特許第6210273号(P6210273)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6210273医療用複室容器の梱包体及び同容器の梱包方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6210273
(24)【登録日】2017年9月22日
(45)【発行日】2017年10月11日
(54)【発明の名称】医療用複室容器の梱包体及び同容器の梱包方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/26 20060101AFI20171002BHJP
   B65D 81/32 20060101ALI20171002BHJP
   B65D 77/04 20060101ALI20171002BHJP
   B65D 77/08 20060101ALI20171002BHJP
   B65D 77/26 20060101ALI20171002BHJP
【FI】
   B65D81/26 Z
   B65D81/32 D
   B65D77/04 F
   B65D77/08 B
   B65D77/26 S
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-135761(P2013-135761)
(22)【出願日】2013年6月28日
(65)【公開番号】特開2015-9829(P2015-9829A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2016年3月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(74)【代理人】
【識別番号】100142561
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 大介
(72)【発明者】
【氏名】高杉 雅道
【審査官】 種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−166073(JP,A)
【文献】 特開2007−020710(JP,A)
【文献】 特開2006−052013(JP,A)
【文献】 特開平10−277132(JP,A)
【文献】 特開2005−035962(JP,A)
【文献】 特開2004−141416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/26
B65D 77/04
B65D 77/08
B65D 77/26
B65D 81/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手と短手とを有する矩形の医療用複室容器であって、混合されることによって薬剤となる2種類の液体の一方が封入された第1室、当該医療用複室容器の長手方向において上記第1室と隣接し且つ2種類の液体の他方が封入された第2室、上記第1室と上記第2室とを液密に隔離した状態から液体が流通可能な状態に状態変化可能なシール部、及び上記第2室と反対側において上記第1室を外部に連通させるポートを有する医療用複室容器と、
上記シール部において二つ折りされた上記医療用複室容器を収納する外袋と、
底面形状が長手と短手とを有する矩形であって、各々が上記外袋に収納された5個の上記医療用複室容器を梱包する梱包箱と、を備えており、
5個の上記医療用複室容器は、
互いに向かい合った上記ポート同士を重ね合わせた状態で上記梱包箱の底面に載置された第1容器及び第2容器と、
互いに向かい合った上記ポート同士を重ね合わせた状態で上記第1容器及び上記第2容器の上に重ねられた第3容器及び第4容器と、
上記梱包箱の長手方向の中央部において、上記第3容器及び上記第4容器の上に重ねられた第5容器と、を含む医療用複室容器の梱包体。
【請求項2】
5個の上記医療用複室容器は、各々が上記第1室を上にして上記梱包箱に収納され
上記第1容器及び上記第2容器は、
上記第2室同士が離間し、
上記第2容器の上記ポートが上記第1容器の上記ポートの上に重なり、
上記第1容器の上記ポートが離間した2つの上記第2室の間に位置し、
上記第3容器及び上記第4容器は、
上記第2室同士が離間し、
上記第4容器の上記ポートが上記第3容器の上記ポートの上に重なり、
上記第3容器の上記ポートが離間した2つの上記第2室の間に位置する請求項1に記載の医療用複室容器の梱包体。
【請求項3】
上記医療用複室容器は、積層されたフィルムの外縁部同士を第1温度で溶着して形成されており、
上記シール部は、上記第1温度より低い第2温度で溶着されている請求項1又は2に記載の医療用複室容器の梱包体。
【請求項4】
上記外袋には、当該外袋内における酸素の存在を検知する酸素検知剤が収納されている請求項1から3のいずれかに記載の医療用複室容器の梱包体。
【請求項5】
上記梱包箱の底面と上記第1容器及び上記第2容器との間に配置された緩衝板をさらに備える請求項1からのいずれかに記載の医療用複室容器の梱包体。
【請求項6】
上記2種類の液体は、混合されることによって人工腎臓用補液となるものである請求項1からのいずれかに記載の医療用複室容器の梱包体。
【請求項7】
長手と短手とを有する矩形の医療用複室容器であって、混合されることによって薬剤となる2種類の液体の一方が封入された第1室、当該医療用複室容器の長手方向において上記第1室と隣接し且つ2種類の液体の他方が封入された第2室、上記第1室と上記第2室とを液密に隔離した状態から液体が流通可能な状態に状態変化可能なシール部、及び上記第2室と反対側において上記第1室を外部に連通させるポートを有する5個の医療用複室容器を、各々を上記シール部において二つ折りして外袋に収納した状態で、底面形状が長手と短手とを有する矩形の梱包箱に梱包する医療用複室容器の梱包方法であって、
5個の上記医療用複室容器のうち、
互いに向かい合った上記ポート同士を重ね合わせた状態で第1容器及び第2容器を上記梱包箱の底面に載置し、
互いに向かい合った上記ポート同士を重ね合わせた状態で第3容器及び第4容器を上記第1容器及び上記第2容器の上に載置し、
上記梱包箱の長手方向の中央部において上記第3容器及び上記第4容器の上に第5容器を載置する医療用複室容器の梱包方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用時に混合される2種類の液体を個別に封入した医療用複室容器の梱包体及び梱包方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、薬剤が封入される医療用複室容器は、外袋に収納された状態で梱包箱に梱包されて運搬される。ここで、医療用複室容器の梱包には、運搬時の振動や衝撃等によって容器や外袋が破損するのを防止する工夫が求められる。特に、重炭酸水素ナトリウムを含む薬液が充填された医療用複室容器では、外袋が破損して炭酸ガスが外部に放出されることによって、薬剤のpHが変化するのを防止することが必要である。
【0003】
そこで、例えば特許文献1には、薬剤の一例である人工腎臓用補液を梱包するための包装箱が記載されている。より詳細には、特許文献1に記載されている包装箱には、内部を隔壁で仕切ることによって形成された複数の収納スペースそれぞれに、医療用複室容器の一例である人工腎臓用補液バッグが収納される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−193938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の包装箱は、人工腎臓用補液バッグ及び外袋の破損を防止する性能が必ずしも十分とは言えない。また、特許文献1に記載の包装箱は、隔壁を構成する多数の段ボール紙が必要となるので、廃棄物が多くなるという課題を生じる。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡易な方法で医療用複室容器及び外袋の破損を抑制可能な医療用複室容器の梱包体及び同容器の梱包方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明における医療用複室容器の梱包体は、長手と短手とを有する矩形の医療用複室容器であって、混合されることによって薬剤となる2種類の液体の一方が封入された第1室、当該医療用複室容器の長手方向において上記第1室と隣接し且つ2種類の液体の他方が封入された第2室、上記第1室と上記第2室とを液密に隔離した状態から液体が流通可能な状態に状態変化可能なシール部、及び上記第2室と反対側において上記第1室を外部に連通させるポートを有する医療用複室容器と、上記シール部において二つ折りされた上記医療用複室容器を収納する外袋と、底面形状が長手と短手とを有する矩形であって、各々が上記外袋に収納された5個の上記医療用複室容器を梱包する梱包箱とを備える。5個の上記医療用複室容器は、上記ポートを向かい合わせた状態で上記梱包箱の底面に載置された第1容器及び第2容器と、上記ポートを向かい合わせた状態で上記第1容器及び上記第2容器の上に重ねられた第3容器及び第4容器と、上記梱包箱の長手方向の中央部において、上記第3容器及び上記第4容器の上に重ねられた第5容器とを含む。
【0008】
上記構成によれば、運搬時等の振動や衝撃によって医療用複室容器及び外袋が破損するのを抑制することができる。また、隔壁を必要とする従来の包装箱と比較して廃棄物の少ない簡易な方法で、医療用複室容器及び外袋の破損を抑制することができる。
【0009】
(2) 好ましくは、上記医療用複室容器は、積層されたフィルムの外縁部同士を第1温度で溶着して形成されている。そして、上記シール部は、上記第1温度より低い第2温度で溶着されている。
【0010】
上記構成によれば、第1室或いは第2室を圧縮するという簡単な操作によって、シール部を液体が流通可能な状態に状態変化させることができる。また、シール部と比較して外縁部が強固に溶着されるので、医療用複室容器からの液漏れを有効に抑制することができる。
【0011】
(3) 好ましくは、上記外袋には、当該外袋内における酸素の存在を検知する酸素検知剤が収納されている。
【0012】
上記構成によれば、破損した外袋内への酸素の侵入を容易に認識することができる。これにより、医療用複室容器内の薬剤の劣化(典型的には、炭酸ガスが外袋から放出されることによるpHの変化)の可能性を事前に認識することができる。
【0013】
(4) 好ましくは、上記梱包箱の底面と上記第1容器及び上記第2容器との間に配置された緩衝板をさらに備える。
【0014】
上記構成によれば、運搬時等の振動や衝撃による医療用複室容器及び外袋の破損をさらに有効に抑制することができる。
【0015】
(5) 例えば、5個の上記医療用複室容器は、各々が上記第1室を上にして上記梱包箱に収納されている。
【0016】
(6) 例えば、上記第1容器と上記第2容器及び上記第3容器と上記第4容器とは、それぞれ上記梱包箱の長手方向において隣接し且つ上下方向において一部が重なり合った状態で上記梱包箱に収納されている。
【0017】
(7) 例えば、上記2種類の液体は、混合されることによって人工腎臓用補液となるものである。
【0018】
(8) 本発明における医療用複室容器の梱包方法は、長手と短手とを有する矩形の医療用複室容器であって、混合されることによって薬剤となる2種類の液体の一方が封入された第1室、当該医療用複室容器の長手方向において上記第1室と隣接し且つ2種類の液体の他方が封入された第2室、上記第1室と上記第2室とを液密に隔離した状態から液体が流通可能な状態に状態変化可能なシール部、及び上記第2室と反対側において上記第1室を外部に連通させるポートを有する5個の医療用複室容器を、各々を上記シール部において二つ折りして外袋に収納した状態で、底面形状が長手と短手とを有する矩形の梱包箱に梱包する方法であって、5個の上記医療用複室容器のうち、上記ポートを向かい合わせた第1容器及び第2容器を上記梱包箱の底面に載置し、上記ポートを向かい合わせた第3容器及び第4容器を上記第1容器及び上記第2容器の上に載置し、上記梱包箱の長手方向の中央部において上記第3容器及び上記第4容器の上に第5容器を載置する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、運搬時等の振動や衝撃によって医療用複室容器及び外袋が破損するのを抑制することができる。また、隔壁を必要とする従来の包装箱と比較して廃棄物の少ない簡易な方法で、医療用複室容器及び外袋の破損を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本実施形態における人工腎臓用補液バッグ10の斜視図である。
図2図2は、二つ折りにして外袋17に収納された人工腎臓用補液バッグ10の斜視図である。
図3図3は、本実施形態における人工腎臓用補液バッグ梱包体の分解斜視図である。
図4図4は、本実施形態における人工腎臓用補液バッグ梱包体の断面図である。
図5図5は、比較例である人工腎臓用補液バッグ梱包体の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面が参照されつつ本発明の実施形態が説明される。なお、本実施形態は、本発明の一例にすぎず、本発明の要旨が変更されない範囲において、本実施形態が適宜変更されてもよいことは言うまでもない。
【0022】
本実施形態における人工腎臓用補液バッグ10は、図1に示されるように、第1液が封入された第1室11と、第2液が封入された第2室12と、第1室11及び第2室12の間に位置するシール部13と、第1室11を外部に連通させるポート14とを備える。本実施形態における人工腎臓用補液バッグ10は、長手と短手とを有する矩形状(すなわち、長方形状)であって、第1室11及び第2室12は長手方向にて隣接して配置されている。人工腎臓用補液バッグ10は、本発明の医療用複室容器の一例である。
【0023】
なお、人工腎臓用補液バッグ10に封入された第1液及び第2液は、本発明の2種類の液体の一方及び他方に相当し、混合されることによって人工腎臓用補液となるものである。一例として、第1液には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、及び炭酸水素ナトリウム等が含まれている。また、第2液には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カリウム水和物、塩化マグネシウム、無水酢酸ナトリウム、ブドウ糖、及びpH調整剤である塩酸等が含まれている。
【0024】
シール部13は、人工腎臓用補液バッグ10の長手方向において隣接する第1室11及び第2室12の間において、人工腎臓用補液バッグ10の短手方向に延設されている。このシール部13は、第1室11及び第2室12を液密に隔離した状態(以下、「隔離状態」と表記する。)から液体が流通可能な状態(以下、「流通状態」と表記する。)に状態変化可能に構成されている。より詳細には、未使用状態の人工腎臓用補液バッグ10のシール部13は隔離状態となっており、使用時に第1室11或いは第2室12が圧縮されることによって流通状態に状態変化する。そして、シール部13が流通状態とされることにより、第1液及び第2液が混合されて人工腎臓用補液となる。
【0025】
上記構成の人工腎臓用補液バッグ10は、第1室11及び第2室12をシール部13で隔離することによって、長期間に亘って第1液及び第2液に含まれる各成分を安定して保持することができる。なお、混合された第1液及び第2液が人工腎臓用補液となる過程において、化学反応が生じる必要は必ずしもない。また、第1液及び第2液の一方或いは両方は、人工腎臓用補液に含まれる全ての成分を含んでいてもよい。すなわち、第1液及び第2液の混合は、より好適な組成及び濃度の人工腎臓用補液を得るために行われるものであってよい。
【0026】
ポート14は、人工腎臓用補液バッグ10の長手方向の端部で且つ第2室12とは反対側において第1室11に取り付けられている。より詳細には、ポート14は、円筒形状の部材であって、その一端が第1室11に連通され、他端が外部に開口されている。また、ポート14の開口は、封止部材15によって封止されている。すなわち、人工腎臓用補液バッグ10に封入された人工腎臓用補液は、封止部材15が取り外されたポート14を通じて外部に流出される。
【0027】
人工腎臓用補液バッグ10は、例えば、ポリプロピレン製の一対のフィルムを溶着することによって形成される。具体的なフィルムの組成は、例えば、プロピレン・α−オレフィン共重合体(A)と、この共重合体(A)とα−オレフィン含有率が異なるプロピレン・α−オレフィン共重合体(B)及び/又はプロピレン単独重合体(C)との混合物からなる。プロピレン・α−オレフィン共重合体(A)のα−オレフィン含有率は5〜20モル%であり、好ましくは7〜15モル%である。また、プロピレン・α−オレフィン共重合体(B)のα−オレフィン含有率は8モル%以下であり、好ましくは7モル%以下である。プロピレン・α−オレフィン共重合体(A)の具体例としては、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・ブテン共重合体等の2元共重合体が挙げられるが、プロピレン・エチレン・ブテン共重合体等の3元共重合体であってもよい。プロピレン・α−オレフィン共重合体(B)のα−オレフィンは、共重合体(A)と同様であってよい。
【0028】
上記構成の人工腎臓用補液バッグ10は、上述の組成の一対のフィルムを積層し、当該一対のフィルムの外縁部16同士を第1温度で溶着することによって形成される。但し、人工腎臓用補液バッグ10の形成方法は上記の例に限定されない。例えば、人工腎臓用補液バッグ10の概ね2倍の大きさのフィルムを二つ折りにし、二つ折りされたフィルムの外縁部(すなわち、開放された三辺)同士を第1温度で溶着することによっても、人工腎臓用補液バッグ10を形成することができる。
【0029】
また、シール部13は、第1温度より低い第2温度で溶着される。すなわち、外縁部16は、シール部13より強固に溶着される。換言すれば、シール部13は、外縁部16より軟弱に溶着される。その結果、第1室11或いは第2室12が圧縮されることにより、シール部13の位置におけるフィルムのみが剥離(すなわち、シール部13が隔離状態から流通状態に状態変化)し、外縁部16の位置におけるフィルムは剥離しない。
【0030】
上記構成の人工腎臓用補液バッグ10は、図2に示されるように、シール部13において二つ折りされた状態で外袋17に収納される。外袋17は、例えば、ガス非透過性の材料によって形成されるのが望ましい。外袋17は、例えば、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ナイロン等の素材に、シリカやアルミナ等のガスバリア性物質を蒸着して形成される。但し、外袋17におけるガス非透過性の程度は、当該人工腎臓用補液バッグ10が保存される期間、及び後述する脱酸素剤18によって吸収可能な酸素の量等によって適宜設定されればよい。
【0031】
また、外袋17は、脱酸素剤18及び酸素検知剤19が人工腎臓用補液バッグ10と共に収納され且つ二酸化炭素或いは窒素等が充填された状態で、周縁部がヒートシールにて密閉される。脱酸素剤18としては、例えば、大江化学工業株式会社製タモツ(登録商標)を採用することができる。また、酸素検知剤19としては、例えば、三菱ガス化学株式会社製の錠剤エージレスアイ(登録商標)を採用することができる。
【0032】
外袋17に収容された人工腎臓用補液バッグ10は、図3及び図4に示されるように、5個を1セットとして大袋23に入れられた状態で梱包箱20に梱包される。具体的には、梱包箱20には、各々が外袋17に収納され且つまとめて大袋23に収納された5個の人工腎臓用補液バッグ10A〜10Eが、底面に敷かれた緩衝板21上に載置される。そして、この状態で梱包箱20の蓋が閉じられることによって、本発明の医療用複室容器の梱包体の一例が構成される。なお、図3では、外袋17、脱酸素剤18、酸素検知剤19、及び大袋23の図示を省略している。また、図4に示されるように、積層された人工腎臓用補液バッグ10A〜10Eの高さと、梱包箱20の内部空間の高さとを概ね一致させることが望ましいが、人工腎臓用補液バッグ10Eと梱包箱20の蓋との間に隙間がある場合は、一番上に載置された人工腎臓用補液バッグ10Eの上に高さ調整板を載置してもよい。
【0033】
梱包箱20は、底面の形状が長手と短手とを有する矩形(すなわち、長方形)の直方体であって、段ボール紙等で形成されている。緩衝板21としては、運搬時の振動や衝撃を吸収するクッション性に優れた素材を用いるのが望ましく、例えば、積水化学工業株式会社製のライトロン(登録商標)を採用することができる。高さ調整板は、例えば、段ボール紙を採用することができる。但し、図4に示されるように、積層された人工腎臓用補液バッグ10A〜10Eの高さと、梱包箱20の内部空間の高さとが概ね一致する場合、高さ調整板は、省略可能である。
【0034】
次に、人工腎臓用補液バッグ10A〜10Eを梱包箱20に収納する方法(本発明の医療用複室容器の梱包方法の一例)を説明する。なお、本実施形態における人工腎臓用補液バッグ10A〜10Eは、第1室11を上側(換言すれば、第2室12を下側)にして梱包箱20に収納される。但し、本発明はこれに限定されず、第2室12を上側にして人工腎臓用補液バッグ10A〜10Eを梱包箱20に収納してもよい。
【0035】
まず、人工腎臓用補液バッグ10A、10B(本発明の第1容器及び第2容器の一例)を、互いのポート14を向かい合わせた状態で梱包箱20の底面(緩衝板21を敷く場合は緩衝板21)に載置する。このとき、人工腎臓用補液バッグ10A、10Bは、梱包箱20の長手方向において隣接し且つ上下方向において外袋17の一部(例えば、2〜3cm程度)が重なり合った状態で梱包箱20に収納される。より詳細には、梱包箱20を上方から平面視した場合において、人工腎臓用補液バッグ10A、10Bは、ポート14A、14B同士が互いに重なり合うように梱包箱20に収納される。このとき、ポート14Aが水平方向より下を向くことによって、ポート14A、14Bの干渉が回避される。
【0036】
次に、人工腎臓用補液バッグ10C、10D(本発明の第3容器及び第4容器の一例)を、人工腎臓用補液バッグ10A、10Bの上に載置する。なお、人工腎臓用補液バッグ10C、10Dの向きや重なり方等は、人工腎臓用補液バッグ10A、10Bと同様である。さらに、人工腎臓用補液バッグ10E(本発明の第5容器の一例)を、梱包箱20の長手方向の中央部において人工腎臓用補液バッグ10C、10Dの上に載置する。梱包箱20に収納された人工腎臓用補液バッグ10Eのポート14Eの向きは、梱包箱20の長手方向に沿っていればどちら向きであってもよいが、本実施形態においては、直下に位置する人工腎臓用補液バッグ10Dの側を向いている。
【0037】
すなわち、人工腎臓用補液バッグ10A〜10Eは、梱包箱20の内部において、下から人工腎臓用補液バッグ10A、10B、10C、10D、10Eの順に一部が重なり合うように積層されており、且つ上下方向において隣接する人工腎臓用補液バッグ10A〜10Eの各ポート14A〜14Bが互いに反対を向くように配置されている。具体的には、人工腎臓用補液バッグ10Aは、梱包箱20の長手方向の一方側(図4の例では、左側)に偏った位置において、長手方向の他方側(図4の例では、右側)にポート14Aを向けて梱包箱20の底面に載置される。人工腎臓用補液バッグ10Bは、梱包箱20の長手方向の他方側に偏った位置において、長手方向の一方側にポート14Bを向け且つその一部が人工腎臓用補液バッグ10Aに重なった状態で梱包箱20の底面に載置される。
【0038】
以下同様に、人工腎臓用補液バッグ10Cは、梱包箱20の長手方向の一方側に偏った位置において、長手方向の他方側にポート14Cを向け且つその一部が人工腎臓用補液バッグ10Bに重なった状態で人工腎臓用補液バッグ10A上に載置される。人工腎臓用補液バッグ10Dは、梱包箱20の長手方向の他方側に偏った位置において、長手方向の一方側にポート14Dを向け且つその一部が人工腎臓用補液バッグ10Cに重なった状態で人工腎臓用補液バッグ10B上に載置される。人工腎臓用補液バッグ10Eは、梱包箱20の長手方向の中央部において、長手方向の他方側にポート14Eを向け且つその一部が人工腎臓用補液バッグ10Dに重なった状態で人工腎臓用補液バッグ10C上に載置される。
【0039】
次に、本実施形態における人工腎臓用補液バッグ梱包体の性能を検証するために、表1に示されるように、実施例に係る梱包体5セットと比較例に係る梱包体5セットのそれぞれに対して振動試験を実施した。実施例に係る梱包体は、図3及び図4に示される人工腎臓用補液バッグ梱包体である。一方、比較例に係る梱包体は、図5に示されるように、特許文献1に記載の包装箱30に図2に示される人工腎臓用補液バッグ10を5個収納したものである。振動試験では、振動試験器(F−0300BM/FA)を用いて、各梱包体を上下方向に1時間振動させ、前後方向に30分振動させ、左右方向に30分振動させ、さらに上下方向に2時間振動させた後、5セット(すなわち、25バッグ)中、いくつのバッグの酸素検知剤19が変色したか(外袋17内に酸素が侵入した場合、または人工腎臓用補液バッグ10が液漏れした場合に変色する)を確認して酸素検知剤変色率として算出するのと同時に、人工腎臓用補液バッグ10の液漏れがあるか否かを直接目視で確認して液漏れ率として算出した。
【0040】
【表1】
【0041】
表1に示されるように、実施例に係る梱包体1〜5における酸素検知剤変色率は、梱包体1で60%(すなわち、5個中3個で酸素が検知された)、梱包体3、5で20%、梱包体2、4で0%であり、全体の20%で酸素が検知されたことになる。一方、比較例に係る梱包体1〜5における酸素検知剤変色率は、梱包体1〜3、5で100%、梱包体4で80%であり、全体の96%で酸素が検知されたことになる。また、実施例に係る梱包体1〜5における液漏れ率は、0%であった。一方、比較例に係る梱包体1〜5における液漏れ率は、梱包体2で20%、梱包体1、3〜5で0%であり、全体の4%で液漏れが発生したことになる。
【0042】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態によれば、表1に示される振動試験の結果から明らかなように、隔壁を必要とする特許文献1に記載の包装箱30と比較して廃棄物の少ない簡易な方法で、運搬時等の振動や衝撃による人工腎臓用補液バッグ10及び外袋17の破損を有効に抑制することができる。
【0043】
また、緩衝板21を梱包箱20の底面に敷き、人工腎臓用補液バッグ10Eと梱包箱20の蓋との間の間隔に応じた厚みの高さ調整板で梱包箱20内の隙間を埋めることにより、運搬時等の振動や衝撃による人工腎臓用補液バッグ10及び外袋17の破損をさらに有効に抑制することができる。さらに、積層された人工腎臓用補液バッグ10A〜10Eの高さと、梱包箱20の内部空間の高さとを概ね一致させて緩衝板21及び高さ調整板を省略することにより、さらに廃棄物を削減することができる。
【0044】
また、本実施形態によれば、シール部13を外縁部16より軟弱に溶着することにより、第1室11或いは第2室12を圧縮するという簡単な操作によって、シール部13を隔離状態から流通状態に状態変化させることができる。一方、外縁部16をシール部13より強固に溶着することにより、人工腎臓用補液バッグ10からの液漏れを有効に抑制することができる。
【0045】
また、本実施形態によれば、外袋17内に二酸化炭素或いは窒素を充填し且つ脱酸素剤18を収納することにより、人工腎臓用補液バッグ10が酸素に晒されるのを有効に抑制することができる。また、外袋17に酸素検知剤19を収納することにより、外袋17が破損して薬液成分が変化する可能性や、外袋17内への酸素の侵入を容易に認識することができる。
【0046】
なお、本実施形態では、混合されることによって人工腎臓用補液となる第1液及び第2液を第1室11及び第2室12に封入した例を説明したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、第1室11及び第2室12に封入される液体には、混合されて薬剤(輸液)となるあらゆる液体(例えば、重炭酸水素ナトリウムを含む液体)が含まれるものとする。さらに、本発明の医療用複室容器は、本実施形態のようなバッグ形状のみならず、ボトル形状等であってもよい。
【符号の説明】
【0047】
10,10A,10B,10C,10D,10E・・・人工腎臓用補液バッグ
11,11A,11B,11C,11D,11E・・・第1室
12,12A,12B,12C,12D,12E・・・第2室
13,13A,13B,13C,13D,13E・・・シール部
14,14A,14B,14C,14D,14E・・・ポート
15・・・封止部材
16・・・外縁部
17・・・外袋
19・・・酸素検知剤
20・・・梱包箱
21・・・緩衝板
図1
図2
図3
図4
図5