(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
更に、スルフィド系シランカップリング剤、液状クマロンインデン樹脂、及び水酸化アルミニウムからなる群より選択される少なくとも1種を含有する請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、天然ゴム、ブタジエンゴム、シリカ、及び前記式(1)で示されるシランカップリング剤を所定量含有する。本発明では、多量の天然ゴム、ブタジエンゴム、シリカを含む配合に、特定シランカップリング剤を配合することにより、他の配合に添加する場合に比べて、低燃費性、耐摩耗性、氷雪上性能の性能バランスが効率的に改善され、一般に両立が困難な前記性能バランスを相乗的に改善できる。
【0014】
特に、前記式(1)で示されるシランカップリング剤は、従来のシランカップリング剤と異なり、シリカ及びポリマーと相互作用する官能基の間に剛直な環状構造を有する化合物であるため、ポリマーとシリカを適度な距離で固定し、低燃費性、氷上性能がバランスよく向上し、前記性能バランスが顕著に改善される。
【0015】
本発明では、ゴム成分として、多量の天然ゴム(NR)が使用される。これにより、前記性能バランスが顕著に改善される。
NRとしては特に限定されず、例えば、SIR20、RSS#3、TSR20、脱タンパク質天然ゴム、高純度天然ゴム等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0016】
更にNRとして、シリカとの反応性がある官能基(シリカ反応性官能基)を有する天然ゴム(変性NR)も使用できる。これにより、優れた低燃費性が得られる。前記シリカ反応性官能基は、シリカに対する反応性を持つ基であれば特に限定されないが、シリカとの相互作用の点で、シリル基、アミノ基、アミド基、水酸基、エポキシ基が特に好ましい。なお、官能基の導入箇所は特に限定されず、ゴムの主鎖、末端等が挙げられる。
【0017】
変性NRとして、例えば、エポキシ化天然ゴム(ENR)を好適に使用できる。ここで、ENRのエポキシ化率は1〜85モル%が好ましい。ここで、エポキシ化率とは、エポキシ化前の天然ゴム中の炭素間二重結合の全数のうちエポキシ化された数の割合を意味し、例えば滴定分析や核磁気共鳴(NMR)分析などにより求められる。
【0018】
ゴム成分100質量%中のNRの含有量は、20質量%以上、好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上である。20質量%未満であると、ゴム強度が低下したり、混練り時のゴムの纏まりが悪くなって生産性が悪化するおそれがある。また、該NRの含有量は、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下である。70質量%を超えると、氷上性能が悪化するおそれがある。
【0019】
本発明のゴム組成物は、多量のブタジエンゴム(BR)を含む。これにより、前記性能バランスが顕著に改善される。
BRにシリカを配合した配合ゴムは、一般にシリカ等の充填剤の分散性が低く、所望の性能を得ることが難しいが、本発明では、式(1)のシランカップリング剤の配合により、シリカとゴム成分との相互作用が高められる。従って、充填剤の分散性が向上し、低燃費性、氷上性能、耐摩耗性がバランス良く改善される。
【0020】
BRとしては特に限定されず、タイヤ工業で一般的なものを使用できる。
更にBRとして、シリカとの反応性がある官能基(シリカ反応性官能基)を有するブタジエンゴム(変性BR)も使用できる。これにより、優れた低燃費性が得られる。前記シリカ反応性官能基は、前記と同様の基が好適例として挙げられ、官能基の導入箇所も同様に、ゴムの主鎖、末端等、特に限定されない。
【0021】
本発明の効果が顕著に得られるという点から、変性BRとして、シス−1,4−結合量が98.5質量%以上であり、活性末端を有するポリブタジエンを用い、このポリブタジエンの活性末端に、アルコキシシリル基を含む2つ以上の反応基を有するアルコキシシラン化合物を導入させる変性反応を行う変性工程(A)と、周期律表の第4族、12族、13族、14族及び15族に含まれる元素からなる群より選択される少なくとも1種の元素を含有する縮合触媒の存在下で、前記活性末端に導入されたアルコキシシラン化合物の残基を縮合反応させる縮合工程(B)とを備え、前記ポリブタジエンとして、下記(a)〜(c)成分の混合物を主成分とする触媒組成物の存在下で重合したポリブタジエンを用いる製造方法により得られるものを好適に使用できる。
(a)成分:ランタノイドからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含有するランタノイド含有化合物、又は、該ランタノイド含有化合物とルイス塩基との反応により得られる反応生成物
(b)成分:アルミノオキサン、及び、一般式;AlR
11R
12R
13で表される有機アルミニウム化合物(ただし、一般式中、R
11及びR
12は、同一又は異なって、炭素数1〜10の炭化水素基又は水素原子を表す。R
13は、R
11及びR
12と同一又は異なって、炭素数1〜10の炭化水素基を表す。)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物
(c)成分:その分子構造中に少なくとも1個のヨウ素原子を含有するヨウ素含有化合物
【0022】
すなわち、シス−1,4−結合量が98.5質量%以上であるポリブタジエンの活性末端に、アルコキシシラン化合物を導入させる変性反応を行い、周期律表の第4族、12族、13族、14族及び15族に含有される元素のうちの少なくとも1種の元素を含む縮合触媒の存在下で、前記活性末端に導入されたアルコキシシラン化合物のアルコキシシラン化合物残基を縮合反応させることによって、変性BRを製造できる。
【0023】
上記変性工程(A)は、シス−1,4−結合量が98.5質量%以上であり、活性末端を有するポリブタジエンを用い、このポリブタジエンの活性末端に、アルコキシシリル基を含む2つ以上の反応基を有するアルコキシシラン化合物を導入させる変性反応を行う工程であり、公知の変性方法で実施できる。
【0024】
上記(a)成分におけるランタノイド含有化合物としては公知のものを使用でき、ネオジム含有化合物が好適である。なかでも、ネオジムのリン酸塩、又は、ネオジムのカルボン酸塩が好ましく、ネオジムのバーサチック酸塩、又は、ネオジムの2−エチルヘキサン酸塩が特に好ましい。
【0025】
上記(b)成分のアルミノオキサン、AlR
11R
12R
13で表される有機アルミニウム化合物としては公知のものを使用でき、例えば、メチルアルモキサン(以下、「MAO」とも称する。)、エチルアルモキサン、n−プロピルアルモキサン、n−ブチルアルモキサン、イソブチルアルモキサン;水素化ジイソブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、水素化ジエチルアルミニウム;等が挙げられる。
【0026】
上記(c)成分のヨウ素含有化合物としては、その分子構造中に少なくとも1個のヨウ素原子を含有している限り特に制限されない。なかでも、トリメチルシリルアイオダイド等のヨウ化ケイ素化合物;メチルアイオダイド、ヨードホルム、ジヨードメタン等のヨウ化炭化水素化合物;等が挙げられる。
【0027】
なお、上記各成分((a)〜(c)成分)の配合割合は、必要に応じて適宜設定すればよい。また、上述した触媒には、(a)〜(c)成分以外に、必要に応じて、ブタジエン等の化合物を適宜配合してもよい。
【0028】
上記(a)〜(c)成分の混合物を主成分とする触媒組成物は、公知の方法で調製できる。なお、ポリブタジエンのシス−1,4−結合量は、重合温度をコントロールすることによって、容易に調整できる。
【0029】
上記変性工程(A)に用いるアルコキシシラン化合物(以下、「変性剤」とも称する。)は、アルコキシシリル基を含む2つ以上の反応基を有するものである。アルコキシシリル基以外の反応基としては、特にその種類は限定されないが、例えば、エポキシ基、イソシアネート基、カルボニル基、及びシアノ基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基が好ましい。なお、上記アルコキシシラン化合物は、部分縮合物でも、該アルコキシシラン化合物と該部分縮合物の混合物でもよい。
【0030】
上記アルコキシシラン化合物の具体例としては、エポキシ基を含有するアルコキシシラン化合物(以下、「エポキシ基含有アルコキシシラン化合物」とも称する。)として、2−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、2−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、(2−グリシドキシエチル)メチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)ジメトキシシランが好適なものとして挙げられる。中でも、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランがより好ましい。
【0031】
イソシアネート基を含有するアルコキシシラン化合物(以下、「イソシアネート基含有アルコキシシラン化合物」とも称する。)としては、例えば、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリイソプロポキシシランなどが挙げられる。なかでも、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシランが特に好ましい。
【0032】
カルボニル基を含有するアルコキシシラン化合物(以下、「カルボニル基含有アルコキシシラン化合物」とも称する。)としては、3−メタクリロイロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロイロキシプロピルトリイソプロポキシシランなどが挙げられる。なかでも、3−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシランが特に好ましい。
【0033】
シアノ基を含有するアルコキシシラン化合物(以下、「シアノ基含有アルコキシシラン化合物」とも称する。)としては、3−シアノプロピルトリエトキシシラン、3−シアノプロピルトリメトキシシラン、3−シアノプロピルメチルジエトキシシラン、3−シアノプロピルトリイソプロポキシシランなどが挙げられる。なかでも、3−シアノプロピルトリメトキシシランが特に好ましい。
【0034】
上記縮合工程(B)は、周期律表の第4族、12族、13族、14族及び15族に含まれる元素からなる群より選択される少なくとも1種の元素を含有する縮合触媒の存在下で、前記活性末端に導入されたアルコキシシラン化合物の残基を縮合反応させる工程である。上記縮合工程(B)の縮合反応は、公知の方法で実施できる。
【0035】
上記縮合触媒は、周期律表の第4族、12族、13族、14族及び15族に含まれる元素からなる群より選択される少なくとも1種の元素を含有する公知の縮合触媒が使用可能であり、例えば、チタン(Ti)(第4族)、スズ(Sn)(第14族)、ジルコニウム(Zr)(第4族)、ビスマス(Bi)(第15族)及びアルミニウム(Al)(第13族)からなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むものが挙げられる。なかでも、チタン(Ti)を含む縮合触媒が好ましく、チタン(Ti)のアルコキシド、カルボン酸塩又はアセチルアセトナート錯塩が更に好ましい。
【0036】
低温特性を充分に確保するという理由から、本発明におけるBRのシス含有量は、70質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、97質量%以上が更に好ましい。なお、本明細書において、シス含量は、赤外吸収スペクトル分析により算出される。
【0037】
BRの分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.3以上、より好ましくは1.4以上である。1.3未満であると、加工性が悪化するおそれがある。該Mw/Mnは、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.0以下、さらに好ましくは3.5以下である。5.0を超えると、耐摩耗性が悪化する傾向がある。なお、本発明において、Mn、Mwは、GPCを用い、標準ポリスチレンより換算した値である。
【0038】
ゴム成分100質量%中のBR含有量は、必要な雪氷上性能等を発揮させる観点から、20質量%以上、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上である。また、該BRの含有量は、加工性の観点から、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは65質量%以下である。
【0039】
ゴム成分100質量%中のNR及びBRの合計含有量は、好ましくは60〜100質量%、より好ましくは75〜100質量%、更に好ましくは90〜100質量%で、100質量%でも良い。該合計含有量が多量である場合、前記性能バランスが効率的に改善され、相乗的に改善される。
【0040】
上記ゴム成分は、上記天然ゴム及び上記ブタジエンゴム以外の他のゴムを含んでもよい。上記他のゴムとしては、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、ブチルゴム(IIR)等が挙げられる。
【0041】
本発明では、多量のシリカが用いられる。これにより、前記性能バランスが顕著に改善される。シリカは、ゴム分野で一般的なものを使用できる。例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)等が挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。シリカは、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0042】
シリカのチッ素吸着比表面積(N
2SA)は、40m
2/g以上が好ましく、50m
2/g以上がより好ましく、100m
2/g以上がさらに好ましく、130m
2/g以上が特に好ましく、160m
2/g以上が最も好ましい。40m
2/g未満では、加硫後の破壊強度が低下する傾向がある。また、シリカのN
2SAは、500m
2/g以下が好ましく、300m
2/g以下がより好ましく、250m
2/g以下が更に好ましく、200m
2/g以下が特に好ましい。500m
2/gを超えると、低発熱性、ゴム加工性が低下する傾向がある。なお、シリカのチッ素吸着比表面積は、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
【0043】
本発明のゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対して、シリカを50質量部以上含む。これにより、優れた氷上性能が得られる。シリカの含有量は、60質量部以上がより好ましい。シリカの含有量の上限は、200質量部以下が好ましく、150質量部以下がより好ましい。200質量部を超えると、十分にゴムに分散せず、破壊強度に劣ったり、低燃費性が低下する傾向がある。
【0044】
本発明のゴム組成物は、カーボンブラックを含むことが好ましい。使用可能なカーボンブラックとしては特に限定されず、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAF等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。これらは、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0045】
カーボンブラックのチッ素吸着比表面積(N
2SA)は、好ましくは80m
2/g以上、より好ましくは100m
2/g以上である。80m
2/g未満であると、耐候性や帯電防止性能を充分に改善できないおそれがある。カーボンブラックのN
2SAは、好ましくは200m
2/g以下、より好ましくは150m
2/g以下である。200m
2/gを超えると、加工性が悪化する傾向がある。なお、カーボンブラックのチッ素吸着比表面積は、JIS K6217のA法によって測定される。
【0046】
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上である。1質量部未満であると、カーボンブラックによる改善効果が充分に得られないおそれがある。また、カーボンブラックの含有量は、好ましくは30質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。30質量部を超えると、低燃費性、加工性が悪化する傾向がある。
【0047】
本発明のゴム組成物には、水酸化アルミニウムを配合してもよい。これにより、氷上性能を向上できる。通常、水酸化アルミニウムを配合すると、ゴム成分との相互作用が弱いことにより耐摩耗性が低下する傾向があるが、式(1)のシランカップリング剤を用いることにより、耐摩耗性を維持しつつ、氷上性能を向上できる。
【0048】
水酸化アルミニウムの平均一次粒子径は、好ましくは0.3μm以上、より好ましくは0.4μm以上である。0.3μm未満では、分散が困難となり、耐摩耗性が低下する傾向がある。また、該平均一次粒子径は、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下である。10μmを超えると、破壊核となり、耐摩耗性が低下する傾向がある。なお、本発明において、平均一次粒子径は数平均粒子径であり、透過型電子顕微鏡により測定される。
【0049】
水酸化アルミニウムの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましい。0.1質量部未満であると、氷上性能が十分に向上しない傾向があり、20質量部を超えると、低燃費性が低下する恐れがある。
【0050】
本発明では、下記式(1)で表されるシランカップリング剤(シリル化コアポリスルフィドシラン)が用いられる。
[Y
1R
1S
x−]
m[G
1(R
2SiX
1X
2X
3)
a]
n[G
2]
o[R
3Y
2]
p (1)
(式中、
G
1は、独立して、[(CH
2)
b−]
cR
4[−(CH
2)
dS
x−]
eで表されるポリスルフィド基を持つ炭素数1〜30の多価炭化水素基である。
G
2は、独立して、[(CH
2)
b−]
cR
5[−(CH
2)
dS
x−]
eで表されるポリスルフィド基を持つ炭素数1〜30の多価炭化水素基である。
Y
1及びY
2は、独立して、−SiX
1X
2X
3で示されるシリル基、水素、カルボキシル基、又は−C(=O)OR
6で示されるエステル基である。
X
1は、独立して、−Cl、−Br、−OH、−OR
6、又はR
6C(=O)O−である。
X
2及びX
3は、独立して、水素、R
6、X
1、又はシラノールの縮合から生じる−OSi含有基である。
R
1及びR
3は、独立して、炭素数1〜20の2価炭化水素基である。
R
2は、独立して、−(CH
2)
f−で表される直鎖状炭化水素基である。
R
4は、独立して、炭素数1〜28の多価炭化水素基又は炭素数1〜27のヘテロ原子含有多価炭化水素基である。
R
5は、独立して、炭素数1〜28の多価炭化水素基である。
R
6は、炭素数1〜20の1価炭化水素基である。
a、b、c、d、e、f、m、n、o、p及びxは各々独立し、該a、c及びeは1〜3、該b及びdは1〜5、該fは0〜5、該m及びpは1〜100、該nは1〜15、該oは0〜10、該xは1〜10である。)
【0051】
本発明では、式(1)の化合物、特に、複数のポリスルフィド鎖が同一線上にない立体配置に配向し、かつ、コアが第一級炭素原子に結合する、複数のポリスルフィド基を含有しているシリル化コアポリスルフィドを用いることで、例えば、シクロヘキシルコアのような立体障害が大きく反応性が小さい基を有するシランカップリング剤であっても、その反応性を向上し、本発明の効果が良好に得られる。
【0052】
R
1及びR
3の2価炭化水素基としては、直鎖状又は分岐状のアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、アラルキレン基等が挙げられる。R
1及びR
3の炭素数は、1〜5が好ましい。
【0053】
R
4の多価炭化水素基としては、a+c+e−1個の水素が置換された環状、分岐状又は直鎖状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。R
4のヘテロ原子含有多価炭化水素基は、窒素、酸素、硫黄、リン等のヘテロ原子を含む前記多価炭化水素基等であり、例えば、エーテル基、ポリスルフィド基、第三級アミン基、シアノ基、シアヌレートC
3N
3基等を含む環状、分岐状又は直鎖状の多価脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。なお、R
4の炭素数は、3〜10が好ましい。
【0054】
R
5の多価炭化水素基としては、c+e−1個の水素が置換された環状、分岐状又は直鎖状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられ、該多価炭化水素基の炭素数は1〜27が好ましい。なお、R
5の炭素数は、3〜10が好ましい。
【0055】
R
6の1価炭化水素基としては、直鎖状又は分岐状のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。なお、R
6の炭素数は、1〜5が好ましい。
【0056】
なお、直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソブチル基等;アルケニル基としては、ビニル基、プロペニル基、アリル基、メタリル基等;アルキニル基としては、アセチレニル基、プロパルギル基、メチルアセチレニル基等;が挙げられる。また、アリール基としては、フェニル基、ナフタレニル等;アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基等;が挙げられる。
【0057】
環状のアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基としては、ノルボルニル基、ノルボルネニル基、エチルノルボルニル基、エチルノルボルネニル基、エチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキセニル基、シクロヘキシルシクロヘキシル基、シクロドデカトリエニル基などが挙げられる。
【0058】
Y
1及びY
2は前述の基であるが、なかでも、−SiX
1X
2X
3で示されるシリル基が好ましい。
【0059】
X
1は前述の基であるが、なかでも、−OH、−OR
6が好ましい。
X
1の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基、ヒドロキシ基、クロロ基、アセトキシ基等が挙げられる。
【0060】
X
2及びX
3は前述の基であるが、なかでも、R
6、X
1として列挙した基、シラノールの縮合から生じる−OSi含有基が好ましい。
X
2及びX
3の具体例としては、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、フェニル基、前記X
1の具体例等が挙げられる。
【0061】
aは1〜2、bは1〜3、cは1、dは1〜3、eは1、fは0〜3、mは1、nは1〜10、oは0〜1、pは1、xは1〜4が好ましい。
【0062】
G
1における炭素数1〜30の多価炭化水素基について、3座(3価)の基の代表例としては、−CH
2(CH
2)
q+1CH(CH
2−)−、−CH(CH
3)(CH
2)
qCH(CH
2−)
2−(qは0〜20である。);−CH
2CH
2(C
6H
4)CH(CH
2−)−、−CH
2CH
2(C
6H
3−)CH
2CH
2−(C
6H
4は二置換ベンゼン環、C
6H
3−は三置換環である。);−CH
2(CH−)CH
2CH
2−、−CH
2(C−)(CH
3)CH
2CH
2−、−CH
2CH(CH
3)(CH−)CH
2−等が挙げられる。また、他の多価の基の代表例としては、−CH(CH
2−)(CH
2)
qCH(CH
2−)−(qは1〜20である。);−CH
2(CH−)(C
6H
4)CH(CH
2−)−(C
6H
4は二置換ベンゼン環である。);−CH
2(CH−)CH
2OCH
2CH(CH
2−)−、−CH
2(CH−)(CH−)CH
2−;等が挙げられる。
【0063】
G
2における炭素数1〜30の多価炭化水素基について、2座(2価)の基の代表例としては、−CH
2(CH
2)
q+1CH
2(CH
2−)、CH
2(CH
3)(CH
2)
qCH(CH
2−)
2(qは0〜20である。);−CH
2CH
2(C
6H
4)CH
2CH
2−(C
6H
4は二置換ベンゼン環である。);−CH
2CH
2CH
2CH
2−、−CH
2(CH)(CH
3)CH
2CH
2−、−CH
2CH(CH
3)CH
2CH
2−等が挙げられる。また、他の多価の基としては、−CH
2(CH
2)
q+1CH(CH
2−)−(qは0〜20である。)等の3座(3価)の基;等が挙げられる。
【0064】
前記式(1)で示されるシランカップリング剤のなかでも、下記式の化合物が好ましい。
【化2】
(式中、
Y
1及びY
2は、独立して、−SiX
1X
2X
3で示されるシリル基、水素、カルボキシル基、又は−C(=O)OR
6で示されるエステル基である。
X
1は、独立して、−Cl、−Br、−OH、−OR
6、又はR
6C(=O)O−である。
X
2及びX
3は、独立して、水素、R
6、X
1、又はシラノールの縮合から生じる−OSi含有基である。
R
1及びR
3は、独立して、炭素数1〜20の2価炭化水素基である。
R
2は、独立して、−(CH
2)
f−で表される直鎖状炭化水素基である。
R
4は、独立して、a+c+e−1個の水素が置換された環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基である。
R
6は、炭素数1〜20の1価炭化水素基である。
a、b、c、d、e、f、m、n、p及びxは各々独立し、該a、c及びeは1〜3、該b及びdは1〜5、該fは0〜5、該m及びpは1〜100、該nは1〜15、該xは1〜10である。)
【0065】
前述の式(1)で示されるシランカップリング剤の具体例としては、4−(2−トリエトキシシリル−1−エチル)−1,2−ビス−(13−トリエトキシシリル−3,4,5,6−テトラチアトリデシル)シクロヘキサン;4−(2−トリエトキシシリル−1−エチル)−1,2−ビス−(13−トリエトキシシリル−3,4,5,6−テトラチアトリデシル)シクロヘキサン;4−(2−ジエトキシメチルシリル−1−エチル)−1,2−ビス−(13−トリエトキシシリル−3,4,5,6−テトラチアトリデシル)シクロヘキサン;4−(2−トリエトキシシリル−1−エチル)−1,2−ビス−(10−トリエトキシシリル−3,4,5,6,7−ペンタチアデシル)シクロヘキサン;1−(2−トリエトキシシリル−1−エチル)−2,4−ビス−(10−トリエトキシシリル−3,4,5,6,7−ペンタチアデシル)シクロヘキサン;4−(2−トリエトキシシリル−1−エチル)−1,2−ビス−(9−トリエトキシシリル−3,4,5,6−テトラチアノニル)シクロヘキサン;1−(2−トリエトキシシリル−1−エチル)−2,4−ビス−(9−トリエトキシシリル−3,4,5,6−テトラチアノニル)シクロヘキサン;2−(2−トリエトキシシリル−1−エチル)−1,4−ビス−(9−トリエトキシシリル−3,4,5,6−テトラチアノニル)シクロヘキサン;4−(2−トリエトキシシリル−1−エチル)−1,2−ビス−(8−トリエトキシシリル−3,4,5−トリチアオクチル)シクロヘキサン;1−(2−トリエトキシシリル−1−エチル)−2,4−ビス−(8−トリエトキシシリル−3,4,5−トリチアオクチル)シクロヘキサン;2−(2−トリエトキシシリル−1−エチル)−1,4−ビス−(8−トリエトキシシリル−3,4,5−トリチアオクチル)シクロヘキサン;4−(2−トリエトキシシリル−1−エチル)−1,2−ビス−(7−トリエトキシシリル−3,4−ジチアヘプチル)シクロヘキサン;2−(2−トリエトキシシリル−1−エチル)−1,4−ビス−(7−トリエトキシシリル−3,4−ジチアヘプチル)シクロヘキサン;1−(2−トリエトキシシリル−1−エチル)−2,4−ビス−(7−トリエトキシシリル−3,4−ジチアヘプチル)シクロヘキサン;2−(2−トリエトキシシリル−1−エチル)−1−(7−トリエトキシシリル−3,4−ジチアヘプチル)−2−(8−トリエトキシシリル−3,4,5−トリチアオクチル)シクロヘキサン;4−(2−トリエトキシシリル−1−エチル)−1,2−ビス−(9−トリエトキシシリル−3,4,5,6−テトラチアノニル)ベンゼン;ビス−[2−[4−(2−トリエトキシシリル−1−エチル)−2−(9−トリエトキシシリル−3,4,5,6−テトラチアノニル)シクロヘキシル]エチル]テトラスルフィド;ビス−[2−[4−(2−トリエトキシシリル−1−エチル)−2−(9−トリエトキシシリル−3,4,5,6−テトラチアノニル)シクロヘキシル]エチル]トリスルフィド;ビス−[2−[4−(2−トリエトキシシリル−1−エチル)−2−(9−トリエトキシシリル−3,4,5,6−テトラチアノニル)シクロヘキシル]エチル]ジスルフィド;ビス−[2−[4−(2−トリエトキシシリル−1−エチル)−2−(7−トリエトキシシリル−3,4−ジチアヘプチル)シクロヘキシル]エチル]ジスルフィド;ビス−[2−[4−(2−トリエトキシシリル−1−エチル)−2−(7−トリエトキシシリル−3,4−ジチアヘプチル)シクロヘキシル]エチル]トリスルフィド;ビス−[2−[4−(2−トリエトキシシリル−1−エチル)−2−(7−トリエトキシシリル−3,4−ジチアヘプチル)シクロヘキシル]エチル]テトラスルフィド;ビス−[2−[4−(2−トリエトキシシリル−1−エチル)−2−(9−トリエトキシシリル−3,4,5,6−テトラチアノニル)フェニル]エチル]テトラスルフィド;ビス−[2−[4−(2−トリエトキシシリル−1−エチル)−3−ビス−(9−トリエトキシシリル−3,4,5,6−テトラチアノニル)シクロヘキシル]エチル]トリスルフィド;ビス−[2−[4−(2−ジエトキシメチルシリル−1−エチル)−2−(7−トリエトキシシリル−3,4−ジチアヘプチル)シクロヘキシル]エチル]ジスルフィド;これらの任意の異性体;等が挙げられる。これらは単独又は2種以上を併用できる。
【0066】
なかでも、(2−トリエトキシシリルエチル)−ビス−(7−トリエトキシシリル−3,4−ジチアヘプチル)シクロヘキサン、(2−トリエトキシシリルエチル)−ビス−(7−トリエトキシシリル−3,4,5,6−テトラチアノニル)シクロヘキサン、及びこれらの任意の異性体が好ましい。
【0067】
前記式(1)で示されるシランカップリング剤は、例えば、HSi(X
1X
2X
3)で示されるヒドロシラン(X
1、X
2、X
3は前記と同様)と、反応性二重結合を有する炭化水素を反応する工程(a)、フリーラジカル剤の存在下で、前記工程(a)で得られた化合物と、R
6C(=O)SH(R
6は前記と同様)で示される硫化剤と反応する工程(b)、プロトン供与体を用いてメルカプト基を脱ブロック化する工程(c)、前記工程(c)で得られたメルカプタンと、塩基及び硫黄の混合物と反応する工程(d)、並びに、前記工程(d)で得られた化合物と、塩素、臭素又はヨウ素の脱離基を有する置換若しくは非置換の炭化水素と反応する工程(e)を含む製法により調製できる。
【0068】
工程(a)における前記反応性二重結合を有する炭化水素としては、例えば、下記式で示される化合物が挙げられる。
【化3】
(式中、R
4、c及びeは前記と同様である。gは0〜3、hは0〜3、iは0〜3である。)
【0069】
フリーラジカル剤としては、酸化剤が挙げられる。例えば、チオカルボン酸を下記式で示されるチオカルボン酸ラジカルに転換できる化合物が挙げられる。酸素、ペルオキシド、ヒドロペルオキシドなども使用可能である。
【化4】
【0070】
プロトン供与体としては、任意の水素含有ヘテロカーボン又は置換へテロカーボンで、工程(c)でチオカルボン酸エステル中間体と反応し、脱ブロック化メルカプタンの生成が可能な化合物を使用することが可能である。例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロパノールなどのアルコール;アンモニア、メチルアミン、プロピルアミン、ジエタノールアミンなどのアミン;プロピルメルカプタン、ブチルメルカプタンなどのメルカプタン;等が挙げられる。
【0071】
脱離基を有する置換若しくは非置換の炭化水素としては、Y
1R
1Z、Y
2R
3Z(Y
1、Y
2、R
1及びR
3は前記と同様である。Zは、独立して、Cl、Br又はIである。)で示される化合物が挙げられる。
【0072】
反応は、アルコール、エーテル、炭化水素溶媒などの有機溶媒の存在下又は非存在下で実施できる。有機溶媒としては、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0073】
本発明のゴム組成物において、前記式(1)で示されるシランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは1.0質量部以上、より好ましくは5.0質量部以上、更に好ましくは7.0質量部以上である。1.0質量部未満であると、充填材との反応が不十分になり、シランカップリング剤の優れた加工性向上効果が引き出せない恐れがある。該含有量は、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である。30質量部を超えても、シリカの分散効果は向上せず、コスト的に不利になる可能性がある。
【0074】
式(1)で示されるシランカップリング剤と、他のシランカップリング剤を併用してもよく、例えば、スルフィド基を有するシランカップリング剤(ポリスルフィドシラン)を併用することが好ましい。
【0075】
スルフィド基を有するシランカップリング剤としては、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリメトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィドなどが挙げられる。上記カップリング剤は、一般的に一定の分布を持った混合物として市販されており、エボニック社製のSi75、Si69等が好適にあげられる。
【0076】
なお、他のシランカップリング剤を併用した場合、シランカップリング剤の合計含有量の好ましい範囲は上記と同様である。
【0077】
本発明では、通常、加硫剤、加硫促進剤が配合される。加硫剤、加硫促進剤としては特に限定されず、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0078】
本発明の効果が良好に得られるという点から、加硫剤としては、硫黄が好ましく、粉末硫黄がより好ましい。また、硫黄と他の加硫剤を併用してもよい。他の加硫剤としては、例えば、田岡化学工業(株)製のタッキロールV200、フレキシス社製のDURALINK HTS(1,6−ヘキサメチレン−ジチオ硫酸ナトリウム・二水和物)、ランクセス社製のKA9188(1,6−ビス(N,N’−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン)などの硫黄を含む加硫剤や、ジクミルパーオキサイドなどの有機過酸化物などが挙げられる。
【0079】
加硫剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上であり、また、好ましくは15質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であれば、本発明の効果が良好に得られるとともに、良好な引張強度、耐摩耗性及び耐熱性も得られる。
【0080】
加硫促進剤としては、グアニジン類、スルフェンアミド類、チアゾール類、チウラム類、ジチオカルバミン酸塩類、チオウレア類、キサントゲン酸塩類が好ましい。これらは、単独で用いても構わないが、用途に応じて2種以上を組み合わせることが望ましい。なかでも、少なくともグアニジン類加硫促進剤を用いることが低燃費性と他のゴム物性のバランスの上で望ましい。
【0081】
グアニジン類加硫促進剤としては、1,3−ジフェニルグアニジン、1,3−ジ−o−トリルグアニジン、1−o−トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ−o−トリルグアニジン塩、1,3−ジ−o−クメニルグアニジン、1,3−ジ−o−ビフェニルグアニジン、1,3−ジ−o−クメニル−2−プロピオニルグアニジン等が挙げられる。なかでも、反応性が高い点で、1,3−ジフェニルグアニジン、1,3−ジ−o−トリルグアニジン、1−o−トリルビグアニドが特に好ましい。
【0082】
加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1〜5質量部が好ましく、0.2〜4質量部がより好ましい。
【0083】
本発明のゴム組成物は、オイル、液状ポリマー、液状樹脂等の可塑剤を配合することが好ましい。これにより、加工性を改善するとともに、ゴムの強度を高めることができる。これら可塑剤は、一種類でも、複数を配合しても構わない。
【0084】
上記の中でも、液状樹脂を配合することが、低燃費性と耐摩耗性の両立の面で好ましい。液状樹脂としては、例えば、軟化点が室温付近のものを好適に使用でき、液状クマロンインデン樹脂、液状テルペン樹脂、液状スチレン樹脂、液状C5樹脂等;これらの混合物や変性品;等が挙げられる。液状クマロンインデン樹脂が、低燃費性と耐摩耗性のバランスの観点から特に好ましい。なお、環境の観点から、可塑剤として、多環式芳香族化合物(PCA)成分を含む可塑剤を配合しないことが好ましい。
【0085】
可塑剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは2質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。2質量部未満では、加工性改善効果が充分に得られないおそれがある。また、該含有量は、好ましくは60質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは40質量部以下である。60質量部を超えると、工程面での負荷が増大するおそれがある。なお、ゴム成分が油展されている場合は、可塑剤の含有量に該油展分は含まない。
【0086】
本発明のゴム組成物は、老化防止剤を含むことが好ましい。
老化防止剤としては、耐熱性老化防止剤、耐候性老化防止剤等、ゴム組成物に通常使用されるものを特に制限なく使用できる。例えば、ナフチルアミン系(フェニル−α−ナフチルアミン等)、ジフェニルアミン系(オクチル化ジフェニルアミン、4,4´−ビス(α,α´−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等)、p−フェニレンジアミン系(N−イソプロピル−N´−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N´−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N´−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン等)等のアミン系老化防止剤;2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;モノフェノール系(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノール等)、ビス、トリス、ポリフェノール系(テトラキス−[メチレン−3−(3´,5´−ジ−t−ブチル−4´−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等)等のフェノール系老化防止剤;等が挙げられる。
【0087】
老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、1質量部以上が好ましい。1質量部未満では、分子差切断抑制効果が十分現れず、耐摩耗性が低下する恐れがある。また該含有量は、10質量部以下が好ましい。10質量部を超えると、老化防止剤のブルーミングにより変色を起こすおそれがある。
【0088】
本発明のゴム組成物には、上記の材料以外にも、酸化亜鉛、ステアリン酸、ワックス等、タイヤ工業において一般的に用いられている各種材料を適宜配合してもよい。
【0089】
本発明のゴム組成物の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、上記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法などにより製造できる。
【0090】
一般的には、ゴム成分、シリカを含む充填材、シランカップリング剤等を混練するベース練り工程1と、該ベース練り工程1で得られた混合物、加硫剤、加硫促進剤を混練する仕上げ練り工程2と、該仕上げ練り工程2で得られた混合物を加硫する加硫工程3とを含む製法により製造される。
【0091】
更に必要に応じて、ベース練り工程1を、第1ベース練り工程1−1、第2ベース練り工程1−2、等に分割して混練してもよい。この場合、シリカ分散性を向上できる。
【0092】
ベース練り工程1(ベース練り工程1−1、1−2等)の混練中の最高温度は、特に限定されないが、シランカップリング剤が十分に反応し、シリカが良好に分散した混練り物が効率良く得られるという点から、好ましくは130℃以上、より好ましくは140℃以上、更に好ましくは145℃以上である。また、ゴム焼けを防ぐため、上限は、好ましくは200℃以下である。
【0093】
ベース練り工程1(ベース練り工程1−1、1−2等)の混練り時間は、特に限定されないが、シリカが良好に分散した混練り物が効率良く得られるという点から、それぞれ好ましくは3分以上、より好ましくは4分以上、更に好ましくは4.5分以上であり、また、好ましくは9分以下、より好ましくは8分以下、更に好ましくは7分以下である。
【0094】
特に、ベース練り工程1(ベース練り工程1−1、1−2等)の最終段階において、混練温度が140℃以上に到達後、混練物を140〜190℃で、10〜120秒間保持することが好ましい。これにより、シランカップリング剤とシリカの反応を完全に進行させることが可能になる。
【0095】
ベース練り工程1(ベース練り工程1−1、1−2等)におけるシランカップリング剤の投入量は、各工程のシリカ投入量100質量部に対して、好ましくは1.0質量部以上、より好ましくは5.0質量部以上、更に好ましくは7.0質量部以上である。また、該シランカップリング剤の投入量は、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である。
【0096】
なお、水酸化アルミニウムを投入する場合、その投入量をシリカ投入量に更に加えた合計投入量100質量部に対して、シランカップリング剤の投入量を算出することが好ましい。
【0097】
仕上げ練り工程2では、ベース練り工程1で得られた混練り物を冷却した後、加硫剤や加硫促進剤などの加硫系を添加して混練りし、未加硫ゴム組成物を得る。工程1で得られた混練り物を冷却する温度は、通常100℃以下であり、好ましくは20〜80℃である。
【0098】
仕上げ練り工程2の混練り温度は、好ましくは110℃以下、より好ましくは100℃以下である。110℃を超えると、ゴム焼け(スコーチ)が生じるおそれがある。混練り温度の下限は特に限定されないが、好ましくは80℃以上である。
【0099】
仕上げ練り工程2の混練り時間は特に限定されないが、通常30秒以上であり、好ましくは1〜30分間である。
【0100】
なお、老化防止剤は、各工程で分割して投入しても構わないが、全量を仕上げ練り工程2で投入することが、作業効率と混練中の老化防止剤の活性低下防止の観点から好ましい。
【0101】
加硫工程3において、仕上げ練り工程2で得られた未加硫ゴム組成物を公知の方法で加硫することにより、本発明のゴム組成物が得られる。加硫工程3の加硫温度は、本発明の効果が良好に得られるという点から、好ましくは120℃以上、より好ましくは140℃以上であり、また、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。
【0102】
本発明のゴム組成物は、タイヤの各部材に使用でき、なかでも、トレッド、サイドウォール等に好適に用いることができる。
【0103】
本発明のゴム組成物を用いたタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法により製造される。すなわち、必要に応じて各種添加剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でトレッドなどの部材の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成した後、加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造することができる。
【0104】
本発明では、前記ゴム組成物を用いることで、空気入りタイヤ、非空気入りタイヤを製造できる。空気入りタイヤは、乗用車用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、二輪車用タイヤ、高性能タイヤ等として用いられる。なお、本明細書における高性能タイヤとは、グリップ性能に特に優れたタイヤであり、競技車両に使用する競技用タイヤを含む。また、氷上性能に優れているため、スタッドレスタイヤとして好適である。
【実施例】
【0105】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0106】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
NR1:TSR
NR2:エポキシ化天然ゴム:Malaysian Rubber Board社製(主鎖にエポキシ基を有するNR、エポキシ化率:25モル%)
BR1:宇部興産(株)製のBR150B(シス含有量:97%、ビニル含量:1.5%、Mw/Mn:3.3)
BR2:下記製造例1で作製した変性BR(アルコキシシリル基を有する変性ハイシスBR)
SBR:ランクセス社製 Buna SL4525−0(スチレン量25%、非油展、非変性S−SBR)
シリカ:エボニック社製のウルトラシルVN3(N
2SA:175m
2/g)
カーボンブラック:三菱化学(株)製のダイヤブラックN220(N
2SA:114m
2/g、平均一次粒子径:22nm)
オイル:H&R社製のVIVATEC500
C10レジン:ルトガー社製 NOVARES C10レジン(液状クマロンインデン樹脂、軟化点10℃)
ステアリン酸:日油(株)製
ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエース0355
シランカップリング剤1:下記製造例2で作製した(2−トリエトキシシリルエチル)−ビス−(7−トリエトキシシリル−3,4,5,6−テトラチアノニル)シクロヘキサン
シランカップリング剤2:エボニック社製 Si69
水酸化アルミニウム:昭和電工(株)製のハイジライトH−43(平均一次粒子径:1μm)
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン)
酸化亜鉛:ハクスイテック(株)製の酸化亜鉛3種
硫黄:鶴見化学(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製ノクセラーNS(N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)
加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(N,N’−ジフェニルグアニジン)
【0107】
(製造例1)
アルコキシシリル基を有する変性ハイシスBR2の調製
シクロヘキサン2.4kg、1,3−ブタジエン300gを窒素置換された5Lオートクレーブに投入した。続いて、予め、0.18ミリモルのバーサチック酸ネオジムを含有するシクロヘキサン溶液、3.6ミリモルのメチルアルモキサンを含有するトルエン溶液、6.7ミリモルの水素化ジイソブチルアルミニウムを含有するトルエン溶液、及び0.36ミリモルのトリメチルシリルアイオダイドを含有するトルエン溶液と1,3−ブタジエン0.90ミリモルを30℃で60分間反応熟成させて得られる触媒組成物(ヨウ素原子/ランタノイド含有化合物(モル比)=2.0)を得ておき、この触媒組成物を上記オートクレーブに投入し、30℃で2時間、重合反応させて、重合体溶液を得た。温度30℃に保持した重合体溶液に、1.71ミリモルの3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを含有するトルエン溶液を添加し、30分間反応させて反応溶液を得た。続いて、この反応溶液に1.28ミリモルのテトライソプロピルチタネートを含有するトルエン溶液を添加し、30分間撹拌した。その後、重合反応を停止させるため、2,4−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール1.5gを含むメタノール溶液を添加して、この溶液を変性重合体溶液とした(収量は2.5kgであった)。続いて、この変性重合体溶液に、水酸化ナトリウムによりpH10に調整した水溶液20Lを添加し、110℃で2時間、脱溶媒とともに縮合反応させた。その後、110℃のロールで乾燥して、アルコキシシリル基を有する変性ハイシスBR2を得た。
得られたBR2のシス量は99%、ビニル量は、0.2%、Mn/Mwは1.6であった。
【0108】
なお、得られた重合体の分子量、ビニル含量及びシス含量は以下の方法により分析した。
<分子量>
下記の条件(1)〜(8)でゲル・パーミエイション・クロマトグラフ(GPC)法により、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を求めた。
(1)装置:東ソー(株)製HLC−8220
(2)分離カラム:東ソー(株)製HM−H(2本直列)
(3)測定温度:40℃
(4)キャリア:テトラヒドロフラン
(5)流量:0.6mL/分
(6)注入量:5μL
(7)検出器:示差屈折
(8)分子量標準:標準ポリスチレン
<重合体の構造同定>
重合体の構造同定は、日本電子(株)製JNM−ECAシリーズの装置を用いて行った。測定結果から、ビニル含量、シス含量を算出した。
【0109】
(製造例2)
(2−トリエトキシシリルエチル)−ビス−(7−トリエトキシシリル−3,4,5,6−テトラチアノニル)シクロヘキサンの調製
【0110】
先ず、(2−トリメトキシシリルエチル)ジビニルシクロヘキサンをヒドロシリル化により作製した。
具体的には、マグネチックスターラーバー、温度プローブ/コントローラ、加熱マントル、添加ロート、コンデンサー、および気体吸入口を備えた、5リットルの三口丸底フラスコに、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン(2,001.1グラム、12.3モル)およびVCAT触媒(1.96グラム、0.01534グラム白金)を充填した。チューブがシランの表面より下にある気体吸入口によって、空気を泡立てながらビニルシランを入れた。反応混合物は110℃に温められ、トリメトキシシラン(1,204グラム、9.9モル)を3.5時間にわたって添加した。反応混合物の温度は最高値130℃まで上昇した。反応混合物を室温に冷却し、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(3グラム、0.004モル)を添加した。反応混合物を122℃および1mmHgで蒸留し、1,427グラムの(2−トリメトキシシリルエチル)ジビニルシクロヘキサンが得られた。収率は51パーセントであった。
【0111】
次に、(2−トリエトキシシリルエチル)ジビニルシクロヘキサンをエステル交換により作製した。
具体的には、マグネチックスターラーバー、温度プローブ/コントローラ、加熱マントル、添加ロート、ト字管、および、コンデンサー、ならびに窒素注入口を備えた、3リットルの三口丸底フラスコに、(2−トリメトキシシリルエチル)ジビニルシクロヘキサン(284グラム、2.33モル)、ナトリウムエトキシド・エタノール溶液(49グラムの21%ナトリウムエトキシド、Aldrich Chemical製)およびエタノール(777グラム、16.9モル)を充填した。反応混合物は温められ、メタノールとエタノールは大気圧における蒸留により取り除かれた。粗生成物はその後、106℃、0.4mmHgという減圧において蒸留され、675グラムの(2−トリエトキシシリルエチル)ジビニルシクロヘキサンが得られた。収率は89パーセントであった。
【0112】
続いて、(2−トリエトキシシリルエチル)ビス−(3−チア−4−オキソペンチル)シクロヘキサンを、チオ酢酸をジビニルシランへ添加することにより作製した。
具体的には、マグネチックスターラーバー、温度プローブ/コントローラ、加熱マントル、添加ロート、コンデンサー、気体注入口、および水酸化ナトリウムスクラバーを備えた、1リットル三口丸底フラスコに、チオ酢酸(210グラム、2.71モル)を充填した。(2−トリエトキシシリルエチル)ジビニルシクロヘキサン(400グラム、1.23モル)を30分にわたり、室温で、添加ロートを介してゆっくりと添加した。反応は発熱性の反応であった。混合物の温度は94.6℃に上昇した。混合物を2.5時間撹拌し、38.8℃まで冷却した。追加的なチオ酢酸(10グラム、0.13モル)を添加し、わずかな発熱反応が観察された。反応混合物を25℃で終夜(18時間)撹拌した。分析により、反応混合物が2パーセント以下のチオ酢酸を含むことが示され、全体的な純度は91パーセントであった。反応混合物は、減圧下でクーゲル装置により蒸留することでさらに精製され、(2−トリエトキシシリルエチル)ビス−(3−チア−4−オキソペンチル)シクロヘキサンが得られた。
【0113】
更に、ジメルカプトシランの中間生成物〔(2−トリエトキシシリルエチル)ビス(2−メルカプトエチル)シクロヘキサン〕は、(2−トリエトキシシリルエチル)ビス−(3−チア−4−オキソペンチル)シクロヘキサンからアセチル基を取り除くことにより作製した。
具体的には、マグネチックスターラーバー、温度プローブ/コントローラ、加熱マントル、添加ロート、ト字管、およびコンデンサー、10段Oldershawカラム、ならびに窒素注入口を備えた5リットルの三口丸底フラスコに、(2−トリエトキシシリルエチル)ビス−(3−チア−4−オキソペンチル)シクロヘキサン(2,000グラム、4.1モル)、エタノール(546.8グラム、11.8モル)およびナトリウムエトキシド・エタノール溶液(108グラムの21%ナトリウムエトキシド・エタノール溶液)を充填した。反応混合物のpHは約8であった。反応混合物を24時間、88℃に温め、酢酸エチルおよびエタノールを反応混合物から取り除いた。二度、エタノール(1リットル)を混合物に添加し、21%ナトリウムエトキシド・エタノール溶液(21グラム)の添加により、反応混合物のpHが約10にまで上昇し、更に6.5時間温めた。反応混合物を冷却し、加圧ろ過した。反応混合物を、95℃以下の温度と1mmHgの圧力でストリップした。ストリップした生成物をろ過し、(2−トリエトキシシリルエチル)ビス(2−メルカプトエチル)シクロヘキサン(1398グラム、3.5モル、86%の収率)が得られた。
【0114】
そして、目的物の(2−トリエトキシシリルエチル)−ビス−(7−トリエトキシシリル−3,4,5,6−テトラチアノニル)シクロヘキサン、関連するオリゴマーおよびポリスルフィド、ならびにビス−(トリエポキシシリルプロピル)ポリスルフィド混合物を、ジメルカプトシランと塩基、硫黄および3−クロロプロピルトリエトキシシランとを反応させることにより作製した。
具体的には、マグネチックスターラーバー、温度プローブ/コントローラ、加熱マントル、添加ロート、ト字管、および、フリードリヒコンデンサー、ならびに窒素注入口を備えた、5リットルの三口丸底フラスコに、(2−トリエトキシシリルエチル)−ビス−(2−メルカプトエチル)シクロヘキサン(596.3グラム、1.5モル)を充填した。21%ナトリウムエトキシド・エタノール溶液(979.0グラム、3.0モル)に、600グラムのエタノールおよび硫黄(Aldorich Chemical製の昇華された粉、299.0グラム、9.1モル)を急速な撹拌により、追加した。溶液を終夜還流し、3−クロロプロピルトリエトキシシラン(740.0グラム、3.07モル)を添加し、その後16時間還流した。溶液を冷却し、0.1マイクロメートルのフィルターを介して加圧ろ過した。ろ過したものを、その後、エタノールを取り除くために、Rotavaporを用いてストリップした。(2−トリエトキシシリルエチル)−ビス−(7−トリエトキシシリル−3,4,5,6−テトラチアノニル)シクロヘキサン等の目的物(1,375グラム)は、HPLC、NMRおよびGCにより分析された。
【0115】
(2−トリエトキシシリルエチル)−ビス−(7−トリエトキシシリル−3,4,5,6−テトラチアノニル)シクロヘキサンの一つの異性体は以下の構造を有している。
【化5】
【0116】
〔実施例、比較例〕(表1)
バンバリーミキサーを用いて、表1のベース練り工程1−1に示す配合量の薬品を投入して、排出温度を150℃に設定して5分混練りした。その後、混練物をミキサー内で、排出温度が約160℃となるように1分間保持した。
次に、ベース練り工程1−1により得られた混練り物に対して、表1のベース練り工程1−2に示す配合量の薬品を投入して、140℃以上で30秒混練し、その後排出温度が約150℃となるように3分間混練りした。
その後、ベース練り工程1−2により得られた混練り物に対して、表1の仕上げ練り工程2に示す配合量の薬品を加え、オープンロールを用いて、約80℃の条件下で3分間混練りして、未加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物をトレッドの形状に成形し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、150℃、25kgfの条件で35分間加硫し、試験用タイヤ(タイヤサイズ:195/65R15)を製造した。
【0117】
〔実施例、比較例〕(表2)
ベース練り工程1−1、1−2の分割混練を行わず、表2に示す配合量で薬品を一度に投入するベース練り工程1を行い、排出温度が150℃となるように5分間混練した以外は、上記と同様に試験用タイヤを製造した。
【0118】
〔評価方法〕
製造された試験用タイヤを以下の方法で評価し、結果を表1〜2に示した。
<転がり抵抗>
転がり抵抗試験機を用い、試験用タイヤを、リム(15×6JJ)、内圧(230kPa)、荷重(3.43kN)、速度(80km/h)で走行させたときの転がり抵抗を測定し、比較例1を100とした時の指数で表示した。指数は大きい方が良好(低燃費性)である。
【0119】
<耐摩耗性>
試験用タイヤを国産FF車に装着し、走行距離8000km後のタイヤトレッド部の溝深さを測定し、タイヤ溝深さが1mm減るときの走行距離を算出し下記式により指数化した。指数が大きいほど、耐摩耗性が良好である。
(耐摩耗性指数)=(各配合の1mm溝深さが減るときの走行距離)/(比較例1のタイヤ溝が1mm減るときの走行距離)×100
【0120】
<氷上グリップ性能>
試験用タイヤを国産2000ccのFF車に装着した。試験場所は住友ゴム工業株式会社の北海道旭川テストコース(氷上)で行い、氷上気温は−1〜−6℃であった。
制動性能(氷上制動停止距離):時速35km/hでロックブレーキを踏み停止させるまでに要した氷上の停止距離を測定した。比較例1を100として、下記式により指数表示した。指数が大きいほど、氷上での制動性能が良好であることを示す。
(氷上グリップ性能指数)=(比較例1の停止距離)/(各配合の停止距離)×100
【0121】
【表1】
【0122】
【表2】
【0123】
表1、2により、NR、BR、シリカに、式(1)のシランカップリング剤を添加することで、低燃費性、耐摩耗性、氷雪上性能の性能バランスが顕著に改善されることが明らかとなった。特に、ベース練り工程をベース練り工程1−1、1−2の分割混練とした場合に非常に優れた性能が得られた。
【0124】
〔比較例〕(表3)
更に表2の実施例、比較例と同様の方法で、表3に示すSBR配合の試験用タイヤを製造した。前記と同様の評価方法で試験用タイヤを評価し、結果を示した(基準:比較例5)。
【0125】
【表3】
【0126】
表2のNR・BR配合に比べて、表3のSBR配合では、式(1)のシランカップリング剤を添加しても前記性能バランスの改善が小さく、NR、BR、シリカに、式(1)のシランカップリング剤を添加することで、前記性能バランスが相乗的に改善されることが明らかとなった。