特許第6210028号(P6210028)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6210028回転電機のステータ、同ステータを備えた回転電機および同ステータの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6210028
(24)【登録日】2017年9月22日
(45)【発行日】2017年10月11日
(54)【発明の名称】回転電機のステータ、同ステータを備えた回転電機および同ステータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/12 20060101AFI20171002BHJP
   H02K 3/28 20060101ALI20171002BHJP
   H02K 1/16 20060101ALI20171002BHJP
   H02K 15/04 20060101ALI20171002BHJP
【FI】
   H02K3/12
   H02K3/28 N
   H02K1/16 A
   H02K15/04 A
【請求項の数】13
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-149413(P2014-149413)
(22)【出願日】2014年7月23日
(65)【公開番号】特開2016-25781(P2016-25781A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2016年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】岡本 和夫
【審査官】 三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−153367(JP,A)
【文献】 特開昭60−032551(JP,A)
【文献】 特開2013−005683(JP,A)
【文献】 特開2011−205835(JP,A)
【文献】 特開2009−268158(JP,A)
【文献】 特開2010−259207(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/086067(WO,A1)
【文献】 特開2010−104145(JP,A)
【文献】 特開2001−178054(JP,A)
【文献】 実開昭56−174944(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/12
H02K 1/16
H02K 3/28
H02K 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータと共に回転電機を構成するステータであって、
環状をなし、周方向の複数の位置でそれぞれ内向きに開いて放射状に延びる複数のスロットを有するステータコアと、
前記複数のスロットのうち、特定の複数のスロットを通過するように前記ステータコアに素線が波巻きで巻回されることにより形成された複数の巻線を含む巻線群と、を備え、
前記素線は、底辺とその両側から互いに平行に伸びる一対の側辺とこれら側辺の端部同士を繋ぐ一対の斜辺とを有する断面五角形かつホームベース型であり、
前記一対の斜辺同士が繋がるところを尖形部と定義したときに、前記複数の巻線は、互いに隣接する巻線の前記尖形部が前記周方向の反対側を向き、かつ当該隣接する巻線の前記斜辺同士が互いに当接するように前記ステータコアの径方向に沿って並べられた状態で前記特定のスロットに挿入されており、
前記複数の巻線は、前記ステータコアの軸方向端面上において、当該軸方向端面と前記底辺とが平行となりかつ前記斜辺同士又は前記底辺同士が互いに当接する状態で前記軸方向に配列される第1配列、または、前記軸方向と底辺とが平行となりかつ前記斜辺同士又は前記底辺同士が互いに当接する状態で前記ステータコアの径方向に配列される第2配列で配列されている、ことを特徴とする回転電機のステータ。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機のステータにおいて、
前記径方向に並ぶ複数の巻線をその並び方向の一方側から順に第1巻線、第2巻線、第3巻線…第n巻線と定義したときに、奇数番目に位置する巻線のうち隣接するもの同士の前記側辺が互いに当接し、偶数番目に位置する巻線のうち隣接するもの同士の前記側辺が互いに当接している、ことを特徴とする回転電機のステータ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の回転電気のステータにおいて、
前記スロットの断面形状が、前記ステータコアの径方向内側から外側に向かって先広がりに形成されることで、互いに隣接するスロットの間に、前記径方向に亘って前記周方向の厚みがほぼ一定のティースが形成されている、ことを特徴とする回転電機のステータ。
【請求項4】
請求項に記載の回転電気のステータにおいて、
前記素線の断面において、前記一対の斜辺の交わる位置から前記底辺に降ろした垂線の長さを断面長さと定義したときに、
前記径方向に互いに隣接する巻線のうち外側に位置する巻線は、前記一対の斜辺の成す角度および断面積が内側に位置する巻線と等しく、前記断面長さが当該内側に位置する巻線よりも長い、ことを特徴とする回転電気のステータ。
【請求項5】
請求項に記載の回転電気のステータにおいて、
前記径方向に互いに隣接する巻線のうち外側に位置する巻線は、前記一対の斜辺の成す角度、当該斜辺の長さおよび前記底辺の長さが内側に位置する巻線と等しく、前記一対の側辺の長さが前記内側に位置する巻線よりも長い、ことを特徴とする回転電機のステータ。
【請求項6】
請求項1乃至の何れか一項に記載の回転電機のステータにおいて、
前記特定の複数のスロットとして、互いに異なるスロットを通過するように前記ステータコアに巻回される複数の前記巻線群を含み、
前記複数の巻線群は、前記ステータコアの軸方向端面上において当該ステータコアの径方向に隣接する状態で並び、かつ、それぞれ前記スロットから前記端面上に導出されてその導出位置から次のスロットに向かうに伴い、当該ステータコアの径方向内側、又は外側に変位して前記導出位置とは前記径方向の異なる位置で次のスロットに挿入される、こと
を特徴とする回転電機のステータ。
【請求項7】
請求項1乃至の何れか一項に記載の回転電機のステータにおいて、
前記巻線群は、複数の巻線からなる正巻線群と、この正巻線群とは別に、複数の巻線からなりかつ前記特定の複数のスロットに対する巻線の挿入方向及び導出方向が前記正巻線群とは逆である逆巻線群とを含むことを特徴とする回転電機のステータ。
【請求項8】
請求項に記載の回転電機のステータにおいて、
前記複数の巻線群をコイル部材と定義したときに、複数のコイル部材が前記径方向に並ぶように前記ステータコアに備えられていることを特徴とする回転電機のステータ。
【請求項9】
請求項に記載の回転電気のステータにおいて、
前記複数のコイル部材として、第1コイル部材とその径方向内側に位置する第2コイル部材とを含み、
前記素線の断面において、前記一対の斜辺の交わる位置から前記底辺に降ろした垂線の長さを断面長さと定義したときに、
前記第1コイル部材の巻線は、前記一対の斜辺の成す角度および断面積が前記第2コイル部材の巻線と等しく、前記断面長さが当該第2コイル部材の巻線よりも長い、ことを特徴とする回転電気のステータ。
【請求項10】
請求項に記載の回転電機のステータにおいて、
前記複数のコイル部材として、第1コイル部材とその径方向内側に位置する第2コイル部材とを含み、
前記第1コイル部材の巻線は、前記一対の斜辺の成す角度、当該斜辺の長さおよび前記底辺の長さが前記第2コイル部材の巻線と等しく、前記一対の側辺の長さが前記第2コイル部材の巻線よりも長い、ことを特徴とする回転電機のステータ。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか一項に記載の回転電機のステータにおいて、
前記複数のスロットのうち、互いに隣接する2つ一組のスロットであって前記周方向に所定間隔を隔てて並ぶ複数組のスロットを複数のスロット対と定義し、当該複数のスロット対の各スロットを通過するように巻回される巻線群を第1巻線群及び第2巻線群と定義したときに、
前記第1巻線群及び前記第2巻線群は、各スロットについて交互に周方向の異なる側のスロットへ挿入されており、前記ステータコアの軸方向端面上では、当該軸方向端面と前記底辺とが平行となり、かつ前記斜辺同士又は前記底辺同士が当接する状態で、前記第1巻線群の巻線と前記第2巻線群の巻線とが前記軸方向に配列されている、ことを特徴とする回転電機のステータ。
【請求項12】
請求項1乃至10の何れか一項に記載の回転電機のステータの製造方法であって、
前記ステータコアに巻回された前記巻線群と同一形状の巻線群を単独で形成する巻線形成工程と、
前記巻線群を、その径方向に圧縮変形させた状態で前記ステータコアの内側に挿入する巻線挿入工程と、
前記ステータコアの内側に挿入された前記巻線群を拡径し、当該ステータコアの内側から前記スロットに対して当該巻線群を挿入することにより、前記巻線群を前記ステータコアに装着する巻線装着工程と、を含むことを特徴とするステータの製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載のステータの製造方法において、
前記巻線挿入工程では、前記巻線群のうち、ステータコアの軸方向一端に対応する側を径方向に縮径させることにより、当該巻線群全体を略円錐台状に圧縮変形させておき、前記縮径された側から前記ステータコアの内側に挿入することを特徴とするステータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に用いられる回転電機(モータ、又は発電機、又はモータ兼発電機)のステータ、同ステータを備えた回転電機および同ステータの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転電機のステータは、ステータコアとこれに巻装される複数の巻線群(コイル)とを備える。ステータコアは、周方向に一定間隔で並ぶ複数のスロットを内周面に備えており、巻線群を形成する各巻線は、上記スロットのうち、特定のスロットを通過するように、ステータコアに対して例えば波巻きで巻かれている。特許文献1には、このようなステータとして、断面長方形の太い銅線を巻線として用いたものが開示されている。
【0003】
このような断面長方形の太い巻線を用いたステータは、断面円形の細い巻線を用いる場合に比べて、線占積率(スロットの断面積に占める巻線断面積の割合)を大きくできるため、銅損を減らしてモータの効率を上げ、小型の回転電機でより大きな出力を得ることが可能となる。換言すれば、特性がほぼ同じであれば回転電機の小型化及び軽量化を図ることが可能となる。また、巻線同士の接触面積を増やして放熱効果を高めることができるため(つまり、抵抗を減らす事ができるため)、通電性能を高めることができるという利点もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−178054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示される従来のステータは、線占積率を大きくする上で有利であるが、ハイブリッド車両に搭載されるような回転電機については、車両の小型化と燃費性能の向上のために、回転電機のより一層の小型化及び軽量化が求められており、ステータの線占積率をより一層大きくすることが望まれる。また、従来のステータは、コイルエンド部(巻線群のうちステータコアの軸方向端面に沿う部分)における巻線同士の間に比較的隙間が多く、また、巻線の断面が長方形であるが故にコイルエンド部分の占有面積が大きくなる傾向があり、この点でも改善の余地がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みて成されたものであり、回転電機の小型化及び軽量化に寄与し得るステータに関する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、ロータと共に回転電機を構成するステータであって、環状をなし、周方向の複数の位置でそれぞれ内向きに開いて放射状に延びる複数のスロットを有するステータコアと、前記複数のスロットのうち、特定の複数のスロットを通過するように前記ステータコアに素線が波巻きで巻回されることにより形成された複数の巻線を含む巻線群と、を備え、前記素線は、底辺とその両側から互いに平行に伸びる一対の側辺とこれら側辺の端部同士を繋ぐ一対の斜辺とを有する断面五角形かつホームベース型であり、前記一対の斜辺同士が繋がるところを尖形部と定義したときに、前記複数の巻線は、互いに隣接する巻線の前記尖形部が前記周方向の反対側を向き、かつ当該隣接する巻線の前記斜辺同士が互いに当接するように前記ステータコアの径方向に沿って並べられた状態で前記特定のスロットに挿入されており、前記複数の巻線は、前記ステータコアの軸方向端面上において、当該軸方向端面と前記底辺とが平行となりかつ前記斜辺同士又は前記底辺同士が互いに当接する状態で前記軸方向に配列される第1配列、または、前記軸方向と底辺とが平行となりかつ前記斜辺同士又は前記底辺同士が互いに当接する状態で前記ステータコアの径方向に配列される第2配列で配列されているものである。
【0008】
この構成によれば、隣接する巻線同士が前記径方向において互いにオーバーラップした状態でスロット内に挿入される。そのため、断面形状が円形や矩形(長方形)の巻線(素線)が用いられる従来構成に比べて、より断面積の大きい巻線(太い巻線)を前記スロット内に整列した状態で密接して配列することが可能となる。そのため、ステータの線占積率(スロットの断面積に占める巻線の断面積の割合)を効果的に高めることができ、小型の回転電機でより大きな出力を得ることが可能となる。つまり、特性が同じであれば従来のものに比べて回転電機の小型化および軽量化を図ることが可能となる。
また、ステータコアの軸方向端面上(コイルエンド部分)において、前記複数の巻線をステータの軸方向および径方向にオーバーラップさせた状態で集結して配列することが可能となる。そのため、ステータコアの軸方向端面上における巻線群の占有スペースを小さく抑えることができ、ステータの小型化および軽量化に寄与するものとなる。
【0009】
この場合、前記径方向に並ぶ複数の巻線をその並び方向の一方側から順に第1巻線、第2巻線、第3巻線…第n巻線と定義したときに、奇数番目に位置する巻線のうち隣接するもの同士の前記側辺が互いに当接し、偶数番目に位置する巻線のうち隣接するもの同士の前記側辺が互いに当接しているのが好適である。
【0010】
この構成によれば、巻線同士の間に形成される隙間を低減して、ステータの線占積率をより一層大きくすることが可能となる。
【0013】
なお、上記ステータにおいては、前記スロットの断面形状が、前記ステータコアの径方向内側から外側に向かって先広がりに形成されることで、互いに隣接するスロットの間に、前記径方向に亘って前記周方向の厚みがほぼ一定のティースが形成されているのが好適である。
【0014】
この構成によれば、各ティースの前記周方向の厚みがほぼ一定であるため、ステータの径方向において、ティース全体に亘って均一な磁束を安定的に形成することが可能となる。
【0015】
ここで、上記のようにスロットの断面形状が径方向内側から外側に向かって先広がりに形成されている場合には、スロットの奥部、つまりスロット内の主に前記径方向外側の領域で当該スロット壁面と巻線との間に隙間が生じ易くなる。従って、前記素線の断面において、前記一対の斜辺の交わる位置から前記底辺に降ろした垂線の長さを断面長さと定義したときに、前記径方向に互いに隣接する巻線のうち外側に位置する巻線は、前記一対の斜辺の成す角度および断面積が内側に位置する巻線と等しく、前記断面長さが当該内側に位置する巻線よりも長いものであるのが好適である。
【0016】
この構成によれば、前記径方向外側に位置する巻線ほどその断面長さが大きくなるため、スロット内に上記のような隙間が生じることが抑制される。しかも、各巻線の断面積が同じであるため、各巻線が直列に繋ぎ合わされて前記巻線群が形成される場合には、全巻線に亘って効率良く電流を流すことができる。そのため、より良好な磁束を安定的に形成することが可能となる。
【0017】
また、スロット内に上記のような隙間が生じることを抑制する上では、次のような構成も有効である。すなわち、前記径方向に互いに隣接する巻線のうち外側に位置する巻線は、前記一対の斜辺の成す角度、当該斜辺の長さおよび前記底辺の長さが内側に位置する巻線と等しく、前記一対の側辺の長さが前記内側に位置する巻線よりも長いものである。
【0018】
この構成によれば、スロット内において前記径方向外側に位置する巻線ほどその断面積が大きくなるため、スロット内に上記のような隙間が生じることを抑制することが可能となる。そのため、ステータの線占積率を大きくする上で有効となる。
【0019】
なお、上記のステータにおいて、前記特定の複数のスロットとして、互いに異なるスロットを通過するように前記ステータコアに巻回される複数の前記巻線群を含むものでは、前記複数の巻線群は、前記ステータコアの軸方向端面上において当該ステータコアの径方向に隣接する状態で並び、かつ、それぞれ前記スロットから前記端面上に導出されてその導出位置から次のスロットに向かうに伴い、当該ステータコアの径方向内側、又は外側に変位して前記導出位置とは前記径方向の異なる位置で次のスロットに挿入される。
【0020】
この構成によれば、ステータコアの軸方向端面上において各々スロットから導出される各巻線群を、当該巻線群同士を交差させることなくコンパクトに次のスロットに導くことが可能となる。そのため、ステータをその軸方向に小型化する上で有利となる。
【0021】
なお、前記巻線群は、複数の巻線からなる正巻線群と、この正巻線群とは別に、複数の巻線からなりかつ前記特定の複数のスロットに対する巻線の挿入方向及び導出方向が前記正巻線群とは逆である逆巻線群とを含むものであってもよい。
【0022】
このような構成によれば、コイルエンド部において、逆巻線群の電流と正巻線群の電流とが逆向きに流れるように電流の供給を行えば、スロット内では電流の向きが同一となり、これによって適切かつ強力な磁界を形成することが可能となる。
【0023】
また、上記のステータにおいては、前記複数の巻線群をコイル部材と定義したときに、複数のコイル部材が前記径方向に並ぶように前記ステータコアに備えられているものであってもよい。
【0024】
このような構成によれば、より強力な磁界を形成する上で有利となる。
【0025】
なお、前記複数のコイル部材として、第1コイル部材とその径方向内側に位置する第2コイル部材とを含み、前記素線の断面において、前記一対の斜辺の交わる位置から前記底辺に降ろした垂線の長さを断面長さと定義したときに、前記第1コイル部材の巻線は、前記一対の斜辺の成す角度および断面積が前記第2コイル部材の巻線と等しく、前記断面長さが当該第2コイル部材の巻線よりも長いものであってもよい。
【0026】
この構成によれば、スロットの断面形状が径方向内側から外側に向かって先広がりに形成されるような場合に、各コイル部材の巻線を、より隙間無く前記スロット内に配列することが可能となる。
【0027】
また、前記複数のコイル部材として、第1コイル部材とその径方向内側に位置する第2コイル部材とを含む場合、前記第1コイル部材の巻線は、前記一対の斜辺の成す角度、当該斜辺の長さおよび前記底辺の長さが前記第2コイル部材の巻線と等しく、前記一対の側辺の長さが前記第2コイル部材の巻線よりも長いものであってもよい。
【0028】
この場合も、スロットの断面形状が径方向内側から外側に向かって先広がりに形成されるような場合に、各コイル部材の巻線を、より隙間無く前記スロット内に配列する上で有効となる。
【0029】
なお、上記のステータにおいては、前記複数のスロットのうち、互いに隣接する2つ一組のスロットであって前記周方向に所定間隔を隔てて並ぶ複数組のスロットを複数のスロット対と定義し、当該複数のスロット対の各スロットを通過するように巻回される巻線群を第1巻線群及び第2巻線群と定義したときに、前記第1巻線群及び前記第2巻線群は、各スロットについて交互に周方向の異なる側のスロットへ挿入されており、前記ステータコアの軸方向端面上では、当該軸方向端面と前記底辺とが平行となり、かつ前記斜辺同士又は前記底辺同士が当接する状態で、前記第1巻線群の巻線と前記第2巻線群の巻線とが前記軸方向に配列されているものであってもよい。
【0030】
この構成によれば、回転電機におけるロータをより安定的に回転させることが可能な磁界を形成することが可能となる。
【0033】
また、本発明のステータの製造方法は、前記ステータコアに巻回された前記巻線群と同一形状の巻線群を単独で形成する巻線形成工程と、前記巻線群を、その径方向に圧縮変形させた状態で前記ステータコアの内側に挿入する巻線挿入工程と、前記ステータコアの内側に挿入された前記巻線群を拡径し、当該ステータコアの内側から前記スロットに対して当該巻線群を挿入することにより、前記巻線群を前記ステータコアに装着する巻線装着工程と、を含むものである。
【0034】
この方法によれば、上述したステータを効率良く製造することが可能となる。
【0035】
この場合、前記巻線挿入工程では、前記巻線群のうち、ステータコアの軸方向一端に対応する側を径方向に縮径させることにより、当該巻線群全体を略円錐台状に圧縮変形させておき、前記縮径された側から前記ステータコアの内側に挿入するようにしてもよい。
【0036】
この方法によれば、巻線装着工程における巻線群の拡径作業が容易になるため、より効率良くステータを製造することが可能となる。
【発明の効果】
【0037】
以上説明したように、本発明によれば、回転電機のステータの線占積率(スロットの断面積に占める巻線の断面積の割合)を大きくして、より大きな出力を得ることが可能となる。従って、特性が同じであれば、従来のものに比べて回転電機の小型化および軽量化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明に係る回転電機のステータを示す斜視概略図である。
図2】ステータを示す縦断面略図である。
図3】ステータを示す平断面略図である。
図4】(a)は、巻線(素線)の断面図であり、(b)は図3の要部拡大図である。
図5】巻線群の巻回経路を示すステータの展開縦断面模式図であり、(a)は、第1U相巻線群の巻回経路を示し、(b)は第2U相巻線群の巻回経路を示す。
図6】第1U相巻線群の巻回経路を示すステータの展開平面模式図(上面図)であり、(a)は、正巻線群の巻回経路を示し、(b)は、逆巻線群の巻回経路を示す。
図7】第2U相巻線群の巻回経路を示すステータの展開平面模式図(上面図)であり、(a)は、正巻線群の巻回経路を示し、(b)は、逆巻線群の巻回経路を示す。
図8】(a)は、スロットから導出された第1U相巻線群(正巻線群)の配線状態を説明する斜視模式図であり、(b)は、捩りを伴う巻線を(a)から抽出した斜視模式図である。
図9】スロットから導出された巻線群の配線状態を示す断面模式図であり、(a)は、図6(a)のIXa−IXa線に、(b)は、図6(a)のIXb−IXb線にそれぞれ沿った断面模式図である。
図10】(a)は、スロットに挿入される第1U相巻線群(正巻線群)の配線状態を説明する斜視模式図であり、(b)は、捩りが戻される巻線を図(a)から抽出した斜視模式図である。
図11】ステータコアの軸方向端面上における巻線群の配線状態を示す断面模式図であり、(a)は、図6(a)のXIa−XIa線に、(b)は、図6(a)のXIb−XIb線に、(c)は、図6(a)のXIc−XIc線に、(d)は、図6(a)のXId−XId線にそれぞれ沿った断面模式図である。
図12】ステータのスロット部分を示す平断面略図であり、(a)は断面矩形(長方形)の太い巻線を用いた場合、(b)は断面円形の細い巻線を用いた場合、(c)は断面五角形のホームベース型の巻線を用いた場合をそれぞれ示す平断面略図である。
図13】スロット内における巻線の配列状態の他の例を示すステータの断面模式図である。
図14】スロット内における巻線の配列状態の他の例を示すステータの断面模式図である。
図15】ステータコアの軸方向端面上における巻線群の配列状態の他の例を示すステータの断面模式図である。
図16】スロット内における巻線の配列状態の他の例を示すステータの断面模式図である。
図17】(a)、(b)は、ステータコアの軸方向端面上における巻線群の配列状態の他の例を示すステータの断面模式図である。
図18】(a)、(b)は、ステータコアの軸方向端面上における巻線群の配列状態の他の例を示すステータの断面模式図である。
図19】(a)、(b)は、ステータコアの軸方向端面上における巻線群の配列状態の他の例を示すステータの断面模式図である。
図20】(a)は、変形例に係るステータのスロット部分を示す平断面略図であり、(b)は、スロットに対する巻線の挿入方法を説明する図である。
図21】(a)〜(c)は、ステータの製造方法を説明する説明図である。
図22】(a)〜(c)は、ステータの製造方法の他の例を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について詳述する。
【0040】
図1図3は、本発明に係る回転電機のステータSを概略図で示しており、図1は斜視図で、図2図3は断面図で各々ステータSを示している。
【0041】
同図に示すステータSは、ハイブリット車両に搭載される三相交流モータに用いられるステータである。具体的には、当該ステータSと、その内側に配置されるロータと、これらステータS及びロータを収容するケーシング等で三相交流モータ(本発明の回転電機に相当する)が構成される。
【0042】
上記ステータSは、円環状をなすステータコア10と、そのスロット12に巻回される複数の巻線群をそれぞれ含む、第1コイル部材14Aおよび第2コイル部材14Bとを備えている。なお、以下の説明では、ステータコア10の中心軸回りの方向を周方向と称し、ステータコア10の半径方向を単に径方向と称す。
【0043】
前記ステータコア10は、図3に示すように、周方向に等間隔で並ぶ複数の位置でそれぞれ内向きに開いて放射状に延びる複数のスロット12を備えている。隣接するスロット12の間の部分が、当該ステータコア10のティースである。同図では明確ではないが、各スロット12の断面形状は、周方向におけるティースの厚みが径方向に亘ってほぼ一定となるように、径方向内側から外側に向かって先広がりに形成されている(図12(c)参照)。この構成により、ティースの径方向全体に亘ってより均一な磁束が形成され得るようになっている。
【0044】
前記ステータコア10は、当例では、48個のスロット12を備えている。そして、後に詳述する通り、これら48個のスロット12のうち、特定の複数のスロット12を通過するようにU相、V相、W相の各巻線群が当該ステータ10に巻回されている。換言すれば、ステータコア10には、U相の巻線群が各々挿入される互いに隣接した2つのスロット12と、V相の巻線群が各々挿入される互いに隣接した2つのスロット12と、W相の巻線群が各々挿入される互いに隣接した2つのスロット12とを1セットとして、ステータコア10の周方向に8セットのスロット群が備えられている。つまり、このステータSが適用される回転電機は、48スロットを備えた8極の回転電機である。
【0045】
なお、図3には、U相の巻線群が各々挿入されるスロット12を符号U1・U2、U3・U4……U15・U16(本発明の複数のスロット対に相当する)で示し、V相の巻線群が各々挿入されるスロット12を符号V1・V2、V3・V4……V15・V16(本発明の複数のスロット対に相当する)で示し、W相の巻線群が各々挿入されるスロット12を符号W1・W2、W3・W4……W15・W16(本発明の複数のスロット対に相当する)で示している。以下の説明では、必要に応じて、U相の巻線群が挿入されるスロットの符号として符号12の代わりに図3中に示す符号U1・U2、U3・U4……U15・U16を用い、同様に、V相の巻線群が各々挿入されるスロットの符号として同図中の符号V1・V2、V3・V4……V15・V16を用い、W相の巻線群が各々挿入されるスロットの符号としてW1・W2、W3・W4……W15・W16を用いるものとする。
【0046】
ステータコア10は、例えば図3に示すような形状を有する磁性体(鋼板)製の複数枚のプレートが積層一体化されることにより構成されている。
【0047】
第1コイル部材14A及び第2コイル部材14Bは、それぞれ、ステータコア10に巻回される複数の巻線群を含んでいる。第1コイル部材14Aと第2コイル部材14Bは、第2コイル部材14Bが第1コイル部材14Aの内側に設けられている以外、これらの基本的な構成は共通している。よって、以下の説明では、第1コイル部材14Aについて詳述した上で、必要に応じて第2コイル部材14Bの構成に言及することにする。
【0048】
第1コイル部材14Aは、スロットU1・U2、U3・U4……U15・U16を通過するようにステータコア10に巻回される2つ一組のU相巻線群20Ua、20Ub(第1U相巻線群20Ua、第2U相巻線群20Ubと称す)と、スロットV1・V2、V3・V4……V15・V16を通過するようにステータコア10に巻回される2つ一組のV相巻線群20Va、20Vb(第1V相巻線群20Va、第2V相巻線群20Vbと称す)と、スロットW1・W2、W3・W4……W15・W16を通過するようにステータコア10に巻回される2つ一組のW相巻線群20Wa、20Wb(第1W相巻線群20Wa、第2W相巻線群20Wbと称す)とを含む。なお、図1では、同じ経路に沿って巻回される巻線群をまとめて極めて概略的に第1コイル部材14A及び第2コイル部材14Bを示している。
【0049】
U相巻線群20Ua、20Ub、V相巻線群20Va、20Vb、及びW相巻線群20Wa、20Wbは、通過するスロット12が互いに異なる以外、基本的な構成は共通している。よって、以下の説明では、U相巻線群20Ua、20Ubの構成について詳述した上で、必要に応じてV相巻線群20Va、20Vb、及びW相巻線群20Wa、20Wbの構成に言及することにする。なお、以下の説明において上(上側)、下(下側)というときには、図1に示すステータSの状態を基準とし、内(内側)、外(外側)というときには、ステータコア10の径方向を基準とする。
【0050】
第1U相巻線群20Uaは、断面五角形の素線1により形成された複数の巻線で構成されている。詳しくは、図4(a)に示すように、素線1は、底辺2aと、その両側から互いに平行に伸びる一対の側辺2b、2bと、これら側辺2b、2bの端部同士を繋ぐ一対の斜辺2c、2cとを備えた断面ホームベース型である。なお、素線1の断面において一対の斜辺2cが繋がる部分を尖形部と称する。素線1には、絶縁被膜が施されており、前記尖形部は、折り曲げ時の応力集中に起因する被膜破壊や巻線(素線1)の破損(亀裂)等を抑制するために若干丸味が持たせてある。
【0051】
第1U相巻線群20Uaは、図4(b)に示すように、上記のような断面ホームベース型の素線1により形成された合計6つの巻線で構成されている。詳細には、同図に示すように、第1U相巻線群20Uaは、3つの巻線r1〜r3からなる正巻線群22aと、3つの巻線r1′〜r3′からなる逆巻線群22bとを含む。正巻線群22aと逆巻線群22bとは、コイルエンド部においては、電流の流れる方向が周方向において互いに逆向きとなり、スロット12内においては、電流の流れる方向が同一となるように電流供給が行われるものであり、後に詳述する通り、スロット12に対する巻線の挿入方向および導出方向が互いに逆の関係になっている。
【0052】
第2U相巻線群20Ubも同様に、図4(b)に示すように、上記ホームベース型をなす断面五角形の素線1により形成された合計6つの巻線で構成されており、詳しくは、3つの巻線r4〜r6からなる正巻線群24aと、3つの巻線r4′〜r6′からなる逆巻線群24bとを含む。
【0053】
各U相巻線群20Ua、20Ubは、図5図7に示すようにして、ステータコア10に波巻きで巻回されている。スロットU1、U2の位置を基準に具体的に説明すると、まず、第1U相巻線群20Uaの正巻線群22aは、図5(a)及び図6(a)に示すように、ステータコア10の下側からスロットU1に挿入されて上側に導出され、ステータコア10の上側からスロットU4に挿入されて下側に導出され、ステータコア10の下側からスロットU5に挿入されて上側に導出されるという具合にして、スロットU1、U4、U5、U8、U9、U12、U13、U16を経由して波巻きでステータコア10に巻回されている。
【0054】
第1U相巻線群20Uaの逆巻線群22bは、図5(a)及び図6(b)に示すように、ステータコア10の上側からスロットU1に挿入されて下側に導出され、ステータコア10の下側からスロットU4に挿入されて上側に導出され、ステータコア10の上側からスロットU5に挿入されて下側に導出されるという具合にして、ステータコア10に巻回されている。すなわち、逆巻線群22bは、スロット12に対する巻線の挿入方向及び導出方向が正巻線群22aとは逆になるように、正巻線群22aと同じスロットU1、U4、U5、U8、U9、U12、U13、U16を経由して波巻きでステータコア10に巻回されている。
【0055】
正巻線群22aの巻線r1〜r3と逆巻線群22bの巻線r1′〜r3′とは、図4(b)に示すように、ステータコア10の径方向(図4(b)では左右方向)に一列に並べられた状態、具体的には、前記径方向の片側に正巻線群22aの巻線r1〜r3が連続して一列に並び、この正巻線群22aに隣接するように逆巻線群22bの巻線r1′〜r3′が連続して一列に並んだ状態で各スロットU1、U4〜U16に挿入されている。より詳しくは、互いに隣接する巻線の尖形部が周方向の互いに反対側を向き、かつ、当該隣接する巻線の斜辺2c同士が互いに当接するとともに、尖形部の向きが共通する巻線のうち隣接するものの側辺2b同士が互い当接する状態、具体的には正巻線群22aの巻線r1、r3および逆巻線群22bの巻線r2′のうち互いに隣接するものの側辺2b同士が互いに当接し、正巻線群22aの巻線r2および逆巻線群22bの巻線r1′、r3′のうち隣接するものの側辺2b同士が互いに当接する状態で前記巻線r1〜r3、r1′〜r3′が各スロットU1、U4〜U16に挿入されている。すなわち、図4(b)の例では、巻線r1、r3およびr2′が本発明の奇数番目に位置する巻線に相当し、巻線r2、r1′およびr3′が本発明の偶数番目に位置する巻線に相当する。
【0056】
なお、図6(a)、(b)に示すように、正巻線群22a及び逆巻線群22bは、各スロットU1、U4〜U16について、ステータコア10の径方向における内外の位置関係が交互に入れ替わるように当該ステータコア10に巻回されている。
【0057】
一方、第2U相巻線群20Ubの正巻線群24aは、図5(b)及び図7(a)に示すように、ステータコア10の下側からスロットU2に挿入されて上側に導出され、ステータコア10の上側からスロットU3に挿入されて下側に導出され、ステータコア10の下側からスロットU6に挿入されて上側に導出されるという具合にして、スロットU2、U3、U6、U7、U9、U10、U11、U14、U15を経由して波巻きでステータコア10に巻回されている。
【0058】
第2U相巻線群20Ubの逆巻線群24bは、図5(b)及び図7(b)に示すように、ステータコア10の上側からスロットU2に挿入されて下側に導出され、ステータコア10の下側からスロットU3に挿入されて上側に導出され、ステータコア10の上側からスロットU6に挿入されて下側に導出されるという具合にして、ステータコア10に巻回されている。すなわち、逆巻線群24bは、スロット12に対する巻線の挿入方向及び導出方向が正巻線群24aとは逆になるように、正巻線群24aと同じスロットU2、U3、U6、U7、U9、U10、U11、U14、U15を経由して波巻きでステータコア10に巻回されている。
【0059】
正巻線群24aの巻線r4〜r6と逆巻線群24bの巻線r4′〜r6′は、上述した第1U相巻線群20Uaの各巻線群22a、22bと同様にして、図4に示すように、ステータコア10の径方向に一列に並べられた状態で各スロットU2、U3〜U15に挿入されている。そして、第2U相巻線群20Ubについても、図7(a)、(b)に示すように、正巻線群24a及び逆巻線群24bは、各スロットU2、U3〜U15について、ステータコア10の径方向における内外の位置関係が交互に入れ替わるように当該ステータコア10に巻回されている。
【0060】
なお、第1U相巻線群20Ua及び第2U相巻線群20Ubは、図3及び図4(b)に示すように、ステータコア10の径方向最外側に位置する巻線r1、r4の尖形部の向きが同じになるように、当例では巻線r1、r4の尖形部が互いに周方向の同じ側(図4では下側)を向くように、各スロットU1・U2……U15・U16に挿入されている。
【0061】
第1U相巻線群20Uaの正巻線群22aと第2U相巻線群20Ubの正巻線群24aとは、ステータコア10の軸方向端面上(上下両側の端面上)において、軸方向端面と各巻線r1〜r3、r4〜r6の底辺2aが平行となり、かつ前記斜辺2c同士又は前記底辺2a同士が当接する状態で、ステータコア10の軸方向に沿って並べられている。
【0062】
詳しくは、図8(a)に模式的に示すように、スロットU1からステータコア10の上側に導出される第1U相巻線群20Uaの正巻線群22aのうち、内側の2つの巻線r2、r3は、そのまま略水平(ステータコア10の軸方向端面と略平行)になるように直角に折り曲げられ、残りの巻線r1は、直角に折り曲げられつつ、さらに内側に180°捩られ(図8(b)参照)、巻線r3の下側に互いの底辺2a同士が当接するように重ねられている。他方、スロットU2からステータコア10の上側に導出される第2U相巻線群20Ubの正巻線群24aのうち、内側の2つの巻線r5は、そのまま略直角に折り曲げられ、残りの巻線r4は、略直角に折り曲げられつつ、巻線r5の上側に互いの底辺2a同士が当接するように重ねられるとともに、巻線r1の下側に互いの斜辺2c同士が当接するように重ねられている。これにより、図9(b)に示すように、前記斜辺2c同士が当接する状態、又は前記底辺2a同士が当接する状態で、第1U相巻線群20Uaの正巻線群22aの巻線r1〜r3の下側に第2U相巻線群20Ubの正巻線群24aの巻線r4〜r6が重ねられている。なお、図9(a)は、図6(a)のIXa−IXa線に沿った巻線群の断面模式図であり、図9(b)は、図6(a)のIXb−IXb線に沿った同断面模式図である。
【0063】
このように重ねられた第1U相巻線群20Uaの正巻線群22aと第2U相巻線群20Ubの正巻線群24aは、図6(a)及び図7(a)に示すように、次のスロットU3、U4に向かうに伴い、ステータコア10の径方向内側に変位するようにステータコア10の上端面に沿って配されている。そして、図10(a)に模式的に示すように、まず、下側に位置する第2U相巻線群20Ubの正巻線群24aがステータコア10の上側からスロットU3に挿入される。この場合、下側の巻線r5、r6は、そのまま略直角に折り曲げられ、残りの巻線r4は、略直角に折り曲げられて他の巻線r5、r6の外側に並べられる。これにより、ステータコア10の径方向に巻線r4〜r6が一列に並んだ状態で、正巻線群24aがスロットU3に挿入される。
【0064】
他方、第1U相巻線群20Uaの正巻線群22aのうち、上側の2つの巻線r2、r3は、そのまま直角に折り曲げられ、残りの巻線r1は直角に折り曲げられつつ外側に180°捩られた状態(図10(b)参照)で他の巻線r2、r3の外側に並べられる。これにより、ステータコア10の径方向に巻線r1〜r3が一列に並んだ状態で、正巻線群22aがスロットU4に挿入される。なお、巻線r1が外側に180°捩られるのは、上記の通り、当該巻線r1は、スロットU1から導出された後、他の巻線r3に重ねるために内側に180°捩られており(図8(a)(b))、この捩れを解消するためである。
【0065】
なお、ここでは、ステータコア10の上側における正巻線群22a、24aの配列について具体的に説明したが、ステータコア10の下側では、正巻線群22a、24aの上下関係が逆、すなわち図9(b)の配列と上下対称な配列となる。これ以外の正巻線群22a、24aの配列は、基本的にはステータコア10の上下両側で共通している。
【0066】
また、ここでは、正巻線群22a、24aについて説明したが、ステータコア10の上下両側における逆巻線群22b、24bの配列も、基本的には正巻線群22a、24aと同様である。すなわち、図9(a)、(b)の巻線r1〜r3、巻線r4〜r6を巻線r1′〜r3′、巻線r4′〜r6′に置き換えた配列と同等である。
【0067】
このようにして、第1U相巻線群20Ua及び第2U相巻線群20Ubがステータコア10に巻回されている。なお、第1U相巻線群20Ua及び第2U相巻線群20Ubは、互いに隣接する一対のスロットU1・U2、U3・U4……U15・U16に順次挿入されるが、上記の通り(図5図7に示す通り)、第1U相巻線群20Ua及び第2U相巻線群20Ubは、各一対のスロットU1・U2、U3・U4……U15・U16について、交互に周方向の異なる側のスロット12へ挿入されている。すなわち、奇数番のスロット12から導出された巻線群は、次の偶数番のスロット12に挿入され、他方、偶数番のスロット12から導出された巻線群は、次の奇数番のスロット12に挿入される。その結果、上述の通り、第1U相巻線群20Uaは、スロットU1、U4、U5、U8、U9、U12、U13、U16に挿入され、第2U相巻線群20Ubは、スロットスロットU2、U3、U6、U7、U9、U10、U11、U14、U15に挿入されている。このようにして第1U相巻線群20Ua及び第2U相巻線群20Ubがステータコア10に巻回されることで、正巻線群22aと正巻線群24aとが互いに交差することなく、また、逆巻線群22bと逆巻線群24bとが互いに交差することなく、ステータコア10に第1U相巻線群20Ua及び第2U相巻線群20Ubが波巻きで巻回されている。
【0068】
以上、U相巻線群20Ua、20Ubの構成について詳述したが、V相巻線群20Va、20Vb、及びW相巻線群20Wa、20Wbについても、通過するスロット12の位置が異なる以外、基本的にはU相巻線群20Ua、20Ubと同等の構成である。
【0069】
なお、ステータコア10の上下端面上において、U相巻線群20Ua、20Ub、V相巻線群20Va、20Vb、及びW相巻線群20Wa、20Wbは、ステータコア10の径方向に互いに隣接する状態で並んでおり、それぞれスロット12から導出されてその導出位置から次のスロット12に向かうに伴い、ステータコア10の径方向内側、又は外側に変位して導出位置とは前記径方向の異なる位置で次のスロット12に挿入されている。
【0070】
この点について図9(b)、図11(a)〜(d)を用いて具体的に説明する。図9(b)は上記の通り、図6(a)のIXb−IXb線に沿った巻線群の断面模式図、つまり、スロットU2とスロットV1との間の位置の巻線群の断面模式図であり、図11(a)〜(d)は、図6(a)のXIa−XIa線、XIb−XIb線、XIc−XIc線及びXId−XId線にそれぞれ沿った巻線群の断面模式図、つまり、スロットV1〜U3の各スロット間の巻線群の断面模式図である。
【0071】
これらの図に示すように、スロットU2とスロットV1の間の位置では、図9(b)に示すように、第1U相巻線群20Uaの正巻線群22aと第2U相巻線群20Ubの正巻線群24aとが上下に重ねられている。そして、これらU相巻線群20Ua、20Ubの内側に、第1W相巻線群20Waの逆巻線群22bと第2W相巻線群20Wbの逆巻線群24bとが同様に上下に重ねられ、さらにその内側に、第1V相巻線群20Vaの逆巻線群22bと第2U相巻線群20Vbの逆巻線群24bとが同様に上下に重ねられている。
【0072】
そして、スロットV1の位置で、最も内側に位置する第2V相巻線群20Vaの逆巻線群22bがスロットV1に挿入される一方で、スロットV1から第2V相巻線群20Vaの正巻線群22aが導出されることにより、スロットV1とスロットV2の間の位置では、図11(a)に示すように、第1V相巻線群20Vaの正巻線群22aがU相巻線群20Ua、20Ubの外側に重ねられる。
【0073】
そして次に、スロットV2の位置で、最も内側に位置する第2V相巻線群20Vbの逆巻線群24bがスロットV2に挿入される一方で、スロットV2から第2V相巻線群20Vbの正巻線群24aが導出されることにより、スロットV2とスロットW1の間の位置では、図11(b)に示すように、第2V相巻線群20Vbの正巻線群24aがU相巻線群20Ua、20Ubの外側において、第2V相巻線群20Vaの正巻線群22aの下側に重ねられる。
【0074】
そして次に、スロットW1の位置で、最も内側に位置する第2W相巻線群20Waの逆巻線群22bがスロットW1に挿入される一方で、スロットW1から第2W相巻線群20Waの正巻線群22aが導出されることにより、スロットW1とスロットW2の間の位置では、図11(c)に示すように、第2W相巻線群20Waの正巻線群22aがV相巻線群20Va、20Vbの外側に重ねられる。
【0075】
そして次に、スロットW2の位置で、最も内側に位置する第2W相巻線群20Wbの逆巻線群24bがスロットW2に挿入される一方で、スロットW2から第2W相巻線群20Wbの正巻線群24aが導出されることにより、スロットW2とスロットU3の間の位置では、図11(d)に示すように、第2W相巻線群20Wbの正巻線群24aがV相巻線群20Va、20Vbの外側において、第2W相巻線群20Waの正巻線群22aの下側に重ねられる。
【0076】
このように、U相巻線群20Ua、20Ub、V相巻線群20Va、20Vb、及びW相巻線群20Wa、20Wbが、ステータコア10の径方向に互いに隣接する状態で並び、それぞれスロット12から導出されてその導出位置から次のスロット12に向かうに伴い、ステータコア10の径方向内側に変位しながらスロット12に挿入されることで、これら巻線群20Ua、20Ub、20Va、20Vb、20Wa、20Wbが相互に交差することなくコンパクトに配列された状態のままで次のスロット12に導かれるようになっている。
【0077】
以上、第1コイル部材14Aの構成について説明したが、第2コイル部材14Bの構成も第1コイル部材14Aと同等である。なお、図3及び図4(b)に示すように、第2コイル部材14Bの第2U相巻線群20Uaは、第1コイル部材14Aの第1U相巻線群20Uaに対してステータコア10の径方向に一列に並ぶように当該第1U相巻線群20Uaと同じスロット12内に挿入され、第2コイル部材14Bの第2U相巻線群20Ubは、第1コイル部材14Aの第2U相巻線群20Ubに対して前記径方向に一列に並ぶように当該第2U相巻線群20Ubと同じスロット12に配列されている。第2コイル部材14BのV相巻線群20Va、20Vb及びW相巻線群20Wa、20Wbも同様である。
【0078】
以上のような、本発明に係るステータSによれば、各巻線群20Ua、20Ub、20Va、20Vb、20Wa、20Wbの巻線r1〜r3、r1′〜r3′r4〜r6、r4′〜r6′が断面五角形のホームベース型の素線1により形成され、巻線r1〜r3、r1′〜r3′(巻線r4〜r6、r4′〜r6′)が、斜辺2c同士を当接させた状態でスロット12に挿入されている。このような構成によれば、隣接する巻線同士がステータコア10の径方向において互いにオーバーラップした状態でスロット12内に挿入されるため、断面形状が円形や矩形(長方形)の巻線(素線)が用いられる従来構成に比べて、より断面積の大きい巻線(太い巻線)をスロット12内に整列した状態で密接して配列することが可能となる。従って、ステータSの線占積率(スロットの断面積に占める巻線の断面積の割合)を、従来構成に比べて高めることが可能となる。すなわち、上述した通り、各スロット12の断面形状は、ステータコア10の径方向内側から外側に向かって先広がりに形成されている。そのため、例えば図12(a)に示すように、断面形状が矩形(長方形)の太い巻線raを用いる場合、その断面の一辺の長さをスロットの入口幅と同程度としても、スロット12内の奥部(径方向外側の部分)に比較的大きな隙間が形成されてしまう。また、図12(b)に示すように、断面形状が円形の細い巻線rbを用いた場合には、見かけ上はスロット内を巻線rbで埋め尽くすことができるものの、巻線rb同士を隙間無く密接させることは不可能であるため、スロット内の総隙間面積はかなり大きいものとなる。これに対して、図12(c)に示すように、ホームベース型の巻線rcを用いる場合には、巻線rcの尖形部から底辺2aに降ろした一辺の長さをスロットの入口幅よりも若干小さい程度に設定すれば、図12(a)の例と巻線数が同じであっても断面矩形(長方形)の巻線raに比して断面積の大きい巻線を、前記径方向に並べて互いに密接させた状態でスロット内に挿入することができる。これは上記の通り、隣接する巻線rc同士を径方向において互いにオーバーラップした状態でスロット12内に挿入できるためである。従って、図12(a)、(b)の構成に比べて、スロット12内の隙間面積を効果的に小さくする、つまり、線占積率を高めることが可能となる。
【0079】
因みに、図12(a)〜(c)に示す例では、スロットの断面積は(103.7mm)であり、図12(a)の例では、巻線の総断面積は76.8mm(6.4mm×12本)である。従って線占積率を求めると約74.1%となる。また、図12(b)の例では、巻線の総断面積は62.7mm(0.64mm×98本)であり、従って線占積率を求めると約60.5%となる。これに対して、図12(c)の例では、巻線の総断面積は、88.8mm(7.4mm×12本)であり、従って線占積率を求めると約85.6%である。このように、上記実施形態のステータSによれば、その線占積率を高めることが可能であり、小型の回転電機でより大きな出力を得ることが可能となる。つまり、要求される特性が同じであれば、巻線(素線)の断面形状が円形や矩形(長方形)の従来構成に比べ、回転電機の小型化及び軽量化を図ることが可能となる。
【0080】
なお、図12(a)や図12(c)で実際のステータを製作する場合には、コイルの配置安定性を考慮して、スロットとコイルの間の側壁部及び外径部に生ずる隙間はステータにて穴埋めする対応を取ることが考えられるが、こうした場合の線占積率の値と上記に示した占積率の値は、線占積率を算出する上での基本的な考え方が異なるため、比較対象としていない。
【0081】
また、上記ステータSによれば、ステータコア10の軸方向に沿って巻線群20Ua、20Ub(20Va、20Vb、20Wa、20Wb)の巻線r1〜r3、r4〜r6(巻線r1′〜r3′、r4′〜r6′)が集結して並べられた状態、詳しくは、隣接する巻線同士の多くがステータコア10の軸方向及び径方向にオーバーラップした状態で整然と配列されている。そのため、ステータコア10の軸方向端面上についても、各巻線群20Ua、20Ub、20Va、20Vb、20Wa、20Wbの占有スペースを小さく抑えることができる。従って、このステータSによれば、ステータコア10の軸方向端面上(つまり、コイルエンド部分)における各巻線群20Ua、20Ub、20Va、20Vb、20Wa、20Wbの占有スペースを効果的に抑制することが可能であり、この点でもステータSの小型化および軽量化を図ることができる。
【0082】
なお、上述したステータSは、例えば図21に示すような方法に従って製造することができる。すなわち、ステータコア10に巻回された状態のコイル部材14A(巻線群20Ua、20Ub、20Va、20Vb、20Wa、20Wb)と同一形状のコイル部材30を単独で形成し(巻線形成工程)、このコイル部材30全体を径方向に圧縮変形させた状態で、同図(a)及び(b)に示すようにステータコア10の内側に挿入する(巻線挿入工程)。その後、ステータコア10の内側に挿入されたコイル部材30を拡径し、当該ステータコア10の内側から所定のスロット12に対して各巻線群20Ua、20Ub、20Va、20Vb、20Wa、20Wbを挿入することにより、コイル部材30をステータコア10に装着する(巻線装着工程)。そして、上記工程を繰り返すことにより、図2に示すような、2つのコイル部材14A、14Bを備えるステータSを製造する。
【0083】
このような方法によれば、ステータコア10に対して素線1を巻回しながら巻線群20Ua、20Ub、20Va、20Vb、20Wa、20Wbを形成する場合に比べて、上記ステータSを効率良く製造することが可能となる。なお、この場合、上記巻線挿入工程では、図22(a)、(b)に示すように、コイル部材30のうち、その軸方向一端側のみを径方向に縮径させることにより、当該コイル部材30全体を略円錐台状に圧縮変形させておき、縮径された側からステータコア10の内側にコイル部材30を挿入するようにしてもよい。このような方法によれば、巻線装着工程における巻線群の拡径作業が容易になるため、より効率良くステータを製造することが可能となる。
【0084】
なお、図21及び図22では、上記工程を繰り返すことにより、2つのコイル部材14A、14Bを備えたステータSを製造しているが、例えば巻線形成工程において、予め2つのコイル部材14A、14Bを含むようなコイル部材30を形成し、これをステータコア10に挿入するようにしてもよい。
【0085】
ところで、上述したステータSは、本発明に係る回転電機のステータの好ましい実施形態の例示であって、その具体的な構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、次のような構成を採用することも可能である。
【0086】
例えば、上記実施形態のステータSでは、図2図3に示すように、ステータコア10の径方向最外側に位置する巻線r1、r4の尖形部が反時計回りに向くように、巻線r1〜r3、r1′〜r3′(巻線r4〜r6、r4′〜r6′)がスロット12に挿入されているが、図13に示すように、巻線r1、r4の尖形部が時計回りに向くように挿入されていてもよい。また、図14に示すように、巻線r1、r4の尖形部の向きが隣接するスロット12間で交互に異なるように挿入されていてもよい。なお、図13に示すような構成によれば、ステータコア10の軸方向両側におけるコイル部材14A、14Bの断面形状(各巻線群20Ua、20Ub、20Va、20Vb、20Wa、20Wbの配列)は、図15に示すように、ステータコア10の中心軸に対して上記実施形態(図2等参照)とは逆に傾いた断面形状、具体的にはコイル部材14A、14Bの上端がステータコア10の内側に向かって迫り出すように傾いた断面形状となる。
【0087】
また、巻線r1〜r3、r1′〜r3′(巻線r4〜r6、r4′〜r6′)は、図16に示すような向きでスロット12に挿入されていてもよい。すなわち、一つの極に対応する連続した6つのスロット12、例えばU相のスロットU1、U2、V相のスロットV1、V2及びW相のスロットW1、W2については、それぞれ同一相における径方向最外側の巻線r1、r4の尖形部が互いに向かい合うように、各巻線r1〜r3、r1′〜r3′(巻線r4〜r6、r4′〜r6′)がスロット12に挿入され、これに続く連続した6つのスロット12、例えばU相のスロットU3、U4、V相のスロットV3、V4及びW相のスロットW3、W4については、それぞれ同一相における前記巻線r1、r4の尖形部が互いに反対側を向くように、各巻線r1〜r3、r1′〜r3′(巻線r4〜r6、r4′〜r6′)がスロット12に挿入され、さらにこれに続く連続した6つのスロット12、例えばU相のスロットU5、U6、V相のスロットV5、V6及びW相のスロットW5、W6については、上記したU相のスロットU1、U2、V相のスロットV1、V2及びW相のスロットW1、W2と同様にして、各巻線r1〜r3、r1′〜r3′(巻線r4〜r6、r4′〜r6′)がスロット12に挿入される、という具合に、一つの極に対応する連続した6つのスロット12を一組として、同一相における径方向最外側の巻線r1、r4の尖形部の向きが交互に変わるように、巻線r1〜r3、r1′〜r3′(巻線r4〜r6、r4′〜r6′)が挿入されるようにしてもよい。このような構成によれば、図8(b)や図10(b)に示すような巻線r1等の捩りを伴うことなく、巻線r1〜r3、r4〜r6(巻線r1′〜r3′、r4′〜r6′)を図9(b)に示すように配列することが可能になるというメリットがある。
【0088】
また、上述したステータSにおいて、ステータコア10の軸方向両側における各コイル部材14A、14Bの巻線群20Ua、20Ub、20Va、20Vb、20Wa、20Wbの配列は、図2図15に示すもの以外に、図17(a)、(b)に示すようなものであってもよい。
【0089】
また、図2図15図17に示す例では、U相、V相、W相の各巻線(U相巻線群20Ua、20Ua、V相巻線群20Va、20Vb、W相巻線群20Wa、20Wb)は各巻線の底辺2aがステータコア10の軸方向端面とほぼ平行となる配列(本発明の第1配列に相当する)となっているが、例えば、図18(a)、(b)、あるいは図19(a)、(b)に示すように、巻線の底辺2aがステータコア10の中心軸と平行になるように配列されたもの(本発明の第2配列に相当する)であってもよい。
【0090】
なお、上記実施形態のステータSは、2組のコイル部材14A、14Bを備えているが、コイル部材は1組だけでもよいし、また、3組以上備えていてもよい。
【0091】
また、第1コイル部材14A(第2コイル部材14B)は、U相、V相、W相の各巻線群として、それぞれ2組の巻線群(20Ua・20Ub、20Va・20Vb、20Wa・20Wb)を備えているが、ステータコア10のスロット数によっては、U相、V相、W相の各巻線群として、それぞれ1組の巻線群を備えるようにしてもよい。
【0092】
また、上記実施形態のステータSでは、各巻線群20Ua、20Va、20Wa(20Ub、20Vb、20Wb)は、3つの巻線r1〜r3(r4〜r6)からなる正巻線群22a(24a)と、巻線r1′〜r3′(r4′〜r6′)からなる逆巻線群22b(24b)とから構成されているが、正巻線群22a(24a)および逆巻線群22b(24b)の巻線の数は3つに限定されるものではなく変更可能である。
【0093】
また、上記実施形態のステータSでは、各コイル部材14A、14Bを構成する巻線(r1〜r3、r1′〜r3′r4〜r6、r4′〜r6′)の断面形状は同一であるが、換言すれば、全ての巻線が同一の素線1で形成されているが、ステータSの線占積率をより大きくするために、断面形状の異なる複数の巻線(素線)を用いてコイル部材を構成してもよい。例えば、図20(a)はその一例である。この図に示すステータSは、第1〜第3の3つのコイル部材14A、14B、14Cを備えており、同図に示すように、各コイル部材14A、14B、14Cが、それぞれ断面形状の異なる巻線ra〜rcで構成されている。詳しくは、各巻線ra〜rcの断面形状は、何れも断面五角形のホームベース型であるが、第1コイル部材14Aの巻線rdと第2コイル部材14Bの巻線reとは、尖形部の角度および面積が互いに等しいものの、第2コイル部材14Bの巻線reよりも第1コイル部材の巻線rdの方が、断面長さが長く設定されている。第2コイル部材14Bの巻線reと第3コイル部材14Cの巻線rfとの関係も同様である。なお、断面長さとは、素線1(巻線)の断面において、前記一対の斜辺2cの交点から底辺2aに降ろした垂線の長さである。
【0094】
このような構成によれば、径方向外側に位置するコイル部材ほど巻線の断面長さが大きくなるため、同図に示すように、スロット12の奥部に隙間が生じることを効果的に抑制することが可能となる。よって、ステータSの線占積率をより一層大きくすることが可能となる。
【0095】
なお、図20(a)に示すように、ステータSが第1〜第3の3つのコイル部材14A、14B、14Cを備えるような場合には、前記巻線rd〜rfとして、前記一対の斜辺2cの成す角度、当該斜辺2cの長さおよび前記底辺2aの長さが共通で、側辺2bの長さ寸法のみが互いに異なるものを適用してもよい。この場合、ステータコア10の径方向内側よりも外側に位置するコイル部材の巻線の方が、側辺2bの長さが長く設定されるようにする。つまり、巻線rdの側辺2b>巻線reの側辺2b>巻線rfの側辺2bとされる。このような構成によれば、スロット12内において径方向外側に位置する巻線ほどその断面積が大きくなるため、図20(a)の例の場合と同様に、スロット12の奥部に隙間が生じることを効果的に抑制することが可能となる。よって、ステータSの線占積率をより一層大きくすることが可能となる。
【0096】
なお、図20(a)の例に示すコイル部材14A,14Bの巻線rd、reのように、断面長がスロット12の入口幅よりも長くなると、図示の姿勢のままで巻線rd、reをステータコア10の径方向内側からスロット12に挿入することが困難となる。従って、この場合には、例えば図20(b)に示すように、巻線rdをスロット12の入口に対して傾けた状態で挿入するようにすればよい。
【0097】
なお、図20(a)の例では、各コイル部材14A、14B、14Cが、それぞれ断面形状の異なる巻線ra〜rcで構成されているが、1つのコイル部材に含まれる複数の巻線それぞれを互いに断面形状の異なる巻線で構成するようにしてもよい。すなわち、1つのコイル部材に含まれる複数の巻線のうち、ステータコア10の径方向に隣接する巻線は、一対の斜辺2cの成す角度および断面積が互いに等しく、内側に位置する巻線の前記断面長よりも外側に位置する巻線の方で、前記断面長さが長くなるようにしてもよい。このような構成によれば、1つのコイル部材についても、径方向外側に位置する巻線ほどその断面長さが長くなるため、スロット12内に隙間が生じることをより効果的に抑制することが可能となる。この構成の場合には、内外に隣接する巻線の断面積が等しいため、巻線を直列に繋ぎ合わされて前記コイル部材が形成される場合でも、全巻線に亘って電流を効率良く流すことができるという利点がある。
【0098】
なお、1つのコイル部材に含まれる複数の巻線のうち、ステータコア10の径方向に隣接する巻線は、一対の斜辺2cの成す角度、当該斜辺2cの長さおよび前記底辺2aの長さが等しく、前記一対の側辺2bの長さが、内側に位置する巻線よりも外側に位置する巻線の方で長くなるようにしてもよい。このような構成によれば、1つのコイル部材についても、径方向外側に位置する巻線ほどその断面積が大きくなるため、スロット12内に隙間が生じることをより効果的に抑制することが可能となる。
【0099】
なお、上記実施形態のステータSでは、48スロット8極を具体的に取り上げて説明したが、スロット数、極数はこれに限定されるものではなく、その他のスロット数、極数を組合せたステータにおいても適用可能である。
【0100】
また、この実施形態では、三相交流モータに適用されるステータについて説明したが、本発明のステータは、勿論、発電機やモータ兼発電機等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0101】
10 ステータコア
12 スロット
14A 第1コイル部材
14B 第2コイル部材
20Ua 第1U相巻線群
20Ub 第2U相巻線群
20Va 第1V相巻線群
20Vb 第2V相巻線群
20Wa 第1W相巻線群
20Wb 第2W相巻線群
22a、24a 正巻線群
22b、24b 逆巻線群
S ステータ
r1〜r3、r1′〜r3′ 巻線
r4〜r6、r4′〜r6′ 巻線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22