(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2のサンギヤと、前記第2のキャリヤ及び前記出力軸とを断接するか、または、前記第2のリングギヤと、前記第2のキャリヤ及び前記出力軸とを断接する第4クラッチをさらに有する
ことを特徴とする請求項1に記載の自動変速機。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0015】
図1及び
図2は、本発明の第1実施形態に係る自動変速機10の構成を示す断面図及び骨子図である。この自動変速機10は、FR車等の車両に搭載される縦置き式の自動変速機であり、変速機ケース11と、車両の駆動源(図の左側)から変速機ケース11の内部に挿入された入力軸12と、変速機ケース11の内部から反駆動源側(図の右側)に突出された出力軸13とを有している。入力軸12と出力軸13とは車両前後方向に沿った同一軸心上に配置されており、入力軸12が車両前側に位置しかつ出力軸13が車両後側に位置する縦置きの姿勢で自動変速機10が配設されている。このため、以下では、駆動源側(図の左側)のことを前側ということがあり、反駆動源側(図の右側)のことを後側ということがある。
【0016】
入力軸12及び出力軸13の軸心上には、第1、第2、第3、第4プラネタリギヤセット(以下、単に「ギヤセット」という)PG1、PG2、PG3、PG4が前側(駆動源側)から順に配設されている。
【0017】
変速機ケース11内における第1ギヤセットPG1の前側には第1クラッチCL1が配設され、第1クラッチCL1の前側には第2クラッチCL2が配設され、第2クラッチCL2の前側には第3クラッチCL3が配設されている。また、第3クラッチCL3の前側には第1ブレーキBR1が配設され、第3ギヤセットPG3の径方向の外側には第2ブレーキBR2が配設されている。このように、自動変速機10の摩擦締結要素(第1〜第3クラッチCL1〜CL3及び第1、第2ブレーキBR1、BR2)は、前側(駆動源側)から、第1ブレーキBR1、第3クラッチCL3、第2クラッチCL2、第1クラッチCL1、第2ブレーキBR2の順で軸方向に配設されている。
【0018】
第1〜第4ギヤセットPG1〜PG4は、いずれも、キャリヤに支持されたピニオンがサンギヤとリングギヤに直接噛合するシングルピニオン型である。第1ギヤセットPG1は、回転要素として、第1サンギヤS1、第1リングギヤR1、及び第1キャリヤC1を有する。第2ギヤセットPG2は、回転要素として、第2サンギヤS2、第2リングギヤR2、及び第2キャリヤC2を有する。第3ギヤセットPG3は、回転要素として、第3サンギヤS3、第3リングギヤR3、及び第3キャリヤC3を有する。第4ギヤセットPG4は、回転要素として、第4サンギヤS4、第4リングギヤR4、及び第4キャリヤC4を有する。
【0019】
そして、第1ギヤセットPG1は、第1サンギヤS1が軸方向に2分割されたダブルサンギヤ型である。すなわち、第1サンギヤS1は、軸方向の前側に配置された前側第1サンギヤS1aと、後側に配置された後側第1サンギヤS1bとを有している。これら一対の第1サンギヤS1a、S1bは、同じ歯数を有し、第1キャリヤC1に支持された同じピニオンに噛合しているため、これら第1サンギヤS1a、S1bの回転数は常に等しい。すなわち、前後一対の第1サンギヤS1a、S1bは、常に同じ速度で回転し、一方の回転が停止しているときは他方の回転も停止する。
【0020】
この自動変速機10においては、第1サンギヤS1(より詳しくは後側第1サンギヤS1b)と第4サンギヤS4とが常時連結され、第1リングギヤR1と第2サンギヤS2とが常時連結され、第2キャリヤC2と第4キャリヤC4とが常時連結され、第3キャリヤC3と第4リングギヤR4とが常時連結されている。入力軸12は第1キャリヤC1に常時連結され、出力軸13は第4キャリヤC4に常時連結されている。具体的に、入力軸12は、前後一対の第1サンギヤS1a、S1bの間を通る動力伝達部材18を介して第1キャリヤC1に連結されている。後側第1サンギヤS1bと第4サンギヤS4とは、動力伝達部材15を介して互いに連結されている。第4キャリヤC4と第2キャリヤC2とは、動力伝達部材16を介して互いに連結されている。
【0021】
第1クラッチCL1は、入力軸12及び第1キャリヤC1と、第3サンギヤS3とを断接する。第2クラッチCL2は、第1リングギヤR1及び第2サンギヤS2と、第3サンギヤS3とを断接する。第3クラッチCL3は、第2リングギヤR2と第3サンギヤS3とを断接する。
【0022】
具体的に、第1クラッチCL1は、第1キャリヤC1に結合された回転可能な内側保持部材と、内側保持部材の外周面に係合されたハブ側摩擦板と、第3サンギヤS3に動力伝達部材5,8を介して結合された回転可能な外側保持部材と、外側保持部材の内周面に係合されたドラム側摩擦板と、ハブ側摩擦板とドラム側摩擦板とを圧接するために軸方向に進退駆動されるピストンP1とを有している。ピストンP1の隣接位置には、バルブボディVB(
図1)から供給される油圧が導入される油圧室F1が画成されており、この油圧室F1への油圧の給排に応じて前記ハブ側摩擦板及びドラム側摩擦板が圧接または圧接解除される。そして、当該圧接または圧接解除により、前記内側保持部材及び外側保持部材が互いに連結または分離され、これに伴って入力軸12及び第1キャリヤC1と、第3サンギヤS3とが断接される。
【0023】
第2クラッチCL2は、第3サンギヤS3に動力伝達部材5,8を介して結合された回転可能な内側保持部材と、内側保持部材の外周面に係合されたハブ側摩擦板と、第1リングギヤR1及び第2サンギヤS2に動力伝達部材7を介して結合された回転可能な外側保持部材と、外側保持部材の内周面に係合されたドラム側摩擦板と、ハブ側摩擦板とドラム側摩擦板とを圧接するために軸方向に進退駆動されるピストンP2とを有している。ピストンP2の隣接位置には、バルブボディVBから供給される油圧が導入される油圧室F2が画成されており、この油圧室F2への油圧の給排に応じて前記ハブ側摩擦板及びドラム側摩擦板が圧接または圧接解除されることにより、第1リングギヤR1及び第2サンギヤS2と、第3サンギヤS3とが断接される。
【0024】
第3クラッチCL3は、第3サンギヤS3に動力伝達部材5,8を介して結合された回転可能な内側保持部材と、内側保持部材の外周面に係合されたハブ側摩擦板と、第2リングギヤR2に動力伝達部材6を介して結合された回転可能な外側保持部材と、外側保持部材の内周面に係合されたドラム側摩擦板と、ハブ側摩擦板とドラム側摩擦板とを圧接するために軸方向に進退駆動されるピストンP3とを有している。ピストンP3の隣接位置には、バルブボディVBから供給される油圧が導入される油圧室F3が画成されており、この油圧室F3への油圧の給排に応じて前記ハブ側摩擦板及びドラム側摩擦板が圧接または圧接解除されることにより、第2リングギヤR2と第3サンギヤS3とが断接される。
【0025】
第1ブレーキBR1は、変速機ケース11と第1サンギヤS1(より詳しくは前側第1サンギヤS1a)とを断接する。第2ブレーキBR2は、変速機ケース11と第3リングギヤR3とを断接する。
【0026】
具体的に、第1ブレーキBR1は、前側第1サンギヤS1aに動力伝達部材17を介して結合された回転可能な内側保持部材と、内側保持部材の外周面に係合されたハブ側摩擦板と、変速機ケース11に結合された回転不能な外側保持部材と、外側保持部材の内周面に係合されたドラム側摩擦板と、ハブ側摩擦板とドラム側摩擦板とを圧接するために軸方向に進退駆動されるピストンP4とを有している。ピストンP4の隣接位置には、バルブボディVBから供給される油圧が導入される油圧室F4が画成されており、この油圧室F4への油圧の給排に応じて前記ハブ側摩擦板及びドラム側摩擦板が圧接または圧接解除されることにより、変速機ケース11と第1サンギヤS1とが断接される。
【0027】
第2ブレーキBR2は、第3リングギヤR3に結合された回転可能な内側保持部材と、内側保持部材の外周面に係合されたハブ側摩擦板と、変速機ケース11に結合された回転不能な外側保持部材と、外側保持部材の内周面に係合されたドラム側摩擦板と、ハブ側摩擦板とドラム側摩擦板とを圧接するために軸方向に進退駆動されるピストンP5とを有している。ピストンP5の隣接位置には、バルブボディVBから供給される油圧が導入される油圧室F5が画成されており、この油圧室F5への油圧の給排に応じて前記ハブ側摩擦板及びドラム側摩擦板が圧接または圧接解除されることにより、変速機ケース11と第3リングギヤR3とが断接される。
【0028】
変速機ケース11は、第1ブレーキBR1と第3クラッチCL3との間の軸方向位置に、変速機ケース11の内周面11bから径方向内側に延びる環状の縦壁部W1を有するとともに、縦壁部W1の内周端から後方に延びる円筒状の円筒壁部W2を有している。円筒壁部W2は、動力伝達部材8の内周面に沿って同心状に延びるように形成されている。
【0029】
動力伝達部材8の径方向外側には、軸方向に並ぶ3つのハウジングが形成されており、これら3つのハウジングに、第1クラッチCL1、第2クラッチCL2、及び第3クラッチCL3の各ピストンP1,P2,P3がそれぞれ収容されている。
【0030】
縦壁部W1、円筒壁部W2、及び動力伝達部材8には、第1クラッチCL1、第2クラッチCL2、及び第3クラッチCL3の各油圧室F1,F2,F3にそれぞれ油圧を供給するための油路が形成されている。具体的に、縦壁部W1及び円筒壁部W2には油路aが形成され、動力伝達部材8には油路b,c,dが形成されている。そして、油路a及び油路bを通じて第1クラッチCL1の油圧室F1に油圧が供給され、油路a及び油路cを通じて第2クラッチCL2の油圧室F2に油圧が供給され、油路a及び油路dを通じて第3クラッチCL3の油圧室F3に油圧が供給される。
【0031】
なお、図示しないが、円筒壁部W2の外周面と動力伝達部材8の内周面との間における油路aと油路b,c,dとの連通部は、それぞれシールリングによりシールされている。
【0032】
第1ブレーキBR1のピストンP4は、縦壁部W1の前側に形成されたハウジングに収容されている。当該ハウジングにより区画された油圧室F4には、変速機ケース11の外側(バルブボディVB)から油路e(
図2)が直接に連通している。
【0033】
第2ブレーキBR2のピストンP5は、変速機ケース11の後部の内周面11bに嵌合されたハウジングに収容されている。当該ハウジングにより区画された油圧室F5には、変速機ケース11の外側(バルブボディVB)から油路f(
図2)が直接に連通している。
【0034】
以上のような構成の第1実施形態の自動変速機10によれば、
図3の締結表に示すように、油圧室F1〜F5に対する油圧の給排制御に基づいて、5つの摩擦締結要素(CL1,CL2,CL3,BR1,BR2)の中の特定の3つの摩擦締結要素が選択的に締結されることにより、前進1〜8速及び後退速のいずれかが形成される。
【0035】
具体的には、第1クラッチCL1、第1ブレーキBR1、及び第2ブレーキBR2が締結されたときに1速が形成され、第2クラッチCL2、第1ブレーキBR1、及び第2ブレーキBR2が締結されたときに2速が形成され、第1クラッチCL1、第2クラッチCL2、及び第2ブレーキBR2が締結されたときに3速が形成され、第2クラッチCL2、第3クラッチCL3、第2ブレーキBR2が締結されたときに4速が形成され、第1クラッチCL1、第3クラッチCL3、及び第2ブレーキBR2が締結されたときに5速が形成され、第1クラッチCL1、第2クラッチCL2、及び第3クラッチCL3が締結されたときに6速が形成され、第1クラッチCL1、第3クラッチCL3、及び第1ブレーキBR1が締結されたときに7速が形成され、第2クラッチCL2、第3クラッチCL3、及び第1ブレーキBR1が締結されたときに8速が形成され、第3クラッチCL3、第1ブレーキBR1、及び第2ブレーキBR2が締結されたときに後退速が形成される。
【0036】
なお、前記第1実施形態における「第1ギヤセットPG1」、「第4ギヤセットPG4」、「第2ギヤセットPG2」、及び「第3ギヤセットPG3」は、特許請求の範囲における「第1のプラネタリギヤセット」、「第2のプラネタリギヤセット」、「第3のプラネタリギヤセット」、及び「第4のプラネタリギヤセット」にそれぞれ相当する。また、前記第1実施形態における「第1サンギヤS1、第1キャリヤC1、第1リングギヤR1」は、特許請求の範囲における「第1のサンギヤ、第1のキャリヤ、第1のリングギヤ」に相当し、前記第1実施形態における「第4サンギヤS4、第4キャリヤC4、第4リングギヤR4」は、特許請求の範囲における「第2のサンギヤ、第2のキャリヤ、第2のリングギヤ」に相当し、前記第1実施形態における「第2サンギヤS2、第2キャリヤC2、第2リングギヤR2」は、特許請求の範囲における「第3のサンギヤ、第3のキャリヤ、第3のリングギヤ」に相当し、前記第1実施形態における「第3サンギヤS3、第3キャリヤC3、第3リングギヤR3」は、特許請求の範囲における「第4のサンギヤ、第4のキャリヤ、第4のリングギヤ」に相当する。さらに、前記第1実施形態における「前側第1サンギヤS1a」及び「後側第1サンギヤS1b」は、特許請求の範囲における「第1分割サンギヤ」及び「第2分割サンギヤ」にそれぞれ相当する。これらの対応関係は、後述する他の実施形態でも同様である。
【0037】
ここで、
図1及び
図2に示す第1実施形態に係る自動変速機10と、
図4に示す比較例に係る自動変速機10’とを比較しながら、自動変速機10の利点について説明する。なお、以下の説明では、ギヤセット及び摩擦締結要素等の各構成要素に関して、第1実施形態と共通の構成要素については同一の符号を用い、配設位置もしくは構造が異なるが同様の機能を有する構成要素については同一の符号に「’」を付加している。
【0038】
図4に示す自動変速機10’は、
図12で説明した従来技術を単に適用したものである。すなわち、横置き式自動変速機を縦置き式自動変速機として使用するために、最も後側(反駆動源側)に設けられた第4ギヤセットPG4’をダブルサンギヤ型とし、この第4プラネタリギヤセットPG4’の第4キャリヤC4を、入力軸12’と同一軸心上に配置された出力軸13’に連結したものである。
【0039】
よって、
図4に示す自動変速機10’は、
図1及び
図2に示す前記自動変速機10と比べると、第1ギヤセットPG1’の代わりに第4ギヤセットPG4’がダブルサンギヤ型である点、及び、これに伴って第1ブレーキBR1’が最も後側(反駆動源側)に設けられ、第1ギヤセットPG1’ではなく第4ギヤセットPG4’のサンギヤ(より詳しくは後側第4サンギヤS4b’)に連結されている点で異なっており、その他の構成は同様である。
【0040】
図4に示すように、第4ギヤセットPG4’は、前後に分割された前側第4サンギヤS4a’と後側第4サンギヤS4b’とを有しており、第1ブレーキBR1’は、その内側保持部材が動力伝達部材17’を介して後側第4サンギヤS4b’に結合されている。また、出力軸13’は、前側第4サンギヤS4a’の内側(中心部)を貫通するとともに、一対の第4サンギヤS4a’、S4b’間を通る動力伝達部材18’を介して第4キャリヤC4に結合されている。
【0041】
このように、
図4に示す自動変速機10’の場合、第4ギヤセットPG4’の後側第4サンギヤS4b’の内側を出力軸13’が貫通することになるが、出力軸13’は入力トルクが最大減速比相当分だけ増大されたトルクを伝達する必要上、入力軸12’に比べて径を大きくする必要がある。このため、後側第4サンギヤS4b’の径も大きくなり、これに伴って、第4ギヤセットPG4’の全体の径が大きくなる。
【0042】
これに対して、ダブルサンギヤ型の第1ギヤセットPG1を用いる前記第1実施形態の自動変速機10では、
図1及び
図2に示すように、第1ギヤセットPG1における前側第1サンギヤS1aの内側(中心部)を入力軸12が貫通し、出力軸13は第4ギヤセットPG4の第4キャリヤC4に常時連結されるから、大きなトルクを伝達するために径が大きくされた出力軸13が分割サンギヤの中心部を通ることによるプラネタリギヤセットの径の増大が回避される。したがって、
図1及び
図2に示すように、第4ギヤセットPG4を取り囲む部分の変速機ケース11の径を縮小して縮径部11xを形成することができ、
図4の比較例の構成を採用した場合(この場合の変速機ケースを
図2において二点鎖線Lで示す)と比較して、自動変速機10の出力側の端部の径方向寸法を縮小することができ、運転席及び助手席の居住性の向上を実現することができる。
【0043】
また、第1実施形態では、入力軸12が分割サンギヤS1aの内側を貫通することになるが、入力軸12は出力軸13に比べて伝達トルクが小さく、小径とすることができるから、第1ギヤセットPG1の径の増大は少なく、当該自動変速機10の入力側における径の増大も抑制することができる。
【0044】
図5及び
図6は、本発明の第2実施形態に係る自動変速機20の構成を示す断面図及び骨子図である。なお、以下の説明では、ギヤセット及び摩擦締結要素等に関する構成については、第1実施形態で用いた符号と同一の符号を用いる。このことは、後述する第3〜第5実施形態でも同様である。
【0045】
第2実施形態の自動変速機20は、前記第1実施形態と同じく縦置き式の自動変速機であり、変速機ケース21と、車両前側(駆動源)から変速機ケース21の内部に挿入された入力軸22と、変速機ケース21の内部から車両後側(反駆動源側)に突出された出力軸23とを有している。入力軸22及び出力軸23は同一軸心上に配置され、その軸心上には、第1、第2、第3、第4ギヤセットPG1、PG2、PG3、PG4が前側から順に配設されている。
【0046】
変速機ケース21内における第1ギヤセットPG1の前側には第1クラッチCL1が配設され、第1ギヤセットPG1の後側には第2クラッチCL2が配設され、第2クラッチCL2と第2ギヤセットPG2との間には第3クラッチCL3が配設されている。また、第1クラッチCL3の前側には第1ブレーキBR1が配設され、第3ギヤセットPG3の径方向の外側には第2ブレーキBR2が配設されている。このように、自動変速機10の摩擦締結要素(第1〜第3クラッチCL1〜CL3及び第1、第2ブレーキBR1、BR2)は、前側(駆動源側)から、第1ブレーキBR1、第1クラッチCL1、第2クラッチCL2、第3クラッチCL3、第2ブレーキBR2の順で軸方向に配設されている。
【0047】
第1〜第4ギヤセットPG1〜PG4は、前記第1実施形態の場合と同様のシングルピニオン型のプラネタリギヤセットである。第1ギヤセットPG1は、第1サンギヤS1、第1リングギヤR1、及び第1キャリヤC1を有し、第2ギヤセットPG2は、第2サンギヤS2、第2リングギヤR2、及び第2キャリヤC2を有し、第3ギヤセットPG3は、第3サンギヤS3、第3リングギヤR3、及び第3キャリヤC3を有し、第4ギヤセットPG4は、第4サンギヤS4、第4リングギヤR4、及び第4キャリヤC4を有する。
【0048】
第1ギヤセットPG1は、前記第1実施形態の場合と同様のダブルサンギヤ型とされている。すなわち、第1サンギヤS1は、軸方向に分割された前側第1サンギヤS1aと後側第1サンギヤS1bとを有している。
【0049】
この自動変速機20においては、第1サンギヤS1(より詳しくは後側第1サンギヤS1b)と第4サンギヤS4とが常時連結され、第1リングギヤR1と第2サンギヤS2とが常時連結され、第2キャリヤC2と第4キャリヤC4とが常時連結され、第3キャリヤC3と第4リングギヤR4とが常時連結されている。入力軸22は第1キャリヤC1に常時連結され、出力軸13は第4キャリヤC4に常時連結されている。具体的に、入力軸12は、前後一対の第1サンギヤS1a、S1bの間を通る動力伝達部材28を介して第1キャリヤC1に連結されている。後側第1サンギヤS1bと第4サンギヤS4とは、動力伝達部材25を介して互いに連結されている。第4キャリヤC4と第2キャリヤC2とは、動力伝達部材26を介して互いに連結されている。
【0050】
第1クラッチCL1は、入力軸22及び第1キャリヤC1と、第3サンギヤS3とを断接する。第2クラッチCL2は、第1リングギヤR1及び第2サンギヤS2と、第3サンギヤS3とを断接する。第3クラッチCL3は、第2リングギヤR2と第3サンギヤS3とを断接する。
【0051】
具体的に、第1クラッチCL1は、第1キャリヤC1に結合された回転可能な内側保持部材と、内側保持部材の外周面に係合されたハブ側摩擦板と、第3サンギヤS3に動力伝達部材31,32,33,34を介して結合された回転可能な外側保持部材と、外側保持部材の内周面に係合されたドラム側摩擦板と、ハブ側摩擦板とドラム側摩擦板とを圧接するために軸方向に進退駆動されるピストンP1とを有している。ピストンP1の隣接位置には、バルブボディVB(
図5)から供給される油圧が導入される油圧室F1が画成されており、この油圧室F1への油圧の給排に応じて前記ハブ側摩擦板及びドラム側摩擦板が圧接または圧接解除されることにより、入力軸22及び第1キャリヤC1と、第3サンギヤS3とが断接される。
【0052】
第2クラッチCL2は、第1リングギヤR1及び第2サンギヤS2に動力伝達部材35を介して結合された回転可能な内側保持部材と、内側保持部材の外周面に係合されたハブ側摩擦板と、第3サンギヤS3に動力伝達部材32,33,34を介して結合された回転可能な外側保持部材と、外側保持部材の内周面に係合されたドラム側摩擦板と、ハブ側摩擦板とドラム側摩擦板とを圧接するために軸方向に進退駆動されるピストンP2とを有している。ピストンP2の隣接位置には、バルブボディVBから供給される油圧が導入される油圧室F2が画成されており、この油圧室F2への油圧の給排に応じて前記ハブ側摩擦板及びドラム側摩擦板が圧接または圧接解除されることにより、第1リングギヤR1及び第2サンギヤS2と、第3サンギヤS3とが断接される。
【0053】
第3クラッチCL3は、第2リングギヤR2に結合された回転可能な内側保持部材と、内側保持部材の外周面に係合されたハブ側摩擦板と、第3サンギヤS3に動力伝達部材34を介して結合された回転可能な外側保持部材と、外側保持部材の内周面に係合されたドラム側摩擦板と、ハブ側摩擦板とドラム側摩擦板とを圧接するために軸方向に進退駆動されるピストンP3とを有している。ピストンP3の隣接位置には、バルブボディVBから供給される油圧が導入される油圧室F3が画成されており、この油圧室F3への油圧の給排に応じて前記ハブ側摩擦板及びドラム側摩擦板が圧接または圧接解除されることにより、第2リングギヤR2と第3サンギヤS3とが断接される。
【0054】
第1ブレーキBR1は、変速機ケース21と第1サンギヤS1(より詳しくは前側第1サンギヤS1a)とを断接する。第2ブレーキBR2は、変速機ケース21と第3リングギヤR3とを断接する。
【0055】
具体的に、第1ブレーキBR1は、前側第1サンギヤS1aに動力伝達部材37を介して結合された回転可能な内側保持部材と、内側保持部材の外周面に係合されたハブ側摩擦板と、変速機ケース21に結合された回転不能な外側保持部材と、外側保持部材の内周面に係合されたドラム側摩擦板と、ハブ側摩擦板とドラム側摩擦板とを圧接するために軸方向に進退駆動されるピストンP4とを有している。ピストンP4の隣接位置には、バルブボディVBから供給される油圧が導入される油圧室F4が画成されており、この油圧室F4への油圧の給排に応じて前記ハブ側摩擦板及びドラム側摩擦板が圧接または圧接解除されることにより、変速機ケース21と第1サンギヤS1とが断接される。
【0056】
第2ブレーキBR2は、変速機ケース21に結合された回転不能な内側保持部材と、内側保持部材の外周面に係合されたハブ側摩擦板と、第3リングギヤR3に結合された回転可能な外側保持部材と、外側保持部材の内周面に係合されたドラム側摩擦板と、ハブ側摩擦板とドラム側摩擦板とを圧接するために軸方向に進退駆動されるピストンP5とを有している。ピストンP5の隣接位置には、バルブボディVBから供給される油圧が導入される油圧室F5が画成されており、この油圧室F5への油圧の給排に応じて前記ハブ側摩擦板及びドラム側摩擦板が圧接または圧接解除されることにより、変速機ケース21と第3リングギヤR3とが断接される。
【0057】
変速機ケース21は、第1ブレーキBR1と第1クラッチCL1との間の軸方向位置に、変速機ケース21の内周面21bから径方向内側に延びる断面T字状の前側縦壁部W3を有している。前側縦壁部W3の内周端は、動力伝達部材31の外周面に沿って前後方向に延びるように形成されている。
【0058】
また、変速機ケース21は、第2クラッチCL2と第3クラッチCL3との間の軸方向位置に、変速機ケース21の内周面21bから径方向内側に延びる断面T字状の中間縦壁部W4を有している。中間縦壁部W4の内周端は、動力伝達部材33により径方向の内外から囲まれるような位置において、動力伝達部材33に沿って前後方向に延びるように形成されている。
【0059】
第1クラッチCL1のピストンP1は、動力伝達部材31,32と一体形成されたハウジングに収容されている。前側縦壁部W3及び動力伝達部材31には、当該ハウジングにより区画された油圧室F1に油圧を供給するための油路が形成されている。具体的に、前側縦壁部W3には油路gが形成され、動力伝達部材31には油路hが形成されている。そして、油路g及び油路hを通じて第1クラッチCL1の油圧室F1に油圧が供給される。
【0060】
第2クラッチCL2のピストンP2は、動力伝達部材32,33と一体形成されたハウジングに収容されている。同様に、第3クラッチCL3のピストンP3は、動力伝達部材33,34と一体形成されたハウジングに収容されている。中間縦壁部W4及び動力伝達部材33には、これらのハウジングにより区画された油圧室F2,F3に油圧を供給するための油路が形成されている。具体的に、中間縦壁部W4には油路iが形成され、動力伝達部材33には油路j,kが形成されている。そして、油路i及び油路jを通じて第2クラッチCL2の油圧室F2に油圧が供給され、油路i及び油路kを通じて第3クラッチCL3の油圧室F3に油圧が供給される。
【0061】
第1ブレーキBR1のピストンP4は、前側縦壁部W3の前側に形成されたハウジングに収容されている。当該ハウジングにより区画された油圧室F4には、変速機ケース21の外側(バルブボディVB)から油路e(
図6)が直接に連通している。
【0062】
第2ブレーキBR2のピストンP5は、変速機ケース21の後端部の内側に後方から挿入・固定されたハウジングに収容されている。当該ハウジングにより区画された油圧室F5には、変速機ケース21の外側(バルブボディVB)から油路fが直接に連通している。
【0063】
以上のような構成の第2実施形態の自動変速機20によれば、前記第1実施形態の場合と同じく
図3の締結表に示すように、油圧室F1〜F5に対する油圧の給排制御に基づいて、5つの摩擦締結要素(CL1,CL2,CL3,BR1,BR2)の中の特定の3つの摩擦締結要素が選択的に締結されることにより、前進1〜8速及び後退速のいずれかが形成される。
【0064】
そして、第2実施形態に係る自動変速機20によれば、前記第1実施形態に係る自動変速機10と同様に、ダブルサンギヤ型とされた第1ギヤセットPG1の前側第1サンギヤS1aの内側(中心部)を入力軸22が貫通し、出力軸23は第4ギヤセットPG4に常時連結されるから、大きなトルクを伝達するために径が大きくされた出力軸23が分割サンギヤの内側を通ることによるプラネタリギヤセットの径の増大が回避される。したがって、自動変速機20の出力側(後側)の端部の径方向寸法を縮小することができ、運転席及び助手席の居住性の向上を実現することができる。なお、第2実施形態では、第4ギヤセットPG4の径方向外側に第2ブレーキBR2のハウジングを保持するための部品Xが配置されているため、前記第1実施形態の場合と異なり、第4ギヤセットPG4を取り囲む部分の変速機ケース21の径を縮小することができない。しかしながら、仮に第4ギヤセットPG4をダブルサンギヤ型とした場合には、変速機ケース21の後部の径がさらに拡大するので(その場合の変速機ケースを
図6において二点鎖線Lで示す)、その場合に比べれば自動変速機のコンパクト化を図ることができる。
【0065】
図7は、本発明の第3実施形態に係る自動変速機40の構成を示す骨子図である。この自動変速機40は、前記第1実施形態と同じく縦置き式の自動変速機であり、変速機ケース41と、車両前側(駆動源)から変速機ケース41の内部に挿入された入力軸42と、変速機ケース41の内部から車両後側(反駆動源側)に突出された出力軸43とを有している。入力軸42及び出力軸43は同一軸心上に配置され、その軸心上には、第1、第2、第3、第4ギヤセットPG1、PG2、PG3、PG4が前側から順に配設されている。
【0066】
変速機ケース41内における第1ギヤセットPG1の前側には第1クラッチCL1が配設され、第1クラッチCL1及び第1ギヤセットPG1の径方向の外側には第2クラッチCL2が配設され、第2ギヤセットPG2の径方向の外側には第3クラッチCL3が配設されている。また、第1クラッチCL1及び第2クラッチCL2の前側には第1ブレーキBR1が配設され、第3ギヤセットPG3の径方向の外側には第2ブレーキBR2が配設されている。このように、自動変速機40の摩擦締結要素(第1〜第3クラッチCL1〜CL3及び第1、第2ブレーキBR1、BR2)は、前側(駆動源側)から、第1ブレーキBR1、第1クラッチCL1(または第2クラッチCL2)、第3クラッチCL3、第2ブレーキBR2の順で軸方向に配設されている。
【0067】
第1〜第4ギヤセットPG1〜PG4は、前記第1実施形態の場合と同様のシングルピニオン型のプラネタリギヤセットである。第1ギヤセットPG1は、第1サンギヤS1、第1リングギヤR1、及び第1キャリヤC1を有し、第2ギヤセットPG2は、第2サンギヤS2、第2リングギヤR2、及び第2キャリヤC2を有し、第3ギヤセットPG3は、第3サンギヤS3、第3リングギヤR3、及び第3キャリヤC3を有し、第4ギヤセットPG4は、第4サンギヤS4、第4リングギヤR4、及び第4キャリヤC4を有する。
【0068】
第1ギヤセットPG1は、前記第1実施形態の場合と同様のダブルサンギヤ型とされている。すなわち、第1サンギヤS1は、軸方向に分割された前側第1サンギヤS1aと後側第1サンギヤS1bとを有している。
【0069】
この自動変速機40においては、第1サンギヤS1(より詳しくは後側第1サンギヤS1b)と第4サンギヤS4とが常時連結され、第1リングギヤR1と第2サンギヤS2とが常時連結され、第2キャリヤC2と第4キャリヤC4とが常時連結され、第3キャリヤC3と第4リングギヤR4とが常時連結されている。入力軸42は第1キャリヤC1に常時連結され、出力軸13は第4キャリヤC4に常時連結されている。具体的に、入力軸42は、前後一対の第1サンギヤS1a、S1b間を通る動力伝達部材48を介して第1キャリヤC1に連結されている。後側第1サンギヤS1bと第4サンギヤS4とは、動力伝達部材45を介して互いに連結されている。第4キャリヤC4と第2キャリヤC2とは、動力伝達部材46を介して結合されている。
【0070】
第1クラッチCL1は、入力軸42及び第1キャリヤC1と、第3サンギヤS3とを断接する。第2クラッチCL2は、第1リングギヤR1及び第2サンギヤS2と、第3サンギヤS3とを断接する。第3クラッチCL3は、第2リングギヤR2と第3サンギヤS3とを断接する。
【0071】
具体的に、第1クラッチCL1は、第3サンギヤS3に動力伝達部材51,52,53を介して結合された回転可能な内側保持部材と、内側保持部材の外周面に係合されたハブ側摩擦板と、第1キャリヤC1に結合された回転可能な外側保持部材と、外側保持部材の内周面に係合されたドラム側摩擦板と、ハブ側摩擦板とドラム側摩擦板とを圧接するために軸方向に進退駆動されるピストンP1とを有している。ピストンP1の隣接位置には、図外のバルブボディから供給される油圧が導入される油圧室F1が画成されており、この油圧室F1への油圧の給排に応じて前記ハブ側摩擦板及びドラム側摩擦板が圧接または圧接解除されることにより、入力軸42及び第1キャリヤC1と、第3サンギヤS3とが断接される。
【0072】
第2クラッチCL2は、第1リングギヤR1及び第2サンギヤS2に動力伝達部材55を介して結合された回転可能な内側保持部材と、内側保持部材の外周面に係合されたハブ側摩擦板と、第3サンギヤS3に動力伝達部材52,53を介して結合された回転可能な外側保持部材と、外側保持部材の内周面に係合されたドラム側摩擦板と、ハブ側摩擦板とドラム側摩擦板とを圧接するために軸方向に進退駆動されるピストンP2とを有している。ピストンP2の隣接位置には、前記バルブボディから供給される油圧が導入される油圧室F2が画成されており、この油圧室F2への油圧の給排に応じて前記ハブ側摩擦板及びドラム側摩擦板が圧接または圧接解除されることにより、第1リングギヤR1及び第2サンギヤS2と、第3サンギヤS3とが断接される。
【0073】
第3クラッチCL3は、第2リングギヤR2に結合された回転可能な内側保持部材と、内側保持部材の外周面に係合されたハブ側摩擦板と、第3サンギヤS3に動力伝達部材53を介して結合された回転可能な外側保持部材と、外側保持部材の内周面に係合されたドラム側摩擦板と、ハブ側摩擦板とドラム側摩擦板とを圧接するために軸方向に進退駆動されるピストンP3とを有している。ピストンP3の隣接位置には、前記バルブボディから供給される油圧が導入される油圧室F3が画成されており、この油圧室F3への油圧の給排に応じて前記ハブ側摩擦板及びドラム側摩擦板が圧接または圧接解除されることにより、第2リングギヤR2と第3サンギヤS3とが断接される。
【0074】
このように、第1〜第3クラッチCL1〜CL3は、いずれも、摩擦板を介して結合または分離される内外一対の保持部材の一方が、共通の動力伝達部材52を介して第3サンギヤS3に結合されている。このため、第3実施形態では、複数のクラッチの外側保持部材が共通の動力伝達部材52に一体に形成されている。
【0075】
また、第3実施形態において、第1〜第3クラッチCL1〜CL3の内側保持部材が結合される相手は、いずれも、当該クラッチCL1〜CL3よりも径方向内側に位置するギヤセット(第1ギヤセットPG1または第2ギヤセットPG2)の回転要素であり、後側第1サンギヤS1bと第4サンギヤS4とを連結する動力伝達部材45と、第2キャリヤC2と第4キャリヤC4とを連結する動力伝達部材46とは、いずれも、第3サンギヤS3と動力伝達部材52とを連結する動力伝達部材53の内側を通過するように配設されている。
【0076】
したがって、第3実施形態では、図示のように、動力伝達部材52と変速機ケース41の内周面41bとの間に他の動力伝達部材等を設ける必要がなく、動力伝達部材52を変速機ケース41の内周面41bに直接対面するように配設することができる。つまり、第3実施形態では、動力伝達部材52以外に、第1〜第3クラッチCL1〜CL3を取り囲む部品(例えばプラネタリギヤセットや他の動力伝達部材等)が存在しない。このため、第1〜第3クラッチCL1〜CL3を変速機ケース41内に容易に収納することができる。
【0077】
第1ブレーキBR1は、前記変速機ケース41と第1サンギヤS1(より詳しくは前側第1サンギヤS1a)とを断接する。第2ブレーキBR2は、変速機ケース41と第3リングギヤR3とを断接する。
【0078】
具体的に、第1ブレーキBR1は、前側第1サンギヤS1aに動力伝達部材47を介して結合された回転可能な内側保持部材と、内側保持部材の外周面に係合されたハブ側摩擦板と、変速機ケース41に結合された回転不能な外側保持部材と、外側保持部材の内周面に係合されたドラム側摩擦板と、ハブ側摩擦板とドラム側摩擦板とを圧接するために軸方向に進退駆動されるピストンP4とを有している。ピストンP4の隣接位置には、前記バルブボディから供給される油圧が導入される油圧室F4が画成されており、この油圧室F4への油圧の給排に応じて前記ハブ側摩擦板及びドラム側摩擦板が圧接または圧接解除されることにより、変速機ケース41と第1サンギヤS1とが断接される。
【0079】
第2ブレーキBR2は、第3リングギヤR3に結合された回転可能な内側保持部材と、内側保持部材の外周面に係合されたハブ側摩擦板と、変速機ケース41に結合された回転不能な外側保持部材と、外側保持部材の内周面に係合されたドラム側摩擦板と、ハブ側摩擦板とドラム側摩擦板とを圧接するために軸方向に進退駆動されるピストンP5とを有している。ピストンP5の隣接位置には、前記バルブボディから供給される油圧が導入される油圧室F5が画成されており、この油圧室F5への油圧の給排に応じて前記ハブ側摩擦板及びドラム側摩擦板が圧接または圧接解除されることにより、変速機ケース41と第3リングギヤR3とが断接される。
【0080】
変速機ケース41は、第1ブレーキBR1と第1、第2クラッチCL1、CL2との間の軸方向位置に、変速機ケース41の内周面41bから径方向内側に延びる環状の前側縦壁部W5を有するとともに、前側縦壁部W5の内周端から後方に延びる円筒状の前側円筒壁部W6を有している。
【0081】
また、変速機ケース41は、第3クラッチCL3と第2ブレーキBR2との間の軸方向位置に、変速機ケース41の内周面41bから径方向内側に延びる環状の中間縦壁部W7を有するとともに、中間縦壁部W7の内周端から前方に延びる円筒状の中間円筒壁部W8を有している。
【0082】
第1クラッチCL1のピストンP1は、前側円筒壁部W6の径方向外側において前側縦壁部W5から後方に延びるように形成されたハウジングに収容されている。前側縦壁部W5及び前側円筒壁部W6には、当該ハウジングにより区画された油圧室F1に油圧を供給するための油路mが形成されている。
【0083】
第2クラッチCL2のピストンP2は、第1クラッチCL1の径方向外側において前側縦壁部W5から後方に延びるように形成されたハウジングに収容されている。動力伝達部材51には、当該ハウジングにより区画された油圧室F2に連通する油路nが形成されている。すなわち、前側縦壁部W5及び前側円筒壁部W6に形成された前記油路mと、動力伝達部材51に形成された油路nとを通じて、油圧室F2に油圧が供給されるようになっている。第1クラッチCL1のハウジングと第2クラッチCL2のハウジングとは、内外2重の位置関係で一体に形成されている。
【0084】
第3クラッチCL3のピストンP3は、中間円筒壁部W8の径方向外側において中間縦壁部W7から前方に延びるように形成されたハウジングに収容されている。中間縦壁部W7及び中間円筒壁部W8には、当該ハウジングにより区画された油圧室F3に油圧を供給するための油路pが形成されている。
【0085】
第1ブレーキBR1のピストンP4は、前側縦壁部W5から前方に延びるように形成されたハウジングに収容されている。当該ハウジングにより区画された油圧室F4には、変速機ケース41の外側から油路eが直接に連通している。
【0086】
第2ブレーキBR2のピストンP5は、中間縦壁部W7から後方に延びるように形成されたハウジングに収容されている。当該ハウジングにより区画された油圧室F5には、変速機ケース41の外側から油路fが直接に連通している。
【0087】
なお、図示しないが、円筒壁部W6,W8の外周面と第1、第3クラッチCL1、CL3のハウジングの内周面との間における油路m,n,pの連通部は、それぞれシールリングによりシールされている。
【0088】
以上のような構成の第3実施形態の自動変速機40によれば、前記第1実施形態の場合と同じく
図3の締結表に示すように、油圧室F1〜F5に対する油圧の給排制御に基づいて、5つの摩擦締結要素(CL1,CL2,CL3,BR1,BR2)の中の特定の3つの摩擦締結要素が選択的に締結されることにより、前進1〜8速及び後退速のいずれかが形成される。
【0089】
そして、第3実施形態に係る自動変速機40によれば、前記第1実施形態に係る自動変速機10と同様に、ダブルサンギヤ型とされた第1ギヤセットPG1の前側第1サンギヤS1aの内側(中心部)を入力軸42が貫通し、出力軸43は第4ギヤセットPG4に常時連結されるから、大きなトルクを伝達するために径が大きくされた出力軸43が分割サンギヤの内側を通ることによるプラネタリギヤセットの径の増大が回避される。したがって、第4ギヤセットPG4を取り囲む部分の変速機ケース41の径を縮小して縮径部41xを形成することができ、仮に第4ギヤセットPG4をダブルサンギヤ型とした場合(その場合の変速機ケースを
図7において二点鎖線Lで示す)と比較して、自動変速機40の出力側(後側)の端部の径方向寸法を縮小することができる。
【0090】
次に、
図8及び
図9を用いて、第4、第5実施形態に係る自動変速機60,70について説明する。
【0091】
第4実施形態に係る自動変速機60(
図8)は、前記第3実施形態と同様に、同一軸心上に配置された入力軸62及び出力軸63と、入力軸62及び出力軸63の軸心上に前側(駆動源側)から順に配置された第1、第2、第3、第4ギヤセットPG1、PG2、PG3、PG4とを有している。同様に、第5実施形態に係る自動変速機70(
図9)は、同一軸心上に配置された入力軸72及び出力軸73と、入力軸72及び出力軸73の軸心上に前側(駆動源側)から順に配置された第1、第2、第3、第4ギヤセットPG1、PG2、PG3、PG4とを有している。
【0092】
第4、第5実施形態に係る自動変速機60,70の場合、摩擦締結要素として、前記第1実施形態の自動変速機10に対して、さらに第4クラッチCL4を追加で有している。第4クラッチCL4は、変速機ケース(61又は71)内における第4ギヤセットPG4の後側の近傍、すなわち、軸方向の最も反駆動源側に配置されている。なお、自動変速機60,70の第1〜第3クラッチCL1〜CL3と、第1、第2ブレーキBR1、BR2については、各回転要素の連結関係や、摩擦締結要素による回転要素間或いは変速機ケースと回転要素間の断接関係等は、前記第3実施形態に係る自動変速機10と同じである。
【0093】
ここで、
図8に示す第4実施形態の自動変速機60の場合、第4クラッチCL4は、第4リングギヤR4と、第4キャリヤC4及び出力軸63とを断接する。すなわち、第4クラッチCL4は、出力軸63に結合された回転可能な内側保持部材と、内側保持部材の外周面に係合されたハブ側摩擦板と、第4リングギヤR4に結合された回転可能な外側保持部材と、外側保持部材の内周面に係合されたドラム側摩擦板と、ハブ側摩擦板とドラム側摩擦板とを圧接するために軸方向に進退駆動されるピストンP6とを有している。
【0094】
また、第4実施形態の自動変速機60において、変速機ケース61は、その後端部の内周面61bから径方向内側に延びる環状の後側縦壁部W9と、後側縦壁部W9の内周端から前方に延びる円筒状の後側円筒壁部W10とを有している。ピストンP6は、後側円筒壁部W10の径方向外側において後側縦壁部W9から後方に延びるように形成されたハウジングに収容されている。後側縦壁部W9及び後側円筒壁部W10には、当該ハウジングにより区画された油圧室F6に油圧を供給するための油路qが形成されている。
【0095】
一方、
図9に示す第5実施形態の自動変速機70の場合、第4クラッチCL4は、第4サンギヤS4と、第4キャリヤC4及び出力軸73とを断接する。すなわち、第4クラッチCL4は、後側第1サンギヤS1bと第4サンギヤS4とを連結する動力伝達部材75に結合された回転可能な内側保持部材と、内側保持部材の外周面に係合されたハブ側摩擦板と、第4キャリヤC4及び出力軸73に結合された回転可能な外側保持部材と、外側保持部材の内周面に係合されたドラム側摩擦板と、ハブ側摩擦板とドラム側摩擦板とを圧接するために軸方向に進退駆動されるピストンP6とを有している。
【0096】
また、第5実施形態の自動変速機70において、変速機ケース71は、その後端部の内周面71bから径方向内側に延びる環状の後側縦壁部W11と、後側縦壁部W11の内周端から前方に延びる円筒状の後側円筒壁部W12とを有している。ピストンP6は、後側円筒壁部W12の径方向外側において後側縦壁部W11から後方に延びるように形成されたハウジングに収容されている。後側縦壁部W11及び後側円筒壁部W12には、当該ハウジングにより区画された油圧室F6に油圧を供給するための油路rが形成されている。
【0097】
以上のような構成の第4、第5実施形態に係る自動変速機60,70によれば、
図10の締結表に示すように、前記油圧室P1〜P6に対する油圧の給排制御に基づいて、6つの摩擦締結要素(CL1,CL2,CL3,CL4,BR1,BR2)の中の特定の3つの摩擦締結要素が選択的に締結されることにより、前進の1〜9速及び後退速のいずれかが形成される。
【0098】
具体的には、第1クラッチCL1、第1ブレーキBR1、及び第2ブレーキBR2が締結されたときに1速が形成され、第2クラッチCL2、第1ブレーキBR1、及び第2ブレーキBR2が締結されたときに2速が形成され、第2クラッチCL2、第4クラッチCL4、及び第2ブレーキBR2が締結されたときに3速が形成され、第1クラッチCL1、第2クラッチCL2、及び第2ブレーキBR2が締結されたときに4速が形成され、第2クラッチCL2、第3クラッチCL3、及び第2ブレーキBR2が締結されたときに5速が形成され、第1クラッチCL1、第3クラッチCL3、及び第2ブレーキBR2が締結されたときに6速が形成され、第1クラッチCL1、第2クラッチCL2、及び第3クラッチCL3が締結されたときに7速が形成され、第1クラッチCL1、第3クラッチCL3、及び第1ブレーキBR1が締結されたときに8速が形成され、第2クラッチCL2、第3クラッチCL3、及び第1ブレーキBR1が締結されたときに9速が形成され、第3クラッチCL3、第1ブレーキBR1、及び第2ブレーキBR2が締結されたときに後退速が形成される。
【0099】
これら第4、第5実施形態に係る自動変速機60,70によれば、前記第3実施形態に係る自動変速機10と同様に、ダブルサンギヤ型とされた第1ギヤセットPG1の前側第1サンギヤS1aの内側(中心部)を入力軸62,72が貫通し、出力軸63、73は第4ギヤセットPG4に常時連結されるから、大きなトルクを伝達するために径が大きくされた出力軸63、73が分割サンギヤの内側を通ることによるプラネタリギヤセットの径の増大が回避される。したがって、第4ギヤセットPG4を取り囲む部分の変速機ケース41の径を縮小して縮径部61x,71xを形成することができ、仮に第4ギヤセットPG4をダブルサンギヤ型とした場合(その場合の変速機ケースを
図8、
図9において二点鎖線Lで示す)と比較して、自動変速機60,70の出力側の端部の径方向寸法を縮小することができる。
【0100】
さらに、第4、第5実施形態によれば、第4クラッチCL4を追加することにより、自動変速機60,70のさらなる多段化が可能となり、
図10に示す締結表に基づいて摩擦締結要素を締結することで、各変速段のギヤ比が適切に設定された前進9段、後退1段の変速パターンが実現される。
【0101】
最後に、前記各実施形態の中で開示された特徴的な構成及びそれに基づく作用効果についてまとめて説明する。
【0102】
前記実施形態の自動変速機は、駆動源に連結された入力軸と、該入力軸の反駆動源側において該入力軸と同一軸心上に配置された出力軸と、第1のサンギヤ、第1のキャリヤ、及び第1のリングギヤを有する第1のプラネタリギヤセットと、該第1のプラネタリギヤセットの反駆動源側に配置され、第2のサンギヤ、第2のキャリヤ、及び第2のリングギヤを有する第2のプラネタリギヤセットと、前記第1のプラネタリギヤセットの駆動源側に配置された第1ブレーキと、前記第1、第2のプラネタリギヤセットと第1ブレーキとを内部に収容する変速機ケースとを備える。前記第1のサンギヤは、駆動源側の第1分割サンギヤと反駆動源側の第2分割サンギヤとを有し、前記第1分割サンギヤは、前記第1ブレーキに連結されるとともに、該第1ブレーキの締結時に前記変速機ケースに固定され、前記第2分割サンギヤは、前記第2のサンギヤに常時連結され、前記入力軸は、前記第1分割サンギヤの内側と、前記第1、第2分割サンギヤの間とを通って前記第1のキャリヤに常時連結され、前記出力軸は、前記第2のキャリヤに常時連結される。
【0103】
この構成によれば、第1のプラネタリギヤセットにおける第1分割サンギヤの内側を入力軸が貫通し、出力軸は第2のプラネタリギヤセットに常時連結されるから、大きなトルクを伝達するために径が大きくされた出力軸が分割サンギヤの内側を通ることによるプラネタリギヤセットの径の増大が回避され、当該自動変速機の出力側の端部の径方向寸法の増大や、これに起因するFR車における運転席及び助手席の居住性の悪化が抑制される。
【0104】
この場合、入力軸が分割サンギヤの内側を貫通することになるが、入力軸は出力軸に比べて伝達トルクが小さく、小径とすることができるから、第1プラネタリギヤセットの径の増大は少なく、当該自動変速機の入力側における径の増大も抑制されることになる。
【0105】
前記自動変速機は、好ましくは、第3のサンギヤ、第3のキャリヤ、及び第3のリングギヤを有する第3のプラネタリギヤセットと、第4のサンギヤ、第4のキャリヤ、及び第4のリングギヤを有する第4のプラネタリギヤセットと、第1クラッチ、第2クラッチ、及び第3クラッチと、第2ブレーキとをさらに有する。前記第1のリングギヤと前記第3のサンギヤとが常時連結され、前記第2のキャリヤと前記第3のキャリヤとが常時連結され、前記第2のリングギヤと前記第4のキャリヤとが常時連結され、前記第1クラッチは、前記第4のサンギヤと、前記入力軸及び前記第1のキャリヤとを断接し、前記第2クラッチは、前記第4のサンギヤと、前記第1のリングギヤ及び前記第3のサンギヤとを断接し、前記第3クラッチは、前記第4のサンギヤと、前記第3のリングギヤとを断接し、前記第2ブレーキは、前記第4のリングギヤと、前記変速機ケースとを断接する。
【0106】
この構成によれば、前述した効果が得られる自動変速機をより具体的に実現することができる。
【0107】
前記構成において、より好ましくは、前記第1クラッチ、前記第1ブレーキ、及び前記第2ブレーキが締結されたときに1速が形成され、前記第2クラッチ、前記第1ブレーキ、及び前記第2ブレーキが締結されたときに2速が形成され、前記第1クラッチ、前記第2クラッチ、及び前記第2ブレーキが締結されたときに3速が形成され、前記第2クラッチ、前記第3クラッチ、及び前記第2ブレーキが締結されたときに4速が形成され、前記第1クラッチ、前記第3クラッチ、及び前記第2ブレーキが締結されたときに5速が形成され、前記第1クラッチ、前記第2クラッチ、及び前記第3クラッチが締結されたときに6速が形成され、前記第1クラッチ、前記第3クラッチ、及び前記第1ブレーキが締結されたときに7速が形成され、前記第2クラッチ、前記第3クラッチ、及び前記第1ブレーキが締結されたときに8速が形成され、前記第3クラッチ、前記第1ブレーキ、及び前記第2ブレーキが締結されたときに後退速が形成される。
【0108】
この構成によれば、各変速段のギヤ比が適切に設定された前進8段、後退1段の変速パターンを実現することができる。
【0109】
前記自動変速機は、前記第2のサンギヤと、前記第2のキャリヤ及び前記出力軸とを断接するか、または、前記第2のリングギヤと、前記第2のキャリヤ及び前記出力軸とを断接する第4クラッチをさらに有していてもよい。
【0110】
この構成によれば、第4クラッチを追加することにより自動変速機のさらなる多段化が可能となる。
【0111】
前記第4クラッチが追加された構成において、より好ましくは、前記第1クラッチ、前記第1ブレーキ、及び前記第2ブレーキが締結されたときに1速が形成され、前記第2クラッチ、前記第1ブレーキ、及び前記第2ブレーキが締結されたときに2速が形成され、前記第2クラッチ、前記第4クラッチ、及び前記第2ブレーキが締結されたときに3速が形成され、前記第1クラッチ、前記第2クラッチ、及び前記第2ブレーキが締結されたときに4速が形成され、前記第2クラッチ、前記第3クラッチ、及び前記第2ブレーキが締結されたときに5速が形成され、前記第1クラッチ、前記第3クラッチ、及び前記第2ブレーキが締結されたときに6速が形成され、前記第1クラッチ、前記第2クラッチ、及び前記第3クラッチが締結されたときに7速が形成され、前記第1クラッチ、前記第3クラッチ、及び前記第1ブレーキが締結されたときに8速が形成され、前記第2クラッチ、前記第3クラッチ、及び前記第1ブレーキが締結されたときに9速が形成され、前記第3クラッチ、前記第1ブレーキ、及び前記第2ブレーキが締結されたときに後退速が形成される。
【0112】
この構成によれば、各変速段のギヤ比が適切に設定された前進9段、後退1段の自動変速機を実現することができる。