(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1に係る電力融通システム100の構成を示すブロック図である。
【0016】
電力融通システム100は、複数の需要者管理装置110と、電力管理装置120とを含む。電力管理装置120は、典型的には電力会社等の電力系統(基幹系)と連系点で接続されており、各需要者管理装置110に基幹系からの電力を供給するが、電力融通システム100内における電力融通を基幹系から独立して制御することも可能である。電力融通システム100は、例えばマイクログリッドである。マイクログリッドでは、電力会社が管理する基幹系統からの電力供給とは独立に、再生可能エネルギー等を用いた発電設備を有し、各需要者管理装置110によって自律分散制御される電力系統(グリッド)が複数配置され、グリッド内の複数の需要者の電力をグリッド内で管理する。需要者管理装置110は、マイクログリッド内の需要者の電力の受給を管理する装置であり、各需要者管理装置110が自律運転を行うことで安定した電力制御が行われる。
【0017】
需要者管理装置は110は同一グリッドに複数存在し同一グリッド内での電力の融通を行ってもよいし、異なるグリッド間で電力融通を行っても良い。需要者管理装置110はそれぞれ、分散型電源111又は負荷112の少なくともいずれか一方と、制御部113と、を有する。各需要者管理装置110には分散型電源111と負荷112が複数あってもよい。
【0018】
分散型電源111は、電力を発生する各種設備及び機器等である。例えば、ガスエンジン/ガスタービン発電機、太陽光発電機、風力発電機、バイオマス発電機、燃料電池、及び蓄電池(放電時)等が分散型電源111に含まれる。分散型電源111は、負荷112、及び電力管理装置120の電力制御部123と送受電可能に接続される。
【0019】
負荷112は、電力を消費する各種設備及び機器等である。例えば、蓄電池(充電時)も負荷112に含まれる。負荷112は、分散型電源111、及び電力管理装置120の電力制御部123と送受電可能に接続される。
【0020】
制御部113は、電力管理装置120の電力制御部123からの指示に応じて、分散型電源111の出力を制御する。制御部113は、典型的にはプログラム等を記憶する記憶部と、そのプログラムに従って処理を行うプロセッサと、電力制御部123や分散型電源111との情報通信を行う入出力部とを有するコンピュータである。制御部113は、分散型電源111、負荷112、及び電力管理装置120の電力制御部123と通信可能に接続される。
【0021】
電力管理装置120は、管理情報記憶部121と、情報制御部122と、電力制御部123と、を有する。
【0022】
管理情報記憶部121は、各需要者管理装置110のプロファイル(発電量等の属性値や、電力融通条件等の設定値など)を保持する。典型的には記憶部上に論理的に構築されるデータベースである。管理情報記憶部121の詳細な内容については後述する。
【0023】
情報制御部122は、各需要者管理装置110のプロファイルを管理情報記憶部121に設定する機能、及び前記プロファイルに基づいて、所定の条件の成就を検知し、所定の需要者管理装置110の制御部113に所定の電力量を供給させるよう、電力制御部123に指示する機能等を有する。
【0024】
電力制御部123は、需要者管理装置110の分散型電源111や基幹系から受給した電力を、他の需要者管理装置110の負荷112に供給する機能、及び情報制御部122の指示に応じ、所定の電力量の供給を所定の需要者管理装置110の制御部113に指示する機能等を有する。
【0025】
情報制御部122、電力制御部123は、典型的にはプログラム等を記憶する記憶部と、そのプログラムに従って処理を行うプロセッサと、需要者管理装置110の制御部113との情報通信を行う入出力部とを有するコンピュータである。
【0026】
ここで、
図2を用いて、管理情報記憶部が記憶する管理情報について説明する。
【0027】
管理情報記憶部121は、需要者テーブル1211、電力網テーブル1212、融通制御テーブル1213の3つのテーブルを有する。
【0028】
需要者テーブル1211は、各需要者管理装置110のプロファイルを保持するテーブルである。電力融通システム100に新たな需要者管理装置110が加入すると、需要者テーブル1211に新たなエントリが作成される。需要者テーブル1211は以下のエントリを含む。契約者ID(A−1)は、各需要者管理装置110を識別するための識別子(ID)である。分散型電源ID(A−2)は、この需要者管理装置110が有する分散型電源111を識別するためのIDである。契約者が複数の分散型電源111を有する場合には、分散型電源111に対応する複数の分散型電源IDが、契約者IDに紐付けられる。電力受給の対価に関する情報(オプション料)(A−3)は、需要者管理装置110が電力管理装置120に対し、後述の契約受給電力量に対する対価として供給すべきもの、供給条件を示す情報である。電力受給に関する情報(オプション)(A−4)は、需要者管理装置110が電力管理装置120から受給可能な電力量(契約受給電力量)、受給条件を示す情報である。分散型電源の種類(A−5)は、分散型電源111の諸元(例えば自然エネルギーか否か、インバータ変換効率等)を示す情報である。分散型電源の最大発電量(A−6)は、分散型電源111が発電可能な最大の電力量を示す情報である。
【0029】
ここで、電力受給に関する情報(オプション)(A−4)及び電力受給の対価に関する情報(オプション料)(A−3)でいう、オプション及びオプション料の概念は、金融取引におけるオプション及びオプション料の概念と略同義である。すなわち、オプションとは、将来所定の条件が成就したときに、需要者管理装置110が電力管理装置120から所定量の電力を受給する権利をいう。オプション料とは、需要者管理装置110が電力管理装置120に対して受け渡す、その権利の対価をいう。
【0030】
電力網テーブル1212は、電力融通システム100に関係する電力網の情報を保持するテーブルであり、以下のエントリを含む。電源の状態(B−1)は、各分散型電源111及び基幹系の発電装置それぞれについて、これらが動作しているか否か、又はこれらから電力受給が現在可能か否か(稼働しているか、スイッチの状態等)を示す情報である。距離(B−2)は、ある需要者管理装置110から他の需要者管理装置110までの送電距離を示す情報である。電力融通情報(B−31乃至B−33)は、ある需要者管理装置110から他の需要者管理装置110に電力融通が実行されるときに設定される情報であり、送電元・送電先(B−31)、融通電力量(B−32)、融通期間(B−33)を含む。
【0031】
融通制御テーブル1213は、電力融通の際の送電元及び送電先を決定するための情報を保持するテーブルである。融通制御テーブル1213は、送電元優先度テーブル(C−1)、送電先優先度テーブル(C−2)を含む。送電元優先度テーブル(C−1)は、送電元の候補としての需要者管理装置110の契約者IDを、優先度と共に予め記録したテーブルである。電力管理システム120は、送電元優先度テーブル(C−1)に定義された優先度に基づき、送電元を決定する。また、送電先優先度テーブル(C−2)は、送電先の候補としての需要者管理装置110の契約者IDを、優先度と共に予め記録したテーブルである。電力管理システム120は、送電先に優劣をつける必要がある場合、送電先優先度テーブル(C−2)に定義された優先度に基づき、送電先を決定する。ここで、送電先に優劣をつける必要がある場合とは、例えば送電元から供給される電力量の総和が送電先に供給すべき電力量の総和を下回る場合、複数の送電元から供給される電力の安定度に差がある場合等が挙げられる。なお、融通制御テーブル1213は、送電元及び送電先を決定するために利用可能な他のパラメータを適宜保持していても良い。
【0032】
なお、送電元優先度テーブル(C−1)及び送電先優先度テーブル(C−2)の優先度は、様々な要因に基づき決定されて良い。例えば、送電元優先度テーブル(C−1)で高い優先度が与えられている需要者には、送電先優先度テーブル(C−2)においても高い優先度を与えることとしても良い。あるいは、電力受給の対価に関する情報(オプション料)(A−3)の内容、例えば対価の多寡に応じ、送電先優先度テーブル(C−2)の優先度に優劣を設けることとしても良い。
【0033】
つぎに、
図3を用いて、電力融通システム100が電力融通を実行する処理について説明する。
【0034】
ここで、電力融通の前提として、電力融通システム100内における電力融通の取決め(電力融通契約)内容が、管理情報記憶部121に予め登録されているものとする。以下に、予め管理情報記憶部121に登録されるべき電力融通契約の内容を示す。
【0035】
各需要者管理装置110を運営する需要者は、電力受給に関する情報(オプション)と、電力受給の対価に関する情報(オプション料)と、を予め取決める。需要者は、電力受給に関する情報(オプション)として、需要者管理装置110が電力管理装置120から受給可能な電力量(契約受給電力量)、及び受給条件を設定する。また、電力受給の対価に関する情報(オプション料)として、需要者管理装置110が電力管理装置120に対し契約受給電力量に対する対価として供給すべきもの、及び供給条件を設定する。
【0036】
電力受給に関する情報(オプション)の契約受給電力量は、後述の受給条件が成就した際に、需要者管理装置110が電力管理装置120から受給する電力量である。需要者は、契約受給電力量として、例えば需要者管理装置110の負荷112を稼働させるのに必要な最大電力量を設定できる。これにより、例えば事故や停電等のトラブルのために需要者管理装置110の分散型電源111の発電量が全て喪失した場合にも、負荷112の稼働に必要な電力を調達することができる。
【0037】
電力受給に関する情報(オプション)の受給条件は、需要者管理装置110が電力管理装置120から契約受給電力量を受給するために満たすべき条件である。需要者は、受給条件として、例えば需要者管理装置110の分散型電源111の停止等の事象を設定できる。後述するように、電力管理装置120は、分散型電源111の死活管理を定常的に実施することにより、分散型電源111の停止を検知することが可能である。
【0038】
なお、受給条件は、上述の例の他に、需要者管理装置110における停電の発生、基幹系統における異常の発生、蓄電池への充電要求の発生、大量の電力を必要とするイベントの実行予定期間の到来等、電力管理装置120が検知可能な任意の事象であっても良い。
【0039】
電力受給の対価に関する情報(オプション料)の対価として供給すべきものは、受給条件が成就した際に契約受給電力量を受給することの対価として、需要者管理装置110が電力管理装置120に受け渡すべきものである。例えば需要者は、需要者管理装置100が、電力管理装置120に対し、所定の電力量(契約供給電力量)を供給する取決めを設定することができる。この場合、需要者管理装置100は、後述の供給条件が成就したとき、電力管理装置120に対して契約供給電力量を供給する義務を負う。したがって、需要者管理装置110は、供給条件が成就していない平常時において、供給条件が成就したならば直ちに契約供給電力量の供給を開始できるよう準備をしておく必要がある。
【0040】
なお、対価として供給すべきものは、上述の例の他に、需要者から電力管理装置120の運営者に対する金銭の支払い等であっても良い。この場合、需要者管理装置110は、供給条件が成就していない平常時において特段の準備をしておく必要はない。
【0041】
電力受給の対価に関する情報(オプション料)の供給条件は、需要者管理装置110が電力管理装置120に対し、対価を供給すべき条件である。例えば、電力管理装置120から需要者管理装置110に対する、電力供給要求の発生を供給条件とすることができる。例えば、電力管理装置120は、電力融通システム100内のいずれかの需要者管理装置110にかかる受給条件の成就を検知し、電力融通システム100内での電力融通の必要が生じたとき、他の需要者管理装置110に対して電力供給要求を発することができるであろう。
【0042】
これらは、管理情報記憶部121の需要者テーブル1211に、電力受給に関する情報(オプション)(A−4)及び電力受給の対価に関する情報(オプション料)(A−3)として、契約者ID(A−1)及び分散型電源ID(A−2)と紐付けられて登録される(S101)。
【0043】
ついで、電力融通システム100が電力融通契約に基づく制御を実行する処理について説明する。
【0044】
電力管理装置120は、電力融通システム100に含まれる各需要者管理装置110に対して、S102〜S103の処理を行う。なお、S102〜S103は、いずれの需要者管理装置110においても受給条件が成就されていない、平常時における処理である。
【0045】
電力管理装置120の情報制御部122は、需要者管理装置110の制御部112を制御し、仮に電力受給の対価に関する情報(オプション料)の供給条件が成就した際に、対価として供給すべきものを直ちに供給することができるよう、需要者管理装置110を準備させる(S102)。制御部112は、例えば分散型電源111や負荷112の出力を調整するなどして、かかる準備を行う。なお、対価として供給すべきものが金銭の支払いなど、需要者管理装置110の動作に関わらないものである場合には、このステップS102の処理は行う必要がない。
【0046】
また、情報制御部122は、需要者管理装置110が電力受給に関する情報(オプション)の受給条件を成就していないか、定期的に確認する(S103)。
【0047】
ここで需要者管理装置110が受給条件を成就したとき、すなわち電力融通契約に基づき、電力管理装置120が需要者管理装置110に対し電力供給を行うべき必要が生じたとき、電力管理装置120は以下のS104〜S106の処理を行う。
【0048】
電力管理装置120の情報制御部122は、受給条件を成就した需要者管理装置110(送電先)に対して電力供給を行うべき、他の1以上の需要者管理装置110(送電元)を決定する(S104)。例えば、情報制御部122は、融通制御テーブル1213の優先度テーブル(C−1)を参照し、優先度が高く設定されている契約者IDの需要者管理装置110を、送電元として決定することができる。また、情報制御部122は、送電元の契約者IDに紐付けられた電力受給の対価に関する情報(オプション料)(A−3)と、送電先の契約者IDに紐付けられた電力受給に関する情報(オプション)と、を参照し、送電元が供給する電力量が、送電先の契約受給電力量を下回っている場合、優先度テーブル(C−1)において劣後する優先度が定められている他の契約者IDの需要者管理装置110を、不足分の電力量の送電元として、順次追加的に割り当てることとしても良い。なお、送電元は、他の任意のパラメータ、例えば送電距離(B−2)等に基づいて決定されても良い。
【0049】
電力管理装置120の情報制御部122は、送電元として決定された需要者管理装置110の制御部112に対し、それぞれ割り当てられた電力量を供給するよう指示する(S105)。ここで各送電元に割り当てられる電力量の上限は、各送電元の契約供給電力量となる。送電元の制御部112は、この指示に応じ、分散型電源111や負荷112の出力を調整するなどして割り当てられた電力量を確保し、電力管理装置120の電力制御部123に対して送電する。
【0050】
電力管理装置120の電力制御部123は、送電元から供給された電力を、送電先である需要者管理装置110に対して送電する(S106)。ここで、送電先に対する電力融通契約に基づく電力の供給は、送電先の受給条件が満たされなくなるまで継続される。例えば、分散型電源111の停止が受給条件である場合は、分散型電源111の回復が死活確認により検知されるまで継続され得る。また、何らかのイベントの開催期間を受給条件とした場合は、当該イベントの開催期間が終了するまで継続され得る。
【0051】
なお、電力管理システム120は、送電先に優劣をつける必要がある場合、送電先優先度テーブル(C−2)に定義された優先度に基づき、送電先を選択することができる。例えば送電元から供給される電力量の総和が送電先に供給すべき電力量の総和を下回る場合、電力管理システム120は、送電先優先度テーブル(C−2)に定義された優先度が高い需要者に対し、優先的に送電量を割り当てることができる。また、複数の送電元から供給される電力の安定度に差がある場合、電力管理システム120は、送電先優先度テーブル(C−2)に定義された優先度が高い需要者に対し、優先的に安定度の高い送電元を割り当てることができる。供給電力の安定度は、例えば、分散型電源の種類(A−5)に基づき判定することができる。
【0052】
本実施の形態においては、電力管理装置120が、需要者管理装置110の需要に応じて、他の需要者管理装置110からの電力融通を、基幹系から全く独立して制御する。これにより、基幹系内の需給バランスを調整する必要がなく、自由度が高く迅速な電力融通を実現できる。
【0053】
また、本実施の形態においては、電力融通契約の内容を基幹系から独立した管理情報記憶部121が管理し、情報制御部122は管理情報記憶部121を参照して上記制御を実施する。これにより、事前に電力会社と所定の契約を締結する必要がなく、自由度が高く迅速な電力融通を実現できる。
【0054】
また、本実施の形態においては、管理情報記憶部121が様々な電力融通契約のパターンを管理でき、情報制御部122は管理情報記憶部121を参照し種々の情報通信技術を利用して上記制御を実施する。これにより、柔軟な電力融通契約を実現できる。
【0055】
<実施の形態2>
本発明の実施の形態2では、具体的な電力融通契約を前提とする電力融通システム100の構成、動作について説明する。
【0056】
はじめに、
図4を用いて、電力融通契約の締結の流れについて説明する。
【0057】
電力融通システム100に参加しようとする需要者は、電力管理装置120の運営者に対し、システム利用申請を行う(S201)。このとき、需要者は、分散型電源の種類(A−5)、分散型電源の最大発電量(A−6)を電力管理装置120の運営者に提示する。なお、需要者が分散型電源を有しない場合は、その旨を提示する。
【0058】
電力管理装置120の運営者がこのシステム利用申請を受け入れると、電力融通契約が成立する(S202)。ここで、電力管理装置120の運営者は、需要者に対し契約者ID(A−1)を割り当てる。また、需要者が運営する需要者管理装置110に含まれる分散型電源に対し、分散型電源ID(A−2)を割り当てる。そして、上記A−2乃至A−6にかかる情報を、契約者ID(A−1)と紐付けて管理情報記憶部121の需要者テーブル1211に登録する(S203)。
【0059】
また、電力融通システム100に参加しようとする需要者の需要者管理装置110は、電力管理装置120と送受電及び通信が可能となるよう相互に接続される。これにより、電力管理装置120は、需要者管理装置110の分散型電源111、負荷112を監視し、制御部113を介した制御を行うことができるようになる。
【0060】
ここで電力管理装置120の情報制御部122は、新たに参加した需要者管理装置110から他の需要者管理装置110までの距離(B−2)を算出し、電力網テーブル1212に登録する。また、情報制御部122は、分散型電源111の電源の状態(B−1)を定期的に監視し、電力網テーブル1212に登録する。
【0061】
電力融通契約における、電力受給の対価に関する情報(オプション料)(A−3)、電力受給に関する情報(オプション)(A−4)の内容は、以下のフローにより決定される。まず、需要者が分散型電源111を有せず、負荷112のみを有する場合は(S204)、オプション料は、システム利用料金の支払いとなる。需要者から電力管理装置120の運営者に対し、規定のシステム利用料金の支払いがなされたならば、電力受給の対価に関する情報(オプション料)(A−3)として、料金の支払い(対価として供給すべきもの)、支払済み(供給条件)の旨の情報が記載される(S209)。
【0062】
需要者が分散型電源111を有する場合であっても(S204)、需要者が分散型電源111からの電力供給を許可しない場合は(S205)、オプション料はシステム利用料金の支払いとなる。需要者から電力管理装置120の運営者に対し、規定のシステム利用料金の支払いがなされたならば、電力受給の対価に関する情報(オプション料)(A−3)として、料金の支払い(対価として供給すべきもの)、支払済み(供給条件)の旨の情報が記載される(S209)。
【0063】
需要者が分散型電源111を有する場合であって(S204)、需要者が分散型電源111からの電力供給を許可する場合は(S205)、オプション料は、電力供給要求に応じ契約供給電力量を供給することを内容とすることが好ましい。この場合、電力受給の対価に関する情報(オプション料)(A−3)として、契約供給電力量(対価として供給すべきもの)、電力供給要求の通知(供給条件)が記載される(S209)。
【0064】
需要者が電力管理装置120からの電力受給を希望する場合は(S205)、オプションは、需要者管理装置110における電力管理装置120からの契約受給電力量の受給とすることが好ましい。この場合、電力受給に関する情報(オプション)(A−4)として、契約受給電力量、受給条件が記載される(S207)。ここで、受給条件は、電力管理装置120の運営者と需要者との間で任意に約定することができる。一方、需要者が電力管理装置120からの電力受給を希望しない場合は(S205)、オプションは電力管理装置120の運営者から需要者への報酬の支払いとすることができる(S208)。
【0065】
ここで、ある需要者が、上述の契約締結フローにより、次のような電力融通契約Pを締結したものとする。
【0066】
(電力融通契約P)
電力受給の対価に関する情報(オプション料)(A−3):
対価として供給すべきもの:需要者管理装置100が電力管理装置120に対し、最大、電力量Y(契約供給電力量)を供給する。
供給条件:電力管理装置120から需要者管理装置110に対する、電力供給要求の通知。
電力受給に関する情報(オプション)(A−4):
契約受給電力量:需要者管理装置100が電力管理装置120から、最大、電力量Zを受給する。
受給条件:需要者管理装置100の分散型電源111の停止。
【0067】
図5を用いて、この電力融通契約Pが存在する場合の、電力融通システム100の構成、動作について説明する。はじめに、電力融通契約Pにかかる情報、例えば上記電力受給の対価に関する情報(オプション料)(A−3)、電力受給に関する情報(オプション)(A−4)が、管理情報記憶部121に格納される(S301)。
【0068】
電力管理装置120は、需要者管理装置110に対して、S302〜S303の処理を行う。なお、S302〜S303は、電力融通システム100に含まれるいずれの需要者管理装置110においても受給条件が成就されていない、平常時における処理である。
【0069】
電力管理装置120の情報制御部122は、需要者管理装置110の制御部112を制御し、電力供給要求の通知があった際に(供給条件)、電力管理装置120に対し、最大、電力量Y(契約供給電力量)を供給することができるよう、需要者管理装置110を準備させる(S102)。具体的には、制御部112は、分散型電源111の仕様上の最大発電量がXであるとすれば、供給条件が成就していない平常時においてはX−Yを上限として発電を行うよう分散型電源を制御する。換言すれば、供給条件が成就していない平常時における発電量をX−Yに抑制する。さらに換言すれば、電力管理装置120に対していつでも電力量Yを供給できるよう、供給条件が成就していない平常時は、発電余力としてYを残存させておく。これにより、供給条件が成就したとき、制御部112は分散型電源111の発電量を最大Xまで増加させることにより、契約供給電力量Yを電力管理装置120に供給できるよう備えることができる。
【0070】
なお、制御部112は、上述の例の他に、例えば一定の電力量Yを図示しない蓄電池等に蓄電しておき、供給条件が成就したとき、蓄電池から最大、電力量Yを供給することもできる。また、需要者管理装置110が基幹系から電力量Wを受給できるならば、供給条件が成就していない平常時における負荷112での使用電力量をW−Y以内に抑制し、供給条件が成就したとき、基幹系から最大、電力量Yを電力管理装置120に受給させることとしても良い。
【0071】
また、情報制御部122は、需要者管理装置110が電力受給に関する情報(オプション)の受給条件を成就していないか、定期的に確認する(S303)。本実施の形態では、受給条件は、分散型電源111の停止であるから、情報制御部122は、制御部112に対し、定期的に、分散型電源111が正常に稼働しているか否かを確認するよう指示する。制御部112は、この指示に応じ、分散型電源111に対して制御信号を送信し、その応答の有無等を観測して分散型電源111の稼働状態を確認し、異常の有無を情報制御部122に通知する。情報制御部122は、制御部112から異常の応答があった場合、又は正常の応答がなかった場合に、分散型電源111が停止した、すなわち受給条件が成就したものと検知する。あるいは、制御部112又は分散型電源111が自律的に分散型電源111の死活確認を定期的に実施するとともに、確認結果を電力網テーブル1212の電源の状態(B−1)に記録し、情報制御部122は、電源の状態(B−1)に異常の記録があった場合、又は正常の記録が一定時間にわたってなかった場合に、分散型電源111が停止した、すなわち受給条件が成就したものと検知することとしてもよい。
【0072】
ここで需要者管理装置110が受給条件を成就したとき、すなわち電力融通契約に基づき、電力管理装置120が需要者管理装置110に対し電力供給を行うべき必要が生じたとき、電力管理装置120は以下のS304〜S306の処理を行う。
【0073】
電力管理装置120の情報制御部122は、受給条件を成就した需要者管理装置110(送電先)に対して電力供給を行うべき、他の1以上の需要者管理装置110(送電元)を決定する(S304)。ここで、送電元の決定方法は、実施の形態1のステップS104と同様である。
【0074】
電力管理装置120の情報制御部122は、送電元として決定された需要者管理装置110の制御部112に対し、それぞれ割り当てられた電力量を供給するよう指示する(S305)。ここで各送電元に割り当てられる電力量の上限は、各送電元の契約供給電力量となる。送電元の制御部112は、この指示に応じ、分散型電源111や負荷112の出力を調整するなどして割り当てられた電力量を確保し、電力管理装置120の電力制御部123に対して送電する。
【0075】
電力管理装置120の電力制御部123は、送電元から供給された電力を、送電先である需要者管理装置110に対して送電する(S306)。ここで、送電先に対する電力融通契約に基づく電力の供給は、送電先の受給条件が満たされなくなるまで継続される。本実施の形態では、分散型電源111の停止が受給条件であるから、分散型電源111の回復が死活確認により検知されるまで、送電先は継続して契約受給電力量を受給できる。
【0076】
なお、電力管理システム120は、送電先に優劣をつける必要がある場合、送電先優先度テーブル(C−2)に定義された優先度に基づき、送電先を選択することができることは、実施の形態1において述べたとおりである。実施の形態2ではさらに、例えば電力受給の対価に関する情報(オプション料)(A−3)として発電量を抑制する契約を締結している需要者に対し、システム利用料金の支払をしている需要者よりも、送電先優先度テーブル(C−2)における優先度を高く設定すること等ができる。これにより、例えば電力融通システム100への貢献がより大きいと評価される需要者を優遇するなど、契約内容に応じたより柔軟な電力融通を行うことが可能になる。
【0077】
本実施の形態においては、需要者管理装置110は、供給条件が成就していない平常時において発電量が制限される代わりに、受給条件が成就したときは、契約受給電力量を確実に受給することができる。これにより、停電等に強い電力網を構築することができる。そして、電力融通契約により制限された発電量と契約受給電力量とが等価に扱われるため、制限された発電量が契約受給電力量として需要者自身のために使われるという、フェアな電力融通システムを実現することができる。
【0078】
<実施の形態3>
実施の形態3では、電力融通システムを電力ルータを利用して実現した構成について説明する。
【0079】
はじめに、電力ルータについて説明する。電力ルータは、コントローラから送信される制御指示を受信し、その制御指示に従って、他の電力ルータとの間で電力を送受電する装置である。具体的には、電力ルータは1以上の電力入力端子、1以上の電力出力端子を含み、1以上の電力入力端子から入力された電力を、1以上の指定した電力出力端子に夫々指定した電力を出力する。
【0080】
電力ルータの電力出力端子は、1以上の他の電力ルータの電力入力端子と送電線で送受電可能に接続される。また、電力ルータは他の電力ルータ及びコントローラと通信線で通信可能に接続される。コントローラは、所定のアルゴリズムに従って送電経路を決定し、各電力ルータに、電力を出力すべき電力出力端子と電力量とを指定した制御指示を送信する。さらに、コントローラは、制御指示に基づく送電結果(送電先、送電量、送電時刻、効率等)を各電力ルータから収集し、送電履歴として蓄積することができる。
【0081】
このような電力ルータを利用した送電網においては、コントローラは、公知のネットワーク経路制御手法を用いて最適な送電経路を決定することができる。加えて、コントローラは、電力の同質性を利用した経路決定を行うこともできる。すなわち、電力ルータAからBへ電力量Xを、電力ルータAからBへ電力量Y(Y<X)を送信すべき場合、これらの電力ルータAB間では差分の電力X−Yだけを送電すればよい。このように、契約上の電力の取引と、実際の電力の送電量及び送電ルートは必ずしも一致しない場合がある。
【0082】
電力ルータを利用した送電網では、送受電地点だけでなく、その間の送電経路の設定を行うことが可能となる。例えば、変電所や電力管理装置220を経由させずに、送電地点の需要者管理装置110と受電地点の需要者管理装置110との間で電力を融通することにより、電力変換の回数を削減したり、送電距離をより短く抑えることができる。これにより、電力ルータを利用しない送電網に比べ、電力損失を低減させる効果がある。このことは、同系統内又は異系統間のいずれにおける電力融通においても同様である。
【0083】
図6は、実施の形態3に係る電力融通システム200の構成を示すブロック図である。ここで、特に言及しない限り、実施の形態3は実施の形態1と同様の構成を有するものとする。特に、実施の形態1と同じ構成を有する構成要素については、実施の形態1と同じ番号を付与している。
【0084】
電力融通システム200は、電力管理装置220と、1以上の電力ルータ230と、各電力ルータ230に接続された1以上の需要者管理装置110とを含む。
【0085】
電力管理装置220は、管理情報記憶部121と、情報制御部222とを含む。
【0086】
情報制御部222は、実施の形態1における情報制御部122が有する機能に加え、各電力ルータ230から後述の電力網情報を受信し、電源の状態(B−1)、距離(B−2)として電力網テーブル1212に記録する機能、電力融通時の最適な送電経路を計算する機能、各電力ルータ230に上記送電経路及び送電量を通知する機能、及び各電力ルータ230から送電結果を受信する機能を有する。すなわち、情報制御部222は、電力ルータ230のコントローラとして機能する。
【0087】
電力ルータ230は、基幹系及び複数の需要家管理装置110と送電線で送受電可能に接続される。また、情報制御部222及び需要家管理装置110とは有線又は無線で通信可能に接続される。さらに、電力ルータ230は、他の電力ルータ230と送電線で送受電可能に接続されるとともに、有線又は無線で通信可能に接続されていても良い。電力ルータ230は、基幹系及び各需要家管理装置110の分散型電源111の死活確認を定期的に行い、確認結果を情報制御部222に通知する機能、情報制御部222から受信した送電経路及び送電量に基づき送電する機能、及び送電結果を情報制御部222に通知する機能を有する。
【0088】
つぎに、再び
図3を用いて、電力融通システム200が電力融通を実行する処理について説明する。なお、ここでは、実施の形態1と特に相違する処理についてのみ説明し、特に言及しない限り、実施の形態3における処理は実施の形態1と同様であるものとする。
【0089】
管理情報記憶部121に、電力融通契約及び電力網に関する情報が登録される(S101)。電源の状態(B−1)、距離(B−2)に関する情報は、情報制御部222が電力ルータ230から受信して電力網テーブル1212に登録する。
【0090】
情報制御部222は、需要者管理装置110がオプション料の形態(A−3)に定められた条件を満たすよう、需要者管理装置110の制御部112を制御する(S102)。
【0091】
情報制御部222は、需要者管理装置110がオプションの形態(A−4)に定められた条件を成就しているか否かを定常的に確認する(S103)。あるいは、電力ルータ230が上記条件の成就を検知し、情報制御部222に通知することとしても良い。
【0092】
需要者管理装置110がオプションの形態(A−4)に定められた条件を成就したとき、情報制御部222は、電力受給の必要が生じた需要者管理装置110(送電先)に対して電力供給を行う他の1以上の需要者管理装置110(送電元)と、最適な送電経路及び送電量を決定する(S104)。
【0093】
ここで、送電先と送電元とが同じ電力ルータ230に接続されている、すなわち同系統である場合、電力融通は実施の形態1と類似し、電力ルータ230を介して実施される。
【0094】
一方、本実施の形態では、送電先と送電元とが異なる電力ルータ230に接続されている、すなわち異系統である場合でも、電力融通が可能である。送電元の需要者管理装置110に接続された電力ルータ230は、送電元から受給した電力を、情報制御部222の経路制御に従い、他の所定の電力ルータ230に対して送信する。そして、送電先の需要者管理装置110に接続された電力ルータ230は、他の電力ルータ230から受給した電力を、送電先に対して供給する。
【0095】
本実施の形態の効果を、電力ルータ230を利用しない構成との比較により説明する。
【0096】
図7は、電力ルータ230を利用せずに異なる系統間で電力融通を行う構成を示すブロック図である。
図7に示す例では、異なる系統に属する需要者管理装置110間で電力融通を行おうとすれば、変電所等の基幹系設備を介する必要があり、自由かつ迅速な電力融通は困難である。また、送電元の系統1と送電先の系統2との送電距離が長くなれば、それだけ送電効率は減少する。
【0097】
一方、
図6の電力ルータ230を利用する構成によれば、情報通信により実現される電力取引と、送電網により実現される電力融通とが分離される。すなわち、取引としては系統1から系統2への送電が行われるが、実際の電力は必ずしも系統1から系統2へ直接行われるものではなく、情報制御部222が計算した最適な送電経路により、必要な電力量だけが送電される。よって、
図7の例に比較して高い送電効率が実現できる。また、基幹系を介さない自由かつ迅速な電力融通が可能である。
【0098】
よって、本実施の形態によれば、需要者管理装置110の立地を問わずに、自由かつ迅速で、高効率な電力融通を実現できる。すなわち、電力ルータを用いることで、需要者により設定された受給条件に基づく、自由度の高い電力融通をより細かに実現することができる。
【0099】
<その他の実施の形態>
なお、本発明は上述した実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは勿論である。
【0100】
例えば、
図8に示すように、各需要者管理装置110がそれぞれ電力ルータ230を備え、各電力ルータ230は、実施の形態2において示したように、情報制御部222の経路計算結果に従って他の電力ルータ230に対する送電を実行するよう構成しても良い。これにより、各需要者管理装置110間で直接的に電力融通を行うことが可能となる。
【0101】
また、上述の実施の形態では、本発明を主にハードウェアにより実現した構成として説明したが、これに限定されるものではなく、任意の処理を、CPU(Central Processing Unit)にコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。この場合、コンピュータプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non−transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R、CD−R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0102】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記によって限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0103】
この出願は、2012年10月11日に出願された日本出願特願2012−225987を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。