特許第6210198号(P6210198)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧 ▶ ベール−ヘラ サモコントロール ゲーエムベーハーの特許一覧

<>
  • 特許6210198-加熱装置 図000002
  • 特許6210198-加熱装置 図000003
  • 特許6210198-加熱装置 図000004
  • 特許6210198-加熱装置 図000005
  • 特許6210198-加熱装置 図000006
  • 特許6210198-加熱装置 図000007
  • 特許6210198-加熱装置 図000008
  • 特許6210198-加熱装置 図000009
  • 特許6210198-加熱装置 図000010
  • 特許6210198-加熱装置 図000011
  • 特許6210198-加熱装置 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6210198
(24)【登録日】2017年9月22日
(45)【発行日】2017年10月11日
(54)【発明の名称】加熱装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/10 20060101AFI20171002BHJP
   H05B 6/44 20060101ALI20171002BHJP
【FI】
   H05B6/10 301
   H05B6/10 311
   H05B6/44
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-151661(P2013-151661)
(22)【出願日】2013年7月22日
(65)【公開番号】特開2014-26976(P2014-26976A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2016年4月27日
(31)【優先権主張番号】EP12290256.2
(32)【優先日】2012年7月24日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
(73)【特許権者】
【識別番号】513184828
【氏名又は名称】ベール−ヘラ サモコントロール ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル コール
(72)【発明者】
【氏名】カール−ゲート クルムバッハ
(72)【発明者】
【氏名】カール ロホマー
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング ゼーヴァルト
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィエ シュンク
(72)【発明者】
【氏名】ディーク ナゲル
(72)【発明者】
【氏名】ラース ヘーパ
(72)【発明者】
【氏名】マッテアズ シュタレン
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル シュタインカムプ
(72)【発明者】
【氏名】カルステン マルキュアズ
(72)【発明者】
【氏名】フォルカー ディック
【審査官】 宮崎 光治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−238449(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/130761(WO,A1)
【文献】 特開2001−241769(JP,A)
【文献】 米国特許第05334819(US,A)
【文献】 特開昭58−066283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B6/00−6/10
H05B6/14−6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体入口と流体出口とを有する流体通路が中に配置されたハウジングを具備する加熱装置であって、交番磁界を生成する要素が前記ハウジング内に設けられていて、この要素が少なくとも1つの壁部によって前記流体通路から密封されて仕切られており、更に、交番磁界により加熱可能な少なくともつの金属製面状加熱要素が設けられていて、
前記交番磁界を生成する要素が中空円筒形要素であり、
前記面状加熱要素が前記中空円筒形要素の半径方向内側および外側にそれぞれ配置されており、各前記面状加熱要素の内側および外側において流体が流通可能である
加熱装置。
【請求項2】
記面状加熱要素の一方の側における流体の流動方向が、前記面状加熱要素のもう一方の側における流動方向と向きであることを特徴とする、請求項に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記中空円筒形要素の半径方向外側の前記面状加熱要素は、中空円筒形要素として形成されていることを特徴とする、請求項1又は2記載の加熱装置。
【請求項4】
前記中空円筒形要素の半径方向内側の前記面状加熱要素は、中空円筒形要素として形成されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項5】
前記中空円筒形要素の半径方向内側の前記面状加熱要素の内側に生じる前記流体通路は、前記流体出口と連通していることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項6】
前記流体入口は円筒状の前記ハウジングの下端に配置されており、前記流体出口は、前記ハウジングの底部の中央に配置されていることを特徴とする、請求項5に記載の加熱装置。
【請求項7】
前記中空円筒形要素の半径方向外側の壁領域と、前記中空円筒形要素の半径方向外側の前記面状加熱要素との間の距離は、前記中空円筒形要素の半径方向内側の壁領域と前記中空円筒形要素の半径方向内側の前記面状加熱要素との間の距離よりも小さいことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項8】
前記交番磁界を生成する要素が空円筒形のコイルであることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項9】
前記交番磁界を生成する要素を制御するための制御ユニットが設けられていることを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項10】
前記制御ユニットが前記ハウジングに結合されていること、または前記ハウジング内に組み込まれていることを特徴とする、請求項に記載の加熱装置。
【請求項11】
前記ハウジングが磁界吸収材または交番磁界に対して不透明な材料から成ることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項12】
前記壁部が磁界に対して透明な材料から成ることを特徴とする、請求項1〜11ずれか1項に記載の加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置、特に自動車用の加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術において加熱装置は公知である。例えば、いわゆるPTC加熱要素を有する空気側の加熱装置が存在し、これらのPTC加熱要素に通電されて、これによりPTC加熱要素が加熱される。PTC要素に接触している空気側の薄層を介して、熱は貫流する空気に伝達される。しかし、これらの加熱装置は、液状の媒体に必要な構造とは基本的に異なった構造を有する。
【0003】
液状媒体用の加熱装置は、閉じられたハウジングを具備し、流体通路を有するように形成されていて、流体通路と流体出口とを備えており、前記ハウジング内に加熱要素が入り込んでいて、この加熱要素がPTC要素で加熱される。
【0004】
液状媒体用のこのような加熱装置が有する短所は、加熱されるべき液状媒体が流通する流体通路以外の領域で熱が生成されることである。これにより、境界抵抗が存在することで加熱の遅延が生じ、これが短所とみなされ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、従来技術に比べて改善されており、かつ、貫流する流体の直接的な加熱を実現する加熱装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
これは、請求項1に記載の諸特徴によって実現される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
一実施形態では、加熱装置が、流体入口と流体出口とを有する流体通路が中に配置されたハウジングを具備し、交番磁界を生成する要素が前記ハウジング内に設けられていて、この要素は更に少なくとも1つの壁部によって前記流体通路から密封されて仕切られており、更に、交番磁界により加熱可能な少なくとも1つの金属製面状加熱要素が設けられていて、前記少なくとも1つの面状加熱要素は前記流体通路内に配置されている。これにより、前記交番磁界を生成する要素は、前記流体通路の外部および前記流体通路内の液体の流れの外部にあり、前記面状加熱要素は前記流体通路内に、従ってまた、流体の流れの中に配置されている。これによって、好ましくは、電気システムの分離、すなわち、前記流体通路の外部における前記交番磁界を生成する要素と前記流体通路内における加熱される面状加熱要素との間の分離が実現される。
【0008】
この場合、特に好ましいのは、前記面状加熱要素を片側または両側において流体が流通可能な場合である。前記面状加熱要素は、好ましくは、前記流体通路内を貫流する流体に直接接触している。これにより、流体を良好かつ迅速に加熱することが実現される。
【0009】
また、好都合であるのは、前記面状加熱要素を両側において流体が流通可能であり、前記面状加熱要素の一方の側における流体の流動方向が、前記面状加熱要素のもう一方の側における流動方向と同じ向きまたはその逆向きである場合である。これによって、流体は、連続的に、まず前記面状加熱要素の一方の側を通過し、その後にもう一方の側を通過するように案内される。これにより加熱の効率が向上する。
【0010】
また、好都合であるのは、交番磁界を生成する要素が実質的に平面状または中空円筒形の要素である場合である。
【0011】
また、有利であるのは、面状加熱要素が実質的に平面状または中空円筒形の要素である場合である。
【0012】
また、有利であるのは、交番磁界を生成する要素が中空円筒形の要素であり、少なくとも1つの面状加熱要素が前記交番磁界を生成する中空円筒形要素の半径方向内側および/または外側に配置されている場合である。これにより、構造スペースの点で有利な加熱装置が生み出される。
【0013】
また、有利であるのは、交番磁界を生成する中空円筒形要素の半径方向内側および外側に1つまたは複数の中空円筒形の面状加熱要素が配置されている場合である。また、これによって熱出力を向上させることも可能である。
【0014】
また、有利であるのは、交番磁界を生成する要素が実質的に平らな要素であり、少なくとも1つの面状加熱要素が、前記交番磁界を生成する要素に隣接して片側または両側に配置されている場合である。これにより、特に平坦な構造様式が実現できる。
【0015】
有利であるのは、前記交番磁界を生成する要素に隣接して両側に1つまたは複数の実質的に平らな面状加熱要素が配置されている場合である。これにより、熱出力を向上させることができる。
【0016】
また、有利であるのは、交番磁界を生成する要素が実質的に平面状または中空円筒形のコイルである場合である。
【0017】
また、有利であるのは、前記交番磁界を生成する要素を制御するための制御ユニットが設けられている場合である。
【0018】
この場合に有利であるのは、前記制御ユニットが前記ハウジングに結合されている場合、または前記ハウジング内に組み込まれている場合である。
【0019】
また、有利であるのは、前記ハウジングが磁界吸収材または交番磁界に対して不透明な材料から成る場合である。
【0020】
この場合、また有利であるのは、前記壁部が実質的に磁界に対して透明な材料から成る場合である。
【0021】
その他の有利な実施態様に関しては、以下の図説および従属請求項によって説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】壁部内に収容された電気加熱要素を示す模式図である。
図2】壁部内に収容された電気加熱要素を示す模式図である。
図3】加熱装置を示す断面図である。
図4】加熱装置の要素を示す図である。
図5】加熱装置の要素を示す図である。
図6】加熱装置の要素を示す図である。
図7】加熱装置の要素を示す図である。
図8】加熱装置を示す図である。
図9】加熱装置の更に別の実施例を示す斜視断面図である。
図10】前記加熱装置の細部を示す図である。
図11】前記加熱装置の断面を示す図である。
【実施例】
【0023】
以下において、本発明について、少なくとも1つの実施例に基づいて、図面を参照しながら更に詳述する。
【0024】
図1は交番磁界を生成する要素1を示し、この要素は、包囲する壁部2によって包囲されていることで外方向に対して密封され、かつ、電気的に絶縁されて収容されている。前記壁部2は、好ましくは密閉されたハウジングであり、このハウジングは流体通路内へ挿設でき、これにより、前記交番磁界を生成する要素1は、流体通路と前記流体通路内を貫流する流体とから分離されている。前記交番磁界を生成する要素1はコイルとして形成されており、このコイルは実質的に平坦かつ円形に形成されている。前記コイルは多芯撚り線3が巻回されたものであり、好ましくは二層に巻回して形成されており、これにより、前記撚り線3の2本の接続線4、5が互いに対して平行に延びている。好ましくは、コイルとして形成された、交番磁界を生成するための前記要素は、前記壁部2内に封入固定されている。これにより、前記コイルは前記壁部内で移動することができないので、前記壁部内における前記コイルの安定した配置を生み出すことができる。
【0025】
図2は、交番磁界を生成可能な要素10の更に別の実施例を示す。前記要素10は、中空円筒形に形成されたコイルとして形成されている。この場合、前記コイル10は、巻回された撚り線11によって形成されており、この撚り線は二層に延設されていて、これにより、接続部12および13は実質的に互いに対して平行に延設されている。また、前記撚り線は、有利には多芯撚り線として実施されている。
【0026】
前記要素10は壁部14内に収容されており、この壁部は二重壁の中空円筒として形成されていて、前記壁部14は前記要素10を完全に包囲して密封する。好ましくは、前記要素10は前記壁部14内に封入固定されている。
【0027】
図3は、ハウジング21と該ハウジング内に配置された流体通路22とを備えた加熱装置20の実施例を示す。前記流体通路22は流体入口23と流体出口24とを有し、これにより、流体は矢印25に従って前記流体入口23内へ流入でき、前記流体通路22内を貫流して前記流体出口24から前記ハウジング21を再び離れることができる。
【0028】
前記ハウジング21は実質的に円筒状に形成されており、前記流体入口23は円筒壁部26に配置されている。前記流体出口24は、前記ハウジング21の円筒部の底壁部27に配置されている。好ましくは、前記流体入口は前記円筒状のハウジング21の下端に配置されている。前記流体出口24は、好ましくは前記底壁部27の中央に配置されている。
【0029】
従って、前記ハウジング21は、少なくとも、円筒壁部26と下方底壁部27とを備えた円筒状の外装部と、上方蓋部28とによって形成され、前記ハウジングはその他の要素も包囲することが可能である。
【0030】
前記円筒状のハウジング21内に、交番磁界を生成する要素29が中空円筒形のコイルとして収容されている。
【0031】
交番磁界を生成する要素29としての前記コイルは壁部30内に配置されており、この壁部は前記要素29を実質的に完全に包囲する。この場合、前記壁部30は半径方向外側の壁領域30’と半径方向内側の壁領域30’’とを有し、これらの領域は、上方において前記ハウジング蓋部28によって密閉されており、下方領域において壁領域30’’’によって閉鎖されている。この場合、前記壁領域30’’’は環状の壁領域である。
【0032】
従って、前記壁部30は、交番磁界を生成する要素29としての前記コイルを実質的に完全に包囲する。この場合、更に、前記要素29は前記壁部30内に注封材31によって封入固定することができ、これにより、前記要素を形状安定的に収容することが可能である。前記注封材は、交番磁界を生成する要素29としての前記コイルと前記壁部30との間の空隙内に注入される。
【0033】
更に、前記ハウジング21内には2つの面状加熱要素32、33が設けられており、これらの面状加熱要素は中空円筒形の平面的な要素として形成されている。前記面状加熱要素32、33は好ましくは金属で形成されており、これにより、これらの要素は、前記中空円筒形要素の壁厚内に生じる円電流によって加熱される。前記円電流は、交番磁界によって面状加熱要素としての前記中空円筒形要素32、33内に誘導される。前記面状加熱要素は、好ましくは金属薄板として形成されている。この場合、前記壁厚は、約0.08mm〜0.5mmの範囲の厚さである。
【0034】
前記面状加熱要素32は中空円筒の形状を有し、前記要素29の外半径あるいは前記壁部30の外半径よりも大きな半径を有する。
【0035】
前記面状加熱要素33は中空円筒形に形成されており、前記要素29の内半径あるいは前記壁部30の内半径よりも小さな半径を有し、従って、前記面状加熱要素33は前記要素29の半径方向内側に配置されている。
【0036】
更に、前記面状加熱要素32は、その半径が前記中空円筒形のハウジング21の半径よりも小さくなるように寸法設定されている。前記面状加熱要素32は、前記壁部30と前記ハウジング21との間に収容されている。
【0037】
これにより、流体が貫流するための多流路型の流体通路22が前記ハウジング内に生じる。前記流体通路22は流体通路22’、22’’、22’’’、22’’’’によって形成され、これらの流体通路は外側から内側へ環状の流路として形成されている。流体25は、前記流体入口23を通じて前記ハウジング21内へ流入する。流体は、前記流体通路22’に前記ハウジングの下部から流入し、前記面状加熱要素32に沿って軸方向に上方へ蓋部28に向かって流れる。前記蓋部の近傍で、流体は矢印34に従って方向が変えられ、前記流体通路22’’を通じて前記面状加熱要素33に沿って軸方向に下方へ底部27に向かって流れる。流体は、底部で矢印35に従って再び方向が変えられ、前記流体通路22’’’に沿って軸方向に再び上方へ蓋部28に向かって流れる。流体は上部で矢印36に従って再び方向が変えられ、前記流体通路22’’’’を通じて再び下方に前記底部に向かって前記流体出口24へ流れる。
【0038】
従って、流体は、前記流体通路22’および22’’を通って2回前記面状加熱要素32に沿って流れ、かつ、前記流体通路22’’’および22’’’’を通って2回前記面状加熱要素33に沿って流れる。それに続いて、流体は前記加熱装置を離れて前記流体出口24から流出する。
【0039】
前記ハウジング21と壁部26とに隣接して制御機構37が配置されており、この制御機構は前記交番磁界を生成する要素29を制御する。そのために、前記要素29の接続線38が前記制御ユニット37内へ延設されている。その際、前記蓋部28は、前記接続線38を前記壁部30の領域から前記制御ユニット37のハウジング40内へ延設できるように凹部または凸部39を有する。
【0040】
見て取れるように、前記壁部30’と前記面状加熱要素32との間の距離は、前記壁部30’’と前記面状加熱要素33との間の距離よりも小さい。これの理由は以下の点にある。すなわち、前記両距離が異なっていることで、中空円筒形の要素として形成された前記面状加熱要素32あるいは33の表面において、交番磁界によって実質的に同じエネルギー面密度が生成されるからであり、従って、前記面状加熱要素32による流体の加熱は、実質的に単位面積当たり前記面状加熱要素33に基づく流体の加熱と等しくなる。
【0041】
しかし、前記加熱装置の別の構成の場合、前記面状加熱要素の上述の配置とは異なる配置にすることも可能である。前記それぞれ面状加熱要素32あるいは33と前記要素29の隣接する壁部30’あるいは30’’との間の距離を変えることが可能である。前記面状加熱要素33と前記壁部30’’との間の距離を前記面状加熱要素32と前記壁部30’との間の距離と等しくしておくことも可能である。あるいは、前記面状加熱要素33と前記壁部30’’との間の距離を、前記面状加熱要素32と前記壁部30’との間の距離よりも小さくしておくことも可能である。
【0042】
図4は前記要素29の配置を示し、この要素は、図4の実施例ではコイルとして形成されている。この場合、前記コイルは金属撚り線で二層に巻回しておくことができ、これにより、前記コイルの2本の接続線を互いに対して平行に延設することができる。
【0043】
コイルとして形成された前記要素29の半径方向内側に面状加熱要素33が見て取れ、この面状加熱要素は前記コイルの中空スペース内へ入り込んでいる。この面状加熱要素33は、その軸方向下端において前記底部27によって保持され、この底部には前記流体出口24も配置されている。前記流体入口23は概略的に示されており、この流体入口は、前記ハウジング21の外側の円筒状壁部26に接続されている。
【0044】
図5では、図4の構成に更に前記壁部30が加えて示されている。前記壁部30によって前記要素29は密封して包囲されており、これにより、前記交番磁界を生成する要素29全体を、前記流体通路の外部でありながら密封した状態で配置することが可能となる。
【0045】
図6は、図5に加えて、前記半径方向外側の面状加熱要素32が配置された状態を示す。この面状加熱要素は壁部30を取り囲んでおり、前記流体通路22’’を形成できるようにこの壁部30との間に距離を保っている。その際、軸方向において前記上方縁部41と前記壁部30の縁部42との間に距離が置かれており、これによって、流体の方向を前記通路22’から前記通路22’’内へ変えることが可能となる。
【0046】
図7および図8は、前記ハウジング2と前記接続蓋部28とを備えた前記加熱装置1を示す。また、側方フランジ43が設けられており、このフランジは前記制御ユニット37を固定して設置するために用いられる。
【0047】
この場合、前記フランジ43は、付加的な部材として前記壁部2に設置されているか、または、前記壁部と一体的に形成されている。その際、前記壁部は、前記フランジ43と共に例えば押出し成形された構成部材として製造しておくことが可能である。
【0048】
前記流体接続部23は、前記フランジ43の領域に設置されており、前記加熱装置に流体を供給する働きをする。また、前記要素29の接続部38を前記ハウジングの内部スペースから電子制御ユニット37へ渡すための前記通路状領域39が見て取れる。この領域は通路状に形成されており、前記ハウジングの内部スペースを前記蓋部28を介して前記制御ユニット37に接続する。この場合、前記電子制御ユニット37は前記フランジ43上に載設されており、熱伝導性を有した状態でこのフランジに結合されている。これにより、前記制御ユニット37内に備えられたパワーエレクトロニクス装置を前記加熱装置内を流れる流体によって冷却することができる。
【0049】
図9図11は本発明の更に別の実施例を示し、この実施例の場合、前記交番磁界を生成する要素も前記面状加熱要素も中空円筒形には形成されておらず、実質的に面状の平坦な要素として形成されている。
【0050】
図9図11の実施例は、ハウジングフランジ101に結合されたハウジング100を示す。前記ハウジングフランジは、前記交番磁界を生成する要素の保持部の延通部102および同要素の電気接触部として機能する。前記ハウジング100内には、交番磁界を生成する2つの要素103が配置されていて、これらの要素は両側面において壁部104で包囲されており、これにより、前記要素103は密封されて前記流体通路から分離されている。
【0051】
前記面状の交番磁界生成要素103と前記面状の壁部104とに対して平行かつ離間して、面状加熱要素105が配置されている。有利には、交番磁界生成要素の一方の側にそれぞれ2つの面状加熱要素105が互いに平行かつ離間して配置されている。あるいは、前記要素103の一方の側にただ1つの面状加熱要素105を配置しておくことも可能である。これらの面状加熱要素105は前記壁部104から離間して配置されており、その結果、前記2つの面状加熱要素105の間においても面状加熱要素105と壁部104との間においても、前記流体通路106を通って流体が流れることができ、これにより、前記面状加熱要素105によって流体を加熱することが可能となる。
【0052】
図9図11の実施例から見て取れるように、2つの面状加熱要素105がそれぞれ互いに対して平行に配置されている。従って、前記コイルの両側にただ1つの面状加熱要素が配置された図3図8の例とは異なる構成が示されている。また、図3図8の実施例において、平行に配置された複数の面状加熱要素を、貫流する流体を加熱する働きをする前記コイルの各々の側に設けておくことも可能であろう。
【0053】
用いられる材料に関しては、交番磁界を生成するコイル状の要素を収容して密封するための前記壁部30あるいは104は、好ましくは、磁界に対して透明なプラスチック材料で製造されている。これにより、生成される交番磁界は、前記壁部30あるいは104によって不所望な妨害を被ることがない。
【0054】
それに対して、前記ハウジング壁部100あるいは2は磁界に対して不透明な材料から成っており、これにより、好ましくは、前記ハウジング内に生成された磁界が前記ハウジング2から外に向かって進み出ることがなく、前記ハウジング2によって遮蔽される。このために適しているのは、例えばアルミニウム等の金属材料である。このような材料が有する長所は、前記ハウジングの領域における交番磁界がこの材料内にも円電流を生成し、これにより、前記ハウジング自体の壁部を加熱するという点であり、その結果、前記ハウジングも加熱要素としての作用を持つことができる。
【0055】
前記交番磁界を生成する要素は、好ましくは、多芯撚り線である高周波撚り線が巻回されたものである。従って、簡単かつ好都合に、平らなコイルまたは中空円筒形のコイルを巻回して形成することができる。その際に有利であるのは、前記コイルがプラスチックハウジングのような非導電性材料の中に収容または埋設または注封されている場合である。この場合、前記コイルは単芯状または二芯状に巻回しておくことが可能である。
【0056】
交番磁界を生成するための要素としての前記交番磁界を生成するためのコイルは、制御電子システム内においてコンデンサと共に発振回路の中に組み込まれており、この発振回路はスイッチングトランジスタによって制御あるいは駆動される。前記制御電子システムは、好ましくは前記制御ユニット内に組み入れられている。この場合、前記発振回路の周波数は約10kHz〜80kHzである。
【0057】
前記面状加熱要素の材料に基づいて、交番磁界によって前記面状加熱要素内に渦電流が誘導され、これらの渦電流によって前記面状加熱要素の加熱が生じる。これらの面状加熱要素の周囲を流体が流れると、これにより流体の加熱が生じる。
【0058】
前記面状加熱要素の材料としては、良導電性の金属材料が好ましく、例えば銅、鋼または鉄含有材料等である。材料の厚さは0.08mmから0.5mmの間が好ましい。
【符号の説明】
【0059】
1 交番磁界を生成する要素、加熱装置
2 壁部、ハウジング
3 撚り線
4 接続線
5 接続線
10 交番磁界を生成する要素
11 撚り線
12 接続部
13 接続部
14 壁部
21 ハウジング
22 流体通路
22’ 流体通路
22’’ 流体通路
22’’’ 流体通路
22’’’’ 流体通路
23 流体入口、流体接続部
24 流体出口
25 矢印、流体
26 円筒壁部
27 底壁部、底部
28 蓋部
29 交番磁界を生成する要素
30 壁部
30’ 壁領域、壁部
30’’ 壁領域、壁部
30’’’ 壁領域
31 注封材
32 面状加熱要素
33 面状加熱要素
34 矢印
35 矢印
36 矢印
37 制御機構、制御ユニット
38 接続線、接続部
39 凹部、凸部、通路状領域
40 ハウジング
41 縁部
42 縁部
43 フランジ
100 ハウジング、ハウジング壁部
101 ハウジングフランジ
102 延通部
103 交番磁界を生成する要素
104 壁部
105 面状加熱要素
106 流体通路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11