている(
図9参照)。
【0059】
図4及び
図9に示すように、各クラッチ31〜33の作動油圧室31a〜33a及び遠心バランス室31j〜33jは、ピストン31p〜33p、遠心バランス室構成部材31k〜33k、及びシールプレート32u,33uに装着されたリップシールやOリングやシールリング等で油密にシールされている。
【0060】
以上のような構成により、本実施形態では、
図4及び
図9に示すように、第1〜第3クラッチ31〜33のピストン31p〜33pは、軸方向視で相互に重複せずかつ軸心と直交する同一平面上で径方向に並ぶように配置されている(
図4の矢印B参照)。
【0061】
また、
図4及び
図9に示すように、第1〜第3クラッチ31〜33の作動油圧室31a〜33aは、軸方向視で相互に重複せずかつ軸心と直交する同一平面上で径方向に並ぶように配置されている。
【0062】
また、
図4及び
図9に示すように、第1〜第3クラッチ31〜33の遠心バランス室31j〜33j及び遠心バランス室構成部材31k〜33kは、軸方向視で相互に重複せずかつ軸心と直交する同一平面上で径方向に並ぶように配置されている(
図5の矢印E参照)。
【0063】
また、
図4及び
図9に示すように、第1〜第3クラッチ31〜33の摩擦板31x,31y〜33x,33yは、軸方向視で相互に重複せずかつ軸心と直交する同一平面上で径方向に並ぶように配置されている(
図5の矢印F参照)。
【0064】
なお、
図9において、符号31z,32z,33zは、リテーナプレートを示している。第2クラッチ32のリテーナプレート32z及び第3クラッチ33のリテーナプレート33zは、単一のスナップリングにより共通部材8に組み付けられている。
【0065】
次に、第1クラッチ31を例に取り、第1〜第3クラッチ31〜33の作動油圧室31a〜33aに油圧を供給するための油路について説明する。
【0066】
図3及び
図4に示すように、共用回転部材5の壁部5xの厚壁部5aの内部に、厚壁部5aと同様、径方向に延びる作動油圧通路31cが形成されている。作動油圧通路31cの外周側に作動油圧室31aに通じる開口31bが設けられている。
図4及び
図7に示すように、作動油圧通路31cの内周端は接続通路31dに通じている。接続通路31dは共用回転部材5の内側円筒部5e及び外側円筒部5dに亘って形成され、軸方向に延びている。接続通路31dの軸方向の所定位置に内側円筒部5eの内周面に開口する連通路31eが設けられている。
【0067】
上記連通路31eと同じ軸方向の位置において、変速機ケース2のボス部2fの外周面に周方向に延びる凹溝31f(
図6参照)が形成されている。凹溝31fの周方向の所定位置に径方向内周側に延びる導入通路31gが設けられている。導入通路31gの内周端はボス部通路31hに通じている。ボス部通路31hはボス部2fの外周面と内周面との間の周壁部に形成され、軸方向に延びている。
【0068】
以上のような構成により、図外の油圧回路からボス部通路31hに油圧が供給されると、その油圧は、変速機ケース2側の導入通路31g及び凹溝31f(
図6参照)と、共用回転部材5側の連通路31e、接続通路31d、作動油圧通路31c、及び開口31bとを経由して、作動油圧室31aに供給される。この油圧の供給は凹溝31fの存在により共用回転部材5の回転中も途切れることがない。そして、共用回転部材5側の連通路31e、接続通路31d、作動油圧通路31c、及び開口31bは、
図3及び
図7に示すように、共用回転部材5の回転中心に対して点対称に(180°間隔で)2組設けられている。
【0069】
第2クラッチ32及び第3クラッチ33も同様である。すなわち、第2クラッチ32の作動油圧通路32cは、
図3において第1クラッチ31の作動油圧通路31cの60°右の厚壁部5aの内部に形成され、第3クラッチ33の作動油圧通路33cは、
図3において第2クラッチ32の作動油圧通路32cの60°右の厚壁部5aの内部に形成されている。また、
図3及び
図4に示すように、第2クラッチ32の開口32bは、第2クラッチ32の作動油圧室32aに通じるように第1クラッチ31の開口31bよりも内周側に位置し、第3クラッチ33の開口33bは、第3クラッチ33の作動油圧室33aに通じるように第2クラッチ32の開口32bよりも内周側に位置している。
【0070】
変速機ケース2側においては、第2クラッチ32のボス部通路32hは、
図7において第1クラッチ31のボス部通路31hの90°右に形成され、第3クラッチ33のボス部通路33hは、
図7において第2クラッチ32のボス部通路32hの90°右に形成されている。また、
図4及び
図6に示すように、第2クラッチ32の導入通路32g及び凹溝32fは、第1クラッチ31の導入通路31g及び凹溝31fよりも軸方向の反エンジン側に位置し、第3クラッチ33の導入通路33g及び凹溝33fは、第2クラッチ32の導入通路32g及び凹溝32fよりも軸方向の反エンジン側に位置している。そして、上記凹溝32f,33fと同じ軸方向の位置に、共用回転部材5側の接続通路32d,33d(
図7参照)に通じる第2クラッチ32の連通路32e及び第3クラッチ33の連通路33eがそれぞれ設けられている。
【0071】
以上のような構成により、図外の油圧回路からボス部通路32h,33hに油圧が供給されると、その油圧は、導入通路32g,33g、凹溝32f,33f、連通路32e,33e、接続通路32d,33d、作動油圧通路32c,33c、及び開口32b,33bを経由して、作動油圧室32a,33aに共用回転部材5の回転中も途切れることなく供給される。
【0072】
また、以上のような構成により、本実施形態では、
図3及び
図4に示すように、第1〜第3クラッチ31〜33の作動油圧室31a〜33aに通じる作動油圧通路31c〜33cは、共用回転部材5の壁部5x、より詳しくは厚壁部5aに相互に周方向に並ぶように設けられている(
図4の矢印C参照)。
【0073】
次に、第1〜第3クラッチ31〜33の遠心バランス室31j〜33jに作動油を供給するための油路について説明する。
【0074】
図7において、第3クラッチ33のボス部通路33hの90°右に遠心バランス室用のボス部通路34hが形成されている。
図6に示すように、第1クラッチ31の凹溝31fよりも軸方向のエンジン側に遠心バランス室用の凹溝34fが位置し、
図5及び
図7に示すように、上記ボス部通路34hと上記凹溝34fとを遠心バランス室用の導入通路34gが連通している。
【0075】
図5に示すように、上記凹溝34fと同じ軸方向の位置において、共用回転部材5の内側円筒部5eに連通路34mが形成されている。この連通路34mは、共用回転部材5の内側円筒部5eを内周面側から外周面側に貫通して第3クラッチ33の遠心バランス室33jに開口する(
図4参照)。この連通路34mは、
図7に示すように、共用回転部材5の回転中心に対して点対称に(180°間隔で)2つ設けられている。
【0076】
図9に示すように、第3クラッチ33のピストン33pの上部に、第3クラッチ33の遠心バランス室33jに開口する連通路34nが形成され、第2クラッチ32の遠心バランス室構成部材32kの下部に、上記連通路34nに通じ、かつ第2クラッチ32の遠心バランス室32jに開口する連通路34oが形成されている。同様に、第2クラッチ32のピストン32pの上部に、第2クラッチ32の遠心バランス室32jに開口する連通路34tが形成され、第1クラッチ31の遠心バランス室構成部材31kの下部に、上記連通路34tに通じ、かつ第1クラッチ31の遠心バランス室31jに開口する連通路34vが形成されている。
【0077】
以上のような構成により、図外の作動油供給源からボス部通路34h(
図5参照)に作動油が供給されると、その作動油は、共用回転部材5の回転による遠心力で、導入通路34g、凹溝34f、及び遠心バランス室用連通路34m,34n,34o,34t,34vを経由して、第1〜第3クラッチ31〜33の遠心バランス室31j〜33jに供給される。
【0078】
なお、
図6に示すように、変速機ケース2のボス部2fの外周面には、以上の4つの凹溝31f〜34fをそれぞれ油密にシールするための5つのシールリングが装着されている。
【0079】
次に、第1〜第3クラッチ31〜33のピストン31p〜33pを解放側に付勢するリターンスプリングについて説明する。
【0080】
まず、第1クラッチ31については、
図5及び
図9に示すように、皿バネ40がリターンスプリングとして用いられている。この皿バネ40は共用回転部材5の壁部5xの薄壁部5bに配設されている。より詳しくは、薄壁部5bの反エンジン側の面の外周側において1つの薄壁部5bの周方向の中央部に配設されている。皿バネ40は、
図3に示すように、平坦部41と、平坦部41の両端から相互に同じ方向に延びる一対の傾斜部42とを有し、全体形状がコ字状に形成されている。皿バネ40は、
図9に示すように、平坦部41が外周側に位置して薄壁部5bから離間し、傾斜部42が内周側に位置してその先端が薄壁部5bに形成された隆起部5hに係止した状態で、厚壁部5a(
図5参照)よりも反エンジン側に突出しないように配設されている。
【0081】
図9に示すように、第1クラッチ31のピストン31pの反エンジン側の端部に反エンジン側に延びるピン形状の延設部31qが設けられている。この延設部31qは薄壁部5bに形成された貫通孔5fを挿通して薄壁部5bの反エンジン側に突出し、さらに皿バネ40の平坦部41を貫通している。そして、延設部31qの反エンジン側の端部がカシメられて拡径されることにより(カシメ部31r)、延設部31qの反エンジン側の端部が平坦部41に係止されている。
【0082】
以上のような構成により、皿バネ40は、延設部31qを介して第1クラッチ31のピストン31pを常に反エンジン側(第1クラッチ31の解放側)に付勢するリターンスプリングとして機能する。そして、皿バネ40は、
図3に示すように、共用回転部材5の回転中心に対して等間隔(120°間隔)で3つ設けられている。
【0083】
なお、
図9に示すように、薄壁部5bの貫通孔5fを挿通する延設部31qの部分には、作動油圧室31aの油圧の漏れを防ぐためのシール部材31sが巻着されている。また、
図9には、作動油圧室31aに油圧が供給されてピストン31pが締結側(エンジン側)に移動したときの皿バネ40が撓んだ状態を仮想線で示してある。
【0084】
第2クラッチ32も同様である。すなわち、
図6及び
図10に示すように、第2クラッチ32においても、皿バネ50がリターンスプリングとして用いられている。この皿バネ50は、
図3に示すように、第1クラッチ31の皿バネ40よりも内周側に配設されている。皿バネ50は、
図10に示すように、平坦部51が外周側に位置して薄壁部5bから離間し、傾斜部52が内周側に位置してその先端が薄壁部5bに形成された隆起部5iに係止した状態で、厚壁部5a(
図6参照)よりも反エンジン側に突出しないように配設されている。
【0085】
図10に示すように、第2クラッチ32のピストン32pの反エンジン側の端部に反エンジン側に延びるピン形状の延設部32qが設けられている。この延設部32qは薄壁部5bに形成された貫通孔5gを挿通して薄壁部5bの反エンジン側に突出し、さらに皿バネ50の平坦部51を貫通している。そして、延設部32qの反エンジン側の端部がカシメられて拡径されることにより(カシメ部32r)、延設部32qの反エンジン側の端部が平坦部51に係止されている。
【0086】
以上のような構成により、皿バネ50は、延設部32qを介して第2クラッチ32のピストン32p(
図9参照)を常に反エンジン側(第2クラッチ32の解放側)に付勢するリターンスプリングとして機能する。そして、皿バネ50は、
図3に示すように、共用回転部材5の回転中心に対して等間隔(120°間隔)で3つ設けられている。
【0087】
なお、
図10に示すように、薄壁部5bの貫通孔5gを挿通する延設部32qの部分には、変速機ケース2内の作動油の漏れを防ぐためのシール部材32sが巻着されている。また、
図10には、作動油圧室32aに油圧が供給されてピストン32pが締結側(エンジン側)に移動したときの皿バネ50が撓んだ状態を仮想線で示してある。
【0088】
以上のような構成により、本実施形態では、
図5、
図6、
図9及び
図10に示すように、第1・第2クラッチ31,32のピストン31p,32pを解放側に付勢する皿バネ40,50が共用回転部材5の壁部5xの薄壁部5bに厚壁部5aの内部に形成された作動油圧通路31c〜33cと軸方向の同じ位置で作動油圧通路31c〜33cと周方向に並ぶように配設されている(
図5及び
図6の矢印D参照)。
【0089】
また、以上のような構成により、本実施形態では、
図3に示すように、皿バネ40,50と作動油圧通路31c〜33cとが周方向に交互に配設されている。
【0090】
また、以上のような構成により、本実施形態では、一部繰り返しになるが、
図3に示すように、共用回転部材5の壁部5xの厚壁部5a、薄壁部5b、厚壁部5aの内部に形成された作動油圧通路31c〜33c、薄壁部5bに配設された皿バネ40,50が共用回転部材5の回転中心に対して等間隔で配置され、また、種々交互に配置されている。このことは、第1クラッチ31の作動油圧通路31c、第2クラッチ32の作動油圧通路32c、第3クラッチ33の作動油圧通路33c、第1クラッチ31の皿バネ40、第2クラッチ32の皿バネ40についても同様である。
【0091】
第3クラッチ33については、
図4に示すように、コイルスプリング60がリターンスプリングとして用いられている。
図4から明らかなように、第3クラッチ33には、径方向において摩擦板33x,33y(
図9参照)と内側円筒部5eとの間に軸方向に長いデッドスペースがある。そして、このデッドスペースに合わせて第3クラッチ33の遠心バランス室構成部材33kが断面クランク状に形成され、ピストン33pと遠心バランス室構成部材33kとの間の軸方向に長い遠心バランス室33jに軸方向の占有スペースが大きいコイルスプリング60が圧縮された状態で配設されている。このコイルスプリング60は12個が共用回転部材5の回転中心に対して等間隔(30°間隔)で配置されている。
【0092】
(3)作用
以上説明したように、本実施形態では、同一軸心上に3つのクラッチ31〜33が径方向に重ねて配置された自動変速機1において、上記3つのクラッチ31〜33のピストン31p〜33pが軸方向視で相互に重複せずかつ軸心と直交する同一平面上で径方向に並ぶように配置されている(
図4の矢印B参照)。また、上記軸心と直交する平面に沿って形成された壁部5xを有し、上記3つのクラッチ31〜33で共用される共用回転部材5が軸方向の反エンジン側端部に配置され、上記共用回転部材5の壁部5x、より詳しくは厚壁部5aに上記3つのクラッチ31〜33の作動油圧室31a〜33aに通じる6つの作動油圧通路31c〜33cが軸心と直交する同一平面上で周方向に並ぶように設けられている(
図4の矢印C参照)。
【0093】
この構成によれば、3つのクラッチ31〜33のピストン31p〜33pが相互に径方向に離間しかつ軸心と直交する同一平面上で径方向に並ぶように配置されているので、上記ピストン31p〜33pは軸方向に並べて配置された状態とならない。また、3つのクラッチ31〜33の作動油圧通路31c〜33cが軸方向の反エンジン側端部に配置された共用回転部材5の壁部5xに相互に周方向に並ぶように設けられているので、上記作動油圧通路31c〜33cもまた軸方向に並べて配置された状態とならない。したがって、3つのクラッチ31〜33をピストン31p〜33p及び作動油圧通路31c〜33cを含めて軸方向にコンパクトにレイアウトして変速機1の軸方向寸法の大型化を回避しつつ多段化を可能とした自動変速機1が提供される。
【0094】
しかも、3つのクラッチ31〜33が軸方向にコンパクトにレイアウトされるので、3つのクラッチ31〜33を3段重ねとすることで、変速機1のさらなる軸長短縮が図られる。
【0095】
本実施形態では、上記共用回転部材5の壁部5xのうち周方向に隣接する各作動油圧通路31c〜33cの間に位置する部分が作動油圧通路31c〜33cの設置部(すなわち厚壁部5a)よりも肉厚の薄い薄壁部5bとされ、上記薄壁部5bに第1・第2クラッチ31,32のピストン31p,32pを解放側に付勢する皿バネ40,50が配設されている(
図5及び
図6の矢印D参照)。
【0096】
この構成によれば、皿バネ40,50と作動油圧通路31c〜33cとが周方向に並ぶように配設されているので、皿バネ40,50と作動油圧通路31c〜33cとは軸方向に並べて配置された状態とならない。したがって、3つのクラッチ31〜33を皿バネ40,50を含めて軸方向にコンパクトにレイアウトできる。
【0097】
しかも、皿バネ40,50はコイルスプリングと比べて軸方向の占有スペースが小さいので、さらなる軸方向のコンパクト化が図られる。
【0098】
本実施形態では、内周側から2つ目及び3つ目の第2クラッチ32及び第1クラッチ31の皿バネ50,40が上記共用回転部材5の薄壁部5bに配設されている。
【0099】
3段重ねとされた3つのクラッチ31〜33のうち、外周側の2段目及び3段目のクラッチ32,31は、内周側の1段目のクラッチ33と比べて、周の長さが長いから、共用回転部材5の壁部5x、特に薄壁部5bにおいて、周方向に比較的広いデッドスペースがある(
図3参照)。したがって、この構成によれば、周方向に広いデッドスペースを利用して2段目及び3段目のクラッチ32,31の皿バネ50,40を確実に作動油圧通路31c〜33cと周方向に並べて配設することができる。
【0100】
本実施形態では、上記皿バネ40,50と上記作動油圧通路31c〜33cとが周方向に交互に配設されている(
図3参照)。
【0101】
この構成によれば、皿バネ40,50と作動油圧通路31c〜33cとの双方が設けられる共用回転部材5の重心の偏倚が抑制される。そのため、共用回転部材5が振動等起こさず円滑に回転する。また、この構成によれば、皿バネ40,50の付勢力がピストン31p,32pにバランス良く作用する。そのため、ピストン31p,32pが拗れ等起こさず円滑に解放側に戻る。
【0102】
本実施形態では、共用回転部材5の壁部5xの厚壁部5a、薄壁部5b、厚壁部5aの内部に形成された作動油圧通路31c〜33c(第1クラッチ31の作動油圧通路31c、第2クラッチ32の作動油圧通路32c、又は第3クラッチ33の作動油圧通路33cだけを見ても)、薄壁部5bに配設された皿バネ40,50(第1クラッチ31の皿バネ40又は第2クラッチ32の皿バネ40だけを見ても)が共用回転部材5の回転中心に対して等間隔で配置され、また、種々交互に配置されている(
図3参照)。
【0103】
この構成によれば、共用回転部材5に種々の部位や部材が混在して支持されるけれども、共用回転部材5の重心の偏倚が抑制される。そのため、共用回転部材5が振動等起こさず円滑に回転する。また、この構成によれば、クラッチ31〜33の締結時にピストン31p〜33pを押圧する締結用油圧がピストン31p〜33pにバランス良く作用する。そのため、ピストン31p〜33pが拗れ等起こさず円滑に締結側に移動する。
【0104】
本実施形態では、上記3つのクラッチ31〜33のピストン31p〜33pを挟んで作動油圧室31a〜33aと対向する遠心バランス室31j〜33jが軸方向視で相互に重複せずかつ軸心と直交する同一平面上で径方向に並ぶように配置されている(
図5の矢印E参照)。
【0105】
この構成によれば、3つのクラッチ31〜33の遠心バランス室31j〜33jが相互に径方向に離間しかつ軸心と直交する同一平面上で径方向に並ぶように配置されているので、上記遠心バランス室31j〜33jは軸方向に並べて配置された状態とならない。したがって、3つのクラッチ31〜33を遠心バランス室31j〜33jを含めて軸方向にコンパクトにレイアウトできる。
【0106】
本実施形態では、上記3つのクラッチ31〜33の摩擦板31x,31y〜33x,33yが軸方向視で相互に重複せずかつ軸心と直交する同一平面上で径方向に並ぶように配置されている(
図5の矢印F参照)。
【0107】
この構成によれば、3つのクラッチ31〜33の摩擦板31x,31y〜33x,33yが相互に径方向に離間しかつ軸心と直交する同一平面上で径方向に並ぶように配置されているので、上記摩擦板31x,31y〜33x,33yは軸方向に並べて配置された状態とならない。したがって、3つのクラッチ31〜33を摩擦板31x,31y〜33x,33yを含めて軸方向にコンパクトにレイアウトできる。
【0108】
本実施形態では、第2クラッチ32の第1回転部材81側の摩擦板32xを保持するドラム部材と、第3クラッチ33の第1回転部材31側の摩擦板33xを保持するドラム部材とが共通部材8として一体化されている。
【0109】
この構成によれば、それぞれのドラム部材を別体とする場合と比べて変速機1の径方向寸法の短縮が図られる。
【0110】
(4)変形例
上記実施形態では、共用回転部材5を変速機1の軸方向の端部(特に反エンジン側端部)に配置したが、これに限らず、例えば変速機1の軸方向の中間部(第1〜第3クラッチ31〜33のエンジン側)に配置してもよい。その場合のレイアウトの1例を
図11に示す。
図1との主な相違点は次の通りである。
【0111】
・ピストン31p〜33pが共用回転部材5の反エンジン側に支持される。
【0112】
・第3中間壁2dが内周側に延設され、この第3中間壁2dで共用回転部材5が支持される。
【0113】
・第2〜第4回転部材82〜84がピストン31p〜33pの反エンジン側で径方向外周側に曲折される。
【0114】
・第1回転部材81と第2回転部材82との接続状態を切り換える第1クラッチ31が最も内周側に位置し、第1回転部材81と第3回転部材83との接続状態を切り換える第2クラッチ32が第1クラッチ31の外周側に位置し、第1回転部材81と第4回転部材84との接続状態を切り換える第3クラッチ33が最も外周側に位置する。
【0115】
上記実施形態では、3つのクラッチ31〜33のうち内周側の2つのクラッチ32,33のドラム部材を一体化したが、これに代えて、外周側の2つのクラッチ31,32のドラム部材を一体化してもよい。また、ドラム部材を一体化せず、別体のままとしてもよい。
【0116】
上記実施形態では、例えば
図1において、入力軸3が右側に延び、右側がエンジン側であったが、これに限らず、入力軸3が左側に延び、左側がエンジン側であってもよい。
【0117】
上記実施形態では、第1回転部材81がエンジン側からのトルクの流れに関して下流側の回転部材、第2〜第4回転部材82〜84が上流側の回転部材であったが、これに限らず、例えば第1回転部材81が上流側の回転部材、第2〜第4回転部材82〜84が下流側の回転部材であってもよい。