【実施例1】
【0020】
以下、図面を参照しながら実施例1を説明する。
図1は本発明のワイヤハーネスを示す図であり、(a)は高電圧のワイヤハーネスの配索状態を示す模式図、(b)は(a)とは別の低電圧のワイヤハーネスの配索状態を示す模式図である。また、
図2は本発明の外装部材を示す斜視図、
図3は
図2の電線保持部の拡大斜視図、
図4〜
図6は
図3の電線保持部の拡大図、
図7は
図5のD−D線断面図、
図8は
図6のE−E線断面図である。
【0021】
本実施例においては、ハイブリッド自動車(電気自動車やエンジンで走行する一般的な自動車等であってもよいものとする)に配索されるワイヤハーネスに対し本発明を採用する。
【0022】
<ハイブリッド自動車1の構成について>
図1(a)において、引用符号1はハイブリッド自動車を示す。ハイブリッド自動車1は、エンジン2及びモータユニット3の二つの動力をミックスして駆動する車両であって、モータユニット3にはインバータユニット4を介してバッテリー5(電池パック)からの電力が供給される。エンジン2、モータユニット3、及びインバータユニット4は、本実施例において前輪等がある位置のエンジンルーム6に搭載される。また、バッテリー5は、後輪等がある自動車後部7に搭載される(エンジンルーム6の後方に存在する自動車室内に搭載してもよいものとする)。
【0023】
モータユニット3とインバータユニット4は、高圧のワイヤハーネス8(高電圧用のモーターケーブル)により接続される。また、バッテリー5とインバータユニット4も高圧のワイヤハーネス9により接続される。ワイヤハーネス9は、この中間部10が車両における(車体における)車両床下11に配索される。また、中間部10は、車両床下11に沿って略平行に配索される。車両床下11は、公知のボディ(車体)であるとともに所謂パネル部材であって、所定位置には貫通孔が形成される。この貫通孔には、ワイヤハーネス9が水密に挿通される。
【0024】
ワイヤハーネス9とバッテリー5は、このバッテリー5に設けられるジャンクションブロック12を介して接続される。ジャンクションブロック12には、ワイヤハーネス9の後端側のハーネス端末13に配設されたシールドコネクタ14等の外部接続手段が電気的に接続される。また、ワイヤハーネス9とインバータユニット4は、前端側のハーネス端末13に配設されたシールドコネクタ14等の外部接続手段を介して電気的に接続される。
【0025】
モータユニット3は、モータ及びジェネレータを含んで構成される。また、インバータユニット4は、インバータ及びコンバータを構成に含んで構成される。モータユニット3は、シールドケースを含むモータアッセンブリとして形成される。また、インバータユニット4もシールドケースを含むインバータアッセンブリとして形成される。バッテリー5は、Ni−MH系やLi−ion系のものであって、モジュール化することによりなる。尚、例えばキャパシタのような蓄電装置を使用することも可能である。バッテリー5は、ハイブリッド自動車1や電気自動車に使用可能であれば特に限定されないのは勿論である。
【0026】
図1(b)において、引用符号15はワイヤハーネスを示す。ワイヤハーネス15は、低圧の(低電圧用の)ものであって、ハイブリッド自動車1における自動車後部7の低圧バッテリー16と、自動車前部17に搭載される補器18(機器)とを電気的に接続するために備えられる。ワイヤハーネス15は、
図1(a)のワイヤハーネス9と同様に、車両床下11を通って配索される(一例であり、車室側を通って配索されてもよいものとする)。
【0027】
図1(a)及び(b)に示す如く、ハイブリッド自動車1には、高圧のワイヤハーネス8、9及び低圧のワイヤハーネス15が配索される。本発明は、いずれのワイヤハーネスであっても適用可能であるが、代表例として低圧のワイヤハーネス15を挙げて以下に説明をする。
【0028】
<ワイヤハーネス15の構成について>
図1(b)において、車両床下11を通って配索される長尺なワイヤハーネス15は、ハーネス本体19と、このハーネス本体19の両端末にそれぞれ配設されるコネクタ20(外部接続手段)とを備えて構成される。また、ワイヤハーネス15は、所定位置に配索するための固定部材(例えばクランプ等)と、図示しない止水部材(例えばグロメット等)とを備えて構成される。
【0029】
<ハーネス本体19の構成について>
図2において、ハーネス本体19は、導電路21と、この導電路21を収容保護するための本発明の外装部材22とを備えて構成される。尚、図中の導電路21の本数に関し、本実施例においては一本であるが、これは一例であるものとする。また、外装部材22の構成及び構造に関し、高圧のワイヤハーネス9を一緒に収容保護するようなものを採用してもよいものとする。先ず、ハーネス本体19における導電路21の構成及び構造について説明をし、次に、本発明の外装部材22の構成及び構造について説明をする。
【0030】
<導電路21の構成及び構造について>
導電路21は、導電性の導体と、この導体を被覆する絶縁性の絶縁体とを備えて構成される。導体は、銅や銅合金、或いはアルミニウムやアルミニウム合金により断面円形に形成される。導体に関しては、素線を撚り合わせてなる導体構造のものや、断面矩形又は円形(丸形)になる棒状の導体構造(例えば平角単心や丸単心となる導体構造であり、この場合、電線自体も棒状となる)のもののいずれであってもよいものとする。以上のような導体は、この外面に絶縁性の樹脂材料からなる絶縁体が押出成形される。
【0031】
絶縁体は、熱可塑性樹脂材料を用いて導体の外周面に押出成形される。絶縁体は、断面円形状の被覆として形成される。絶縁体は、所定の厚みを有して形成される。上記熱可塑性樹脂としては、公知の様々な種類のものが使用可能であり、例えばポリ塩化ビニル樹脂やポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などの高分子材料から適宜選択される。
【0032】
尚、導電路21における引用符号23は、外周面を示すものとする。外周面23は、本実施例の場合に絶縁体の外周面が該当し、また、例えばワイヤハーネス9(
図1参照)の場合には、シースやシールド部材(編組、金属箔等)の外周面が該当するものとする。
【0033】
<本発明の外装部材22の構成及び構造について>
外装部材22は、樹脂成形にて一本の真っ直ぐな管体形状のものに形成される(使用前は真っ直ぐである。尚、樹脂製に限らず金属製であってもよいものとする)。また、外装部材22は、腹割きなしの形状に形成される。別な言い方をすれば、スリットのない形状に形成される(割チューブでない形状に形成される)。
【0034】
このような外装部材22は、可撓性を有する可撓管部24と、導電路21をストレートに配索する部分としてのストレート管部25とを有する。可撓管部24とストレート管部25は、複数形成される。また、これらは交互に配置形成される。
【0035】
可撓管部24は、車両取付形状(ワイヤハーネス配索先の形状。固定対象の形状)に合わせて配置される。また、可撓管部24は、車両取付形状に合わせた長さにも形成される。可撓管部24の長さは一定でなく、車両取付形状に合わせて必要な長さにそれぞれ形成される。このような可撓管部24は、ワイヤハーネス15の梱包状態や輸送時、車両への経路配索時に、それぞれ所望の角度で撓ませることができるように形成される。すなわち、可撓管部24は、撓ませて曲げ形状にすることができるとともに、図示のような真っ直ぐな元の状態(樹脂成形時の状態)に戻すことも当然にできるように形成される。
【0036】
可撓管部24は、本実施例において、蛇腹管形状に形成される(可撓性を有すれば形状は特に限定されないものとする)。具体的には、周方向の蛇腹凹部及び蛇腹凸部を有するとともに、これら蛇腹凹部及び蛇腹凸部が管軸方向(
図2で示す外装部材22が延在する方向)に交互に連続するように形成される。
【0037】
ストレート管部25は、可撓管部24のような可撓性を持たない部分として形成される。また、ストレート管部25は、梱包状態や輸送時、経路配索時において曲がらない部分としても形成される(曲がらない部分とは、可撓性を積極的に持たせない部分という意味である)。図中のストレート管部25は、長い直管形状に形成される。
【0038】
ストレート管部25は、可撓管部24と比べ、リジッドな部分に形成される。ストレート管部25は、車両取付形状に合わせた位置や長さに形成される。ストレート管部25は、本実施例において、少なくとも車両床下11(
図1参照)に配置される部分として形成される。このようなストレート管部25の中間部になる所定位置には(ストレート管部25における管軸方向の一又は複数の所定位置には)、本発明の特徴部分である導電路保持部26が管軸を挟むように一対の状態で配置形成される。この一対の導電路保持部26は、ストレート管部25に一体に形成される。
【0039】
<本発明の特徴部分である導電路保持部26について>
図2ないし
図8において、導電路保持部26は、導電路21のばたつきが生じないように導電路21を動き難くしたり、動かないように保持したりするための部分であって、管内面27側から見て凸となる形状に形成されるとともに、管外面28側から見て凹となる形状に形成される。また、導電路保持部26は、上記凹となる形状の部分に、外向きに突出する突起部29が複数存在する形状に形成される。別な言い方をすれば、導電路保持部26は、管内面27側が凸部30になり且つ管外面28側が凹部31になる、くびれ部32と、このくびれ部32の凹部31から外側に突出する複数の突起部29とを有する形状に形成される。
【0040】
くびれ部32は(凸部30と凹部31は)、管軸方向の断面が円弧状となる形状に形成される(所謂「くびれた形状」であればよいものとする)。また、くびれ部32は、凸部30の部分が平滑な面になるように形成される(導電路21の挿通に支障を来さない形状であればよいものとする)。
【0041】
本実施例の導電路保持部26は、上述の如く管軸を挟むように一対の状態で配置形成される。尚、管軸を挟む方向としては、導電路21のばたつきが生じる方向、すなわち振動方向や上下方向などが該当する(この方向に限定されるものではない)。一対の導電路保持部26は、導電路21を挟み込んで保持することができるように配置形成される。また、一対の導電路保持部26は、この部分の前後で導電路21を宙に浮かせることができるように配置形成される。
【0042】
一対の導電路保持部26は、それぞれの凸部30の面が導電路21の外周面23に接触したり、外周面23を押圧したりするような位置関係に配置形成される。一対の導電路保持部26は、それぞれの凸部30が離れる方向に撓み可能に形成される。すなわち、一対の導電路保持部26は、弾力性を有するように形成される。弾力性に関し、本発明では主に突起部29の形状及び数などにより調整される。
【0043】
突起部29は、これ自身が弾力性を有する形状に形成される。具体的には、管外面28側から見て断面凸33となり且つ管内面27側から見て断面凹34となる形状に形成される。また、平面視(
図4参照)が楕円となる環状に延在する形状に形成される。別な言い方をすれば、
図2の可撓管部24における蛇腹凹部及び蛇腹凸部と同様の形状で、これが楕円形になるような部分に形成される。
【0044】
尚、本実施例における突起部29は、この形状が楕円形になるように形成されるが、必ずしも楕円形に限らないものとする。すなわち、四角形を含む多角形や長円形、或いは星形等であってもよいものとする。また、突起部29の数は、二つに限らず、一つや三つ以上であってもよいものとする。
【0045】
突起部29は、これ自身が弾力性を有し、また、くびれ部32に対しては弾力性を調整する部分として機能する。従って、本実施例での突起部29は、所謂リブのような剛性をアップさせるための部分ではないものとして形成される。
【0046】
外装部材22は、特に図示しないが公知の押出成形機により樹脂成形される。電線保持部26の部分は、金型内面に複数の凸状部及び凹状部を有する金型が用いられて形成される。具体的には、押出成形機のノズルから管状に押し出しされた管状押出品を、金型の複数の凸状部及び凹状部に押し付けたり、真空吸引したりして図示形状に形成される。
【0047】
<本発明の作用について>
上記構成及び構造において、外装部材22の一端側の開口から他端側の開口に向けて導電路21を挿通すると、この時、一対の導電路保持部26の形成部分では、導電路21が一対の導電路保持部26により挟み込まれるような状態になって移動する。そして、導電路21が外装部材22に対し完全に収容保護された状態になると、導電路21は一対の導電路保持部26により、ばたつきが生じないような状態に保持される。すなわち、動き難い状態や動かない状態に保持される。
【0048】
<本発明のまとめ及び効果について>
以上、
図1ないし
図8を参照しながら説明してきたように、ワイヤハーネス15は、管体形状の外装部材22と、この外装部材22に挿通される導電路21とを備えて構成される。外装部材22は、腹割きなしの形状に形成される。このような外装部材22の中間部(ストレート管部25)には、導電路保持部26が管軸を挟むように一対の状態で配置形成される。導電路保持部26は、管内面27側から見て凸となり且つ管外面28側から見て凹となる形状に形成される。そして、この凹となる形状の部分には、弾力性を有する楕円形状の突起部29が一体に形成される。
【0049】
従って、本発明によれば、一対の導電路保持部26を採用することにより、導電路21を動かないように保持することができる。すなわち、本発明によれば、外装部材22内の所望の位置で導電路21の動きを抑制することができ、以て導電路21側(絶縁体やシース、シールド部材など)の削れ等を防止することができるという効果を奏する。
【0050】
また、本発明によれば、ストレート管部25に一対の導電路保持部26を形成することから、ストレート管部25における所望の位置で導電路21の動きを抑制することができるという効果を奏する。これにより、例えば車両床下11のような長い範囲での導電路21の動きを抑制することができ、以て上記同様に導電路21側の削れ等を防止することができるという効果を奏する。
【0051】
尚、本実施例では、ストレート管部25の中間部に一対の導電路保持部26を形成しているが、これに限らず可撓管部24の例えば中間部に
図3ないし
図8に示す状態で配置形成したり、外装部材22の端末部や、この端末部近傍に配置形成したりしてもよいものとする。さらには、ストレート管部25と可撓管部24の両方などに配置形成したりしてもよいものとする。
【0052】
また、本発明によれば、外装部材22を腹割きなしの形状に形成することから、防水性及び防塵性等を確保することができ、以て導電路21側への悪影響を排除することができるという効果を奏する。