(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エンジンから排出される排気ガスの一部を吸気通路に還流させるEGR通路、当該EGR通路を還流する排気ガスの流量を制御するEGRバルブ、および当該EGR通路を還流する排気ガスを冷却するEGRクーラを有するEGR装置と、
前記EGRバルブを制御するEGRバルブ制御手段と、
エンジンのシリンダヘッドを経由する第1流路および当該第1流路から分岐して前記EGRクーラを経由する第2流路を含み、かつ冷却水が循環する冷却水流路と、
前記冷却水流路内の冷却水を循環させる冷却水ポンプと、
前記第2流路における冷却水の流量を制御する流量制御バルブと、
前記第1流路における冷却水の温度を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段で検出された温度に基づいて前記流量制御バルブの開度を制御するバルブ制御手段とを備え、
前記冷却水流路は、前記第2流路を通過した冷却水が前記シリンダヘッドに導入される構成を有し、
前記バルブ制御手段は、(i)前記温度検出手段で検出された温度が予め定められた温度閾値未満であり、かつ前記EGRバルブ制御手段により前記EGRバルブを開く制御が行われないときには前記流量制御バルブの開度を第2流路の流量が最小流量となる所定開度とし、(ii)前記温度検出手段で検出された温度が前記温度閾値未満であり、かつ前記EGRバルブ制御手段により前記EGRバルブを開く制御が行われたときには前記流量制御バルブを前記所定開度よりも大きい開度で開き、(iii)前記温度検出手段で検出された温度が前記温度閾値以上であるときには前記流量制御バルブを開き、
前記(ii)の制御時の流量制御バルブの開度は、前記(iii)の制御時の流量制御バルブの開度よりも小さい開度であることを特徴とする、エンジンの冷却システム。
前記(ii)の制御を行っているときに、前記バルブ制御手段は、前記第2流路における冷却水の流量が予め定められた流量以下となるように前記流量制御バルブの開度を制御することを特徴とする、請求項1に記載のエンジンの冷却システム。
排気通路を通過する排気ガスのエネルギーにより駆動されるタービンと、当該タービンにより駆動されて前記吸気通路内の空気を加圧するコンプレッサとを有するターボ過給機が備えられ、
前記EGR通路は、前記排気通路における前記タービンの下流側と前記吸気通路における前記コンプレッサの上流側とを連通し、
前記EGRバルブ制御手段は、前記温度検出手段で検出された温度が予め定められた温度閾値未満であり、かつ前記エンジンの作動状態が低負荷領域にあるときには、前記EGR装置によって排気ガスを還流させず、前記温度検出手段で検出された温度が前記温度閾値未満であり、かつ前記エンジンの作動状態が高負荷領域にあるときには、前記EGR装置によって排気ガスを還流させるように、前記EGRバルブを制御することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載のエンジンの冷却システム。
前記流量制御バルブは、開度が大きくなるほど冷却水流量が大きくなるロータリーバルブであることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載のエンジンの冷却システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の冷却システムエンジンにおいては、冷間時にはEGRクーラに冷却水が通水されないため、エンジンの冷間時にEGRクーラにEGRガスが導入されると、EGRクーラの冷却水の温度が上昇して沸騰し、EGRクーラが破損する虞がある。この問題を解決するために、EGRガスが導入されるときには、EGRクーラを経由する冷却水流路に通水することが考えられるが、そのようにすると、EGRクーラとともにシリンダヘッドも冷却されてしまい、シリンダヘッドの昇温を促進することができなくなる。
【0006】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたもので、エンジンの冷間始動後において、冷却水の通水制限によるシリンダヘッドの昇温促進と、EGRクーラの破損防止とを両立させることができる、エンジンの冷却システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、エンジンから排出される排気ガスの一部を吸気通路に還流させるEGR通路、当該EGR通路を還流する排気ガスの流量を制御するEGRバルブ、および当該EGR通路を還流する排気ガスを冷却するEGRクーラを有するEGR装置と、前記EGRバルブを制御するEGRバルブ制御手段と、エンジンのシリンダヘッドを経由する第1流路および当該第1流路から分岐して前記EGRクーラを経由する第2流路を含み、かつ冷却水が循環する冷却水流路と、前記冷却水流路内の冷却水を循環させる冷却水ポンプと、前記第2流路における冷却水の流量を制御する流量制御バルブと、前記第1流路における冷却水の温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段で検出された温度に基づいて前記流量制御バルブの開度を制御するバルブ制御手段とを備え、
前記冷却水流路は、前記第2流路を通過した冷却水が前記シリンダヘッドに導入される構成を有し、前記バルブ制御手段は、(i)前記温度検出手段で検出された温度が予め定められた温度閾値未満であり、かつ前記EGRバルブ制御手段により前記EGRバルブを開く制御が行われないときには前記流量制御バルブの開度を
第2流路の流量が最小流量となる所定開度とし、(ii)前記温度検出手段で検出された温度が前記温度閾値未満であり、かつ前記EGRバルブ制御手段により前記EGRバルブを開く制御が行われたときには前記流量制御バルブを
前記所定開度よりも大きい開度で開き、(iii)前記温度検出手段で検出された温度が前記温度閾値以上であるときには前記流量制御バルブを開
き、前記(ii)の制御時の流量制御バルブの開度は、前記(iii)の制御時の流量制御バルブの開度よりも小さい開度であることを特徴とする、エンジンの冷却システムを提供する。
【0008】
本発明によれば、温度検出手段で検出された温度が予め定められた温度閾値未満であり、かつEGRバルブ制御手段によりEGRバルブを開く制御が行われないとき、つまりシリンダヘッドを流れる冷却水が低温であり、かつEGR通路に排気ガス(EGRガス)が流れていないときには、流量制御バルブの開度を
第2流路の流量が最小流量となる所定開度とするので、シリンダヘッドを流れる冷却水の流量は制限され、シリンダヘッドの昇温が促進される。
【0009】
一方、温度検出手段で検出された温度が温度閾値未満であり、かつEGRバルブ制御手段によりEGRバルブを開く制御が行われたとき、つまりシリンダヘッドを流れる冷却水が低温であり、かつEGR通路に排気ガスが流れたときには、流量制御バルブを開くので、冷却水がEGRクーラを流れる。従って、EGRクーラを流れる冷却水の過度の昇温を抑制することができ、EGRクーラの破損を防止することができる。
【0010】
このように、エンジンの冷間時においては、EGRクーラにEGRガスが流れた場合にのみEGRクーラに冷却水を流すので、エンジンの冷間始動後において、冷却水の通水制限によるシリンダヘッドの昇温促進と、EGRクーラの破損防止とを両立させることができる。
【0011】
本発明においては、前記(ii)の制御が行われたときに、前記バルブ制御手段は、前記第2流路における冷却水の流量が予め定められた流量以下となるように前記流量制御バルブの開度を制御することが好ましい。
【0012】
この構成によれば、シリンダヘッドを流れる冷却水が低温であり、かつEGR通路に排気ガスが流れるときに、EGRクーラを流れる冷却水の流量を予め定められた流量以下に制限するので、EGRクーラを流れた後の冷却水は比較的高温となる。従って、EGRクーラを流れた後の冷却水がシリンダヘッドに流入しても、シリンダヘッドの昇温を阻害することがない。
【0013】
本発明においては、前記第1流路は、前記EGRクーラを経由しないことが好ましい。
【0014】
この構成によれば、第1流路がEGRクーラを経由しない分、第1流路の長さを短くすることができる。これにより、第1流路の壁面から冷却水の熱が自然に放熱する量を少なくすることができ、シリンダヘッドの昇温を促進することができる。
【0015】
本発明においては、前記第1流路は、当該第1流路から前記第2流路が分岐する分岐点の下流側に下流側流路を有し、前記流量制御バルブは、前記第2流路における冷却水の流量および前記下流側流路における冷却水の流量を制御し、前記下流側流路に対するバルブの開度を常時ゼロ近傍の予め定められた小開度に保つことが好ましい。
【0016】
この構成によれば、流量制御バルブは、第1流路における下流側流路に対するバルブの開度を常時ゼロ近傍の予め定められた小開度に保つので、下流側流路には常時冷却水が流れている。従って、常時冷却水によって冷却する必要がある種類の補機(例えば、高圧EGRバルブなど)を下流側流路に配置しておけば、当該補機の過熱を防止することができる。
【0017】
本発明においては、排気通路を通過する排気ガスのエネルギーにより駆動されるタービンと、当該タービンにより駆動されて前記吸気通路内の空気を加圧するコンプレッサとを有するターボ過給機が備えられ、前記EGR通路は、前記排気通路における前記タービンの下流側と前記吸気通路における前記コンプレッサの上流側とを連通し、前記EGRバルブ制御手段は、前記温度検出手段で検出された温度が予め定められた温度閾値未満であり、かつ前記エンジンの作動状態が低負荷領域にあるときには、前記EGR装置によって排気ガスを還流させず、前記温度検出手段で検出された温度が前記温度閾値未満であり、かつ前記エンジンの作動状態が高負荷領域にあるときには、前記EGR装置によって排気ガスを還流させるように、前記EGRバルブを制御することが好ましい。
【0018】
この構成によれば、シリンダヘッドを流れる冷却水の温度が低い状態においてエンジンにかかる負荷が低いときには、EGR装置(低圧EGR装置)によって排気ガスを還流させないので、第2流路に冷却水は流れず、シリンダヘッドを流れる冷却水の流量が制限され、シリンダヘッドの過冷却が抑制される。また、シリンダヘッドを流れる冷却水の温度が低い状態においてエンジンにかかる負荷が高いときには、EGR装置によって排気ガスを還流させるので、第2流路に冷却水が流れ、シリンダヘッドを流れる冷却水の流量が増加する。
【0019】
従って、エンジンの冷間始動直後に急加速してエンジンが高負荷に突入する場合を除いて、冷間始動後の暖機時には低圧EGR装置によって排気ガスを還流させないので、シリンダヘッドを流れる冷却水の流量が制限され、シリンダヘッドの昇温とEGRクーラの破損防止を両立させることができる。
【0020】
本発明においては、前記流量制御バルブは、開度が大きくなるほど冷却水流量が大きくなるロータリーバルブであることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、開度が大きくなるほど冷却水流量が大きくなるロータリーバルブを用いるので、容易に流量の制御を行うことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、エンジンの冷間始動後において、冷却水の通水制限によるシリンダヘッドの昇温促進と、EGRクーラの破損防止とを両立させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施形態について詳述する。
【0025】
まず、本発明の実施形態に係るエンジン9およびその吸排気システムについて説明する。
【0026】
エンジン9は、車両駆動用のディーゼルエンジンである。
【0027】
エンジン9は、複数の気筒(
図1では一つのみを図示)が設けられたシリンダブロック9aと、シリンダブロック9aの上側に配設されたシリンダヘッド9bと、シリンダブロック9aの下側に配設されたオイルパン9cとを有している。
【0028】
各気筒内には、コンロッド9dを介してクランクシャフト9eと連結されたピストン9fが往復可能に嵌挿されている。
【0029】
シリンダヘッド9bには、吸気ポート9gおよび排気ポート9hが各気筒にそれぞれ形成されている。これら吸気ポート9gおよび排気ポート9hには、吸気バルブ9jおよび排気バルブ9kがそれぞれ配設されている。
【0030】
また、シリンダヘッド9bには、各気筒内に燃料を噴射する電磁式の直噴インジェクタ9mが設けられている。直噴インジェクタ9mには、燃料タンクから燃料ポンプおよびコモンレール(いずれも図示略)を介して燃料が供給される。コモンレールには、燃料の圧力を検出する燃圧センサ36(
図2参照)が設けられている。
【0031】
エンジン9の吸排気システムは、吸入空気を吸気ポート9gを介して気筒内に導く吸気通路20と、気筒内で発生した排気ガスを大気中に排出する排気通路21とを備えている。
【0032】
吸気通路20には、上流側から順に、吸入空気中に含まれる塵や埃を除去するエアクリーナ22、ターボチャージャ(ターボ過給機)のコンプレッサ24、吸気通路20を遮断する吸気シャッタバルブ11bおよび吸気シャッタバルブ11bを駆動する吸気シャッタバルブアクチュエータ38、コンプレッサ24によって圧縮されて高圧高温になった吸入空気を強制冷却するインタークーラ25、インタークーラ25に冷却水を送るインタークーラ用冷却水ポンプ26などが設けられている。
【0033】
排気通路21には、上流側から順に、ターボチャージャの排気タービン27、ディーゼル酸化触媒(DOC)28、排気ガス中の排気微粒子を捕集するDPF(Diesel Particulate Filter)29などが設けられている。
【0034】
また、この吸排気システムは、高圧EGR(Exhaust Gas Recirculation)装置30と、低圧EGR装置31とを備えている。
【0035】
高圧EGR装置30は、吸気通路20における吸気ポート9gの上流側と排気通路21における排気ポート9hの下流側とを接続する高圧EGR通路30aと、高圧EGR通路30aにおける高圧EGRガスの流量を調節する高圧EGRバルブ11aと、高圧EGRバルブ11aを駆動する高圧EGRバルブアクチュエータ30bとを有している。
【0036】
低圧EGR装置31は、排気通路21におけるDPF29の下流側と吸気通路20におけるコンプレッサ24の上流側とを接続する低圧EGR通路31aと、低圧EGR通路31aにおける低圧EGRガスの流量を調節する低圧EGRバルブ11dと、低圧EGRバルブ11dを駆動する低圧EGRバルブアクチュエータ31bと、低圧EGRガスを冷却する低圧EGRクーラ11cとを有している。
【0037】
このように構成されたエンジン9および吸排気システムは、PCM(Powertrain Control Module)8によって制御される。PCM8は、CPU、メモリ、インタフェイス等により構成されている。
【0038】
PCM8には、
図2に示されるように、各種のセンサの検出信号が入力される。この各種のセンサには、吸気ポート9gに取り付けられて気筒内に流入する直前の吸入空気の温度を検出する吸気ポート温度センサ33と、吸気ポート9g近傍におけるエンジン冷却水の温度を検出する水温センサ7と、クランクシャフト9eの回転角を検出するクランク角センサ34と、車両のアクセルペダル(図示略)の操作量に対応したアクセル開度を検出するアクセル開度センサ35と、直噴インジェクタ9mに供給する燃料圧力を検出する燃圧センサ36と、DPF29の下流側における排気ガス中の酸素濃度を検出する酸素濃度センサ32等が含まれる。
【0039】
PCM8は、各センサの検出信号に基づいて種々の演算を行うことにより、エンジン9、吸排気システム等の状態を判断し、これに応じて直噴インジェクタ9mおよび各種バルブのアクチュエータ(吸気シャッタバルブアクチュエータ38、高圧EGRバルブアクチュエータ30b、低圧EGRバルブアクチュエータ31b)へ制御信号を出力する。
【0040】
次に、PCM8が行う制御について、
図3のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0041】
まず、PCM8は、各種センサの検出値を読み込む(ステップS31)。
【0042】
次いで、PCM8は、クランク角センサ34によって検出された回転角に基づいてエンジン回転数を算出し、そのエンジン回転数とアクセル開度センサ35によって検出されたアクセル開度とに基づき、目標トルクを設定する(ステップS32)。
【0043】
次いで、PCM8は、エンジン回転数と目標トルクに基づいて、燃料の要求噴射量を設定する(ステップS33)。
【0044】
次いで、PCM8は、メモリに予め記憶されている複数の燃料噴射パターンの中から、要求噴射量およびエンジン回転数に応じた燃料噴射パターンを選択する(ステップS34)。
【0045】
次いで、PCM8は、要求噴射量とエンジン回転数に基づいて、直噴インジェクタ9mに供給する燃料の圧力(燃圧)を設定する(ステップS35)。
【0046】
次いで、PCM8は、要求噴射量とエンジン回転数に基づいて、目標酸素濃度を設定する(ステップS36)。目標酸素濃度は、気筒内に流入する直前の混合空気の酸素濃度の目標値である。
【0047】
次いで、PCM8は、要求噴射量とエンジン回転数に基づいて、目標吸気温度を設定する(ステップS37)。目標吸気温度は、気筒内に流入する直前の混合空気の温度の目標値である。
【0048】
次いで、PCM8は、メモリに予め記憶されている複数のEGR制御モードの中から、要求噴射量およびエンジン回転数に応じたEGR制御モードを選択する(ステップS38)。EGR制御モードは、高圧EGR装置30および低圧EGR装置31についてそれぞれ選択される。
【0049】
次いで、PCM8は、目標酸素濃度および目標吸気温度を実現する状態量(高圧EGR量、低圧EGR量、および過給圧)を設定する(ステップS39)。
【0050】
次いで、PCM8は、各状態量の制限範囲をメモリから読み出す(ステップS40)。制限範囲は、エンジン9および吸排気システムが適切に作動するために各状態量が満たすべき範囲であり、メモリに予め記憶されている。
【0051】
次いで、PCM8は、ステップS39において設定された状態量が制限範囲内に収まっているかどうかを判断する(ステップS41)。
【0052】
状態量が制限範囲内に収まっていると判断された場合(ステップS41でYES)には、ステップS43に移行する。ステップS43では、PCM8は、ステップS39で設定された状態量に基づいて、直噴インジェクタ9m、吸気シャッタバルブアクチュエータ38、高圧EGRバルブアクチュエータ30b、および低圧EGRバルブアクチュエータ31bの制御量を設定する。
【0053】
次いで、PCM8は、設定された制御量に基づいて、直噴インジェクタ9m、吸気シャッタバルブアクチュエータ38、高圧EGRバルブアクチュエータ30b、および低圧EGRバルブアクチュエータ31bを制御する(ステップS44)。
【0054】
ステップS41において、制限範囲内に収まっていない状態量があると判断された場合には、PCM8は、当該状態量が制限範囲に収まるように補正する(ステップS42)。例えば、制限範囲内において、ステップS39で設定された状態量に最も近い制限値に、状態量を補正する。ステップS42の後、PCM8は、補正後の状態量に基づいて、直噴インジェクタ9m、吸気シャッタバルブアクチュエータ38、高圧EGRバルブアクチュエータ30b、および低圧EGRバルブアクチュエータ31bを制御する(ステップS44)。
【0055】
次に、本発明の実施形態に係るエンジン9の冷却システムについて説明する。
【0056】
図4に示されるように、エンジン9の冷却システム1は、第1流路2、第2流路3、および第3流路4を含む冷却水流路と、冷却水ポンプ5と、流量制御バルブ6と、水温センサ7と、低圧EGR装置31と、高圧EGR装置30と、PCM8とを備えている。冷却水流路内では冷却水が循環する。
【0057】
第1流路2は、エンジン9のシリンダヘッド9bを経由する冷却水流路である。第1流路2は、シリンダヘッド9bの下流側に、第2流路3が分岐する分岐点P1を有している。第1流路2は、分岐点P1の下流側に、第1補機用流路2a(経路(1))を有している。第1補機用流路2aは、高圧EGRバルブ11aおよび吸気シャッタバルブ11bを経由する。
【0058】
第2流路3は、エンジン9の補機11を経由する冷却水流路である。第2流路3は、分岐点P1の下流側に分岐点P2を有している。第2流路3は、分岐点P2に接続された第2補機用流路3a(経路(2))および第3補機用流路3b(経路(4))を有している。第2補機用流路3aと第3補機用流路3bは、分岐点P2において互いに並列に接続されている。
【0059】
第2補機用流路3aは、低圧EGRバルブ11d、低圧EGRクーラ11c、およびヒータコア11eを経由する。
【0060】
第3補機用流路3bは、ラジエータ11fを経由する。
【0061】
第3流路4(経路(3))は、エンジン9のシリンダブロック9a、オイルクーラ11g、およびATF(Automatic Transmission Fluid)クーラ11hを経由する。
【0062】
冷却水ポンプ5は、ターボ型ポンプであり、インペラがエンジン9のクランクシャフト9eに間接的に連結された構造を有している。冷却水ポンプ5の入力ポート5aは、流量制御バルブ6を介して、第1補機用流路2aの下流端、第2補機用流路3aの下流端、第3補機用流路3bの下流端、および第3流路4の下流端に接続されている。冷却水ポンプ5の出力ポート5bは、第1流路2の上流端および第3流路4の上流端に接続されている。
【0063】
冷却水ポンプ5は、入力ポート5aを介して第1補機用流路2a、第2補機用流路3a、第3補機用流路3b、および第3流路4内の冷却水を、エンジントルクの一部を利用したインペラの回転動作に伴うポンプ作用により吸引し、出力ポート5bを介して第1流路2および第3流路4に吐出するように構成されている。冷却水ポンプ5内に吸引された冷却水は、冷却水ポンプ5内で撹拌された後、吐出される。
【0064】
流量制御バルブ6は、単一のロータリーバルブである。流量制御バルブ6は、筒状のケーシングと、当該ケーシング内に回転可能に収容された筒状の弁体と、当該弁体を回転駆動するアクチュエータとを有している。アクチュエータは、PCM8から入力される制御信号(駆動電圧)に応じて弁体を回転駆動する。ケーシングの側面には、4個の入力ポートおよび4個の出力ポートが形成されている。4個の入力ポートは、第1補機用流路2aの下流端、第2補機用流路3aの下流端、第3補機用流路3bの下流端、および第3流路4の下流端に接続されている。また、4個の出力ポートは、冷却水ポンプ5の入力ポート5aに接続されている。
【0065】
弁体の側面には、切欠き部が形成されている。当該切欠き部とケーシングに形成された出力ポートの連通面積Sは、第1補機用流路2a、第2補機用流路3a、第3補機用流路3b、および第3流路4に対して個別に設定される。以下の説明では、第1補機用流路2aに対する連通面積を「連通面積S2a」と称し、第2補機用流路3aに対する連通面積を「連通面積S3a」と称し、第3補機用流路3bに対する連通面積を「連通面積S3b」と称し、第3流路4に対する連通面積を「連通面積S4」と称する。
【0066】
連通面積S2aは、弁体の回転角度に拘わらずゼロ近傍の小面積で一定であり(
図5参照)、冷却水の流量をゼロ近傍の少量に抑えてシリンダヘッド9bを過冷却しないようになっているが、高圧EGRバルブ11aおよび吸気シャッタバルブ11bの冷却に必要な流量は確保できる面積とされている。
【0067】
一方、連通面積S3a、連通面積S3b、および連通面積S4は、弁体の回転角度に応じて連続的に変化するようになっている(
図5参照)。
【0068】
すなわち、連通面積S3a(以下、「第2補機用流路3aに対する流量制御バルブ6の開度」と称する)の変化に応じて、第2補機用流路3aにおける冷却水の流量が変化する。
【0069】
また、連通面積S3b(以下、「第3補機用流路3bに対する流量制御バルブ6の開度」と称する)の変化に応じて、第3補機用流路3bにおける冷却水の流量が変化する。
【0070】
また、連通面積S4(以下、「第3流路4に対する流量制御バルブ6の開度」と称する)の変化に応じて、第3流路4における冷却水の流量が変化する。
【0071】
水温センサ7は、第1流路2におけるシリンダヘッド9b近傍の冷却水の温度を検出する。水温センサ7で検出された温度の情報は、PCM8へ送信される。
【0072】
PCM8は、水温センサ7で検出された温度に基づいて流量制御バルブ6の開度を制御するバルブ制御機能を有する。
【0073】
以下、PCM8による冷却システムの制御について、
図6のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0074】
なお、以下の説明では、第2補機用流路3a、第3補機用流路3b、および第3流路4に対する流量制御バルブ6の開度がゼロ(閉じている)の状態から制御が開始されるものとする。
【0075】
まず、PCM8は、水温センサ7からシリンダヘッド9bにおける冷却水の温度Tを入力する(ステップS51)。
【0076】
次いで、PCM8は、入力した温度Tが第1温度閾値T1未満であるかどうかを判断する(ステップS52)。ここで、第1温度閾値T1は、エンジン9の冷間始動後にエンジン9が冷間状態から温間状態に遷移するときの温度(例えば、概ね80℃)未満の温度、すなわちエンジン暖機中(暖機完了前)の温度であり、例えば50℃(
図8参照)である。
【0077】
温度Tが第1温度閾値T1未満であると判断された場合(ステップS52でYES)には、PCM8は、低圧EGRバルブ11dを開く制御(
図3のステップS44参照)が開始されたかどうかを判断する(ステップS53)。
【0078】
ステップS53において、低圧EGRバルブ11dを開く制御が開始されない(
図9のA4参照)と判断された場合(ステップS53でNO)には、PCM8は、第2補機用流路3aに対する流量制御バルブ6の開度、および第3補機用流路3bに対する流量制御バルブ6の開度第3流路4に対する流量制御バルブ6の開度をゼロに維持することにより(
図8のA0参照)、第1流路2における分岐点P1の上流側(以下、「第1流路2における上流側流路2b」と称する)を流れる冷却水の流量(シリンダヘッド9bを流れる冷却水の流量)を制限する制御を行う(ステップS54)。これにより、第1流路2における上流側流路2bを流れる冷却水の流量は、第1補機用流路2a(経路(1))を流れる冷却水の流量と等しくなり、ゼロ近傍の少量に抑えられる(
図9のA2参照)。従って、シリンダヘッド9bの温度低下が抑制され、シリンダヘッド9bの温度は次第に上昇する(
図9の第1通水状態)。なお、ステップS53において、PCM8は、第3流路4に対する流量制御バルブ6の開度もゼロに制御する。これにより、シリンダブロック9aの温度低下が抑制され、シリンダブロック9aの温度は次第に上昇する。ステップS54の後、ステップS51に戻る。
【0079】
一方、低圧EGRバルブ11dを開く制御が開始された(
図9のA5参照)と判断された場合(ステップS53でYES)には、PCM8は、第2補機用流路3aに対する流量制御バルブ6の開度を増加させる(流量制御バルブ6を開く)ことにより(
図8のA1、
図9のA3参照)、第1流路2における冷却水の流量制限を解除する制御を行う(ステップS55)。
【0080】
ステップS55では、PCM8は、第2補機用流路3aに対する流量制御バルブ6の開度が目標開度未満の予め定められた開度(例えば、目標開度の1/3程度の開度)となるように流量制御バルブ6を制御する。なお、ここに言う「目標開度」は、温間時の目標開度であり、第2補機用流路3aに対する流量制御バルブ6の最大開度(全開)を意味する。
【0081】
これにより、第2補機用流路3aに冷却水が少し流れ始め、第2補機用流路3aを流れた冷却水は冷却水ポンプ5を介して第1流路2に流入する。つまり、第1流路2における上流側流路2bを流れる冷却水の流量は、第1補機用流路2a(経路(1))を流れる冷却水の流量と、第2補機用流路3a(経路(2))を流れる冷却水の流量の和となり、ステップS54のときよりも流量が増加する。しかしながら、第2補機用流路3aに対する流量制御バルブ6の開度をいきなり全開にするのではなく、例えば全開の1/3程度の開度とするので、第1流路2における冷却水の流量制限の解除が緩やかに開始され、シリンダヘッド9bの過冷却を防止することができる。
【0082】
また、第2補機用流路3aに冷却水が流れることにより、低圧EGRクーラ11cにおける冷却水の過度な温度上昇が抑制され、低圧EGRクーラ11cの破損を防止することができる。
【0083】
ステップS55の後、ステップS51に戻る。ステップS51に戻った後に再びステップS54へ進んだ場合(
図9のA6に示すように低圧EGRバルブ11dが閉じられた場合)には、第2補機用流路3aに対する流量制御バルブ6の開度をゼロに戻す(
図8のA7、
図9のA8参照)。
【0084】
ステップS52において、温度Tが第1温度閾値T1以上であると判断された場合(ステップS52でNO)には、PCM8は、温度Tが第2温度閾値T2(例えば80℃。
図8参照)未満であるかどうかを判断する(ステップS56)。なお、第2温度閾値T2は、第1温度閾値T1より高い値である。
【0085】
温度Tが第2温度閾値T2未満であると判断された場合(ステップS56でYES)には、PCM8は、第2補機用流路3aに対する流量制御バルブ6の開度を増加させる(流量制御バルブ6を開く)ことにより、第1流路2における冷却水の流量制限を解除する制御を行う(ステップS57)。ステップS57の後、ステップS51に戻る。
【0086】
ここで、ステップS57において行われる制御について、
図7のフローチャートを参照しつつ詳細に説明する。まず、PCM8は、第2補機用流路3aに対する流量制御バルブ6の開度が目標開度未満の予め定められた開度(例えば、目標開度の1/3程度の開度。
図8のA9参照)となるように流量制御バルブ6を制御する(ステップS61)。なお、ここに言う「目標開度」は、温間時の目標開度であり、第2補機用流路3aに対する流量制御バルブ6の最大開度(全開)を意味する。
【0087】
これにより、第2補機用流路3aに冷却水が少し流れ始め、第2補機用流路3aを流れた冷却水は冷却水ポンプ5を介して第1流路2に流入する。つまり、第1流路2における上流側流路2bを流れる冷却水の流量は、第1補機用流路2a(経路(1))を流れる冷却水の流量と、第2補機用流路3a(経路(2))を流れる冷却水の流量の和となり、ステップS53のときよりも流量が増加する(
図9のA10参照)。しかしながら、第2補機用流路3aに対する流量制御バルブ6の開度をいきなり全開にするのではなく、例えば全開の1/3程度の開度とするので、第1流路2における冷却水の流量制限の解除が緩やかに開始される。
【0088】
次いで、PCM8は、水温センサ7で検出された温度Tが第1温度閾値T1より高く第2温度閾値T2より低い第3温度閾値T3(例えば75℃。
図8参照)以上となったかどうかを判断する(ステップS62)。
【0089】
温度Tが第3温度閾値T3以上であると判断された場合(ステップS62でYES)には、PCM8は、第2補機用流路3aに対する流量制御バルブ6の開度が温間時の目標開度(
図8のA11参照)となるように流量制御バルブ6を制御する(ステップS63)。これにより、第2補機用流路3a(経路(2))を流れる冷却水の流量が温間時の目標流量(第2補機用流路3aにおける最大流量)まで増加し、その増加分だけ第1流路2における上流側流路2bを流れる冷却水の流量も増加する(
図9のA12参照)。従って、ステップS61、S63の2段階で流量が徐々に増加するので、第1流路2における流量制限の解除が緩やかに行われる(
図9の第2通水状態)。
【0090】
図6に戻って、ステップS56において、温度Tが第2温度閾値T2以上であると判断された場合(ステップS56でNO)には、PCM8は、温度Tが第4温度閾値T4(例えば95℃。
図8参照)未満であるかどうかを判断する(ステップS58)。なお、第4温度閾値T4は、第3温度閾値T3より高い値である。
【0091】
温度Tが第4温度閾値T4未満であると判断された場合(ステップS58でYES)には、PCM8は、第3流路4に対する流量制御バルブ6の開度を増加させる(流量制御バルブ6を開く)制御を行う(ステップS59)。ステップS59の後、ステップS51に戻る。
【0092】
ここで、ステップS59において行われる制御について、
図7のフローチャートを参照しつつ詳細に説明する。まず、PCM8は、第3流路4に対する流量制御バルブ6の開度が目標開度未満の予め定められた開度(例えば、目標開度の1/2程度の開度.。
図8のA13、
図9のA14参照)となるように流量制御バルブ6を制御する(ステップS61)。これにより、第3流路4に冷却水が少し流れ始め、第3流路4を流れた冷却水は冷却水ポンプ5を介して第1流路2および第3流路4に流入する。なお、ここに言う「目標開度」は、温間時の目標開度であり、第3流路4に対する流量制御バルブ6の最大開度(全開)を意味する。
【0093】
次いで、PCM8は、水温センサ7で検出された温度Tが第2温度閾値T2より高く第4温度閾値T4より低い第5温度閾値T5(例えば85℃。
図8参照)以上となったかどうかを判断する(ステップS62)。
【0094】
温度Tが第5温度閾値T5以上であると判断された場合(ステップS62でYES)には、PCM8は、第3流路4に対する流量制御バルブ6の開度が目標開度(
図8のA15、
図9のA16参照)となるように流量制御バルブ6を制御する(ステップS63)。これにより、第3流路4(経路(3))を流れる冷却水の流量が温間時の目標流量(第3流路4における最大流量)まで増加する。つまり、第3流路4から流出する冷却水の流量は、ステップS61、S63の2段階で徐々に増加する(
図9の第3通水状態)。
【0095】
図6に戻って、ステップS58において、温度Tが第4温度閾値T4以上であると判断された場合(ステップS58でNO)には、PCM8は、第3補機用流路3bに対する流量制御バルブ6の開度を増加させる(流量制御バルブ6を開く)制御を行う(ステップS60)。ステップS60の後、ステップS51に戻る。
【0096】
ここで、ステップS60において行われる制御について、
図7のフローチャートを参照しつつ詳細に説明する。まず、PCM8は、第3補機用流路3bに対する流量制御バルブ6の開度が目標開度未満の予め定められた開度(例えば、目標開度の1/2程度の開度。
図8のA17参照)となるように流量制御バルブ6を制御する(ステップS61)。なお、ここに言う「目標開度」は、温間時の目標開度であり、第3補機用流路3bに対する流量制御バルブ6の最大開度(全開)を意味する。
【0097】
これにより、第1流路2における上流側流路2bを流れる冷却水の流量は、ステップS57のときよりも流量が増加する(
図9のA18参照)。しかしながら、第3補機用流路3bに対する流量制御バルブ6の開度をいきなり全開にするのではなく、例えば全開の1/2程度の開度とするので、第1流路2における冷却水の流量制限の解除が緩やかに行われる。
【0098】
次いで、PCM8は、水温センサ7で検出された温度Tが第4温度閾値T4より高い第6温度閾値T6(例えば100℃。
図8参照)以上となったかどうかを判断する(ステップS62)。
【0099】
温度Tが第6温度閾値T6以上であると判断された場合(ステップS62でYES)には、PCM8は、第3補機用流路3bに対する流量制御バルブ6の開度が温間時の目標開度(
図8のA19参照)となるように流量制御バルブ6を制御する(ステップS63)。これにより、第3補機用流路3b(経路(4))を流れる冷却水の流量が温間時の目標流量(第3補機用流路3bにおける最大流量)まで増加し、その増加分だけ第1流路2における上流側流路2bを流れる冷却水の流量も増加する(
図9のA20参照)。つまり、ステップS61、S63の2段階で流量が徐々に増加するので、第1流路2における流量制限の解除が緩やかに行われる(
図9の第4通水状態)。
【0100】
以上説明したように、本実施形態によれば、水温センサ7で検出された温度が第1温度閾値T1未満であり、かつPCM8により低圧EGRバルブ11dを開く制御が開始されないとき、つまりシリンダヘッド9bを流れる冷却水が低温であり、かつEGR通路31aに排気ガスが流れていないときには、第2補機用流路3aおよび第3補機用流路3bに対する流量制御バルブ6の開度をゼロとするので、シリンダヘッド9bを流れる冷却水の流量は制限され、シリンダヘッド9bの昇温が促進される。
【0101】
一方、水温センサ7で検出された温度が第1温度閾値T1未満であり、かつPCM8により低圧EGRバルブ11dを開く制御が開始されたとき、つまりシリンダヘッド9bを流れる冷却水が低温であり、かつ低圧EGR通路31aに排気ガスが流れるときには、第2補機用流路3aに対する流量制御バルブ6を増加させる(流量制御バルブ6を開く)ので、冷却水が低圧EGRクーラ11cを流れる。これにより、低圧EGRクーラ11cを流れる冷却水の過度の昇温を抑制することができ、低圧EGRクーラ11cの破損を防止することができる。
【0102】
従って、エンジン9の冷間始動後において、冷却水の通水制限によるシリンダヘッド9bの昇温促進と、低圧EGRクーラ11cの破損防止とを両立させることができる。
【0103】
また、シリンダヘッド9bを流れる冷却水の温度が第1温度閾値T1以上であるときには、第2補機用流路3aおよび第3補機用流路3bに対する流量制御バルブ6の開度が予め定められた目標開度まで段階的に増加するように制御されるので、シリンダヘッド9bを流れる冷却水の流量制限が徐々に解除され、シリンダヘッド9bの温度低下(過冷却)を抑制することができる。
【0104】
また、シリンダヘッド9bを流れる冷却水が低温であり、かつ低圧EGR通路31aに排気ガスが流れるときに、低圧EGRクーラ11cを流れる冷却水の流量を例えば最大流量の1/3程度に制限するので、低圧EGRクーラ11cを流れた後の冷却水は比較的高温となる。従って、低圧EGRクーラ11cを流れた後の冷却水がシリンダヘッド9bに流入しても、シリンダヘッド9bの昇温を阻害することがない。
【0105】
また、第1流路2は低圧EGRクーラ11cを経由しないので、その分、第1流路2の長さを短くすることができる。これにより、第1流路2aの壁面から冷却水の熱が自然に放熱する量を少なくすることができ、シリンダヘッド9bの昇温を促進することができる。
【0106】
また、流量制御バルブ6は、第1補機用流路2aに対するバルブ開度を常時ゼロ近傍の予め定められた小開度に保つので、第1補機用流路2aには常時冷却水が流れている。従って、常時冷却水によって冷却する必要がある種類の補機(例えば、高圧EGRバルブ11aなど)を第1補機用流路2aに配置しておけば、当該補機の過熱を防止することができる。
【0107】
また、シリンダヘッド9bを流れる冷却水の温度が低い状態(第1温度閾値T1未満)においてエンジン9にかかる負荷が低いときには、低圧EGR装置31によって排気ガスを還流させず、高圧EGR装置30によって排気ガスを還流させるので、第2補機用流路3aに冷却水は流れず、シリンダヘッド9bを流れる冷却水の流量が制限され、シリンダヘッド9bの過冷却が抑制される。また、シリンダヘッド9bを流れる冷却水の温度が低い状態においてエンジン9にかかる負荷が高いときには、低圧EGR装置31によって排気ガスを還流させるので、第2補機用流路3aに冷却水が流れ、シリンダヘッド9bを流れる冷却水の流量が増加する。
【0108】
つまり、エンジン9の冷間始動直後に急加速するなどしてエンジン9が高負荷状態に突入する場合を除いて、冷間始動後の暖機時には低圧EGR装置31によって排気ガスを還流させないので、シリンダヘッド9bを流れる冷却水の流量が制限され、シリンダヘッド9bの昇温促進と低圧EGRクーラ11dの破損防止とを両立させることができる。
【0109】
また、流量制御バルブ6として、開度が大きくなるほど冷却水流量が大きくなるロータリーバルブを用いるので、容易に流量の制御を行うことができる。
【0110】
なお、上記実施形態においては、低圧EGRバルブ11dを開く制御が開始されたと判断された場合に、第2補機用流路3aに対する流量制御バルブ6の開度を増加させ(バルブを開き)、その後、低圧EGRバルブ11dが閉じていると判断された場合には、第2補機用流路3aに対する流量制御バルブ6の開度をゼロに戻している(
図8,9参照)が、これに限られない。例えば、第2補機用流路3aに対する流量制御バルブ6の開度を増加させた後(バルブを開いた後)は、低圧EGRバルブ11dが閉じているか否かに拘わらず、流量制御バルブ6を開いている状態を維持してもよい(
図10のA7参照)。このようにすることで、低圧EGRバルブ11dの開閉に合わせて流量制御バルブ6の開閉が繰り返されるのを防止することができる。
【0111】
また、低圧EGRバルブ11dの開度が予め定められた開度以上となっている状態が予め定められた時間以上継続していると判断された場合に、第2補機用流路3aに対する流量制御バルブ6の開度を増加させてもよい(バルブを開いてもよい)。このようにすることで、極短時間の間のみ低圧EGRバルブ11dが開弁した場合において、流量制御バルブ6の開度が増加させることが無いため、シリンダヘッド9bの温度を不必要に低下させることを抑制することができる。