特許第6210072号(P6210072)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6210072
(24)【登録日】2017年9月22日
(45)【発行日】2017年10月11日
(54)【発明の名称】音響調整コンソール
(51)【国際特許分類】
   H05K 5/02 20060101AFI20171002BHJP
【FI】
   H05K5/02 S
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-123(P2015-123)
(22)【出願日】2015年1月5日
(65)【公開番号】特開2016-127159(P2016-127159A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2016年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】郷木 理史
(72)【発明者】
【氏名】草場 則次
(72)【発明者】
【氏名】永井 尚
(72)【発明者】
【氏名】西澤 和彦
【審査官】 馬場 慎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−64280(JP,A)
【文献】 実開平2−91380(JP,U)
【文献】 特開2008−227289(JP,A)
【文献】 実開昭53−12556(JP,U)
【文献】 特開2010−103679(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/00 − 5/06
G10H 1/00 − 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作面と該操作面の両側部から立設された上側側板とを有する上側ケースと、底板と該底板の両側部から立設された下側側板とを有する下側ケースとを備え、
前記下側側板には、前記上側ケースの前後方向への移動を案内する受け部が設けられ、
前記上側側板には、前記受け部に載置されるスライド部が設けられ、
前記受け部と前記スライド部とにより前記下側ケースに対して前記上側ケースが前後方向にスライド可能に支持されており、
前記上側側板及び前記下側側板には、前記上側ケースを前記下側ケースに対して最も前進させた最前位置において、前記上側ケースを前記下側ケースの前端部回りに回動可能に支持する回動機構が設けられるとともに、前記上側ケースを前記下側ケースに対して最も後退させた位置において、前記上側ケースと前記下側ケースとを固定する固定部材が設けられており、
前記回動機構は、前記上側側板又は前記下側側板のいずれか一方に設けられた回転軸と、他方に設けられた軸受とにより構成され、前記軸受は、前記上側ケースに設けた逃げ溝部の一端部に形成されており、前記上側ケースを前記最前位置まで前方にスライドすることにより、前記軸受が前記逃げ溝部に導かれて前記回転軸に係合し、前記上側ケースが前記下側ケースの前端部回りに回動可能となることを特徴とする音響調整コンソール。
【請求項2】
前記逃げ溝部には、前記上側ケースの前方向へのスライドの際に、前記上側ケースの前部を持ち上げて、前記回転軸と前記軸受の高さを合わせるための傾斜部が形成されることを特徴とする請求項1に記載の音響調整コンソール。
【請求項3】
前記上側ケースには、前記下側ケースの前面側を覆って筐体の前面部を構成する前板が設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の音響調整コンソール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミキシングコンソール等の音響調整コンソールに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、オーディオ用のミキサー装置等の音響調整機器の筐体構造は、上面に操作面を形成した上側ケースと、前板部、背板部、左側板部、右側板部及び底板部を有した下側ケースとにより構成され、上側ケースは、下側ケースの上部を覆うように装着されている。また、音響調整機器の操作面は、例えば特許文献1及び特許文献2に開示されているように、前方下がりに設けられることが多く、操作面を有する上側ケースの後方側において、下側ケースとの間に多くの回路基板等が収容される。
【0003】
この点、このような音響調整機器のメインテナンス時においては、下側ケースに対して上側ケースを分離させて開く構成とすることもできるが、回路基板が多く収納された操作面の後方側だけを開いて作業を行うことができれば効率的である。そこで、図9に示すように、上側ケース2を下側ケース3に対して回転軸4を介して接続しておき、上側ケース2を下側ケース3から分離することなく、メインテナンス時に上側ケース2を回転軸4回りに起こすことによって開いて、筐体内部の回路基板6に容易にアクセス可能とした構造が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010‐171227号公報
【特許文献2】特開2008‐205582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、このような音響調整機器は、一般に、外部からの電界や磁界のシールドのために、筐体を構成するハウジング(上側ケース及び下側ケース)が金属板によって構成される。また、上側ケースには、特許文献1に記載されるように、表示画面や操作子等が取り付けられるため、比較的重くなっており、メインテナンス後に上側ケースを回転軸回りに回転して閉じる際、その回転の最後に、上側ケースの重さにより下側ケースとの間にメインテナー(機器の保守作業者)が不用意に手を挟んでしまうおそれがある。
また、上側ケースを開いた状態でメインテナンスを行う際においても、下側ケースの両側板部の高さが高く、回路基板等にアクセスし難いことも問題となっている。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、メインテナンス時における筐体内部の回路基板へのアクセスを容易にでき、メインテナンス後に上側ケースを閉じる際のメインテナーの安全が確保された音響調整コンソールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の音響調整コンソールは、操作面と該操作面の両側部から立設された上側側板とを有する上側ケースと、底板と該底板の両側部から立設された下側側板とを有する下側ケースとを備え、前記下側側板には、前記上側ケースの前後方向への移動を案内する受け部が設けられ、前記上側側板には、前記受け部に載置されるスライド部が設けられ、前記受け部と前記スライド部とにより前記下側ケースに対して前記上側ケースが前後方向にスライド可能に支持されており、前記上側側板及び前記下側側板には、前記上側ケースを前記下側ケースに対して最も前進させた最前位置において、前記上側ケースを前記下側ケースの前端部回りに回動可能に支持する回動機構が設けられるとともに、前記上側ケースを前記下側ケースに対して最も後退させた位置において、前記上側ケースと前記下側ケースとを固定する固定部材が設けられており、前記回動機構は、前記上側側板又は前記下側側板のいずれか一方に設けられた回転軸と、他方に設けられた軸受とにより構成され、前記軸受は、前記上側ケースに設けた逃げ溝部の一端部に形成されており、前記上側ケースを前記最前位置まで前方にスライドすることにより、前記軸受が前記逃げ溝部に導かれて前記回転軸に係合し、前記上側ケースが前記下側ケースの前端部回りに回動可能となることを特徴とする。
【0008】
このように構成される本発明の音響調整コンソールにおいては、メインテナンス時に上側ケースを起こす場合、まず上側ケースを下側ケースに対して前方にスライド(前進)することで、上側ケースの後端部と下側ケースの後端部との間に隙間が形成される。そして、上側ケースを下側ケースに対して最も前進させた位置までスライドした後、上側ケースの後端部を上方に持ち上げて、上側ケースを下側ケースの前端部回りに回転させることで、上側ケースと下側ケースとを分離することなく、筐体内部を開くことができる。この上側ケースの後端部を持ち上げる際、その後端部には上側ケースと下側ケースとの間に隙間が形成されていることから、メインテナーは隙間に容易に手を入れて上側ケースの背面をつかむことが可能となっており、そのまま持ち上げることができる。
一方、メインテナンス後に上側ケースを閉じる際には、上側ケースの後端部を下方に降ろして回動させ、スライド部を受け部に載置する。この際、上側ケースの後端部を下方に降ろした状態では、下側ケースとの間に隙間が設けられる。このため、メインテナーの手が、上側ケースと下側ケースとの間に挟まれることがなく、上側ケースを閉じる際のメインテナーの安全を確保することができる。なお、この状態から上側ケースを下側ケースに対して後方にスライド(後退)することで、上側ケースと下側ケースとの間の隙間を閉じることができ、上側ケースと下側ケースとはネジ等の固定部材により固定することができる。
また、上側ケースと下側ケースには、それぞれに筐体の側部を形成する側板(上側側板、下側側板)が設けられ、側板が上側ケースの上側側板と下側ケースの下側側板とで分担して設けられている。このため、上側側板及び下側側板の高さを低く設けることができる。したがって、本発明の音響調整コンソールにおいては、メインテナンス時における筐体内部の回路基板へのアクセスを容易に行うことができる。
【0009】
動機構を構成する回転軸と軸受とは、いずれかを上側側板又は下側側板に設ける構成とすることもできる。
【0010】
本発明の音響調整コンソールにおいて、前記逃げ溝部には、前記上側ケースの前方向へのスライドの際に、前記上側ケースの前部を持ち上げて、前記回転軸と前記軸受の高さを合わせるための傾斜部が形成される。
上側ケースを前方向にスライドする途中で、回転軸と接触する傾斜部が設けられており、回転軸と軸受とが係合した状態において、上側ケースがやや上方に持ち上がるように配置される。これにより、回転時に上側ケースの前側が設置台に接触しにくくなり、上側ケースをより大きな角度まで開くことができる。
【0011】
本発明の音響調整コンソールにおいて、前記上側ケースには、前記下側ケースの前面側を覆って筐体の前面部を構成する前板が設けられる。
上側ケースを下側ケースに対して前方移動させた後に、上側ケースを下側ケースに対して回動させることとしているので、上側ケースの前板部と下側ケースとの間に隙間が設けられ、上側ケースの回動時において前板が下側ケースと接触することがない。このため、上側ケースの前板により筐体の前面部を構成することができる。この場合、前板により下側ケースの前面側が覆われているので、筐体の正面側から下側ケースの前面側を隠すことができる。したがって、上側ケースにのみ塗装を施せば良く、下側ケースの塗装を省略することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、メインテナンス時における筐体内部の回路基板へのアクセスを容易にでき、メインテナンス後に上側ケースを閉じる際のメインテナーの安全を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る音響調整コンソールのメインテナンスのために開かれた状態の正面図及び側面図である。
図2図1に示すA‐A線に沿う部分に相当する部分の断面図であり、組み立てられた状態(使用時)の音響調整コンソールの上側ケースを閉じた状態を示す。
図3図2に示す音響調整コンソールの上側ケースを前方にスライドさせた状態を説明する断面図である。
図4図2に示す音響調整コンソールの上側ケースを持ち上げて筐体内部を開いた状態を説明する断面図である。
図5図2に示す音響調整コンソールの上側ケースと下側ケースとを分離した状態を示す断面図である。
図6】スライド部及び受け部の要部拡大図である。
図7】音響調整コンソールの前端部における要部断面図であり、回転軸と軸受とを係合させた状態を示す。
図8】音響調整コンソールの前端部における要部断面図であり、上側ケースと下側ケースとを分離させた状態を示す。
図9】従来の音響調整機器の筐体構造を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る音響調整コンソールの実施形態について説明する。
本実施形態の音響調整コンソール10は、例えばデジタルミキサーとして構成されるものであり、図1の左図に示すように、筐体上面の操作面11に複数の操作子12やディスプレイ13を備え、図示は省略するが、オーディオケーブル等を着脱自在に接続し、当該オーディオケーブル等を介して他の電子音響機器に接続された状態で使用される。
【0015】
また、音響調整コンソール10は、卓面上等に設置して据え置き使用されるものであり、本明細書における音響調整コンソール10の上下方向は、据え置き使用時における上下方向とする。音響調整コンソール10の使用時においては、筐体上面の操作面11の前方側(図2の左側)にオペレータ(操作者)が位置する。したがって、以降、特に断らないときは、操作面11の前方側を音響調整コンソール10の前側、操作面11の後方側(図2の右側)を音響調整コンソール10の後側とする。
【0016】
音響調整コンソール10は、図2に示すように、上面側に操作面11を有し、下面側に脚部19を有する。そして、音響調整コンソール10の筐体は、図5に示すように、操作面11を構成する上側ケース20と、脚部19が設けられる底板31を有する下側ケース30とから構成される。なお、これら上側ケース20及び下側ケース30は、鉄、アルミニウム等の金属板を折り曲げ加工して形成される。
また、上側ケース20と下側ケース30には、回動機構40が設けられており、図1に示すように、上側ケース20と下側ケース30とを分離することなく、上側ケース20の後端部を上方に持ち上げて、上側ケース20を下側ケース30の前端部回りに回転させることにより、筐体内部を開くことができる。
【0017】
上側ケース20は、図1図5に示すように、筐体上面部を形成する操作面11と、この操作面11の両側部から立設された上側側板22と、操作面11の前端に立設されて両側の上側側板22の間を連結して設けられる前板23と、操作面11の後端に立設されて両側の上側側板22の間を連結して設けられる上側後板24とを備え、上面を構成する操作面11と、前後左右の側面を構成する上側側板22、前板23及び上側後板24とにより、下部を開口した箱状に設けられる。なお、音響調整コンソール10の筐体の前面部は、図2に示すように、上側ケース20の前板23により構成される。
【0018】
操作面11は、図1に示すように、音響調整コンソール10の後部側が高く、前部側が低く、全体として前方下がりに傾斜して形成される。また、操作面11は、入力チャンネルにおける音声信号処理のパラメータの値を調整するための複数の操作子12を備えるチャンネルストリップが複数列並んで設けられた操作盤51と、任意の情報を表示可能なディスプレイ13や各種操作子等(マスターボリューム等)を備えるディスプレイ盤52と、操作盤51とディスプレイ盤52とを接続する段差面53とを有しており、段差面53を介して操作盤51が下段、ディスプレイ盤52が上段となる段差形状に設けられている。なお、ディスプレイ盤52の一部には、図1に示すように、タブレット端末等の物品を載置可能な平坦なブランク領域54が設けられている。
【0019】
また、操作面11において、操作盤51は略水平もしくは段差面53側が高くなるように、僅かに傾斜して設けられている。一方、ディスプレイ盤52は段差面53側が低くなるように、ディスプレイ13の表面が水平面に対して傾斜するように形成されている。
換言すると、操作面11において、操作盤51の一端から起立するディスプレイ盤52の下端部に、操作盤51の上面からくぼんでディスプレイ盤52に接続する段差面53が設けられている。このため、ディスプレイ盤52上に物品を載置しようとした場合、物品は段差面53によって支えられる状態となる。
【0020】
また、上側ケース20の前板23は、操作面11の操作盤51に連続して設けられ、前板23と操作面11との境目は、直線状の山折りに設けられる。そして、前板23は、図2に示すように、下端部にかけて筐体内側に傾斜して折り曲げられた形状とされ、下側ケース30の前面側を覆って筐体の前面部を構成する。また、上側後板24は、操作面11のディスプレイ盤52に連続して設けられ、この上側後板24と操作面11との境目も、直線状の山折りに設けられる。そして、この上側後板24の先端部は、その幅方向に沿って内側に折り曲げられた重ね部24aが設けられている。この重ね部24aは、図2に示すように、上下方向に沿って垂直に設けられており、下側ケース30の下側後板34の内面に当接して配置され、この下側後板34と上側後板24の重ね部24aとがネジ止め固定されるようになっている。
【0021】
なお、各種操作子12等は、上側ケース20の背面側に配置される回路基板61上に取り付けられており、操作面11には、これら操作子12等を露出させるための複数の孔やスリットが形成される。また、図示は省略するが、操作面11の背面においては、操作盤51の裏面に取り付けられる回路基板61と、ディスプレイ盤52の裏面に取り付けられる回路基板(図示略)とが、段差面53をまたいで結線される。
【0022】
上側側板22は、操作面11の両側部から直角に立設して設けられ、上側側板22の先端側(下端側)が、板厚分だけ筐体内側に押し込まれたクランク形状に折り曲げて形成されており、上側ケース20が下側ケース30に取り付けられたときに、この押し込まれた下帯部22aと後述する下側ケース30の下側側板32とが重ね合わされて配置されるようになっている。また、下帯部22aの先端部(下端部)には、下側ケース30と当接して載置されるスライド部71が設けられるとともに、スライド部71を除いた下帯部22aの先端部に、下帯部22aの下側ケース30への挿入を案内するガイド板部72が設けられる。スライド部71は、下帯部22aの先端部を一部略水平に切欠いた形状に設けられており、ガイド板部72は、下帯部22aのその他のスライド部71よりも下方に突出している先端部を内側に折り曲げて、筐体内側にくい込むように傾斜させて形成される。なお、スライド部71は、両側の上側側板22にそれぞれ3箇所ずつ設けられている。
【0023】
一方、下側ケース30は、図1図5に示すように、脚部19を有する底板31と、この底板31の両側部から立設された下側側板32と、底板31の後端側に立設されて両側の下側側板32の間を連結して設けられる下側後板34とを備える。また、これら下側側板32及び下側後板34は、底板31から直角に立設して設けられる。
そして、下側側板32には、上側ケース20のスライド部71を載置して、上側ケース20の前後方向への移動を案内する受け部73が設けられている。受け部73は、下側側板32の一部に切込みを入れ、筐体内側に倒すことにより形成される。そして、受け部73にスライド部71を載置することで、下側ケース30に対して上側ケース20が前後方向にスライド可能(進退可能)に支持される。
【0024】
なお、本実施形態の音響調整コンソール10においては、図6に示すように、上側ケース20のスライド部71は、下側ケース30の受け部73よりも前後方向に長く設けられているが、受け部73をスライド部71と同じ長さ、ないし、スライド部71よりも長くなるように設計することもできる。
【0025】
そして、回動機構40は、図2及び図4に示すようにこれら上側ケース20と下側ケース30の前部側に設けられる。回動機構40は、図7及び図8に示すように、下側ケース30の下側側板32に設けられた回転軸41と、上側ケース20の上側側板22(下帯部22a)に設けられ、回転軸41に係合する軸受42とにより構成される。
回転軸41は、下側側板32の前端部において筐体内側に向けて立設して設けられる。この場合、回転軸41は、上側ケース20の両側に設けられた下側側板32のそれぞれに、突起部材を取り付けることにより形成されるが、回転軸41の配置及び形状は、これに限定されるものではない。例えば、両側の下側側板32を連結するシャフトを設け、このシャフトにより回転軸を構成しても良いし、下側側板32自体に加工(板金曲げ加工や穴あけ加工)を施すことにより、突起状の回転軸を一体に形成してもよい。
【0026】
軸受42は、上側側板22の前端部に設けられた逃げ溝部45の一端部に半円弧状の形態に設けられており、上側ケース20を前方にスライドさせて下側ケース30に対して最も前進させた位置、すなわち図3に示す位置において、回転軸41の側面と当接して、回転軸41と軸受42とが係合するようになっている。そして、このように回転軸41と軸受42とが係合した状態では、上側ケース20は下側ケース30の回転軸41回りに回動可能に支持され、上側ケース20を下側ケース30の前端部回りに容易に開閉することができる。
【0027】
一方、上側ケース20を後方にスライドさせて下側ケース30に対して最も後退させた位置、すなわち図2に示す位置においては、軸受42は回転軸41から離間して設けられる。
なお、逃げ溝部45には、上側ケース20を後方向へスライドした時は回転軸41と接触せず、前方向にスライドする途中で回転軸41と接触し、そのスライドを続けることで、上側ケース20が持ち上がり、軸受42が回転軸41に導かれるように、傾斜部46が設けられている。このようにして、回転軸41と軸受42とが係合した状態において、上側ケース20がやや上方に持ち上がるように配置したことにより、回転時に前板23が設置台に接触しにくくなり、より大きな角度まで開けるようになる。
【0028】
また、上側側板22には、下側側板32をネジ(本発明でいう、固定部材)でネジ止めするための取付孔25が設けられており、下側側板32には、ネジを挿通するための複数の貫通孔35が設けられている。そして、上側ケース20を下側ケース30に対して最も後退させた位置において、これら上側側板22の取付孔25と下側側板32の貫通孔35とが連通して配置される。このため、上側ケース20を後方にスライドさせて下側ケース30に対して最も後退させた位置において、上側側板22と下側側板32とをネジ止めして、固定することができる。このネジ止めされた状態が、組み立てられた状態(使用時)である。
【0029】
なお、音響調整コンソール10の筐体内部の後方側には、水平面に対して傾斜したディスプレイ盤52と底板31との間に形成される比較的高さが大きい空間が形成されており、この空間内に入出力端子を備える回路基板62,63が、上下方向に積層して取り付けられ、効率良く配置される。
【0030】
このように構成される音響調整コンソール10おいて、メインテナーが上側ケース20を起こして筐体内部のメインテナンスを行おうとするときには、まず、図3に示すように、上側ケース20を下側ケース30に対して前方にスライド(前進)する。この際、上側ケース20と下側ケース30とは、複数のネジにより固定されていることから、ネジを取り外した後に、上側ケース20を下側ケース30に対してスライドする。このように、上側ケース20を前方にスライドすることで、上側ケース20の後端部と、下側ケース30の後端部との間が徐々に開いて、図3に示すように、隙間Bが形成される。そして、上側ケース20を下側ケース30に対して最も前進させた位置までスライドすると、回転軸41に軸受42が当接して、回転軸41と軸受42とが係合する。これにより、上側ケース20が下側ケース30の回転軸41回りに回動可能に支持される。この状態では、上側ケース20の後端部と下側ケース30の後端部の間に隙間Bが形成されているので、メインテナーは、上側ケース20と下側ケース30との間の隙間Bに容易に手を入れて、上側ケース20の背面をつかむことが可能であり、そのまま上側ケース20の後端部を持ち上げて、上側ケース20と下側ケース30とを分離することなく、筐体内部を開くことができる。そして、メインテナーは、開かれた上側ケース20と下側ケース30との間にステーを入れて、その開いた状態を固定して、筐体内部のメインテナンスを行うことができる。
【0031】
一方、メインテナンスが終わって上側ケース20を閉じる際には、メインテナーは、まず、上側ケース20の後端部を下方に降ろして回動させ、上側ケース20のスライド部71を、下側ケース30の受け部73に載置する。この際、上側ケース20の後端部を降ろしてスライド部71と受け部73とを接置させた状態では、上側ケース20の後端部と下側ケース30の後端部との間に隙間Bが設けられている。このため、メインテナーの手が、上側ケース20と下側ケース30との間に挟まれることがなく、上側ケース20を閉じる際のメインテナーの安全を確保することができる。
【0032】
そして、この隙間Bが開いた状態から上側ケース20を下側ケース30に対して後方にスライド(後退)することで、回転軸41から軸受42を離脱させるとともに、上側ケース20と下側ケース30との間の隙間Bを閉じることができ、上側ケース20と下側ケース30とをネジにより固定することができる。
このように、以上説明した本実施形態の音響調整コンソール10においては、メインテナーが上側ケース20の背面に安全かつ容易に手を入れて開閉できるため、内部のメインテナンスを容易に行うことができる。
【0033】
また、この音響調整コンソール10においては、回転軸41と逃げ溝部45との間の隙間に傾斜部46が形成されており、上側ケース20を前進させるにしたがって軸受42が持ち上がり、より高い位置に設けられた回転軸41と係合する。これにより、上側ケース20の回転時に前板23が設置台に接触しにくくなり、より大きな角度まで開くことができる。
【0034】
また、この音響調整コンソール10においては、上側ケース20と下側ケース30のそれぞれに筐体の側部を形成する側板(上側側板22、下側側板32)が設けられ、筐体の側板が上側ケース20の上側側板22と下側ケース30の下側側板32とで分担して設けられている。このため、上側側板22及び下側側板32の高さが低く設けられており、メインテナンス時における筐体内部の回路基板へのアクセスを容易に行うことができる。
【0035】
さらに、上述したように、メインテナンス時において、上側ケース20を下側ケース30に対して前方移動させた後に、上側ケース20を下側ケース30に対して回動させることとしているので、図2及び図3に示すように、上側ケース20の前板23と下側ケース30の前端部との間に隙間Cが設けられ、上側ケース20の回動時において前板23が下側ケース30と接触することがない。このため、上側ケース20の前板23により筐体の前面部を構成することができる。この場合、前板23により下側ケース30の前面側が覆われているので、筐体の正面側から下側ケース30の前面側を隠すことができる。したがって、上側ケース20にのみ塗装を施せば良く、下側ケース30の塗装を省略することができる。
【0036】
なお、本発明は前記実施形態の構成のものに限定されるものではなく、細部構成においては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、前記実施形態では、下側側板32に回転軸41を設け、上側側板22に軸受42を設けた回動機構40を構成としていたが、回転軸41を上側側板22に設け、軸受42を下側側板32に設ける構成とすることもできる。
また、前記実施形態では、回動機構40を、音響調整コンソール10の前方側に設けて、後方側を開く構成としていたが、後方側に回転機構を設けて前方側を開く構成としても良いし、側方側に回転機構を設けて反対側の側方側を開く構成としても良い。さらに、前記実施形態では、音響コンソール10の設置状態において、操作面11を有する上側ケース20を上方に配置する構成で説明を行ったが、音響コンソール10は、操作面11、すなわち上側ケース20を側方に向けるように立設させてもよい。
【符号の説明】
【0037】
2…上側ケース、3…下側ケース、4…回転軸、6…回路基板、10…音響調整コンソール、11…操作面、12…操作子、13…ディスプレイ、19…脚部、20…上側ケース、22…上側側板、22a…下帯部、23…前板、24…上側後板、24a…重ね部、25…取付孔、30…下側ケース、31…底板、32…下側側板、34…下側後板、35…貫通孔、40…回動機構、41…回転軸、42…軸受、45…逃げ溝部、46…傾斜部、51…操作盤、52…ディスプレイ盤、53…段差面、54…ブランク領域、61,62,63…回路基板、71…スライド部、72…ガイド板部、73…受け部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9