(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シリカとの反応性がある官能基を有する変性ジエン系ゴムは、シリル基、アミノ基、アミド基、水酸基及びエポキシ基からなる群より選択される少なくとも2種を有する請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
更に、界面活性剤、液状クマロンインデン樹脂、及び水酸化アルミニウムからなる群より選択される少なくとも1種を含有する請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、シリカとの反応性がある官能基を有する変性ジエン系ゴム、窒素吸着比表面積180m
2/g以上の微粒子シリカ、及び前記式(1)で示されるシランカップリング剤を含有する。本発明では、前記変性ジエン系ゴム、微粒子シリカを含む配合に、特定シランカップリング剤を配合することにより、通常の非変性ゴムやシリカを含む配合に添加する場合に比べて、低燃費性、耐摩耗性、ウェット性能、操縦安定性の性能バランスが効率的に改善され、一般に両立が困難な前記性能バランスを相乗的に改善できる。
【0014】
特に、前記式(1)で示されるシランカップリング剤は、従来のシランカップリング剤と異なり、微粒子シリカ等のシリカ及びポリマーと相互作用する官能基の間に剛直な環状構造を有する化合物であるため、ポリマーとシリカを適度な距離で固定し、低燃費性、ウェット性能がバランスよく向上し、前記性能バランスが顕著に改善される。
【0015】
本発明では、ゴム成分として、シリカとの反応性がある官能基(シリカ反応性官能基)を有する変性ジエン系ゴムが使用される。これにより、低燃費性等の性能が向上し、前記性能バランスが顕著に改善される。
【0016】
前記シリカ反応性官能基は、シリカに対する反応性を持つ基であれば特に限定されないが、シリカとの相互作用の点で、シリル基、アミノ基、アミド基、水酸基、エポキシ基が特に好ましい。充填剤の分散性向上の観点から、前記シリカ反応性官能基を2つ以上有する変性ジエン系ゴムが好ましい。なお、官能基の導入箇所は特に限定されず、ゴムの主鎖、末端等が挙げられる。また、分岐したポリマー鎖にグラフト状に配置されたものでもよい。
【0017】
前記変性ジエン系ゴムを構成するジエン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)等、公知の共役ジエン系モノマーを用いたポリマーを使用できる。
【0018】
本発明では、前記変性ジエン系ゴムとして、変性SBRを好適に使用できる。これにより、前記性能バランスが顕著に改善される。変性SBRや、後述の変性BRは、官能基の強い相互作用のため、ゴム成分自体が凝集して充填剤の分散がかえって困難になる場合が多いが、式(1)のシランカップリング剤を用いることにより、ゴム成分の凝集が防止され、シリカとの相互作用が促進される。
【0019】
前記変性SBRを構成するSBRとしては特に限定さないが、溶液重合SBR(S−SBR)、乳化重合SBR(E−SBR)などが挙げられる。なかでも、前記性能バランスが改善されるという観点からS−SBRが好ましい。
【0020】
前記変性SBRとして、末端及び/又は主鎖が変性されたSBR、スズ、ケイ素化合物などでカップリングされた変性SBR(縮合物、分岐構造を有するものなど)など、公知のものを使用できる。これらの中でも、前記シリカ反応性官能基を有する変性S−SBRが、シリカとの相互作用の点で、最も好ましい。
【0021】
本発明では、前記変性SBRとして、(a)ブタジエンとスチレンを重合して得られるアルカリ金属又はアルカリ土類金属活性末端を有するスチレンブタジエン共重合体と、2つ以上のアルコキシ基を有するアルコキシシリル基及び脱保護可能な保護基により保護された基を有する第一のアルコキシシラン化合物を反応させて、アルコキシシリル基を有する変性スチレンブタジエン共重合体を得る工程と、(b)上記アルコキシシリル基を有する変性スチレンブタジエン共重合体と、アルコキシシリル基を有する第二のアルコキシシラン化合物を反応させる工程と、を含む製造方法により得られるものを好適に使用できる。これにより、前記性能バランスが顕著に改善される。
【0022】
工程(a)の重合は、公知の方法で実施できる。例えば、反応に不活性な有機溶剤(脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素化合物等の炭化水素溶媒、等)中において、ブタジエンとスチレンを、リチウム化合物等のアルカリ金属、アルカリ土類金属系重合開始剤として、所望により用いられるランダマイザーの存在下に、アニオン重合することにより実施でき、これにより、アルカリ金属又はアルカリ土類金属活性末端を有するスチレンブタジエン共重合体が得られる。
【0023】
アルカリ金属、アルカリ土類金属系重合開始剤としては、アルキルリチウム等の有機リチウム化合物;リチウムアルキレンイミド等のリチウムアミド化合物;等、公知のものを使用できる。
【0024】
工程(a)の第一のアルコキシシラン化合物を、スチレンブタジエン重合体のアルカリ金属又はアルカリ土類金属活性末端に導入させる変性反応は、溶液反応等、公知の方法により実施できる。
【0025】
アルカリ金属又はアルカリ土類金属活性末端を有するスチレンブタジエン共重合体と、第一のアルコキシシラン化合物を反応させることによって、アルカリ金属又はアルカリ土類金属活性末端の部位と2つ以上存在するアルコキシ基の中の1つの部位が結合して、残余のアルコキシシリル基を有する変性スチレンブタジエン重合体を得ることができる。
【0026】
第一のアルコキシシラン化合物におけるアルコキシシリル基としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属活性末端を有するスチレンブタジエン共重合体との反応性の観点、及び、後述する第二のアルコキシシラン化合物との反応の観点から、2つ以上のアルコキシ基を有するものが用いられる。アルコキシ基としては、炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基を有するアルコキシ基を好適に挙げることができる。
【0027】
第一のアルコキシシラン化合物における脱保護可能な保護基により保護された基とは、スチレンブタジエン重合体のアルカリ金属又はアルカリ土類金属活性末端から保護される基であり、例えば、1級アミンの2つの水素原子が2つの保護基によって置換された窒素含有基、2級アミンの1つの水素原子が1つの保護基によって置換された窒素含有基、等が挙げられる。
【0028】
第一のアルコキシシラン化合物の具体例として、N,N−ビス(トリエチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシラン、1−(3−トリエトキシシリルプロピル)−2,2,5,5−テトラメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン、N,N’,N’−トリス(トリメチルシリル)−N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、1−トリメチルシリル−2,2−ジメトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタン、N−〔3−(トリメトキシシリル)−プロピル〕−N,N’−ジエチル−N’−トリメチルシリル−エタン−1,2−ジアミン、N−〔3−(トリエトキシシリル)−プロピル〕−N,N’−ジエチル−N’−トリメチルシリル−エタン−1,2−ジアミン、3−(4−トリメチルシリル−1−ピペラジノ)プロピルトリエトキシシラン、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]トリメチルシリルアミン、ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]トリメチルシリルアミン等が挙げられる。
【0029】
工程(b)は、工程(a)で得られたアルコキシシリル基を有する変性スチレンブタジエン共重合体と、アルコキシシリル基を有する第二のアルコキシシラン化合物とを反応させる工程である。
【0030】
このような第二のアルコキシシラン化合物とアルコキシシリル基を有する変性スチレンブタジエン共重合体の反応は、公知の方法で実施できる。例えば、溶液の形態で混合することにより行うことができる。
【0031】
第二のアルコキシシラン化合物としては、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、イミノ基、ピリジル基、1級ホスフィノ基、2級ホスフィノ基、3級ホスフィノ基、エポキシ基、イソシアネート基、チオエポキシ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、オキセタン基またはチオール基等と、アルコキシシリル基とを有する化合物;エタノールアミン、ベンゾイミダゾール、メラミンまたはアミジン構造等と、アルコキシシリル基とを有する化合物;が挙げられる。第二のアルコキシシラン化合物におけるアルコキシシリル基の数は、1つ以上であり、反応の効率性の観点から、好ましくは2つ又は3つ、より好ましくは3つである。
【0032】
第二のアルコキシシラン化合物の具体例として、前記工程(a)で例示された第一のアルコキシシラン化合物;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトメチルトリメトキシシラン、3−メルカプトメチルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、アミノフェニルトリエトキシシラン、3−(N−メチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(N−メチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン等のトリメトキシシリル化合物;これらに対応するトリエトキシシリル化合物;等を挙げることができる。
【0033】
工程(b)は、金属元素を含むアルコキシシラン化合物の縮合触媒(以下、単に「縮合触媒」ということがある)の存在下で行うこともできる。
【0034】
金属元素を含むアルコキシシラン化合物の縮合触媒としては、周期律表の4族、12族、13族、14族及び15族に含まれる金属元素のうち少なくとも一つの金属元素を含有する金属化合物が好ましい。具体的な金属元素としては、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、ビスマス、スズ等を好適例として挙げることができる。縮合触媒は、変性スチレンブタジエン重合体と第二のアルコキシシラン化合物の縮合を促進する。
【0035】
縮合触媒の具体例としては、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、テトラ(オクタンジオレート)チタニウム、トリス(2−エチルヘキサノエート)ビスマス、テトラn−プロポキシジルコニウム、テトラn−ブトキシジルコニウム、ビス(2−エチルヘキサノエート)ジルコニウムオキサイド、ビス(オレエート)ジルコニウムオキサイド、トリi−プロポキシアルミニウム、トリsec−ブトキシアルミニウム、トリス(2−エチルヘキサノエート)アルミニウム、トリス(ステアレート)アルミニウム、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、ビス(2−エチルヘキサノエート)スズ、ジ−n−オクチルスズビス(2−エチルヘキシルマレート)等を挙げることができる。
【0036】
前記変性SBRのスチレン含量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上である。5質量%未満では、充分なグリップ性能やゴム強度が得られないおそれがある。また、該スチレン含量は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。60質量%を超えると、優れた低燃費性が得られないおそれがある。なお、本明細書において、スチレン含量は、H
1−NMR測定により算出される。
【0037】
前記変性SBRのビニル含量は、好ましくは10モル%以上、より好ましくは15モル%以上、更に好ましくは20モル%以上である。10モル%未満では、充分なグリップ性能やゴム強度が得られないおそれがある。また、該ビニル含量は、好ましくは65モル%以下、より好ましくは60モル%以下である。65モル%を超えると、優れた低燃費性が得られないおそれがある。なお、本明細書において、ビニル含量とはブタジエン部のビニル量のことを示し、H
1−NMR測定により算出される。
【0038】
ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、優れたグリップ性能を発揮させる観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上である。また、該SBRの含有量は、耐摩耗性の観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。
なお、SBRは、単独で用いても、用途に応じてスチレン量の異なるものを併用してもよい。
【0039】
本発明のゴム成分として、優れた耐摩耗性を付与する目的で、BRを含むことが好ましい。BRにシリカを配合した配合ゴムは、一般にシリカ等の充填剤の分散性が低く、所望の性能を得ることが難しいが、本発明では、式(1)のシランカップリング剤の配合により、シリカとゴム成分との相互作用が高められる。従って、充填剤の分散性が向上し、低燃費性、耐摩耗性、操縦安定性、ウェット性能の性能バランスが相乗的に改善される。
【0040】
なかでも、変性ブタジエンゴム、特に、シス−1,4−結合の含有率が80質量%以上のブタジエン重合体の活性末端に、少なくともアルコキシシラン化合物が結合した変性BRが好ましい。
【0041】
前記変性BRは、公知の方法で製造できる。例えば、重合触媒の存在下、ブタジエンを重合反応させてブタジエン重合体を得、得られたブタジエン重合体の活性末端をアルコキシシラン化合物により変性(以下、「変性反応」ともいう)して調製できる。なお、国際公開第03/046020号パンフレットに記載された重合触媒の存在下で重合することにより、シス−1,4−結合の含有率を80質量%以上にできる。
【0042】
ブタジエン重合体の活性末端の変性に用いるアルコキシシラン化合物は、アルコキシシリル基を含む2つ以上の反応基を有するが好ましい。アルコキシシリル基以外の反応基としては、特にその種類は限定されないが、例えば、エポキシ基、イソシアネート基、カルボニル基、シアノ基等の官能基が好ましい。なお、上記アルコキシシラン化合物は、部分縮合物でも、該アルコキシシラン化合物と該部分縮合物の混合物でもよい。
【0043】
前記アルコキシシラン化合物としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、及びそれらの部分縮合物、等を好適に使用できる。
【0044】
本発明では、BRとして、シス含有量が90質量%以上のハイシスBRを用いることが好ましい。これにより、優れた耐摩耗性が得られる。97質量%以上が更に好ましい。なお、シス含量は、例えば、赤外吸収スペクトル分析により算出できる。
【0045】
ゴム成分100質量%中のBR含有量は、耐摩耗性を発揮させる観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、更に好ましくは10質量%以上である。また、該BRの含有量は、加工性の観点から、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下である。
【0046】
本発明では、窒素吸着比表面積(N
2SA)180m
2/g以上の微粒子シリカが用いられる。前記微粒子シリカとしては、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)等が挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
【0047】
前記微粒子シリカの窒素吸着比表面積(N
2SA)は、180m
2/g以上であり、190m
2/g以上が好ましく、200m
2/g以上がより好ましい。180m
2/g未満では、耐摩耗性が低下する傾向がある。また、シリカのN
2SAは、500m
2/g以下が好ましく、300m
2/g以下がより好ましい。500m
2/gを超えると、低発熱性、ゴム加工性が低下する傾向がある。なお、シリカの窒素吸着比表面積は、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
【0048】
前記微粒子シリカのCTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロミド)比表面積は、好ましくは180m
2/g以上、より好ましくは190m
2/g以上、更に好ましくは195m
2/g以上、特に好ましくは197m
2/g以上である。CTAB比表面積が180m
2/g未満であると、耐摩耗性が低下する傾向がある。該CTAB比表面積は、好ましくは600m
2/g以下、より好ましくは300m
2/g以下、更に好ましくは250m
2/g以下である。CTAB比表面積が600m
2/gを超えると、分散性に劣り、凝集してしまうため、加工性、低燃費性、破壊強度、耐屈曲亀裂成長性が低下する傾向がある。なお、CTAB比表面積は、ASTM D3765−92に準拠して測定される。
【0049】
前記微粒子シリカの平均一次粒子径は、好ましくは25nm以下、より好ましくは22nm以下、更に好ましくは17nm以下、特に好ましくは14nm以下である。該平均一次粒子径の下限は特に限定されないが、好ましくは3nm以上、より好ましくは5nm以上、更に好ましくは7nm以上である。これにより、低燃費性等を更に改善できる。なお、微粒子シリカの平均一次粒子径は、透過型又は走査型電子顕微鏡により観察し、視野内に観察されたシリカの一次粒子を400個以上測定し、その平均により求めることができる。
【0050】
前記微粒子シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは15質量部以上、特に好ましくは20質量部以上である。5質量部未満であると、低発熱性が不十分になるおそれがある。また、該含有量は、好ましくは200質量部以下、より好ましくは150質量部以下、更に好ましくは100質量部以下である。200質量部を超えると、充填剤へのゴムへの分散が困難になり、ゴムの加工性が悪化する傾向がある。
【0051】
本発明では、前記微粒子シリカと、第二のシリカとを組み合わせて使用してもよい。前記微粒子シリカと組み合わせる第二のシリカとしては、加工性と低燃費性の点から、N
2SA180m
2/g未満のものが望ましい。
【0052】
前記第二のシリカのN
2SAは、170m
2/g以下が好ましく、150m
2/g以下がより好ましく、130m
2/g以下が更に好ましく、120m
2/g以下が特に好ましい。また、該N
2SAは、50m
2/g以上が好ましく、80m
2/g以上がより好ましく、90m
2/g以上が更に好ましい。180m
2/g以上であると、組み合わせる効果が乏しくなり、50m
2/g未満であると耐摩耗性に劣る傾向がある。
【0053】
前記第二シリカのCTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロミド)比表面積は、好ましくは150m
2/g以下、より好ましくは140m
2/g以下、更に好ましくは120m
2/g以下である。CTAB比表面積が150m
2/gを超えると、組み合わせる効果が減少する傾向がある。該CTAB比表面積は、好ましくは70m
2/g以上、より好ましくは80m
2/g以上、更に好ましくは90m
2/g以上である。CTAB比表面積が70m
2/g未満であると、破壊強度、耐摩耗性が低下する傾向がある。
【0054】
前記第二のシリカの平均一次粒子径は、15nm以上が好ましく、18nm以上がより好ましく、20nm以上が更に好ましく、22nm以上が特に好ましく、24nm以上が最も好ましい。また、該平均一次粒子径は、30nm以下が好ましい。15nm未満であると組み合わせる効果が少なくなり、30nmを超えると、耐摩耗性が低下する恐れがある。
【0055】
前記第二のシリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは15質量部以上、特に好ましくは20質量部以上である。5質量部未満であると、低発熱性が不十分になるおそれがある。また、該含有量は、好ましくは200質量部以下、より好ましくは150質量部以下、更に好ましくは100質量部以下である。200質量部を超えると、充填剤へのゴムへの分散が困難になり、ゴムの加工性が悪化する傾向がある。
【0056】
なお、前記微粒子シリカ、第二のシリカを併用する場合、その合計シリカ量が前記と同様の範囲であることが好適である。
【0057】
本発明のゴム組成物は、カーボンブラックを含むことが好ましい。使用可能なカーボンブラックとしては特に限定されず、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAF等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。これらは、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0058】
カーボンブラックのチッ素吸着比表面積(N
2SA)は、好ましくは80m
2/g以上、より好ましくは100m
2/g以上である。80m
2/g未満であると、耐候性や帯電防止性能を充分に改善できないおそれがある。カーボンブラックのN
2SAは、好ましくは200m
2/g以下、より好ましくは150m
2/g以下である。200m
2/gを超えると、加工性が悪化する傾向がある。なお、カーボンブラックのチッ素吸着比表面積は、JIS K6217のA法によって測定される。
【0059】
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上である。1質量部未満であると、カーボンブラックによる改善効果が充分に得られないおそれがある。また、カーボンブラックの含有量は、好ましくは30質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。30質量部を超えると、低燃費性、加工性が悪化する傾向がある。
【0060】
本発明のゴム組成物には、水酸化アルミニウムを配合してもよい。これにより、ウェット性能を向上できる。通常、水酸化アルミニウムを配合すると、ゴム成分との相互作用が弱いことにより耐摩耗性が低下する傾向があるが、式(1)のシランカップリング剤を用いることにより、耐摩耗性を維持しつつ、ウェット性能を向上できる。
【0061】
水酸化アルミニウムの平均一次粒子径は、好ましくは0.3μm以上、より好ましくは0.4μm以上である。0.3μm未満では、分散が困難となり、耐摩耗性が低下する傾向がある。また、該平均一次粒子径は、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下である。10μmを超えると、破壊核となり、耐摩耗性が低下する傾向がある。なお、本発明において、平均一次粒子径は数平均粒子径であり、透過型電子顕微鏡により測定される。
【0062】
水酸化アルミニウムの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましい。0.1質量部未満であると、ウェット性能が十分に向上しない傾向があり、20質量部を超えると、低燃費性が低下する恐れがある。
【0063】
本発明では、下記式(1)で表されるシランカップリング剤(シリル化コアポリスルフィドシラン)が用いられる。
[Y
1R
1S
x−]
m[G
1(R
2SiX
1X
2X
3)
a]
n[G
2]
o[R
3Y
2]
p (1)
(式中、
G
1は、独立して、[(CH
2)
b−]
cR
4[−(CH
2)
dS
x−]
eで表されるポリスルフィド基を持つ炭素数1〜30の多価炭化水素基である。
G
2は、独立して、[(CH
2)
b−]
cR
5[−(CH
2)
dS
x−]
eで表されるポリスルフィド基を持つ炭素数1〜30の多価炭化水素基である。
Y
1及びY
2は、独立して、−SiX
1X
2X
3で示されるシリル基、水素、カルボキシル基、又は−C(=O)OR
6で示されるエステル基である。
X
1は、独立して、−Cl、−Br、−OH、−OR
6、又はR
6C(=O)O−である。
X
2及びX
3は、独立して、水素、R
6、X
1、又はシラノールの縮合から生じる−OSi含有基である。
R
1及びR
3は、独立して、炭素数1〜20の2価炭化水素基である。
R
2は、独立して、−(CH
2)
f−で表される直鎖状炭化水素基である。
R
4は、独立して、炭素数1〜28の多価炭化水素基又は炭素数1〜27のヘテロ原子含有多価炭化水素基である。
R
5は、独立して、炭素数1〜28の多価炭化水素基である。
R
6は、炭素数1〜20の1価炭化水素基である。
a、b、c、d、e、f、m、n、o、p及びxは各々独立し、該a、c及びeは1〜3、該b及びdは1〜5、該fは0〜5、該m及びpは1〜100、該nは1〜15、該oは0〜10、該xは1〜10である。)
【0064】
本発明では、式(1)の化合物、特に、複数のポリスルフィド鎖が同一線上にない立体配置に配向し、かつ、コアが第一級炭素原子に結合する、複数のポリスルフィド基を含有しているシリル化コアポリスルフィドを用いることで、例えば、シクロヘキシルコアのような立体障害が大きく反応性が小さい基を有するシランカップリング剤であっても、その反応性を向上し、本発明の効果が良好に得られる。
【0065】
R
1及びR
3の2価炭化水素基としては、直鎖状又は分岐状のアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、アラルキレン基等が挙げられる。R
1及びR
3の炭素数は、1〜5が好ましい。
【0066】
R
4の多価炭化水素基としては、a+c+e−1個の水素が置換された環状、分岐状又は直鎖状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。R
4のヘテロ原子含有多価炭化水素基は、窒素、酸素、硫黄、リン等のヘテロ原子を含む前記多価炭化水素基等であり、例えば、エーテル基、ポリスルフィド基、第三級アミン基、シアノ基、シアヌレートC
3N
3基等を含む環状、分岐状又は直鎖状の多価脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。なお、R
4の炭素数は、3〜10が好ましい。
【0067】
R
5の多価炭化水素基としては、c+e−1個の水素が置換された環状、分岐状又は直鎖状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられ、該多価炭化水素基の炭素数は1〜27が好ましい。なお、R
5の炭素数は、3〜10が好ましい。
【0068】
R
6の1価炭化水素基としては、直鎖状又は分岐状のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。なお、R
6の炭素数は、1〜5が好ましい。
【0069】
なお、直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソブチル基等;アルケニル基としては、ビニル基、プロペニル基、アリル基、メタリル基等;アルキニル基としては、アセチレニル基、プロパルギル基、メチルアセチレニル基等;が挙げられる。また、アリール基としては、フェニル基、ナフタレニル等;アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基等;が挙げられる。
【0070】
環状のアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基としては、ノルボルニル基、ノルボルネニル基、エチルノルボルニル基、エチルノルボルネニル基、エチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキセニル基、シクロヘキシルシクロヘキシル基、シクロドデカトリエニル基などが挙げられる。
【0071】
Y
1及びY
2は前述の基であるが、なかでも、−SiX
1X
2X
3で示されるシリル基が好ましい。
【0072】
X
1は前述の基であるが、なかでも、−OH、−OR
6が好ましい。
X
1の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基、ヒドロキシ基、クロロ基、アセトキシ基等が挙げられる。
【0073】
X
2及びX
3は前述の基であるが、なかでも、R
6、X
1として列挙した基、シラノールの縮合から生じる−OSi含有基が好ましい。
X
2及びX
3の具体例としては、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、フェニル基、前記X
1の具体例等が挙げられる。
【0074】
aは1〜2、bは1〜3、cは1、dは1〜3、eは1、fは0〜3、mは1、nは1〜10、oは0〜1、pは1、xは1〜4が好ましい。
【0075】
G
1における炭素数1〜30の多価炭化水素基について、3座(3価)の基の代表例としては、−CH
2(CH
2)
q+1CH(CH
2−)−、−CH(CH
3)(CH
2)
qCH(CH
2−)
2−(qは0〜20である。);−CH
2CH
2(C
6H
4)CH(CH
2−)−、−CH
2CH
2(C
6H
3−)CH
2CH
2−(C
6H
4は二置換ベンゼン環、C
6H
3−は三置換環である。);−CH
2(CH−)CH
2CH
2−、−CH
2(C−)(CH
3)CH
2CH
2−、−CH
2CH(CH
3)(CH−)CH
2−等が挙げられる。また、他の多価の基の代表例としては、−CH(CH
2−)(CH
2)
qCH(CH
2−)−(qは1〜20である。);−CH
2(CH−)(C
6H
4)CH(CH
2−)−(C
6H
4は二置換ベンゼン環である。);−CH
2(CH−)CH
2OCH
2CH(CH
2−)−、−CH
2(CH−)(CH−)CH
2−;等が挙げられる。
【0076】
G
2における炭素数1〜30の多価炭化水素基について、2座(2価)の基の代表例としては、−CH
2(CH
2)
q+1CH
2(CH
2−)、CH
2(CH
3)(CH
2)
qCH(CH
2−)
2(qは0〜20である。);−CH
2CH
2(C
6H
4)CH
2CH
2−(C
6H
4は二置換ベンゼン環である。);−CH
2CH
2CH
2CH
2−、−CH
2(CH)(CH
3)CH
2CH
2−、−CH
2CH(CH
3)CH
2CH
2−等が挙げられる。また、他の多価の基としては、−CH
2(CH
2)
q+1CH(CH
2−)−(qは0〜20である。)等の3座(3価)の基;等が挙げられる。
【0077】
前記式(1)で示されるシランカップリング剤のなかでも、下記式の化合物が好ましい。
【化2】
(式中、
Y
1及びY
2は、独立して、−SiX
1X
2X
3で示されるシリル基、水素、カルボキシル基、又は−C(=O)OR
6で示されるエステル基である。
X
1は、独立して、−Cl、−Br、−OH、−OR
6、又はR
6C(=O)O−である。
X
2及びX
3は、独立して、水素、R
6、X
1、又はシラノールの縮合から生じる−OSi含有基である。
R
1及びR
3は、独立して、炭素数1〜20の2価炭化水素基である。
R
2は、独立して、−(CH
2)
f−で表される直鎖状炭化水素基である。
R
4は、独立して、a+c+e−1個の水素が置換された環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基である。
R
6は、炭素数1〜20の1価炭化水素基である。
a、b、c、d、e、f、m、n、p及びxは各々独立し、該a、c及びeは1〜3、該b及びdは1〜5、該fは0〜5、該m及びpは1〜100、該nは1〜15、該xは1〜10である。)
【0078】
前述の式(1)で示されるシランカップリング剤の具体例としては、4−(2−トリエトキシシリル−1−エチル)−1,2−ビス−(13−トリエトキシシリル−3,4,5,6−テトラチアトリデシル)シクロヘキサン;4−(2−トリエトキシシリル−1−エチル)−1,2−ビス−(13−トリエトキシシリル−3,4,5,6−テトラチアトリデシル)シクロヘキサン;4−(2−ジエトキシメチルシリル−1−エチル)−1,2−ビス−(13−トリエトキシシリル−3,4,5,6−テトラチアトリデシル)シクロヘキサン;4−(2−トリエトキシシリル−1−エチル)−1,2−ビス−(10−トリエトキシシリル−3,4,5,6,7−ペンタチアデシル)シクロヘキサン;1−(2−トリエトキシシリル−1−エチル)−2,4−ビス−(10−トリエトキシシリル−3,4,5,6,7−ペンタチアデシル)シクロヘキサン;4−(2−トリエトキシシリル−1−エチル)−1,2−ビス−(9−トリエトキシシリル−3,4,5,6−テトラチアノニル)シクロヘキサン;1−(2−トリエトキシシリル−1−エチル)−2,4−ビス−(9−トリエトキシシリル−3,4,5,6−テトラチアノニル)シクロヘキサン;2−(2−トリエトキシシリル−1−エチル)−1,4−ビス−(9−トリエトキシシリル−3,4,5,6−テトラチアノニル)シクロヘキサン;4−(2−トリエトキシシリル−1−エチル)−1,2−ビス−(8−トリエトキシシリル−3,4,5−トリチアオクチル)シクロヘキサン;1−(2−トリエトキシシリル−1−エチル)−2,4−ビス−(8−トリエトキシシリル−3,4,5−トリチアオクチル)シクロヘキサン;2−(2−トリエトキシシリル−1−エチル)−1,4−ビス−(8−トリエトキシシリル−3,4,5−トリチアオクチル)シクロヘキサン;4−(2−トリエトキシシリル−1−エチル)−1,2−ビス−(7−トリエトキシシリル−3,4−ジチアヘプチル)シクロヘキサン;2−(2−トリエトキシシリル−1−エチル)−1,4−ビス−(7−トリエトキシシリル−3,4−ジチアヘプチル)シクロヘキサン;1−(2−トリエトキシシリル−1−エチル)−2,4−ビス−(7−トリエトキシシリル−3,4−ジチアヘプチル)シクロヘキサン;2−(2−トリエトキシシリル−1−エチル)−1−(7−トリエトキシシリル−3,4−ジチアヘプチル)−2−(8−トリエトキシシリル−3,4,5−トリチアオクチル)シクロヘキサン;4−(2−トリエトキシシリル−1−エチル)−1,2−ビス−(9−トリエトキシシリル−3,4,5,6−テトラチアノニル)ベンゼン;ビス−[2−[4−(2−トリエトキシシリル−1−エチル)−2−(9−トリエトキシシリル−3,4,5,6−テトラチアノニル)シクロヘキシル]エチル]テトラスルフィド;ビス−[2−[4−(2−トリエトキシシリル−1−エチル)−2−(9−トリエトキシシリル−3,4,5,6−テトラチアノニル)シクロヘキシル]エチル]トリスルフィド;ビス−[2−[4−(2−トリエトキシシリル−1−エチル)−2−(9−トリエトキシシリル−3,4,5,6−テトラチアノニル)シクロヘキシル]エチル]ジスルフィド;ビス−[2−[4−(2−トリエトキシシリル−1−エチル)−2−(7−トリエトキシシリル−3,4−ジチアヘプチル)シクロヘキシル]エチル]ジスルフィド;ビス−[2−[4−(2−トリエトキシシリル−1−エチル)−2−(7−トリエトキシシリル−3,4−ジチアヘプチル)シクロヘキシル]エチル]トリスルフィド;ビス−[2−[4−(2−トリエトキシシリル−1−エチル)−2−(7−トリエトキシシリル−3,4−ジチアヘプチル)シクロヘキシル]エチル]テトラスルフィド;ビス−[2−[4−(2−トリエトキシシリル−1−エチル)−2−(9−トリエトキシシリル−3,4,5,6−テトラチアノニル)フェニル]エチル]テトラスルフィド;ビス−[2−[4−(2−トリエトキシシリル−1−エチル)−3−ビス−(9−トリエトキシシリル−3,4,5,6−テトラチアノニル)シクロヘキシル]エチル]トリスルフィド;ビス−[2−[4−(2−ジエトキシメチルシリル−1−エチル)−2−(7−トリエトキシシリル−3,4−ジチアヘプチル)シクロヘキシル]エチル]ジスルフィド;これらの任意の異性体;等が挙げられる。これらは単独又は2種以上を併用できる。
【0079】
なかでも、(2−トリエトキシシリルエチル)−ビス−(7−トリエトキシシリル−3,4−ジチアヘプチル)シクロヘキサン、(2−トリエトキシシリルエチル)−ビス−(7−トリエトキシシリル−3,4,5,6−テトラチアノニル)シクロヘキサン、及びこれらの任意の異性体が好ましい。
【0080】
前記式(1)で示されるシランカップリング剤は、例えば、HSi(X
1X
2X
3)で示されるヒドロシラン(X
1、X
2、X
3は前記と同様)と、反応性二重結合を有する炭化水素を反応する工程(a)、フリーラジカル剤の存在下で、前記工程(a)で得られた化合物と、R
6C(=O)SH(R
6は前記と同様)で示される硫化剤と反応する工程(b)、プロトン供与体を用いてメルカプト基を脱ブロック化する工程(c)、前記工程(c)で得られたメルカプタンと、塩基及び硫黄の混合物と反応する工程(d)、並びに、前記工程(d)で得られた化合物と、塩素、臭素又はヨウ素の脱離基を有する置換若しくは非置換の炭化水素と反応する工程(e)を含む製法により調製できる。
【0081】
工程(a)における前記反応性二重結合を有する炭化水素としては、例えば、下記式で示される化合物が挙げられる。
【化3】
(式中、R
4、c及びeは前記と同様である。gは0〜3、hは0〜3、iは0〜3である。)
【0082】
フリーラジカル剤としては、酸化剤が挙げられる。例えば、チオカルボン酸を下記式で示されるチオカルボン酸ラジカルに転換できる化合物が挙げられる。酸素、ペルオキシド、ヒドロペルオキシドなども使用可能である。
【化4】
【0083】
プロトン供与体としては、任意の水素含有ヘテロカーボン又は置換へテロカーボンで、工程(c)でチオカルボン酸エステル中間体と反応し、脱ブロック化メルカプタンの生成が可能な化合物を使用することが可能である。例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロパノールなどのアルコール;アンモニア、メチルアミン、プロピルアミン、ジエタノールアミンなどのアミン;プロピルメルカプタン、ブチルメルカプタンなどのメルカプタン;等が挙げられる。
【0084】
脱離基を有する置換若しくは非置換の炭化水素としては、Y
1R
1Z、Y
2R
3Z(Y
1、Y
2、R
1及びR
3は前記と同様である。Zは、独立して、Cl、Br又はIである。)で示される化合物が挙げられる。
【0085】
反応は、アルコール、エーテル、炭化水素溶媒などの有機溶媒の存在下又は非存在下で実施できる。有機溶媒としては、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0086】
本発明のゴム組成物において、前記式(1)で示されるシランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは1.0質量部以上、より好ましくは5.0質量部以上、更に好ましくは7.0質量部以上である。1.0質量部未満であると、充填材との反応が不十分になり、シランカップリング剤の優れた加工性向上効果が引き出せない恐れがある。該含有量は、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である。30質量部を超えても、シリカの分散効果は向上せず、コスト的に不利になる可能性がある。
【0087】
式(1)で示されるシランカップリング剤と、他のシランカップリング剤を併用してもよく、例えば、スルフィド基を有するシランカップリング剤(ポリスルフィドシラン)を併用することが好ましい。
【0088】
スルフィド基を有するシランカップリング剤としては、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリメトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィドなどが挙げられる。上記カップリング剤は、一般的に一定の分布を持った混合物として市販されており、エボニック社製のSi75、Si69等が好適にあげられる。
【0089】
なお、他のシランカップリング剤を併用した場合、シランカップリング剤の合計含有量の好ましい範囲は上記と同様である。
【0090】
本発明では、通常、加硫剤、加硫促進剤が配合される。加硫剤、加硫促進剤としては特に限定されず、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0091】
本発明の効果が良好に得られるという点から、加硫剤としては、硫黄が好ましく、粉末硫黄がより好ましい。また、硫黄と他の加硫剤を併用してもよい。他の加硫剤としては、例えば、田岡化学工業(株)製のタッキロールV200、フレキシス社製のDURALINK HTS(1,6−ヘキサメチレン−ジチオ硫酸ナトリウム・二水和物)、ランクセス社製のKA9188(1,6−ビス(N,N’−ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン)などの硫黄を含む加硫剤や、ジクミルパーオキサイドなどの有機過酸化物などが挙げられる。
【0092】
加硫剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上であり、また、好ましくは15質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であれば、本発明の効果が良好に得られるとともに、良好な引張強度、耐摩耗性及び耐熱性も得られる。
【0093】
加硫促進剤としては、グアニジン類、スルフェンアミド類、チアゾール類、チウラム類、ジチオカルバミン酸塩類、チオウレア類、キサントゲン酸塩類が好ましい。これらは、単独で用いても構わないが、用途に応じて2種以上を組み合わせることが望ましい。なかでも、少なくともグアニジン類加硫促進剤を用いることが低燃費性と他のゴム物性のバランスの上で望ましい。
【0094】
グアニジン類加硫促進剤としては、1,3−ジフェニルグアニジン、1,3−ジ−o−トリルグアニジン、1−o−トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ−o−トリルグアニジン塩、1,3−ジ−o−クメニルグアニジン、1,3−ジ−o−ビフェニルグアニジン、1,3−ジ−o−クメニル−2−プロピオニルグアニジン等が挙げられる。なかでも、反応性が高い点で、1,3−ジフェニルグアニジン、1,3−ジ−o−トリルグアニジン、1−o−トリルビグアニドが特に好ましい。
【0095】
加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1〜5質量部が好ましく、0.2〜4質量部がより好ましい。
【0096】
本発明のゴム組成物は、オイル、液状ポリマー、液状樹脂等の可塑剤を配合することが好ましい。これにより、加工性を改善するとともに、ゴムの強度を高めることができる。これら可塑剤は、一種類でも、複数を配合しても構わない。
【0097】
上記の中でも、液状樹脂を配合することが、低燃費性と耐摩耗性の両立の面で好ましい。液状樹脂としては、例えば、軟化点が室温付近のものを好適に使用でき、液状クマロンインデン樹脂、液状テルペン樹脂、液状スチレン樹脂、液状C5樹脂等;これらの混合物や変性品;等が挙げられる。液状クマロンインデン樹脂が、低燃費性と耐摩耗性のバランスの観点から特に好ましい。なお、環境の観点から、可塑剤として、多環式芳香族化合物(PCA)成分を含む可塑剤を配合しないことが好ましい。
【0098】
可塑剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは2質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。2質量部未満では、加工性改善効果が充分に得られないおそれがある。また、該含有量は、好ましくは60質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは40質量部以下である。60質量部を超えると、工程面での負荷が増大するおそれがある。なお、ゴム成分が油展されている場合は、可塑剤の含有量に該油展分は含まない。
【0099】
本発明のゴム組成物は、老化防止剤を含むことが好ましい。
老化防止剤としては、耐熱性老化防止剤、耐候性老化防止剤等、ゴム組成物に通常使用されるものを特に制限なく使用できる。例えば、ナフチルアミン系(フェニル−α−ナフチルアミン等)、ジフェニルアミン系(オクチル化ジフェニルアミン、4,4’−ビス(α,α’−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等)、p−フェニレンジアミン系(N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン等)等のアミン系老化防止剤;2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;モノフェノール系(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノール等)、ビス、トリス、ポリフェノール系(テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等)等のフェノール系老化防止剤;等が挙げられる。
【0100】
老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、1質量部以上が好ましい。1質量部未満では、分子差切断抑制効果が十分現れず、耐摩耗性が低下する恐れがある。また該含有量は、10質量部以下が好ましい。10質量部を超えると、老化防止剤のブルーミングにより変色を起こすおそれがある。
【0101】
本発明では、界面活性剤を含むことが好ましい。これにより、充填剤の分散を促進し、かつ経年劣化による変色を防ぐことができる。
【0102】
界面活性剤としては、有機酸の金属塩等の金属石鹸;ポリオキシアルキレン誘導体等のノニオン系界面活性剤;等が挙げられるが、特に限定されない。これらは、単独でも複数を組み合わせて使用しても構わない。
【0103】
有機酸の金属塩としては、カルボン酸の金属塩等が好適例として挙げられる。
ポリオキシアルキレン誘導体としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどのエーテル型、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステルなどのエステル型、ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステルなどのエーテルエステル型、ポリオキシアルキレン脂肪酸アミド、ポリオキシアルキレンアルキルアミンなどの含窒素型などが挙げられる。
上記の界面活性剤の中でも、低燃費性と他のゴム物性のバランスの面から、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステルが特に好ましい。
【0104】
界面活性剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、更に好ましくは0.6質量部以上、特に好ましくは1質量部以上、最も好ましくは1.2質量部以上である。0.1質量部未満では、シリカ分散の効果が充分に得られないおそれがある。また、上記含有量は、好ましくは5.0質量部以下、より好ましくは4.0質量部以下、更に好ましくは3.0質量部以下である。5.0質量部を超えると、操縦安定性等が悪化するおそれがある。
【0105】
本発明のゴム組成物には、上記の材料以外にも、酸化亜鉛、ステアリン酸、ワックス等、タイヤ工業において一般的に用いられている各種材料を適宜配合してもよい。
【0106】
本発明のゴム組成物の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、上記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法などにより製造できる。
【0107】
一般的には、ゴム成分、微粒子シリカを含む充填材、シランカップリング剤等を混練するベース練り工程1と、該ベース練り工程1で得られた混合物、加硫剤、加硫促進剤を混練する仕上げ練り工程2と、該仕上げ練り工程2で得られた混合物を加硫する加硫工程3とを含む製法により製造される。
【0108】
更に必要に応じて、ベース練り工程1を、第1ベース練り工程1−1、第2ベース練り工程1−2、等に分割して混練してもよい。この場合、シリカ分散性を向上できる。前記微粒子シリカは、ベース練り工程1で混練することが好ましく、分割混練の場合は第1ベース練り工程1−1で混練することが好ましい。
【0109】
ベース練り工程1(ベース練り工程1−1、1−2等)の混練中の最高温度は、特に限定されないが、シランカップリング剤が十分に反応し、シリカが良好に分散した混練り物が効率良く得られるという点から、好ましくは130℃以上、より好ましくは140℃以上、更に好ましくは145℃以上である。また、ゴム焼けを防ぐため、上限は、好ましくは200℃以下である。
【0110】
ベース練り工程1(ベース練り工程1−1、1−2等)の混練り時間は、特に限定されないが、シリカが良好に分散した混練り物が効率良く得られるという点から、それぞれ好ましくは3分以上、より好ましくは4分以上、更に好ましくは4.5分以上であり、また、好ましくは9分以下、より好ましくは8分以下、更に好ましくは7分以下である。
【0111】
特に、ベース練り工程1(ベース練り工程1−1、1−2等)の最終段階において、混練温度が140℃以上に到達後、混練物を140〜190℃で、10〜120秒間保持することが好ましい。これにより、シランカップリング剤とシリカの反応を完全に進行させることが可能になる。
【0112】
ベース練り工程1(ベース練り工程1−1、1−2等)におけるシランカップリング剤の投入量は、各工程のシリカ投入量100質量部に対して、好ましくは1.0質量部以上、より好ましくは5.0質量部以上、更に好ましくは7.0質量部以上である。また、該シランカップリング剤の投入量は、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である。
【0113】
なお、水酸化アルミニウムを投入する場合、その投入量をシリカ投入量に更に加えた合計投入量100質量部に対して、シランカップリング剤の投入量を算出することが好ましい。
【0114】
仕上げ練り工程2では、ベース練り工程1で得られた混練り物を冷却した後、加硫剤や加硫促進剤などの加硫系を添加して混練りし、未加硫ゴム組成物を得る。工程1で得られた混練り物を冷却する温度は、通常100℃以下であり、好ましくは20〜80℃である。
【0115】
仕上げ練り工程2の混練り温度は、好ましくは110℃以下、より好ましくは100℃以下である。110℃を超えると、ゴム焼け(スコーチ)が生じるおそれがある。混練り温度の下限は特に限定されないが、好ましくは80℃以上である。
【0116】
仕上げ練り工程2の混練り時間は特に限定されないが、通常30秒以上であり、好ましくは1〜30分間である。
【0117】
なお、老化防止剤は、各工程で分割して投入しても構わないが、全量を仕上げ練り工程2で投入することが、作業効率と混練中の老化防止剤の活性低下防止の観点から好ましい。
【0118】
また、界面活性剤は、シリカ分散を促進する観点から、シリカの混練工程、特に前記微粒子シリカの混練工程で投入することが好ましい。なお、複数の工程で分割投入してもよい。
【0119】
加硫工程3において、仕上げ練り工程2で得られた未加硫ゴム組成物を公知の方法で加硫することにより、本発明のゴム組成物が得られる。加硫工程3の加硫温度は、本発明の効果が良好に得られるという点から、好ましくは120℃以上、より好ましくは140℃以上であり、また、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。
【0120】
本発明のゴム組成物は、タイヤの各部材に使用でき、なかでも、トレッド、サイドウォール等に好適に用いることができる。
【0121】
本発明のゴム組成物を用いたタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法により製造される。すなわち、必要に応じて各種添加剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でトレッドなどの部材の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成した後、加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造することができる。
【0122】
本発明では、前記ゴム組成物を用いることで、空気入りタイヤ、非空気入りタイヤを製造できる。空気入りタイヤは、乗用車用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、二輪車用タイヤ、高性能タイヤ等として用いられる。なお、本明細書における高性能タイヤとは、グリップ性能に特に優れたタイヤであり、競技車両に使用する競技用タイヤを含む。
【実施例】
【0123】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0124】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
SBR1:ランクセス社製 Buna SL4525−0(スチレン量25%、非油展、非変性S−SBR)
SBR2:下記製造例1で作製した変性SBR(アミノ基及びアルコキシシリル基を有する変性S−SBR)
BR1:宇部興産(株)製のBR150B(シス含有量:97質量%、ML1+4(100℃):40)
BR2:下記製造例2で作製した変性BR(アルコキシシリル基を有する変性ハイシスBR)
シリカ1:Rhodia社製のZeosil Premium 200MP(CTAB比表面積:200m
2/g、BET比表面積:220m
2/g、平均一次粒子径:10nm)
シリカ2:Rhodia社製のZeosil 1115MP(CTAB比表面積:105m
2/g、BET比表面積:115m
2/g、平均一次粒子径:25nm)
カーボンブラック:三菱化学(株)製のダイヤブラックN220(N
2SA:114m
2/g、平均一次粒子径:22nm)
オイル:H&R社製のVIVATEC500
C10レジン:ルトガー社製 NOVARES C10レジン(液状クマロンインデン樹脂、軟化点10℃)
ステアリン酸:日油(株)製
ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエース0355
界面活性剤:花王(株)製 エマルゲン123P(非イオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンラウリルエーテル)
シランカップリング剤1:下記製造例3で作製した(2−トリエトキシシリルエチル)−ビス−(7−トリエトキシシリル−3,4,5,6−テトラチアノニル)シクロヘキサン
シランカップリング剤2:エボニック社製 Si69
水酸化アルミニウム:昭和電工(株)製のハイジライトH−43(平均一次粒子径:1μm)
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン)
酸化亜鉛:ハクスイテック(株)製の酸化亜鉛3種
硫黄:鶴見化学(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製ノクセラーNS(N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)
加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(N,N’−ジフェニルグアニジン)
【0125】
(製造例1)
アミノ基及びアルコキシシリル基を有するSBR2の調製
窒素雰囲気下、5リットルのオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン2750g、テトラヒドロフラン50g、スチレン125gおよびブタジエン375gを仕込み、反応器内の温度を10℃に調整した後、n−ブチルリチウム5.8mmolを含むシクロヘキサン溶液を添加し、重合を開始した。50℃〜80℃で重合反応を3時間行った。
その後、ポリマー溶液に、N,N−ビス(トリエチルシリル)アミノプロピルトリメトキシシラン4.96mmolを含むシクロヘキサン溶液を加えて15分間反応を行った。反応後の重合体溶液に、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(4.96mmol)を含むシクロヘキサン溶液を加えて5分間混合後、更に四塩化ケイ素(3.93mmol)を含むシクロヘキサン溶液を加えて5分間混合後、更にビス(2−エチルヘキサノエート)スズ(4.96mmol)を含むシクロヘキサン溶液を加えて5分間混合を行った。次に、得られたポリマー溶液に2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール2.0gを添加した。次いで、水酸化ナトリウムでpH=9に調整した熱水を用いてスチームストリッピングを行うことにより脱溶媒を行い、110℃に調温された熱ロールによりゴムを乾燥し、SBR2を得た。
なお、SBR2の結合スチレン量は25質量%、ビニル含量は55モル%、Mwは62万であった。
【0126】
(製造例2)
アルコキシシリル基を有するBR2の調製
5Lオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン2.4kg、1,3−ブタジエン300gを仕込んだ。これらに、予めバーサチック酸ネオジム(0.09mmol)のシクロヘキサン溶液、メチルアルモキサン(1.0mmol)のトルエン溶液、水素化ジイソブチルアルミニウム(3.5mmol)及びジエチルアルミニウムクロリド(0.18mmol)のトルエン溶液と、1,3−ブタジエン(4.5mmol)とを50℃で30分間反応熟成させて調製した触媒を仕込み、80℃で45分間重合反応を行った。
次に、反応温度60℃に保ち、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(4.5mmol)のトルエン溶液を添加し、30分間反応を行い、活性末端を変性させた。その後、2,4−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール1.5gを含むメタノール溶液を添加した。
次に、水酸化ナトリウムによりpH10に調整した水溶液20Lに、上記変性重合体溶液を添加し、110℃で2時間、脱溶媒後、110℃のロールで乾燥させて、BR2を得た。得られたものは、シス量97質量%、ビニル量1.1%、Mw35万であった。
【0127】
なお、得られた重合体の分子量、スチレン量、ビニル含量及びシス含量は以下の方法により分析した。
<分子量>
下記の条件(1)〜(8)でゲル・パーミエイション・クロマトグラフ(GPC)法により、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を求めた。
(1)装置:東ソー(株)製HLC−8220
(2)分離カラム:東ソー(株)製HM−H(2本直列)
(3)測定温度:40℃
(4)キャリア:テトラヒドロフラン
(5)流量:0.6mL/分
(6)注入量:5μL
(7)検出器:示差屈折
(8)分子量標準:標準ポリスチレン
<重合体の構造同定>
重合体の構造同定は、日本電子(株)製JNM−ECAシリーズの装置を用いて行った。測定結果から、スチレン量、ビニル含量、シス含量を算出した。
【0128】
(製造例3)
(2−トリエトキシシリルエチル)−ビス−(7−トリエトキシシリル−3,4,5,6−テトラチアノニル)シクロヘキサンの調製
【0129】
先ず、(2−トリメトキシシリルエチル)ジビニルシクロヘキサンをヒドロシリル化により作製した。
具体的には、マグネチックスターラーバー、温度プローブ/コントローラ、加熱マントル、添加ロート、コンデンサー、および気体吸入口を備えた、5リットルの三口丸底フラスコに、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン(2,001.1グラム、12.3モル)およびVCAT触媒(1.96グラム、0.01534グラム白金)を充填した。チューブがシランの表面より下にある気体吸入口によって、空気を泡立てながらビニルシランを入れた。反応混合物は110℃に温められ、トリメトキシシラン(1,204グラム、9.9モル)を3.5時間にわたって添加した。反応混合物の温度は最高値130℃まで上昇した。反応混合物を室温に冷却し、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(3グラム、0.004モル)を添加した。反応混合物を122℃および1mmHgで蒸留し、1,427グラムの(2−トリメトキシシリルエチル)ジビニルシクロヘキサンが得られた。収率は51パーセントであった。
【0130】
次に、(2−トリエトキシシリルエチル)ジビニルシクロヘキサンをエステル交換により作製した。
具体的には、マグネチックスターラーバー、温度プローブ/コントローラ、加熱マントル、添加ロート、ト字管、および、コンデンサー、ならびに窒素注入口を備えた、3リットルの三口丸底フラスコに、(2−トリメトキシシリルエチル)ジビニルシクロヘキサン(284グラム、2.33モル)、ナトリウムエトキシド・エタノール溶液(49グラムの21%ナトリウムエトキシド、Aldrich Chemical製)およびエタノール(777グラム、16.9モル)を充填した。反応混合物は温められ、メタノールとエタノールは大気圧における蒸留により取り除かれた。粗生成物はその後、106℃、0.4mmHgという減圧において蒸留され、675グラムの(2−トリエトキシシリルエチル)ジビニルシクロヘキサンが得られた。収率は89パーセントであった。
【0131】
続いて、(2−トリエトキシシリルエチル)ビス−(3−チア−4−オキソペンチル)シクロヘキサンを、チオ酢酸をジビニルシランへ添加することにより作製した。
具体的には、マグネチックスターラーバー、温度プローブ/コントローラ、加熱マントル、添加ロート、コンデンサー、気体注入口、および水酸化ナトリウムスクラバーを備えた、1リットル三口丸底フラスコに、チオ酢酸(210グラム、2.71モル)を充填した。(2−トリエトキシシリルエチル)ジビニルシクロヘキサン(400グラム、1.23モル)を30分にわたり、室温で、添加ロートを介してゆっくりと添加した。反応は発熱性の反応であった。混合物の温度は94.6℃に上昇した。混合物を2.5時間撹拌し、38.8℃まで冷却した。追加的なチオ酢酸(10グラム、0.13モル)を添加し、わずかな発熱反応が観察された。反応混合物を25℃で終夜(18時間)撹拌した。分析により、反応混合物が2パーセント以下のチオ酢酸を含むことが示され、全体的な純度は91パーセントであった。反応混合物は、減圧下でクーゲル装置により蒸留することでさらに精製され、(2−トリエトキシシリルエチル)ビス−(3−チア−4−オキソペンチル)シクロヘキサンが得られた。
【0132】
更に、ジメルカプトシランの中間生成物〔(2−トリエトキシシリルエチル)ビス(2−メルカプトエチル)シクロヘキサン〕は、(2−トリエトキシシリルエチル)ビス−(3−チア−4−オキソペンチル)シクロヘキサンからアセチル基を取り除くことにより作製した。
具体的には、マグネチックスターラーバー、温度プローブ/コントローラ、加熱マントル、添加ロート、ト字管、およびコンデンサー、10段Oldershawカラム、ならびに窒素注入口を備えた5リットルの三口丸底フラスコに、(2−トリエトキシシリルエチル)ビス−(3−チア−4−オキソペンチル)シクロヘキサン(2,000グラム、4.1モル)、エタノール(546.8グラム、11.8モル)およびナトリウムエトキシド・エタノール溶液(108グラムの21%ナトリウムエトキシド・エタノール溶液)を充填した。反応混合物のpHは約8であった。反応混合物を24時間、88℃に温め、酢酸エチルおよびエタノールを反応混合物から取り除いた。二度、エタノール(1リットル)を混合物に添加し、21%ナトリウムエトキシド・エタノール溶液(21グラム)の添加により、反応混合物のpHが約10にまで上昇し、更に6.5時間温めた。反応混合物を冷却し、加圧ろ過した。反応混合物を、95℃以下の温度と1mmHgの圧力でストリップした。ストリップした生成物をろ過し、(2−トリエトキシシリルエチル)ビス(2−メルカプトエチル)シクロヘキサン(1398グラム、3.5モル、86%の収率)が得られた。
【0133】
そして、目的物の(2−トリエトキシシリルエチル)−ビス−(7−トリエトキシシリル−3,4,5,6−テトラチアノニル)シクロヘキサン、関連するオリゴマーおよびポリスルフィド、ならびにビス−(トリエポキシシリルプロピル)ポリスルフィド混合物を、ジメルカプトシランと塩基、硫黄および3−クロロプロピルトリエトキシシランとを反応させることにより作製した。
具体的には、マグネチックスターラーバー、温度プローブ/コントローラ、加熱マントル、添加ロート、ト字管、および、フリードリヒコンデンサー、ならびに窒素注入口を備えた、5リットルの三口丸底フラスコに、(2−トリエトキシシリルエチル)−ビス−(2−メルカプトエチル)シクロヘキサン(596.3グラム、1.5モル)を充填した。21%ナトリウムエトキシド・エタノール溶液(979.0グラム、3.0モル)に、600グラムのエタノールおよび硫黄(Aldorich Chemical製の昇華された粉、299.0グラム、9.1モル)を急速な撹拌により、追加した。溶液を終夜還流し、3−クロロプロピルトリエトキシシラン(740.0グラム、3.07モル)を添加し、その後16時間還流した。溶液を冷却し、0.1マイクロメートルのフィルターを介して加圧ろ過した。ろ過したものを、その後、エタノールを取り除くために、Rotavaporを用いてストリップした。(2−トリエトキシシリルエチル)−ビス−(7−トリエトキシシリル−3,4,5,6−テトラチアノニル)シクロヘキサン等の目的物(1,375グラム)は、HPLC、NMRおよびGCにより分析された。
【0134】
(2−トリエトキシシリルエチル)−ビス−(7−トリエトキシシリル−3,4,5,6−テトラチアノニル)シクロヘキサンの一つの異性体は以下の構造を有している。
【化5】
【0135】
〔実施例、比較例〕(表1)
バンバリーミキサーを用いて、表1のベース練り工程1−1に示す配合量の薬品を投入して、排出温度を150℃に設定して5分混練りした。その後、混練物をミキサー内で、排出温度が約160℃となるように1分間保持した。
次に、ベース練り工程1−1により得られた混練り物に対して、表1のベース練り工程1−2に示す配合量の薬品を投入して、140℃以上で30秒混練し、その後排出温度が約150℃となるように3分間混練りした。
その後、ベース練り工程1−2により得られた混練り物に対して、表1の仕上げ練り工程2に示す配合量の薬品を加え、オープンロールを用いて、約80℃の条件下で3分間混練りして、未加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物をトレッドの形状に成形し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、150℃、25kgfの条件で35分間加硫し、試験用タイヤ(タイヤサイズ:195/65R15)を製造した。
【0136】
〔実施例、比較例〕(表2)
ベース練り工程1−1、1−2の分割混練を行わず、表2に示す配合量で薬品を一度に投入するベース練り工程1を行い、排出温度が150℃となるように5分間混練した以外は、上記と同様に試験用タイヤを製造した。
【0137】
〔評価方法〕
製造された試験用タイヤを以下の方法で評価し、結果を表1〜2に示した。
<転がり抵抗>
転がり抵抗試験機を用い、試験用タイヤを、リム(15×6JJ)、内圧(230kPa)、荷重(3.43kN)、速度(80km/h)で走行させたときの転がり抵抗を測定し、比較例1を100とした時の指数で表示した。指数は大きい方が良好(低燃費性)である。
【0138】
<耐摩耗性>
試験用タイヤを国産FF車に装着し、走行距離8000km後のタイヤトレッド部の溝深さを測定し、タイヤ溝深さが1mm減るときの走行距離を算出し下記式により指数化した。指数が大きいほど、耐摩耗性が良好である。
(耐摩耗性指数)=(各配合の1mm溝深さが減るときの走行距離)/(比較例1のタイヤ溝が1mm減るときの走行距離)×100
【0139】
<操縦安定性>
試験用タイヤを国産FF車に装着し、蛇行運転をした際のドライバーの官能評価により操縦安定性を評価した。その際に、比較例1の操縦安定性を100点としてそれぞれ相対評価を行った。数値が大きいほど、操縦安定性に優れることを示す。
【0140】
<ウェット性能>
湿潤アスファルト路面において、初速度100km/hからの制動距離を求め、下記式により指数表示した。指数が大きいほど、ウェット性能が良好である。
(ウェット性能指数)=(比較例1の制動距離)/(各配合の制動距離)×100
【0141】
【表1】
【0142】
【表2】
【0143】
表1、2により、変性ジエン系ゴム、微粒子シリカ、式(1)のシランカップリング剤を用いることで、低燃費性、耐摩耗性、ウェット性能、操縦安定性の性能バランスが顕著に改善された。特に、非変性ゴム、通常のシリカ、シランカップリング剤を用いた比較例1、微粒子シリカ、式(1)のシランカップリング剤に変更した比較例2、変性ジエン系ゴム、微粒子シリカに変更した比較例3では、ほぼ同等の性能が得られているのに対し、変性ジエン系ゴム、微粒子シリカ、式(1)のシランカップリング剤を組み合わせた実施例3では、性能が顕著に改善され、前記性能バランスが相乗的に改善されることが明らかとなった。また、ベース練り工程をベース練り工程1−1、1−2の分割混練とした場合、良好な性能が得られた。
【0144】
〔比較例〕(表3)
更に表2の実施例、比較例と同様の方法で、表3に示す汎用ゴム・シリカ配合の試験用タイヤを製造した。前記と同様の評価方法で試験用タイヤを評価し、結果を示した(基準:比較例6)。
【0145】
【表3】
【0146】
表2の変性ジエン系ゴム・微粒子シリカ配合に比べて、表3の汎用ゴム・シリカ配合では、式(1)のシランカップリング剤を添加しても前記性能バランスの改善が小さく、変性ジエン系ゴム、微粒子シリカに、式(1)のシランカップリング剤を添加することで、前記性能バランスが相乗的に改善された。