(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の如き従来の攪拌装置を使用した混合方法及び管中混合工法では、専用の設備を必要とする為に、施設が大掛かりなものにならざるを得ず、例えば、管中混合方式の場合、製鋼スラグを供給するためのリクレーマ船と軟弱土と製鋼スラグとを混合・圧送する空気圧送船を必要とし、施工費用が嵩むという問題があった。
【0008】
一方、バックホウを使用した混合方法は、汎用機械を使用して簡易且つ安価に施工ができる半面、大量施工には不向きであった。
【0009】
ベルトコンベアの乗継ぎを利用した混合方法は、主に乾燥した状態又は含水比の低い砂質土とセメント等との混合を対象とするものであって、シルト・粘土分が多い浚渫土等の含水比が高い軟弱土と製鋼スラグとの混合には適さず、軟弱土と製鋼スラグとの混合に適用した場合、浚渫土等の軟弱土と製鋼スラグとが十分に混合されず、その為、ニ軸ミキサ等による強制的な混合を別途行う必要があり、攪拌装置を使用する混合方法と同様に施設が大掛かりなものにならざるを得なかった。
【0010】
また、落下エネルギを活用して軟弱土と添加物とを混合する方法においては、背の高い不安定な塔型の混練装置を使用するため、当該混練装置を安定した状態に設置する必要があり、設備が大掛かりとなり且つ、設置場所が制限されるという課題があり、また、このような混練装置には、十分な混合状態を得る為に電力で動作するパドル等の攪拌手段を備える場合が多々あり、より簡便な構造で軟弱土と製鋼スラグとの混合が可能な装置の開発が望まれている。
【0011】
そこで、本発明は、このような従来の問題に鑑み、浚渫土等の軟弱土と製鋼スラグとを簡易且つ安価に混合することができる
軟弱土に対する製鋼スラグ混合方法の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の如き従来の問題を解決するための請求項1に記載の発明の特徴は、一定量の軟弱土に対し所定の比率で製鋼スラグを添加し、該製鋼スラグと軟弱土とを混合する軟弱土に対する製鋼スラグ混合方法において、上流側のベルトコンベアの排出側端部が下流側のベルトコンベアの投入側端部より所定の落下高さ分だけ高い位置となるように設置される複数のベルトコンベアを有する移送手段と、該移送手段に投入される軟弱土の含水比を調整する含水比調整手段と、前記移送手段の上流側で一定量の軟弱土に所定の比率で製鋼スラグを添加するスラグ供給手段と、前記各ベルトコンベアの排出側端部下に所定の衝突距離を隔てて配置された一又は複数の混合用反発体からなる混合促進手段とを備えてなる混合装置を使用し、
且つ、最下流の前記ベルトコンベアの排出側端部を排出先の地面より前記所定の落下高さ分だけ高い位置となるように設置するとともに、前記排出先の地面部に排出方向に傾斜した法肩面を形成し、該法肩面を混合用反発体の衝突面部とし、前記含水比調整手段により適度な粘性及び流動性を備えるように軟弱土の含水比を調整し、それを前記移送手段に投入した後、前記移送手段の上流側にて前記軟弱土にスラグ供給手段より所定の比率で製鋼スラグを添加し、然る後、前記製鋼スラグが添加された軟弱土を前記各ベルトコンベアにより下流側に向けて移送しつつ、前記製鋼スラグが添加された軟弱土を前記ベルトコンベアの排出側端部より落下させて前記混合用反発体と衝突させ、該衝突を経た前記製鋼スラグが添加された軟弱土が前記下流側のベルトコンベアの投入側端部に投入される落下混合作業を各ベルトコンベア間の乗継ぎ毎に繰り返し、前記製鋼スラグと軟弱土とを混合することにある。
【0013】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記適度な粘性及び流動性を
備えるような含水比は、液性限界の1.2〜1.6倍であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る軟弱土に対する製鋼スラグ混合方法は、上述したように、一定量の軟弱土に対し所定の比率で製鋼スラグを添加し、該製鋼スラグと軟弱土とを混合することによりカルシア改質土を生成する軟弱土に対する製鋼スラグ混合方法において、上流側のベルトコンベアの排出側端部が下流側のベルトコンベアの投入側端部より所定の落下高さ分だけ高い位置となるように設置される複数のベルトコンベアを有する移送手段と、該移送手段に投入される軟弱土の含水比を調整する含水比調整手段と、前記移送手段の上流側で一定量の軟弱土に所定の比率で製鋼スラグを添加するスラグ供給手段と、前記各ベルトコンベアの排出側端部下に所定の衝突距離を隔てて配置された一又は複数の混合用反発体からなる混合促進手段とを備えてなる混合装置を使用し、前記含水比調整手段により適度な粘性及び流動性を備えるように軟弱土の含水比を調整することにより、混合用反発体に衝突する際の衝撃及び反発を利用した混合効果を得ることができる。
【0015】
また、含水比を調整した軟弱土を前記移送手段に投入した後、前記移送手段の上流側にて前記軟弱土にスラグ供給手段より所定の比率で製鋼スラグを添加し、然る後、前記製鋼スラグが添加された軟弱土を前記各ベルトコンベアにより下流側に向けて移送しつつ、前記製鋼スラグが添加された軟弱土を前記ベルトコンベアの排出側端部より落下させて前記混合用反発体と衝突させ、該衝突を経た前記製鋼スラグが添加された軟弱土が前記下流側のベルトコンベアの投入側端部に投入される落下混合作業を各ベルトコンベア間の乗継ぎ毎に繰り返し、前記製鋼スラグと軟弱土とを混合することにより、移送手段による一連の移送作業の過程の中で落下エネルギ及び混合用反発体に衝突した際の衝撃・反発を活用して軟弱土と製鋼スラグとを効率よく混合することができる。
【0016】
更に、本発明において、最下流の前記ベルトコンベアの排出側端部を排出先の地面より前記所定の落下高さ分だけ高い位置となるように設置するとともに、前記排出先の地面部に排出方向に傾斜した法肩面を形成し、該法肩面を混合用反発体の衝突面部とすると混合することにより、埋め立て地等の排出先への排出作業を軟弱土と製鋼スラグとの混合に利用することができる。
【0017】
また、本発明において、前記適度な粘性及び流動性を備えるような含水比は、液性限界の1.2〜1.6倍であることにより、本発明方法による製鋼スラグとの混合に適した粘性土を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明に係る混合装置の実施の態様を
図1〜
図4に示した実施例に基づいて説明する。尚、図中符号Aはカルシア改質土の移送先である埋立て地である。
【0020】
この混合装置1は、複数のベルトコンベア2,2...を有する移送手段3と、移送手段3に投入される軟弱土4の含水比を調整する図示しない含水比調整手段と、移送手段3の上流側で一定量毎に切り出された軟弱土4に対し所定の比率で製鋼スラグ5を添加するスラグ供給手段6とを備え、投入された軟弱土4及び製鋼スラグ5を埋立て地A等の移送先まで移送しつつ、軟弱土4と製鋼スラグ5とを混合するようになっている。
【0021】
移送手段3は、例えば
図1に示すように、水上に浮かべた揚土船(リクレーマ船)10と、水上に浮かべた複数のフローティングコンベア11,11とで構成され、バックホウ12等により土運船13より浚渫土等の軟弱土4を揚土し、それを一定量毎に切り出して最上流のベルトコンベア2に順次供給するようになっている。
【0022】
尚、図中符号14は、吐出量を調節可能なフィーダを備えた軟弱土供給用ホッパ14であって、バックホウ12等により土運船13より揚土した浚渫土等の軟弱土4を軟弱土供給用ホッパ14に投入し、それを一定量毎に切り出して最上流のベルトコンベア2に順次供給するようになっている。
【0023】
含水比調整手段は、土運船13に搭載された軟弱土4に加水する加水装置等のように移送手段3の上流に配置され、軟弱土4を製鋼スラグ5との混合に最適な含水比に調整するようになっている。
【0024】
軟弱土4の含水比は、液性限界(wL)の1.2〜1.6倍とし、軟弱土4が適度な粘性及び流動性を有する状態、詳しくは、シリンダフロー試験(JHS A 313)によるフロー値が85〜250mmとなるように調整されるようになっている。
【0025】
スラグ供給手段6は、例えば、吐出量を調節可能なフィーダを備えたホッパ15と、最上流のベルトコンベア2上に配置されたスラグ供給用ベルトコンベア16とを備え、フィーダにより一定量毎に切り出した製鋼スラグ5をスラグ供給用ベルトコンベア16によりベルトコンベア2上の軟弱土4に順次添加し、軟弱土4上に所定の比率(10〜40vol%)で製鋼スラグ5を層状に添加するようになっている。
【0026】
尚、供給される製鋼スラグ5は、ある程度粒径が大きく重量のあるものであると軟弱土中での攪乱効果が高く、粒径10mm〜25mmのものが製鋼スラグ全体の20%以上含まれることが好ましい。
【0027】
各ベルトコンベア2,2...は、
図1に示すように、投入側端部2aを低く、排出側端部2bが高くなるように傾けた配置に設置され、上流側のベルトコンベア2の排出側端部2bが下流側のベルトコンベア2の投入側端部2aより鉛直方向で所定の落下高さH分だけ高い位置となるように配置され、製鋼スラグ5が添加された軟弱土4が各ベルトコンベア2,2...間を乗継ぐ毎に上流側のベルトコンベア2の排出側端部2bより排出されて落下し、その際の落下エネルギを利用して軟弱土4と製鋼スラグ5とを混合するようになっている。
【0028】
落下高さHは、軟弱土4と製鋼スラグ5との混合に際し、落下エネルギを利用した混合効果が期待できる程度の高さとする。
【0029】
また、この混合装置1は、各ベルトコンベア2,2...の排出側端部2bより鉛直方向下側に所定の衝突距離Dを隔てて配置された一又は複数の混合用反発体20,20からなる混合促進手段22を備え、上流側のベルトコンベア2,2...より排出された製鋼スラグ5が添加された軟弱土4が混合用反発体20との衝突を経て下流側のベルトコンベア2に投入されることにより各ベルトコンベア2,2間の乗継ぎ毎に軟弱土4と製鋼スラグ5との混合が促進されるようになっている。
【0030】
混合用反発体20には、例えば、一定の硬度を有する平板状の鋼板等を使用し、この鋼板に軟弱土4及び製鋼スラグ5が衝突した際の衝撃と反発を利用して、軟弱土4と製鋼スラグ5とを混練するようになっている。
【0031】
また、混合用反発体20は、衝突面部21が水平面に対し角度θを成すように配置され、軟弱土4及び製鋼スラグ5に反発力を生じさせるとともに、衝突面部21が傾けて配置されたことにより衝突を経た製鋼スラグ5が添加された軟弱土4が下方の混合用反発体20又はベルトコンベア2の投入側端部2aに向けた落下軌跡を描くようになっている。尚、角度θは、落下軌跡に合わせて0〜60度とすることが好ましい。
【0032】
尚、角度θが小さい場合、混合用反発体20上に製鋼スラグが添加された軟弱土が残存する場合があり、その場合には、衝突面部上を摺動して混合用反発体20上に残存した製鋼スラグが添加された軟弱土を強制的にベルトコンベア2の投入側端部2aに向けて排出するような排出手段を備えてもよい。
【0033】
所定の衝突距離Dは、少なくとも1m以上であって、望ましくは2m以上である。また、混合用反発体20を複数備える場合には、各混合用反発体20,20は、互いに鉛直方向で衝突距離Dを隔てるように配置する。
【0034】
尚、混合用反発体20には、筒状の投入部下に下側に向けて縮小するテーパ筒状の漏斗部20aを有するホッパを使用し、漏斗部20aの内面を製鋼スラグ5が添加された軟弱土4を衝突させる衝突面部21としてもよい。
【0035】
また、混合促進手段22に混合用反発体20を複数備える場合、各混合用反発体20,20は、それぞれ軟弱土4の落下軌道に合わせて設置され、
図2に示すように、衝突面部21,21を共に排出側に向けて階段状に設けてもよく、
図3に示すように、衝突面部21,21を上下で向きを変え互い違い配置に設けてもよい。
【0036】
尚、各混合用反発体20は、台船上に設置された固定フレーム23を介して設置され、固定フレーム23に対する高さを調節することにより衝突距離Dが設定できるようになっている。
【0037】
次に、このような混合装置1を使用した軟弱土に対する製鋼スラグ混合方法について説明する。尚、上述の実施例と同様の構成には同一の符号を付して説明する。
【0038】
まず、土運船13にて運搬された浚渫土等の軟弱土4の含水比を事前に計測した上で、含水比調節手段により加水する等して、軟弱土4を製鋼スラグ5との混合に適した状態、即ち、適度な粘性及び流動性を有する状態(軟弱土4の含水比が液性限界の1.2〜1.6倍、シリンダフロー試験(JHS A 313)のフロー値が85〜250mm)となるように調整する。
【0039】
次に、含水比が調整された軟弱土4をバックホウ12等により揚土し、それを軟弱土供給用ホッパ14に投入する。
【0040】
軟弱土供給用ホッパ14に投入された軟弱土4は、一定量毎に切り出されて最上流のベルトコンベア2に投入され、ベルトコンベア2上を均された状態で移送される。
【0041】
そして、この移送される一定量の軟弱土4にスラグ供給手段6より所定の比率で製鋼スラグ5を添加する。即ち、製鋼スラグ5をフィーダにより一定量毎に切り出し、それをスラグ供給用ベルトコンベア16でベルトコンベア2上に順次移送し、軟弱土4上に所定の比率で層状を成すように添加する。
【0042】
そして、この製鋼スラグ5が添加された軟弱土4を各ベルトコンベア2,2...により移送しつつ、各ベルトコンベア2,2...間の乗継ぎ毎に、落下混合作業を繰り返し製鋼スラグ5と軟弱土4とを混合する。
【0043】
落下混合作業は、
図2、
図3に示すように、製鋼スラグ5が添加された軟弱土4をベルトコンベア2,2...の排出側端部2bより落下させ、それを落下軌道に合わせて配置された混合用反発体20,20に衝突させつつ、衝突を経た製鋼スラグ5が添加された軟弱土4を下流側のベルトコンベア2,2...の投入側端部2aに投入することにより行う。
【0044】
これにより、落下の際のエネルギを活用した混合効果とともに、混合用反発体20に衝突した際の衝撃による製鋼スラグ5の軟弱土4へののめり込みによる混合作用及び軟弱土4と製鋼スラグ5が混合用反発体20より受ける反発力による混合作用によって軟弱土4と製鋼スラグ5とが混合される。
【0045】
そして、各ベルトコンベア2,2...間の乗継ぎ毎に混合が促進され、軟弱土4に所定の比率で製鋼スラグ5が混合されたカルシア改質土7が生成され、該生成されたカルシア改質土7が移送手段3より埋立て地Aに排出される。
【0046】
尚、埋立て地Aにおけるカルシア改質土7の打設方法として、所謂法肩流下方式を採用した場合には、
図2に示すように、排出先の地面部に排出方向に傾斜した法肩面(斜面)30を形成し、最下流のベルトコンベア2,2...の排出側端部2bを排出先の地面より所定の落下高さH(衝突距離D)分だけ高い位置となるように設置する。そして、法肩面30を混合用反発体の衝突面部21として最後の落下混合作業を行いつつ、カルシア改質土7を埋立て地Aに打設する。
【0047】
このように構成された軟弱土に対する製鋼スラグ混合方法では、軟弱土4が混合に適した含水比(液性限界wLの1.2〜1.6倍)に調整され、軟弱土4が適度な粘性及び流動性を備えることにより、
図4(b)に示すように、混合用反発体20に衝突した際に、その衝撃により製鋼スラグ5が軟弱土4中にのめり込むと共に軟弱土4及び製鋼スラグ5が混合用反発体20に対して反発し、且つ、のめり込み及び反発した製鋼スラグ5が軟弱土4の粘性によって飛散することなく軟弱土4内に留まり、軟弱土4と製鋼スラグ5とが好適に混合される。
【0048】
また、混合用反発体20に衝突する際ののめり込み及び反発による混練効果には、衝突回数が大きく影響し、衝突回数、即ち、ベルトコンベア2,2...間の乗継ぎ毎に混合状態が向上し、埋立て地A等の移送先に排出される際には品質の優れたカルシア改質土7が生成される。
【0049】
一方、軟弱土4の含水比が低い(含水比が液性限界の1.2倍未満)場合には、軟弱土4が一定の硬さを有し、且つ、流動性が低いため、
図4(a)に示すように、混合用反発体20に衝突した際に、製鋼スラグ5が軟弱土4中にのめり込み難く、また、衝突時の衝撃が軟弱土4を介して製鋼スラグ5に伝わり、その衝撃で製鋼スラグ5の一部が弾かれて飛散してしまい好適な混合状態が得られない。
【0050】
また、軟弱土4の含水比が高い(含水比が液性限界の1.6倍以上)場合には、
図4(c)に示すように、軟弱土4自体の強度が不足している上、粘性が低く且つ流動性が高いため、更には、製鋼スラグ5の混合用反発体20に対する反発係数が軟弱土4の混合用反発体20に対する反発係数よりも高いため、混合用反発体20に衝突した際に、その衝撃及び反発により軟弱土4中に製鋼スラグ5が留まれずに軟弱土4と製鋼スラグ5とが分離され、そのため好適な混合状態が得られない。
【0051】
また、このように構成された軟弱土に対する製鋼スラグ混合方法では、移送手段を構成する各ベルトコンベア2,2...間を乗継ぐ毎に混合用反発体20に衝突させて落下混合作業を行うことにより、軟弱土4と製鋼スラグ5とが十分に混合され、一連の移送作業の中でカルシア改質土を大量且つ安価に生成できる。
【0052】
従って、軟弱土4と製鋼スラグ5とを強制的に混合させるための機械式ミキサ等の攪拌装置を必要とせず、設備を抑え安価に施工することができる。
【0053】
また、本発明方法では、移送途中に製鋼スラグ5が添加された軟弱土4に加水されることがないので、空気圧送の過程で軸封水が加水される従来の管中混合方式の混合方法に比べ同じ含水比の軟弱土を使用した場合強度の高い改質土7が生成される。
【0054】
更には、落下エネルギを活用するにおいて、ベルトコンベア間の乗継ぎ毎に落下混合作業を繰り返すようにしたことで、本発明方法では、上述の従来技術の如き背の高い塔状の混練装置を使用せずとも軟弱土と製鋼スラグとを混合でき、設置場所を選ばず施工が可能である。
【0055】
尚、上述の実施例では、移送手段3として、リクレーマ船10と複数のフローティングコンベア11,11...からなる船団を使用した例について説明したが、移送手段3は、このような構成に限定されず、例えば、地上に設置される複数のベルトコンベア2,2...をもって構成してもよく、リクレーマ船10と複数のフローティングコンベア11,11...からなる船団と、地上に設置されるベルトコンベア2,2...とを組み合わせてもよい。
【0056】
また、上述の実施例では、ベルトコンベア2上を流れる軟弱土4にスラグ供給用ベルトコンベア16を用いて製鋼スラグ5を添加するようにした例について説明したが、軟弱土に製鋼スラグを添加する手段は上述の実施例に限定されず、例えば、一定量毎に切り出した製鋼スラグ5をベルトコンベア2上で移送させ、当該ベルトコンベア2上を流れる製鋼スラグ5の上に一定量毎に切り出した軟弱土4を投入していき、それにより軟弱土4に製鋼スラグ5が所定の比率で添加されるようにしてもよい。
【0057】
次に、本発明に係る軟弱土に対する製鋼スラグ混合方法において、軟弱土4の含水比及び混合用反発体20に対する衝突回数がカルシア改質土7の品質に及ぼす影響について検証した参考実験について説明する。尚、上述の実施例と同様の構成には同一符号を付して説明する。
【0058】
本実験は、含水比の異なる軟弱土4に所定の比率(本実験では、25vol%)で製鋼スラグ5を添加してなる試験体を高さ1mの衝突距離Dを隔てて鋼板(混合用反発体20)に落下衝突させて落下混合作業を行い、それにより生成されたカルシア改質土7の材令28日目の一軸圧縮強さを測定し、当該圧縮強さと目視により軟弱土4と製鋼スラグ5との混合状態を評価した。また、混合用反発体20に対する衝突回数を違えた場合についても同様に生成されたカルシア改質土7の材令28日目の一軸圧縮強さを測定し、当該強度と目視により混合状態を評価した。
【0059】
尚、本実験において基準強度は、一軸圧縮強度が40kN/平方メートル以上に設定し、評価に際してはこの強度を基準に判断する。
その結果を表1に示す。
【0061】
軟弱土4の含水比が低い(液性限界の1.0倍)場合では、1回の衝突回数では平均強度が基準強度を下回り、また、目視による確認では、
図4(a)に示す如く軟弱土4上に製鋼スラグ5が残存し、十分に混合されていないことが確認された。また、衝突回数の増加に伴って平均強度は増したが、目視による確認では、混合が不十分であった。
【0062】
軟弱土4の含水比が高い場合(液性限界の1.8倍)では、全ての衝突回数において平均強度が基準強度を下回り、また、目視による確認では、衝突時に
図4(c)に示す如く製鋼スラグ5が軟弱土4より分離されて飛散したことが確認された。
【0063】
一方、軟弱土4の含水比をそれぞれ液性限界の1.2、1.6倍とした場合では、衝突回数に関わらず平均強度が基準強度、即ち、40kN/平方メートルを上回り、目視による確認でも、軟弱土4中に製鋼スラグ5が万遍無く混合されているのが確認された。また、衝突回数の増加に伴って平均強度も上昇し、各サンプル間の強度のバラつきも少なくなった。
【0064】
このことから、本発明の軟弱土4と製鋼スラグ5との混合においては、軟弱土4の含水比を調整し、軟弱土4を適度な粘性及び流動性を有する状態とすること、即ち、軟弱土4の含水比を液性限界の1.2〜1.6倍に調整することにより好適な混合状態を得られることが確認できた。
【0065】
また、本発明の軟弱土4と製鋼スラグ5との混合においては、衝突回数が増えることにより強度が増すとともに強度の安定したカルシア改質土7が生成できる傾向も確認できた。
【0066】
次に、本発明に係る軟弱土に対する製鋼スラグ混合方法において、衝突距離Dがカルシア改質土7の品質に及ぼす影響について検証した参考実験について説明する。尚、上述の実施例と同様の構成には同一符号を付して説明する。
【0067】
本実験は、所定の比率(本実験では、25vol%)で製鋼スラグ5を液性限界の1.4倍に含水比調整された軟弱土4に添加し、それを異なる衝突距離Dで鋼板(混合用反発体20)に落下衝突させる落下混合作業を3回行い、それにより生成されたカルシア改質土7の材令28日目の一軸圧縮強さを測定し、当該圧縮強さと目視により軟弱土4と製鋼スラグ5との混合状態を評価した。
【0068】
尚、本実験においても基準強度は、一軸圧縮強度が40kN/平方メートル以上に設定し、評価に際してはこの強度を基準に判断する。
【0070】
図5(b)に示す衝突距離Dを1mとした場合では、全てのサンプルが基準強度を上回ったものの、各サンプルの強度の分布にバラつきがあった。
【0071】
一方、
図5(a)に示す衝突距離Dを2mとした場合では、全てのサンプルが基準強度(40kN/平方メートル)を上回り、且つ、
図5(b)に示す衝突距離Dが1mの場合に比べて、その強度のバラつきが少なく、安定した品質のカルシア改質土が生成された。
【0072】
このことから、衝突距離Dが大きいほど混合効果が高くなる傾向を確認できた。