特許第6211029号(P6211029)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6211029
(24)【登録日】2017年9月22日
(45)【発行日】2017年10月11日
(54)【発明の名称】過給機用サイレンサ及び過給機
(51)【国際特許分類】
   F02B 37/00 20060101AFI20171002BHJP
   F02B 39/00 20060101ALI20171002BHJP
   F02M 35/14 20060101ALI20171002BHJP
   F04D 29/66 20060101ALI20171002BHJP
【FI】
   F02B37/00 301F
   F02B39/00 G
   F02M35/14 G
   F04D29/66 G
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-64653(P2015-64653)
(22)【出願日】2015年3月26日
(65)【公開番号】特開2016-183620(P2016-183620A)
(43)【公開日】2016年10月20日
【審査請求日】2016年11月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】小川 真司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 高記
(72)【発明者】
【氏名】和田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】白石 啓一
【審査官】 齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭55−176437(JP,U)
【文献】 特開2013−124660(JP,A)
【文献】 特開2011−236890(JP,A)
【文献】 特開平6−58298(JP,A)
【文献】 特開平11−201099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/00 − 39/16
F02M 35/00 − 35/16
F04D 29/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンプレッサハウジングの空気取り入れ口側に連結される過給機用サイレンサであって、
所定の中心軸の回りに該中心軸と交差する方向に延在する環状の第1側壁と、
前記第1側壁に対して前記コンプレッサハウジングと反対側に位置するとともに前記第1側壁の延在方向に沿って延在し、前記空気取り入れ口に外気を導くための外気導入空間を前記第1側壁との間に形成する第2側壁と、
前記外気導入空間に設けられたサイレンサエレメントと、
前記サイレンサエレメントの外周側に前記外気導入空間の周方向に沿って延設されたフィルタと、
を備え、
前記第1側壁は、前記フィルタよりも外周側に突出した第1フランジを含み、
前記第2側壁は、前記第1フランジに対向するように前記フィルタよりも外周側に突出した第2フランジを含み、
前記第1フランジ及び前記第2フランジの各々には、前記周方向に沿って複数の固定穴が設けられ
前記第1フランジと前記第2フランジの間に形成された開口のうち前記周方向における一部の範囲を覆うサイレンサカバーを更に備え、
前記サイレンサカバーは、前記第1フランジの固定穴と、前記第2フランジの固定穴とに、複数の締結手段によって固定された過給機用サイレンサ。
【請求項2】
前記サイレンサカバーは、前記フィルタの外周側に前記フィルタに対して間隔を開けて設けられた請求項に記載の過給機用サイレンサ。
【請求項3】
前記中心軸と前記フィルタとの距離をR0、前記中心軸と前記第1フランジの外周縁との距離をR1、前記中心軸と前記第2フランジの外周縁との距離をR2とすると、R1>1.1R0、及びR2>1.1R0を満たす請求項1又は2に記載の過給機用サイレンサ。
【請求項4】
前記第1フランジは、前記第1側壁の全周に亘って設けられ、
前記第2フランジは、前記第2側壁の全周に亘って設けられた請求項1乃至の何れか1項に記載の過給機用サイレンサ。
【請求項5】
前記第1フランジは、前記第1側壁における前記周方向の一部の範囲のみに設けられ、
前記第2フランジは、前記第1フランジに対向するように前記第2側壁における前記周方向の一部の範囲のみに設けられた請求項1乃至の何れか1項に記載の過給機用サイレンサ。
【請求項6】
コンプレッサハウジングを含むコンプレッサと、前記コンプレッサハウジングの空気取り入れ口側に連結され、前記コンプレッサハウジングに片持ち支持される過給機用サイレンサと、を備える過給機であって、前記過給機用サイレンサが請求項1乃至の何れか1項に記載の過給機用サイレンサである、過給機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、過給機用サイレンサ及び過給機に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の熱効率を高めるための一手段として過給機が知られている。特許文献1には、過給機におけるコンプレッサハウジングの空気取り入れ口側に連結された円筒形状の過給機用サイレンサが開示されている。かかるサイレンサでは、サイレンサの外周から中心に向かって空気の吸い込みが行われる。このとき、過給機のコンプレッサの騒音は、空気の吸い込み流れに逆行して、サイレンサの中心から外周に向かって放射される。特許文献1に記載の過給機用サイレンサでは、この騒音を消音するために、サイレンサの内径と外径との間に、複数の吸音スプリッタが、周方向に等ピッチで放射状に配列されている。
【0003】
特許文献1に記載の過給機用サイレンサには、コンプレッサに取り込まれる空気の温度を低下させるために、内燃機関から遠い側の空気(比較的低温の空気)を内燃機関に近い側の空気(比較的高温の空気)よりも優先的に取り込むように、サイレンサの一部を覆うサイレンサカバーが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2013/089159号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の過給機用サイレンサには、円筒形状のサイレンサのうちコンプレッサハウジングから遠い方の側壁(特許文献1における図2の円板31)の半分程度を覆う大型のサイレンサカバーが装着されている。このため、過給機の設置後に、サイレンサから取り込む空気の周方向の温度分布に応じて、サイレンサの周方向におけるサイレンサカバーの取り付け範囲を調節することが困難であった。
【0006】
本発明は、上述したような従来の課題に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、周方向におけるサイレンサカバーの取り付け範囲を容易に調節可能な過給機用サイレンサ、及びこれを備えた過給機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る過給機用サイレンサは、コンプレッサハウジングの空気取り入れ口側に連結される過給機用サイレンサであって、所定の中心軸の回りに該中心軸と交差する方向に延在する環状の第1側壁と、前記第1側壁に対して前記コンプレッサハウジングと反対側に位置するとともに前記第1側壁の延在方向に沿って延在し、前記空気取り入れ口に外気を導くための外気導入空間を前記第1側壁との間に形成する第2側壁と、前記外気導入空間に設けられたサイレンサエレメントと、前記サイレンサエレメントの外周側に前記外気導入空間の周方向に沿って延設されたフィルタと、を備え、前記第1側壁は、前記フィルタよりも外周側に突出した第1フランジを含み、前記第2側壁は、前記第1フランジに対向するように前記フィルタよりも外周側に突出した第2フランジを含み、前記第1フランジ及び前記第2フランジの各々には、周方向に沿って複数のボルト穴(固定穴)が設けられている。
【0008】
上記(1)に記載の過給機用サイレンサによれば、第1フランジと第2フランジの間に形成された開口のうち周方向における一部の範囲を覆うように構成されたサイレンサカバーを、第1フランジのボルト穴(固定穴)と、第2フランジのボルト穴(固定穴)とに、ボルト(締結手段)によって固定することができる。このため、簡易な構成(例えばコの字状(rectangular U−shaped)の断面を有する構成)のサイレンサカバーによって開口の一部を覆うことができ、また、ボルト穴(固定穴)の位置に応じて周方向におけるサイレンサカバーの取り付け範囲を容易に調節することができる。
【0009】
したがって、周囲に内燃機関等の熱源が存在する環境に過給機を設置した場合に、例えば、フランジ間の開口における周方向の温度分布を測定し、該開口のうち周方向における温度が比較的高い範囲のみに当該範囲に対応する周方向長さを有するサイレンサカバーを取り付けることが可能となる。これにより、コンプレッサに取り込まれる空気の温度を、サイレンサカバーの取り付けによって効果的に低下させることができる。
【0010】
また、上記のように簡易な構成のサイレンサカバーを取り付け可能であるため、サイレンサカバーを装着してもサイレンサの重心がコンプレッサハウジングから遠くなりにくい。このため、サイレンサカバーを装着しても、過給機の運転時にサイレンサの振動が大きくなりにくい。したがって、サイレンサとコンプレッサハウジングとの連結部やサイレンサカバーの取り付け部(ボルト)に負荷がかかりにくく、該連結部や取り付け部の破損を抑制することができる。
【0011】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の過給機用サイレンサにおいて、前記第1フランジと前記第2フランジの間に形成された開口のうち周方向における一部の範囲を覆うサイレンサカバーを更に備え、前記サイレンサカバーは、前記第1フランジのボルト穴と、前記第2フランジのボルト穴とに、複数のボルトによって固定されている。
【0012】
上記(2)に記載の過給機用サイレンサによれば、開口のうち周方向における温度が比較的高い範囲のみに当該範囲に対応する周方向長さを有するサイレンサカバーを取り付けることにより、コンプレッサに取り込まれる空気の温度を効果的に低下させることができる。また、上記(1)に記載したように、サイレンサカバーを装着してもサイレンサの重心がコンプレッサハウジングから遠くなりにくいため、過給機の運転時におけるサイレンサの振動の増大を抑制することができる。
【0013】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)に記載の過給機用サイレンサにおいて、前記サイレンサカバーは、前記フィルタの外周側に前記フィルタに対して間隔を開けて設けられている。
【0014】
上記(3)に記載の過給機用サイレンサによれば、サイレンサカバーの周方向一端部、フィルタ、第1フランジ及び第2フランジによって形成された一端側開口から、サイレンサカバー、フィルタ、第1フランジ及び第2フランジによって囲まれた空間に空気を取り込むことが可能となる。また、サイレンサカバーの周方向他端部、フィルタ、第1フランジ及び第2フランジによって形成された他端側開口から、サイレンサカバー、フィルタ、第1フランジ及び第2フランジによって囲まれた空間に空気を取り込むことが可能となる。したがって、サイレンサが周方向全域から空気を良好に取り込むことができるので、サイレンサへの空気の総取り込み量の低下を抑制しつつ、内燃機関等の熱源により生じた高温の空気が取り込まれることを抑制することができる。
【0015】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れか1項に記載の過給機用サイレンサにおいて、前記中心軸とフィルタとの距離をR0、前記中心軸と前記第1フランジの外周縁との距離をR1、前記中心軸と前記第2フランジの外周縁との距離をR2とすると、R1>1.1R0、及びR2>1.1R0を満たす。
【0016】
上記(4)に記載の過給機用サイレンサによれば、第1フランジと第2フランジとの間に形成された開口のうち周方向における一部の範囲を覆うサイレンサカバーを装着した際に、サイレンサカバー、フィルタ、第1フランジ及び第2フランジによって囲まれた空間をある程度広くすることができる。このため、サイレンサカバーを装着した状態においても過給機用サイレンサが周方向全域から空気を良好に取り込むことができ、過給機用サイレンサへの空気の総取り込み量の低下を抑制する効果を高めることができる。
【0017】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れか1項に記載の過給機用サイレンサにおいて、前記第1フランジは、前記第1側壁の全周に亘って設けられており、前記第2フランジは、前記第2側壁の全周に亘って設けられている。
【0018】
上記(5)に記載の過給機用サイレンサによれば、周方向全域に亘って設けられたフランジ間の開口における所望の周方向範囲に、所望の周方向長さのサイレンサカバーを取り付けることができる。したがって、周方向全域の温度分布を考慮して比較的温度が高い範囲のみに当該範囲に対応する周方向長さを有するサイレンサカバーを取り付けることが可能となる。
【0019】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れか1項に記載の過給機用サイレンサにおいて、前記第1フランジは、前記第1側壁における前記周方向の一部の範囲のみに設けられており、前記第2フランジは、前記第2側壁における前記周方向の一部の範囲のみに設けられている。
【0020】
過給機の設置環境における過給機用サイレンサの周方向の温度分布が過給機の設置前からある程度予測可能である場合には、上記(6)に記載のように、第1フランジ及び第2フランジをそれぞれ周方向における一部の範囲のみに設けても良い。この場合、例えば、過給機の設置環境において比較的温度が高くなりやすい周方向範囲に第1フランジ及び第2フランジを設け、過給機の設置後に、実際に計測した周方向の温度分布に基づいて、周方向におけるサイレンサカバーの取り付け範囲を微調整してもよい。これにより、第1フランジ及び第2フランジをそれぞれ全周に亘って設ける場合と比較して、構成を簡素化しつつ内燃機関等の熱源により生じた高温空気の取り込みを抑制することができる。
【0021】
(7)本発明の少なくとも一実施形態に係る過給機は、コンプレッサハウジングを含むコンプレッサと、前記コンプレッサハウジングの空気取り入れ口側に連結され、前記コンプレッサハウジングに片持ち支持される過給機用サイレンサと、を備える過給機であって、前記過給機用サイレンサが上記(1)乃至(6)の何れか1項に記載の過給機用サイレンサである。
【0022】
上記(7)に記載の過給機によれば、上記(1)乃至(6)の何れか1項に記載の過給機用サイレンサを備えることにより、コンプレッサに取り込まれる空気の温度を、サイレンサカバーの取り付けによって効果的に低下させることができるため、コンプレッサにおける圧縮に要する仕事量を低減することができる。また、上記(1)に記載のように、サイレンサカバーを装着してもサイレンサの重心がコンプレッサハウジングから遠くなりにくいため、過給機の運転時にサイレンサの振動が大きくなりにくい。したがって、サイレンサとコンプレッサハウジングとの連結部やサイレンサカバーの取り付け部(ボルト)に負荷がかかりにくく、該連結部や取り付け部の破損を抑制することができる。これにより、過給機の安定的な運転を実現することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、周方向におけるサイレンサカバーの取り付け範囲を容易に調節可能な過給機用サイレンサ、及びこれを備えた過給機が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】一実施形態に係る過給機100の概略構成を示す側面図である。
図2】一実施形態に係る過給機用サイレンサ8の縦断面図(過給機用サイレンサ8の軸線Oに沿った断面図)を過給機100の一部とともに示す図である。
図3】一実施形態に係るサイレンサエレメント28の部分断面図(過給機用サイレンサ8の軸線Oに垂直な断面図)である。
図4図2に示した過給機用サイレンサ8の一構成例としての過給機用サイレンサ8(8A)の概略構成を示す斜視図である。
図5図4に示した過給機用サイレンサ8(8A)にサイレンサカバー58を取り付けた状態を示す斜視図である。
図6図2に示した過給機用サイレンサ8の一構成例としての過給機用サイレンサ8(8B)の概略構成を示す斜視図である。
図7図6に示した過給機用サイレンサ8(8B)にサイレンサカバー58を取り付けた状態を示す斜視図である。
図8】一実施形態に係る過給機用サイレンサ8の縦断面図(過給機用サイレンサ8の軸線Oに沿った断面図)を過給機100の一部とともに示す図であり、図2に示した過給機用サイレンサ8にサイレンサカバー58を取り付けた状態を示す図である。
図9】一参考形態に係る過給機の概略構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0026】
図1は、一実施形態に係る過給機100の概略構成を示す側面図である。図1に示すように、過給機100は、タービン2、コンプレッサ4、軸受台6及び過給機用サイレンサ8を備える。
【0027】
タービン2は、内燃機関(不図示)が排出する排ガスによって回転するタービンロータ10と、タービンロータ10を収容するタービンハウジング12とを備えている。上記内燃機関は、例えば大型舶用ディーゼルエンジンであってもよい。
【0028】
コンプレッサ4は、タービンロータ10の回転によって駆動され、内燃機関への吸気を圧縮するインペラ14と、インペラ14を収容するコンプレッサハウジング16を備えた遠心コンプレッサである。
【0029】
軸受台6は、タービン2とコンプレッサ4の間に設けられ、タービン2のタービンロータ10とコンプレッサ4のインペラ14とを連結する回転軸18を回転可能に支持する軸受装置20を収容している。軸受台6は、地面gに載置され、過給機100の荷重の少なくとも一部を支えるよう構成されている。
【0030】
図2は、一実施形態に係る過給機用サイレンサ8の縦断面図(過給機用サイレンサ8の軸線Oに沿った断面図)を過給機100の一部とともに示す図である。
【0031】
図2に示すように、過給機用サイレンサ8は、コンプレッサハウジング16の空気取り入れ口22側に連結され、コンプレッサハウジング16に片持ち支持されている。過給機用サイレンサ8は、第1側壁24、第2側壁26、サイレンサエレメント28及びフィルタ30を含む。
【0032】
第1側壁24は、所定の中心軸Oの回りに該中心軸Oと交差する方向(図示する形態では中心軸Oと直交する方向)に延在する円環状の平板である。図示する例示的な形態では、環状の第1側壁24の内周側には、第1側壁24と同心に設けられた円筒体7が接続されており、円筒体7におけるコンプレッサハウジング16側の先端にはフランジ32が径方向外側に向かって延設されている。フランジ32は、コンプレッサハウジング16の空気取り入れ口22側に形成されたフランジ34と連結している。第1側壁24、円筒体7、及びフランジ32にかけて、複数枚の放射状補強材36が固定されており、該放射状補強材36によって第1側壁24、円筒体7及びフランジ32が強固に一体化されている。
【0033】
第2側壁26は、第1側壁24に対してコンプレッサハウジング16と反対側に位置するとともに第1側壁24の延在方向に沿って延在する円板である。第2側壁26は、コンプレッサハウジング16の空気取り入れ口22に外気を導くための外気導入空間38を第1側壁24との間に形成している。
【0034】
サイレンサエレメント28は、外気導入空間38に設けられており、外気導入空間38における空気の吸い込み流れに逆行するコンプレッサ4の騒音を低減するよう構成されている。図示する例示的な形態では、サイレンサエレメント28は、互いに対向する円環状の平板40,42と、平板40と第1側壁24との間に挟まれた吸音材44と、平板42と第2側壁26の間に挟まれた吸音材46と、平板40と平板42の間に、外気導入空間38の周方向(以下、単に「周方向」と記載する場合には、外気導入空間38の周方向を意味することとする。)に間隔を空けて配列された複数の吸音スプリッタ48(図3参照)と、を含む。
【0035】
フィルタ30は、サイレンサエレメント28の外周側に周方向に沿って全周に亘って延設されている。フィルタ30は、例えば、サイレンサエレメント28の外周側に周方向に沿って全周に亘って延設された金網と、金網の外周側に周方向に沿って全周に亘って延設された防塵用のフィルタとを含んでいてもよい。
【0036】
図4は、図2に示した過給機用サイレンサ8の一構成例としての過給機用サイレンサ8(8A)の概略構成を示す斜視図である。図5は、図4に示した過給機用サイレンサ8(8A)にサイレンサカバー58を取り付けた状態を示す斜視図である。図6は、図2に示した過給機用サイレンサ8の一構成例としての過給機用サイレンサ8(8B)の概略構成を示す斜視図である。図7は、図6に示した過給機用サイレンサ8(8B)にサイレンサカバー58を取り付けた状態を示す斜視図である。なお、図4図7では、過給機用サイレンサ8の内部構成及びコンプレッサハウジング16との連結部分の構成を便宜上省略している。
【0037】
幾つかの実施形態では、図4図7に示すように、第1側壁24は、フィルタ30よりも外周側に突出するフランジ54(第1フランジ)を有し、第2側壁26は、フィルタ30よりも外周側に突出するフランジ56(第2フランジ)を有し、フランジ54及びフランジ56の各々には、周方向に沿って複数のボルト穴54a,56aが設けられている。
【0038】
これにより、図5及び図7に示すように、フランジ54とフランジ56の間に形成された開口60のうち周方向における一部の範囲を覆うように構成されたサイレンサカバー58を、フランジ54の複数のボルト穴54aのうち一部のボルト穴と、フランジ56の複数のボルト穴56aのうち一部のボルト穴とに、複数のボルト62によって固定することができる。このため、簡易な構成(例えば図8に示すようにコの字状(rectangular U−shaped)の断面を有する構成)のサイレンサカバー58によって開口60の一部を覆うことができ、また、ボルト穴54a,56aの周方向位置に応じて周方向におけるサイレンサカバー58の取り付け範囲を容易に調節することができる。
【0039】
したがって、周囲に内燃機関等の熱源が存在する環境に過給機100を設置した場合に、例えば、開口60における周方向の温度分布を測定し、開口60のうち周方向における温度が比較的高い範囲のみに当該範囲に対応する周方向長さを有するサイレンサカバー58を取り付けることが可能となる。例えば、開口60のうち周方向における90度の範囲(開口60のうち周方向における4分の1の範囲)を覆うサイレンサカバー58を取り付けることもできるし、120度の範囲(開口60のうち周方向における3分の1の範囲)を覆うサイレンサカバー58を取り付けることもできる。
【0040】
なお、図9に示すように、過給機用サイレンサ008がコンプレッサハウジング016に片持ち支持されている場合、該サイレンサの重心Cがコンプレッサハウジングから遠くなるにつれて(サイレンサの重心が過給機の軸受台006から遠くなるにつれて)、過給機0100の運転時にサイレンサの振動が大きくなりやすい。この点、特許文献1に記載の過給機用サイレンサでは、円筒形状のサイレンサのうちコンプレッサハウジングから遠い方の側壁(特許文献1における図2の円板31)の半分程度を覆うようにサイレンサカバーが装着されており、サイレンサカバーを装着した際にサイレンサカバーの重心がコンプレッサハウジングから遠くに位置することとなる。このため、サイレンサカバーを装着したサイレンサの重心もコンプレッサハウジングから遠くなりやすく、過給機の運転時にサイレンサの振動が大きくなりやすい。過給機の運転時におけるサイレンサの振動が大きくなると、例えば、サイレンサとコンプレッサハウジングとの連結部やサイレンサカバーの取り付け部に大きな負荷がかかり、該連結部や取り付け部の破損を招く可能性がある。
これに対し、図4に示した過給機用サイレンサ8(8A)及び図6に示した過給機用サイレンサ8(8B)では、上記のように簡易な構成のサイレンサカバー58を装着可能であるため、特許文献1に記載の過給機用サイレンサと比較して、サイレンサカバー58を装着してもサイレンサ8の重心がコンプレッサハウジング16から遠くなりにくい。このため、サイレンサカバー58を装着しても、過給機100の運転時にサイレンサ8の振動が大きくなりにくい。したがって、サイレンサ8とコンプレッサハウジング16との連結部(フランジ32及びフランジ34)やサイレンサカバー58の取り付け部(ボルト62)に負荷がかかりにくく、該連結部や取り付け部の破損を抑制することができる。
【0041】
幾つかの実施形態では、例えば図5及び図7に示すように、サイレンサカバー58は、フィルタ30の外周側にフィルタ30に対して間隔dを開けて設けられる。
【0042】
これにより、サイレンサカバー58の周方向一端部58a、フィルタ30、フランジ54及びフランジ56によって形成された一端側開口52から、矢印F1に示すように、サイレンサカバー58、フィルタ30、フランジ54及びフランジ56によって囲まれた空間50(図8参照)に空気を取り込むことが可能となる。また、サイレンサカバー58の周方向他端部58b、フィルタ30、フランジ54及びフランジ56によって形成された他端側開口53から、矢印F2に示すように、サイレンサカバー58、フィルタ30、フランジ54及びフランジ56によって囲まれた空間50(図8参照)に空気を取り込むことが可能となる。したがって、過給機用サイレンサ8が周方向全域から空気を良好に取り込むことができるので、開口60におけるサイレンサカバー58の周方向の取り付け範囲を適切に設定すれば、内燃機関等の熱源により生じた高温の空気が取り込まれることを抑制しつつ、空気の総取り込み量の低下を抑制することができる。
【0043】
幾つかの実施形態では、例えば図8に示すように、中心軸Oとフィルタ30との距離をR0、中心軸Oとフランジ54の外周縁との距離をR1、中心軸Oとフランジ56の外周縁との距離をR2とすると、R1>1.1R0、及びR2>1.1R0を満たす。
【0044】
これにより、サイレンサカバー58、フィルタ30、フランジ54及びフランジ56によって囲まれた空間50をある程度広くすることができるため、空間50への空気の取り込みF1,F2(図5及び図7参照)を良好に行うことができる。したがって、過給機用サイレンサ8が周方向全域から空気を良好に取り込むことができ、過給機用サイレンサ8への空気の総取り込み量の低下を抑制する効果を高めることができる。
【0045】
なお、内燃機関等の熱源で生じた高温空気の過給機用サイレンサ8への取り込み量を低減するためには、開口60を周方向のある程度の範囲に亘ってサイレンサカバー58で覆うことが望ましいが、サイレンサカバー58によって覆われる範囲が大きくなるにつれて空気の総取り込み量は低下する傾向にある。このため、サイレンサカバー58は、開口60のうち周方向における60度以上180度未満(90度以上120度未満)の範囲を覆うよう構成してもよい。ただし、サイレンサカバー58の取り付け範囲は上記角度範囲に限らない。すなわち、上記過給機用サイレンサ8では、設置環境に応じて、サイレンサカバー58を装着するか否か、及び、サイレンサカバー58を装着する場合には開口60のうち周方向におけるどの範囲に装着するかを自由に選択することができる。
【0046】
一実施形態では、例えば図4に示す過給機用サイレンサ8(8A)において、フランジ54は第1側壁24の全周に亘って設けられ、フランジ56は、第2側壁26の全周に亘って設けられる。
【0047】
これにより、周方向全域に亘って設けられた開口60における所望の周方向範囲に、所望の周方向長さのサイレンサカバー58を取り付けることができる。したがって、周方向全域の温度分布を考慮して比較的温度が高い範囲のみに当該範囲に対応する周方向長さを有するサイレンサカバー58を取り付けることが可能となる。
【0048】
一実施形態では、例えば図6に示す過給機用サイレンサ8(8B)において、フランジ54は、第1側壁24における周方向の一部の範囲のみに設けられ、フランジ56は、フランジ54に対向するように第2側壁26における周方向の一部の範囲のみに設けられる。
【0049】
過給機100の設置環境における過給機用サイレンサ8の周方向の温度分布が過給機100の設置前からある程度予測可能である場合には、上記のように、フランジ54,56をそれぞれ周方向における一部の範囲のみに設けても良い。この場合、例えば、過給機100の設置環境において比較的温度が高くなりやすい周方向範囲にフランジ54,56を設け、過給機100の設置後に、実際に計測した周方向の温度分布に基づいて、周方向におけるサイレンサカバー58の取り付け範囲を微調整してもよい。これにより、フランジ54,56をそれぞれ全周に亘って設ける場合と比較して、構成を簡素化しつつ内燃機関等の熱源により生じた高温空気の取り込みを抑制することができる。
【0050】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【符号の説明】
【0051】
2 タービン
4 コンプレッサ
6 軸受台
7 円筒体
8 過給機用サイレンサ
10 タービンロータ
12 タービンハウジング
14 インペラ
16 コンプレッサハウジング
18 回転軸
20 軸受装置
22 空気取り入れ口
24 第1側壁
26 第2側壁
28 サイレンサエレメント
30 フィルタ
32 フランジ
34 フランジ
36 放射状補強材
38 外気導入空間
40 平板
42 平板
44 吸音材
46 吸音材
48 吸音スプリッタ
50 空間
52 一端側開口
53 他端側開口
54 フランジ(第1フランジ)
54a ボルト穴
56 フランジ(第2フランジ)
56a ボルト穴
58 サイレンサカバー
58a 周方向一端部
58b 周方向他端部
60 開口
62 ボルト
100 過給機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9